今回は5月ガガガ文庫・集英社オレンジ文庫の新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫の新作1点、続巻3点、集英社オレンジ文庫の新作4点、続刊3点の計11点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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だれがわたしの百合なのか!? (ガガガ文庫)
個性的なメンツが揃う生徒会の中でひとり平凡過ぎることを気にする並木ひと葉。そんな彼女が生徒会室の引き出しに入っていた匿名ラブレターの差出人を探し始めるガールズ・ラブコメ。部屋に自由に出入りできたのは生徒会役員の3人だけ。生徒会長最有力候補の才媛・才原京、コミュ強ギャル・小内鹿乃愛、ファン多数な神絵師・吉野咲姫の誰かが、手紙の差出人リリーなはずと彼女たちを知るべくそれぞれとデートしていくひと葉。それぞれがひと葉だけに見せるあまりにも彼女を好き過ぎる行動があって、内心ツッコミを入れつつ動揺するひと葉が微笑ましくて、今回の京との関係を掘り下げる展開もなかなか良かったですね。果たしてリリーの正体は誰なのか、彼女たちの関係がこれからどうなるのか今後の展開が今から楽しみです。
負けヒロインが多すぎる!8 (ガガガ文庫)
やってきた生徒会選挙と体育祭の季節。会長に立候補することになった馬剃天愛星が推薦人に温水を指名する第8弾。最初は文芸部の部長であることを理由にやんわりと断るものの、いつにもまして頑なな馬剃にあの手この手で迫られ、なし崩しに生徒会選挙に巻き込まれていく温水。信任投票だった状況がギリギリで会計・桜井の参戦がある一方で、相変わらず食い気が際立つ八奈美、小鞠の家族サービスや全国を目指す焼塩、小悪魔な後輩・白玉、馬剃を心配する志喜屋とヒロインたちがらしい形で存在感を見せる中、会長選の結末は妥当な形に落ち着いた感がありましたけど、馬剃が動いたことをきっかけに温水を巡る人間関係もこれから変化の兆しがありそうですね。
白き帝国: 白と黒の進撃4 (ガガガ文庫)
果てしない理想を追い求め無名荒野へ足を踏み入れた白猫隊。一方、上顎半島の攻略に乗り出した黒薔薇騎士団は飛行戦艦に守られた要塞に行く手を阻まれる第4弾。ルシファーの暴虐によって飛行艦隊を失ってしまい、要塞攻略のためジャンジャック率いる空挺部隊の奇襲攻撃を敢行する黒薔薇騎士団。一方、、領主不在の城塞都市バードゥルガ攻略に成功し、一時の微笑ましい安息を得たものの、相容れないジャムカジャ王フレルバータルの大軍と対峙するガガたち。それぞれ無理をしないと勝てなかった今回の厳しい戦いを何とか乗り越えたことは、物語としてもひとつのターニングとなりそうですが、その中で垣間見えた譲れない様々な想いや覚悟、密かな思惑が今後にどう影響してくるのか続刊が楽しみです。
異世界リーマン、勇者パーティーに入る 2 (ガガガ文庫)
岡崎 マサムネ/てつぶた 小学館 2025年05月19日頃
無事魔族を追い払うことに成功したアレクたち勇者一行。けれど、魔王は日に日に力を増大させている中、王様の情報をもとに伝説の装備を探し始める第2弾。魔王四天王の愚痴を聞いて逆に興味を持たれたり、お局様を上手く動かしてみせたり、新たな仲間も帯同したりする中で、なぜかその伝説の装備がレースの優勝賞品になっていることを知り、レースに参加することになるハヤシ。いやほんといつ寝てるんだと突っ込みたくなる地道なリサーチや根回しをパーティーメンバーも知らない水面下でいろいろ進めていて、魔王討伐プロジェクトのスケジュール感が出てきた時には笑ってしまいましたが、仲間たちもしみじみと実感するようにパーティーに欠かせない存在になってきていますね。
亡き王女のオペラシオン 1 (集英社オレンジ文庫)
18世紀末フランス。女占い師の予言で出自を隠して、タンプル塔の暖炉係として育ったマリー・アントワネットの娘ソフィー。フランス革命に翻弄された少女の知られざる一代記を描く歴史オペラ小説。シャルルたちと過ごした幼少期と、危険が迫ってから初めて自らの出自を知らされ、名前だけしか知らない女占い師を探せと逃されてからの過酷な日々。危なっかしい彼女を救ってくれたピトゥとかけがえのない生活から、彼を知る歌劇の女優マルトに窮地を救われ、歌う彼女に魅せられていったソフィーが、秘密を抱える少年ジョアキーノに歌を鍛えられながら、歌うことに希望を見出していく姿は応援したくなりますね。三ヶ月連続刊行の三部作とのことで、これから彼女にどんな運命が待っているのか、これからの展開が楽しみです。
片付かないふたり (集英社オレンジ文庫)
【2024年集英社ノベル大賞〈準大賞〉受賞作】
何かを選ぶのが苦手な性格でいつも周りに合わせてばかりの片付けコンサル会社で働く鷲澤憂。珍しく友人と泥酔するまで飲んで帰宅した翌朝、目覚めると部屋で見知らぬ青年すずりと遭遇する物語。無駄なく効率よく生きることを信条とする上司の奈々の生き方に憧れて心酔している憂。傾倒するあまり恋人と同棲中の部屋の家具を次々に捨て、ついには恋人自体も捨て効率のいい部屋を手に入れた彼女が、なし崩し的に始めたら思いの外快適だった、決めることを強要されないすずりとの同棲生活。けれどすずりにもまた隠されていた複雑な事情があって、それに憂もまた彼の事情に巻き込まれていく展開から、お互いのこと改めて知っていって、自分の本当に大切なものを見出していく結末はなかなか良かったです。
京橋骨董かげろう堂 (集英社オレンジ文庫)
デイケアセンターでバイトをする白澤容。わけあって骨董の世界を離れた彼と、異例の若さで骨董店「かげろう堂」を営む青年・黒岩鼎が運命の出会いを果たす物語。施設利用者の老人・晴田から単発バイトで車の送迎を頼まれ、向かったカルチャーセンターで講師を務めていた黒岩。彼に興味を持たれてかげろう堂で働き始めて、店にやってきた顧客との骨董を巡るエピソードの中で、思わぬ造詣の深さを垣間見せてゆく容。そのあまり大きな声では言えない過去が明らかになっていく一方で、複雑な葛藤を抱える不器用な容のありようを見守ってくれる懐の深い人々と出会いがあって、時には救われながらそこにかけがえのない新たな居場所を見出していく結末はなかなか良かったですね。
京都御幸町トワイライト 星の試着室 (集英社オレンジ文庫)
この春、大手アパレル企業に就職した穂積良子。おしゃれに疎くても大丈夫な事務職を志望したはずなのに、研修で突然セレクトショップでの接客業務を命じられてしまうお仕事小説。初日から個性豊かなスタッフたちに囲まれてあたふたしながら、お客とのやりとりにどう向き合うべきかを目の当たりにしたり、孤高のカリスマ店長・葉山が抱える過去や、謎の星空の刺繍に隠された秘密を知ってゆく良子。自らの人生が母親に定められていたことを改めて自覚していった彼女が、遅ればせながら母親に言いたかったことを言い、閉塞感しかなかった家を思い切って飛び出したりもして、そんな変わりつつある彼女の周囲もまた新たな一歩を踏み出していくそれぞれの結末はなかなか良かったですね。
大江戸恋情本繁昌記 巻ノ弐 ~蔦重と意地の本~ (集英社オレンジ文庫)
ゆうき りん/AiLeeN 集英社 2025年05月19日頃
江戸時代にタイムスリップして、同居人おふゆが書き、葛飾北斎の娘・栄が絵をつけた戯作が大ヒットした若手女性編集者の天。歌舞伎化の話も舞い込んでくる第2弾。上野の花見で北斎が見かけた死んだはずの蔦重の正体。戯作も売れて歌舞伎化の話も持ち上がり、いい流れが生まれてきたところで天たちが遭遇する文政の大火。それを乗り越えて再び持ち上がった『転生御七振袖纏』歌舞伎化の話の顛末と、男色物を書きたいといい出したおふゆが挙げた定番もののテーマ。当時の時代を思えば題材によってはいろいろ難しいものがあるんだろうなと思いながら読んでいましたが、そこから一念発起しておふゆが書いた新作に、それに対抗するかのような新たな動きもあって今後の展開が面白くなりそうです。
銀の海 金の大地 5 (集英社オレンジ文庫)
真澄の霊力をその身に受け無惨に焼け死んだ佐保彦の腹心・燿目。彼を死なせたのは自分だと我が身を責めて苦しむ真秀に、新たな佐保彦の伴人・月眉児が接近する第5弾。月眉児のたおやかな容姿と優しい言葉に慰められ、幻影を生む力が燿目と再会させてくれたことで、月眉児に心を許そうとする真秀。しかしそれが月眉児の策謀であることを見破った波美王に助け出されるものの、真秀は突然息長から連れ去られてしまう展開で、水面下で新たな駆け引きが繰り広げられる中、これまで状況に流されるままだった真秀にも、自らの意思で変えていこうという意識の変化が感じられましたけど、様々な思惑が垣間見える中で、過酷な運命を背負う2人がここからどんな展開に巻き込まれていくのか続刊に期待です。
掌侍・大江荇子の宮中事件簿 七 (集英社オレンジ文庫)
秀才と名高い右大臣の子息・藤原祐実が参内することになり、上昇志向が強い美貌の伊予命婦を筆頭に色めき立つ宮中。新たな登場人物も加えて新たな騒動が起きる第7弾。参内してみれば思いのほか堅物で、なぜか中流貴族の一官吏にすぎない征礼を慕い、教えを請う変わり者の祐実。一方で身分の高い貴族の妾になることを目指し、征礼を軽んじる発言をしてしまう伊予に気分を害し、密かに彼を助ける一計を案じる荇子。自制して謙虚に慎み深く行動する人たちもいれば、身分不相応な立場を求めてあさましく立ち回ろうと人もいて、けれど日頃の行いの積み重ねは、自分が思っている以上に多くの人が見ているんですよね。それが最終的に跳ね返ってくる必然の結末にはなかなか皮肉が効いていました。

