今回は2025年1月ガガガ文庫・富士見ファンタジア文庫・GCN文庫・電撃の新文芸・集英社オレンジ文庫新刊感想まとめです。内訳はガガガ文庫の続巻2点、富士見ファンタジア文庫の新作2点、続巻2点、GCN文庫の続巻2点、新作1点、電撃の新文芸の続巻1点、集英社オレンジ文庫の新作3点の計13点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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愛とか恋とか、くだらない。2 (ガガガ文庫)
涼香たちの同級生で読者モデルとしても活躍する校内の有名人・喜多奏音。しかし、あるトラブルから助けたことをきっかけに、祐真は彼女から興味を持たれてしまう第2弾。いつも複数の男を侍らせて祐真や涼香の考えとは対極にいる存在。けれど危うい言動でトラブルに巻き込まれがちな奏音を、ついお節介で助けた祐真。周囲にいないタイプの彼に興味を持って、ぐいぐい距離を縮めていく奏音の存在は、周囲には秘密にしていた祐真との関係にどこか優越感が透けて見えていた涼香にしてみれば、どうにも気に食わないと感じるのも必然の展開で、状況に悶々としてだんだんと我慢できなくなってゆく様子はこれから面白くなりそうですね。一方でようやく少しずつ意識し始めた莉子と晃成の距離感も気になるところです。
白き帝国: アルテミシア純情3 (ガガガ文庫)
「白猫隊」を名乗ってタイタス原野を旅するガガたち。一方、ガトー島に戻ったジャンジャックらは「魔王の塔」地下で古代の祭壇を発見する第3弾。ガガが略奪を禁じたため資金難に陥り、やむを得ず旅芸人として歌と演劇で稼ぐことになった白猫隊の様子は微笑ましかったですけど、一方でとてつもない力を秘めたルシファーの謎や、その性格に多大な影響を与えたアルテミシアの過去、彼女たちとャンジャックとの関係性が掘り下げられていく中、元宰相・七々原のゲスっぷりが際立っていましたね…。各陣営の複雑な背景も明らかになっていって、様々な思惑が絡み合う間隙を突いてガガたちは勢力を拡大できるのか。これから物語としても大きく動いていろいろと面白くなりそうです。
なぜ逃げるんだい? 僕の召喚獣は可愛いよ (富士見ファンタジア文庫)
【第37回ファンタジア大賞<大賞>】
夜迎 樹/スコッティ/バリキオス KADOKAWA 2025年01月18日
見るものに不安を抱かせてしまうおぞましい召喚獣ハッピー。彼女を召喚したヘレシーが、庶民ながら貴族が通う召喚師学園に入学する学園ファンタジー。庶民で落ちこぼれな上にその相棒ともいうべき召喚獣が怖すぎて、普通にしているだけなのに貴族令嬢を恐怖で籠絡して懐かれ、勝負を挑んできた貴族の人生を狂わせてしまったり、第二の異形美少女ハイドラを召喚したりと、その行動の数々で召喚師学園に入学して早々に浮いてしまうヘレシー。本人はあまり自覚がないまま、さらに無関係な陰謀の黒幕扱いされたり、邪神を信奉する邪教に勘違いされたりと、どんどんカオスな展開に巻き込まれていく、鮮烈なインパクトを残す異色の作品になっていました。
本気を出したお兄ちゃんなら異種族お嬢様のハーレムを作ることぐらい楽勝です! (富士見ファンタジア文庫)
佐倉 唄/ともー KADOKAWA 2025年01月18日
妹ルナを救うために兄のノアが彼女の協力も得ながらハーレム王作を戦決行し、あらゆるお嬢様たちを口説き落とすことに挑むハーレムファンタジー。エルフの中で飛び切りの美少女と評判の、アンジュフォール公爵の箱入り娘リリを最初のターゲットに据えた2人。冒険したいお年頃の彼女の窮地を演出して救い、まんまとその護衛に収まったノアが、大胆な衣装にドキドキさせられたり、その破天荒な性格に手を焼いたりしながらも言うべきことは言って、二人で過ごす甘い時間を延ばしていく展開で、一方兄妹の背景やルナを巡る事情も明らかになる中、因縁の勇者に対峙するバトルもなかなか熱かったですね。意外な正体も明らかになりましたけど、今度はどんなヒロインを攻略するのか続巻が楽しみです。
公女殿下の家庭教師18 闇射ちし神銃 (富士見ファンタジア文庫)
皇都で精霊教使徒次席のイオを下したアレンたち。そこで遺された情報が真実が隠された「シキの書庫」の存在を指し示す第18弾。ティナたちの母・ローザの過去や、精霊強の陰で暗躍する黒幕の真の目的を求めて、始まりの地である北都に向かうアレンたち一行。書庫捜索に動き出すアレンたちと、精霊教首座アスターの運命が交錯する中で、今回は魔王から手紙を託されたフェリシアとアンコさんが思わぬ存在感を見せてくれましたね。たびたび発生するヒロインたちのアレンを巡るバトルは相変わらずで、微笑ましいと言うかなんというかという感じでしたけど、それにしてもリンスター・ハワード両公爵家のメイドさんたちは曲者揃いだな…としみじみ思いました。
貴族令嬢。俺にだけなつく5 (富士見ファンタジア文庫)
専属侍女のシアとのデートを経て深い恋心を伝えられたベレト。貴族令嬢たちとの学園生活もついに卒業式を迎える第5弾。シアとベレトの様子を見てルーナ、エレナもまた揺るぎない覚悟を見せつつも甘いスキンシップを求めるようになって、そんな中三人目の貴族令嬢・歌姫アリアが固めてゆく決意。反応を見ているとベレトに対する周囲の評価もだいぶ変わりつつあるのかな…と感じた今回のエピソードでしたけど、他の婚約者たちとも仲良くできるヒロインたちの関係は安定感があって、ようやくといった感もあったアリアのエピソードも含めてある意味予定調和ともいえる結末ではあったものの、これはこれでなかなか良かったです。
モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件 4 (GCN文庫)
着実に勢力を核出していくファルーン打倒のため結成された連合軍。しかし都合のいい解釈をして好き勝手に動くヒロインたちの活躍で次々と切り崩され、脱落して窮地に陥っていく第4弾。キエル魔導国はフラウたちに滅ぼされ、バルカン国は内乱が勃発、聖騎士団の半数が離脱するなど、結成した連合軍が早々に崩壊しつつある中、時間稼ぎのために焦土作戦を繰り広げるイーリス軍。今回は自らの野望のためにマルスを巧みに利用し、着実に教会内での権力を固めていくマリアがやりたい放題で、ほかのヒロインたちも負けないくらい存在感があって、マルスにやる気がなくても周囲がヤバいために、話がどんどん進んでいく展開には笑ってしまいました。マルスの冒険者エピソードも面白かったですし、動き出した今後の展開が楽しみです。
世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。3 (GCN文庫)
想い実って交際をスタートさせた光輝と雨宮さん。そんなある日、校内四大美少女の最後のひとりで生徒会長である嵐ヶ丘小百合から生徒会への勧誘を受ける第3弾。光輝と雨宮さんにアプローチして生徒会に勧誘する嵐が丘先輩の思惑。そして北欧系ハーフで今をときめくイケメンメンズモデルhayateとのコラボ案件。付き合い始めたばかりの雨宮さんとの初々しいカップルっぷりも良かったですけど、新キャラとして登場した嵐が丘先輩も訳アリのなかなか濃いキャラで、彼女も含めたインパクトのあるヒロインたちと楽しむプールだったり、コラボ案件や花火大会といったイベントが盛りだくさんでしたけど、何より光輝と出会って変わった雨宮さんの積極性や成長が感じられるエピソードがなかなか良かったですね。
人気配信者たちのマネージャーになったら、全員元カノだった (GCN文庫)
柊咲/さかむけ マイクロマガジン社 2025年01月20日頃
大学を卒業して配信事務所に就職した新人マネージャーの橘恵。諸事情で3人のタレントを引き継ぐことになり、配信者になっていた元カノたちと再会する物語。入社早々炎上騒ぎの影響で人手が足りなくなってしまい、初日から担当することになった3人が全て元カノとかいう巡り合わせ。なかなか濃いキャラのヒロインたちと恵の過去も明かされながら、脅迫された蠱惑的なVtuberの問題解決に動く展開で、お節介で優しい本質と悪い一面を垣間見せる彼が、厳しい状況を打開するために手段を選ばず解決を目指して奔走する姿もなかなか印象的でしたが、タイプのヒロインたちはいずれも未練を抱えて恵を意識していて、そんな彼女たちとの今後の展開も気になるところです。
Unnamed Memory -after the end-V (電撃の新文芸)
古宮 九時/chibi KADOKAWA 2025年01月17日頃
外部者の呪具と、どこかに生まれ直すであろう夫を探して旅をするティナーシャ。久しぶりに戻った魔法大陸で不思議な行方不明事件に遭遇する新章第5弾。大陸のあちこちから思考委員として何人もの人間が同時に攫われる事件の解決に挑むティナーシャ。そして奪われた力を取り戻すために鳥籠の歌わぬ鳥となったティナーシャと帝国少佐アルファスとの邂逅。懐かしい人たちとの出会いと別れも描かれた最初のエピソードもなかなかくるものがありましたけど、どこか皮肉めいた帝国皇帝の存在も効いていて、何かと無茶をしがちなティナーシャはオスカーが手綱を握っておいた方がいいとしみじみ思いました…。でも何より別離と再会を何度も繰り返してきた2人のかけがえのない関係が良かったです。
銀の海 金の大地 1 (集英社オレンジ文庫)
大和王権が成立してまもない古代日本、湖の国・淡海。複雑な生い立ちゆえ疎外されていた14歳少女・真秀を主人公とした古代和風ファンタジー。病で寝たきりの母や、目も耳も不自由だが不思議な霊力を持っている兄とともに、ままならない扱いを受けながらも気丈に生きていた真秀が、自身に流れる巫王の一族「佐保」の血のため、時代の争乱に巻き込まれていく展開で、久しぶりに読んでこんな感じだったかなと思いながら読んでいましたが、出自次第で扱いが劇的に変わる時代で、良くも悪くもそれに翻弄されてゆく真秀がこれからどう生きていくのか。まだまだ先は長そうですがこれからの展開に期待しています。
春燕さん、事件です! 女役人の皇都怪異帖 (集英社オレンジ文庫)
大永国の都・承京市中で起こる揉め事や怪事を解決する男装して働く女吏。その一人である王春燕が事件を解決していく中華風ファンタジー。任期10年という女吏の仕事に就き、幽鬼に関わる事件をたちまち解決することから鬼女吏と呼ばれる春燕が、怪異には興味津々の官僚学校を落第寸前の学生・許子游と出会い、一緒に夜な夜な屋敷に現われる離縁後に死んだ先妻の幽鬼の真相、それに関連した女が殺された事件と捕まった男の事件に挑む展開で、幽鬼が絡むかどうかを見極め、時には死んだ者の幽鬼に事情も聞きながら、事件を解決していく春燕と幽鬼好きの変わり者・子游のコンビがなかなかいい味を出していました。
君の瞳に私が映らなくても (集英社オレンジ文庫)
苦い中学時代の記憶から、少しでも可愛くなるためメイクやダイエットに打ち込む高校生活を送る柚葉。夏休み明けのある日、真面目系のイケメン純晴が転校してくる青春小説。一目惚れした純晴の好きそうなタイプを聞いて、読書や髪型を彼の好みに寄せていろいろアプローチしてみるものの、なかなか振り向いてもらえない柚葉。どうやら地味な幼馴染つぐみに想いを寄せている様子に気づいてモヤモヤする彼女が思わず取った行動は、正直絶交されても仕方ないレベルでしたけど、それでも突き放さず向き合ってくれたつぐみや初恋の幼馴染・正直の言葉もあって、柚葉自身が見失いかけていた本当に大切なものに気づき、かけがえのないものを取り戻してゆく結末は悪くなかったです。

