今回は12月角川スニーカー文庫・HJ文の新刊感想まとめです。内訳は角川スニーカー文庫の新作5点、続巻2点、HJ文庫の新作1点、続巻3点、KADOKAWA新文芸の続巻1点の計12点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
女装の麗人は、かく生きたり (角川スニーカー文庫)
【第29回スニーカー大賞<銀賞>】
人類が精霊たちに従属して女性が優位な世界。成り上がるには闘技者となり『力』を示さねばならない国で、女装の麗人リオが精霊たちの常識を覆してゆくバトルファンタジー。たゆまぬ鍛錬の経験則は未来視に迫り、巨大な軍用大剣ひとつで血気盛んな闘技者たちに挑み、何の能力もない最も低い身分の人間ながら、上位の精霊とも渡り合うリオ。そんな際立った存在だからこそ様々な思惑が絡み合い、各方面から注目を集める存在になっていて、人間を滅しようとする一部精霊側の急進的な動きに利用され、逆に人間の反乱の旗頭として期待されるわけですけど、選択を迫られる中でも彼の中の大切なものは変わらなくて、一度は敗れたアネルドートに対峙する最後まで諦めない熱い展開はなかなか良かったですね。
白いドレスと紅い月がとけあう夜に (角川スニーカー文庫)
人間と魔族が共に暮らし始めた街で、両族間の事件にあたる《特務隊》。隊員の首無し死体が見つかり、容疑者とされた可憐な吸血姫ラヴィアが女剣士リンと事件に挑む謎解きファンタジー。血濡れた可憐な吸血姫ラヴィアと、特務隊員の首なし死体という状況を目の当たりにしたものの、現場証拠から彼女の犯行ではないと感じて、隊長を説得するために彼女と自分以外の血を吸わない契約を結んだリン。共に事件解決に挑む中で事件を語る視点が変わるたびに事件は様相を変えていって、浮かび上がる怪しい容疑者を追い、明らかにされる真の黒幕はやはり…と思った人物でしたけど、厳しい戦いを強いられる中でも、それまでの日常生活で積み重ねて深まっていた揺るぎない絆で乗り越えてみせた彼女たちのこれからが楽しみです。
僕はライトノベルの主人公 (角川スニーカー文庫)
【第29回スニーカー大賞<特別賞>】
世界を物語みたいに楽しいものにするため、メインヒロイン高嶺千尋が、仲間を集めて主人公として手塚公人を超文芸部にスカウトする青春メタフィクションラブコメ。超高性能な電子生命体ミカコに、庶民的お嬢様の薔薇園先輩、中二病のイケメンのシドといった仲間を集めて超文芸部を立ち上げた千尋。そんな中でその物語を描写する役割を期待される手塚が、仲間たちとともに手始めとして学校の七不思議に挑み、仲間たちの力も合わせて解決してゆくストーリーでしたが、そんな様々な事態が引き起こしていたのは千尋の異能であることに気づき、リセットされる危機にも直面するものの、彼女の望みを叶えて物語を完結に導くために、仲間たちの助けも借りて手塚が主人公として奔走した結末はなかなか良かったです。
路地裏で拾った女の子がバッドエンド後の乙女ゲームのヒロインだった件 (角川スニーカー文庫)
路地裏で拾った女の子がバッドエンド後の乙女ゲームのヒロインだった件(1)
posted with ヨメレバ
カボチャマスク/へいろー KADOKAWA 2024年11月29日
乙女ゲーム世界に転生し、王立魔法学院の下級貴族クラスに通うアッシュ。る日、雨に打たれながら路地裏で蹲っている少女フィーネに出会う学園ファンタジー。バッドエンドルートに巧みに誘導されて貶められ変わり果てた姿に、最初は正ヒロインと気づかないままフィーネを救ったアッシュ。どん底の状態から救ってくれた恩人を慕う気持ちに気づかない鈍感さには苦笑いでしたけど、学園に通う傍らで冒険者として鍛えて金も稼ぐアッシュが彼女を保護して悪女と貶める学院の四騎士と友人のエリーゼに相手に立ち向かい、彼女の名誉回復を賭けた決闘で装備頼みの相手に圧倒する展開は痛快でしたね。今後に向けていろいろ広がりそうな要素もしっかりあって、これからの展開が楽しみなシリーズです。
極悪非道な性癖貴族が努力したら誠実ハーレムつくれました (角川スニーカー文庫)
極悪非道な性癖貴族が努力したら誠実ハーレムつくれました(1)
posted with ヨメレバ
木嶋 隆太/ふつー KADOKAWA 2024年11月29日
メイドとのSMプレイ中に転生者だと思い出したドMなゲームの悪役貴族レイス。破滅エンドしかないことを悟った彼が運命に抗う事を誓うハーレムファンタジー。破滅回避のために原作知識を活かして地力の底上げを図りながら、空間魔法を活かした冒険者として活動を始めるレイス。性癖がアドレナリンブーストといった限界突破にも繋がるのが物語のポイントで、彼の変化を思わぬところから知った婚約リームや、お兄ちゃんとして甘えたい年上の冒険者イナーシア、承認欲求に飢える鍛冶の天才ヴィリアスといった、やや変わった性癖のヒロインたちに慕われて、変わった彼を知る支持者たちも少しずつ増えていく中で、運命のターニングポイントとなるスタンビードに挑む熱い戦いの結末はなかなか良かったです。
人類すべて俺の敵2 (角川スニーカー文庫)
全世界を敵に回して天使たちと対峙し、世界でただひとり魔王レーヴェの隣に並ぶ憂人。逃亡を続ける彼らのもとに次なる天使・林鈴麗が迫る第2弾。人類の存続を巡る聖戦の中で、レーヴェに愛を知ってほしいと切なる願いを抱くようになっていく憂人。一方、邂逅した第2使徒で類最強と呼ばれる鈴麗にもまた暗殺者として生き抜いてきた中でいつまでも忘れられない過酷な過去があって、使徒側にもこの戦いの複雑な背景が共有されていきましたが、使徒側もこの戦いに対する様々な思いから一枚岩でもなかったりして、2人にとってなかなか厳しかった状況から、ようやく味方と思しき人も出てきた今後の展開が気になるところです。
時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん 裏話 (角川スニーカー文庫)
時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん 裏話
posted with ヨメレバ
燦々SUN/ももこ KADOKAWA 2024年11月29日
ロシデレ本編の内容を補完する、本編では描かれなかった文庫未収録の短編27話に豪華書き下ろし5話を加えた珠玉の短編集。買い物中の政近と有希を目撃したアーリャさんのストーキング、オタ活していた有希の政近とアーリャさんのデートを尾行、生徒会メンバーによる個性豊かな猫カフェ訪問、体育祭の騎馬戦練習でのプールほか、いろいろな意味で破壊力のある九条姉妹に振り回される政近や彼女たちに目をつけている手芸部、綾乃の様々な一面やサイコパス乃々亜など、シリアスな展開も多い本編の合間にあるエピソードを描く中で魅力的なキャラたちの掘り下げがされていて、ほしい場所にもしっかりとイラストがあるなかなか楽しめる短編集になっていました。
楽園守護者の最強転生1 (HJ文庫)
楽園守護者の最強転生 1 出来損ないの神話のゴーレム、現世では絶対防御の最強従者になる
posted with ヨメレバ
紺野千昭/江田島電気 ホビージャパン 2024年11月29日
神話の時代に出来損ないと呼ばれたゴーレムが、一万年以上の時を経て少年レナとして目を覚まし、自由を得た彼が厄災王の娘リリスの従者となる学園ファンタジー。悪名高き闇の皇帝の娘として狙われる立場でありがなら、自由を望み魔術学園に通うことを決意したリリス。彼女の意思を尊重してその従者として共に入学するレナ。リリスが周囲から敵視される中で、掴みどころのない感じながらも要所は締める対応をする一方、彼女になかなか友人ができないことを気に掛ける様子には苦笑いでしたけど、悪辣な悪魔も絡んだ事件では彼女とともに戦ってその力の一端を見せたりとメリハリも効いていて、未だ謎も多くこれからどんな展開が待っているのか、今後が楽しみなシリーズですね。
やがて黒幕へと至る最適解 2 (HJ文庫)
死の運命にある主アルテシアを死から救うために未来より回帰し、錬金魔法のオルナメント公爵家を秘密裏に掌握したカルツ。次の標的を聖女を象徴とし神聖魔法を操るサンクトゥス公爵家に定める第2弾。サンクトゥス公爵家攻略の鍵はサンクトゥスの金塊と贋金、誇り高き竜の守り人、そして聖女の証たる聖杯の秘密。協力者でもあるカルツが大好きすぎるお姉さんたちには苦笑いでしたけど、明らかにされていく竜と聖女を巡る昔からの関係性があって、そこから真の聖女を見つけ出して覚悟を問い、彼女を助けながら偽りの聖女と対峙していく展開は、その事後処理の落とし所もなかなか上手く考えられていて、主を助けるために仲間も増やながら計画を進めていく今後の展開が楽しみです。
リピート・ヴァイス 3 ~悪役貴族は死にたくないので四天王になるのをやめました~ (HJ文庫)
リピート・ヴァイス 3 〜悪役貴族は死にたくないので四天王になるのをやめました〜
posted with ヨメレバ
黒川陽継/釧路くき ホビージャパン 2024年11月29日
破滅の誘因となる豪商ギランと敵対するローファス。ゲームヒロインの一人、空賊リルカとギランの因縁を知った彼が、空賊《緋の風》に協力してギラン邸を襲撃する第3弾。囚われたヴァルムを救うべくローファスの前に現れた謎の少女ユンネル。一方、空賊《緋の風》もローファスに協力を仰いでギランに捕まった仲間の救出に動く展開で、ヴァルムには何かと容赦ないなと思ったり(苦笑)、意外な事実を明かしたリルカとの関係がこれからどうなるかも気になるところで、一方で激闘を繰り広げた天敵ともいえる最強の殺し屋・血染帽はなかなか存在感あるキャラでしたね。ヴァルムとの熱い激闘の結末もなかなか来るものがありましたが、無茶をしがちな息子に対して父親のルーデンスは何だかんだで甘いですね(苦笑)
凶乱令嬢ニア・リストン 7 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録 (HJ文庫)
凶乱令嬢ニア・リストン 7 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録
posted with ヨメレバ
南野海風/刀彼方 ホビージャパン 2024年11月29日
ニアの提案から始まり、気付けば世界各国から一万人以上が集まる一大イベントになっていた武闘大会。予選から国を揺るがす程の大盛り上がりを見せる第7弾。強者を見いだせるニアの選出による注目選手の似顔絵が国中を飛び交い期待が高まる中、国王により開催が宣言されて様々な視点から大会が語られる大会では、ニアの弟子たちや各国の強者による最初から大番狂わせもあり大盛り上がりを見せて、ニアもインタビュアーとして奔走する展開でしたけど、大会参加に様々な想いはあってもやはりニアの弟子たちはちょっと強すぎましたね(苦笑)今回はアンゼルがなかなかかっこよいところを見せていて、ニアも意識せずにいられないベンデリオの存在感も光っていました。
TS衛生兵さんの戦場日記IV
南部戦線での快進撃により、サバト軍を国境のタール川の向こうへと撤退させたオースティン軍。一方、トウリ《過去》とセドル《現在》二つの運命がついに交錯する第4弾。出会った若き天才参謀ベルンの異様な雰囲気に恐怖を覚えるトウリが、なぜか気に入られて彼から託された任務。ベルンが画策する悪辣のサバト崩しであと一歩というところまで追い詰めながら、、そこから予期せぬ事態が重なった末に起きた少なくない犠牲と、不運だったトウリたちが陥った思わぬ窮地。英断が厳しい状況を変えることはあっても、誰しも対応できる限界はあって、ここでFPSの経験が活きるとは思いませんでしたけど、覚悟していたとはいえそれがもたらした結末には来るものがありましたよ…現在のこの終わり方は気になるところです。