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読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2016上半期注目のオススメ新作ライト文芸ほか32選

先日「2016上半期注目のオススメ新作恋愛小説 ライトノベル編」を更新しました。

それに続く第二弾として今回ライト文芸編を作るべく、実際に読んだ新作のリストを抽出してみたのですが、「恋愛小説」というくくりで作ろうとするとその辺の境界線が曖昧なオススメしたい作品があまりにも多いことに気づきました(苦笑)

 

そこで一度考えたのですが、オススメしたい作品なのに紹介できないのももったいないので、今回ライト文芸とそれに近いテイストの一般文庫レーベル作品の合わせて32冊、思い切ってどどーんと紹介したいと思います。

トオチカ (角川文庫)

トオチカ (角川文庫)

 

親友と2人で鎌倉の小さなアクセサリー店「トオチカ」を営む里葎子。手痛い恋愛を乗り越えていたと思っていた彼女がバイヤーの千正と出会い、心揺さぶられてゆく不器用な大人の恋の物語。会えば行動の一つ一つが気になって苛立つ里葎子と、なぜかそんな彼女の地雷を踏みまくる千正。優しくされたり雑貨の趣味が似ていても素直になれず、距離感が分からなくなったり言葉の選択を間違えてしまう不器用な関係が、とあるきっかけから戸惑いながらもいい感じにまとまっていって安心しました。巻末の短編もいい感じに幸せ感を補足していて良かったですね。

わが家は祇園の拝み屋さん (角川文庫)

わが家は祇園の拝み屋さん (角川文庫)

 

とある理由から中学の終わりから不登校になってしまっていた16歳の小春が、京都に住む祖母・吉乃の誘いで祇園和雑貨店「さくら庵」で住み込みの手伝いをすることになる物語。和菓子職人の叔父・宗次朗やはとこの澪人、不思議な依頼を受ける吉乃ら優しい人々と過ごす日々。様々な人との出会いがあったり依頼を一緒に手伝ったりして過ごすうちに、自ら立ち直るきっかけを掴んでゆく物語ですね。著者さんらしい京都周辺の描写も多く、のんびりとした優しい物語の雰囲気はとても良かったと思います。現在2巻まで刊行。

ここは神楽坂西洋館 (角川文庫)

ここは神楽坂西洋館 (角川文庫)

 

 結婚直前に婚約者に浮気された小寺泉が、何もかも放り出して下宿先の「神楽坂西洋館」で大家の青年・藤江陽介や他の個性的な住人たちとともに住むことになる物語。傷つき疲れ果てた泉が下宿先に受け入れられて、住人や関係者たちとのやりとりや遭遇する出来事に関わってゆくうちに癒やされて、今の自分を見つめ直して新たな一歩を踏み出したり、西洋館の危機に大家の陽介を助けるために他の住人たちと共に奔走するようになったり、ちょっとした幸せを大切にできる生活がとてもいいなと思いました。二人の関係も気になるので7月に刊行する2巻目に期待したいですね。

コハルノートへおかえり (角川文庫)

コハルノートへおかえり (角川文庫)

 

 ある土砂降りの日、親友の紗綾との喧嘩した女子高生・小梅をハーブとアロマのお店「コハルノート」の店長・澄礼に救われ、そこで働くようになる物語。猪突猛進な性格にコンプレックスを抱え、親友の紗綾と仲違いしてしまった小梅と、そんな二人の仲直りに助力してくれた澄礼。周囲に助けてもらってばかりいると感じている小梅の行動力が、結果的にいろいろと周囲に好影響を与えているのに、自分に自信を持ちきれないがゆえに、小梅を大切に思う紗綾や澄礼たちの気持ちに気づいていないあたりが微笑ましい(苦笑)今後どうなってゆくのか続編に期待。

 引っ込み思案でいつもひとりぼっちな樫乃木美術大学の1年生長原あざみが、疑われていた状況を救ってくれた研究生の梶谷七唯と出会ったことでその世界が変わってゆく物語。よく分からないサークル「カジヤ部」に所属することになり、梶谷と共に謎を解きながら増えてゆく仲間たち。ミステリ要素はやや薄味ですが、人との出会いが卑屈だったあざみのありようを変えてゆき、ついには窮地に陥った梶谷を救うために奔走するまでに成長する過程はなかなかで、あざみの過去の伏線も分かりやすかったですがきちんと回収していて好感。7月に2巻目が刊行するようですね。

つめたい転校生 (角川文庫)

つめたい転校生 (角川文庫)

 

 気になる彼の正体は殺し屋?倉庫から突然消えた転校生、自分の身の回りで起きる不審死など、人でないものとの切ない出会いを描く連作短編集。ミステリ要素も交えつつ、人でないものとの出会いや交流、別れが読みやすいテンポの良い文章で描かれていて、どうしても重くなりがちなテーマで意外な視点を提供したり、ほっこりするようなテイストで描かれた作品もあったのはわりと新鮮でした。ハッキリとした結末を提示するばかりでなく、読者の想像に任せるようなスタンスもまた味わいのある読後感に繋がっていて、これはこれでなかなか良かったですね。

山内くんの呪禁の夏。 (角川ホラー文庫)

山内くんの呪禁の夏。 (角川ホラー文庫)

 

 生まれもっての災難体質を持つ小学六年生の山内くん。彼の住むアパートが火事で焼け父の実家に戻ったことで、昔彼にお守りをくれた不思議な子・紺と再会する物語。紺によってこの世ならぬものが見える目にされてしまった山内くん。久しぶりに訪れた父の実家がある田舎の特殊な雰囲気と、未解決なままの連続神隠し事件。そして紺や仲間たちと一緒に次々奇妙な事件に遭遇する中で、徐々に明らかになる山内くんを取り巻く因縁。彼らの友情なのか淡い恋心なのかまだ判別がつかない想いは、その因縁とも複雑に絡んでいきそうで、続編がとても楽しみです。

 凶悪な目つきから社内で「殺し屋」と恐れられる龍生。憧れの女性・千紗からお礼のつもりで渡された義理チョコに手違いがあり、舞い上がった龍生が交際を申し込んでしまう勘違いから始まる恋の物語。バレンタインすら残業で余裕のない千紗は、最初とんでもない噂ばかり飛び交う龍生にビビりまくりでしたけど、どこかズレていても素朴で優しい龍生のことを知ってゆくうちにいつのまにか大切な存在になり世界も変わってゆく、そんな不器用な二人の恋が甘くもどかしくて、読んでいてニンマリしてしまう素敵なハッピーエンドでした。

 「ちょっと今から仕事やめてくる」でブレイクした北川恵海さんの新作。ふとしたきっかけからコンビニ店員のアルバイトになっていた修司が、同僚からヒーロー製作所でのアルバイトを持ちかけられる物語。いつまでも頭を離れない「なーんの面白味もない人生やったなあ」という病床にある祖父の言葉。些細なきっかけから全てを失ってしまったまさかの転落人生。そんな修司がヒーローが最高の仕事ができるように支える仕事を通じて様々な人と出会いその様々な人生を知り、彼らの言葉に勇気づけられてゆく中で、自らもまた再び前を向いて歩けるようになるきっかけを得る読んでいてとても励まされる物語でした。

 新潟の酒蔵で親と衝突し、東京に出てきたものの行き倒れになりかけていた冴蔵が、恵比寿の片隅で「四季-Shiki-」を営む楓さんに救われ二人で日本酒BARを再開する物語。その出会いは日本酒に詳しい夫が亡くなってから実質的に料理屋状態だった楓にとっても、衝突し家を出てきた冴蔵にとっても転機で、二人が力を合わせて訪れる人達ときちんと向き合って信頼関係を育んでいったことで、それぞれが抱えていたものを乗り越える支えとなる展開はとても良かったですね。スッキリとまとまった結末でしたが、続編あるならまた読んでみたいですね。

 三年にわたる幸せな交際を経て結婚した宗一と瞳。しかし入籍当日に宗一は不幸な事故で死んでしまい、瞳を見守るだけの幽霊のような存在となってしまう物語。自らは彼女を幸せにすることができなくなり、瞳が再び幸せ掴むことをひたすら願う宗一。とはいえ瞳が他の男の人と幸せになっても、一人で生きていくことを選んでも複雑な気持ちになってしまうに違いない状況で、亡き宗一を変わらずに想い続けると決意する瞳の想いもまた切なくて、だからこそ瞳を見守り続けてきた宗一が、彼女のために決断して行動する展開にはついホロリとしてしまいました。

小説の神様 (講談社タイガ)

小説の神様 (講談社タイガ)

 

 作家としてデビューするも酷評されて書く自信を失っていた高校生・一也が人気作家の転校生・小余綾詩凪と出会い、彼女との小説合作を提案される青春小説。重い病気の妹のためにと思いながら、厳しい評価にネガティブになりがちな一也と、小説の力を信じていて彼に辛辣な詩凪。書く楽しさを思い出してゆく一也に突きつけられた残酷な現実はとても苦しかったですが、そんな彼が完璧に見えていた詩凪の苦しみに気づき、再び向きあおうと決意する姿は応援したくなります。作品を書くことに対するとても繊細で、強い想いを感じられる青春作品です。

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

 

 子供の頃から相撲漬けの生活を送ってきた文季が、両親の交通事故死で引き取られた先は相撲好きのカエルの神様が崇められている村で、知恵と知識を見込まれ外来種との相撲勝負を手助けすることになる物語。村を治める一族の娘・真夏と出会い、思いとは裏腹に相撲や村の事情にがっつり関わってゆく文季の洞察力や覚悟には年相応に思えないものもありましたけど、一方でそんな彼の自分に向けられる評価や想いには鈍感だったりするギャップや、相撲勝負にも意外な背景があったことに納得したりで、爽やかな読後感を堪能できる青春小説でした。

カタナなでしこ (講談社タイガ)

カタナなでしこ (講談社タイガ)

 

 女子高生の千鶴が駆りだされた祖父の形見分けの蔵整理で、夢に見た一振りの刀身だけの日本刀と出会い、同級生たちと無くなった「刀の拵え」作りに挑戦する物語。4人の女子高生がそれぞれクオーターな外見で日本人であることだったり、しっくりしない家族関係や将来のこと、地味であることなどの悩みを抱えながらも、挑戦を通じて様々な人と出会ったり経験を重ねて、これまで気づいていなかったことに気づいたり、自分らしさを見出したり、複雑な想いを乗り越えて試行錯誤する姿はとても心に響きました。

 言葉の真偽・虚実を瞬時に判別できてしまう本多唯花。大学で心理学を学ぶ彼女のもとに旧家の跡取り息子、文渡英佐から依頼が持ち込まれる物語。特異な障害に起因する唯花の卓越した「嘘」を見抜く論理的鑑定とそれをサポートする晴彦。閉じられた文渡村で起こった殺人事件と文渡一族の複雑な関係。謎解きのアプローチはやや難解な感がありましたが、ストーリー自体はわりとあっさりめで、研究分野以外はあまり興味なさ気な唯花が意外な部分に反応したり、意外な方向に収束してゆく展開は面白かったです。

 新米新聞記者の英田紺が旧家の蔵で見つかった呪いの箱を始末してほしいという依頼を受け、呪いの解明のため神楽坂の箱屋敷に住む箱娘・うららを訪れる物語。大正という世の中が少しずつ変わりつつある時代を舞台に、自らの経験もあって窮屈な生き方をせねばならない女性たちのために奮闘する紺と、自らもワケありの縛られた境遇にありながらも紺を助ける謎の多い箱娘・うららの関係や、登場した女性たちもまた矜持を持って生きる姿が印象的でした。まだうららの境遇含めて謎も多いですし、姿を変えて奮闘する紺の行く末も気になるので続刊に期待。 

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

 

 2025年の夏休み。双子の高校生・明日子と日々人は突然いとことの同居を父から告げられ、やって来た今日子が実は長い眠りから目覚めた三十年前の女子高生だったという物語。時代のギャップに戸惑いながら徐々に双子と打ち解けてゆく今日子の存在は、バラバラになっていた家族を繋ぐきっかけにもなって、過去との繋がりを感じるがゆえにもう取り戻せないことを痛感する彼女と、どうにもならない現実に直面した双子の対照的な選択、昔の想い人の回想がとても印象に残りました。懐かしい気持ちと切ない気持ちが入り混じる素敵なひと夏の物語ですね。

マスカレード・オン・アイス (集英社オレンジ文庫)

マスカレード・オン・アイス (集英社オレンジ文庫)

 

 若手フィギュアスケーターとして将来を嘱望されながらも行き詰まっていた女子高生・白井愛が、ふとしたきっかけからかつて約束をした友人・ユーリに会いに行く物語。経済的な事情にも直面してスケートを続けることすら難しくなりつつある中、狭い世界から飛び出して初めて分かったこと、これまで知り得なかったユーリの複雑な事情。多くの出会いやユーリとの再会によってスケートへの想いを再確認し、多くの刺激を受け自分の良さに気づき、自信を取り戻していく展開はとても良かったですね。近い将来の再会を予感させるエピローグも自分好みでした。

 入社以来経理一筋、きっちりとした仕事ぶりで評価される森若沙名子27歳。過剰なものも足りないものもないことを理想とする生活を送る彼女が、社内外で次々と起こる経理絡みの問題に巻き込まれてゆく物語。特に噂好きでもなく、社内の複雑な人間関係からどこか一歩引いた位置にいる彼女。怖いと誤解されてしまうこともあるけれど、やや不器用なだけできちんと相手を気遣える優しさを持っていて、幸せになりたくないわけじゃないんですよね。実はみんなに慕われていて、そんな彼女がいいと言ってくれる同僚の存在に気づく結末はとても良かったです。同じ会社を舞台とした関連作品「風呂ソムリエ」も注目です。

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

 

 貧血で倒れた大学生の碧が、小料理屋「ゆきうさぎ」を営む青年大樹に助けられ、バイトとしてとして働くことになる物語。母を亡くして食が細くなっていた碧や大樹が女将から跡を継ぐ前は常連だった父、お向かいの洋菓子店の兄妹やお店の常連客など、周囲の身近な人たちとの相手を思いやるような交流だったり、美味しそうな料理とらしさを取り戻した大食漢・碧の食べっぷりとか、猫の武蔵も存在感があって、特に目新しさはなかったですけど、心温まるような雰囲気が読んでいてとてもいいなと思いました。7月に2巻目が刊行予定。

夜ふかし喫茶 どろぼう猫 (集英社オレンジ文庫)

夜ふかし喫茶 どろぼう猫 (集英社オレンジ文庫)

 

 不眠で悩んでいる大学生の結月が、住んでいるマンションにある平日の夜中だけOPENする不思議な喫茶店に通うようになる物語。ふとしたきっかけで風変わりな店主・榊真臣と出会い、眠れない長い夜を過ごす人たちが集う喫茶店の常連になってしまった結月。そんな二人が関わった人たちの悩みを解決するために奔走するストーリーは、結月自身や榊もまた長らく抱えていた悩みへ踏み込んでゆくことにも繋がっていて、その過程でお互いの理解を深めていった二人の距離感が少しずつ、ゆっくりと変わってゆくその繊細な描写がとても良かったと思いました。

ダメダメな一人暮らし生活を送る大学生の栗坂まもりが、ふとしたきっかけからベランダで植物を育てては食すお隣のイケメン園芸男子・亜潟葉二の真の姿を知り、一緒に育てるようになる物語。一人暮らしにありがちなトラブルに巻き込まれて葉ニに救われるまもり。育てたものを一緒に食べることで育まれてゆく二人の交流と、そんな葉二に変わるきっかけを与えた千鶴との再会。不安を抱えながらも自分の思いに正直になって、不器用なりに決意したまもりの奮闘ぶりや、変わってゆく葉ニのまもりを呼ぶ名前の変化はなかなか良かったです。

 問題を抱える実家から抜け出し大学で一人暮らしを始めた成島拓海が、懇親会で出会った同級生橋本秋帆によって競技ダンス部に勧誘される物語。高身長の秋帆に釣り合う存在として190cmの大柄なポテンシャルを見込まれ、とりあえず夏までと嫌々ながら始めた拓海。物語はそんな彼が多くの人との出会いや秋帆のことを知ってゆくうちに競技ダンスの楽しさに目覚めてゆく王道展開で、パートナーと向き合う大切さだけでなく、チーム競技でもある競技ダンスの面白さがひしひしと伝わってくる爽やかな青春小説でした。是非続刊出ることを期待しています。

洋食屋じゃぽんの料理帖 ソップからはじまるフル・コウス (富士見L文庫)

洋食屋じゃぽんの料理帖 ソップからはじまるフル・コウス (富士見L文庫)

 

 御一新前から続く老舗料理屋「津ざき」。従兄に乗っ取られた亡き両親の店で見習い料理人として働いていた柚子が、両親の墓前で記憶喪失の男・周を助ける物語。明治の時代に元両親の店で見習い料理人として働く柚子の難しい境遇、名前以外記憶がないまま津ざきで働くことになった周の意外な特技、因縁の従兄や古株の親方との対立。辛い立場の柚子と色々言いながら彼女を支えるワケありの周でしたけど、真摯に料理に取り組む彼女を支える人たちもいて、頑張りながら報われていなかった彼女に転機があって良かったなと思えました。続編に期待ですね。 

日曜は憧れの国 (創元推理文庫)

日曜は憧れの国 (創元推理文庫)

 

 内気な千鶴、明るく子供っぽい桃、ちゃっかりして現金な真紀、堅物な優等生公子の四人が四谷のカルチャーセンターの講座で出会い、そこで遭遇する様々な事件の謎に挑む青春ミステリ。ひょんなことから一緒に講座を受けることになった性格も学校もばらばらな四人がそれぞれ主人公役となって連作短編を構成する形式。現状に悩みを抱えていて、他の子に複雑な感情を抱いたり長所も短所もある多感で繊細な女の子たちが、講座を通じた交流や謎解きで協力や衝突しながら、それがきちんと向き合ったり成長に繋がってゆく展開はとても良かったと思いました。

放課後スプリング・トレイン (創元推理文庫)

放課後スプリング・トレイン (創元推理文庫)

 

 福岡市内の高校に通う吉野が、親友・朝名の年上の彼氏を紹介された時に同席していた大学院生・飛木と知り合い、二人で周囲の不思議な出来事を解決してゆく青春ミステリ。主人公や親友の朝名は等身大の高校生らしい視点で考えるタイプで、彼女たちの周囲で起こる人が死なない謎解きが中心。探偵役飛木との距離感含めて人物の掘り下げはこれからで、落ち着いた雰囲気のストーリー展開はしっかりしていましたが、昨今の流行りを期待して読むとやや好みが分かれそうな印象ですね。最後に意外な謎解きもあったりして続きが出るならまた読んでみたいです。

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

 

 大学受験を間近に控えた三年生の濱田清澄が、全校集会で一年生の蔵本玻璃がいじめに遭っているのを目撃して割って入り、強烈な出会いを果たす物語。密かにヒーローに憧れ、余裕が無いはずなのに玻璃のためについつい奔走してしまう清澄。自分を救ってくれた清澄に好意を持ちながらも、どこか不穏な兆候を感じさせる玻璃。このままでは終わらない雰囲気が収束してゆく中での終盤怒涛の急展開はやや難解ながらも著者さんらしさがよく出ていましたが、波乱万丈なりにそこそこ幸せだったのかなと感じる二人のその後が描かれたエピローグは、決して悪くない読後感でした。同じレーベルから出ている「知らない映画のサントラを聴く」もいいですね。

道然寺さんの双子探偵 (朝日文庫)

道然寺さんの双子探偵 (朝日文庫)

 

珈琲店タレーランの事件簿」(宝島文庫)の岡崎琢磨さんの新作。福岡県の道然寺に住む性格が正反対な中学生の双子。副住職・窪山一海にもたらされる檀家さん絡みの数々の謎に、双子がそれぞれの論理で事件の謎をに挑む物語。悪意で物事を考えるレンと性善説で物事を考えるラン。軒下に捨てられ道然寺で育てられた双子の二人が、消えた香典や飴屋の娘の憂鬱、水子供養や夢に出てきた女性など、正反対のアプローチから挑む二人の謎解きはなかなか面白かったです。住職や遠縁でお手伝いのみずきさんもなかなかいい味を出していて、彼女や双子にいじられっぱなしの一海視点から語られるシリーズ化を期待したい作品ですね。

古書カフェすみれ屋と本のソムリエ (だいわ文庫)

古書カフェすみれ屋と本のソムリエ (だいわ文庫)

 

 オーナーのすみれが心をこめて作る絶品カフェごはんと、紙野が担当する古書スペースで構成される古書カフェを舞台に起きる5つ小さな謎を解くミステリ。すみれの作る絶品の料理目当てに訪れる常連客たち。彼らの身の回りで起こる謎を紙野が選ぶ実際の本のエピソードを交えながら解決してゆくストーリーは、紙野の推理力がやや冴え過ぎな感もありましたが面白かったです。常連客がつい聞くらいバレバレな紙野と、一方でお客さんには細かい配慮ができるのに自分に向けられる想いにはどこか鈍いすみれ。そんな二人の今後を是非続編で読んでみたいです。

神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん (双葉文庫)

神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん (双葉文庫)

 

 亡き祖父に譲られたアンティークショップを継ぐために、仕事を辞めて東京から神戸に移り住んだ高橋寛人が、お店を間借りしている修理職人の後野茉莉と出会う物語。何でもパソコンで調べる古い物に全く興味のない寛人と、物に宿る想いを大切にしてどんなものでも修理してしまう茉莉。そんな一見噛み合わなそうな二人が、抱えていた過去に決着をつけたり、亡き祖父・万の縁から多くの人たちと知り合ったりしながら、大切な居場所で過ごす家族のような存在として、共に過ごす時間や大切な想いを共有するようになってゆく物語はなかなか良かったですね。

 神保町の小さな名画座『神保町オデヲン』案内人・六浦すばる。彼女に惹かれた大学生の多比良龍司がそこでバイトを始め、様々な映画やお客さんたちと出会い成長してゆく物語。最初は特に映画好きなわけでもない素人だった龍司が、真摯に仕事に取り組む六浦さんや仲間たちの存在に刺激を受けながら馴染んでゆき、映画館を訪れるお客さんたちと心の通ったやり取りをしたり、それに過去の名作の裏事情や時代が変わりつつある中での名画座の現在地なども語られていてなかなか良かったですね。マニアックな解説と読みやすさをうまく同居させたお話でした。

ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)

ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)

 

 最後にちょっと違うテイストの作品ですがあえてここで紹介。暴力を振るう義父と受け入れるだけの母、いいことのない毎日が続き絶望する中学生ノノ。しかし突如白い霧に包まれた街から人々は消え、逃げ出した先で白衣の少女・加連と出会うガール・ミーツ・ガール。義父から逃げ出したノノと、現象に関わりながらとある目的のために組織から逃げ出してきた飛び級の天才少女・加連。偶然から出会った不器用な二人でしたけど、近づく終末を前にきちんと心残りを解決したい加連と行動を共にするうちに深まる絆と、お互いのためにという想いが感じられる切なく優しい物語でした。

 

たくさん紹介しましたが、なかなか面白いシリーズものもたくさん出ていたりするので、機会があればそれもまた紹介したいと思います。

 

ではまた。