読書する日々と備忘録

主にライトノベルや小説など読んだ本の紹介まとめや出版関係のことなどについて書いています

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2017年5月に読んだ新作おすすめ本

 というわけで5月に読んだ新作おすすめです。今月は27点とやや多めの紹介ですが、オススメはライトノベルでは「漂海のレクキール」「キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦」「かりゆしブルー・ブルー」あたり。その他では「あざみ野高校女子送球部!」「京都西陣なごみ植物店」「契約結婚はじめました。」「カロリーは引いてください!」「時をめぐる少女」「あとは野となれ大和撫子」あたりですね。わりといい読後感で十分満足できるタイトルが多かったです。

漂海のレクキール (ガガガ文庫)

漂海のレクキール (ガガガ文庫)

 

 万能の源エルが消失し陸地のほとんどが水没した世界。唯一の陸地リエスを治める聖王家を追われた少女サリューと、陸地を追われた人々の船団国家にも属さない船乗り・カーシュが出会う物語。サリューを救い依頼を手伝うことになった船長・カーシュたち。共に過ごすうちに絆が育まれ、彼女の抱える秘密を知ったことで彼らも巻き込まれてゆく王道展開でしたが、諦めずに船団国家相手の駆け引きで協力を引き出し、救出に向かう彼らの戦いはなかなか痛快でした。すっきりとした結末でしたけど、新天地に向かう旅の続編があるならまた読んでみたいですね。

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (ガガガ文庫)

 

 訳あって親友以外の他人との接触を断ち、部員が自分だけのジャーナリズム研究会に属する高校2年生の啓介。しかしうっかり美人な先輩の白鳥真冬の抱える謎を解いたことをきっかけに様々な事件やトラブルに巻き込まれてゆく日常系ミステリ。真冬のジャナ研入部により少しずつ変化し広がってゆく啓介の世界。彼が親友の大地や良太郎の協力も得ながら解いてゆく謎の真相。当事者にとってはほろ苦い結末であることが多かった一方で、それが停滞から前に進むための転機にも繋がっていて、続巻が出るようならまた読んでみたいと思わせるものがありました。

 永く続く帝国と魔女の国ネビュリス皇庁の戦場で帝国の最高戦力となった剣士イスカ、と皇庁最強とうたわれる氷の魔女姫アリスリーゼが出会う物語。戦場で戦うべき強敵として出会う二人の運命の出会いというわりとよくあるテーマで、待ち合わせもしてないのに中立都市で遭遇し過ぎな感はありましたけど、ベタな甘いラブロマンスを重ねつつ、宿敵の二人が一時的に共闘する展開はとても自分好みでした。両陣営とも首脳陣がアレなので二人の関係が今後どういう方向に向かうのか気になりますね。続巻が楽しみですけど最後は上手くまとまると信じてますよ?

 いなり寿司しか食べられない呪いを祓うため神々の住む島・白結木島を訪れた高校生春秋。そんな彼が神様との縁を切ることで怪異を祓う花人の後継者の少女・空と出会い、怪異解決に挑む沖縄青春ファンタジー。天真爛漫でどこまでもフリーダムだけれど島想いな空たちに翻弄されながら、徐々に変わってゆく春秋の心境。師匠を亡くし未熟を自覚しつつも、事情を知って春秋のために呪いを解こうとする空の決意。のびやかな舞台で繰り広げられる物語の結末はちょっぴり切なくて、けれどそれを乗り越える爽快な読後感は著者さんらしい魅力に溢れていました。

君と四度目の学園祭 (角川スニーカー文庫)

君と四度目の学園祭 (角川スニーカー文庫)

 

 学園祭が間近に迫る高2の秋。連日大事故に繋がりかねないトラブルに見舞われ続けながら、なぜか幼馴染の少女・久遠に助けられていた結羽太。そんな折り久遠が学園祭で誰かに告白するという噂を聞く青春小説。そばにいるのが当たり前な久遠の想い人に気づけない結羽太。彼を死から救うためにやり直し続けてきた久遠に突きつけられる絶望。序盤展開の分かりづらさはやや気になりましたが、最後まで諦めない久遠の過去を知り、結羽太が失われかけていたものを取り戻しに行く展開は、報われないことも多い幼馴染ものとしてぐっと来るものがありました。

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

 

 ある朝、同級生の雨宮翼が列車へ飛び込み自殺を図るのに関与してしまった永瀬。その自殺が忘れられない彼が友人の深井から過去に戻れるカプセルを手渡され、やり直すために過去へ遡る物語。最初は彼女に関わらないと決意したはずなのに、逆に雨宮に関わる機会が増えてしまう永瀬。そんな彼に改めて突きつけられる「蝶は羽ばたかない」という事実。それでも当事者の変えようとする意志によって変わることもあって、多くの人にとってはさほど変わらない、けれど確実に変わったその結末に、一抹のほろ苦さを感じながらもどこか救われる思いがしました。

終わる世界の片隅で、また君に恋をする (電撃文庫)
 

 名前も周囲の人たちとの関係も、その存在すらも全てを忘れ去られてしまう忘却病。全ての人々の記憶が消えていくこの世界で、アキが桜良先輩と忘却病に罹った人の最後の望みを叶えてゆく物語。保健室登校の桜良先輩の発案で始まった『忘却病相談部』。同級生とデートしたり、後輩の家族として過ごしたり、親友を思い出したい先輩など、その願いに寄り添い手伝うアキ。忘れられてしまう、忘れてしまう残酷な現実に向き合うことで見え隠れする複雑な想いがとても切なかったですが、それでも大切な想いを取り戻したエピローグには少しだけ救われました。

 

(P[こ]4-6)あざみ野高校女子送球部! (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[こ]4-6)あざみ野高校女子送球部! (ポプラ文庫ピュアフル)

 

中学時代バスケ部での苦い経験から、もう二度とチーム競技はやらないと心に誓っていた端野凛。つい本気で臨んだ体力測定の記録からハンドボール部顧問成瀬にスカウトされる青春スポーツ小説。典型的なストイックアスリートの凛と凄まじいポテンシャルを持ちながら運動素人の智里。どんなにやられても凹まない絶望しない凛には苦笑いでしたが、好対照な二人を軸として、勝つために自らを追い込んでゆくハンドボール部のメンバーたちそれぞれの想いや葛藤も熱くて、スポーツ小説としてなかなか読み応えがありました。続編あるなら是非読みたいですね。

京都西陣なごみ植物店 (PHP文芸文庫)

京都西陣なごみ植物店 (PHP文芸文庫)

 

 ある母娘から質問を受けて戸惑う京都府立植物園の新米職員の神苗健。そんな彼を救った「植物探偵」を名乗るなごみ植物店の店員・実菜と植物にまつわる様々な謎を解いてゆく連作ミステリ。著者さんらしい情緒ある京都の風物詩を絡めつつ、植物絡みの謎に挑む探究心旺盛でちょっと変わった実菜と、彼女から探偵助手に任命された神苗の二人はお互いを補い合うなかなかいいコンビっぷりで、彼らの奔走ですれ違いかけた人の想いが繋がったり、周囲も温かく見守る二人の距離感も今後が気になったりで、とても良かったので続編がまた読みたいと思いました。

契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)

契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)

 

 椿屋敷で若くして隠居暮らしの柊一と契約結婚した香澄。町の相談役・柊一の元に近所から相談が持ち込まれるわけありな人々の物語。築六十年の椿屋敷という珍しい視点から綴られる穏やかで物事がよく見えるのになぜか人の機微には少し疎い柊一と、よく働き一緒に過ごすうちに柊一のことが気になってゆく可愛い香澄の関係。二人の穏やかな日常が周囲の関与により詮索しないはずの過去に触れ少しずつ変わってゆく展開は、二人が本当の夫婦に近づいてゆく過程をいろいろと楽しめそうですね。周りのキャラも魅力的でこれは続巻に期待大の新シリーズです。

エプロン男子 今晩、出張シェフがうかがいます (集英社オレンジ文庫)

エプロン男子 今晩、出張シェフがうかがいます (集英社オレンジ文庫)

 

 激務の仕事はうまくいかず、恋人にもフラれたデザイナーの夏芽。心身ともにボロボロの彼女がイケメンシェフが自宅に来て料理を作ってくれる「エデン」を紹介される物語。やって来た海斗の作る食事と優しさに触れ立ち直るきっかけを得た夏芽が、次々と出会うメンバーたち。エデンを立ち上げた相馬と参加する男たちが抱える事情と料理に賭ける想い。それぞれのやり方で求められた人たちのために真摯に向き合う彼らの料理には癒されそうで、でも接触禁止で恋愛禁止な契約という縛りがなかなか興味深かったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。

 大学の学食で働きながら、幼馴染・朝生くんと同じマンションに住んでご飯を作る契約をしている楓。体重を除けば完璧な朝生くんとのダイエットを巡る攻防と、身の回りで起こる謎を解くドタバタミステリ。痩せさせるべく日々工夫しながらご飯を作るのになかなか成果が出ない楓とたくさんご飯を食べたい朝生の探り合うような駆け引き、一方で身の回りで起こる謎に対して(デブだけど)無駄に多才な朝生が大活躍するギャップがなかなか面白かったです。そんな二人の何とも形容し難い関係も今後が気になったりで、続巻を是非期待したい新シリーズですね。

時をめぐる少女 (メディアワークス文庫)

時をめぐる少女 (メディアワークス文庫)

 

 未来や過去の自分に逢えるらしい並木道の奥にある小さな広場。九歳の葉子が恋人と婚約したばかりの将来の自分自身と出会う物語。離婚して一人葉子を育てる母親との衝突、繰り返す転校と親友との出会い、上手くいかない就活と大切な人との出会い、そして不安が押し寄せる結婚。自分の選択に自信を持てないがゆえに何かあるたびにこれでいいのか深く悩む葉子でしたけど、そこで一歩を踏み出すことでかけがえのない出会いがあって、それらが巡り巡って最初に背中を押してくれた未来の自分に繋がってゆく穏やかな結末は、とても素敵なものに思えました。

 突然の婚約破棄に昇進取り消し。順風満帆からまさかの人生のどん底に陥った大手通信会社営業・八乙女累が一念発起して書いた小説で小説新人賞を受賞し兼業作家デビューを果たすお仕事小説。ヤケを起こし迷走した果てに原点回帰して挑戦した小説新人賞。厳しいダメ出しをする鬼編集と組むことになり、仕事の方も大変なことばかりで厳しいと思いましたが、きちんと見据えて頑張ってみれば見えることもあるし助けてくれる人もいるんですよね。どうにか兼業作家のスタートラインに立てた今回、周囲との人間関係も気になりますし続巻を読んでみたいです。

明治あやかし新聞 怠惰な記者の裏稼業 (メディアワークス文庫)
 

 明治初期を舞台に書かれた記事が原因で友人が奉公先を追い出されたと新聞社に乗り込んできた少女・香澄が、妖怪にまつわる記事ばかり書く記者・久馬と友人・艶煙と共に人助けをするあやかし謎解き譚。新聞社に乗り込んだ香澄が知る記事が書かれた本当の事情。手伝いをするようになった香澄の心境の変化。普段はぐうたらな久馬がまっすぐなゆえに危なっかしいところもある香澄をきちんと助けたり、だんだんお互いを知ることで少しずつ変わってゆく二人の距離感がなかなか良かったですね。気になるコンビでしたし続きがあるならまた読んでみたいです。

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

 

 美術館の館長として香瀬町に引っ越してきたカリスマ学芸員・佐久間とその娘のかえで。18年前の事件と町民に残るわだかまりを絵画を通じて佐久間が解いてゆく絵画ミステリー。真相を示唆する絵画を佐久間が解釈して周囲の人々に強く残る過去のわだかまりの誤解を解き、それが18年前の事件の真相ともリンクして全てが繋がってゆく展開。癒やしとなる佐久間とかえで親子のほのぼのとしたやりとりや、救いを見いだせる各エピソードの余韻がとても良かったからこそ、思い出してゆく過去のほのかな想いの結末には少しばかり切ない気持ちになりました。

おまえのすべてが燃え上がる (新潮文庫nex)

おまえのすべてが燃え上がる (新潮文庫nex)

 

 愛人生活がバレてスポーツジムのアルバイトの給料では生活費すら賄えず、貢がれたブランド品を売って何とか暮らす信濃の元に、弟が元恋人を連れて訪ねてくる物語。冒頭から包丁を持った愛人の妻に殺されかけててギョッとしましたが、どん底信濃の生活っぷりや、同じようにどん底で過去に二度も絶交した因縁の相手・醍醐との気まずい再会、意味不明の意気投合から自己嫌悪する流れはうわあと思いつつもぐいぐい読ませますね。相変わらず波乱万丈な二人にそんなに簡単には変わらないよなと思いつつもその悪くないと思える結末には救いを感じました。

君に出会えた4%の奇跡 (双葉文庫)

君に出会えた4%の奇跡 (双葉文庫)

 

 大好きな彼にプロポーズされ、結婚を控えて数年ぶりに京都に帰ってきた灯里。自宅の物置で高校生の時に作った小さな提灯を見つけた彼女が、そこに薄らとコウと書かれた跡を見つける物語。幸せを感じつつも思い出せない何かにもどかしさをずっと感じていた日々。そして自らが忘れていた高校時代の記憶。著者さんの前作同様ブルームーンを鍵とするお話でしたが、構図を複雑にしないよう配慮しながら京都の情景を繊細に描いていて、ほのかな切なさも伴うエピソードをひとつの物語としてまとめ上げてゆく結末には、良かったと思える安心感がありました。

憧れの作家は人間じゃありませんでした (角川文庫)

憧れの作家は人間じゃありませんでした (角川文庫)

 

 紆余曲折の末に憧れの作家・御崎禅の担当となった文芸編集者2年目の瀬名あさひ。実は吸血鬼で人外の存在が起こした事件について警察に協力している御崎に原稿を書いてもらうため事件解決にも奮闘する物語。映画好きで意気投合した作家・御崎の意外な正体。最初は困惑するものの映画好きで意気投合しファンでもある御崎の事情を知ることになって、原稿を書いてもらうためにと奮闘するあさひの行動力が物語を引っ張っていた印象。読みやすい語り口でいい感じに物語を引き締めていた刑事の夏樹にも好感。もし続巻あるようならまた読んでみたいですね。

 カネなし男なし才能なしで崖っぷちな29歳のタロット占い師・柏木美月。ある日ずば抜けた推理力を持つ美少女・愛莉を助けたことをきっかけに、占いユニット「ミス・マーシュ」を結成し人々の悩みに秘められた謎に挑むミステリ。お人好しで困った人を放っておけないお節介な美月と、人と関わるのが苦手だけれど数々の謎を解いてみせるツンデレな愛莉。訪れる人々の謎を解きながら、テンポのいい二人の凸凹コンビぶりや遠慮していた距離感もだんだんいい感じになっていく過程が良かったですね。まだまだ続きも期待できそうですし続巻に期待します。

黄砂の籠城(上) (講談社文庫)

黄砂の籠城(上) (講談社文庫)

 

 外国人排斥を叫ぶ義和団勢力を増していた清朝末期の北京。暴徒化して教会を焼き討ち外国公使館区域を包囲する義和団を相手に、足並み揃わぬ列強11ヵ国を新任の駐在武官・柴五郎率いる日本が先導して壮絶な闘いに挑む物語。今回は実際にあった義和団の乱で活躍した日本人たちを主人公とした物語で、緊張が高まってゆく中でどのように事態が推移していったのか、そんなギリギリの状況で彼らがどう考え行動したのか。各人の思惑も入り乱れる困難な状況でしたけど、懸命に奔走して活路を見出そうとする姿には心に響くものがありました。後編も期待。

黄砂の籠城(下) (講談社文庫)

黄砂の籠城(下) (講談社文庫)

 

 先陣を切って漢人キリスト教徒を義和団から救出した日本。しかし西太后義和団に迎合して列強に宣戦布告を決断、援軍到着も見えないまま籠城戦を強いられる下巻。史実をベースとした20万人の義和団と清国軍を相手にした先の見えない難しい闘いでしたけど、そういう絶望的な状況でもできるだけ多くの人を救おうとする櫻井たちの奮闘が自分勝手な行動も多かった列強にも徐々に影響していって、あっさりめのエピローグはもう少しその後の描写があってもと感じましたものの、力を併せて籠城戦を最後までを戦い抜いたその様子はとても心に響きました。

運転、見合わせ中 (実業之日本社文庫)

運転、見合わせ中 (実業之日本社文庫)

 

 朝のラッシュ時に電車が緊急停止。その影響を受けた大学生、フリーター、デザイナー、OL、そして緊急停止に関わっていた人たちのそれぞれのエピソードが綴られる連作短編集。登場人物たちが電車に乗れなかったこと、乗ったことが停滞していた転機に繋がったり、そうだったんだと気付かされたり、逆に人生なんてそうそう変わらないんだなあと思うことがあったり。何となくうまくいかない状況に直面していた彼らでしたけど、この緊急停止から派生したエピソードがまた前を向いて一歩踏み出せるきっかけになればいいなと応援したくなる物語でした。

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

 ある日病院で一冊の文庫本「共病文庫」を拾った高校生の僕が、それを密かに綴っていた膵臓の病気により余命がいくばくもないクラスメイト・山内桜良と出会う物語。ぼっちな僕相手にずけずけと距離を縮めてくる彼女。困惑しつつも彼女と共に過ごす時間がどんどん増えていき、その影響を受けて変わっていく僕。何とも形容し難い二人の繊細な関係と距離感のとても甘酸っぱい恋愛未満な感じが良かったです。何をもって報われたとするのか難しい結末でしたが、二人にとって出会って共に過ごした濃密な時間は、素敵なものだったんだなと改めて思えました。

か「」く「」し「」ご「」と「

か「」く「」し「」ご「」と「

 

 みんなには隠している、ちょっとだけ特別なちから。なんの役にも立たないけれど、そのせいで最近気になって仕方ない。そんなクラスメイト5人のかくしごとがそれぞれの視点で描かれる連作短編集。それぞれ誰にも言えない秘密があって、抱えている想いがある。みんな頑張っているけど不器用だから勘違いして空回りして、傍から見てるともどかしいばかりなんですが、そこで思い切って一歩踏み出してみたらなあんだと思うようなことだったりで、そんな青春している5人が十年後どうなっているのかちょっと知りたくなるような、そんな素敵な物語でした。

あとは野となれ大和撫子

あとは野となれ大和撫子

 

 ソビエト時代末期に建国された中央アジアの小国アラルスタン。様々な理由で居場所を無くし後宮で高等教育を受けていた少女たちが、国の危機に居場所を守るため逃亡した男たちに代わり臨時政府を立ち上げ奮闘する物語。保護者だった大統領の暗殺で日本人少女のナツキも後宮の若い衆のリーダーであるアイシャや仲間たちとともに、反政府組織の侵攻や周辺国の干渉に立ち向かう展開は、ギリギリの連続でもそこまでの悲壮感はなくて、周囲も巻き込みながら若いパワーで最後まで駆け抜け最後は認めさせてしまう素敵な物語でした。なかなか面白かったです。

 監視カメラ情報とプロファイリングで連続放火事件を追う警視庁刑事部分析捜査三係の渡瀬敦子。記者復帰を狙う東都放送報道局・版権デスクの土方玲衣。中学校時代の同級生二人が事件を追う報道×警察小説。消極的理由から警察官僚の道を選んだ敦子。野心を持って成り上がると決めた玲衣。似たような境遇ながら正反対の性格だった二人を掘り下げつつ、時に協力しながら執念で犯人に迫る展開は、情報が多くリーダビリティにやや難はあるものの、明らかになってゆく真実と解決に向けて加速していく面白さがあり、著者さんらしさを十分に堪能できました。