今回は2月ガガガ文庫・GCN文庫・集英社オレンジ文庫の新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫の続巻2点、新作2点、GCN文庫続巻1点、新作1点、集英社オレンジ文庫の続巻2点、新作4点の計12点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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スクール=パラベラム3 若き天才たちは如何にして楽園を捨て、平凡な青春を謳歌するようになったか (ガガガ文庫)
風香の活躍に《キングダム》が掣肘するために動き出し、さらに戻ってきた《ストレングス》の極悪番長まで加わり激しいバトルが繰り広げられる第3弾。京四郎たちを排除しようとする《キングダム》の動きを抑えるため、必要な情報を持っている遠山の護衛に動いていた京四郎と、彼を嵌めて裏切った雪代宮古。そこからフィギュアスケートに身を捧げてきた雪代の過去と葛藤が描かれる中、迷える彼女の苦悩を丸ごと受け止めてみせる京四郎の覚悟があって、シリアスでいられない彼の父親が出てきてからの展開には苦笑いでしたけど、仲間たちの協力も仰ぎながら《ストレングス》の極悪番長と決着をつけた熱いバトルと、何ともしまらない結末もまたらしさがつまっていてめちゃくちゃ楽しかったです。
砂の海のレイメイ: 大いなるアルビオン2 (ガガガ文庫)
ダンテを倒して異世界≪ウォーズ≫直下を支配から解放したテンドウ海賊団。覇者集う六大会議に参加するため、カンパニーへと航路をとる第2弾。道中砂海の伝説と呼ばれる超巨大生物・白鯨と遭遇し、壊滅的な被害を受けながらも六大組織のひとつオーダーの騎士ネビュラの助力で難を切り抜けたレイメイたち。彼にレイメイを託す資質を見出すゲット、密かに復讐の機会を伺うザファルたち、それに新キャラも加えた様々な人間模様が描かれる中で、巨大な白鯨アルビオンをめぐる陰謀も絡めた波乱の展開でしたけど、弱気になるレイメイをゲットが支えて立ち向かう2人の相棒感と、何とももどかしい関係性、彼らが繰り広げる熱いバトルとそれぞれの覚悟が垣間見える結末はなかなか良かったです。
ファム・ファタールを召し上がれ (ガガガ文庫)
『魅了』の異能で世界中の人間を下僕に変えてきた「傾国の悪女」ニカ。彼女が宿敵だった魔界の魔王のもとに送られる惚れたら破滅のラブゲーム。魔界と人類の友好の証としての魔王との婚姻に、厄介払いと魔界の混乱を期待して送られたニカ。ミジンコメンタル引きこもりで、ちょっと興奮するだけで気絶する超絶コミュ障の魔王ナサニエル相手に、早速メイドのスライムを手なづけたニカが、手を変え品を変えて魔王にアプローチしていくものの、魔王がすぐに気絶してしまいなかなか上手くいかない展開でしたが、そんな彼女が魔王城を居心地の良い居場所として実感していく心境の変化と、大切なものを守るために覚悟を決めた魔王と共に人類の悪意に立ち向かう結末はなかなか良かったです。
十分魔導士ハヤブサ (ガガガ文庫)
普通の学生として学園生活に憧れていた好戦魔導士の少年ハヤブサ。そんな彼が風の国の学園に入学する隠密時限バトルコメディ。一族を実力で説得したものの、その出自を恐れられ断られ続けたハヤブサ。風の国が出した条件「出自を隠し国の諜報機関の一員として、魔王復活を目論む悪党と戦うこと」に休み時間のみ請け負う妥協点を見出して学園に入学した彼が、協力者の同級生キッカの助力も得ながら学園生活を過ごしていく展開で、クラスメイトにも秘密、学業最優先で休み時間の10分間で問題を解決する難しさはありましたけど、キッカとお互いのことを知っていきながら助け合い、その中で彼の確かな成長を感じさせてくれた結末はなかなか良かったです。
天才美少女三姉妹は居候にだけちょろ可愛い。 (GCN文庫)
突然の火事で家を失った高校生の理来。父が家を探してくれる間野宿も覚悟した彼が同級生の二葉に誘われ、天王洲美人三姉妹の家に居候するドタバタハーレムラブコメ。最初は一晩限りの約束で家にやってきた理来が目の当たりにする、三姉妹の壊滅的な生活力。そこで理来が卓越した家事能力を発揮して認められ、父親同士が友人だったこともあり、期せずして彼女たちとの同居生活がスタートする展開で、一生懸命で気遣い上手な理来との生活は居心地が良くて、すっかり胃袋も掴まれてしまったことで、高嶺の花と思われていた三姉妹の意外とちょろ可愛い部分が露呈していく様子は微笑ましかったですけど、身近な競争相手がいることでさらに加速していくラブコメ展開が楽しみです。
人気配信者たちのマネージャーになったら、全員元カノだった 2 (GCN文庫)
柊咲/さかむけ マイクロマガジン社 2025年02月20日頃
脅迫された元カノVtuberの問題を何とか解決した新人マネージャーの橘恵。今度はもう一人の元カノでASMRの配信者である加賀燈子からストーカー被害の相談を受ける第2弾。かつての恩人で忘れられないトラウマだった元カノ燈子。とはいえストーカー被害の件もあり、友人の黒鉄にも協力を依頼して早速調査を開始する恵。そこから燈子のシチュエーションASMR撮影旅行にボディーガードとして同行し、かけがえのない思い出を積み重ねてゆく2人がなかなかいい雰囲気でしたけど、一方で明らかにされていく過去の真相もあって、燈子との関係もまたこれから再構築されることになりそうな気配を感じさせる中、そこからまた思ってもみなかった急展開に直面して、ここからまた大きく流れが変わっていきそうですね。
銀の海 金の大地 2 (集英社オレンジ文庫)
初潮を迎え「月の忌屋」に籠められた真秀。十日後、ようやく外界へ戻った真秀は、真若王や息長の男たちの邪な視線に晒される第2弾。丹波への旅をきっかけに真秀の美しさに気づき、自分のものにしようとする真若王。自分のいない隙に真澄にアプローチしていた女、好きな人がいると嘘をつき真若王の求愛から逃れようとする真秀を襲おうとする男たち、救ってくれた若き王子・佐保彦の豹変。自らを巡る環境の激変に困惑する中で、兄妹の結びつきの強さが浮き彫りになる一方、父が誰だったのかも含めて様々なことが明らかになりましたけど、現状維持を望む彼女の想いとは裏腹に、彼女に対する様々な思惑が入り乱れるこの状況はなかなか厳しいですね…。
魔法使いのお留守番 ヒムカ国編 (集英社オレンジ文庫)
世界の秘密を巡る壮絶な戦いのあと、終島に戻ってきたヒマワリ。ヒムカ国へ向かおうとしたヒマワリが彼の国の次期王位を巡る争いに巻き込まれてゆく第3弾。ヒマワリがヒムカ国に向かおうとした矢先に高熱を出して臥せる中、シロガネへの面会を求めた武人の思惑。行方不明になっていたすべての魔法を無効化する体質の青年モチヅキ、ヒムカ国に嫁ぐ道中で眠り姫となってしまった隣国の王女の運命の出会い、そして次期王位を巡る争いと魔法使いの思惑。様々な思惑が垣間見えるエピソードがひとつの物語に収束していく中でヒマワリの過去も明らかになっていって、巻き込まれた騒動の落とし所を上手く誘導していきながら、大切な絆は変わらないと感じさせてくれたその結末はなかなか良かったです。
わたしが魔法少女になっても (集英社オレンジ文庫)
謎の生命体『黒禍』の出現により、『魔法少女』が現実に活躍する社会となった東京。30歳独身会社員・花咲ゆめりが魔法少女となるリリカルお仕事ストーリー。唯一の趣味が魔法少女オタクで玩具メーカー勤務、気になる会社の同僚・颯太が黒禍に襲われている状況に遭遇し、彼を救うために異世界の『妖精』を名乗る謎の少女騎士ミラと魔法少女となる契約を結んだゆめか。30歳の彼女が変身後は15歳の美少女となり仲間と共に戦う姿はなかなかシュールでしたけど、一方で明らかにされる『黒禍』を巡る背景もまた複雑で、ずっと夢見てきた魔法少女の現実は残酷だな…と思いましたけど、それでもそこから逃げずに向き合い、仲間たちと戦い続ける覚悟を決めたゆめりの頑張りをまた読んでみたいと思いました。
私のなかの殺人鬼 (集英社オレンジ文庫)
スナックの雇われママをしている母親と二人暮らしで不登校の女子高生・七緒。ある日やけにリアルな殺人の夢を見た彼女が、全く同じ事件に遭遇するサスペンスミステリ。夢に見た現象がリアルに起きる現象は一度では終わらず、身近な立ち位置の登場人物たちが次々と殺されていく中、殺人鬼の最終的な狙いは母親なのではと危惧して、親友レニと事件の真相を探る七緒。その中で当初から垣間見えていた母と娘のどこか歪んだ関係が改めて浮き彫りになっていきましたけど、一方で母が娘のためを思って行動していた部分があったのも間違いなくて、だからこそ事件の決着後に明らかになってゆく、もうひとつの真相とその結末にはじわじわと来るものがありました…。
バケコミ! 婦人記者・独楽子の帝都事件簿 (集英社オレンジ文庫)
帝都華やかなりし頃、所属する劇団をクビになってしまった独楽子。元女優が「化け込み記事」を書いて新聞社に売り込み、記者転身を目指す大正浪漫お仕事小説。四年間も付き合っていた同じ劇団の俳優に捨てられ、騒ぎを起こして劇団をクビになった挙句、元恋人に貢いでいたせいで借金持ちとなった独楽子。実家の母も厳しい状況に、幼馴染の新聞記者・清隆から遊郭や名家などに潜入して「化け込み記事」を書いて、新聞社に売り込んでみてはと提案される展開で、成金令嬢のダンス講師、デパートガール、コーラスガールといった潜入記事を書いていくうちに、記者としての仕事が意外と自分に合っていて、そこにやりがいを見出していく彼女の心境の変化が印象的な物語でした。
ワケあっておチビと暮らしてます (集英社オレンジ文庫)
再婚した母の入院をきっかけに、一人暮らしをしている高校生の結良のもとにおてんばな4才児うたがやってきて、訳あって2人暮らしを始める60日間を描いた家族小説。この機会に実家に戻ってこいと言われることを避けるため、短期限定という条件で同居を引き受けたものの、母の入院が思ったよりも長引き、自由なうたの言動に振り回される結良。けれどつむちゃんパパやクラスメイト、同じアパートの咲羽子さんなど、まわりの人を頼れるようになったことで、無愛想だったがゆえに孤立しがちだった結良自身の周囲も変わっていって、結良やうたもそれぞれの秘めていた想いも明らかにして、絆を深めていく優しくて温かい素敵な家族の物語でした。