少し前から旧コバルト系作家さんがオレンジ文庫でぽつぽつファンタジーを出すようになっていたんですが、最近はファンタジー作品がぐぐっと増えてきて、このあたりのジャンルが勢いを増してきています。2月の新作も粒ぞろいで、これはもうおすすめのまとめを作るしかない!ということで今回本記事を作成しました。なお中華風ファンタジーについてははまた別に紹介の機会があると思うので、それを除いたセレクトになっています。 気になる本があったらぜひ読んでみて下さい。
※3/11(金)22時半からTwitterで作品紹介スペース開催します。↓
【廃墟シリーズ】
※各作品タイトルのリンクはBookWalkerページに飛びます。
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ベアトリス、お前は廃墟の鍵を持つ王女(集英社オレンジ文庫)
ベアトリス、お前は廃墟の鍵を持つ王女
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仲村 つばき/藤ヶ咲 集英社 2020年08月20日
王族による共同統治が行われる国イルバス。王宮を離れ北方辺境のリルベクで趣味の工業生産に明け暮れる王女ベアトリスが、周辺国の情勢が悪化により政治的決断を迫られる激動のヒストリカルロマン。尊大な兄アルバートと狡猾な弟サミュエルから距離を置くベアトリスが抱える秘密と、彼女を支え続ける側近のギャレット。事態が緊迫する中で駆け引きを続ける兄弟に振り回されるベアトリスでしたけど、不器用な彼女とギャレットの葛藤と繊細な距離感が効いていて、覚悟を決めた彼女たちが向き合った末に取り戻した絆にはぐっと来るものがありましたね。
【シリーズ続刊】
王杖よ、星すら見えない廃墟で踊れ(集英社オレンジ文庫)
クローディア、お前は廃墟を彷徨う暗闇の王妃(集英社オレンジ文庫)
神童マノリト、お前は廃墟に座する常春の王(集英社オレンジ文庫)
廃墟の片隅で春の詩を歌え(集英社オレンジ文庫)
廃墟の片隅で春の詩を歌え 王女の帰還
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仲村 つばき/藤ヶ咲 集英社 2021年01月20日
革命により王政が倒れた国・イルバス。最北の辺境に建つ『廃墟の塔』に幽閉されていた前国王三姉妹の末王女アデールが、姉王女ジルダの命を受けたエタンに手引され脱出を図るファンタジー。アデールを救い出したジルダの打算。そんな彼女と関係があり指導役となったエタンと、女王として凱旋したジルダと共に国に戻ったアデールにもたらされるグレンとの結婚。ジルダと戻ってきた次王女ミリアムが対立する不穏な構図の中で、不器用なグレンとの関係に向き合い、本来の姿を少しずつ取り戻してゆくアデールがとても楽しみなシリーズですね。全2巻。
王女の遺言(集英社オレンジ文庫)
王女の遺言 1 ガーランド王国秘話
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久賀 理世/ねぎしきょうこ 集英社 2021年01月20日
政略結婚で異国に嫁ぐことが定められた王女アレクシアと、驚くほどそっくりな顔をした少女ディアナとの一度きりの邂逅。身分も境遇も正反対の二人が、運命のいたずらに翻弄されてゆく物語。隣国の王太子との政略結婚に向かう道中の船上で襲われ、苦難続きでも決して諦めないアレクシア。いざという時の王女の身代わりとして乗船していたディアナの決意。次期王位を巡る複雑な思惑も絡めながら物語が動き出して、二人がどうなってしまうのか気になる結末でしたけど、アレクシアの方は献身的な護衛官ガイウスの頑張りに期待したくなるシリーズですね。全4巻。
リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音(集英社オレンジ文庫)
リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音
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瑚池 ことり/六七質 集英社 2019年05月17日頃
兜にある命石を砕いて勝敗を競う戦闘競技会が国々の命運を決する世界。優秀な騎士を輩出する村で弓しか扱えず周囲にバカにされてきた少女・ニナを、地方競技会を見たという騎士リヒトが騎士団へ勧誘するファンタジー。優秀な兄の片目を事故で失わせてしまい、自身も非力で自信喪失気味なニナの弓に希望を見出したリヒト。勧誘先がまさかの国家騎士団で最初は怯えて逃げ出しそうになりながらも、自分を認めてくれた大切な人たちのため「赤い猛禽」に立ち向かう構図はとても分かりやすいですが、最後まで期待にしっかり応えてくれた素敵な物語でした。現在7巻まで刊行。
聖女失格(集英社オレンジ文庫)
永瀬 さらさ/神澤 葉 集英社 2022年02月18日
百年に一度、滅びの未来を回避するために行われる皇帝選。初代聖女の末裔ながら何の能力も持たず、家族や領民に虐げられるシルヴィアが、密かに家を飛び出して謎めいたルルカと運命の出会いを果たすファンタジー。最初は虐げられるのが当たり前過ぎて表情筋も死んでいたシルヴィアが、徐々に感情を取り戻し、ルルカとその従魔スレヴィに鍛えられて見出してゆく自らの力。ストーリーはシリアスベースながらどこかコミカルで、ルルカと誓約して参加した皇帝選で出会うロゼやマリアンヌもいい感じに効いていて、何より再会した実妹の天才聖女プリメラと元婚約者のジャスワント皇子がなかなかあれでしたけど、仕切り直しとなった皇帝選やルルカとの関係の行方がとても楽しみな新シリーズですね。
穢れの森の魔女 赤の王女の初恋(集英社オレンジ文庫)
穢れの森の魔女 赤の王女の初恋
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山本 瑤/佐々米 集英社 2022年02月18日
レイトリン王国の王女として生まれながら、理由あって森で育てられていた赤毛の少女・ミア。16歳の誕生日を目前に母である「氷の女王」カイラに呼び出され、運命が動き出すファンタジー。自らが助けた幼馴染の少年キリアンとともに、王城とは縁のない自然児のような生活をしていたミアを待ち受ける残酷な運命と、隣国の王子・エドワードとの初めての恋。誕生日に祝福と呪いを贈られたミアが過酷で数奇な運命に振り回され、呪いによって思い合っているのにすれ違ってしまう二人が何とも切なかったですが、青天の霹靂とも言える急展開から激しい試練に灼かれて、それでも諦めない彼女にどういう運命が待ち受けるのか、今後に期待の新シリーズですね。22年3月に2巻目刊行予定。
竜の国の魔導書(集英社オレンジ文庫)
森 りん/庄屋 集英社 2022年02月18日
突然婚約者に裏切られて、家にも帰れず人目を忍んで王立図書館でひっそりと働いていた名門貴族の娘エリカ。ある日図書館で本を探す魔法使いミルチャと出会い、いわくつきの古い本に呪われてしまうファンタジー。彼が探す魔導書「オルネア手稿」絡みの「竜化の呪い」にかかってしまったエリカ。傷心時代に苦労して意外とたくましい行動派になっていた彼女が、呪いを解くためにミルチャと共にオルネア手稿探しと犯人捜しをする中で、因縁の元婚約者との再会や様々なことが繋がってゆく展開で、明らかになってゆくミルチャのこと、そして行動を共にするうちに育まれてゆく絆があって、二人で力を併せて窮地を乗り越えてみせたその結末はなかなか良かったですね。
六花城の嘘つきな客人(集英社オレンジ文庫)
六花城の嘘つきな客人
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白洲 梓/SNC 集英社 2021年12月17日
いくつもの浮名を流し王都一の色男と噂されるシリル。子爵家の三男で居場所のなくなった彼が、一人娘の結婚相手を選ぶため貴公子たちを招待している北の大領主ネージュ家の六花城に誘われて同行する物語。借金をして父親に実家を追い出され居場所がなくなったシリルと、男装して男として振る舞うブランシュの運命の出会い。期せずして知ってしまういくつかの秘めた想い、そして友としてブランシュと意気投合するシリルがいて、真摯に向き合おうとして誤解からすれ違う皮肉な展開は切なかったですけど、心を入れ替えて変わろうとするシリルの成長、そして変わらなかった不器用な思いの先にあった彼ららしい結末がとても素敵な物語でした。
青の女公(集英社オレンジ文庫)
喜咲 冬子/月子 集英社 2021年11月19日
北方領主の父を冤罪で亡くし、絶望に心が壊れた家族を人質にとられ下級女官として王宮で働くリディエ。婚姻関係が破綻しているスキュイラ王女と婿ヴァシルの仲を取り持ち世継ぎ誕生の後押しを命じられるファンタジー。平穏に任期を終え故郷に帰りたいがためにヴァシルに協力するリディエと、思惑に反するその行動に目を付けるスキュイラ。それを起因として国を揺るがす動乱へと繋がり、運命が大きく変わってゆくがリディエが紆余曲折の末に辿り着いた立場と、彼女が直面する構図は何とも皮肉でしたけど、複雑な葛藤を抱えながらも自分のなすべきことを見失わず、しっかりと向き合って決着をつけてみせたその覚悟と結末にはぐっと来るものがありました。
双子騎士物語 四花雨と飛竜舞う空(集英社オレンジ文庫)
双子騎士物語 四花雨と飛竜舞う空
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せひら あやみ/細居 美恵子 集英社 2021年11月19日
種々の悪魔が暗い翳を落とす帝政ドラゴニアで、大悪魔「顔狩り」によって一夜にして故郷ロカや家族、自分の顔さえも奪われた少女騎士フィアが、仇敵への復讐を誓うファンタジー。双子の兄フィンの名を名乗り、彼が受け継ぐはずだった竜骨剣を背負い、当代最強の竜騎士ヴァルを師と仰ぎながら、魔術屋のヒューと共に大悪魔を討伐して自分自身を取り戻そうとするフィア。積み重ねられてゆく回想によって、徐々に明らかになってゆく故郷襲撃の真相にはやはりと思いましたが、直面する過酷な運命にも逃げずに向き合い、見事乗り越えてみせたフィアの覚悟がなかなか印象的な物語でした。
水の剣と砂漠の海 アルテニア戦記(集英社オレンジ文庫)
水の剣と砂漠の海 アルテニア戦記
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森 りん/遠田 志帆 集英社 2021年10月20日
未曾有の戦争で壊滅的打撃を受けた世界。特異な外見で虐げられながら生きるシリンが、機械化された義手を持つエニシテと出会い、水の剣をめぐる運命が動き出すボーイミーツガールファンタジー。生まれ育った一族を滅ぼした帝国の少佐ジーマに唯一人救われ、彼を慕いながら神殿で育ったシリン。そんな彼女の転機となった、故郷に水を取り戻すため水の剣を盗もうとした青年・エニシテとの出会い。すれ違いからエニシテと逃亡する中で、共に旅する二人の間に確かに育まれてゆく想いがあって、今まで知らなかった多くのことを見聞した彼女と、恩人だったジーマとの不器用な関係には切なくなりましたけど、その未来に希望を見出そうとする結末にはぐっと来るものがありました。
愛を綴る(集英社オレンジ文庫)
森 りん/夢咲 ミル 集英社 2020年01月17日
父親がおらず厳しく貧しい苦境にありながら、明るく清らかに生きてきた天涯孤独な少女フェイス。ファーナム侯爵のメイドとして働き始めた彼女が森で迷い、情熱的な青年ルークと運命の出会いを果たす物語。字を読むことも書くこともできなかったフェイスが、文字の手ほどきを受けながらルークとやり取りを交わす日々と、明らかになってゆくルークの正体、身分違いの二人が直面する悲劇。暗転してからの二転三転する展開は勢いがあって、生い立ちや身分が違うがゆえの温度差も感じましたが、最後まで愛を貫いた先にあった結末はなかなか良かったです。
平安あや解き草紙(集英社オレンジ文庫)
平安あや解き草紙 〜その姫、後宮にて天職を知る〜
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小田 菜摘/シライシ ユウコ 集英社 2019年03月20日頃
東宮への入内話が立ち消えになり、婚期を逃したまま実家に居座っている左大臣の娘・藤原伊子。そんな彼女に今は亡き東宮の息子である今上帝が入内を希望してくる平安お仕事ミステリー。十年前に別れた恋人・嵩那との間にあった誤解、そして伊子が初恋の人だったという今上帝という何とも複雑な距離感の関係も交えつつ、帝の熱烈な要請によって尚侍として入った年相応にこなれた感のある伊予が好みで、嵩那とも協力しながら後宮で起こる事件を解決してゆく展開は面白かったです。恋の行方も気になるその後のお話がまた読めたらいいなと思いました。全8巻
掌侍・大江コウ子の宮中事件簿(集英社オレンジ文庫)
掌侍・大江コウ子の宮中事件簿
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小田 菜摘/ペキォ 集英社 2021年12月17日
自分の食い扶持は自分で稼ぐことを心情とする内裏女房として働く大江荇子。出世は望まず問題も起こさず、ただ定年退職を目指すはずの女房が次々と事件に巻き込まれてゆく平安宮中事件簿。雀殺しの真相、和歌を書写するために渡された汚された紙、対立する中宮と女御間の引き抜き工作、明らかになってゆく帝の意外な想い。平和に過ごしたいのに次々と事件に巻き込まれてしまう荇子も大変ですが、解決すればするほどドツボにハマってゆく展開はなかなかシビアで、帝の覚えもめでたい受領の息子・征礼との幼馴染関係も今後が気になる新シリーズですね。
神招きの庭(集英社オレンジ文庫)
奥乃 桜子/宵 マチ 集英社 2020年05月20日
豊穣と繁栄を招く反面、ひとたび荒ぶれば恐ろしい災厄を国にもたらす神々を招きもたらす兜坂国の斎庭。親友の謎の死を探るため、地方の郡領の娘・綾芽が上京する和風ファンタジー。偶然、荒ぶる女神を鎮めてみせ、王弟の二藍に斎庭の女官として取り立てられる綾芽。少しずつ育まれてゆく二藍との信頼関係と、明らかになってゆく親友・那緒の死の真相、そして国の存亡を揺るがす危機。誰を信じればいいのかどうすべきか、ギリギリの駆け引きの先にあった関係は何とも複雑でしたけど、あの二人ならきっと乗り越えて幸せを掴んでくれると信じています。現在5巻まで刊行。