読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2019年1月に読んだ新作おすすめ本

1月は新作もなかなか粒ぞろいで、注目は何と言っても新レーベルでもある電撃の単行本で刊行された「Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王」。是非最後まで書籍版で刊行して欲しいです。あとは実は先月刊行されて注目していたオーバーラップ文庫の「虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん」と別名義同著者だったらしいファンタジア文庫「撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろ」、スニーカー文庫の「1/2―デュアル―」、青春小説では「やがてはるか空をつなぐ」(ファミ通文庫)、「子守り男子の日向くんは帰宅が早い。」 (角川スニーカー文庫)も注目ですね。

 

ライト文芸レーベルでは富士見L文庫「わたしの幸せな結婚」、タイガの「世界で一番かわいそうな私たち」「神様のスイッチ」、新装版で再刊スタートしたメディアワークス文庫の「七姫物語」、一般文庫ではほしおさなえさんの「三ノ池植物園標本室」、柊サナカさんの「機械式時計王子の休日」、佐藤青南さんの「たとえば、君という裏切り」を挙げておきます。

 

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

 

 幼い頃に受けた『子孫を残せない呪い』を解呪するため、強国ファルサスの王太子・オスカーが試練を乗り越えたものに望みのものを与える魔女・ティナーシャの塔に挑むファンタジー。解呪が容易でなく呪いに負けない女であればいい、という状況で目の前に好物件がいたことに気づき求婚するオスカー(苦笑)わりとシリアスな展開ですが繰り返される二人のやりとりが微笑ましくて、感化されつつも容易には頷きそうもない孤高の魔女・ティナーシャが、どんどん強くなってゆく諦めが悪そうなオスカー相手にどこまで頑張れるのか、続巻が今から楽しみです。

機甲車と弾丸魔法による凄絶な戦争が続く世界。戦いの中で亡霊を名乗る少女・エアと出会い、被弾者の存在・功績を消滅させる悪魔の弾丸を入手した学生兵・レインが、戦争を終わらせようと立ち上がるミリタリックファンタジー。授けられた弾丸を使って世界を再編していくレイン、謎めいたエアの過去と亡霊を巡る因縁。レインの学生らしい生活と背中合わせの容赦ない戦争の凄惨さがうまく描かれていて、因縁の決着をつけるために戦う二人の間で育まれてゆく絆が印象的でしたが、最後の気になるエピソードが何をもたらすのか続巻に期待ということで。 

殺されヒトとしての一部分を失い、引き替えに特殊能力を得て生き返る偽生者。偽生者を殺し直すために生きる限夏が、不老不死な偽生者の少女・伴を相棒とする近未来SF。ぎこちない距離感から始まった二人が挑む、偽生者による国家統一を掲げたテロ事件発生と、首謀者と伴を巡る凄惨な因縁。そんな彼女に限夏がいかにして並び立つ存在になりうるのかが問われる展開でしたけど、絶妙のタイミングで複雑な過去や葛藤も絡めつつ、絶望する彼女が直面する最悪の状況にも最後まで諦めずに挑み、見事に伴の相棒たることを証明してみせた結末は見事でした。

やがてはるか空をつなぐ (ファミ通文庫)

やがてはるか空をつなぐ (ファミ通文庫)

 

高校の物理部でバルーン実験に勤しむロケットオタクの青桐七海、プログラマー山花俊、天真爛漫な後輩・町田佐奈。実験の当日、彼らが近くの高校に通う赤森遙と出会う青春小説。ロケットを打ち上げることに執着する七海が抱える悔恨、遙がロケットを打ち上げたい理由、そして後輩・佐奈や七海の予備校の友人・柊、そして俊のそれぞれの想い。それぞれに悔やみきれない苦い過去があって、ままならない複雑な事情も交錯する狂おしいまでの真摯な想いがあって。それでも彼らが勇気を出してぶつかりあった先にあった結末にはぐっと来るものがありました。

子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

 

両親が共働きで5歳の妹・蕾のために日々を過ごす子守リ男子・新垣日向。そんな彼が偶然クラスメイトの芹沢悠里とスーパーで出会ったことをきっかけに、その高校生活が変わってゆく青春小説。蕾の可愛らしさに魅せられ、日向を意識するようになってゆく悠里。そんな二人を面白がる悠里の親友・唯やヒロインたちに振り回される日向の親友・雅も関わるようになって、疎遠になっていた後輩・日和との再会もあって。物語としてはまだまだこれからな感もありますが、変わり始めた日向の高校生活がどうなってゆくのか、今後に期待大の新シリーズですね。 

食べないお嬢と魔術学園の料理番 (ファンタジア文庫)

食べないお嬢と魔術学園の料理番 (ファンタジア文庫)

 

魔術よりも美味い食堂の料理が話題の王立魔術学園のスゴ腕料理番カイル。彼を敵視する生徒会長レクティアが魔術組織に襲われ、カイルが立ち上がる学園バトルファンジー。学園の状況を危惧するレクティアが抱える特殊事情と、美味しく食べてくれるみんなの笑顔のために奮闘するカイル。最初はツンデレチョロインとのグルメものかと思いましたが、ワケあり料理番が辛い過去を抱える少女の笑顔を取り戻すために包丁や魔術を組み合わせて敵と戦う王道展開で、いい感じに結末をまとめつつも続編あるならまた読んでみたくなるポテンシャルはありました。

炎の姫と戦国の魔女 (講談社X文庫)

炎の姫と戦国の魔女 (講談社X文庫)

 

豊臣秀吉の起こした戦で、異国生まれの母を亡くした赤髪の少女・千寿。母の仇を討つために京へ向かった彼女が、関白秀次に輿入れの最中に賊に襲われた熊谷成匡の末娘晴姫と出会う物語。天女のごとき姿を偽僧姿に変えて、鉄砲鍛冶の養父が造った唯一無二の鉄砲〈でうす〉を携える千寿。賊に襲われた晴姫一行を救い、護衛として共に京を目指す道中。ともに過ごすうちにで育まれてゆく千寿と晴姫の絆。明らかになる千寿の数奇な生い立ちと晴姫が巻き込まれた政変が複雑に絡み合って、動き出した運命がどのような展開をもたらすのか続巻が楽しみですね。

炎の姫と戦国の聖女 (講談社X文庫)

炎の姫と戦国の聖女 (講談社X文庫)

 

晴姫のために最上の駒姫を救おうと実父・秀吉と対面を果たす千寿。何とも複雑な思いを抱える彼女が、実母・カテリナを利用する南蛮貿易商人・大野木双悦の陰謀に巻き込まれてゆく第二弾。仇として狙っていた実父秀吉に対する複雑な思いの変化と、運命に導かれるように生きていたカテリナと再会する千寿。大野木の陰謀が明らかになっていく中でカテリナから娘同然に扱われていたお紋と千寿とのらしい関係も絡めつつ、自分ではどうにもならない運命に翻弄されながら、自分の意思で生きようとする戦国の女たちのありようが読んでいて心地良かったです。

 

わたしの幸せな結婚 (富士見L文庫)

わたしの幸せな結婚 (富士見L文庫)

 

名家に生まれたものの実母を早くに亡くし、継母と義母妹に虐げられて育った美世。そんな彼女が名門だけれど冷酷無慈悲と噂の若き軍人・清霞への嫁入りを命じられる物語。義妹のように異能も発現せず、使用人のように扱われていた美世に訪れた転機。我儘放題のお嬢様に辟易していた清霞と、自信なさげだった美世が少しずつ心を通わせてゆく積み重ねがとても良かったですね。因縁ある彼女の実家とはとりあえず決着が付きましたけど、彼女の生い立ちにまつわる謎もまだ残っていて二人のその後も見たいですし、是非シリーズ化に期待したい作品です。

戦後最大の未解決事件「瀬戸内バスジャック事件」に巻き込まれたあの夏から声を失った三好詠葉。舞原杏が教壇に立つフリースクールで学ぶ彼女が教師・佐伯道成と出会う物語。事件に振り回され、居場所と声を失ってしまった詠葉が巡り合った一冊の小説とフリースクール。そこで教師として働くことになった佐伯。不器用で不確かな詠葉の想いと、生徒と真摯に向き合って何とかしようと奔走する佐伯。正解なんてない生徒と向き合うことの難しさを痛感する展開でしたけど、最後の急展開からどんな物語が紡がれてゆくのか、続巻に期待の新シリーズですね。

神様のスイッチ (講談社タイガ)

神様のスイッチ (講談社タイガ)

 

同棲相手との未来に迷うフリーター、街を警らする女性警察官、親友の彼女に横恋慕する大学生小説家、駆け出しやくざ、八方美人の会社員。神様が押した偶然という名の奇跡のスイッチによって繋がってゆく一夜限りの物語。年齢も生い立ちも違う五人それぞれの視点から始まるストーリーで、最初は頻繁に視点が切り替わる展開に困惑しましたが、話が進んでゆくごとに明らかになってゆく登場人物たちの意外な接点があって、それらが交差するたびに起きる変化を巧みに活かしつつ、それぞれのエピソードにもたらされた結末には心地よい読後感がありました。

今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います (集英社オレンジ文庫)

今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います (集英社オレンジ文庫)

 

些細なきっかけから直属の上司の執拗な嫌がらせを受け疲弊してゆく玲美、上司の主任に不当に厳しく扱われる正社員を目指す契約社員2年目の麻里子、妊娠で異動した奈々が直面するコネをタテに傍若無人に振る舞う豚上司。癖のある上司に目をつけられてしまい、理不尽に追い詰められて余裕を失ってゆく彼女たちの心理描写がリアルで辛かったですが、そんな彼女たちが遭遇する不可思議な出来事と、横暴な上司たちが迎えた因果応報ともいえるどこかホラーじみた結末には薄ら寒さも感じたものの、それでも彼女たちが救いを感じられる結末で良かったです。

遺体に触れると死の瞬間を追体験できる「夢視者」の能力で事件を解決に導く特殊捜査官・笹川硝子。意味深な言葉を残して突如失踪した先輩捜査官の行方を追ううちに意外な事実が明らかになってゆく物語。失踪を追う中で明らかになってゆく、硝子が生まれ育った研究所の火災で人生が変わってしまった人々、夢視捜査の際に使用される薬品を巡る疑惑。捜査線上に硝子と親しい関係者が次々と浮上する難しい状況で、それでもきちんと向き合おうとした彼女が辿り着いた結末は何ともほろ苦かったですが、硝子に希望も垣間見える最後には救われる思いでした。

ナヅルとハルヒヤ: 花は煙る、鳥は鳴かない (集英社オレンジ文庫)

ナヅルとハルヒヤ: 花は煙る、鳥は鳴かない (集英社オレンジ文庫)

 

花煙師について街を出たナヅル。不在中に花煙師の出入りを禁止することが決まったマキヨノで、仕事も愛する女性も得て安定した生活を送るハルヒヤが花煙師になっていたナヅルが十年ぶりに再会する幻想抒情譚。少女・ヤヒナとともに街に戻ってきたナヅルの目的。恋人のアヤリとともに二人を世話しようとするハルヒヤ。お互い大切なのに言葉足らずで、なかなか上手く伝わらずすれ違う想いがもどかしかったですが、それぞれに譲れない生き方があって、複雑に絡んだ因縁に決着をつけるべく苑主の元に向かうナヅルのありようがとても印象的な物語でした。

恵まれた美貌とスタイルを持ちながら刹那的な生き方をするOL恵里子。そんな彼女が頼りなくも一途に思ってくれるワンコ系オタク男子・小霞と出会う恋と再生の物語。今回は千紗の親友・恵里子が主人公で、素敵で優秀なのにクズな両親たちの呪縛で投げやりにしか生きられない彼女に切なくなりましたけど、もっと前向きに生きるよう叱咤激励してくれた恵里子を意識するようになって、オタクだけど真摯に向き合ってくれる小霞の心意気に、恵里子だけでなく自分も救われる思いでした。それにしても千紗たちは相変わらずというか、お似合いの二人ですよね(苦笑)

七つの都市が先王の隠し子と呼ばれる姫君を擁立し、国家統一を目指して割拠する大陸の片隅で、テン・フオウ将軍とその軍師トエル・タウに担ぎ出された少女カラスミが七宮カセンの姫として自らの運命に向き合うオリエンタルファンタジー。七宮の姫としてトエとテンの側にいられる幸せを噛みしめるカラスミと、そんな日々を脅かす三宮・四宮のカセン侵攻。七人の姫たちはそれぞれ背負うものがあって、困難に逃げずに向き合う12歳の少女・カラスミの成長と二人の絆、そして七宮を巡る情勢がこれからどうなってゆくのか、続巻に期待のシリーズですね。

カトリングガール: 虫好きな女子って変ですか? (光文社キャラ文庫)

カトリングガール: 虫好きな女子って変ですか? (光文社キャラ文庫)

 

可愛いもの好きで虫嫌いの新人東京都職員の三好幸紀。出向することになった国立感染症研究所の研修で、見た目美少女なのに虫が大好きな昆虫学者・香取理緒の指導を受けることになる物語。人付き合いが苦手で虫大好きな理緒に戸惑いながらも、時折無防備な姿にドキドキしたり、研修で一緒に公園調査に行ったりする二人。正反対で一緒にいることにぎこちなかった二人が、殺傷力の高い鳥マラリアに脅かされるペンギンを救うために奔走するうちに、共感できる理解者を見つけたようなもう少し時間がかかりそうな、もどかしい距離感が微笑ましかったです。

 

職場で心身をすり減らし会社を辞めた風里。散策の途中で見つけた古い一軒家に住むことになった彼女が、近くの三ノ池植物園標本室でバイトを始める物語。導かれるように見つけた家と標本室での植物の標本作りの仕事、苫教授たちやイラストレーターの日下さん、編集者の並木さんたちとの出会い、おぼろげながらに見えてくる特技の刺繍を活かす道。しっくりと来る仕事とかけがえのない人たちに出会い、刺激を受け自分の居場所を得てゆく彼女と、書道家の娘・葉の揺れる想いが描かれるもうひとつの物語がどう絡んでゆくのか後編が気になる展開でした。 

風里が暮らす古い一軒家に眠る悲しい記憶。高名な書家・村上紀重とその娘・葉、葉と恋仲になる若き天才建築家・古澤響、過去の出来事が浮かびあがるうち風里にも新たな試練が訪れる下巻。父と娘であると同時に師弟関係でもあった紀重と葉の複雑な親子関係。紀重が倒れたことをきっかけに病んでいく葉とその恋人・響の関係。いろいろと過去が明らかになってゆく中で意外な繋がりがあることも見えてきて、転機を迎えて悩みながらも前向きに生きようとする決意する風里が、届かなかった想いを繋げて未来を切り開いてゆく結末はなかなか良かったですね。

機械式時計王子の休日 千駄木お忍びライフ (ハルキ文庫)

機械式時計王子の休日 千駄木お忍びライフ (ハルキ文庫)

 

千駄木すずらん通りで四代続くトトキ時計店。三つ子を抱える妹・桜子を手伝う母に代わり店番をすることになった十刻藤子が、スイスから来た兄弟と出会う下町ミステリ。亡き父との苦い思い出に囚われて前に進めないでいた藤子と、上の階に入居した訳ありのジャンとアキオ。時計バカな二人と屋上の時計塔を二十年ぶりに動かそうと試みたり、身の回りの出来事を時計を絡めて解決したり、気のいい彼らとのやりとりを積み重ねてゆくことで、少しずつその過去も解きほぐされ変わっていった彼女のリスタートと彼らとのほどよい距離感がとても好みでした。

たとえば、君という裏切り (祥伝社文庫)

たとえば、君という裏切り (祥伝社文庫)

 

病に冒されたベストセラー作家に最期のインタビューをするしがないライター、アルバイト先の常連の女子大生に恋をする大学生、公園で出会ったお姉さんから遠い国のお話を聞くのを楽しみにする少女の複雑な思い。抱いていた憧憬が複雑に変化してゆく様子が描かれる中編三作品で構成される本作ですが、読んでいくとそれぞれのエピソードには示唆するような発見があって、そこにはいつも誰かを想うその人がいて、真相としてはこんな感じなのかなと思いかけたところに用意された結末で、自分が思ってもみなかった純愛と裏切りの意味に気付かされました。

就職も決まった短大二回生の秋。篠崎千晴は叔母からずっと存在を知らされていなかった叔父を紹介され、その出会いから人生が変わってゆく再生の物語。両親の不仲に振り回され実家にも帰らなくなっていた千晴が出会った叔父・シン。彼とその彼女・レイコと共に過ごすうちに癒やされてゆく千晴の心境の変化があって、彼女との出会いがシンにとってもありようを変えるきっかけとなって、どこか似た者同士だった二人がそれぞれ迎える転機と、そのかけがえのない絆を信じられるからこそお互いが前に進むきっかけへと繋がってゆくとても素敵な物語でした。

時間屋 想いをつなぐ祇園の時計師 (双葉文庫)

時間屋 想いをつなぐ祇園の時計師 (双葉文庫)

 

父親の転勤で京都の祖父母のもとに引っ越してきた高校生の江野崎菜奈。祇園白川通りにある時計屋で時計師を目指す大学生・幸也と出会う物語。街に不慣れな彼女を何かと気にかけてくれる幸也に会ううちに、彼の特殊な能力に気づく菜奈。助手として一緒に事故を防いだり、知り合いの過去の謎を解き明かしたり、菜奈の母と幸也の父の過去を知ることになったり。ここまで縁があるなら二人の関係にもう少し踏み込んでも良かったような気もしますが、一緒にタイムリープしながら過去の悔恨を解きほぐしてゆくいくつかのエピソードは悪くなかったですね。

revisions リヴィジョンズ 1 (ハヤカワ文庫JA)

revisions リヴィジョンズ 1 (ハヤカワ文庫JA)

 

幼い頃、仲間たちとともに誘拐事件に巻き込まれた自分を救ってくれた謎の女性・ミロの言葉を信じて生きてきた大介。高校二年になって、突如渋谷の街ごと300年以上先の時代へ転送されるSFアニメのノベライズ。パンデミックで荒廃した300年以上先の未来が舞台で、人類を救うためにミロのいるアーヴとリヴィジョンズという組織が対立する中、翻弄される渋谷民たち。人型機動兵器に乗って戦う主人公・大介の英雄気取りの自意識過剰が痛いですが、仲間たちと一緒に戦う現実の中で少しは意識も変わりましたかね…続編も読んでみようと思います。

 

 

会社を綴る人

会社を綴る人

 

 何をやってもうまくできない紙屋が家族のコネを使って就職した老舗の製粉会社。仕事のできなさに何もしないでくれと言われる彼が唯一の特技・文を書くことを活かして自分にできることを探し始めるお仕事小説。インフルエンザ告知や提案資料、社内報コラムの代筆、議事録などに文章を書くことにはこだわりを持って取り込む紙屋と、そんな彼をライバル視してブログに書いたり、意地悪してくるお互い素直になれない榮倉さんとのやりとりにはじわじわと来るものがありましたが、急展開にも矜持は失わない彼のありようにはうるっと来るものがありました。

そこにいるのに

そこにいるのに

 

曲がってはいけないY字路、見てはいけないURL、剥がしてはいけないシールなど、13の恐怖と怪異の物語が綴られる連作短編集。垣間見てはいけない人の恐ろしい一面とか、都市伝説的なエピソード、怪異などいろいろ取り混ぜた最後にぞわりと来るような読後感の物語が取り上げられていて、ミステリ作品がメインの著者さんがこういうものも書けるのかと少しばかり新鮮な気持ちで読みました。個人的には六年前の少女殺人を取材した「六年前の日記」やエゴサーチの恐怖を描いた「痛い」、「なぜかそれはいけない」「昨日の雪」あたりが印象的でした。

境内ではお静かに 縁結び神社の事件帖

境内ではお静かに 縁結び神社の事件帖

 

とある事情から大学を中退して人生に迷う坂本壮馬が、兄が神職をつとめる横浜・元町の源神社で働くことになり、参拝者の前以外では笑わないどこか謎めいた美少女巫女の久遠雫と出会うミステリ。神社での心霊現象、子供まつり中止を求める脅迫状、神社移転を嫌がる理由、就職活動を邪魔する存在、そして雫が源神社で働く理由といった謎を解いていく連作短編集で、クールな雫を探偵役に誰かのために奔走する壮馬がいいフォロー役で、終盤はなかなか劇的な展開でしたけど、少しずつ変わってゆく二人の距離感がどうなるのか是非続きが読んでみたいです。

居酒屋すずめ 迷い鳥たちの学校

居酒屋すずめ 迷い鳥たちの学校

 

居酒屋が経営難に陥った友人・村瀬晴彦を救うため、親の遺産でその物件を購入した鈴村明也。晴彦に息子の不登校も相談され、居酒屋を開店していない昼間にそこでフリースクールを開く物語。晴彦の経営見直しをアドバイスしつつ、賢いがゆえに不登校になってしまった晴彦の息子・亮我、八十四歳で学び直したいハツネ、引きこもりだった佑都、フィギュアスケートに挫折した若菜、そして彼らを導く明也。すずめに集まった事情を抱えた彼らが抱える悔恨があって、そんな彼らが助け合いながら過去を乗り越え前に進むきっかけを得てゆく素敵な物語でした。