今回は6月のMF文庫J・ダッシュエックス文庫・メディアワークス文庫新刊感想まとめです。内訳はMF文庫Jが新作2点、続巻1点、ダッシュエックス文庫の新作2点、続巻1点、メディアワークス文庫の新作1点の計7点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
スタァ・ミライプロジェクト 歌姫編 (MF文庫J)
社会現象になるほどの人気を誇っていた歌姫Arielの突然の死。歌姫を推して視聴するだけだった普通の少女・七音が、彼女の代役を探すオーディションに招待されるサバイバル。もしかしたら受かるかも、会場で推しに会えるかもといった軽い気持ちで応募した結果、文字通り生き残りを賭けた死のオーディションに否が応でも巻き込まれていく七音。それぞれに思いを抱きながら参加した強烈な個性を持つ少女たちとの駆け引きが繰り広げられるサバイバルゲームはなかなか壮絶で、何とか切り抜けた先に待っていた究極の選択肢もまたえげつなくてじわじわと来るものがありましたけど、それでも最後まで諦めたくない気持ちが切り開いてみせたその結末が、なかなか印象的な物語になっていました。
経学少女伝 ~試験地獄の男装令嬢~ (MF文庫J)
少女でありながら男装して科挙合格を目指す受験生・雷雪蓮。彼女が試験会場でどう見ても女の子の受験生・耿梨玉を発見してしまう二人の男装令嬢が逆境に挑む中華試験譚。腐敗したこの世の中を変えるため、男性のみ受験可能で性別バレは即・失格、難問の科挙に挑む過程で知り合った2人。今回は天然でまっすぐな梨玉と冷静で思いを胸に秘める雪蓮という対象的な彼女たち2人を中心に、それぞれに事情を抱える仲間たちと協力する試験方式に挑む展開になっていて、試験の1位の受験生を狙った連続殺人や上手く切り抜けようとするカンニング疑惑に巻き込まれたり、試験に対するそれぞれの覚悟や葛藤も描きながら、合格を目指して奔走する彼女たちが迎える結末がなかなか印象的な物語になっていました。
男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと5 百合の間に挟まる男として転生してしまいました (MF文庫J)
男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと5 百合の間に挟まる男として転生してしまいました
posted with ヨメレバ
端桜 了/hai KADOKAWA 2024年06月25日
復活したはずなのに知らないうちに消え去っていた魔人フェアレディ。状況に戸惑うヒイロが、真実を探る暇もなく学園の寮長たちから次々と呼び出しを受ける第5弾。一大イベント「三寮戦」に向けて揃ってヒイロに転寮を勧めてくる寮長たち。その中で他の寮長たちよりも明らかに実力で見劣りする状況に葛藤するフラーウムの寮長ミュールという構図の中で、彼女を狙うアイズベルト家の「法殺鬼」こと劉悠然。ヒイロはそんな状況のミュールのために奔走して、彼女の実家アイズベルト家の掘り下げも進みましたけど、この1冊を丸々使ってヒイロ争奪戦の様相や師匠も劉悠然も敵に回る厳しい状況もじっくり描いていて、その上で始まる三寮戦本番が果たしてどのような戦いになるのか今から楽しみです。
彼女は窓からやってくる。 異世界の終わりは、初恋の続き。 (ダッシュエックス文庫)
彼女は窓からやってくる。 異世界の終わりは、初恋の続き。
posted with ヨメレバ
さちはら 一紗/北田 藻 集英社 2024年06月25日頃
異世界から現代に帰ってきて2年遅れで復学した陽南飛鳥と文月咲耶。異世界で敵として戦った勇者と魔女が、同級生として高校生をやり直し始める青春ファンタジー小説。かつての同級生で異世界では宿敵として戦い、どうにか一緒に帰ってきた何とも複雑な関係。窓から部屋にやってくる彼女の飛鳥への執着、不器用に友人関係となった2人が知ってゆくお互いが抱える秘密と、そして会いに来ていた本当の理由。自分の役割を演じることしかできない不器用な咲耶と、彼女を気に掛ける飛鳥のお互いだけが理解できる部分があるのに、それでいてなかなか伝わらないもどかしい関係も良かったですけど、彼を取り巻く周囲の人間関係を絡めた構図もまた、彼らの特異性を浮き彫りにしていていい感じに効いていました。
地味なおじさん、実は英雄でした。 (ダッシュエックス文庫)
三河 ごーすと/瑞色 来夏 集英社 2024年06月25日頃
18年前に迷宮が出現し若者を中心に攻略配信が流行する新宿。社畜サラリーマンの佐藤蛍太が、ストレス発散のためにダンジョンで無双する無自覚成り上がりファンタジー。密かに夜な夜な金属バットを片手に単身で深層階に潜り込み、凶暴なモンスターをかっ飛ばしていた蛍太。同居する姪っ子の光莉がその戦闘動画をこっそり配信したことで、その正体不明のありえない強さがバズって注目を集める展開で、主人公も普段は効率重視で生きたいと思っているのに、困った人を放っておけない性格がダンジョンでも出ていて、でも一方で慕われても若い子に勘違いしちゃいけないという自制が、姪っ子や人気配信者スイレンへの反応の薄さに繋がっていて微笑ましかったですね。
俺は義妹に嘘をつく ~血の繋がらない妹を俺が引き取ることにした~ 2 (ダッシュエックス文庫)
俺は義妹に嘘をつく 2 〜血の繋がらない妹を俺が引き取ることにした〜
posted with ヨメレバ
城野 白/Aちき 集英社 2024年06月25日頃
義妹の悠羽を辛い日々から救い出し、同居生活を始めた六郎。家族として再び仲を深めていく2人が、夏休みにかつて六郎が住んでいた女蛇村を訪れる第2弾。出迎えてくれた元気溌剌な美少女加苅美涼と六郎の親しげな様子を見て、自分の気持ちに戸惑う悠羽。美涼の長く続いている片思いが明らかになる中で、六郎と血が繋がらないことを知らないまま、彼を改めて意識していく悠羽。そんな彼女の勇気が変えたもう一つの物語の結末は良かったですけど、依然として兄妹を巡る状況はなかなかに厳しくて、そんなままならない環境の中でもお互いを大切に思いながら頑張っている六郎と悠羽の関係を読んでいると、いつか彼らを取り巻く状況が好転してくれることを願わずにはいられないですね…。
さよならの仕方を教えて (メディアワークス文庫)
とある事情から無気力な日々を送る高校二年生の樋口悠。久々に登校した教室で、休んでいる別の生徒のもののはずの空席に座る転校生の有馬帆花と出会う青春小説。どこかクラスで浮いている彼女のあり方を不思議に思いながらも、隣の席ということもあって次第に打ち解ける二人。そんなある日、姿を消していた樋口のあまり素行の良くない幼馴染・水瀬凛が教室に現れて、それと入れ換わるように姿を消した帆花。決して交わらない2人と交錯する3人の想いが、やがて気づかないふりをしていた1つの事実に繋がっていく展開にはなかなか来るものがありましたけど、それにしっかりと向き合えたからこそ見つけることができたかけがえのない想いが、とても鮮烈な印象を残す物語になっていました。