読書する日々と備忘録

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2019年上半期注目のオススメ新作単行本20選

どうも若干時期を逸した感もありますが、2019年上半期注目のオススメ新作企画第五弾の単行本編です。読みたい本が多すぎて後追いになっているという状況もあり、読み残している積読をどこまで消化してから作るか迷いましたが、ここで諦めて作ることにしました(苦笑)今回読んだ一般文芸単行本の中から20作品選んでいます。

 

1.探偵はぼっちじゃない

探偵はぼっちじゃない

探偵はぼっちじゃない

 

理事長の息子という立場を持てあましながらも「よき教師」であろうと日々奮闘する新任教師の原口。受験生として屈託多き日々を送る中学3年生の緑川光毅。二人の視点から進むミステリ。やる気のない教師に見えていた同僚教師・石坂の意外な姿を知る原口。未来に希望を感じられない光毅と同級生の星野の出会い。それに光毅の作中作も絡めてそれぞれ進でゆくストーリーが、自殺サイトに自校の生徒がいることをきっかけに繋がってゆく展開とその結末はなかなか良かったです。中3の夏休み時に書いたデビュー作とのことで、今後に期待の作家さんですね。

2.愛を知らない

愛を知らない

愛を知らない

 

ヤマオの推薦で合唱コンクールのソロパートを任された高校二年生の橙子。親戚でクラスメイトの涼の視点から彼女の苦悩と決意が描かれる青春小説。気難しくて周囲から浮いていた橙子に期待するヤマオ、一緒に練習することになった伴奏役の涼と委員長で指揮者の青木、共に過ごす中で意外な一面を見せてゆく橙子が抱える苦悩。これまで見えていたものがガラリと反転した世界で、どうにもならないところまで拗れてしまった関係があって、やりきって勝ち取った結果にはぐっと来ましたが、だからこそその先にあったこの物語の結末が胸に突き刺さりました。

3.友達未遂

友達未遂

友達未遂

 

伝統と格式のある全寮制女子高・星華高等学校。その寮で不審な事件が次々と起き、ルームメイト4人が巻き込まれていく青春小説。家に居場所がなかった茜、学校で伝説となっている母を持つ生徒会長の桜子、美工コースの憧れの先輩・千尋、周囲に迎合しない天才肌の真尋。複雑な家の事情や周囲の評価とのギャップに鬱屈を抱えていたりと、一人ひとり語られてゆくそれぞれの過去。けれど今まで見えていたものが全てではなくて、自分をきちんと見て気にかけてくれる人がいて、少しずつ変わってゆく彼女たちが迎えた結末にはぐっと来るものがありました。

4.夏の陰

夏の陰

夏の陰

 

15年前、警官を射殺した末に自殺した犯罪者の息子・倉内岳と、殺された警官の息子・辰野和馬。そんな二人が剣道を通じて再会してしまい、複雑な想いを募らせてゆく物語。世間から背を向け、公式戦にもほとんど出場したことがなかった岳と、因縁の京都県警で思いを燻らせていた和馬。岳が恩師のために一度だけ出場した全日本剣道選手権の京都予選で二人が激突する展開で、明らかになってゆく事実やエピローグが事件の印象を少し変えたりもしますが、それでもこういう過去や抱えてきた思いは消えないし、そうそう割り切れるもんでもないですよね。 

5.だから殺せなかった

だから殺せなかった

だから殺せなかった

 

 大手新聞社の社会部記者・一ノ木透の許に届いた一通の手紙。「ワクチン」と名乗り、首都圏全域を震撼させる連続殺人犯が紙上での公開討論を要求し、苛烈な報道合戦に巻き込まれていく物語。低迷する新聞売上を打開するため、自らの悔恨記事を載せた一ノ木。連続殺人犯に指名されて対話するなかで問われる新聞や報道のあり方、並行して取材を進めてゆくうちに少しずつ明らかになってゆく事件を巡る全貌。ほろ苦い決着の先にはこの物語の印象をガラリと変えてしまうもう一つの事実があって、ジャーナリズムとは何かを改めて突きつけられた結末でした。

6.同潤会代官山アパートメント

同潤会代官山アパートメント

同潤会代官山アパートメント

 

関東大震災で最愛の妹を喪った八重は、妹の婚約者だった竹井と結婚。昭和と共に誕生してその終焉と共に解体された同潤会代官山アパートを舞台に繰り広げられてゆく家族の物語。最初は最新式の住居にも新しい夫にも上手く馴染めなかった八重と夫・竹井、娘・恵子とその夫・俊平、孫の浩太と進、浩太の娘・千夏と、世代を超えて綴られてゆく物語には、それぞれが積み重ねてきた年月があって、物語に登場する人たちも時代も確実に変わってゆく様子が描かれている一方で、それでも変わらない大切なものがあるんだなと改めて実感させてくれた物語でした。

7.イシイカナコが笑うなら

イシイカナコが笑うなら

イシイカナコが笑うなら

 

いい先生として同僚にも羨望の眼差しを送られる教師・菅野。醒めた内心と虚像のギャップに苦しむ彼の前に、かつて自殺した同級生の幽霊・イシイカナコが現れる物語。イシイカナコから持ちかけられる「人生やり直し事業」と二人で飛ぶ17歳の自分が生きる時間軸。そこでまさかの同級生と入れ替わって、生前の石井可奈子や高校時代の自分と関わってゆく展開はなかなか面白いアプローチで、ほろ苦い真実に葛藤しながらも逃げずに向き合ったそのありようと、「やり直しはできないが、失敗が許されないわけではない」 という言葉がとても印象的でした。

8.教室が、ひとりになるまで

教室が、ひとりになるまで

教室が、ひとりになるまで

 

北楓高校で起きた三人の生徒連続自殺事件。クラス内でも地味な存在の垣内友弘が、最高のクラスで起きた一連の不審死の謎を追う青春ミステリ。生徒に代々引き継がれてきた4つの特殊能力。不登校の白瀬美月から三人を殺した死神の存在を知らされた垣内が、突如引き継いだ特殊能力で他の能力者や犯人の正体を探ってゆく展開で、スクールカーストの力関係や伏線を巧妙に絡めながら、地味な特殊能力を駆使した殺人の結末へと導いていく展開はお見事。突きつけられた現実への失望があるからこそ、そんな彼にもたらされる一筋の光にぐっと来る物語でした。

9.エンド オブ スカイ

エンド オブ スカイ

エンド オブ スカイ

 

ゲノム編集技術によって老いや病から緩やかに遠ざかりつつある23世紀。謎の突然死「霧の病」を研究する遺伝子工学の権威ヒナコ・神崎博士が海から現れた少年・ハルと出会う近未来SF。ゲノム編集が推奨された香港に現れたオリジナルゲノムを持つハルと、どこか不安定なヒナコの交流の日々。「霧の病」が急速に拡大してゆく中でその原因が見えてきて、何が正常で異常なのかわからなくなる皮肉な展開でしたけど、周囲の人たちに支えられながらハルと向き合ったかけがえのない日々と、いくつもの伏線が回収された先にある結末が印象的な物語でした。

10.カモフラージュ

カモフラージュ

カモフラージュ

 

不倫相手と夜にホテルで食べるお弁当、夜に帰ると増えているお父さんたちの真相、メイドになりたい一心で上京したいとうちゃんの不安、昔の記憶に起因する桃に関するフェティズム、YouTuber三人組が配信中に起こした事件、半年前に振られたアラサーの心の傷などを描いた連作短編集で、最初は話題先行の小説なのかと思いながら読み始めましたが、ままならない状況に葛藤する登場人物たちの繊細な描写には光るものがあって、個人的にはわりと好みな作風でした。最後の「拭っても、拭っても」がいいですね。また書くようなら読んでみたいです。
11.麦本三歩の好きなもの

麦本三歩の好きなもの

麦本三歩の好きなもの

 

大学図書館勤務の20代女子、麦本三歩のなにげなく愛おしい日々を描いた日常小説。優しい先輩や怖い先輩、おかしい先輩などに囲まれながら、気になることを見つけたり、ミスしても懲りずにマイペースな日々を送る三歩。単純で天然だけどだけど何も考えていないわけではなくて、時には苦悩したり誰かのために奔走したり、変わった行動に走って先輩たちをドン引きさせたり、物語としては特に大きな山や谷があるわけではないですが、そんな日々を送るよくも悪くも真っ直ぐでお茶目な彼女が、先輩たちに可愛がられるのも何か分かるような気がしました。

12.育休刑事

育休刑事

育休刑事

 

生後三ヶ月の息子・蓮のため、刑事としては初めての育休に挑戦中の県警本部捜査一課・秋月春風。育休中なのになぜか次々と事件に巻き込まれてゆく物語。妻の親友でもある秋月の姉に助けられたり振り回されたりしながら、子連れで質屋強盗殺人事件に巻き込まれラッピングカーのアリバイ作りを目撃し、爆弾騒ぎに巻き込まれたりと、子連れで何度も引っ張り出されて事件解決に奔走する状況は育休としてどうなんだとも思いましたが、最後に明かされた妻の沙樹の事情を知ると育休に至った経緯には納得。彼らにはまたどこかの作品で会ってみたいですねー。

13.姑の遺品整理は、迷惑です

姑の遺品整理は、迷惑です

姑の遺品整理は、迷惑です

 

姑が亡くなり、住んでいたマンションを処分することになった嫁の望登子。業者に頼むと高くつくからと、自分で遺品整理をしようと奮闘する物語。生前あまり仲良くなかった記憶しかない姑の遺品整理。捨てられなくて溜まっていった膨大な遺品を孤軍奮闘で何とかしようとするのはさすがに厳しいものがありますよね…。でも整理を進める中で姑の意外な一面も明らかになっていって、比較対象だった母も他の人からみたらアレな一面もあって、直面したからこそわかったこともあったのかな。こういう時こそ人の繋がりが大事なのかなとしみじみと思いました。

14.マチのお気楽料理教室

マチのお気楽料理教室

マチのお気楽料理教室

 

ツアーコンダクターとして15年間国内外を旅してきて、義母の介護のために退職した常磐万智。旅先で料理について学んだ経験を生かし、義母の死去後自宅で料理教室を営むお料理小説。「どんどろけ飯」「トンテキ」「冷や汁」「ジンギスカン」「チキン南蛮」など、こじんまりとした料理教室で作られる郷土料理の数々と、参加する生徒たちの家族を絡めたエピソードがなかなか興味深かったですが、同時に物語の中で少しずつ明らかになってゆく常盤家の今に至るまでがなかなか複雑で、それを踏まえて物語を見返すと奥が深いな…と改めて唸らされました。

15.めぐり逢いサンドイッチ

めぐり逢いサンドイッチ

めぐり逢いサンドイッチ

 

大阪の靱公園そばにあるサンドイッチの専門店『ピクニック・バスケット』で働くおっとりした姉笹子としっかり者の笹子の姉妹。店を訪れる人達の迷える人々の心を、絶品サンドイッチが癒やす優しくも愛おしい物語。対照的な姉妹に、子供のころの記憶に苦しむOLや父の再婚に悩む少女、そして常連客の小野寺さんやパン職人の川端さんのエピソードも交えつつ、笹ちゃんが訪れた人たちの想いに寄り添うようなサンドイッチを作り上げてゆく展開で、関わる人たちの様々な想いに触れ、過去エピソードも絡めて絆を深めてゆく姉妹の関係がとても素敵でした。

16.まよなかの青空

まよなかの青空

まよなかの青空

 

結婚を前提に交際していた相手の母親から、手切れ金と共に息子と別れるよう言い渡された33歳のひかる。傷心の彼女が様々な人と再会し、「ソラさん」のからくり箱の話を思い出す物語。偶然再会した高校時代の同級生・日菜子や幼馴染の達郎。そこから運命に導かれるように繋がってゆくいくつもの縁と、明らかになってゆく家族の過去や「ソラさん」の謎。登場人物たちの誰もが過去に悔いを抱えていて、長らく苦しめられていた呪縛と久しぶりに向き合うことになって、過去はやり直せませんが、それでも希望が見える結末には救われるものがありました。

17.何度でも、紙飛行機がとどくまで

何度でも、紙飛行機がとどくまで

何度でも、紙飛行機がとどくまで

 

10年前に出会って結婚し、もうすぐ子供が生まれるはずだった明良と千花。二人が事故に遭遇し出会う日の10日前に戻って抜け出せないループに気づく青春小説。友人たちの協力を得て再び千花と出会い、自らの人生をやり直そうとする明良。しかし些細な差異がやり直しに繋がり、やり直すたびに少しずつ失われてゆく彼女の記憶。この物語の重要なポイントになったもうひとつのエピソードも印象的で、試行錯誤の中で垣間見えた別の幸せや未来を知りつつも、最後まで諦めなかった二人の物語の結末に残されたもう一つの可能性を信じてみたくなりました。

18.御徒町カグヤナイツ

御徒町カグヤナイツ

御徒町カグヤナイツ

 

仲間とともに青春を無防備に過ごしていた中学生・ヒロトの前に現れた一人の少女。特別な絆で結ばれたヒロトと3人のワケありな少年たちが月の王国の女王の娘を自称するノゾミを護るため「御徒町カグヤナイツ」を結成する青春小説。ヤクザの息子ケイゴ、中国人の頭脳派・ソン・器用なカトウといったワケありな仲間たちのままならない問題を一緒になって解決しつつ、仲間となって共感し羨望の眼差しを向けるノゾミとの甘酸っぱい恋と現実に直面する展開で、中学生の彼らができる精一杯で件名に向き合ったその真摯な姿にはぐっと来るものがありました。

19.ミネルヴァの梟は飛び立ちたい ~東雲理子は哲学で謎を解き明かす~

ミネルヴァの梟は飛び立ちたい ~東雲理子は哲学で謎を解き明かす~

ミネルヴァの梟は飛び立ちたい ~東雲理子は哲学で謎を解き明かす~

 

 外部から城京大学大学院に進学した東雲理子。修士課程で哲学を専攻する彼女が、海外帰りの新指導教員・大道寺哲の助けを借りながら日常の謎に挑む哲学ライトミステリ。返却したはずなのに戻ってくる哲学辞典、ある日を境に姿を見せなくなった喫茶店の常連、休みのない古本屋の理由、何度待ち合わせをしても会えない友人、研究室に代々伝わる謎の掟など、身近で起こった謎を哲学を絡め解き明かしていくエピソードを八編収録。理子と父親の関係は気になりますが、大学で哲学を教える研究者である著者さんの文章は読みやすく書かれていて楽しめました。

20.これは花子による花子の為の花物語

これは花子による花子の為の花物語

これは花子による花子の為の花物語

 

 高校時代の人間関係のトラウマをきっかけに、家から出られなくなり引きこもっていた花子。唯一の外との繋がりだったゲームアプリを通じてフリーターのレンと運命的な出会いを果たす恋の物語。積み重ねた二人の交流によって育まれてゆく想いと会う約束。緊張のあまり気を失う花子と、会っていないはずなのにいつのまにか増えていくレンとの思い出。お互い自信がなくて不安を隠せない二人を密かに支えてくれた存在があって、二人を繋ぐ運命的な繋がりもあって、過去を乗り越えた二人が勇気を持って一歩踏み出して未来に繋がってゆく素敵な物語でした。

 

以上です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。