今回は12月電撃文庫・カドカワBOOKS・DREノベルス・SQEXノベル・小学館文庫キャラブンの新刊感想まとめです。内訳は電撃文庫が新作新作4点、続刊4点、カドカワBOOKSの続刊1点、新作1点、DREノベルスの続刊1点、SQEXノベルの新作1点、小学館文庫キャラブンの新作1点の計13点になります。気になる本があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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いつもは真面目な委員長だけどキミの彼女になれるかな? (電撃文庫)
いつもは真面目な委員長だけどキミの彼女になれるかな?(1)
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コイル/Nardack KADOKAWA 2023年12月08日
過去の事情もあって、密かに夜の繁華街でバイトをしている高校生の辻尾陽都。そんなある日、暴漢に絡まれているギャルを助けたら、それがクラス委員長の吉野紗良さんだったことに気づく青春小説。学校とはまた違った一面を見せる紗良を知り、仲間意識を感じて素顔を見せあえる秘密の友達関係になった陽都。学校でふとした折に密かに交わす些細なやり取りを積み重ねて、一方で一緒に図書館で勉強したり石投げや駄菓子屋で遊んだり、紗良のそのギャップは陽都が意識せずにはいられないほど魅力的で、穢して欲しいという彼女が抱える孤独を目の当たりにして、いて欲しい時にしっかり寄り添ってくれる陽都はなくてはならない存在になっていって、一緒にかけがえのない絆を育んでいった二人のこれからがとても楽しみです。
どうせ、この夏は終わる (電撃文庫)
隕石衝突による人類滅亡の危機が発表されてから二年。長崎を舞台に最後かもしれない夏休みを過ごす高校生の少年少女たちのひと夏の物語を描いた連作短編集。ゆるく繋がる世界で描かれる、幼馴染との距離感が分からず戸惑う夢を投げ出した少年、場末のゲーセンでゾンビゲームに励む少女と出会った文芸部部長、謎の転校生を尾行する女子高生、秘密を抱える少女と廃墟マニアの最後のデート、女子高生監督に弱みを握られて人類最後の映画を撮るひねくれ者の少年。無力感を感じてもおかしくない状況で、それでもかけがえのない夏であることは変わらなくて、諦めずに精一杯生きるその姿に感化されて、見失いかけていた大切なものを思い出してゆくとても印象的な物語になっていました。
僕を振った教え子が、1週間ごとにデレてくるラブコメ (電撃文庫)
中学三年生の3月。志望校の合格を機に塾で出会い勉強を教えてきた一つ年下の女の子・芽吹ひなたに告白して見事玉砕した若葉野瑛登。半年後、その彼女から家庭教師の依頼が来る青春ラブコメ。交流が途切れていた半年間で、進路で母親と対立して塾も辞めてしまっていたひなたが窮地に陥っているのを知り、すっかりやる気をなくしていた状態から一念発起して、彼女の志望校合格に向けて家庭教師としてサポートする覚悟を決めた瑛登。恋がよく分からず無防備に彼のことを信頼してくるひなたについドギマギしてしまう瑛登には苦笑いでしたけど、彼女の信頼に応えるべく真摯に向き合って、再び少しずつ積み重ねてゆく二人の関係がなかなか良かったですね。この先にどんな変化が待っているのか、続きをまた読んでみたいと思いました。
双子探偵ムツキの先廻り (電撃文庫)
一世を風靡した名探偵・睦月紫月。行く先々で事件が起きてしまう体質を受け継いでしまった天才&心配性の兄・青士と、能天気な妹・赤音の双子兄妹が、掟破りの方法で事件を解決するミステリ。突然の積雪で泊まった山荘で起きた殺人事件を、掟破りの方法であっさり解決してみせた睦月兄妹。出遅れた探偵・八雲迷子の縁で関わることになった、当主が亡くなった一柳家の遺産相続を巡る騒動。法に触れない範囲で、できる限りあれこれ事前準備する用意周到さで挑む青士には苦笑いでしたけど、コミュニケーション能力に長けた赤音とのコンビで、空回りする探偵を尻目に登場人物や状況の本質を冷静に見極め、イレギュラーの連続にも的確に対処して、依頼を見事果たしてみせたその結末はこれはこれでなかなか良かったです。
七つの魔剣が支配するXIII (電撃文庫)
呪者として目覚めて一時的に剣花団を離れることになったガイ。一方、オリバーたちも上級生として研究室選びの時期を迎え、各々が自分の将来を考え始める第十三弾。剣花団に対する思いは変わらなくても、それぞれが今後を考えねばならない時期に直面して、岐路に立って友を繋ぎ止めるためさらなる絆を求めるピート、並び立つため力を求めるべきなのか葛藤するガイが抱える何とも複雑な思いと彼に対する様々なアプローチ。オリバーと共にいる喜びを隠せないカティ、そしてやらかしてしまった末にお互いの事情を彼と分かち合うことになったシェラ。むしろあっけらかんとしたナナオの割り切りっぷりが際立っていましたが、一方でいくつもの切ない想いも垣間見える中で、ファーカー先生の存在が何とも不気味ですね…。
あした、裸足でこい。4 (電撃文庫)
夢だった小惑星を見つけ、自分が未来を拓く姿を証明してみせることが二斗の失踪を止める方法。そう気づいた坂本巡が、未発見の小惑星を探すために真冬の長野県・阿智村で天体観測に挑む第四弾。小惑星を見つけ、その道に進んだ巡に惹かれたものの、自分が近づいた未来では巡が意欲を失ってしまったことを悔やむ過去の二斗。それを覆すためにチャンスを掴むべく動き出した巡と、そのパートナーに立候補してくれた真琴。素人ながらも懸命に知識を身に着けてくれた真琴の頑張りがあって、天体観測のライバルもできて、二斗と並び立ちたいという巡の強い気持ちで、立ちはだかる壁を一つ乗り越えた感はありましたけど、依然として残された課題にどう立ち向かうのか。最終巻が今から楽しみですね。
レプリカだって、恋をする。3 (電撃文庫)
やりたくないことを押しつけるのを止めるとナオに告げた素直。しかし身代わりだったはずのナオはその役割を見失ってしまい、季節が冬に向かってゆく中、アキと一緒にリョウ先輩の故郷・富士宮へ旅行する第三弾。リョウ先輩の衝撃的な最期から立ち直れないまま、宙ぶらりんな状況を過ごしていたナオ。素直が修学旅行に行っている間にそれぞれ別々の場所で、初めての旅を楽しみつつ、レプリカの仕組みの謎を紐解くピースを得る二人。思わぬ再会もあって、枕投げとか旅行を満喫していた感もあったナオでしたけど、一方でこれからのことを考えざるを得ない状況で、物語もレプリカがなぜ生まれるのか、という疑問の確信にだいぶ迫ってきていて、レプリカ便利だなと思う場面もありましたけど(苦笑)岐路に立たされたナオの選択が気になるところではあります。
続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー 7 (電撃文庫)
続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー(7)
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佐島 勤/石田 可奈 KADOKAWA 2023年12月08日
シャンバラ探索から帰国した達也たち。USNAに眠る大規模破壊魔法[天罰業火]を封印するため、調整を続ける中でIPUがチベットに出兵し、大亜連合に対して宣戦布告する第七弾。達也の存在を国内の抑止力としたい四葉家の裏のスポンサー東道青波の意向。IPUのチベット出兵に対する大亜連合の動き、USNAのシャスタ山で暗躍するローラたちという2つの緊迫した状況が並行して進む中で、軍部や各国の思惑も複雑に絡み、自由に身動きが取れない達也という構図でしたけど、とばっちりで運悪く巻き込まれた感もあった一条は今回散々でしたね(苦笑)達也一人では解決が難しいこういう状況では、右腕とも言うべき存在の光宣の活躍がポイントになりそうです。
サイレント・ウィッチ -another- 結界の魔術師の成り上がり〈上〉 (カドカワBOOKS)
サイレント・ウィッチ -another- 結界の魔術師の成り上がり〈上〉(1)
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依空 まつり/藤実 なんな KADOKAWA 2023年12月08日頃
娼館で生まれ育った少年ルイス。彼が紫煙の魔術師ラザフォードに見出されて、魔術師養成機関の特待生として迎え入れられた青春時代の伝説的悪行の数々を描く前日譚。性格は粗野で乱暴、貴族だらけの魔術学校では問題児扱いで、それでも勉強熱心で魔法戦で他の生徒を圧倒的実力差でぶちのめし、悪童として恐れられるルイス。そんな彼を敬遠しないロザリーやライオネル、そして彼の向上心を認めている尊敬すべき師たちの出会いをきっかけに少しずつ変わってゆく展開で、それでも豊かな才を持ちながら未だ自らの生きる目標を見い出せていなかったルイスが、思わぬところから決意を固めたことでこれからどうなるのか、今後の展開がとても楽しみです。
魔法使いの引っ越し屋 (カドカワBOOKS)
坂石 遊作/いちかわ はる KADOKAWA 2023年12月08日頃
王国一の天才と謳われる魔法使いで、王都の片隅で小さな引っ越し屋を営む少女ソフィ。どんな荷物も難なく運ぶ彼女のもとに、特別な客からの依頼が次々と舞い込んでくる出会いと別れのファンタジー。こっそり隠居したいという老いた勇者。桜仙郷から引っ越そうとする神獣と、彼に育てられた少年アルの存在。そして老朽化した図書館からの引っ越しと、勇者からの再度依頼があった理由。困難な引っ越しを可能にする彼女の卓越した魔法使いとしての力だけでなく、彼女を育ててくれた人たちからしっかりと受け継いだ依頼主の思いを汲み取り、その憂いを何とか解決しようとする真摯な姿勢があって、ライバル視しながらも彼女を気にかける友人フランの存在もいい感じに効いていました。
ブレイド&バスタード3 -金剛石の騎士の帰還- (DREノベルス)
イアルマスたちと冒険を続けながら、かつての知り合いレーアの少女の死体を探し続けるララジャ。そんな彼の前に、かつて所属していたクランの連中が現れる第三弾。ゲルツの持っている手掛かりを得るため、交換条件で迷宮に単身で潜ったララジャと、ようやく再会した少女オルレアの絶望と拒絶。オールスターズの依頼で装備品回収のため、迷宮に潜った一行を陥れるゲルツの悪辣っぷりが際立つ展開でしたけど、新しい得物を探すガーベイジには運命的な邂逅もあって、苦境に陥っても決して諦めない仲間たちと一緒に、大切なものを見事取り戻してみせたララジャの矜持が印象的でした。またいかにも訳あり気な仲間たちの謎めいた因縁も少しずつ明らかになってきていて、今後の展開も気になるところではあります。
肉と酒を好む英雄は、娶らされた姫に触れられない。 (SQEXノベル)
肉と酒を好む英雄は、娶らされた姫に触れられない。
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鯵御膳/坂本あきら スクウェア・エニックス 2023年12月07日頃
人並外れた武勇で英雄となりながら、朴訥な性格の辺境伯子息ガストン。隣国の戦で活躍した褒美に肉と酒を所望したのに、なぜか国王から敗戦国の王女イレーネを与えられてしまうファンタジー。今回勲功によって子爵となり、イレーネと結婚して辺境伯領の近くに領地を賜ったガストン。最初は儚げな風貌に臆していたガストンが彼女の意外な芯の強さを知り、一方で彼のことを冷静に観察していたイレーネもその朴訥な優しさを知っていくことで、少しずつ距離も縮まり変わってゆく二人の関係。有能ゆえに母国ではむしろ冷遇されていたイレーネは、愛妻としてだけでなく彼を支えるブレーンとしてもこれから大活躍しそうな雰囲気で、もっと甘い雰囲気になっていきそうな二人のこれからが楽しみですね。
王妃になった魔女様は五人の王子に溺愛される(小学館文庫キャラブン!)
十年前、先代王妃が亡くなったあとに王妃に座におさまった北の森の魔女ナユラ。直後から眠りつづける病床の国王の願いを胸に、育ててきた五人の王子たちの代理婚活を始めるファンタジー。魔女が国王や息子たちを洗脳したために、五人の王子は適齢期を迎えてもいっこうに結婚しないという噂。実際には十八歳ほどにしか見えない美女でも、実年齢は三百歳になる長年引きこもってきた魔術オタクの人見知り。彼女が育ててきた五人の王子たちも、魔術オタクの変態学者や色魔のクソ王子、無自覚天然女たらし、臆病で癇癪持ち、悪魔憑きと曲者揃い。しかもみんなナユラが大好き過ぎて、魔女を殺そうとする陰謀も絡めながら繰り広げられる、お互いの思いが噛み合わない騒動劇は面白かったです。意外な黒幕との因縁も気になりますね。