今回は2月の電撃文庫・カドカワBOOKS・DREノベルス新作感想まとめです。 内訳は電撃文庫の電撃小説大賞受賞作3点と続巻3点、カドカワBOOKSの続巻1点とDREノベルスの第1回ドリコムメディア大賞《金賞》受賞作1点の計8点です。どれも良かったので、気になる作品があったらぜひ読んでみてください。
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レプリカだって、恋をする。 (電撃文庫)
【第29回電撃小説大賞《大賞》受賞作】
レプリカだって、恋をする。(1)
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榛名丼/raemz KADOKAWA 2023年02月10日
具合が悪い、面倒な日直の仕事がある、定期テストの日。相川素直が学校に行くのが億劫な日のたびに彼女に呼び出されるレプリカ。オリジナルのために働くのが使命と思っていたレプリカが恋に落ちる青春小説。少女の分身体で便利な身代わり、けれど積み重ねからちょっと違う性格。いつの間にか素直と距離が出来てしまい、文芸部での読書時間が楽しみだった彼女が落ちた恋。見分けるためのハーフアップの髪型が効いていましたが、秋也との出会いが借り物で空っぽだったはずの彼女を変えていって、すれ違っていったオリジナルと向き合う展開には胸が熱くなりましたけど、大切な人たちと新たな関係を見出してゆく素敵な物語になっていました。
勇者症候群 (電撃文庫)
【第29回電撃小説大賞《金賞》受賞作】
彩月 レイ/りいちゅ KADOKAWA 2023年02月10日
《女神》に寄生され、怪物と化した《勇者》を倒すため救うため、勇者殲滅の精鋭部隊『カローン』で戦う少年少女たちの奮闘と葛藤を描く出会いと再生の物語。魔物が実は人間だとも知らず、女神の言うがまま魔物を倒す《勇者》の皮肉な構図。《勇者》は倒すしかないと思っていた部隊に勇者を人に還す研究をする少女カグヤが加わることで、少しずつ変わってゆくストーリーで、それぞれの複雑な背景や決して他人事ではない勇者化の過酷な現実を描きながら、ぶつかり合っていた彼らが最後まで諦めずに助け合う中で、討ち果たすべき真の敵を見出してゆく展開はなかなか良かったです。
クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所~看板ネコ娘はカワイイだけじゃ務まらない~ (電撃文庫)
【第29回電撃小説大賞《銀賞》受賞作】
クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所 ~看板ネコ娘はカワイイだけじゃ務まらない~(1)
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五月雨 きょうすけ/猫屋敷 ぷしお KADOKAWA 2023年02月10日
種族間戦争終結後、十七の種族が平等に暮らすために設立された実験都市ミイスを舞台に、結婚相談所で働き始めた見習い猫人族アーニャの奮闘を描くファンタジー。彼女が夢見ていた異種族の幸せな出会いをサポートする素敵なお仕事の現実。そして直接の相談以外の騒動に巻き込まれることも多くて、戦後の変化に上手く適応できない様々な人々の思いも描かれる中、大人たちに見守られながら様々な経験を積んで成長してゆくアーニャが、困難な状況にも一生懸命向き合い、時には理不尽な状況に追い込まれても諦めず、大切なものを守ろうとするその姿には心に響くものがありましたね。典型的なダメ指導係のションや所長のドナさんもいい感じに効いていました。
86 -エイティシックス- Ep.12 -ホーリィ・ブルー・ブレット- (電撃文庫)
86-エイティシックスーEp.12 ─ホーリィ・ブルー・ブレット─(12)
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安里 アサト/しらび KADOKAWA 2023年02月10日
連邦も多大な犠牲を払った共和国民避難作戦。その無惨な敗走は各方面に大きな影響を及ぼして、一方で連邦領内では共和国、連邦上層部やエイティシックスへの不満が噴出する第十二弾。シンたちだけではなく、レーナやフレデリカも無力さを突きつけた敗戦。戦況悪化に耐えかねた一部の離反部隊が起死回生を信じて縋ろうとする禁断の一手。これまでただ従っていればよかった人々が、勝ち取った自由を忌避する皮肉、そして何よりもまず内側で不穏分子が蠢動する構図は頭が痛いですね。苦しい戦況が続く中で、様々なものが少しずつ壊れたり綻び始めて、いろいろ不穏な状況が噴出していますが、これらにどう向き合うのか、折り合いをつけてゆくのか続巻に期待です。
アオハルデビル2 (電撃文庫)
池田 明季哉/ゆーFOU KADOKAWA 2023年02月10日
衣緒花の悪魔を祓い、平穏な日常を取り戻した有葉。エクソシストとして衣緒花と活動を続けるよう依頼される彼に、突然学校に来なくなった三雨から相談を持ちかけられる第二弾。三雨の家を訪問した有葉が直面するウサギ耳姿の三雨。取り憑いた悪魔をどうにかすべく三雨と行動をともにするうち、有葉が突きつけられる彼女の秘めた想い。有葉自身もまた迷走して心定まらない中で、何が必要なのかを見極めて決意した衣緒花の覚悟が今回のターニングポイントでしたね。誰もが複雑な想いを抱えて、すれ違い絶望を抱えながら、それでも大切な人のために奔走してみんなの力で見事乗り越えてみせましたけど、でもいい感じのままでは終わらせてくれないんですよね(苦笑)続巻で何が起きるのか今から楽しみです。
新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち5 (電撃文庫)
新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち(5)
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佐島 勤/石田 可奈 KADOKAWA 2023年02月10日
白熱の九校戦が幕を閉じて充実感に浸るアリサたち。しかしそこから全日本マーシャル・マジック・アーツ大会を目前に控えて、夏合宿を実施する第五弾。友人・小陽のツテでアリサたちも同行して、時には川原で水遊びをしたり、特訓をする合宿で出会った、どこか気になる距離感の一高OB千葉エリカと西城レオンハルトの二人。ライバル一条茜への雪辱に燃える茉莉花が、更なるレベルアップのために成長した二人に教えを乞う展開はなかなか熱かったですけど、戦いを忌避していたアリサも少しずつ変わりつつあるんですかね。展開としてはやや巻き気味でしたが、強敵を倒しながら再び対峙した茜と茉莉花のリベンジ勝負も良かったです。
サイレント・ウィッチ V 沈黙の魔女の隠しごと (カドカワBOOKS)
サイレント・ウィッチ V 沈黙の魔女の隠しごと(5)
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依空 まつり/藤実 なんな KADOKAWA 2023年02月10日頃
学園も冬休みに突入。自称悪役令嬢イザベルと一緒に帰省するはずが、なぜか沈黙の魔女としてダドリーと共に隣国との外交取引をする第二王子を護衛する公式任務を与えられてしまう第五弾。隠れファンであることを隠しきれない殿下との急接近に動揺を隠せないモニカ、一方相変わらずマイペースな従者役のネロやダドリーたち。そんな外交の場に突如襲来する暴れ方が尋常でない竜への対処。期せずして憧れの沈黙の魔女に会えてウキウキを隠せない殿下が微笑ましかったですけど、あんなんでも土俵際で身バレは防げた感じですかね(苦笑)ネロが使い魔になったまさかの経緯が明らかになったり、いろいろきな臭い背景が思わぬところに繋がって、その辺も含めて今後の展開が気になるところではあります。
祓い屋令嬢ニコラの困りごと (DREノベルス)
【第1回ドリコムメディア大賞《金賞》受賞作】
祓い屋令嬢ニコラの困りごと
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伊井野いと/きのこ姫 ドリコム 2023年02月10日頃
優秀だった祓い屋の前世から、西洋風の異世界に転生した子爵令嬢ニコラ。彼女が幼馴染の美形侯爵ジークハルトとの再会をきっかけに厄介事に巻き込まれてゆく学園ファンタジー。身分差がある幼馴染の求婚に複雑な想いを抱く彼女が、人にも人外からも好かれてしまう彼の面倒事に振り回され祓い屋スキルで解消する日々。そこから学園内で起きる不審な事件を解決したり、彼と仲のいい王子たちとの交流も増えてゆく中で、彼女自身もまた危険な状況に巻き込まれてゆく展開でしたけど、口ではいろいろ言いながらも因果を冷静に見極めて、自ら身体を張って真摯に向き合ってきた彼女がきちんと報われる結末で良かったです。