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読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2016年9月に読んだ新作おすすめ本

9月はもう読めないと思っていた「狼と香辛料」の続巻と新章開始という嬉しい誤算があった一方で、「血翼王亡命譚」「この大陸で、フィジカは悪い薬師だった」「白蝶記」「謎好き乙女シリーズ」や野村美月さんの「楽園への清く正しき道程」など多くの完結を迎えたシリーズがあったり、終盤に差し掛かっているシリーズもあります。始まりがあれば終りがあるのが常ですが、好きだったシリーズが完結してしまうのは何とも寂しいものですね。

 

今回オススメする新作は13点。犬村小六さんの「やがて恋するヴィヴィ・レイン」はまたもや長編を予感させる期待の新シリーズですね。

 亡くなった義妹の願いを胸に、どん底から這い上がってヴィヴィ・レインを探す旅に出た少年・ルカが戦いの中で3人の少女と運命の出会いを果たす恋と会戦の物語。再会した幼馴染の天才操縦士・ミズキ、王国軍を急襲した義妹と瓜二つの人造人間・アステル、そして二人きりの逃避行でルカに惹かれ、敗色濃厚な形勢をひっくり返したのを目の当たりにした斜陽の王国の王女・フィニア。それぞれ抱えるものがあり、強い因縁を匂わせながらも袂を分かった彼らが今後どんな物語を紡いでゆくのか。どうなるのか目が離せない、今後に期待大の新シリーズですね。

 聖職者になる夢を志す青年コルは恩人のロレンスが営む湯屋『狼と香辛料亭』を旅立ち、そんなコルの荷物にこっそり潜んでロレンスとホロの娘・ミューリが共に旅立つ新シリーズ。ホロの娘らしさも兼ね備えた自由奔放で天真爛漫なミューリと、そんな彼女に振り回される良くも悪くも真面目なコル。王国の王子に誘われ教会の不正を正す手伝いをする中で二人のひらめきと行動力で窮地を打開してゆく展開は、懐かしさと同時に新コンビらしさも感じられて楽しかったです。まだまだ未熟な二人が今後どのように成長して関係を築いていくのか続巻が楽しみです。

虚無の魔王、創世の英雄姫 (講談社ラノベ文庫)

虚無の魔王、創世の英雄姫 (講談社ラノベ文庫)

 

 王宮での反乱から逃れた王女エレノーラが魔王リュウトの封印を解き、その助力を得て奪われた国を取り戻すべく動き出すファンタジー。危機に際して以前から憧憬を抱いていた魔王を期せずして隷属させたエレノーラ。最初は追われているのに追手の不殺を命じる王女を甘いと感じるリュウトに共感してしまいましたが、未熟でたびたび危機に陥りながらも揺るがないエレノーラの志の高さや、絶体絶命な状況にも諦めない彼女の勇気には心動かされるものがありましたかね。物語をうまく動かして1冊で展開をまとめた構成には好感。次回作も期待しています。

彼方なる君の笑顔は鏡の向こう (講談社ラノベ文庫)

彼方なる君の笑顔は鏡の向こう (講談社ラノベ文庫)

 

 幼馴染の詩歌だけにはダメな一面も見せる美少女の彼方。そんな彼女が神社での事故から3人の付喪神の女の子を生み出してしまい、その3人と一人暮らしの詩歌が同居生活を始める物語。「詩歌への想い」「記憶」「食欲」の強い想いを失い、どこかよそよそしくなってしまった彼方。欲望に忠実な3人に振り回される詩歌。以前の駄彼方に戻って欲しいと思う一方で、彼方も加えて共に過ごし家族のような関係と感じるようになってゆく彼らは難しい決断を迫られましたが、彼らの強い絆を信じて応援したくなったちょっぴり切ない幼馴染たちの恋の物語でした。

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

 

 突然見知らぬ男に不登校の女子高生・佐薙ひじりの面倒を見るよう依頼された、失業中の青年・高坂賢吾。リハビリと称して一緒に過ごす時間を作るようになる二人が意外な事実を突きつけられる物語。母の死をきっかけに極度な潔癖症となり生きることに絶望している高坂と、寄生虫に興味を持つ視線恐怖症でヘッドフォンを手放せないひじり。共に時間を過ごす中で孤独で不器用な二人が惹かれ合ってゆく想いを、こういう形でしか証明できないというのは切ないですね。二人が最後まで寄り添える可能性を信じて、その幸せを願わずにはいられませんでした。

お仕事ガール! (メディアワークス文庫)
 

頑張り屋だけどどこかツイてないOL時子は社会人3年目で会社が倒産。転職活動も空振りが続く中で、放置され気味の大学院の彼氏から因縁ある会社を紹介されるお仕事小説。最初は背に腹は代えられなくて、嫌々務め始めた受付嬢の仕事。でもそこでトラブルや人間関係を解決して人事部に抜擢、そこからパワハラも跳ね返してしまうパワーや展開にはやや荒唐無稽な感もありましたが、相手側の隠された心情もきちんと丁寧に描かれていて、何より時子の仕事に真摯に向き合う姿勢には好感。読んでいて自分も頑張ろうと前向きな気分になるそんな一冊でした。

きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

 

物をバラバラにすることに対して人並み以上の情熱を持つ異質な少女・天使玲夏と、彼女の幼馴染で何よりも平穏を望む少年・結城友紀が総合パズル研究同好会へと入部し、同好会のメンバーと“アドレス”と呼ばれる犯人による、バラバラ連続殺人事件の謎を追う物語。独特な行動基準で動く彼女をきちんと理解してフォローしている友紀は、口ではいろいろ言ってもお互いにかけがえのない存在なんだろうなと(苦笑)一見サイコさんな玲夏も友人には優しくて、ささやかな目標を手帳に書いてる一面は可愛いかったです。続編あるならまた読んでみたいですね。

ぼんくら陰陽師の鬼嫁 (富士見L文庫)
 

 バイトをクビになった挙句、住んでいた激安アパートから火事で焼け出され途方に暮れる天涯孤独の大学生・野崎芹。そんな時に近くの公園で陰陽師・北御門皇臥と出会い、破格の条件で仮嫁契約を交わす物語。童女や白虎の式神に囲まれ、知れば知るほど怪しくなってゆく北御門家の事情。知らされていなかった同居する義母の存在。それでもできることをやろうと前向きで、諸事情でぼんくら陰陽師だった皇臥をいろいろ焚きつける鬼嫁ぶりはこれからいいコンビになりそうな予感。事情が明らかになる結末もいい感じで、今後のシリーズ化を期待したいですね。

博物館のファントム 箕作博士の事件簿 (集英社文庫)

博物館のファントム 箕作博士の事件簿 (集英社文庫)

 

 縁あって自然史博物館で働くことになった計算屋・池之端環が植物標本整理を命じられ、未整理の標本や資料が大量に詰め込まれた旧館「赤煉瓦」で変人科学者・箕作類と出会い、二人の身の回りで起こる事件を解決するミステリ。あちこちに首を突っ込み整理したり片付けたいタイプで、ズボラで口が悪い箕作と真っ向から対決する環。なぜか事件に巻き込まれてしまう環と、洞察力に優れた探偵役の箕作はいがみ合いながらもわりといいコンビっぷりで、作中で出てくる博物館まわりのお話もなかなか興味深かったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。

教室の灯りは謎の色

教室の灯りは謎の色

 

 塾には通いながらも不登校を続ける女子高生・遙の義母が教師として務める高校へ行けない本当の理由。塾講師の黒澤によって転機を得た彼女が、彼とともに学習塾で起こる謎を解き明かすミステリ。逃れられない呪縛を抱える遙の状況を見抜き、寡黙なりに救いの手を差し伸べた黒澤。繊細な不登校学生も受け入れる学習塾で起こる複雑な人間関係を背景とする事件。過去をなかったことにはできませんが、歪んだままの状況が解消できれば変わるきっかけになるんですよね。その現実的で地に足付いたアプローチには好感。続巻あるならまた読んでみたいです。

金曜日の本屋さん (ハルキ文庫 な 17-1)

金曜日の本屋さん (ハルキ文庫 な 17-1)

 

 「読みたい本が見つかる」と噂の北関東の駅ナカ書店・金曜堂。藁にもすがる思いで訪ねた大学生の倉井がここで働くようになり、人と本の運命の出会いを目の当たりにしてゆく物語。この書店に訪れてくるのは主人公の倉井含めて訳ありの人たちばかり。底抜けに明るい女店長・南槇乃とその仲間たちが、必要な本やその悩める想いにもきちんと向き合うことで、訪れた迷える客たちが前を向けるよう優しく手助けをしているのを感じて、とても温かい気持ちになりました。書店あるあるとはまた違った趣でしたが、続巻あるようならまた読んでみたい物語ですね。

あの日の花火を君ともう一度 (双葉文庫)

あの日の花火を君ともう一度 (双葉文庫)

 

 中3の夏休み。幼馴染の林田律紀と付き合い始めた大柴美緒が、書いていた日記に自分の筆跡で律紀の親友・高梨桐哉と付き合っているという見覚えのない記述を見つける物語。2人で花火を見た夜、交通事故に遭って帰らぬ人となった律紀。悲しみ暮れる美緒を隣で励まし続けた桐哉。そして新たな関係が育まれてゆく中で唐突に気付くあの日記の真実。今ある幸せと抱えていた後悔に葛藤する美緒が下した決断は尊いものでしたけど、その代償として突きつけられた彼女の大きな喪失感を誰も知らないというほろ苦い結末が、とても切なくて印象的な物語でした。

カササギの計略 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

カササギの計略 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 ある日平凡な大学生活を送っていた岡部のアパートに昔交わした約束を果たしに来たとする見覚えのない女・華子が現れていきなりビンタされ、さらには一緒に住むことになる物語。華子に振り回されながらも共に過ごすうちに彼女に惹かれてゆく岡部。そして徐々に明らかになってゆく華子と岡部の過去。いつ普通に生活できなくなるか分からない華子との再会と別れの切ないお話と思ったら、終盤二転三転した挙句予想もしてなかった結末を迎えてポカーンとしてしまいました(苦笑)届かなかった想いばかりの展開で、最後に希望があってまだ良かったのかな。