読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2010年代ライト文芸ベスト20作品 単巻作品編

 昨日2010年代企画の一環で「ライト文芸ベスト20作品」を作りましたが、予想通りというか仕方ないというか好きな作品の中でもシリーズものの存在感がありすぎて、シリーズもの選出になりそうなのは目に見えてました。なので昨日の記事とは別に、単品作品を対象としたエントリーを別途に作成します。

今回選んだ20作品はどれも自信を持っておすすめできる作品です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。でもこうして作ってみると2~3巻くらいでまとまっている作品が結果的に一番選ばれにくいんですよね。そのあたりも面白い作品はたくさんあるので、今回はあまり選べなかったですけど、どこかでまた紹介できたらいいなと思っています。

 

1.どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫 2017)

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

 

訳ありの過去もあり友人の幹也と采岐島のシマ高に進学した月ヶ瀬和希。そんな彼が初夏に神隠しの入江で倒れていた少女・七緒を発見するボーイミーツガール青春小説。過去からやって来た七緒と少しずつやりとりを重ねてゆく日々。何気なく過ごせていた高校生活の突然の暗転。明かされる過去の真相と、変わらず向き合ってくれる友人たちの存在、そして覚悟を決めた七緒。甘酸っぱく初々しかった出会いの結末には切なくなりましたけど、繋がって行く過去と未来、そして意外な形で届けられた真摯な思いは、かけがえのないとても素敵なものに思えました。
 関連作品:「また君と出会う未来のために」(集英社オレンジ文庫)

 

2.私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫 2018)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

 

突如失踪した人気小説家・遥川悠真。調査を進めるうちに彼の小説を愛した少女・幕居梓の存在が明らかになってゆく物語。追い詰められて絶望していた梓を偶然救ってくれた遥川。奇妙な共生関係を結んだ二人のささやかな癒やしと、小説を書けなくなってゆく遥川。何とかしたいという思い、魔が差した行為が二人の関係を決定的に変えていって、何とかしようとすればするほどすれ違って、垣間見えたいくつもの想い、ありえたかもしれない可能性が何とも切なかったですが、それでも真っ直ぐで不器用で優しかった二人らしい結末だったのかなと思いました。

 

3.きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫 2016)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

 

2025年の夏休み。双子の高校生・明日子と日々人は突然いとことの同居を父から告げられ、やって来た今日子が実は長い眠りから目覚めた三十年前の女子高生だったという物語。時代のギャップに戸惑いながら徐々に双子と打ち解けてゆく今日子の存在は、バラバラになっていた家族を繋ぐきっかけにもなって、過去との繋がりを感じるがゆえにもう取り戻せないことを痛感する彼女と、どうにもならない現実に直面した双子の対照的な選択、昔の想い人の回想がとても印象に残りました。懐かしい気持ちと切ない気持ちが入り混じる素敵なひと夏の物語ですね。

 

4.君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫 2017)

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

 

大切な姉の死からどこかなげやりに生きていた岡田卓也が、友人に頼まれ「発光病」で入院したままのクラスメイト・渡良瀬まみずと出会ったことで止まっていた二人の時間が再び動き始める物語。余命を宣告されたまみずに死ぬまでにしたいことがあると知らされ、それに協力することを約束した卓也。無茶振りされても奮闘する卓也がなかなか自覚できない自らの想いや、気持ちを伝えることに躊躇するまみずの距離感がもどかしかったですが、遠回りこそしたものの相手に真摯に向き合い大切に思う気持ちを伝え合った、切なくも心の琴線に触れる物語でした。
 関連作品:「君は月夜に光り輝く +Fragments」(メディアワークス文庫)
 
5.僕が七不思議になったわけ (メディアワークス文庫  2014)

生きたまま学校の七不思議に登録されてしまった中崎君と学校の七不思議の仲間たち、そして中崎君が気にかけている朝倉さんを巡るお話。心配症でちょっと自信がなさげな中崎君でしたが、朝倉さんがピンチになった時には本当に頑張ってましたね。そんな二人の関係性が徐々に変わっていく感じがとても良かったんですが、あまり深く考えずに読んでいたので、バス事故の場面から切り替わったところであれって思いました。それでも切ない終わり方になったわけではなくて、二人が新しい一歩を踏み出して、希望を感じることのできる終わり方は良かったです。

 

6.昨日は彼女も恋してた (メディアワークス文庫 2011)

昨日は彼女も恋してた (メディアワークス文庫)

昨日は彼女も恋してた (メディアワークス文庫)

 

今はすっかり疎遠になってしまったニアとマチが小さい頃にタイムスリップする話。昔は仲良かったのに、些細なきっかけですれ違いが始まるとかよくありますよね。ニアとマチがそれぞれの視点から代わる代わる語られるお話は、小さい頃の二人が大きな方に懐いたりとか、自転車レースでの仲違いの原因回避に動いたりとか、徐々に頑なな心が開いていく感じがとても良かったです。そしてもうひとつの物語「明日も彼女は恋をする」も合わせて読みたい対になる作品ですね。
 関連作品:「明日も彼女は恋をする」(メディアワークス文庫)
 
7.ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫 2017)

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

 

突然見知らぬ女性に三つの質問を問いかけられた雪の日。誰も好いたことがない掛橋啓太が問いかけた大野千草と夫婦になり、平穏な彼女との生活の中で過ぎ去った過去の日々を追憶させてゆく物語。お互いの過去を知らないまま三つの質問という契約によって夫婦になった二人。引きこもりの兄と共依存関係にあった母との辛い過去。徐々に惹かれ合っているのを自覚するがゆえに、じわじわと重くのしかかってゆく三つ目の質問。それぞれが抱える壮絶な過去も二人でなら乗り越えられると思えただけに、淡々と綴られたその不器用な結末には衝撃を受けました。

 

8.おそれミミズク (講談社タイガ 2017)

おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱 (講談社タイガ)

おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱 (講談社タイガ)

 

山中にある屋敷の座敷牢で出会った少女ツナ。怖い話を聞かせることを条件に週一回会うことを許されたミミズクが十年目に転機を迎える物語。育ての親や友人にもツナのことを隠し続けてきたミミズクこと瑞樹。かつて投稿した怪談記事が縁で多津音一と出会ったことにより徐々に明かされてゆくツナを巡るからくり。丁寧で繊細なことばによって恐怖が描かれる一方で、瑞樹がきちんと向き合ったことで明らかになった真実は思わぬ奇跡にも繋がっていて、どうにか折り合いをつけて迎えたその結末は、これまでの想いが報われたとても素敵なものに思えました。

 

9.螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫 2015)

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

 

時間遡行機が開発された近未来。過去の美術品を盗み出す泥棒のルフが、至宝とともに19世紀のパリに逃亡した幼馴染のフォースを連れ戻すために過去へ跳ぶ物語。取り戻すまでは簡単に未来に戻れないと知ったルフがループを繰り返す覚悟を決めて試行錯誤していくうちに、不治の病に侵されながらも気丈に振舞う彼女と献身的に向き合うようになっていく姿が印象的でした。彼女が秘めていた想い、そして膨大な時間を乗り越えた二人だからこそ、あのラストシーンを迎えられて良かったです。本作が著者さんのデビュー作。

 

10.雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ 2016)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

  • 作者:城平 京
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/19
  • メディア: 文庫
 

子供の頃から相撲漬けの生活を送ってきた文季が、両親の交通事故死で引き取られた先は相撲好きのカエルの神様が崇められている村で、知恵と知識を見込まれ外来種との相撲勝負を手助けすることになる物語。村を治める一族の娘・真夏と出会い、思いとは裏腹に相撲や村の事情にがっつり関わってゆく文季の洞察力や覚悟には年相応に思えないものもありましたけど、一方でそんな彼の自分に向けられる評価や想いには鈍感だったりするギャップや、相撲勝負にも意外な背景があったことに納得したりで、爽やかな読後感を堪能できる素晴らしい青春小説でした。

 

11.ひとりぼっちのソユーズ (富士見L文庫 2017)

ひとりぼっちのソユーズ 君と月と恋、ときどき猫のお話 (富士見L文庫)

ひとりぼっちのソユーズ 君と月と恋、ときどき猫のお話 (富士見L文庫)

 

幼いころに出会ったハーフの女の子ユーリヤ。僕をスプートニクと呼ぶ彼女と月を見上げて宇宙飛行士に憧れた夢。そんな二人の成長を描く物語。どんどん成長するスプートニクと生まれつき身体が弱い彼女とのすれ違い。遠く離れ夢に向けて突き進むユーリヤとの再会と、焦燥を覚えつつ遅ればせながら夢を追いかけることを決意したスプートニクの思い。彼女との距離がどんどん遠くなっていっても、お互いかけがえのない存在であることは変わりなくて、素直になれない彼女にきちんと向き合ったスプートニクの覚悟には本当にぐっと来るものがありました。

 

12.モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex 2017)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

  • 作者:坂上 秋成
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: 文庫
 

浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳が、加入した奇人変人揃いの漫画サークルで運命的な出会いを果たした新入生・天原と再会する青春小説。将来もマンガに関わっていきたいと考える卓巳が出会った漫画家を目指す訳ありな先輩たち。彼らが作り出す濃い空間にどんどん溶け込んでゆく天原と卓巳。触発されてマンガを書き始めたり天原と二人で出かけたり、いい雰囲気になりかけたのに全てがぶち壊される急展開にはぐいぐい読ませるものがあって、追いかけたはずなのになぜか追い込まれた卓巳が本音をぶちまける熱い展開はとても面白かったです。

 

13.向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex 2016)

向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)

向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)

  • 作者:友井 羊
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/08/27
  • メディア: 文庫
 

ストーカー対策員原向日葵19歳。実は元ストーカーの過去を持つ彼女が、接近禁止を言い渡された元恋人を殺人現場で見かけてしまい、再び運命が動き出すほろ苦青春ミステリー。容疑者とされた彼の無実を何とか証明したいと思うものの、すれ違いの結果として接近禁止になった過去から行動を制限されている向日葵。頭では理解していても強い想いに揺れる彼女の複雑な葛藤が痛いほど伝わってきて、その自らの思考に向き合うことが事件解決の伏線に繋がってゆく皮肉な結末でしたけど、前に進むことを決意した彼女の幸せを願わずにはいられませんでした。

 

14.異セカイ系 (講談社タイガ 2018)

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)

  • 作者:名倉 編
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/08/22
  • メディア: 文庫
 

小説投稿サイトでトップ10にランクインし、「死にたい」と思うことで、自分の書いた小説世界に入れることに気がついた名倉編。自分が作った世界を守るため、投稿作家たちと試行錯誤してゆく物語。小説の中の世界とあちらの世界を行き来しながら、現実でも異世界でも全員が幸せになる方法を探そうとする編。作中の登場人物に対する愛があって、自らの意思を表明するようになってゆく作中人物もそんな作家に対する愛が溢れていて。だんだん訳がわからなくなりながらも、どうにかこうにかみんなで幸せになろうとする展開はなかなか面白かったです。

 

15.ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ 2018)

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

 

就職を前にした何も変わらない灰色の日々。実家に戻り中学時代の卒業文集を開いた池境千弦が気になる作文を発見し、元同級生のその後を追い始めた数日後、接触してきた別の元同級生が謎の死を遂げるミステリ。元同級生・田中美奈子の自殺の真相を探るうちに起きた転落死事件と、縁が繋がって再会したかつての同級生で作家のミユ。千弦だけが分かるように発信されていたミユからのメッセージ。新米編集者と作家による探偵役コンビが真相に迫るたびに意味合いが変わる構図の変化は鮮烈で、秘密を積み重ねてゆく二人が迎えた結末はとても印象的でした。

 

16.終わりの志穂さんは優しすぎるから (メディアワークス文庫 2015)

東京のはるか南に位置する咲留間島。夏の間に画家として納得できる作品を描けなければ、筆を折ってこの島に骨を埋めようと覚悟して絵を描く森公一朗が、ミステリアスな雰囲気を持つ志穂さんと出会うひと夏の物語。なぜこのような場所にいるのか、いかにも訳ありに見える志穂さんと、島にやってきた志穂の妹・紫杏たちと交流しながら絵が完成に近づいていく一方、疑惑を深めていく公一朗が見つけてしまったモノの真実。できることなら二人がもっと違う形で出会うことができれば良かったですが、これはこれでこの物語らしい優しい結末だと思いました。

 

17.カタナなでしこ (講談社タイガ 2016)

カタナなでしこ (講談社タイガ)

カタナなでしこ (講談社タイガ)

  • 作者:榊 一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/19
  • メディア: 文庫
 

女子高生の千鶴が駆りだされた祖父の形見分けの蔵整理で、夢に見た一振りの刀身だけの日本刀と出会い、同級生たちと無くなった「刀の拵え」作りに挑戦する物語。4人の女子高生がそれぞれクオーターな外見で日本人であることだったり、しっくりしない家族関係や将来のこと、地味であることなどの悩みを抱えながらも、挑戦を通じて様々な人と出会ったり経験を重ねて、これまで気づいていなかったことに気づいたり、自分らしさを見出したり、複雑な想いを乗り越えて試行錯誤する姿はとても心に響きました。読みやすく読後感も爽やかな青春小説でした。

 

18.ことのはロジック (講談社タイガ 2019)

ことのはロジック (講談社タイガ)

ことのはロジック (講談社タイガ)

 

書くべき言葉を見失った元天才書道少年の墨森肇。金髪碧眼の転校生・アキに一目惚れした彼が、彼女とともに校内で発生する言葉にまつわる事件を解決してゆくミステリ。好奇心旺盛なアキや仲間たちと一緒に挑む回し手紙の伝言ゲーム、存在しない幽霊文字、同人誌の不可解な改変、そしてアキに対する違和感。探し続ける「月が綺麗ですね」を超える告白の言葉。彼らの心境の変化に繋がってゆくひとつひとつのエピソードがまた絶妙で、明らかになった真実にしっかりと向き合い、想いを込めた回答を提示してみせた結末にはぐっと来るものがありました。

 

19.雪があたたかいなんていままで知らなかった (集英社オレンジ文庫 2018)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (集英社オレンジ文庫)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (集英社オレンジ文庫)

  • 作者:美城 圭
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/01/19
  • メディア: 文庫
 

地元の名士の生まれながら、幽霊が見えることで周囲から孤立する澤村千尋の前に現れた赤いマフラーの幽霊少女。協力してくれたクラスメイトの岩木君やリンたちと共に、記憶を失っている彼女の過去を探し始める青春ミステリー。過去のトラウマから逡巡しながらも始まった身元捜索。それぞれ苦い過去が明らかになってゆく岩木とリン、そして本家の魔王的存在・従兄の義孝。その過程で少しずつ広がって変わってゆく周囲との関係と、いろいろ過去や事実が少しずつ繋がってゆく構成はとても上手くて、切ないけれどぐっと来るものがある素敵な物語でした。

 

20.少女手帖 (集英社オレンジ文庫 2017)

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

 

周囲に迎合しグループ内で平穏に生きていくことに全力を傾けてきた女子高生の小野ひなた。ある日、憧れの同級生結城さんに誘われグループの約束をドタキャンしたことで周囲から孤立してしまう青春小説。これまで無難に生きることに心を砕いてきたはずが、偶然結城の秘密を知り興味を抱いたことで結果的に失った自分の居場所。息苦しい狭い世界でどう生きるのかというお話でしたけど、焦燥を募らせていた彼女が姉や師匠、結城さんなど、たくさんの人と話し合い悩みながらもこれまでの自分を省みて、大切なことを見出してゆく姿はとても印象的でした。

 

以上です。 やっぱりつくづく思いますけど20作品でも少ないですね…そこの枠に入らない作品が出てきてしまうのは仕方ないんですけど。あとは「一般文庫」「単行本」編ですが、このペースなら何とかなりそうです(たぶん)。ライト文芸については別途下半期企画でもたくさん紹介したいと思います。