今回は8月ガガガ文庫・集英社オレンジ文庫の新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫の新作3点、続巻3点、集英社オレンジ文庫の新作5点、続巻2点の計13点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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ミドルノートにさよなら (ガガガ文庫)
勝ち気で誰よりも『女の子であること』に真摯な九重彩音と、気弱だけど少し意固地な桜庭真白。お互いさえいれば他に誰もいらなかった2人の関係に思わぬ試練が訪れる青春小説。ミッション系中高一貫校、清葉女学院の片隅で周囲を寄せ付けず、密かに想いを育んでいた2人の関係。しかしそんな揺るぎない関係性に波紋を投げかけずにはいられない、真白が直面する思ってもみなかった事態。少しずつ着実に避けられない変化が訪れる中、これまでずっと2人の尊い関係を見守ってきた周囲の人たちの協力を得て、何とかそれに向き合おうとする真白。そしてずっと見守ってきた彩音だからこその葛藤と心からの叫びがあって、紆余曲折を何とか乗り越えて、ようやくたどり着いたかけがえのない思いがとても素敵な物語でした。
炒飯大脱獄 (ガガガ文庫)
【第19回小学館ライトノベル大賞<ガガガ賞>受賞作】
父親に連れ出されて、だまし討ちのような形で「上海炒飯大学」に放り込まれた高校生・柳葉蒼音。その理不尽に立ち向かう前代未聞の炒飯プリズン・ブレイク。衣食住のグレードが炒飯で決定される狂った世界からの解放条件は、一年で千皿の炒飯を積み上げること。熱いシャルン、メモ魔のメイリー、気弱なウサギと班を組むものの、初心者ゆえにあまりにも不味い炒飯しか作れず、足を引っ張ってしまい最下層からスタートになった蒼音。しかし脱獄は上手く行かず、心を入れ替えて仲間から教えてもらい上を目指す中で育まれていく確かな絆があって、少しずつ手応えを感じながらライバルたちに挑み、恩師である監視官たちを唸らせるようになっていく熱い展開はなかなか良かったです。
サクチシノニエ: 異端の儀式 (ガガガ文庫)
高校生にして天涯孤独の身となってしまった川上縫。生前の父の友人が営む児童養護施設に入るため茨城県の佐口澌村にやって来て直面する惨劇の物語。両親や育ての親を次々と失い、同い年の女子高生・水谷緒途を始めとした、五人の子供たちとの施設での同居生活を始め、次第に新しい生活に慣れていった縫。彼がサクチシサマを祀る神社で出会った、これまで毎晩のように何度も夢で見た少女・芽璃。彼女が語る3件の怪死事件、そして彼女の予言通りに縫の身の回りで再び起きる残酷な事件にはなかなか来るものがあって、連続怪死事件や宗教、夢、縫自身の失われた記憶が複雑な繋がった先に待っていたサクチシサマを祀る土着的な儀式とその結末は衝撃的でした…。
ニュー忍者ロード (下) (ガガガ文庫)
生徒会長・姫氏原すみれが龍神に娶られる理不尽を許せず、独り戦いに身を投じた連城大弥。彼が対峙するかつての剣豪たちに臆せず次々と挑む下巻。信綱から託されて始まったすみれとのぎこちない2人旅。沼田城址での柳生連也との激闘と柳生一族の計略、交流を深めた沖田総司との友情ゆえの血闘があって、いったんは離れ離れになってしまった旅の果てで、これまで認められることがなかったゆえに名のしれた相手に自己肯定感の低さを垣間見せながら、それでもすみれの母からも託されて、彼女を守るために龍神や上最強の名を今も追い求める相手にも諦めずに自分の持てる力をぶつけて立ち向かっていく熱い展開と、すみれとたどり着いたこの物語らしいその結末はなかなか良かったですね。
白き帝国: アイオーンの戦舞5 (ガガガ文庫)
いまや二万の大軍「白猫軍」となってトラム川を越えたガガたち。一方、事実上葡萄海の皇帝となったイリアスは総力を結集して白猫軍との決戦に赴く第5弾。大軍を集めたものの、ガガが略奪を禁じたことで戦う前から戦力が半減してしまう白猫軍。対して北伐を完遂し、貴族諸侯たちが集結し、「剣聖」アイオーンが先陣を務める黒薔薇騎士団。決戦前に起きた思わぬ事態と覚悟があって、難局に立ち上がった意外なキーマンもなかなかカッコ良かったですけど、それぞれが意識せずにはいられない過去の因縁の決着も見どころが多かったですし、今回の戦い結末によって大きく変わりそうな勢力の構図や、これから物語がどう動いていくのか、今後の新展開が改めて楽しみになってきました。
千歳くんはラムネ瓶のなか Days of Endless Summer (ガガガ文庫)
裕夢/raemz 小学館 2025年08月20日頃
5~9巻までの特典SSやコミックスSS、さらには9巻後の書き下ろし短編「長く短い祭りのあと」を収録したSS集第2弾。悠月と陽の関係、朔と優空の関係、悠月の内面描写や朔との関係、明日風と奥野先輩、夕湖と母のやりとり、悠月と夕湖、朔と悠月&陽、陽と亜土夢、海人を訪れる健太&和希、優空と明日風、悠月となずな、明日風の心情描写、陽と舞、優空と夕湖、明日風と夕湖、明日風と悠月、陽と優空たちの関係描写や遅れてきた後輩・紅葉と各ヒロインたちとのやりとりなど、SSで描かれる当時の情景を掘り下げるような描写は、特に朔と同級生ではない明日風先輩と紅葉の存在が効いていて、最後の書き下ろし短編もなかなか良かったです。
荒野は群青に染まりて 暁闇編 (集英社オレンジ文庫)
太平洋戦争敗戦後、大陸からの引揚船で母とはぐれてしまった中学生・阪上群青が、その場に居合わせた赤城壮一郎と激動の時代を共に生きてゆく物語。母とはぐれた直後に何かが海に落下する音を聞いていて、謎の男に赤城が君の母親を突き落としたと告げられ、疑惑がぬぐえないまま行く当てもなく赤城と共に焼野原を生きる群青。戦後の混乱期を生きる中で、衣食の次に欲するのは「清潔」だと気づき、近江兄妹と出会った2人が石鹸会社を立ち上げて、様々な出会いと別れ、困難に立ち向かいながら育まれるかけがえのない絆があって、明らかになった衝撃の過去、見守ってくれた赤城への複雑な思いも抱きながら、葛藤の末に自ら決めた道を進む群青のこれからをまた読んでみたいと思いました。
冥官の愛妻 怪談寺のおくりびと (集英社オレンジ文庫)
養父母から提案された薬種問屋の第六夫人という縁談から逃れるため億葉寺に就職した莉々。縁談回避のために就職したのに、契約結婚を持ちかけられる「おくりびと」ファンタジー。志偉からの提案に渡りに船とばかりに就職した億葉寺。そこは冥府に繋がっていて、集まったこの世をさまよう死者「遊鬼」を偶然冥府に送ることに成功して、住職の志偉とともに遊鬼絡みの事件に巻き込まれていく莉々。遊鬼や貧乏寺のためにもお祓いをして欲しいけれど、志偉の気持ちを知ってしまった莉々の複雑な思いがあって、行く先々で志偉と夫婦と誤解されたりしながらだんだんと周囲に認められていって、かけがえのない自分らしくいられる居場所を見出して、大切な過去も思い出していったその結末はなかなか良かったですね。
九十九里浜の海食堂 かもめ亭 (集英社オレンジ文庫)
千葉九十九里浜の海辺にある地元で愛されながら営業する海鮮食堂「かもめ亭」を舞台に、海の幸が訪れるお客をおいしく元気づける連作短編集。店を訪れる高校卒業を控えて遠距離恋愛になることを悩むカップルや、大学卒業を機に相棒が就職した低迷する配信者、子どもたちや保護者、同僚との人間関係に悩む保育士、鬱になって休職中に引け目を感じる男性、進路で親とすれ違う女子高生、定年退職後の時間を持て余す男性たちそれぞれが抱える悩み。いつも明るい店員の菊川さんが働くかもめ亭で美味しいご飯を食べ話す中で、そんな彼らを支えてくれる存在が浮き彫りになっていって、今を見つめ直してこれからに希望を見出していくそれぞれの姿はなかなか良かったですね。
あなたの呪い、肩代わりします。 (集英社オレンジ文庫)
SNSに「子供が」というひと言を残して失踪したブロガー配信者・杏。呪いを肩代わりする夏目天寿に、杏の友人で配信者の成島優子が呪いの解除を依頼するホラー小説。他人の呪いを自分へ移し替えて羽織ることを生業とする夏目天寿にもたされた、黒い子供達が現れる「聞き耳」という呪いを検証していた杏の失踪と、自分も子どもを見てしまったという優子。最終的に依頼を引き受けるものの、優子と仲間たちの勝手な行動により呪いを引き受けることに失敗してしまう天寿。引きこもりだった天寿と彼女たちの関係が少しずつ変わっていく中で、共に呪いの解決に動き出す中で明らかになっていく彼の過去があって、支えられながら事件に決着をつけて、未来に希望を見出していく結末はなかなか良かったです。
いろはに狼 猫と鬼と勝烏 (集英社オレンジ文庫)
妖怪が人の世にも広く周知されて久しい大正時代。祖父と暮らす鬼籠野いろはが、相棒である人狼ロウと帝都を騒がせる妖怪を捕縛するあやかし退魔帖。名門女学校の生徒という以外に、帝都を騒がせる妖怪を捕縛する組織「勝烏」の一員としても活動しているいろはが、相棒である人狼ロウと共に老舗仏具店主の屋敷で起きている怪異を解決するよう命じられる展開で、しかし非協力的な店主に息子の様子もおかしく、歪な人間関係も浮き彫りになっていく中、まだまだ未熟で力不足な自分を自覚してその立ち位置に悩みながらも、そんな彼女のことを支えてくれるロウの存在があって、葛藤を乗り越えて人を救うために自分ができることをしようと奔走する姿が印象的でした。
魔法使いのお留守番 シロガネ編 (集英社オレンジ文庫)
希代の天才と称される不老で美貌の魔法使いシロガネ。魔女の生贄となった幼馴染マホロを救うため、世界から魔法をなくす方法を探すシリーズ過去編。原初の魔法の記述があるとされる『緑玉碑文』の存在を知り、写本を持つ西の魔法使いミロクがいる黄金の谷間を訪れたシロガネに対し、不信を抱きながらどこか惹かれていくミロクの弟子アンナ。今回はシロガネの今にいたる過去エピソードが描かれた過去編で、アンナが望まない婚約から救い、連続殺人事件や人々を依存させる魔法草の流通事件といった事件に巻き込まれ、それが壮大な陰謀に繋がっていくストーリーには、自らの願いのために行動しながら、どうすることが正しいのかを見失わないシロガネらしさがよく出ていました。
銀の海 金の大地 8 (集英社オレンジ文庫)
真澄に続いて、真秀までもが強大な霊力に目覚めてしまい、それを知った美知主が上手く利用して佐保彦にある交渉を持ち掛ける第8弾。真秀たちを淡海から出すまいと配下に命令するとともに、佐保の一族を息長の手中に取り込むべく動き出す真秀の父・美知主が、脅しにも似た交渉を持ちかけたことで佐保彦が難しい決断を迫られる中、真澄と御影を連れて淡海を旅立つ覚悟を決める真秀。一方で大和国では大王に嫁いでその子を身籠った美知主の大姫・氷葉洲姫を煽り、その存在を脅かす美しい異母妹・歌凝姫との対立の構図が鮮明となって情勢が大きく変わりつつありますが、たくましい真秀と確かな成長を感じさせる佐保彦がこれからどう動くのか続巻に期待。

