今回は6月ガガガブックスf・ガガガ文庫・GCN文庫・ハヤカワ文庫J・集英社オレンジ文庫の新刊感想まとめです。内訳はガガガブックスfの新作1点、ガガガ文庫の続刊2点、GCN文庫の続巻2点、ハヤカワ文庫Jの新作1点、集英社オレンジ文庫の続刊4点、新作2点の計12点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
悪役令嬢について (ガガガブックスf)
悪逆非道の限りを尽くしたとされ、処刑された傾国の悪役令嬢エイディーア。彼女の最期に強烈な違和感を覚えた死刑執行人見習いのユーニヒトに、身分を明かさないとある人物から悪役令嬢の調査依頼が出されるダークミステリ。普段の罪人たちとは違うものを覚え、会話をした相手が一番強く思い出した記憶を共有できる異能を使い、没落貴族、令嬢の執事、元孤児院長、墓地管理人、養父母などから証言を集めていくユーニヒト。その過程でエイディーアと双子の妹である聖女の背景を浮き彫りにしていって、それを積み重ねていく中で生まれる違和感があって、知ってはならない恐るべき可能性に辿り着いてしまった彼が、最後に出会った人物は果たして誰だったのか。鮮烈な余韻を残すその結末がなかなか印象的な物語になっていました。
獄門撫子此処ニ在リ: 狐の窓から君を見る4 (ガガガ文庫)
現世とも幽世ともつかぬ「はざま」でまどろみから目覚めた撫子。怪しい街に迷い込んだ撫子とアマナが奇妙な縁に巡り合う第4弾。久遠の恩讐に沈む館、庚申の夜を蝕む呪縛、潰えた野望の残滓が眠る場所で出会う、撫子と繋がり荒れ狂う吹雪のような獄卒カシャリ、そして同窓の女学生たちや「はざま」を探る案内屋ドラセナ。それらと出会い、ふれあっていく中で撫子が世界を広げていく一方、戦いの影響から九尾の記憶に苛まれ撫子から遠ざかろうとするアマナという何とも悩ましい構図でしたけど、それでも大規模な霊災に対して京都の祭りそのものを力に変えて、因縁に決着をつける中で絆がより深めてゆく2人の結末はなかなか良かったです。
【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう4 (ガガガ文庫)
赤城 大空/福きつね 小学館 2025年06月18日頃
自身にかけられた自作自演の疑惑。それをを払拭するため、カリンがブラックタイガーが苦戦中の奥多摩渓谷ダンジョンの深層ソロ攻略に挑む第4弾。どんな実力者も命を落とす数々の初見殺しに、カリンはソロでいかに対応していくのか。友も敵もファンも野次馬も、数百万人が固唾を呑んで見守る中、深層ダンジョンに挑戦する理由をカンペで言わされるカリンには笑いましたが、強力なモンスターに次々と遭遇しながら、規格外の力で向き合った上で返り討ちにしていく彼女の実力は圧巻で、杞憂を吹き飛ばすその強烈なインパクトにたびたび感情を揺さぶられるファンたちだったり、感極まってたびたび壊れてしまう解説役の光姫が微笑ましかったですね。
魔女と傭兵6 上 (GCN文庫)
突如発生した狩場での刃蜂の暴走事件。シアーシャとともに救援部隊に参加した傭兵ジグが、ギルド副頭取カークの依頼で事件の調査を開始する第6弾。冒険者に多くの犠牲を出した事件が、人為的に引き起こされたものではないかと疑うカーク。依頼を受けて亜人に鍛冶屋、マフィアと、これまで積み上げてきた情報網を駆使して情報を集めるジグ。一方彼の単独行動に不満げなシアーシャに芽生え始めた感情と、感情の赴くままの行動には思わず笑ってしまい…いや笑えなかったですけど、一方で相変わらずいろいろ巻き込まれがちなジグも最後に思わぬ邂逅があって、物語がどう動いていくのかここから波乱の予感しかしなくて、いろいろ面白くなってきました。
突然住む家を失ったら憧れの女子達との秘密の同棲生活が始まったんだが? (GCN文庫)
雨音恵/kakao マイクロマガジン社 2025年06月20日頃
帰宅したらなぜか一人暮らししていたアパートが取り壊しになっていた!?途方に暮れる高校生・大津明斗がなぜか美少女たちと同居するハーレムラブコメ。明斗に手を差し伸べてくれたクラスの中心的美少女で、大手不動産グループ社長令嬢の天城彩芽。彼女ととなし崩し的に始まった同棲生活が、すでに周到な罠だったりするわけですけど、高嶺の花的な存在だからこそ、ちゃんと自分を見てくれる相手には惹かれちゃうんですかね…。そこから同じく明斗を慕うクラスメイトの獅子堂ノアや、後輩の千鳥紗枝といった美少女たちも負けじと相争うようにアプローチを始めていって、彼と加速度的に危うい関係になっていく展開は著者さんとレーベルらしさがよく出ていました(苦笑)
あなたが犯人だったらよかったのに (ハヤカワ文庫JA)
図書室で出会った先輩の葛城才華に魅了され、交流を深めてきた内海夕凪。しかし夏休み明け、才華が突然自殺してしまったことを知り、夕凪がその原因を探り始める青春ミステリ。心臓の疾患で行動を制約されてきた夕凪にとって、かけがえのない存在だった才華の死。彼女は果たして自殺だったのか。彼女から届いたSDカードの中にあった小説や、「教師失格」は何を意味していたのか。小説の存在を知り三者三様の反応を見せる文芸部員たちや、浮き彫りになる教師の存在があって、小説の中身や才華が直面していた状況を知っていく中で明らかになる真相には何とも切なくなりましたけど、それでも才華のことを知ろうと頑張った夕凪の確かな成長があって、これからの希望を感じさせてくれる結末が鮮烈な印象を残す物語になっていました。
亡き王女のオペラシオン 2 (集英社オレンジ文庫)
出自を隠してベアトリスと名乗り、リズドー座の正式な劇団員となったソフィー。思う存分に歌えると思っていた彼女に課題や困難が立ちはだかる第2弾。入団早々直面する歌は素晴らしいのに芝居が全く出来ないという課題。それをマルトに朗読教室を紹介され、何とか克服しつつある矢先に、ナポレオンが台頭した影響により、風紀を乱すものとしてリズドー座が芝居を上演できなくなってしまい、自身もまた王党派の動きやナポレオン暗殺未遂事件に巻き込まれてゆくなかなか難しい状況から思わぬ再会もありましたが、彼女のことを支えてくれる人の存在を改めて感じる一方で、新たな道へと進む覚悟を決めていく彼女がなかなか印象的でした。
京都岡崎、月白さんとこ 夏の終わりに、旅立つきみへ (集英社オレンジ文庫)
相川 真/くじょう 集英社 2025年06月20日
京都で暮らす人には誰でも、忘れられない思い出の場所がある。陽時の門出を笑顔でお見送りするまでの、月白邸の夏ものがたりを描く第8弾。人気女性小説家からの表紙絵を描いてほしいという依頼を受けた青藍にもやもやする茜。悩みを一人で抱え込むすみれのために彼氏の郁人が連れて行った場所。もうすぐ一緒に暮らす予定の陽時と朝日と、陽時の姉・麻里花が秘めている本当の気持ち。住人たちにとってかけがえのない月白邸の日々は少しずつ変わりつつあって、ずっとこのままではいられないんだな…ということをしみじみ感じながら読んでいましたが、一方でそれぞれエピソードで見せてくれた彼女たちの確かな成長もまた印象的でした。
あやかし乙女のご縁組 2 ~神託から始まる契約結婚~ (集英社オレンジ文庫)
七沢 ゆきの/榊 空也 集英社 2025年06月20日
生活を共にするにつれてゆっくりと、しかし着実に心を通わせつつあった瀬能と咲綾。ある朝、高熱を発した咲綾は夢で出会った謎の男に意味深な言葉を告げられる第2弾。なかなか目覚めない咲綾に焦りを募らせ、慣れない看病に奔走する中、胸のうちには咲綾に対して抱いていた想いが芽生えていく瀬能。意外な一面が伺えた一緒のお出かけがあったり、自覚する慣れない感情に戸惑ってしまう瀬能の姿は微笑ましくて、咲綾の秘められた出自もまた明らかになっていく中、咲綾の存在感もまた少しずつ変わっていって、危機に直面しながらもそれを残り超えたことで2人の絆がより深まった感はありましたけど、一方で彼女を未だ諦めていない暗躍する怪しげな人物の思惑が何とも不穏ですね…。
銀の海 金の大地 6 (集英社オレンジ文庫)
何者かの「請負」によって波美王の手で攫われ、拘束された真秀。依頼主の目的がわからず混乱する真秀の前に、依頼主の妹・小由流が現われる第6弾。依頼主の目的がわからず混乱する真秀の前に現れて、彼女をかばいながら佐保彦が早急に息長を去れば、真秀の命は守られることを告げる小由流。逃亡に失敗して共に墳墓の中に閉じ込められてしまった2人が友情を育んでいく一方、かつて恋人同士だった美知主の娘・歌凝姫が須久泥王と再会する展開で、佐保一族を利用しようとする大和豪族たちの駆け引きでいくつもの想いが交錯する中、佐保彦への複雑な想いに心揺さぶられて、数奇な運命に翻弄され続けながらも、それでも決して諦めない真秀の強さが印象的でした。
バートリ家の吸血姫(※誤解)とワルキア竜公のありえない婚礼 (集英社オレンジ文庫)
江本 マシメサ/sena 集英社 2025年06月20日
吸血鬼一族と囁かれるバートリ家の令嬢エリザベル。婚姻辞退の手紙が100を超えたエリザベルに、国王の命による縁談話が浮上するダークロマン・ファンタジー。普通どころか政治分野で優秀な人材を輩出してきた名門大貴族なのに、不穏な噂のせいでずっと縁遠い存在だったエリザベル。そんな彼女が残虐極まりない串刺し公と恐れられるワルキア竜公ブラッドに嫁いだことで知る、ワルキア公国が抱えている思わぬ秘密。訳アリとはいえ覚悟を決めて嫁いだ公国は彼女にとってかけがえのない居場所になっていって、だからこそブラットたちのために何とかしたいと思うエリザベルと、そんな彼女の窮地に駆けつけるブラッドの間に育まれてきた確かな絆が伺える結末はなかなか良かったですね。
あの日のアオハルと、待ち合わせ (集英社オレンジ文庫)
高2の夏休み直前、泪のもとに届くわだかまりがあるまま別れた中学時代の親友から手紙。翌日、彼女に会うことを決めた泪が思わぬ出会いを果たす青春小説。駅で出会った気さくで人気者の同級生・時任、お城が好きな代々木先輩、家に帰りたくないひなも一緒に、奈良から大阪を経由して兵庫の姫路を目指す旅路。ほぼ初対面の三人と一緒に勢いで始めた、予想もつかない旅は思いのほか楽しくて、そこから覚悟を決めて会いに行ったかつての親友との再会があって、たとえ許せなかったとしても、決着をつけないと前に進めない気持ちは分かるような気がしましたけど、この旅で共に喜びを分かち合い、時にはぶつかりながら育まれていった新たな絆には、未来への確かな希望がありました。