今回は11月MF文庫J・メディアワークス文庫・角川文庫の新刊感想まとめです。内訳はMF文庫Jが新作3点、続巻2点、メディアワークス文庫が新作3点、続巻1点、角川文庫の新作1点の計10点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
マスカレード・コンフィデンス 詐欺師は少女と仮面仕掛けの旅をする (MF文庫J)
【第19回MF文庫Jライトノベル新人賞<最優秀賞>】
マスカレード・コンフィデンス 詐欺師は少女と仮面仕掛けの旅をする(1)
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滝浪 酒利/Roitz KADOKAWA 2023年11月25日
十二年前の革命で打ち破られた、千年に渡る王と貴族たちの支配。その共和国で架空の他人を演じる仮面の詐欺師ライナスが、一人で旅する謎の少女クロニカと出会う近代異能ファンタジー。金のために生きてきた小悪党ライナスに、今まで彼が奪った金で積み上げてきた財産を返してほしければ一緒に旅をしろと告げるクロニカ。訳ありの彼女を追う異能を宿す獄門吏、弁護士、女貴族といった人外の貴族たちの刺客からの襲撃に、駆け引きと彼女の魔眼で立ち向かう二人の海を目指す旅路。様々な出会いがある中で、隠していた真実が明らかになってゆくクロニカと、そんな彼女のことを放っておけないライナスのコンビがなかなか良かったです。イヴリーンとパトリィアの存在もいい感じに効いていたので再登場に期待してます。
俺の背徳メシをおねだりせずにいられない、お隣のトップアイドルさま (MF文庫J)
【第19回MF文庫Jライトノベル新人賞<優秀賞>】
俺の背徳メシをおねだりせずにいられない、お隣のトップアイドルさま(1)
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及川 輝新/緋月 ひぐれ KADOKAWA 2023年11月25日
新たに引っ越してきたお節介な高校生・真守鈴文が、お腹を空かせて倒れていた隣人の女子高生アイドル・有須優月を助けて始まる、少し特別なお隣さんの胃袋とハートを掴むメシ堕ちラブコメ。理想のアイドルでいるため過度な食事制限をする優月が心配で、手料理を幸せいっぱいの顔で完食する彼女の様子に、つい《メシ堕ち》させたくなる鈴文。意外な一面を持つ三神先生や彼の幼馴染・莉華も絡めながら、豚丼、ラーメン、お好み焼きといった美味い料理を振る舞われた優月の熱い飯レポがあって、鈴文の手作り飯にしっかりと胃袋掴まれてしまった彼女が、アイドルである自分とのギャップにいろいろ思い悩みながらも、抗いきれず堕ちてゆく様子がなかなか微笑ましかったですね。
多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉 (MF文庫J)
【第19回MF文庫Jライトノベル新人賞<佳作>】
事故をきっかけに『並行世界を行き来する力』を手に入れ、並行世界を数多く渡り歩いていた普通の高校生・湯上秀渡。しかし、突然『全ての並行世界が1つに統合される』現象が起き世界が急変してしまう青春SF小説。アイドルになった幼馴染・朝美との交際、並行世界で様々な顔を見せるミステリアスな陽菜乃先輩との生徒会、思春期な義妹・樹里との生活など、自分の様々な可能性を探っていた平行世界がひとつになってしまうカオス。そこに現れた別の並行世界の朝美と世界を修復するために動き出すストーリーで、並行世界の統合を巡る先進世界の思惑にも振り回されながら、並行世界の存在に隠されていた真相に辿り着いて、想いを告げたい大切な人の存在を思い出してゆくその結末はなかなか良かったですね。
聖剣学院の魔剣使い14 (MF文庫J)
リーセリアが与えた聖剣の力によって決着を迎えたレオニスと不死者の魔王との決戦。しかし不死者の魔王消滅によって次元城は崩壊。その余波に巻き込まれ、レオニスたちは遠く離れた〈桜蘭〉の森に飛ばされてしまう第十四弾。飛ばされた異国の隠れ里での意外な再会と、リーセリアの中で眠っていたロゼリアが語る、この世界が生まれた経緯と神々と虚無の関係、そして1000年前にあった魔王と光の神々の戦いの真実。そんな中で〈ヴォイド・ゴッド〉となり、人類最後の要塞へ侵攻開始したレオニスの師でもある〈剣聖〉シャダルク。相変わらず懐かない猫のようなシャーリが抱えていた意外なものも明らかになりましたけど、新たな役割を求められるリーセリアたちの戦い、そして獣王たちも勢ぞろいして立ち向かうレオニスとシャダルクとの関係も気になるところではあります。
Lie:verse Liars 俺たちが幸せになるバッドエンドの始め方3 (MF文庫J)
Lie:verse Liars 俺たちが幸せになるバッドエンドの始め方3
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鳳乃 一真/あるてら/Liars Alliance KADOKAWA 2023年11月25日
日常と非日常を行き来しながら自身の結末を目指す覚醒者・灰空瑠宇。彼がグランドマスターが集められた場で複数被害者たちが囚われた特殊偽世界事件の解決に参加を求められる第三弾。直前の因縁も絡めた様々な思惑が垣間見える合同作戦。密かに自らの目的のため機を窺っている瑠宇と、唯一彼の日常を知る存在でストーカーを公言する狛芽献の過去。参加した作戦自体はある意味予想通りの展開から、そうきたかという思わぬ結末を迎えたわけですけど、その始末を進めてゆく過程で瑠宇の事情も絡む思っていた以上にヤバい背景や対立の構図もいろいろと明らかになってきて、だからこそ瑠宇や献、雉子たちが育んできた絆が印象的なものに映りました。
甘党男子はあまくない ~おとなりさんとのおかしな関係~ (メディアワークス文庫)
甘党男子はあまくない ~おとなりさんとのおかしな関係~
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織島 かのこ KADOKAWA 2023年11月25日頃
恋人から突然別れを告げられた平凡OL糀谷胡桃が、ストレスを発散させるために大量に焼き上げたお菓子を持て余し、お隣に住む甘党小説家・佐久間に差し入れして始まる”おかしな”恋の物語。口も態度も悪い傍若無人な態度で、けれど甘いものをこよなく愛していて胡桃の作ったお菓子を大絶賛する佐久間。それをきっかけに何かストレスを感じる出来事があるたびに、家に帰って美味しいお菓子を作り、おすそ分けと称してお隣に持って行って、佐久間と一緒に食べながら愚痴を聞いてもらう胡桃。佐久間と出会い関わり合いが増えてゆく中で、男を見る目がなかった胡桃と周囲の関係も少しずつ変わっていって、傍からそっと見守りたいような、つい口を出したくなるようなもどかしい二人の関係がこれからどうなるのかとても楽しみです。
失恋メイドは美形軍人に溺愛される ~実は最強魔術の使い手でした~ (メディアワークス文庫)
失恋メイドは美形軍人に溺愛される ~実は最強魔術の使い手でした~(1)
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雨宮 いろり KADOKAWA 2023年11月25日頃
メイドとしてグラットン家の若旦那に仕え、密かな想いを寄せていたリリス。しかし彼の突然の結婚により、新しい妻からクビを言い渡され失恋から始まるラブストーリー。失意に暮れるリリスをメイド兼偽婚約者として雇ってくれた、若旦那の親友で容姿端麗な女たらしの最強軍人ダンケルク。もともとリリスの器量を気に入っていて、魔法の才能も評価していたダンケルクが、彼女が幻の最強魔術を使えることを見出し、一緒に帝都を脅かす過去の因縁に立ち向かう展開で、リリスの若旦那への想いを意識しながら、だんだん彼女への溺愛っぷりを隠さなくなってゆくダンケルクが微笑ましかったですけど、戸惑いながらも不器用で真摯な彼の想いに少しずつ向き合うようになってゆく二人の関係がなかなか良かったです。
キッチン「今日だけ」 (メディアワークス文庫)
開店したばかりのパティスリーで、教えたがりおじさんにつきまとわれ、撤退に追いこまれた小花美月。失意の彼女が水郷・近江八幡の「シェアキッチン今日だけ」にたどりつくお仕事小説。諦めずに再起を目指す彼女が、オーナーの孫・川端に誘われて一時的に手伝うことになった「シェアキッチン 今日だけ」。彼女が向き合う撤退の元凶だった教えたがりおじさん、そしてお菓子店、喫茶、バルといった夢のお店のお手伝い。明らかにされてゆくオーナー一家が抱えている事情もなかなか複雑で、やはり気になる川端さんとの関係はそう来たか!と思いましたけど、お菓子作りが本当に大好きで前向きな小花の存在が刺激となって、迷える人たちの背中を押すことで変わるきっかけとなってゆく、とても素敵な物語になっていました。
拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきますIII (メディアワークス文庫)
スパイ騒動も一段落して、無事に女の子を出産したバイレッタ。一方、戦地に派遣されて出産に立ち会えず消沈するアナルドは、上司から『新婚旅行』に行くよう命令される第五弾。娘エルメレッタと共に、結婚十年目で新婚旅行へ向かう一同が訪れた別荘に押しかけてきたバイレッタの学生時代の友人ミュオン。彼女が次々と騒動を持ち込んで義父からも無理難題を押し付けられる展開でしたけど、出産を乗り越えたこともあってなのか、相変わらずの溺愛っぷりを見せるアナルドに対して、バイレッタの態度がわりと普通で、気がつくと無意識にイチャイチャしている二人に、いろいろ振り回されて大変なことになっていた部下や周囲が何か納得いかない気持ちになるのも分かるような気がしました(苦笑)
琥珀の瞳は瑠璃を映す カルジャスタン従神記 (角川文庫)
大陸内陸部に位置するオアシス国家カルジャスタン王国。神紋が発現して神獣召喚の儀を迎えた第一王子ルスランが、災厄の瑠璃竜アルダーヴァルを召喚したとして追放され旅に出るオリエンタルファンタジー。追放を取り消してもらう方法を探して旅に出た、おぼっちゃん育ちのルスランと口も態度も悪く皮肉屋アルダーヴァル。不本意な定めで結ばれた相性最悪な二人が、東方で神獣を従える貴公子と出会ったり、黒い嵐に立ち向かう一方、過去の文献に当たって瑠璃竜を巡る真実に迫る展開になっていて、様々な困難に直面する中で過去に何があったのかを知ってゆく二人が、抱えていた葛藤を乗り越えて成長し、祖国の危機に立ち向かう王道展開はなかなか読み応えがありました。