読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2018年9月に読んだ新作おすすめ本

というわけで9月の新作おすすめ本です。今回はラノベインパクトある作品が結構出てきて、挙げた作品はみんな自信を持っておすすめできる一冊です。続巻の期待持てそうなシリーズものは楽しみですよね(それがたくさん増えていくと自分の首が締まりますがw)あとは講談社タイガの「ミウ」、ハヤカワ文庫の「夏の王国で目覚めない」、単行本の「忘られのリリメント」あたりはわりと印象的な作品でした。

君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)

君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)

 

 数百年続いた「帝国」と「王国」の戦争。その終戦記念日の慰霊祭で皇帝と国王を殺した「災厄の魔女」アンナ・マリアが世界を敵に回して戦うファンタジー。交互に語られる過去と現在、アニーとユージーンの運命的な出会いとその関係、そしてアニーの弟分・アローンとの邂逅による関係の変化。過去が明らかになってゆくたびに見えているものの印象がガラリと変わっていって、因縁に決着をつけた結末にすら皮肉な事実が提示されてしまう展開に思わず唸らされました。そうだったのか…毎回違うジャンルの作品描くのにそのインパクトは相変わらずですね。

青春敗者ぼっち野郎、金髪尻軽ギャルのお気に入りになる (角川スニーカー文庫)
 

 ぼっちで昼休みに勉強ばかりしているガリ勉の一条純が、いかにもギャル風で噂も多い橘かれんに勉強を教えてほしいと請われ、そこからいろいろ変わってゆく青春ラブコメディ。ぐいぐい来るかれんに何で自分がと思ううちに教室でも話しかけられるようになって、クラスでの立ち位置も変わってゆく一条。最初は戸惑いながらもちゃんと向き合うようになってゆく彼は面倒見のいいやつで、見た目があれなかれんもまた真っすぐで応援したくなる二人ですね。かれんを意識するようになってツンデレ気味だった一条が陥落する日も近い?ということで続刊に期待。

リオランド 01.最慧の騎士と二人の姫 (角川スニーカー文庫)
 

 リオランド王国の若き天才騎士・ミカドが国境地帯で出会った出会った科学の異世界の姫・エチカ。奇しくも一蓮托生となった二人が難局の打開に立ち向かうファンタジー。国境地帯に落ちた「天穹の雫」と謎の少女・エチカの複雑な境遇。王国に接触を図ってきた彼女の同胞たちの思惑。複雑な境遇のキーマン・ミカドと違う立ち位置で鍵を握るヒロインたちがいて、文明的には圧倒的優位にあるエチカの同胞にも絶望的な状況があって。未だ謎も多く複雑に入り組んだ状況を最後まで描ききれるのか懸念はありますが、今後に期待したくなる新シリーズですね。 

魔弾の王と凍漣の雪姫 (ダッシュエックス文庫)

魔弾の王と凍漣の雪姫 (ダッシュエックス文庫)

 

 「弓は臆病者の武器」と言われる国で生まれ育ったティグルがふとした縁からジスタートの戦姫の少女・リュドミラと巡り合う『魔弾の王と戦姫』と世界観を同じくしたもう一つの物語。ティグルの父母が健在だったり、スタートがいろいろ変わっていることで物語の展開も変わってきていますが、いろいろ魅力的なヒロインは登場がするのは相変わらずでも、今回はティグルとミラを軸とした物語となりそうなのは間違いなさそうですね。前作では不遇だった人のありようもまた変わりそうで、ここからまたどんな物語になってゆくのか楽しみな新シリーズです。 

 名門キンバリー魔法学校に入学したオリバーが運命的な出会いを果たしたサムライ少女・ナナオ。魔法生物のパレードから始まるトラブルの連続に巻き込まれつつ出会った仲間たちと乗り越えてゆく学園ファンタジー。器用に魔法を応用しながら使いこなすオリバーと剣に突出した力を持つナナオを中心に、それぞれの想いを抱えながら入学した仲間たちと力を合わせ、危機的状況の連続を乗り越えて絆を育んでゆく展開がなかなか良かったからこそ、深い因縁を感じさせるエピローグが今後の波乱を予感させて、ここからどうなるのか楽しみな新シリーズですね。

ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

 

 突然失踪した卓球部のエースで幼馴染の羽麗。父親の抱える8000万の借金返済のため彼女が裏賭場で戦うことを知った坂井修が、幼馴染を救うため共に命賭けの無謀なギャンブルに挑む物語。ゴスロリ卓球は一見微笑ましいのにレバレッジの変動で勝負と獲得金額が一致しないヤバイ闇卓球で、一歩間違えば奈落の底という緊張感のある状況でしたけど、卓球以外は残念美少女の羽麗とお世話係と化していた修の距離感や、お互いが傍らにいたらどんな境遇でも信じて頑張れると思えてしまう幸せそうな二人の関係にはぐっと来るものがありました。続巻も期待。

名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を (ファンタジア文庫)

名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を (ファンタジア文庫)

 

 魔導王国と機械帝国が争い続ける戦場で出会った死を喰らう竜騎兵クロトと最新兵器を操る機械の姫ロア。運命の邂逅を果たした二人が、終わりのない戦争が続く世界を変えてゆくボーイミーツガール。相容れないはずの二人が特異な状況で出会い、いがみ合いながらも協力して認め合うようになってゆく王道展開でしたが、その出会いをきっかけに心境が少しずつ変化してゆく二人が直面する苦境があって、愚かしく終わりが見えない状況を打破すべく厳しい戦いに挑んだ二人が手繰り寄せた結末には、彼らの約束した未来を信じたくなる確かな希望がありました。

 

 

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

 

 就職を前にした何も変わらない灰色の日々。実家に戻り中学時代の卒業文集を開いた池境千弦が気になる作文を発見し、元同級生のその後を追い始めた数日後、接触してきた別の元同級生が謎の死を遂げるミステリ。元同級生・田中美奈子の自殺の真相を探るうちに起きた転落死事件と、縁が繋がって再会したかつての同級生で作家のミユ。千弦だけが分かるように発信されていたミユからのメッセージ。新米編集者と作家による探偵役コンビが真相に迫るたびに意味合いが変わる構図の変化は鮮烈で、秘密を積み重ねてゆく二人が迎えた結末はとても印象的でした。

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)

 

 小説投稿サイトでトップ10にランクインし、「死にたい」と思うことで、自分の書いた小説世界に入れることに気がついた名倉編。自分が作った世界を守るため、投稿作家たちと試行錯誤してゆく物語。小説の中の世界とあちらの世界を行き来しながら、現実でも異世界でも全員が幸せになる方法を探そうとする編。作中の登場人物に対する愛があって、自らの意思を表明するようになってゆく作中人物もそんな作家に対する愛が溢れていて。だんだん訳がわからなくなりながらも、みんなで幸せになろうとする展開は予定調和でしたけどなかなか面白かったです。

顔の見えない僕と嘘つきな君の恋 (講談社タイガ)

顔の見えない僕と嘘つきな君の恋 (講談社タイガ)

 

 事故のために人の顔を識別できなくなった夏目達也。占い師に「君は運命の女性と出会う。ただし四回」と言われ、半信半疑だった彼がたびたび運命的な恋に巡り合う物語。人には言えない特殊な体質と家族を持ち人生を諦めかけていた達也が、閉塞感のある状況で運命的な出会いを果たした鈴木和花との出会いと別れ。そこから最悪な状況から逃れるため、葉子のために懸命にあがく達也が巡り合う運命の恋は思わぬところで繋がっていて、そこからさらに踏み込んでくる展開は大切な人を想う真摯な想いに溢れていて、とても著者さんらしい作品だと思いました。

 花や草木に触れると枯れてしまう呪われた手を持つ撫子。父の死後、19歳になった撫子は知らぬ間に自分が結婚していたことを知り、結婚相手・花織が住む新潟へ赴く幻想ミステリ。妖精に纏わる厄介事を解決している人嫌いの造園家の花織。粘り強く徐々に心を通わせてゆく中で直面する30歳になったら死ぬという花織の呪い。ふんわりとした雰囲気の中で呪いにどう向き合うかという葛藤が描かれますが、それでも真っ直ぐな撫子の想いが花織の孤独な心を揺り動かすようになってゆく展開と、そんな二人が迎えたその結末はなかなか良かったと思いました。

七不思議のつくりかた (集英社オレンジ文庫)

七不思議のつくりかた (集英社オレンジ文庫)

 

 五歳で両親を亡くしたことから幽霊に会えると噂の高校へ進学した高戸。そこで同じ部の綾乃先輩に出会い恋をしたことから運命が変わってゆく、とある高校の七不思議にまつわる青春小説。両親に会いたいがゆえにその高校に入学した彼が、幼馴染の彼氏を亡くした綾乃先輩に寄り添ううちに抱くようになる切なる願い。話す骨格標本、プールの田中さんといった七不思議に絡めて描かれるもうひとつの切ない物語があって、展開的にやや分かりづらい部分もありましたが、絶望的な状況の中でも光明を見出そうとする最後の約束にはぐっと来るものがありました。

学校の屋上から君とあの歌を贈ろう (メディアワークス文庫)

学校の屋上から君とあの歌を贈ろう (メディアワークス文庫)

 

 中学時代に仲間とうまく行かずにバンドを辞め、鬱々とした気分のまま高校に入学した恭一。そんな彼を軽音楽部に勧誘するギターを背負った少女・ちとせと出会う青春小説。恭一のドラムへの想いを見抜いたちとせ、そして恭一に寄り添う幼馴染・萌子の運命の出会い。同じように共鳴した生徒会所属の伊吹のために彼らが奔走したことで直面した事態。大切な仲間のために、目標の文化祭でのライブを実現するために様々な課題に直面しながらも、協力し合い仲間を募りながら方法を探り、それを乗り越えてゆくその熱い想いにはぐっとくるものがありました。

 

 

夏の王国で目覚めない (ハヤカワ文庫JA)

夏の王国で目覚めない (ハヤカワ文庫JA)

 

 再婚の父に新しい母と弟。私だけが家族になりきれていない女子高生の美咲。そんな彼女が熱中する作家・三島加深のミステリツアーに招待され、家を出て三日間のツアーに飛び込むひと夏のクローズドサークル。「謎を解けば加深の未発表作を贈る」と誘われて集まり、不可解な消失や死体でお互い疑心暗鬼になってゆく参加者たち。解き明かされてゆく謎は未発表作に込められた真意にも繋がっていて、彼らと共に過ごしたとても印象的なひと夏の体験が、きちんと今の自分と向き合ってそれぞれの新しい一歩を踏み出す勇気へと繋がってゆく素敵な物語でした。

 流鏑馬がさかんな青森県十和田市に住む弓道部の舞衣子が、東京から転校してきた元・弓道で国体選手だった美鶴と出会い、かつて一度は諦めた流鏑馬に共に挑む青春小説。弓道部入部を断って流鏑馬に挑む美鶴と、最初は過去のトラウマに逡巡しつつも弓道部と掛け持ちで再び関わるようになってゆく舞衣子。真摯に取り組む美鶴に感化されて、複雑だった流鏑馬への想いが変わってゆく舞衣子は、ぶつかり合いながらもお互い刺激しあえる良いライバル関係で、そんな二人が葛藤を抱えながらも流鏑馬に向き合い挑んでいく展開にはぐっと来るものがありました。

 ※書誌データうまく表示できなかったためKindle版で表示。

クラスでも目立たず友達のいない男子高校生・駒田に、となりの席のクールな美少女・水品さんが提案した「15分で1万円のバイト」。苦しんだ過去を持つ二人が出会い、次第に立ち直っていく優しい青春小説。水品さんが提案した不思議なバイトを通じて知ってゆく彼女の特殊な事情と、少しずつ変わってゆく駒田と水品さんの不器用な距離感。過去を乗り越えるための悲壮な決意から無意識の悪意にさらされる水品さんに、自らも苦い過去があるからこそ寄り添える駒田の心意気がカッコよかったですね。そんな二人の今後を応援したくなる素敵な物語でした。

明日、世界が消える前に (ポプラ文庫ピュアフル し)

明日、世界が消える前に (ポプラ文庫ピュアフル し)

 

 あの世とこの世の狭間で、時間内に相手を見つけ幸せにすることで生き返りを提示する「死整庁」。迷いこんできた人々に与えられる試練を描く物語。ついていないまま交通事故死したOL、文化祭準備中に事故に遭った女子高生、長く病床にある少女、クジラツアーでボートから落ちた女性、そして入社日に転落した新入社員。職員アガタとイルマの案内でそれぞれが戸惑いながらも向き合うようになってゆく展開はアガタとイルマの物語でもあって、生きる意味を見失いかけていた登場人物たちがが前向きになれる希望を得てゆく結末はなかなか良かったですね。

昨日の僕が僕を殺す (角川文庫)

昨日の僕が僕を殺す (角川文庫)

 

 両親を失い支えてくれた叔母も亡くして小樽で孤独な一人暮らしをする高校生・淡井ルカ。そんな彼の窮地をベーカリーで働く訳ありイケメン店長汐見と人懐っこい青年・榊に救われるホラーミステリ。助けてくれた汐見と榊たちの意外な正体を知り、それと周囲で起こる事件の関連に疑心暗鬼を募らせてゆく展開で、生い立ち故にいろいろ考え過ぎてしまう性格が事態を拗らせていくわけですが、それでも真実を知ろうと目をそらさず向き合うことで、自分を支えてくれている人たちの温かさを知る結末はなかなか良かったです。続巻に期待の新シリーズですね。 

川越仲人処のおむすびさん (角川文庫)

川越仲人処のおむすびさん (角川文庫)

 

 成婚率100%と噂される川越仲人処で働く桐野絲生。くせ者揃いの会員たちに日々翻弄される日々を送る彼女に神様見習いのもふもふ白うさぎ・ユイが託される物語。素直になれない野中や、お互い家を継がなければならない二人の葛藤、離島赴任予定の医者など、彼らの「運命の糸」が抱える問題を解決すべく時折ユイに振り回されながら奔走する絲生。そんな彼女が紡いだ会員たちの想いと、他人のために頑張るばかりだった鈍感な絲生もまた自分でもよく分かっていなかった想いをようやく自覚して、向き合うようになってゆく結末はなかなか良かったです。

忘られのリメメント

忘られのリメメント

 

 擬憶素子「MEM」を額に張るだけで、他者の記憶を擬憶体験できるようになった近未来。「憶え手」である歌手・宵野深菜が、リギウス社CEOの迫間影巌から脱法MEMの調査を依頼されるSFサスペンス。調べてゆく上で浮かび上がる深菜の生い立ちに深く関わる稀代の殺人鬼・朝来野と模倣犯の存在、そして殺されてしまった同居人・三崎真白。記憶を追体験できるという技術を物語のベースに据え、虚実織り交ぜた体験をしながら朝来野の行方を追ううちに特異だった自らのありようとも向き合い、しっかりと決着をつける展開はなかなか良かったですね。

向日葵のある台所

向日葵のある台所

 

 シングルマザーで中学二年の娘・葵を育ててきた美術館に勤める学芸員・麻有子。極力関わらないようにしていた根深い遺恨がある母が倒れ、その母と突然同居することになってしまう物語。これまで散々母に甘えながらも、いざとなると妹の麻有子に押し付けようとする姉・鈴子。すれ違いばかりだった過去のわだかまりはあまりも重くて、そう簡単には解消できないよなあと感じましたが、それでも母に様々なことを思い起こさせる自分と娘の関係の積み重ねがあって、不器用なりにお互い少しずつ向き合えるようになってゆく結末には救われる思いがしました。

青い春を数えて

青い春を数えて

 

 数えても数えきれない複雑な思い。葛藤を抱える少女たちの逡巡とそれを乗り越えてゆく姿が描かれる5つの連作短編集。親友に対する複雑な想い、ズルイと思われたくないでも損したくない心境、天真爛漫な姉に対する器用貧乏な妹のコンプレックス、メガネにこだわる少女の心境を言い当てた電車の中での出会い、そして優等生が噂の不良少女に振り回されて気づいたこと。登場人物たちがゆるく繋がるひとつの世界観の物語で、繊細で複雑な想いをずっと抱えていた少女たちがきっかけを得てそれを乗り越え、新たな一歩を踏み出す姿はとても心に響きました。

ただし、無音に限り (ミステリ・フロンティア)

ただし、無音に限り (ミステリ・フロンティア)

 

探偵事務所を開いたけれど依頼は大抵浮気調査。密かに霊の記憶を読み取る能力を持つ探偵・春近が、能力の不自由さに振り回されつつも友人の弁護士の仲介で心霊絡みの事件を解決してゆくミステリ。遺産相続を巡る孫に感じた違和感を巡る調査と、行方不明になっていた倒産会社社長の行方を追う2つの中編という構成。自分が見える幽霊が体験した情景を断片的に知ることができる何とも中途半端な能力で真相を追う展開で、その結末はほろ苦いけれどそれだけに終わらない読後感があって、意外な助手候補も現れて今後のシリーズ化を期待したい作品ですね。