というわけで今年もやってきました『好きラノ』2022年下期投票。
基本的に該当期間の新作のみを投票対象としているので、その中から自分の好みで10作品セレクトしています。今回はあまり迷わずにすんなりと決まりました。
なお投票締切は1/8(日)までとわりと早いのでご注意下さい。
※各作品のタイトルのリンクはBookWalkerページに飛びます。
1.月の白さを知りてまどろむ (DREノベルス)
大陸中から多くの客が集まり、化生が存在する神に捧げられた享楽街アイリーデ。その神話正統の妓館「月白」の主で巫女の少女サァリと、王都から来た化生斬りのシシュが出会う恋愛ファンタジー。非日常を思わせる街を舞台に運命的な邂逅を果たした二人。物語としては首を突っ込むくせにどこか脇の甘いサァリが事件に巻き込まれ、シシュが助けに行く構図で、特殊な存在ゆえに様々な顔を垣間見せるサァリと、機微が読めない堅物なシシュがそれぞれ抱える様々な事情が複雑に絡み合う関係性があって、いつの間にかお互いにかけがえのない存在になってゆくのを否が応でも自覚してゆく二人が、この先に待っている運命にどう抗うのか、今後の展開がとても楽しみな新シリーズです。【22下ラノベ投票/9784434310638】
2.恋人以上のことを、彼女じゃない君と。 (ガガガ文庫)
ブラックな仕事に疲れていたある日、大学時代の元彼女・水瀬糸と再会し飲みに誘う山瀬冬。こういう友達関係もいいなと思っていた矢先、酒の勢いに呑まれてしまう連作短編集。最初こそ密かに意気込んでいたものの、やらかして後悔する冬を疲れた表情で制する糸。社会が強要する正しさや、大人の不自由さに振り回される二人が、一緒にいる時だけ感じられる密かな現実逃避の安息。一時の曖昧で倒錯した虚構の関係は心地よくて、けれど一方でなかなか新たな一歩を踏み出せないこの関係ならではの危うさも垣間見えて、それでもずっと身動きできなくなっていた大切な彼女のために寄り添って向き合う覚悟を決めた冬がカッコ良かったです。二人を観察する人々の視点もなかなか効いていました。【22下ラノベ投票/9784094530964】
3.たかが従姉妹との恋。 (ガガガ文庫)
小学六年生の時、四つ年上の従姉・中堂絢音と初めてキスをした幹隆。ずっと彼女を忘れられずにいた彼が、高校生になって都内で一人暮らしを始める青春小説。高校に入学してちょっと変わった女の子・御武凪夏と仲良くなりかけていた幹隆が、転校生として突如再会した懐かしい従妹の双子姉妹・真辺伊緒&眞耶。そして大学生になった絢音との再会。全体として見ると双子姉妹との成長してから取り戻してゆく関係性が絢音以上に強烈なインパクトがあって、途中消えていた凪夏も最後に存在感を見せてくれて面白くなりましたね。従姉妹たちに「監護会」とかLINEグループを作られてしまう幹隆と、タイプの違うヒロインたちとの関係には期待感しかありません。【22下ラノベ投票/9784094531039】
4.君はこの「悪」をどう裁くのだろうか?(電撃文庫)
君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか?(1)
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二丸 修一/champi KADOKAWA 2022年12月09日
幼い頃から密かに殺人衝動を持ち、勉強も運動も一番の高校生・高城誠司。並び立つ存在で友情を深めながら、妹を殺したことを誠司に問い詰める菅沼拓真と共に異世界召喚されるファンタジー。魔法で召喚された先の王国で、第一王子デュレルの右腕として悪辣な手腕で成り上がる誠司。一方、第二王子アシュレイの下で信頼を得てゆく拓真。対照的な人生を歩んできた相容れない王子二人の因縁、二人の間で揺れるデュレルの娘シンシアという構図の中で誠司と拓真の対決も不可避でしたけど、お互い運命的な存在だと自覚する二人の何とも皮肉な真相と決着は、こうなるしかなかったんでしょうか…あまりにも衝撃な結末から物語はどこに突き進むのか、続きが気になりますね…。【22下ラノベ投票/9784049142266】
5.あした、裸足でこい。 (電撃文庫)
卒業式。自らの冴えない高校生活を思い返していた坂本巡が、すっかり別世界の住人になっていた元カノ・二斗千華の失踪をきっかけに、二人が出会った入学式にタイムリープする青春やり直しラブストーリー。高校のピアノで二斗の曲を弾いたことでタイムリープし、過去の出来事を変えることで、未来の出来事を少しずつ変えることができると知る巡。そんな彼が二斗を救うために天文同好会の廃部阻止に動いたり、周囲との関係を変えていったり、最後まで諦めなかったことで辿り着いた意外な結末、未だ謎も多いタイムリープがどんな意味を持つのか、既刊作品の登場人物たちも絡めながら繰り広げられる今後の展開がとても楽しみな新シリーズですね。
6.アオハルデビル (電撃文庫)
アオハルデビル(1)
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池田 明季哉/ゆーFOU KADOKAWA 2022年10月07日
うっかりスマホを忘れて夜の高校に忍び込んだ在原有葉。そんな彼が屋上を照らす奇妙な光に気づき、闇夜の中で燃え上がる美少女・伊藤衣緒花と運命の出会いを果たす青春小説。怪異現象の原因は何だったのか…。衣緒花に脅され、保険医・佐伊の勧めもあり彼女のフォローをすることになった有葉。彼が目の当たりにするモデルであるるための衣緒花のストイックな生活、彼女に対抗意識を燃やすライバル・ロズィの存在。その複雑な思いを理解しきれず時にはぶつかり合い、すれ違った末に衣緒花をフォローする覚悟を決めるまでがなかなかに波乱万丈でしたけど、その中で育まれた二人の絆がまた様々な費事態を引き起こしそうで、今後がとても楽しみな新シリーズですね。【22下ラノベ投票/9784049146684】
7.怪物中毒 (電撃文庫)
怪物サプリで獣人に変身し、完全監視社会の息苦しさを忘れ自由と匿名を謳歌する「仮面舞踏街」。特殊永続人獣の少年・零士が調薬の魔女・柿葉蛍と出会うオーバードーズ・アクション。相棒の人狼・月と最低限の人権と引きかえに街の掃除屋『害獣駆除』として働く吸吸血鬼の少年・零士が請け負う、轢き逃げケンタウロスの捜索、JKバニー狩り、顕現した都市伝説との死闘。普通に生きることを渇望する零士たちに、車椅子の少女・命や異質な才能を持つ蛍といった印象的なヒロインたちを絡めながら、大人の思惑が渦巻く世界で精一杯生きようとする彼らの物語はとても面白かったです。これは今後の展開も期待できる新シリーズですね。【22下ラノベ投票/9784049145298】
8.手札が多めのビクトリア (MFブックス)
手札が多めのビクトリア 1
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守雨/藤実 なんな KADOKAWA 2022年07月25日頃
ハグル王国の凄腕元工作員だったクロエが、信頼していた上司の裏切りをきっかけに組織から姿を消して、隣国アシュベリー王国の一般市民ビクトリアとして普通の幸せを目指す人生修復物語。入国初日に邂逅する母親に捨てられたノンナ、そして彼女の身元引受人となってくれたジェフリーの存在。ノンナを育てながら研究の助手や語学の家庭教師などで周囲の信頼を得てゆくヴィクトリアの有能っぷりが際立っていて、自らを危険に晒すことも厭わずに窮地に陥った人たちを助けずにはいられない真っ直ぐで毅然としていた彼女が、そのありようから多くの人に慕われているのも分かるような気がしました。新天地での活躍にも期待しています。【22下ラノベ投票/9784046815767】
9.腕を失くした璃々栖 ~明治悪魔祓師異譚~ (角川スニーカー文庫)
第27回スニーカー大賞<金賞>
軍の任務中に心臓を貫かれ致命傷を負った悪魔祓師の神童・皆無が、「七つの大罪」に名を連ねる腕のない悪魔で天使とすら見紛う少女・璃々栖に救われる明治悪魔祓師異譚。悪魔の力と引換えに、璃々栖と一蓮托生の命となった皆無。神戸外国人居留地を舞台に父母を殺されて奪われた祖国を奪還するため、腕を取り戻そうとする璃々栖との束の間のかけがえのない日々。けれど愛に生きる覚悟を決められなかった皆無が、璃々栖を救うために立ち上がる展開はさり気なく配された伏線がじわじわと効いてきて、二転三転する激闘の末に二人の想いが引き寄せたその結末にはぐっと来るものがありました。【22下ラノベ投票/9784041132029】
10.君と紡ぐソネット ~黄昏の数学少女~ (講談社ラノベ文庫)
第12回講談社ラノベ文庫新人賞<優秀賞>受賞作
君と紡ぐソネット 〜黄昏の数学少女〜
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暁社 夕帆/フライ 講談社 2022年10月03日頃
理系なのに数学が赤点の高校三年生の関数馬。憧れる数学の女王・志村有理の勧めで数学の神様がいる神社を訪れた彼が、謎の天才数学少女・環と出会い数学にのめり込んでゆく青春小説。スマホアプリ化した環に鍛えられながら、有理にアプローチするために彼女に課されたミッションをクリアしてゆく数馬。そして彼に興味を持って近づいてきたもう一人の天才数学少女・掛谷圏の真意。めきめきと力をつけて数学にどんどんのめり込んでゆく数馬と、そんな彼に惹かれてゆく有理の恋模様、そして明らかになってゆく圏と環の因縁があって、そんな彼女たちの想いにもしっかりと向き合った物語の結末にはぐっと来るものがありましたね。ここまで自分の好みにどストライクな作品を久しぶりに読みました。 【22下ラノベ投票/9784065293164】