読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2018年11月に読んだ新作おすすめ本

2018年11月に読んだ新作おすすめ本です。今回は読んだ新作がやや少なめでしたが、何と言っても斜線堂有紀さんの「私が大好きな小説家を殺すまで」(メディアワークス文庫)と、鮎川哲也賞を受賞した川澄浩平さんの単行本「探偵は教室にいない」は抜けてましたね。

 

それ以外の特に推したい作品としてはラノベでは久々に森田季節さんらしさが出ていた「きれいな黒髪の高階さん(無職)と付き合うことになった」、紙城境介さんの「継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない」、シリーズ化に期待ということで一般文庫の「火曜新聞クラブ」「グアムの探偵」あたりを挙げておきましょう。

サークルも幽霊部員と化して暇を持て余し気味だった京都の大学二年生・日之出。再起を期して潜り込んだ新歓コンパでミステリアスな年上ニートの高階さんと出会う青春小説。高階さんが言った「付き合って欲しい」の真意を確かめられないまま、ゆるゆるとした日々を共に過ごすうちに少しずつ心境が変わってゆく日之出。サークル仲間の祭利や彼が家庭教師を務めるJK彩乃も絡めた人間模様にはこれまで育まれてきた確かな関係があって、彼女たちとのドキドキ展開が恋愛に直結しなくても、これはこれで悪くない大学生活なのかなとか思ったりしました。 

中学生の時に恋人となり些細なことですれ違い、卒業を機に別れた伊理戸水斗と綾井結女。そんな二人が高校入学を機に再婚した親の再婚相手の連れ子として同居する青春ラブコメディ。思ってもみなかった形での最悪の再会と些細なことで衝突する二人。終わったはずなのにふとした拍子に思い出す黒歴史に赤面し、素直になれないけれど何だかんだ言いながらお互いの存在を気にかけていたり再評価したり。恋愛ROM専やぐいぐい介入してくる友人たちに振り回されつつ、再び少しずつ育まれてゆく二人の関係がどう変わってゆくのか続編がとても楽しみです。

ラノベ好きをこじらせたぼっちの安藤くんと、隠れラノベ好きな学校一の美少女・朝倉さんが交流する学園ラブコメディ。密かにラノベを読んでいる安藤くんが気になっていた朝倉さんと、そんな彼女を遠い存在と思っていた安藤くん。ラノベ好き同士交流したいのに空回りしまくりな朝倉さんが可愛くて、自分の勘違いだと距離を置こうとする安藤くんがなかなかの難敵でしたが、委員長の協力もあって朝倉さんだいぶ頑張ったのに結果があれですか(苦笑)さすがに気づいたクラスの人たちとともに、もどかしい二人の今後を生温かく見守ることになりそうです。

ネット彼女だけど本気で好きになっちゃダメですか? (MF文庫J)
 

 SNSで彼女のフリをしてくれる人募集に応じてくれたアカネとのやりとりを意外と楽しんでいたした高校生・天野隆盛。彼女がもしかして自分も所属する生徒会のメンバーなのでは?と疑問を抱くギャップ萌えラブコメ。リアルで見つけたら付き合ってもいいというアカネと、美少女だらけの生徒会。ちょろいツンデレで過去に隆盛と因縁がある林檎と、意外な一面を次々と見せてくれる花咲さん。三人のラブコメ展開はわりと分かりやすい構図に思えましたけど、最後の急展開はそれ前提が崩れてますけどみたいな(苦笑)次巻でもう一波乱あるんでしょうかね。

最果ての魔法使い (GA文庫)

最果ての魔法使い (GA文庫)

 

千年前に人類を滅亡寸前まで追い込んだ魔獣を自らと共に封印した魔法使いアルカ。千年の孤独から元の世界に戻ってきた彼が手を差し伸べてくれた少女・フィルと出会うボーイミーツガールなファンタジー。封印が解けて変わり果ててしまった科学が発達した世界と、そこでは伝説の魔法使いとなっていたアルカ。戸惑いながら心優しい彼女と関わるうちに癒やされ育まれてゆく不器用な想いがあって、そこからどん底に突き落とされるような因縁の対決はインパクトがあって、過去まで絡めたその決着はやや冗長な感もありましたけど、なかなか良かったですね。

姫ゴトノ色 ―The Eyes of Blood― (講談社ラノベ文庫)

姫ゴトノ色 ―The Eyes of Blood― (講談社ラノベ文庫)

 

高校入学を機に姫裏家三姉妹の屋敷で住込アルバイトを始めた夜澄イサミ。和服メイドのイグルミに教えられながら働くイサミがワガママ放題な引きこもり少女・ねむと出会う青春ミステリ。イグルミやねむとの微笑ましいやりとりから明らかになってゆく、ねむが部屋から出られない理由。次女・長女が登場する中で屋敷を巡る不穏な噂も明らかになってきて、それでもねむが大切にしている約束を果たすため、イサミがその核心に迫って隠されていた謎を解き明かし、思いを繋げてゆく展開はなかなか良かったですね。次女・長女のエピソードも続刊に期待です。

幼少時代から大人びていて、どこか達観した少女だった佐伯沙弥香。そんな彼女と想い人・七海燈子に出会うまでが描かれる「やがて君になる」の前日譚的スピンオフ小説。小学五年生の時に友達の女の子から向けられた感情、そして中学時代。仲の良かった先輩・千枝から恋心を打ち明けられた告白とその結末。戸惑いながらも自らの想いに徐々に向き合うようになってゆく沙弥香が、著者さんらしい繊細な描写で描かれていて、積み重ねられていったそれまでがしっかりと今に繋がっているとても素晴らしいスピンオフでした。原作を読んでいる人は必読ですね。

 

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

 

突如失踪した人気小説家・遥川悠真。調査を進めるうちに彼の小説を愛した少女・幕居梓の存在が明らかになってゆく物語。追い詰められて絶望していた梓を偶然救ってくれた遥川。奇妙な共生関係を結んだ二人のささやかな癒やしと、小説を書けなくなってゆく遥川。何とかしたいという思い、魔が差した行為が二人の関係を決定的に変えていって、何とかしようとすればするほどすれ違って、垣間見えたいくつもの想い、ありえたかもしれない可能性が何とも切なかったですが、それでも真っ直ぐで不器用で優しかった二人らしい結末だったのかなと思いました。

要・調査事項です!: ななほし銀行監査部コトリ班の困惑 (集英社オレンジ文庫)

要・調査事項です!: ななほし銀行監査部コトリ班の困惑 (集英社オレンジ文庫)

 

顧客をクレーマー化させてしまったことを気に病み、辞職を考えていた入行一年目の小林髙。そんな彼が二年目の年度初めに支店から本部の監査部の個人取引担当―通称コトリ班へ異動するお仕事小説。外貨の偽札や通帳のトラブルといった要調査案件に、上司の矢岳に見守られつつ、きれいだが愛想のない多岐川千咲とコンビを組んで調査する構図で、関係なさそうだった事件が繋がっていって、高の着目や人間関係が事件解決のヒントになったり、少しずつ距離感も変わってきた多岐川千咲とのコンビがこれから面白くなりそうですね。これは続巻読みたいです。

上毛化学工業メロン課 (集英社オレンジ文庫)

上毛化学工業メロン課 (集英社オレンジ文庫)

 

上毛化学工業の研究員・瓜原はるのは、社長賞をとった憧れの先輩・南が率いる群馬の研究所に異動になり、追い出し部屋と化していた部署でチーム存続のため、南を再生させるためにメロン栽培に乗り出すお仕事小説。チームに課せられた「3年以内にメロンを収穫すること」課題。理不尽な理由で流された人たちで構成された部署の雰囲気に最初は戸惑いながらも、その奮闘する姿が周りの人たちの心を揺り動かし状況も変えてゆく展開はなかなか良かったです。はるのをいろいろ気にかけるようになってゆく南でしたけど、なのにどこかズレてて苦笑いでした。

僕の耳に響く君の小説 (小学館文庫キャラブン!)

僕の耳に響く君の小説 (小学館文庫キャラブン!)

 

27歳で死んでしまった女性作家の冬月朧。彼女と大学時代に文芸部の同期だった朔太郎が、ある日朧が死んだ日に会いたがっていたカフェに足を運んで、朧そっくりの少女と出会う物語。創作から遠ざかり公務員となっていた朔太郎が出会った朧そっくりの少女・光。大好きだった創作を通じて知り合い切磋琢磨するかけがえのない存在となりながらも、創作がもたらした残酷な結果によってすれ違ってしまう朔太郎と朧の関係は何とも切なかったですが、光と白い猫の存在をきっかけに再び紡がれゆく不器用で一途な二人の想いにはぐっと来るものがありました。

 

 

火曜新聞クラブ―泉杜毬見台の探偵― (ハヤカワ文庫JA)

火曜新聞クラブ―泉杜毬見台の探偵― (ハヤカワ文庫JA)

 

新聞クラブを立ち上げた高1の植里礼菜と幡東美鳥。創刊1面トップに「2階建て駐輪場が着工する」を据えたものの計画が頓挫し、記事の差し替えを迫られる状況で、遭遇した殺人事件を銀髪の男子高生・御簾真冬とともに解決するミステリ。ミス・マープルを意識した舞台設定になっているようで、まず動機ありきの推理はもう少し人の動かし方に妥当性が欲しかった箇所がありましたけど、校内で起きた数学講師殺人事件に挑むミステリアスな探偵役・御簾真冬にはなかなか存在感があって、新聞クラブと御簾の探偵ミステリをまた読んでみたいと思いました。

グアムの探偵 (角川文庫)

グアムの探偵 (角川文庫)

 

探偵の権限は日本よりも遙かに大きいアメリカの準州グアムで、ゲンゾー、デニス、レイ日系人3世代探偵が起きる事件を解決してゆくミステリ。日本人観光客が遭遇した奇妙な誘拐劇、国際結婚した日本人女性とストーカー、引きこもり大尉の真意、グアムで開店した日本人父娘が遭遇する強盗事件、誘拐事件の真相の5篇が収録されていて、日本とはいろいろ違うグアムの慣習に対するそうなんだ…があってすんなりと物語に入っていたわけではないですが、そういう中で世界観を活かしつつ展開していく探偵劇はなかなか新鮮でした。続巻も期待の新シリーズ。

四月一日(わたぬき)さんは代筆屋 (宝島社文庫)

四月一日(わたぬき)さんは代筆屋 (宝島社文庫)

 

『筆の都』と呼ばれるところにある代筆屋。四月一日(わたぬき)さんというふくよかで可愛らしい男性の元を訪れる様々な人たちの物語。結婚を前にわだかまりを残した両親への手紙や、すれ違ってしまった年上の幼馴染に対する変わらぬ想い、孫にあてた入学祝いの手紙や就職活動の履歴書など、それぞれのエピソードには意外な事情もあって、個別の話かと思ったら思わぬ形で繋がりも見えてきたりで、代筆するだけでなくさりげなく軌道修正しながら最善へと導いてゆく訳ありな四月一日さんの仕事ぶりと、後日談的なエピソードがとても素敵な物語でした。

ヒクイドリ 警視庁図書館 (幻冬舎文庫)

ヒクイドリ 警視庁図書館 (幻冬舎文庫)

 

交番連続放火事件が発生し、犯人の目処は立たない状況で警察庁諜報機関アサヒに「犯人は警官でで暗躍するスパイ組織」との情報が届き、警察庁長官直轄の秘密警察「図書館」も動き出す警察小説。序盤はやや警察独特の隠語が多くて読みづらい部分もありましたが、暗躍するスパイを巡る男たちの暗闘と、それに女として利用され振り回される諏訪巡査という破滅に向けてまっしぐらな展開から、終わってみればそれまでの構図が劇的に変化していって全く違ったものが見えてくる結末に驚かされました。一部の他作品とも繋がる世界観で描かれた物語ですね。

 

探偵は教室にいない

探偵は教室にいない

 

北海道の中学校に通う14歳の海砂真史を主人公に、英奈、総士、京介ら同級生たちとの日々の中で生まれるちょっとした謎を、真史のちょっと変わった幼馴染・鳥飼歩が解き明かしてゆく連作短編集。差出人不明のラブレター、ピアノに対する京介の複雑な想い、総士が隠していた真相、そして真史の家出と四つの物語が収録されていて、登場人物たちの周囲に対して素直になれない繊細な心情を巧みに描きつつ、相談された謎を解き明かしてゆく一見無頓着な探偵役・歩が見せる細やかな心遣いがなかなか効いていました。この作品の続編をまた読みたいです。

ひゃっか!  全国高校生花いけバトル

ひゃっか! 全国高校生花いけバトル

 

「花いけバトル」決勝を見て出場が目標になった都内の高校二年生・大塚春乃が、転校生のパートナー山城貴音と出会う青春小説。二人一組での出場が義務の花いけバトルに、春乃の勉強を教えてもらう代わりに協力することになった大衆演劇座長の息子・貴音。人集めや練習用の花を用意するところからして大変なんだなと思いつつ読んでいましたが、逆境にも支えてくれる春乃の友人や家族、貴音の家族同然の仕事仲間たちもいて、乗り越えた二人が挑んだ大会にはライバルの存在やほのかな恋模様もあったりで、読みやすく熱い展開はなかなか良かったですね。

祭火小夜の後悔

祭火小夜の後悔

 

怪異現象に詳しい女子高校生・祭火小夜と、彼女に出会ったひとたちのある夏の連作短編集。床板をひっくり返す謎の存在を目撃する教師・坂口、巨大なムカデのようなものに憑かれて悩む少年、幼い頃に「しげとら」と取引をした少女たちと謎めいた小夜が出会い、彼女のアドバイスで彼らが救われてゆく展開で、消えない後悔を抱える小夜の事情が徐々に明らかになってゆく中、それらの出会いが彼女に心境の変化をもたらしていて、それを読みやすい文章で坂口の悔恨も踏まえて結末へと導いてゆく展開はなかなか良かったです。今後に期待の作家さんですね。

あなたはここで、息ができるの?

あなたはここで、息ができるの?

 

SNS中毒でアリアナ・グランデになりたい二十歳の女子大生・ララ。バイクの交通事故で瀕死の重傷を負ってしまった彼女が死も時間も飛び越えてこれまでの青春を繰り返してゆく物語。彼女を諦めないため宇宙人によって繰り返されてゆくララの過去とその時々の決断。大切だった彼との出会い、間違えない母のこと、そして彼の母に対する複雑な想い…勢いがあるぐいぐいと引っ張られてゆくストーリーでしたが、運命の分岐点に何度差し掛かってもララの出す答えは一緒で、大切なものは変わらない彼女の精一杯な想いが心に響く著者さんらしい物語でした。

叙述トリック短編集

叙述トリック短編集

 

「この短編集はすべての話に叙述トリックが入っています」と冒頭で断りつつ、別紙さんと助手が解き明かす謎で読者に挑戦する連作短編集。トイレを舞台にした意外な結末を描く『ちゃんと流す神様』や大学写真同好会を舞台にお互いが気になる二人を描く『背中合わせの恋人』は楽しみながら読みましたが、『閉じられた三人と二人』『なんとなく買った本の結末』『貧乏荘の怪事件』『ニッポンを背負うこけし』とひたすら叙述トリックが続くとつい最初から探して読んでしまいましたが、最後の最後でまたああそうだったのかとまんまとやられました(苦笑)

死神の選択

死神の選択

  • 作者: 嘉山直晃,おとないちあき
  • 出版社/メーカー: 産業編集センター
  • 発売日: 2018/10/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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様々な理由から生き続けるのが困難な人が行使できるようになった死の権利「DR法」。次々と訪れる患者を前に自らの役割に苦悩する医師・神恵一の物語。医師でもあった父の自殺をきっかけにDR医を志し、様々な想いで訪れてくる患者に真摯に向き合い、それでいてそんな役割に苦悩する恵一。確かに容易ではないとても難しいことではありますが、なのに悪意をもった記事に叩かれ、同業の医師たちにも糾弾され、大切な人とすれ違うようになってしまった彼が迎える結末がこれなのかと何とも切ない気持ちになりました。報われる未来があってほしいです。

夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)

夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)

 

単なる自作自演の家出か悪ふざけと思われた子供たちの連続失踪事件。その真相を追う雑誌編集の猿渡と記者の佐々木が事件を調べるうちに、地域を巡る複雑な因縁と過去の事件との思わぬ繋がりが明らかになってゆくミステリ。失踪を画策する団地内の子たちと傘外の子たちの因縁、火災によって意識不明の子を出してしまったキャンプの事件。複雑に絡み合う事情に加えて子どもたちの真摯な願いから引き起こされた事件の意味合いは、真相が明らかになるたびにどんどん様相を変えていきましたけど、希望の光を垣間見せてくれた結末には救われる思いでした。 

ドアを開けたら

ドアを開けたら

 

借りた雑誌を返すため隣人の老人・串本を訪ねたところ、事切れている彼を発見しながら逃げ出してしまった鶴川。そんな姿を高校生・佐々木紘人に撮影され、最悪の五日間の幕が開くミステリ。翌朝、通報する覚悟を決めた佑作が紘人とともに部屋を訪れると消えていた遺体。高校生と五十四歳の一人暮らしという少し変わった組み合わせで調べてゆくうちに明らかになってゆく串本の不穏な噂と、徐々に判明してゆく意外な事実。様々な思惑が複雑に絡み合った事件の真相は思わぬ結末に繋がりましたけど、回復された名誉と残された絆はなかなか良かったです。

歪んだ波紋

歪んだ波紋

 

新聞、テレビ、週刊誌、ネットメディアの「誤報」をテーマに、それが生み出される過程や、直面したり振り回される人たちの複雑な想い、それらがもたらした結末が描かる連作短編集。意図せずとも誤報に繋がってしまう構図や、誤報によって人生が歪められたり不安に怯えるようになったり、誤報を弾劾する側の人間もまた一歩間違えばフェイクニュースを掴まされ、容易に糾弾される側に回ってしまう構図に今のマスメディアの難しさと怖さがあって、報じる側の姿勢が問われると同時に、受け取る側にもまた判断が難しい時代になりつつあると痛感しました。