今回は23年1月角川スニーカー文庫・講談社ラノベ文庫・HJ文庫・アーススタールナ、22年12月ファミ通文庫新刊感想まとめです。内訳は角川スニーカー文庫が新作3点、続巻4点、講談社ラノベ文庫が新作2点、HJ文庫が続巻2点、アーススタールナの新作1点の12点になります。どれもおすすめできる作品なので、気になる作品があったらぜひ読んでみて下さい。
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もしも明日、この世界が終わるとしたら (角川スニーカー文庫)
漆原 雪人/ゆさの KADOKAWA 2022年12月28日
かつてこの世界を救った英雄の生まれ変わりとして召喚された大咲空。一年後に終わるとされる世界で、彼を召喚したユーリと過ごす日々を描く終末のボーイ・ミーツ・ガール。一年後に滅びるとされた世界で、世界を救うことを期待されて召喚された空。機能が失われた学園の理事長を務めるクロース、ちょっぴりドジですぐ拗ねて、でもたまに笑顔を見せてくれる少女ユーリとのささやかな日々、学園にやってきたルカとギンとの出会い。そんな中で空に突きつけられる世界と大切にしたいたった一人の女の子のどちらかしか救えない選択、けれど分岐点での答えはいつも一つしかなくて、世界が終わりに向かう中、ささやかな願いを共有する二人がどんな決断をするのか、またこの物語の続きを読んでみたくなりました。
じょっぱれアオモリの星 おらこんな都会いやだ (角川スニーカー文庫)
佐々木 鏡石/福きつね KADOKAWA 2022年12月28日
強烈な訛りで会話が通じず長年所属するギルドをクビになった魔術師オーリン。彼が通訳スキルを持つ美少女レジーナを相棒に東北に向かう異世界アオモリファンタジー。アオモリの強烈な訛りも通訳するスキルで、オーリンが無詠唱魔法を使いこなすツート魔術師だと知りパーティーを組んだレジーナ。興奮するほど訳が分からなくなる津軽弁には苦笑いでしたが、呪術で操られていたフェンリルの謎を解明するため北に向かう途上でのお約束展開や守護竜との熱い激闘もあって、思惑を秘めた北の有力貴族ズンダー大公家との邂逅が彼らにどんな展開をもたらすのか、続巻が気になる新シリーズですね。
Bullets (角川スニーカー文庫)
坂上 秋成/ダイスケリチャード KADOKAWA 2022年12月28日
通学する都内の高校や家の中にも漠然とした居心地の悪さを感じていた少女・佐島ルイ。そんな彼女が同じ高校に転校してきた卯木リョウマと出会う青春小説。夜のほんのひとときだけ、同じ息苦しさを感じていた彼と一緒にいると、不思議と息苦しさが和らぐルイ。このまま二人でいれるなら、灰色のつまんない世界も捨てたもんじゃない、そう思えていた日々を一変させてしまうリョウマが拾ってきたモノ。激変する状況に世界の最深部を探しに行く二人の逃避行、彼女を救うためにリョウマが下した決断があって、そして淡々と綴られてゆくエピローグの先にあった思ってもみなかった結末には救われる思いでした。
お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について6 (角川スニーカー文庫)
桜木桜/clear KADOKAWA 2022年12月28日
価値観や結婚観の違いからわだかまりが生まれる由弦と愛理沙。それでも放課後デートや猫カフェデートをして甘く楽しい時間を過ごす第五弾。予防接種や二人の婚約が恋愛結婚なのか政略結婚なのかといった部分で、どうしても由弦の考え方に納得がいかない愛理沙。別に彼女に強制しているわけでもないのにな…と思ったりしましたけど、一緒にアルバイトすることになったり誕生日やハロウィン、修学旅行などで一緒に過ごす中で、いろいろと面倒なところがあってもとても魅力的な愛理沙にどっぷりハマっていて、彼女が望む落とし所をしっかりと見出してみせた由弦は流石でした（苦笑）
クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった3 (角川スニーカー文庫)
たかた/日向 あずり KADOKAWA 2022年12月28日
クリスマスイブの夜、晴れて恋人同士になった海と真樹。緊張が解け体調を崩してしまった真樹が、海の気遣いで朝凪家でお世話になる第三弾。気がつけばつきっきりの看病を始める海の献身っぷりや、一緒に新年を迎えてこたつで身を寄せ合いながらゲームをして、バレンタインにホワイトデー、そして海の誕生日プレゼントを買うためにアルバイトを始める真樹。付き合い始めてからはすっかり甘えん坊で、些細な事でも心配性で独占欲も感じさせる海の重い愛にニヤニヤしながら読みましたが、そんな彼女の想いをしっかり受け止めて、お互いしか眼中になくて周囲を胸焼けさせる真っ直ぐで甘々な二人が良かったです。夕にもこれから何か変化があるのか、そのあたりにも期待ですね。
転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件6 (角川スニーカー文庫)
雲雀湯/シソ KADOKAWA 2022年12月28日
妹の親友を女の子と意識してしまった隼人。そんなある日、姉が人気モデルMOMOだとバレてしまった一輝が、過去の苦い思い出を再び思い出す第六弾。隼人に可愛く見られたいと日々綺麗になっていく沙紀。変わらない相棒の顔でいつものように隼人を揶揄って笑いかける春希の困惑、そして隼人たちと距離を置こうとする一輝を引き留めた姫子の飾らない素直な言葉。それぞれの思いが垣間見える秋祭りの夜に様々なことが少しずつ変わっていって、自分の思いに素直に向き合うことの難しさが繊細に描かれていましたが、今後どうなるのかいろいろと気になる部分はあるものの、とりあえず過去のわだかまりに囚われていた一輝が、隼人たちの真摯な想いに触れてそれをようやく乗り越えられて良かったです。
ある日、他人の秘密が見えるようになった俺の学園ラブコメ EP2 シスコン兄貴を倒してハッピーエンドを迎えます (角川スニーカー文庫)
ケンノジ/成海 七海 KADOKAWA 2022年12月28日
ラジオリスナーという共通の趣味で一気に高宇治沙彩と距離を縮めた君島灯。しかし今度は一緒に下校しているところを高宇治兄に見咎められる第二弾。テニスで活躍するための名取さんとの秘密特訓。そして沙彩との交流を賭けた高宇治兄とのラジオのネタ勝負。着実に新たな力を身に着けながら、修学旅行などもあったりで人間関係に不器用な沙彩だけでなく、幼馴染の春や快活な名取さんとも距離感が変わってきて面白くなってきましたね。一緒に課題を乗り越えたことで沙彩とは今回でまた一歩前進した感がありますけど、それに残る二人がどう絡むのか続巻が楽しみになってきました。
十五の春と、十六夜の花 -結びたくて結ばれない、ふたつの恋- (講談社ラノベ文庫)
界達 かたる/古弥月 講談社 2022年12月28日頃
ヤンデレ気味な幼馴染・三城紗弥花に手を焼きながら高校生活を送る國枝春季。そんな二人が思わぬ事態に巻き込まれてゆく恋愛伝奇ミステリ。ある日、春季が同級生の千崎優紀にちょっかいをかけられたことをきっかけに、その関係を誤解した挙句、翌朝なぜか二人に分身してしまった紗弥花。両手に花状態で互いに妬み合うに振り回される中、さらに性別が男に変わってしまった優紀。優紀が暮らす寺院の枯れない彼岸花の伝承を絡めながら、れぞれが忘れていた過去の出来事が明らかになるたびに、その構図が二転三転してゆく展開にはドキドキさせられましたが、それらをまとめあげて落とし込んでみせたその結末はなかなか上手かったです。
十二月、君は青いパズルだった (講談社ラノベ文庫)
第11回講談社ラノベ文庫新人賞＜佳作＞
神鍵 裕貴/サコ 講談社 2022年12月28日頃
高校二年生の霧崎陽奈斗の下駄箱に収められていた手紙。浮かれながら向かった屋上で、彼が世界で一番嫌いだという後輩・七草音葉と運命の出会いを果たす青春小説。意図も分からず不信感を募らせる陽奈斗に、強烈に記憶に残る思い出作りに協力して欲しいと告げる音葉。いろいろ付き合わされる中で少しずつ変わる思い、そして明らかになってゆく彼女が直面する事情。かけがえのない思い出を積み重ねても、記憶というパズルのピースがこぼれ落ちていく現実は残酷で、失われても諦めたくない大切な思いがあって、すれ違いながらも追いかけ続けた夢が再び紡いでくれたその結末にはぐっとくるものがありました。
ポンコツ最終兵器は恋を知りたい (ファミ通文庫)
手島 史詞/どぅーゆー KADOKAWA 2022年12月28日頃
遺跡探索を生業とするミコトが、調査で見つけた眠れる美少女サイファー。名前以外の記憶を失っている彼女が、見つけてくれたミコトをマスターと慕ってくれるボーイミーツガール。見たこともない装備と武装を駆使する能力を持ち、失われた知識や感情を学習しながら、人型災害と呼ばれるほどの日常的に不運体質のミコトの危機を次々と救うサイファー。恋に興味を示してミコトを慕うサイファーの可愛らしさが突き抜けていて、破格の戦力と人型災厄のコンビゆえに厄介者扱いされて、それでもともにあることを決意した訳ありな二人のこれからがどうなるのか、またこの続きを読んでみたくなりました。
最強魔法師の隠遁計画 16 (HJ文庫)
イズシロ/ミユキルリア ホビージャパン 2022年12月28日
ダンテとの戦いを終えて、襲撃により崩壊した学院に帰還したアルス。そんな彼のもとに秘密監獄トロイアから意外な人物がやってくる第十六弾。最新鋭のRAWを強奪した二人を掃討するファノンの部隊、脱獄囚との戦いで負傷したテスフィアとアリスにアルスが与える試練、アルスを訪れた意外な人物の正体、そして脱獄との関与が疑われて動揺する旧貴族閥陣営。今回は一連の事件の後始末と、今後に向けた布石という印象でしたけど、テスフィアとアリスがこれからどう変わってゆくのか、再登場して垣間見せたその実力の割には不遇っぷりが際立っていたノワールの境遇も気になるところではあります。
陰キャの僕に罰ゲームで告白してきたはずのギャルが、どう見ても僕にベタ惚れです5 (HJ文庫)
結石/かがちさく ホビージャパン 2022年12月28日
罰ゲームから始まった恋人関係を乗り越えた陽信と七海。二人は改めて恋人関係を再構築しようと、家族・友人にその経緯を話すことを決める第五弾。両親や友人たち、関係者に様々な反応を返されつつも無事に報告を終えた二人。そして標津先輩のバスケットボール試合観戦、七海の友人カップルも交えての大人なナイトプールとデートを重ねてゆく展開で、各方面に報告しに行ったのか惚気を話すために行ったのかよく分からない二人でしたけど（苦笑）、でもしっかり育んできた絆が感じられる二人の関係性があって、最後のサプライズもとても幸せそうで良かったです。
女伯爵アンバーには商才がある！ やっと自由になれたので、再婚なんてお断り (アース・スター ルナ)
守雨/薔薇缶 アース・スターエンターテイメント 2022年12月30日頃
夫が無能で財産を食い潰し、破産寸前になった伯爵家の一人娘アンバー。侍女と家を出た夫との離婚を機に次々と事情を立ち上げるファンタジー。元夫が出した巨額の損失を補填するために、衣料品、エステ、バーなど隠れてこっそり副業をしていたアンバー。軌道に乗りかけたところで陥った思わぬ窮地と、それを救ってくれた美しい画家クリスティアンの提案。お互いにかけがえのない存在となってゆく中で、彼の事情も明らかになっていって、それぞれのやりたいことやあり方を尊重する二人の幸せな関係が、さらなる好循環に繋がってゆくとても素敵な物語でした。
