読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2016年12月に読んだ新作おすすめ本

既存シリーズも新作も気になる本目白押しで、選んで読むのが大変だった記憶しかない12月でしたが、思わぬトラブルに見舞われながらも何とかそこそこ読めました。2016年読了分最後の新作オススメは18点です。気になる本があったらぜひ手に取ってみてください。

 

友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)

友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)

 

 妙なこだわりで高校で友達ができない新藤大輔に、存在感のないクラスメイト澄田が持ちかけてきた困ったときに助け合う「友達いらない同盟」そんな同盟から始まる二人の物語。それぞれが複雑な家庭事情を抱えてはいるけれど、一見同じようでいてまるで対照的な新藤と澄田。グループから浮いた城ヶ崎も加わって三人で楽しそうに見えたのに、なぜか澄田が距離を置くようになってゆく危機的状況でしたが、本音で引き留めようとする新藤の提案はかなり無茶苦茶でしたね(苦笑)このレーベルでたまに出てくる不思議な魅力のある物語で次回作も期待ですね。

いま、n回目のカノジョ (ファンタジア文庫)

いま、n回目のカノジョ (ファンタジア文庫)

 

 幼馴染の刻坂詩音が巻き起こすループにたびたび巻き込まれる毎原和人。無自覚に唐突に繰り返される日常を諦めて受容していた和人たちの前に、同じくループを自覚する転校生の美少女・神崎が現れるループ系青春小説。ループを引き起こすのに認めない天然な詩音と、いろいろツッコみつつも幼馴染のために奔走する和人、一見クールビューティなのに実は口下手で不器用な神崎のやりとりがじわじわくる感じで、繰り返されるドタバタで楽しい日常を許容しつつあった彼らに起きるひとつの転機と真相はきれいにまとまりましたが、続巻がとても楽しみですね。

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

 

 見た目も成績も地味なのに「なんか援交だかをやっているらしい」という噂によって、クラス全員に避けられている中萱梓。愛称アズ。いきなり始まるアズの思考だだ漏れな地の文のみっちり感には面食らいましたが、最初は友人の自称・魔法少女サワメグや窮地を助けてくれた穂高先輩たちとぼっち少女の青春ものと思って読んでいたら、え?そっちなの?とどんどん思わぬ方向に向かってゆく展開は奇想天外で、なのにしっかりと青春もしていて、何かじわじわと来る独特な世界観を持つ突き抜けた物語でした。イラストも素晴らしかったですし前日譚にも期待。

わたしの魔術コンサルタント (電撃文庫)

わたしの魔術コンサルタント (電撃文庫)

 

 かつて師を救えず己の魔術を失った過去を持つ魔術士・黒瀬秀春の元に現れた、秀春を父親だと勘違いするかつての師の娘・朝倉ヒナコ。そんな二人が織り成す魔術と居場所の物語。魔術を失いながらも魔術をつかう人に希望を見出そうとする秀春が出会う、才能に恵まれた悩める少女たち。ヒナコとの共同生活や、タイプの違う魅力的な少女たちと主人公との師弟関係やドタバタぶりも楽しくて、過去の複雑な因縁を絡めつつ少女たちのために奔走する展開はなかなか良かったです。ここからの物語を期待できそうな結末でしたし、続巻出ることを期待しています。

 平凡に暮らす奇術師見習いのシオンが、暗殺公によって家族の記憶を改竄されて亡き者とされ、唯一生き残る方法として暗殺公の娘エヴァレットと共に盾として謎の教育機関に入学させられるファンタジー。王女が自ら先頭に立って暗殺者と戦う大暗殺時代に、暗殺技術を巧みに操る令嬢たちのみの学園。そこに男装の令嬢と偽ってエヴァレットと共に入学したシオンが、境遇に戸惑いながらもきちんと向き合い、エヴァレットたちと絆を築いていったり、令嬢たちのために奔走する姿はなかなか良かったですね。彼自身にも何か秘密がありそうで続巻に期待ですね。

白き姫騎士と黒の戦略家 (講談社ラノベ文庫)

白き姫騎士と黒の戦略家 (講談社ラノベ文庫)

 

 王太子レオンハルトを支え王国を発展させていく未来を夢想していた若き騎士ジーク。隣国の侵攻で王太子を喪った彼が、犬猿の仲である妹姫リーゼロッテとともに仇敵の勇者王ベルトランに立ち向かうファンタジー戦姫。規格外のベルトランの力に敗北した王国軍の殿を引き受けたジークとそこに押しかけたリーゼロッテ。大軍相手に寡兵で向かうため手段を厭わずにベルトラン打倒を狙うジークと、あくまで騎士道を重んじる彼女が対立しながらも同じ目的を果たすために力を合わせて打倒を目指してゆく展開はなかなか面白かったです。次回作にも期待ですね。

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

 

 黒豚の悪神伝説が言い伝えられている宇嘉見島。その古臭い慣習も閉鎖的な環境も大嫌いな中学生ヨナのクラスに、東京から美少女・波多野清子が転校してくるひと夏の異世界譚。清子の美声を聞いて彼女を主演に『オズの魔法使い』の映画を取りたいとアプローチするヨナ。そんな彼だけでなくクラスの皆からも距離を置く清子が隠す秘密。ヨナたちのお陰で本来の姿を見せるようになった清子はとてもいい子で、だからこそ明かされた真相には切ない気持ちにもなりましたけど、彼女が笑って過ごせるようになった結末にはとても心温かい気持ちになりました。

あしたはれたら死のう (文春文庫)

あしたはれたら死のう (文春文庫)

 

 自殺未遂の結果、数年分の記憶と感情の一部を失ってしまった女子高生遠子。しかしなぜ死んでしまった同級生の志信と一緒に自殺を図ったのか、理由が分からずその原因を探るべく動き出す青春小説。以前とは明らかに変わった遠子の言動に戸惑う周囲の人たち。SNSに残されていた手がかりをもとに追う志信との関係や自殺の理由。志信と出会ってからの変化や彼のことを知ってゆくと、自殺を図った真相に切ないものを感じてしまいましたが、閉塞感のあった状況にも目をそらさずに真摯に向き合うようになった今の遠子のこれからを応援したくなりました。

タイムカプセル浪漫紀行 (メディアワークス文庫)

タイムカプセル浪漫紀行 (メディアワークス文庫)

 

 考古学者である父の遺跡捏造事件で同じ考古学者となる夢に希望が持てなくなった大学生の英一。そんな失意の日々を過ごす彼の前に10年前に亡くなった幼馴染の少女・明日香が現れる物語。昔果たせなかった明日香との約束。昔埋めたタイムカプセル探しを提案する明日香と共に向かう以前住んでいた街と、そこで出会うかつての友人や恩師たち。明るく天真爛漫だった明日香のやりたかったこと、望んでいた未来には切ない気持ちにもなりましたが、自分を見失いかけていた英一の背中を押してくれた彼女の想いが大きな転機に繋がってゆく素敵な物語でした。

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

 

 「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説き死神と呼ばれる医者・桐子。奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない副医院長・福原と対象的な二人が挑む戦いが描かれる医療ドラマ。直面する「死」に対してどう向き合うのか。残された時間を生還の望みが薄い延命治療のために戦うか、後悔なく生きるために使うのかというそれぞれの選択。それは正解のないとても難しい問いですが、それでも患者だけでなく医師や家族たちもそれぞれ精一杯何とかしたいと残り時間に向き合う姿が真摯に描かれていて、切ない物語でしたけどとても心に響きました。

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

 

 イラストの仕事だけでは食べていけず、夢破れて生きるために親に内緒で地元タウン誌を発行する会社の事務員として採用された夏実。その個性的な面々が集うブラック企業ぶりを描くお仕事小説。周囲の同僚がだらしない人たちで振り回されたり、仕事をスムーズに動かすために始発で行って仕事とか考えるあたりが、すでにもう重症だなと思わなくもないですけど、それはそれとして社会人として仕事をしっかりこなす夏実だからこそ周囲から信頼されるのも納得ですね。大変なことに巻き込まれましたが、林さんとの今後が気になるので続刊に期待したいです。

 経営難で廃業の噂が絶えない崖っぷちなホテルに就職したおっちょこちょいの新入社員・落合千代子。毎回渦中に巻き込まれる事件を先輩の教育係二宮と一緒に解決するお仕事ミステリ。うっかりでアバウトな性格もあって、次々と訳ありな客の事情に巻き込まれてゆく千代子と振り回される二宮。残念な発想しか出てこない上司のダメっぷりには苦笑いでしたが、何だかんだで事件を上手くまとまめていって「美人すぎるベルガール」と呼ばれ、ホテルの集客にまで貢献してしまうから分からないですね。少しひねった謎と悪くない読後感で読みやすいお話でした。

僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)

僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)

 

 人と話すことが大の苦手で毎週水曜日に原因不明の熱に悩まされている高校生の翼。病院の帰り道に偶然立ち寄った奇妙なペットショップで不思議な猫と出会い、家で飼うことになる物語。彼だけには別のものに見える不思議な猫・モナミとの出会いが転機となって、自身のわだかまりを解消しいろいろなものへの見る目が変わっていったり、お店でのバイトで同じようなお客と関わって一緒にその不安を解消したりで、その世界が少しずつ広がってゆくことを実感する物語は、とても読みやすくて良かったなと思える読後感でした。続刊を読んでみたい作品ですね。

209号室には知らない子供がいる

209号室には知らない子供がいる

 

 リバーサイドに建つ瀟洒なマンションサンクレール。209号室に住む葵という名の美少年によって、一見「ちゃんとして」見える女たちが静かに歪み壊れていくホラーミステリ。ふとした隙に家庭に入り込む葵によって、歪められてゆく家族とそれによって追い詰められてゆく妻たち。マンションで立て続けに起こる怪事件と、少しずつ明らかになってゆく謎めいた209号室の事情。少しずつ壊れてゆく関係の描写がとても生々しくて、一区切りついたかに見せかけてゾクリとさせる部分を最後に垣間見せる怖さに、著者さんらしさがよく出ていると思いました。

文藝モンスター (河出文庫)

文藝モンスター (河出文庫)

 

 文学賞受賞仲間で年に一度岡山の旅館で行われる打ち上げに参加した新人作家・笹野。地元で信仰を集める「消し神様」に願いを祈った人気作家たちが、その通りに発生した殺人事件の真相に挑むミステリ。作品へのスタンスや編集者との関係もそれぞれ違う、個性的で濃い人気作家たち。作家間でのぶっちゃけた会話や、インタビュー記事で語られるその思いは生々しくて、実感のこもった話だなあと思いながら興味深く読んでいましたけど、どこに向かうのかと思っていた顛末は何かすんなりまとまって、途中はグロいと思ったのになぜか悪くない読後感でした。

救ってみろと放課後は言う

救ってみろと放課後は言う

 

 遺書を書いて自殺すると決めたのに、以前相談した聞き屋・神山に遺書と練炭の入った鞄を盗まれた日登志。そんな彼がいいように使ってくる岸塚に呼び出され、ビルから落下した神山の状況を調べるよう命令される青春ミステリ。希望のない日々を送っているように見える日登志と、たまたま宇都宮に帰ってきて神山から遺書を手渡された友人・瑠梨。二人の視点から交互に語られてゆく物語は、新事実が明らかになるたびにその様相を変えていって、終わってみれば最初抱いた印象とは全く異なる物語となっていて驚きました。読後感も悪くなくて次回作に期待。

真夜中の本屋戦争 (ホワイトブックス)

真夜中の本屋戦争 (ホワイトブックス)

 

 エキナカ書店でバイトを始めた大学生の渡鍋渉が、閉店後の店内で平台争奪戦を行う本たちのゴーストに遭遇し、美人書店員の竹河紫野とともにそれに対処する物語。これまで一人で織田信長やホームズのような姿を模したフィギュアたちの場所取り合戦に振り回されてきた紫野。ほのかな想いを抱く彼女を助けつつ、フェア企画、夏の百冊や読書週間、クリスマスと何かあるたびに繰り広げられる騒動に巻き込まれる展開は、なかなか微笑ましい雰囲気でした。書店ものとして期待して読むとやや浅いですが、そういうものとして楽しめばなかなか面白かったです。

石黒くんに春は来ない

石黒くんに春は来ない

 

 典型的なスクールカーストが形成されたクラスで起こった、スキー教室における石黒君の遭難事件。平穏なようでいて歪な日常を取り戻した生徒たちに突然、意識不明の重体だった石黒君からメッセージが届く学園サスペンス。気ままに君臨するグループに事なかれの主義の教師、それによって生じる不登校や少しずつ溜まってゆく不満。それを巧みに扇動するものが現れることでガラリと様相が変わる狭い社会における群集心理の怖さが生々しかったです。途中から傍観者だった主人公恵美でしたけど、一度作られてしまった流れをどうにかするのは難しいですね。