今年も終わりが近づいてきましたが、年末に向けて今後続巻の発売予定がある作品、最近新刊が発売されてまだ3巻以内の青春小説の中からおすすめの注目作品をピックアップしてみました。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
1.あした、裸足でこい。 (電撃文庫)
卒業式。自らの冴えない高校生活を思い返していた坂本巡が、すっかり別世界の住人になっていた元カノ・二斗千華の失踪をきっかけに、二人が出会った入学式にタイムリープする青春やり直しラブストーリー。高校のピアノで二斗の曲を弾いたことでタイムリープし、過去の出来事を変えることで、未来の出来事を少しずつ変えることができると知る巡。そんな彼が二斗を救うために天文同好会の廃部阻止に動いたり、周囲との関係を変えていったり、最後まで諦めなかったことで辿り着いた意外な結末、未だ謎も多いタイムリープがどんな意味を持つのか、既刊作品の登場人物たちも絡めながら繰り広げられる今後の展開がとても楽しみなシリーズですね。
2.アオハルデビル (電撃文庫)
池田 明季哉/ゆーFOU KADOKAWA 2022年10月07日
うっかりスマホを忘れて夜の高校に忍び込んだ在原有葉。そんな彼が屋上を照らす奇妙な光に気づき、闇夜の中で燃え上がる美少女・伊藤衣緒花と運命の出会いを果たす青春小説。怪異現象の原因は何だったのか…。衣緒花に脅され、保険医・佐伊の勧めもあり彼女のフォローをすることになった有葉。彼が目の当たりにするモデルであるるための衣緒花のストイックな生活、彼女に対抗意識を燃やすライバル・ロズィの存在。その複雑な思いを理解しきれず時にはぶつかり合い、すれ違った末に衣緒花をフォローする覚悟を決めるまでがなかなかに波乱万丈でしたけど、その中で育まれた二人の絆がまた様々な費事態を引き起こしそうで、今後がとても楽しみなシリーズですね。
3.恋人以上のことを、彼女じゃない君と。 (ガガガ文庫)
ブラックな仕事に疲れていたある日、大学時代の元彼女・水瀬糸と再会し飲みに誘う山瀬冬。こういう友達関係もいいなと思っていた矢先、酒の勢いに呑まれてしまう連作短編集。最初こそ密かに意気込んでいたものの、やらかして後悔する冬を疲れた表情で制する糸。社会が強要する正しさや、大人の不自由さに振り回される二人が、一緒にいる時だけ感じられる密かな現実逃避の安息。一時の曖昧で倒錯した虚構の関係は心地よくて、けれど一方でなかなか新たな一歩を踏み出せないこの関係ならではの危うさも垣間見えて、それでもずっと身動きできなくなっていた大切な彼女のために寄り添って向き合う覚悟を決めた冬がカッコ良かったです。二人を観察する人々の視点もなかなか効いていました。
4.クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった (角川スニーカー文庫)
たかた/長部 トム KADOKAWA 2021年12月24日
失敗したはずの自己紹介をきっかけに、ぼっちの前原真樹に初めてできた友だちの朝凪海。金曜日の放課後だけ、こっそり彼女が真樹の家に遊びに来るようになるお友達ラブコメ。『クラスで2番目に可愛い』と噂される朝凪の意外な一面。映画にゲーム、漫画の趣味も合う彼女との楽しいひとときから始まった秘密の関係と、抜群の存在感がある彼女の親友・天海の存在。文化祭の実行委員となってしまった真樹自身の奮闘、同時に朝凪が抱える複雑な想いも明らかになっていって、時にはすれ違いながらも天海と向き合おうとする彼女を応援して、いつの間にか互いにかけがえのない存在になっていることを自覚してゆく二人の距離感が良かったです。彼らがこれからどういう関係になってゆくのか、続巻にも期待したいと思います。
(電撃文庫) 第28回電撃小説大賞＜金賞＞
榛名 千紘/てつぶた KADOKAWA 2022年03月10日
偶然、同じクラスのクール系美少女・皇凛華が彼女の幼馴染の清楚系美少女・椿木麗良を溺愛していることを知ってしまう平凡な高校生・矢代天馬。そんな彼が凛華の恋を応援する三角関係ラブコメ。ふとしたきっかけから素直になれないポンコツな凛華の恋をサポートすることを決意した天馬が、ナンパされていた麗良を救ったことで懐かれてしまう展開で、癒し系に見えて意外な一面を見せる麗良、臆病でなかなか前に踏み出せない凛華の二人を献身的に支える天馬の優しさがなかなか効いていました。少しずつ変わりつつあるこの三角関係の行方が楽しみな期待のシリーズですね。
6.あおとさくら (GA文庫)
笑い方を忘れてしまい、なかなかクラスになじめない高校生・藤枝蒼。居場所もない彼が放課後通い詰めていた地元の図書館で、明るく屈託がなくよく笑う少女・日高咲良と出会う青春小説。蒼と対照的なタイプで共通の話題すらない、通う高校も違えば家も知らない、接点は放課後の図書館で出会うだけの咲良との関係。けれどいつの間にか一緒にいることが当たり前になって、惹かれてゆくのを自覚してゆく中での急展開でしたけど、大切な人のために不器用でも奔走することを厭わない、懸命な蒼の真っ直ぐで心揺さぶる想いが引き寄せてみせたその結末にはぐっと来るものがありました。
7.見上げるには近すぎる、離れてくれない高瀬さん (GA文庫)
神田暁一郎/たけの このよう。 SBクリエイティブ 2022年09月15日頃
低身長を理由に、かつて好きだった女の子からフラれた苦いトラウマを抱える下野水希。彼と何かと気にかける身長差20センチのクラスの人気者・高瀬菜央の青春ラブコメ。身長152cmにすっかり自信を失い、性格もひねくれてしまった水希。周囲を遠ざけて孤立しがちな彼を気にかけ、何かと構って傍にいると劣等感を感じさせてしまう菜央。どこか苦手意識を持ってしまう彼女の見た目とは違う子供っぽい一面や、人のために一生懸命なその優しさに気づいてゆく水希の心境の変化があって、関係を進めるにはまだまだ不器用で奥手な二人のこれからがとても楽しみな期待のシリーズですね。
8.ママ友と育てるラブコメ（ガガガ文庫）
3歳の妹・想夜歌が大好きなシスコン高校生・昏本響汰。ある日妹の入園式に参列した響汰は、弟・郁を溺愛する同じクラスの孤高の美少女・暁山澄と出会うママ友ラブコメ。弟の前では学校では見せないブラコンっぷりを炸裂させるポンコツお姉ちゃんの澄の素顔。放課後はお互い世話をする妹・弟繋がりで密かにママ友交流が増えて、妹・弟も呆れる溺愛っぷりを響汰と競うような展開には苦笑いでしたけど、一方で響汰の家事が得意な一面や、不器用だけれど努力し続ける澄の姿を知ったりもして、だからこそ彼女の窮地を知ってフォローに動かずにはいられない、そんな二人の関係がこれからどうかわってゆくのか続巻が楽しみな期待のシリーズですね。
9.俺にトラウマを与えた女子達がチラチラ見てくるけど、残念ですが手遅れです(オーバーラップ文庫)
御堂ユラギ/緜 オーバーラップ 2022年04月22日
女運が悪く昔からトラブルに巻き込まれてきた九重雪兎。彼をなぜかトラウマを与えたヒロインたちが気にかける手遅れから始まる勘違いラブコメ。母親に疎まれ姉には嫌われ、両想いだと思っていた幼馴染には告白前にフラれてしまい、その傷心中に嘘告までされた絶望の過去。しかしそれは間の悪さや勘違いなどが積み重なった結果で、無意識のうちにいろいろ女の子を引き寄せてしまう彼の周囲は、ここからますますカオスな状況が加速していって、それがひとつの転機をきっかけに彼の見えている景色が劇的に変わってゆく鮮烈な結末はなかなか面白かったです。ここからどんな展開が待っているのか続巻に期待のシリーズですね。
10.マッチングアプリで元恋人と再会した。 (角川スニーカー文庫)
ナナシまる/秋乃 える KADOKAWA 2022年07月01日
彼女と別れて一年の大学生・藤ヶ谷翔。友人の勧めで始めたマッチングアプリで会話が弾む相手と会うことになり、疎遠になっていた元カノ・高宮光とまさかの再会を果たす青春ラブコメ。98%と相性抜群の相手はすれ違いの末に別れた元カノで、素直に向き合えずあの頃のように口喧嘩しながらも、心なしか滲む後悔と未練。そしてもう一人のマッチング相手・初音心との急接近。人見知りを解消したい健気で頑張り屋な心にいろいろ付き合いながら、けれどどうしようもない想いが向いている先は明らかだったわけですけど、一方で心にも密かに積み重ねてきたかけがえのない思いがあって、そんな簡単には終わらないことを予感させてくれるこれからの展開が楽しみなシリーズですね。
11.友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。 (電撃文庫)
真代屋 秀晃/みすみ KADOKAWA 2022年02月10日
トラウマから恋愛よりも友情を育む青春を目指す高校生・古賀純也。しかし仲良し男女五人グループ内の成嶋夜瑠が隠していた本音を知って巻き込まれてゆく青春群像恋愛劇。せめてもうしばらくは友情を大切にしたいと夏休みを満喫しようと計画を立てる純也たち。一方で一人暮らしをする彼の隣に引っ越してきて彼にだけは本音で話す夜瑠には、恋愛至上主義と密かに抱える過去があって、事あるごとに対立したりいがみ合ったりしていた二人にも確かに育まれていた絆があって、これまで知らなかったこそ自覚してしまった想いは意識せずにはいられないですね…彼女からの提案は成立しうるのか、そして仲良しグループは維持し続けることができるのか、それぞれの複雑な想いも絡み合う今後が楽しみなシリーズですね。
12.僕らは『読み』を間違える (角川スニーカー文庫)
第27回スニーカー大賞＜銀賞＞
消しゴムに書かれていた『あなたのことが好きです』という言葉から、憧れの文学少女・若宮雅に告白して見事玉砕した竹久優真。高校に入学した春、その勘違いが再び動き出す青春ミステリ。入学式の日の太陽少女・宗像瀬奈との運命的な出会い、瀬奈の親友で優真の親友・大我を付き合うことになった笹葉更紗、優真が所属する文芸部の部長・葵栞と優真の友人・鳩山遥斗。文学作品も絡めながら描かれてゆく彼らの人間模様は、思っていた以上に狭い世界でいろいろと繋がっていて、勘違いがあったりこじらせて、たびたび迷走する彼らの関係がこれからどう変わってゆくのか、今後がとても楽しみな期待のシリーズですね。
13.メンヘラが愛妻エプロンに着替えたら (角川スニーカー文庫)
第27回スニーカー大賞＜銀賞＞
大学で地雷系美少女として有名な琴坂静音と思わぬ形で遭遇した愛垣晋助。意外な一面を知った晋助に口止め代わりとして通い妻契約を提案する半同棲ラブコメ。これまでメンヘラ女子とのトラブルが続いて女性に臆病だった晋助。逃げ場のない彼女に居場所を提供してくれた恩を返すべく、献身的に通う静音が垣間見せる複雑な背景。渋々認めた関係が少しずつ変わってゆく一方で、優しすぎる彼を心配する幼馴染の存在もあって、二人で積み重ねてきた定義できない繊細な関係も拗れかけましたけど、隠しきれない重さや共依存の気配を感じつつも、それでも一生懸命に向き合い一緒に乗り越える覚悟を決めた彼らの物語をまた読んでみたいと思いました。
14.Vのガワの裏ガワ1 (MF文庫J)
第17回MF文庫Jライトノベル新人賞＜佳作＞
プロの高校生神絵師として活躍するアトリエこと亜鳥千景。そんな彼が孤高の美少女・海々瀬果澪から「私のママになってくれませんか？」とお願いされる青春ラブコメ。果澪の熱意を受け止めて、同じ高校生絵師の山城桐紗、自堕落な隣人で大人気個人VTuberの仁愛を仲間に、VTuberプロジェクトを発足する千景。ガワを被ってから瞬く間に駆け上がってゆくミオには秘めた決意があって、かけがえのない時間を積み重ねてきた大切な仲間たちとぶつかり合い、自身がこれまで築き上げてきた大切なものがあることにようやく気づいた果澪と、彼女を支える千鳥たちのこれからに改めて期待したくなるシリーズですね。
15.カノジョの姉は……変わってしまった初恋の人 (GA文庫)
機村械人/ハム SBクリエイティブ 2022年12月15日頃
初めてのカノジョができた高校生・大嶋鷗。初心で内気で清楚な同級生、宍戸向日葵との幸せな日々が始まると思った矢先に、かつて憧れ恋焦がれた初恋の人と再会してしまう青春小説。親同士が再婚して向日葵と義姉妹になっていた梅雨と数年ぶりの再会。明るく快活だった昔の面影がすっかり失われ、退廃的で荒んだ雰囲気を漂わせる彼女を目の当たりにして戸惑いながら放っておけない鷗。タイミングが悪かったといえばそれまでですが、何とも複雑な構図の三角関係になりそうですね…。でもここまで来るともうヒロインたちが想いを寄せる主人公の覚悟次第なのかなと感じました。どう転んでも波乱は必至の続巻が気になる期待のシリーズです。
16.彼女が先輩にNTRれたので、先輩の彼女をNTRます(角川スニーカー文庫)
震電 みひろ/加川 壱互 KADOKAWA 2021年12月01日
彼女の浮気を知ってしまい、ショックからNTR男の彼女で憧れの先輩でもあった桜島燈子に浮気を持ちかける一色優。恋人に裏切られた二人が聖夜に仕返しを狙うリベンジラブコメ。意外と冷静で浮気が事実と見極めた上で、計画的で強烈な仕返しを優に提案する燈子。そのために優を女子ウケの良い男に仕立て上げ始めて、彼女を優が意識してゆく展開でしたけど、グズっぷりが際立っていた浮気コンビの胸糞感は抜群で、期待させた浮気コンビを突き落とすその決着はなかなか壮絶で、冷静な燈子先輩が上手く流れをコントロールしていた分、タイトルから受ける印象とはやや違う感もありましたけど、彼女は彼女でなかなか手強そうですね（苦笑）落とし前をつけた二人のこれからに期待したいと思います。
17.呪われて、純愛。(電撃文庫)
交通事故の影響で記憶喪失の湖西廻の前に現れた、恋人だったと主張する清純で素朴な美少女・丹沢白雪と、内緒で本当の恋人だったと主張する魔性の魅力を持つ美少女・才川魔子の秘密の三角関係を描く青春小説。家族を事故で失って魔子の家に引き取られ、彼女の親友・白雪を紹介された三人の関係。記憶が失われた期間に廻の周囲で一体何があったのか。彼の記憶が徐々に戻ることで明らかになってゆく白雪との間に育まれていた絆、そして意味深な言動を繰り返して彼を振り回す魔子との間にあった何とも苦い過去。お互いにかけがえのない存在による三角関係だからこそ、それぞれの思いが複雑に絡み合っていて、彼らの今後がどうなるのか結末がとても気になるシリーズです。
18.黒聖女様に溺愛されるようになった俺も彼女を溺愛している1(HJ文庫)
ときたま/秋乃える ホビージャパン 2022年11月01日
一人暮らしの高校生・月代深月が隣の部屋に住んでいても関係ないと思っていた学園の聖女・一ノ瀬亜弥。彼女が階段から足を滑らせたところを救って始まる青春ラブコメ。下敷きになって負傷した深月に、お詫びとして治るまでお世話することを主張する亜弥。家事が壊滅的な深月に呆れて、家事万能で腹黒っぷりも垣間見せながら、料理を作って持ってきてくれたり、掃除を手伝ってくれたりする中で知ってゆく、人気者だけれど実は努力家で不器用な彼女との日々。そんな彼女の窮地を放っておけない深月の優しさがじわじわ効いてくる感じで良かったですけど、少しずつ距離感も思いも変わってゆく二人のこれからがとても楽しみなシリーズですね。
19.一生働きたくない俺が、クラスメイトの大人気アイドルに懐かれたら (オーバーラップ文庫)
岸本和葉/みわべさくら オーバーラップ 2022年02月25日頃
同級生で大人気アイドル乙咲玲が空腹で倒れかけているのを発見した専業主夫を目指す高校生・志藤凛太郎が、手料理を振る舞って懐かれる半同棲ラブコメ。凛太郎の美味しいご飯に魅せられてしまい、毎日食べたくて契約を持ちかける玲。すっかり懐いた腹ペコアイドルに凛太郎が抱いた懸念が思わぬ展開に繋がって、彼女の仲間たちに紹介される一方で、凛太郎が専業主婦を目指す理由だったり、玲を巡る複雑な事情も明らかになっていきましたけど、彼女の頑張る姿を知ったり、意外な繋がりを知って少しずつ変わってゆく凛太郎の心境があって、育まれてゆく玲との絆に今後の期待が高まるシリーズですね。
20.百合の間に挟まれたわたしが、勢いで二股してしまった話 (オーバーラップ文庫)
としぞう/椎名くろ オーバーラップ 2021年11月25日頃
平凡な女子高生・間四葉が、学園の尊き百合・百瀬由那と合羽凜花の間に挟まるだけでなく、両方に告白され、柔不断が災いして二人と同時に付き合うガールズラブコメ。お姫様みたいに可憐な百瀬由那と、王子様と見紛うほどに凜々しい合羽凜花。二人と共に過ごすうちに仲良くなった四葉がそれぞれに告白されてしまい、それが嬉しくて二人とも好きすぎて、幸せにしたいがゆえにこっそり両方と付き合ってしまう展開には苦笑いでしたけど、ちょっと天然入っている素直で彼女たちを特別扱いしない四葉だからこそ、由那と凜花も惹かれたんですよね。ドタバタする四葉と彼女たちの関係がほのぼのした雰囲気でなかなか良かったです。
21.喋らない来栖さん、心の中はスキでいっぱい。(角川スニーカー文庫)
紫ユウ/ただの ゆきこ KADOKAWA 2022年06月01日
無口で不器用ゆえに上手く馴染めずにいた転校生・来栖瑠璃菜。彼女が他人の心の声が聞こえる体質で、トラブル無縁生活のためにそつなく立ち回る鏑木律と出会う青春ラブコメ。一見世渡り上手な彼に憧れの眼差しを向けて、彼を師と仰ぎ律のようになりたいと願う来栖。周囲からは美少女だけれど無愛想、近寄りがたいと見える彼女も、思いがバレバレの律の前では構ってほしい小動物系の可愛らしさで、彼が周囲に愛される人気者であるがゆえの遠慮やすれ違いもありましたけど、だからこそこれまで育んできた絆を自覚したもどかしい二人が、これからどんな関係を積み重ねてゆくのか、ぜひまた読んでみたいと思いました。
22.冷たい孤高の転校生は放課後、合鍵回して甘デレる。 (GA文庫)
千羽十訊/ミュシャ SBクリエイティブ 2022年08月16日頃
一人暮らしの祖母を案じて近くで一人暮らしをする高校生・香良洲空也。他者に無関心で常に不干渉な彼の隣の席に転校生ファティマ・クレイがやってくる青春小説。容姿端麗だが、終始無言で無愛想なファティマ。実は祖母の養子になっていた彼女となし崩し的に始まる半同棲生活。自分が自然でいられる関係に、お互いにかけがえのない存在になってゆくのに時間は掛からなくて、けれど不器用な人間嫌い同士ゆえに踏み込めなくて、そんな二人だからこそもどかしさからすれ違いも起きましたけど、向き合って二人で乗り越えた結末には苦笑いしつつもぐっと来るものがありましたね。
23.迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について (ダッシュエックス文庫)
ネコクロ/緑川 葉 集英社 2022年02月25日
イギリスから留学生として青柳明人のクラスに転校してきたシャーロット。迷子だった彼女の妹・エマを保護したことをきっかけにその日常が変わってゆくお隣ラブコメ。姉妹がお隣に住んでいることが判明し、エマがすっかり明人に懐いて毎日のように部屋へ遊びに来る姉妹。天真爛漫な幼女の傍若無人に付き合ううちに彼女たちとの仲が深まっていって、妹に嫉妬したり意外と子供っぽいところを見せるシャーロットとの変わってゆく距離感が微笑まかったです。なぜ彼が一人暮らししているのか、彼女たち姉妹の境遇の背景も気になるところですけど、そのあたりは徐々に明らかになっていくんですかね。なかなかエマが強敵ですけど（苦笑）、二人の関係もまだまだこれからなので今後に期待しています。
24.優しい嘘と、かりそめの君 (電撃文庫)
浅白 深也/あろあ KADOKAWA 2022年12月09日
入学直後に誤解から停学処分を受けた高校1年の藤城遠也。ひとりぼっちの高校生活をすごす中、旧校舎で美人の先輩・夕凪茜と出会う青春小説。停学明けの学校では、極悪不良という噂がたっており、クラスメイトも誰も目すら合わせてくれない日々。そんな孤独だった彼が旧校舎で茜と交流を深めるうちに知る、虚像の自分が現れた日を境に、本当の茜が誰からも認識されなくなってしまった孤独。そんな彼女を何とか助けたい藤城の孤軍奮闘は、その境遇ゆえに空回りしてしまうなかなか厳しい状況でしたけど、彼の不器用だけれど真摯な想いに心揺さぶられないはずもなくて、諦めず愚直に虚像の矛盾に迫り続ける遠也が引き寄せた結末には救われる思いでした。
25.弥生ちゃんは秘密を隠せない (ガガガ文庫)
美人だと学内で評判だけれど、いつも一人で無愛想な木之下弥生。密かにサイコメトリー能力を持つ同級生の深瀬皐月は、ある日彼女の意外な心の声を聞いてしまう青春ラブコメディ。彼女の想いと正反対な態度のギャップに、どう接したらいいのか戸惑う皐月がうっかり聞いてしまう、弥生が抱えるもっと大きな秘密。いろいろと悩める弥生と縁が生まれて、思い切って彼女に声を掛けてゆく皐月に、不器用でなかなか素直になれない弥生が可愛かったですね。そんな彼女にしっかりと向き合った皐月の頑張りで、ようやく一歩前進した感もあった二人の関係でしたけど、どうも一波乱ありそうな続巻に期待のシリーズですね。
26.天使な幼なじみたちと過ごす10000日の花嫁デイズ (電撃文庫)
五十嵐 雄策/たん旦 KADOKAWA 2022年12月09日
三人の幼馴染と出会って10000日。春野啓介と結婚することになった幼馴染は一体誰なのか…。年下・年上・同い年と三人の幼馴染それぞれと思い出を積み重ねゆく青春ラブコメ。子どもの頃から大人になるまでずっと一緒に過ごした実の妹以上に大切な八歳年下の花織。小中高大から就職先まで僕と一緒で、困った時は力になってくれる頼れる幼馴染・舞花。子供の頃、家出した時に助けてくれた生活力皆無のポンコツお姉さん和花菜。基本スペックはなかなか高そうなのに、妹のような存在の花織を溺愛するあまり、他のヒロンたちには鈍感キャラになっていた啓介と幼馴染たちという構図でしたけど、最後のあれはどういう意味だったのか…これは続きが気になりますね。
27.週末同じテント、先輩が近すぎて今夜も寝れない。 (GA文庫)
蒼機 純/おやずり SBクリエイティブ 2022年10月15日頃
渋々来ていた恒例の家族キャンプで、自他共に認めるインドア派の黒山香月に絡んできた四海道文香。学校一の美人だけれど、近寄りがたいことで有名な先輩と始めるキャンプ生活。最悪の第一印象で始まった二人の関係が、図書委員として文香のリクエストした本を推したことで感謝され、彼女に強引に誘われ急遽週末二人でキャンプをすることになった香月。一緒にテントを設営したりご飯を作る意外な楽しさに触れて、文香の意外な素顔も知って楽しみになってゆく週末のキャンプ生活。文香の師匠・飛鳥とも知り合って交流が深まる中、思わぬ形ですれ違う展開にはやきもきさせられましたけど、文香ともう一度キャンプをするために奔走したその結末はなかなか良かったですね。
28.ラブコメ漫画に入ってしまったので、推しの負けヒロインを全力で幸せにする(角川スニーカー文庫)
shiryu/バラ KADOKAWA 2022年02月01日
事故でラブコメ漫画『おじょじゃま』の友人キャラ久村司に転生した主人公。推しの負けヒロイン嶋田聖を全力で幸せにするために奔走する青春ラブコメ。聖ちゃんに愛を伝えられたなら何だっていいと、訳もわからないままいきなり眼の前の聖に思いを伝えてしまった久村。そんな突然の告白に動揺する聖がなかなか可愛かったですけど、友人の三角関係をフォローするために二人一緒に監視デートをこなす中で絆を深めつつ、物語としての流動性を主人公キャラ側の三角関係に置いたことで、その初々しい関係を安心して楽しめる展開は何気にポイントが高かったです。三角関係も二人のこれからも楽しみなシリーズですね。
29.負けヒロインと俺が付き合っていると周りから勘違いされ、幼馴染みと修羅場になった (オーバーラップ文庫)
ネコクロ/piyopoyo オーバーラップ 2022年09月20日
下校時に高校二大美少女の一人・秋実真凛が振られる場面を目撃した葉桜陽。彼が失恋から立ち直る手助けを提案する青春小説。真凛を振った春喜の彼女が、陽と過去に因縁ある幼馴染の根本佳純という複雑な構図。真凛の表情に思うところがあった陽が気分転換に付き合う中で少しずつ変わってゆく彼女の心境、そして校内で陽と真凛が付き合っているという噂になぜかイライラを募らせてゆく佳純。疎遠だったはずの佳純の急接近に真凛が対抗して、明らかになってゆく複雑に絡み合うごじらせた関係に巻き込まれる展開でしたけど、ぶつかり合って状況も整理された彼女たちとの関係がこれからどう変わってゆくのか、今後の展開に期待のシリーズですね。
30.親友歴五年、今さら君に惚れたなんて言えない (角川スニーカー文庫)
三上 こた/垂狼 KADOKAWA 2022年09月30日
小学校からの親友だった西園寺碧。数週間ぶりに再会した高校の入学式の朝、彼女の美少女ぶりに改めて一目惚れしてしまった巳城陸の両片思い青春ラブコメ。昔からソフトボール一筋で、野球部だった陸と趣味も合い、いつでもどこでも一緒の気のおけない親友関係になっていたがゆえに、なかなか関係を変えるアクションを起こせない陸。一方、密かに陸に好意を寄せていた碧も、そんな心情の変化に気付くわけもなく、それぞれが仕掛けて空回りしたり、絶好の機会に自爆する展開には頭を抱えたくなりましたけど、決定的なすれ違いに正直な思いで答えた二人の距離はぐっと近づいた…ものの突っ込みたくなるような結末で、これは道のりが遠そうですね（苦笑）
