読書する日々と備忘録

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2017年上半期注目のオススメ新作ライトノベルファンタジー13+2選

 とりあえず前回のエントリーに引き続き第二弾、ライトノベルファンタジー編です。今回は13点に刊行自体は昨年だったのですが、年が明けてから読んだらとても良かった2点を特別にプラスした15点を紹介します。最近は自分好みのボーイミーツガール的な要素も絡めたファンタジーもたくさん出てきていて、続巻が楽しみなシリーズもあります。これからもこういう作品がたくさん出てきてくれるといいですね。

 

86―エイティシックス― (電撃文庫)

86―エイティシックス― (電撃文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞<大賞>】
帝国の無人兵器レギオンによる侵略を受け、有色人種を差別し戦わせてしのいでいた共和国。そんな若者たちを率いる少年・シンと、後方から彼らの指揮を執るハンドラーとなった少女・レーナが出会う物語。人権を認められない有人の無人機として戦い続ける「エイティシックス」の若者たち。現状に疑問を持つもののその過酷さを本当の意味では分かっていなかったレーナ。次々と仲間が死んでゆく厳しい状況で彼らに突きつけられる指令には絶望的な気持ちになりましたが、因縁にもきちんと決着を付け迎えた意外な結末はとても良かったですね。7月に2巻目刊行予定。

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞<金賞>】
十八世紀末ロンドン。うっかり大金を得た賭博師ラザルスが仕方なく購入させられたのは、喉を焼かれて声を失った奴隷の少女・リーラ。不器用な二人が戸惑いながらも心通わせてゆく物語。師の教え通り勝たない賭博師としてこれまで生きてきたラザルスの失敗。放り出すわけにもいかず感情に乏しいリーラを教育しながら一緒に生活するようになる日々。徐々に打ち解けてゆく二人の拙い関係の変化が繊細な積み重ねで描写されていて、強奪されたリーラを奪還するため冷静に計算して最後まで完遂してみせたラザルスのありようがとても見事で心に響きました。8月に2巻目刊行予定。

漂海のレクキール (ガガガ文庫)

漂海のレクキール (ガガガ文庫)

 

 万能の源エルが消失し陸地のほとんどが水没した世界。唯一の陸地リエスを治める聖王家を追われた少女サリューと、陸地を追われた人々の船団国家にも属さない船乗り・カーシュが出会う物語。サリューを救い依頼を手伝うことになった船長・カーシュたち。共に過ごすうちに絆が育まれ、彼女の抱える秘密を知ったことで彼らも巻き込まれてゆく王道展開でしたが、諦めずに船団国家相手の駆け引きで協力を引き出し、救出に向かう彼らの戦いはなかなか痛快でした。すっきりとした結末でしたけど、新天地に向かう旅の続編があるならまた読んでみたいですね。

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

 

 【第6回講談社ラノベ文庫新人賞<佳作>】
人々が陸地のほとんどを失い、いくつかの巨大な船に都市国家を作ってわずかな資源を争う世界。船国を行き来して荷物を運ぶスワローの少年・シエルが、無人島に流れ着いた謎の少女・ステラと巡り合うボーイミーツガール。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせないシエル。理由を明かさないまま自分を荷物として運んで欲しいと依頼するステラ。その飛行は息苦しかった彼らにとって新鮮だけれど危険の連続でもあって、たびたび衝突しすれ違った彼らが力を合わせて乗り越えようと挑んだそのとても爽やかな結末はとても良かったです。

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

 

 かつての栄光を失い虚栄と退廃に堕ちた東ローマ帝国。国の危機を憂う生真面目な騎士ベリスが、型破りな書記官プロックスと運命的な出会いを果たす戦記ファンタジー。ブロックスとの邂逅によって窮地を脱し、次期皇帝と目されるユスティンの元で頭角を現してゆくベリス。シリアスな展開続きでも脇を固めるキャラたちがよく動いて、その力が高く評価されることになったベリスとブロックスが、一方で皇妃となったテオドラと相容れない確執もあったりで面白かったです。それがいろいろな形で影響しそうな複雑な関係も絡めた今後の展開に期待大ですね。

オリンポスの郵便ポスト (電撃文庫)

オリンポスの郵便ポスト (電撃文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>】
度重なる災害と内乱が続いた火星で長距離郵便配達員として働く少女・エリスが、改造人類・クロを神様がどこへでも誰にでも届けてくれるというオリンポスの郵便ポストまで届ける仕事を依頼される物語。入植時代からの生き残りのクロと、両親を探して郵便配達員を続ける少女の二人による長い旅路。その過程で多くの人に出会い、いくつもの困難に遭遇することで絆が育まれてゆき、それぞれが秘密を抱え意外な縁もあった二人が想いを通わせてゆく物語は、その真実に近づいてゆくたびに切ない気持ちにもなりましたがとても良かったですね。7月に2巻目刊行予定。

豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい (ファンタジア文庫)

豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい (ファンタジア文庫)

 

 【第1回カクヨムWeb小説コンテスト<特別賞>】
大人気アニメの嫌われ豚公爵に転生した主人公が、身分を秘した亡国の王女で今は自分の従者・シャーロットに告白するため、熟知するバットエンドを回避するべく奮闘する物語。才能に溢れて将来を嘱望された存在だったはずの豚公爵が、それを投げ捨ててしまった密かな理由。どこか悪徳令嬢ものっぽい雰囲気がある展開でしたが、落ちぶれていた豚公爵の決意とひたむきな想いは素直に応援したいと思えましたし、その評価を覆す奮闘ぶりはとても良かったですね。途中からやや物語に置いて行かれた感もあったメインヒロインでしたけど、今後の活躍に期待。現在2巻まで刊行。

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 (ファンタジア文庫)

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 (ファンタジア文庫)

 

 永く続く帝国と魔女の国ネビュリス皇庁の戦場で帝国の最高戦力となった剣士イスカ、と皇庁最強とうたわれる氷の魔女姫アリスリーゼが出会う物語。戦場で戦うべき強敵として出会う二人の運命の出会いというわりとよくあるテーマで、待ち合わせもしてないのに中立都市で遭遇し過ぎな感はありましたけど、ベタな甘いラブロマンスを重ねつつ、宿敵の二人が一時的に共闘する展開はとても自分好みでした。両陣営とも首脳陣がアレなので二人の関係が今後どういう方向に向かうのか気になりますね。最後は上手くまとまると信じてますよ?7月に2巻目が刊行予定。

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 2 (HJ文庫)

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 2 (HJ文庫)

 

 不器用で口が悪く魔術師として人々に恐れられるザガン。そんなサガンが亡き魔王の闇オークションで白い奴隷エルフの少女ネフィに一目惚れして全財産をつぎ込み購入。不器用な二人の共同生活が始まる物語。コミュ障でどう接していいか分からずたびたび言葉選びを間違えるサガンと、最初は怯えながらも彼の不器用な優しさを知り徐々に心を開いて行くネフィ。これまで孤独な境遇を過ごしてきた二人が、戸惑いながらも危機的状況を乗り越えて絆を育んでいく物語は、わりとシンプルな構図でベタな展開ではありましたがなかなか良かったです。現在2巻目まで刊行。

縛りプレイ英雄記 奇跡の起きない聖女様 (角川スニーカー文庫)

縛りプレイ英雄記 奇跡の起きない聖女様 (角川スニーカー文庫)

 

 凶悪すぎる見た目の高校生・仁王院陣が、回復魔法の失われた異世界に転移し、回復魔法が使えない聖女と出会って先行き不安な旅をする物語。異世界に来てトラウマのある道具を召喚できるようになった陣と、お人好しで今の状況に責任を感じている聖女・マリー。見た目で誤解されがちですが、誤解されることを恐れずにマリーを気遣い、他人のために奔走する陣を彼女はきちんと見ていて、わりといいコンビな二人でしたね。召喚契約も結んで仲間も増えそうなドタバタの道中がこれからどのようなものになるのか、続巻が楽しみな新シリーズです。7月に2巻目が刊行予定。

アカシックリコード (Novel 0)

アカシックリコード (Novel 0)

 

 本好きの高校生・片倉彰文が突如友人の甲斐浩太郎と共に小説投稿サイトの中へ召喚され、物語を救うため記憶ごと失われた大切な存在を取り戻すため戦うビブリオン現代ファンタジー。管理する物語が紙魚に蝕まれつつある「悪魔の書」。それを阻止するため創造者として悪魔と契約し、作中の人物や仲間とともに戦う中で失われていた記憶を取り戻す彰文。囚われた幼馴染を取り戻す決断は、すれ違ってしまった彼女と想いを再び通わせるための戦いでもあって、読みやすくとてもいい感じにまとまっていましたけど、他のエピソードも是非読んでみたいですね。

勇者は、奴隷の君は笑え、と言った (Novel 0)

勇者は、奴隷の君は笑え、と言った (Novel 0)

 

 烙印の子として奴隷のように育った少年ヴィスとかつて世界を救った伝説の勇者グレン。そんな二人が魔族に奪われたヴィスの恩人を取り戻す旅に出るファンタジー。幼い頃からの虐待で様々なものが欠落したヴィスと彼に目をかけるグレン。そして彼に唯一の正義を教え聖女に選ばれた恩人に起きた事件。魔法使いの少女ニーニらと出会ってからのズレた噛み合わない会話が印象的でしたが、魔王復活を目指す魔族や皇国などの思惑が交錯する展開で、様々な出会いと別れを経て少しずつ変わり始めたヴィスの旅が今後どのようなものになるのか続巻が楽しみです。

まるで人だな、ルーシー (角川スニーカー文庫)

まるで人だな、ルーシー (角川スニーカー文庫)

 

 【第21回秋スニーカー大賞<優秀賞>】
エキセントリックボックスに宿る少女・スクランブルの人身御供となった御剣乃音が願いを叶える代償は人の感情。人間らしさを失いつつも力を行使し人を救う乃音が、正反対の人身御供・氷室に出会う物語。壊れてゆく自覚から抱える矛盾に悩む乃音と、代償に感情を得てどんどん人間に近づいてゆくスクランブル。大切だったものを次々と切り捨ててしまう乃音の選択には絶望的な気分になりましたが、だからこそ彼が育んできたものをきっかけに、どうにか悪くないとも思えるところに落ち着いた結末には救われる思いでした。現在2巻目まで刊行。

 

※以下2点は昨年発売ですが紹介し損なっていた良作なので特別に紹介。

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

 

 連合王国より先に人類を宇宙へ到達させるべく、共和国の最高指導者はロケットで人間を軌道上に送り込む計画を発令。実験体として選ばれた吸血鬼の少女・イリナと監視係に任じられた候補生レフの物語。蔑まれる境遇から自由を得るため実験体として志願したイリナ。そんな彼女に最初は戸惑いながらも、共に過ごし訓練するうちに大切な存在として思うようになってゆくレフ。あくまで実験体としてか扱われない彼女の境遇には厳しいものがありましたが、乗り越えて見せた彼女たちの未来が明るいものであることを信じたくなる素敵な物語でした。現在2巻まで刊行。

天球駆けるスプートニク 未到の空往く運送屋、ネジの外れた銀髪衛精 (Novel 0)

天球駆けるスプートニク 未到の空往く運送屋、ネジの外れた銀髪衛精 (Novel 0)

 

西暦二〇三〇年、突如上空に現れた正体不明の飛行物体「衛精」の無差別攻撃で人類が空を奪われた世界。低空飛行に特化させた飛行艇ULFを駆る運び屋タクロウと銀髪犬耳少女チェルシーの物語。チームを組まない訳ありげな青年タクロウと駄犬扱いの相棒チェルシー。彼らに託した想いのため危険と最速の限界を乗り越えようとする二人の物語は、明らかになってゆく彼らの過去や事情によってガラリと印象も変わりますが、メリハリの効いた展開やギリギリを攻め続ける飛行描写、二人を中心とする人間模様がとても良くてぜひ続刊を期待したい作品ですね。

 

以上です。【ライト文芸編】【一般文庫編】は未消化の新刊があるので、月末更新になると思います。よろしくお願いします。

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