2020年上半期注目のオススメ新作企画「ライトノベル」「ライト文芸」「文芸単行本」に続いて最後の第四弾ということで「一般文庫」レーベル編です。今回上半期のオススメ作品ということで一般文庫レーベルから30作品選びましたが、文庫はどれ削るのか、どう並べるのか結構悩みました(苦笑)これで4企画120作品を紹介しましたが、ライトノベルに関しては新作以外の注目シリーズの紹介企画も別途考えていますのでよろしくお願いします。
1.仙文閣の稀書目録 (角川文庫)
そこに干渉した王朝は程なく滅びるという伝説の巨大書庫・仙文閣。帝国春の少女・文杏が、危険思想の持主として粛清された恩師が遺した唯一の書物を届けるべく訪れ、仙文閣の典書・徐麗考と出会う中華ファンタジー。麗考に救われたものの、無事蔵書される心配で住み込むことになった文杏が知る壮大な仙文閣の威容。文杏を持ち込んだ書物を巡って、権力に屈しない図書館めいた仙文閣で必要とされる資質が問われる展開でしたけど、知識云々よりももっと大切なことがあるんですよね。文杏がこれからどう成長してゆくのかまた読んでみたいと思いました。
2.彼女の色に届くまで (角川文庫)
画廊の息子で幼い頃から才能を過信し画家を目指している緑川礼。しかしいつの間にか冴えない高校生活を送っていた礼が、無口で謎めいた同学年の美少女・千坂桜と出会うアートミステリ。礼が衝撃を受けた原石のような彼女の絵の才能。その推理で礼の窮地を救ってみせる桜の意外な一面と、共に過ごすようになってゆく日々。圧倒的な才能を前に平凡な自分を突きつけられる葛藤と少しの打算、生活力皆無な桜が気になって飼育係として世話を焼いてしまう礼の複雑な想いが悩ましいですが、それでも不器用な二人らしい結末はとても素敵なものに思えました。
3.パラ・スター (集英社文庫)
東京パラリンピック女子の代表候補として注目を集めるものの、昨年末から不調が続き苦しむ車いすテニス選手の君島宝良が勝利を掴むために奮闘する物語。side 百花と対をなす今回は車いすテニス選手・君島宝良のエピソードで、これまで支えてくれた恩師が倒れてのコーチ交代などもありましたけど、それでも気持ちを切り替えて目標に向かって地道に取り組み失敗を恐れずに挑む彼女だからこそ、周囲も感化されるし支えたくなるんですよね。その最後まで諦めない戦いには燃えましたし、お互い刺激しあえる百花との関係がとてもいいと思いました。
5.プリズン・ドクター (幻冬舎文庫)
奨学金免除のため刑務所の矯正医官になり、患者にナメられ助手に怒られ憂鬱な日々を送る是永史郎。そんなある日の夜、自殺を予告した受刑者が変死する医療ミステリ。矯正医官としての鬱屈に要介護状態の母の世話もあってどうすべきか失いかけていた史郎が、CTで発見されなかった病の解明、獄中で起きた突然死や不審死の真相、仮釈放受刑者の拒否問題などに挑む展開で、大学時代の友人たちや恋人の助けも借りながら公私の問題を解決していく中で、徐々に今ここで働いている意味を見出してゆくほろ苦さ混じりの結末にはぐっと来るものがありました。
6.彼女の知らない空 (小学館文庫)
化粧品会社の新素材軍事転用を巡る社員夫婦の葛藤、自衛官の妻が知らない空で起こる無人軍用機の戦争、スキャンダルで潰れたプロジェクトを巡るあれこれ、過重労働で心身を蝕まれる会社員と老人の邂逅、徴兵制を巡る身もふたもない現実、大連のホテルを介して繋がる今と昔、宇宙飛行士を夢見た男が通した正義など、淡々と綴られてゆく組織の中で何かあった時に自らはどうあるべきか、家族との折り合いをどうつけるかというそれぞれの葛藤とその結末には心に響くものがありました。深田課長は格好良かったですし、最後の葉書がまた印象的でしたね。
7.1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)
由井が好きになったのは、背が高く喉仏の美しい桐原。ひりひりと肌を刺す恋の記憶。出口の見えない家族関係。人生の切実なひと筋の光を描く恋愛連作短編集。母子家庭で絶望的な日々を送る由井と桐原の恋。彼女の親友ミカが再会した高山に抱く複雑な想い、家族関係に鬱屈を抱える泉と高山の関係と別れ。それぞれが絶望の中に見出した鮮烈な想いとすれ違いが描かれる中で、少しずつ明らかになってゆく由井が紆余曲折の末に得た未来はわりと幸せそうで、だからこそ最後に描かれたエピソードと桐原の手紙が意味することをいろいろと考えてしまいました。
8.死んでもいい (ハヤカワ文庫JA)
同級生が刺殺された事件の取り調べで「ぼくが殺しておけばよかった」と告白した少年の真意、幼稚園で起きたママ友の災厄の真相、数十年ぶりに再会した義姉、夫のストーカーに殺された妻の想い、三十年ぶりに訪れた街で明かされる事件の真相、そしに著者自身が登場人物となって描かれる書下ろしの「タイトル未定」を含めた連作短編集で、うまくやったと思ったら終わらない恐怖にぞっとさせられたり、意外なところで繋がっていたり、著者さんらしい作品が多かったですが、最後の「タイトル未定」はこれまでとはまた違ったアプローチで面白かったです。
9.読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA)
読書嫌いな高校二年生の荒坂浩二は、図書委員会で廃刊久しい図書新聞の再刊を任され、本好き女子の藤生蛍とともに本も絡めた数々の謎に挑む学園ミステリ。本が絡むと人が変わる藤生と一緒に挑む「舞姫」を絡めた留学生との関係、美術部の先輩から託されたタイトル不明の感想文の意味、生物の樋崎先生が広めた生物室の怪談の真相。感想文回収のために不器用な二人が真相に挑む展開でしたが、クールでやる気がないように見えるのにいざという時にはビシッと決める主人公の不思議な秘密への伏線は鮮やかで、彼らの物語をまた読んでみたいと思いました。
世界に七人しかいない錬金術師。その一人アスタルト王国のテレサ大佐が、お目付け役エミリア少尉と赴いた蒸気都市トリスメギストスで錬金術師フェルディナント三世の殺人件に遭遇するファンタジーミステリ。フェルディナント三世が成し遂げたという魂の解明。三重密室で起きた殺人事件の容疑を晴らすため、破天荒なテレサと振り回されるエミリアのコンビで事件解決に挑む展開でしたが、事態が二転三転する中で見えた意外な真相と、因縁に導かれるように出会った真逆の似た者同士の結末には唸らされました。これは続巻に期待せずにはいられませんね。
11.風に恋う (文春文庫)
かつての栄光は見る影もなくなってしまっていた名門高校吹奏楽部。そこへ黄金時代の部長だった不破瑛太郎がコーチとして戻ってきて、入部したばかりの一年生の基を部長に任命する青春小説。幼馴染の部長・玲於奈の誘いにも入部に乗り気でなかった基を変えた瑛太郎の存在。部長としてひとりの演奏者として苦悩しながらもひたむきな想いでのめり込んでいく基。複雑な想いが入り交じる部員それぞれの葛藤に、自身もまた悩みを抱える瑛太郎も迷いながらもしっかり向き合って、全国大会目指して一丸となってゆく展開にはぐっと来るものがありました。
12.青くて痛くて脆い (角川文庫)
大学1年の春に秋好寿乃に出会い、二人で秘密結社「モアイ」を結成した楓。将来の夢を語り合った秋好はいなくなり、すっかり変わってしまったモアイを取り戻すべく楓が動き出す青春小説。周囲から浮いていて誰よりも純粋だった秋吉と、彼女の理想と情熱に感化されつつ徐々にすれ違うようになった楓。明らかになってゆく楓のモアイへの複雑な思いと不穏な構図、そしてやりきれない結末には流石に頭を抱えたくなりました。どこかで軌道修正できなかったのかいろいろ考えてしまいましたが、こういう自己陶酔的な青臭さや痛さもまた青春なんですよね…。
13.他に好きな人がいるから (祥伝社文庫)
寂れてゆく造船の田舎町。目立たないように鬱屈を抱えながら生きている高校生・坂井が、夜のマンション屋上で危険な自撮りを投稿し続ける白兎のマスクを被った少女と出会う青春恋愛ミステリ。苦い過去に縛られる少年と兎人間の秘密の共犯関係。クラスで浮いている少女・峰に巻き込まれてゆく学校生活と、彼女が意識する優等生の少女・鈴木。どこか危うさを感じさせる日々が続いた末に起きた事件とその真相は衝撃的で、いつまでも忘れられない坂井がこれからどうするのか、読み終わるとタイトルの意味がじわじわと効いてくる印象的な物語でした。
14.それでも僕らは、屋上で誰かを想っていた (宝島社文庫)
それでも僕らは、屋上で誰かを想っていた
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櫻いいよ 宝島社 2020年01月09日
穏やかで笑みを崩さない蒼汰、蒼汰の幼馴染・小毬、教師から不良扱いされる漣、優等生の生徒会長・智朗、クールで大人びた由宇。タイプの異なる五人が過ごす屋上の大切な関係が、ひとつの告白をきっかけに変わり始める青春小説。いつまでも大切にしたいと思っていた関係が、自身は些細なことだと思っていたひとつの決断から崩壊し始める皮肉。それぞれの視点から語られるエピソードは何とも痛々しくて、何とかしようとすればするほどズレてしまう展開はもどかしかったですけど、そんな不器用な彼らが迎えるほろ苦さ交じりの結末がまた印象的でした。
15.ダークナンバー(ハヤカワ文庫JA)
監視カメラ情報とプロファイリングで連続放火事件を追う警視庁刑事部分析捜査三係の渡瀬敦子。記者復帰を狙う東都放送報道局・版権デスクの土方玲衣。中学校時代の同級生二人が事件を追う報道×警察小説。消極的理由から警察官僚の道を選んだ敦子。野心を持って成り上がると決めた玲衣。似たような境遇ながら正反対の性格だった二人を掘り下げつつ、時に協力しながら執念で犯人に迫る展開は、情報が多くリーダビリティにやや難はあるものの、明らかになってゆく真実と解決に向けて加速していく面白さがあり、著者さんらしさを十分に堪能できました。
16.夢の上-夜を統べる王と六つの輝晶 (中公文庫)
六つの輝晶は叶わなかった六人の夢。王に謁見した夢売りによって語られる翠輝晶を巡るファンタジー。夫オープとのささやかな幸せを願いながら死影に憑かれたアイナの物語、数奇な運命の元に生まれ二人の子となったアライス、彼女が繋ぐ女騎士イズガータとアーディンの物語で構成されていて、最初はやや文章が堅いかなと感じましたけど、逆境でも彼と共にあったアイナの幸せ、そしてアーディンたちの報われない想いと、形は違うけれど深い愛を感じるエピソードでしたね。彼女らに育てられたアライスがこれからどんな人生を歩むのか続きが気になるシリーズですね。全3巻。
17.水使いの森 (創元推理文庫)
それはこの世の全ての力を統べる水使い。水荒れ狂う森深くに棲む水蜘蛛族の女タータが、砂漠で少女・ミイアを拾い自らの弟子とするファンタジー。跡継ぎである妹を差し置き水の力を示し、国を乱すことを危惧された王女ミイア、その力を認められながら自覚が足りないと言われるタータ、そして家に馴染めず旅をする式要らずの風丹術士・ハマーヌ。三者三様の理由でどこか燻っていた状況で、運命に導かれるように出会った彼女たちが、危機に直面して自らが何をすべきかを自覚し、乗り越える中でそれぞれ成長していく展開はぐっと来るものがありました。
18.天涯の楽土 (角川文庫)
弥生時代後期。久慈島と呼ばれる九州北部の里で平和に暮らしていた少年隼人。津櫛邦の急襲により里を燃やされて家族と引き離され奴隷にされた彼が、敵方の剣奴の少年・鷹士に命を救われる和風古代ファンタジー。過酷な奴隷生活にたびたび反発し、周囲から痛めつけられる隼人を救ってくれる鷹士。次第に距離を縮めてゆく彼らが久慈の十二神宝を巡る諸邦の争いに巻き込まる中、隼人は生い立ちの秘密を知り仲間たちと島の平和を取り戻すため、失われた神宝の探索に向かう展開はなかなか壮大で続編を期待したくなるシリーズですね。
19.雲神様の箱 (角川文庫)
円堂 豆子/苗村 さとみ KADOKAWA 2020年01月23日
霊山を移り住む古の民・土雲の一族。長の家に生まれながら不吉な双子の妹ゆえ虐げられていた少女・セイレンが、本来求められた姉媛の身代わりに雄日子の守り人となる古代和風ファンタジー。類い稀な技を持ちながら孤独と怒りから里を飛び出した真っすぐな気性のセイレンと、大王への叛逆を目論む雄日子の邂逅。姉媛との因縁も絡めつつ、自分の居場所を提供してくれた雄日子への複雑な想いを抱えるセイレンが、その野心や彼のありようにどう向き合ってゆくのか、多くの人との関わってゆくなかでどう成長してゆくのか今後に期待したいシリーズですね。
20.うつろがみ 平安幻妖秘抄 (角川文庫)
うつろがみ 平安幻妖秘抄(1)
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三好 昌子 KADOKAWA 2020年02月21日
幼くして帝たる父と母を亡くし東北の鎮守府副将軍となり、蝦夷との戦いに生きてきた源譲。都で検非違使の少尉となった彼が、時の権力者・藤原基経から神霊に憑かれた姫を元に戻せと命じられる平安ファンタジー。帝位を巡る争いに巻き込まれた譲が押し付けられた基経の娘、出羽から連れてきた蝦夷の神女・為斗の存在、そして幼き頃の約束を果たすなら姫の魂を捜すという神霊・虚神と魂がさまよう魔道山。以前の立場から時の権力者たちに目の敵にされ窮地に陥りながらも、大切なものを最後まで見失わなかった譲が迎えた結末はなかなか良かったですね。
21.シトロン坂を登ったら 大正浪漫 横濱魔女学校 (創元推理文庫)
大正時代を舞台にちょっと変わった横濱女子仏語塾(実は魔女学校)に通う魔女の卵たちが大活躍する物語。薬草学や占い、ダンス(箒で空を飛ぶことを、そう呼ぶ)も学ぶ小春、宮子、透子の三人のあやかし女学生を中心として、新聞記者でもある年上の甥っ子が持ち込んできた奇妙な噂話をきっかけに、巨大なアメリカ豹を巡る騒動に巻き込まれてゆく展開で、思っていたほどには大正浪漫感はなかったですけど、元気で個性的な少女たちが力を合わせてピンチを乗り越えてゆく展開はなかなか楽しかったですね。魔女学校三部作とのことで続巻にも期待です。
22.ブルーネス (文春文庫)
東日本大震災後、地震研究所を辞めた行田準平。学界で異端視される武智に誘われ、海洋工学や観測機器などのエキスパートだが個性が強すぎて組織に馴染めないはみ出し者たちと津波監視システムの実現に挑む物語。広報として震災を直面した準平が、武智に触発されて彼を中心とするはぐれものたちと前人未到のプロジェクトに挑む展開でしたが、メンバーに振り回されたり古巣との対立だったり、設置場所を巡って漁師とすれ違いもある中で、津波被害から救いたいという熱い想いが関係者たちの心を動かし、窮地を救う展開にはぐっと来るものがありました。
23.人間たちの話 (ハヤカワ文庫JA)
凍土となってしまった世界を描く「冬の時代」人間が人間を管理する進化型ディストピア「たのしい超監視社会」複雑な境遇だった姉の子との共同生活「人間の話」、陽系外縁部で人間の店主が営業する“消化管があるやつは全員客"「宇宙ラーメン重油味」誕生日に部屋に突然岩が出現する「記念日」透明人間の日々を描く「No reaction」と6つのSF短編集でしたが、どこか掴みどころのない淡々と描かれるストーリーはじわじわ来る感じで印象に残りました。読み終わった後に見て気づいたんですが、表紙の絵は登場人物だったんですね(今更感)
24.居酒屋すずめ(ハルキ文庫)
居酒屋すずめ 迷い鳥たちの学校
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桜井美奈 角川春樹事務所 2020年05月15日
居酒屋が経営難に陥った友人・村瀬晴彦を救うため、親の遺産でその物件を購入した鈴村明也。晴彦に息子の不登校も相談され、居酒屋を開店していない昼間にそこでフリースクールを開く物語。晴彦の経営見直しをアドバイスしつつ、賢いがゆえに不登校になってしまった晴彦の息子・亮我、八十四歳で学び直したいハツネ、引きこもりだった佑都、フィギュアスケートに挫折した若菜、そして彼らを導く明也。すずめに集まった事情を抱えた彼らが抱える悔恨があって、そんな彼らが助け合いながら過去を乗り越え前に進むきっかけを得てゆく素敵な物語でした。
25.緑の窓口 樹木トラブル解決します (講談社文庫)
26.山神よろず相談所 (角川文庫)
よろず屋を営む3人の兄たちに溺愛される高校一年生の山神結。天然で素直な彼女が不思議で個性的な父や兄たちと持ち込まれた依頼を解決してゆくハートフルストーリー。秋祭りで女装させられていたクラスメイトの佐藤千を巡る人探し、引きこもりの息子と家出娘の捜索、姉と自らの元婚約者の結婚を阻止したい妹といった依頼を調査するストーリーには不穏な展開もありましたけど、期せずして結と兄妹となってしまった千の複雑な想いや、苦境に陥りがちな悩める彼女のために奔走し、温かく見守る家族の想いがとても微笑ましくて素敵な家族の物語でした。
27.鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫 (角川文庫)
鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫
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沙川 りさ KADOKAWA 2020年05月22日
青山領の民が突然変異し鬼となり、小寺領の民を襲い血を吸って殺すようになって30年。故郷から逃げ出し身を潜めて暮らす小寺の民の若き領主・菊が、勇敢な少年・元信に窮地を救われ、運命の出会いを果たす和風ファンタジー。民を救うために強くなりたいと願う菊に剣術を教える元信と、お互い惹かれ合ってゆく禁断の恋の行方。そして旅する薬師の文梧とその助手・主水が出会った少女・竜胆の決意。長らく続いた小寺と青山による因縁の真相と結末はほろ苦くやるせなかったですが、それでも二人で見事本懐を遂げてみせた結末はなかなか印象的でした。
28.そして、ユリコは一人になった (宝島社文庫)
代々、ユリコという名の生徒が「ユリコ様」として絶対的な権力を持ち、逆らう者には必ず不幸が訪れるという私立百合ヶ原高校の奇妙な伝説。なれるのは一人だけというユリコ様を巡り、ユリコが次々と殺されていくミステリ。図らずも候補となった新入生・矢坂百合子がユリコ様を巡る争いに巻き込まれ、次々とユリコが殺されてゆく状況に、探偵役の親友・美月とともに犯人を追う展開でしたけど、ユリコ様の過去と事件の真相、二転三転する構図、そしてそれだけでは終わらない意外な結末が意味するところにはそういうことだったのかと唸らされました。
29.幽霊たちの不在証明 (宝島社文庫)
30.その終末に君はいない。 (スターツ出版文庫)
その終末に君はいない。 (スターツ出版文庫)
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天沢夏月/越島はぐ スターツ出版 2020年01月28日
高2の夏。親友の和佳と共に交通事故に遭った伊織。病院で目覚めるも事故直前で入れ替わってしまい、本来の伊織は死んだ状態で混乱する伊織が始める和佳としての生活とその変化が描かれる青春小説。入れ替わって初めて知る密かに憧れを抱いていた和佳の状況、密かに片想いしていた和佳の恋人・秀の存在、そして入れ替わりを見抜いた佐島の存在。いったんは新生活に希望を見出して葛藤しながらも、きちんと向き合い決断した伊織は立派でしたけど、そんな結末の先にあった最後のプロローグで明かされるもうひとつの真実が持つ意味には戦慄しました…。
以上です。気になる本があったら是非手に取って読んでみて下さい。