今回は2025年2月の電撃文庫・カドカワBOOKS新刊感想まとめです。内訳は電撃文庫の新作5点、続巻3点、カドカワBOOKSの続巻1点、SQEXノベルの新作1点、ドラゴンノベルスの新作1点の計11点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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女子校の『王子様』がバイト先で俺にだけ『乙女』な顔を見せてくる (電撃文庫)
遥 透子/はらけんし KADOKAWA 2025年02月07日
女子校の『王子様』として圧倒的人気を誇る立華一織が、男子高校生・山吹夏樹の働くファミレスに後輩アルバイトとして入り、彼女の教育係に任命される青春ラブコメ。圧倒的ビジュアルとイケメンすぎる言動で女子の人気を一身に集める一織。その王子様的接客でファミレスを崩壊させそうになる彼女をフォローする中で距離が縮まり、少しずつ他の誰もが知らない彼女の意外な素顔を知っていく夏樹。足りないところをフォローしながら、彼女のピンチには駆けつけてくれて、自分の乙女な一面にも気づいてくれる夏樹のことを、だんだんと意識していく一織のギャップはなかなか破壊力があって、どこか鈍いところはあっても精一杯の勇気にしっかり応える覚悟を見せた夏樹もカッコ良くて、とても素敵な2人でした。
ツッコミ待ちの町野さん (電撃文庫)
いつも部活が始まる前に、二反田しかいないドミノ部に顔を出す水泳部の町田硯。文化部男子×運動部女子の異文化交流を描いたツッコんだら負けな青春ラブコメ。コント仕立ての会話でボケ倒す町野を、ツッコまずにはいられない二反田。ボケては返すの言葉尻や恋も他愛もない会話。毎日は一瞬なのに永遠に感じられた夏休みの部室。ぐいぐい迫る体育会系陽キャなすずりとの時間が日常になっていった二反田は、時には2人で一緒に出かけたりもしながら、積み重ねていく繊細でかけがえのない関係が甘酸っぱかったですね。二反田の友人アフロ八木や彼と同じ中学出身の雪出、そしてファッションヤンキーの安楽寝、調理部の坂本といった面々も絡めた微笑ましい日々をまた読んでみたいと思いました。
メイクアガール (電撃文庫)
池田 明季哉/安田 現象・Xenotoon/安田 現象 KADOKAWA 2025年02月07日
亡き母の遺志を継ぎロボットを開発する天才科学少年・水溜明。研究が行き詰まっている彼が、自身をパワーアップさせるために0号を作り出す映画ノベライズ。友人の大林邦人が彼女のおかげでパワーアップしたという話を聞き、なぜか人間の彼女ではなくロボットの0号を作り出してしまう明。与えられた使命として明の彼女になるために明の友人・茜をストーカーしたり、ファミレスで働いたりと試行錯誤する0号、本質を分かっていない明の迷走とすれ違いがあって、その先で起きた事件の真相もなかなか業が深かったですけど、それ以上に歪だった関係を乗り越えて、お互いのために向き合ったはずの2人がたどり着く戦慄の結末にはじわじわと来るものがありましたね…。
メイクアガール episode 0 (電撃文庫)
池田 明季哉/安田 現象・Xenotoon/安田 現象 KADOKAWA 2025年02月07日
「万年2位」が定位置の高校生の川ノ瀬初。城北大学の〈次世代高校生プログラム〉でも2位だった彼が、1位の少女・水溜稲葉と運命的な出会いを果たす前日譚。3人一組のチームでコンペティションを勝ち抜くことが求められる状況で、同じく劇的な出会いをした最下位の少女・深森ソナタや稲葉と共にチームを組んで、なぜか共同生活を始めることになった初。天才少女への理解が足りずたびたびすれ違う彼らが、お互いを知ってゆく中で生まれる想いがあって、そこから稲葉が抱えていた秘密、そして完璧であるはずなのにままならない状況に陥ってゆく天才少女の妄執が浮き彫りになるストーリーは、この物語の世界観を掘り下げてその解像度を高めてくれました。
陰キャの俺が席替えでS級美少女に囲まれたら秘密の関係が始まった。 (電撃文庫)
星野 星野/黒兎 ゆう KADOKAWA 2025年02月07日
席替えでクラスカーストトップの美少女3人に囲まれてしまった陰キャオタクの泉谷諒太。表向きは完璧な美少女たちが抱える誰にも言えない秘密を知ってしまう板挟みラブコメ。妹系の愛莉、ダウナー系ギャルの優里亜、黒髪清楚系の瑠衣とタイプの違う美少女に囲まれる席になり、うっかり彼女たちの誰も知らない秘密をそれぞれ共有することになった諒太。そこから唯一秘密を知る存在として彼女たちと一緒に出かけたり、窮地をフォローする中で彼女たちの好感度が上がる一方、彼女たちと諒太の間には彼自身も覚えていない過去エピもあるようで、それぞれのルートで仲良くなりつつ、それを他の2人にはそれを共有していないヒロインたちと諒太のどこか危うい関係がこれからどうなっていくのか、今後の展開が楽しみです。
宮澤くんのあまりにも愚かな恋2 (電撃文庫)
瑠音と正式に付き合うことになった矢先、果南と肉体関係を持ってしまったワタ。あざとくも破滅的な果南の企みの前に、事態はただただ悪くなり続ける第2弾。果南との関係に怪しいものを感じつつも何も問い詰められずにいた瑠音。何とか問題を解決しようとするものの、果南に振り回され泥沼に陥っていくワタ。そこからの思わぬ展開に明らかになっていくもう1つの状況もあって、破滅に向かって坂道をどこまでも転げ落ちていくかのような前半の展開を思えば、一周回ってそうなっちゃったか…という開き直りとも思える結論には苦笑いしかなかったですけど、環境が変わってもう少し時間を掛けていけば、2人の関係がまた違ったものになる可能性を残せたことは、不幸中の幸いだったのかもしれないですね…。
ほうかごがかり4 あかね小学校 (電撃文庫)
あかね小学校の『ほうかごがかり』に任命されてしまい、化け物たちに捕食される運命に懸命に抗う五十嵐華菜と仲間たちの生き残りを懸けた戦いの記録を描く第2部第1弾。あかね小学校の『ほうかごがかり』から『かかりのしおり』を作った者に届いた1通のメール。三本足の人形、メリーさん…一人また一人と『ほうかご』の暗闇に消していく少年少女たち。学校の統廃合もあってノウハウも十分に引き継がれていない状況で、いきなり犠牲者が生まれる始まる異常な展開でしたけど、ムードメーカーの五十嵐華菜を中心に何とか対抗しようとするものの、それでも化け物たち相手に無力な彼らの前に現れた啓の存在が光明となるのか…挿絵も効果的に使われていて、今後の展開が気になるところです。
七つの魔剣が支配するXIV (電撃文庫)
誰一人欠けることなく五年生になったオリバーたち剣花団。「律する天の下」の大接近が迫り、キンバリー教師陣も防衛のため連合各地へと派遣される第14弾。彼らが着実に力をつけながらそれぞれの幸せを噛み締め、卒業後の進路を考え切磋琢磨を続ける中で起きた、巧妙な罠で教師陣不在の状況を作り出した聖光教団の異端の導師たちによる学園襲撃。空を覆い尽くす異端の幾何学の下、押し寄せる神の加護を受けた大軍に、内側からも迫る大賢者の足音。最前線で敵を迎え撃つオリバーやナナオたちがギリギリの戦いを続ける苦境の中で、それぞれの成長やかけがえのない絆を見せてくれましたけど、オリバーも訝しむ本当の目的な何なのか。そして迫られた決断の行方も気になるところです…。
サイレント・ウィッチ IX 沈黙の魔女の隠しごと (カドカワBOOKS)
依空 まつり/藤実 なんな KADOKAWA 2025年02月10日頃
連行された生徒会長を助け帝国との戦争も回避する。そのためにモニカは失敗すれば己が処刑される危険な賭けに打って出る覚悟を決める第9弾。重鎮達が集う最高審議会で王国随一の権力者クロックフォード公爵と対峙し、告発されたフェリクスを救うため、学園の生徒会やかけがえのない学友たち、これまでに関わった人たちにも協力を仰いで、一世一代の賭けに出る覚悟を決めたモニカ。そして計画の最大の障害となる看過できない最凶の敵の存在。得意不得意や性格まで計算に入れて、ギリギリの駆け引きを繰り広げた弟子と仲間たちの攻防も見ものでしたが、モニカが見事やりきってみせたその結末もなかなか良かったですし、何より楽しそうなその後を読むともっと続きを読みたくなりました。
悪役貴族が開き直って破滅フラグを実力で叩き折っていたら、いつの間にかヒロイン達から英雄視されるようになった件1 (SQEXノベル)
いずれは最強の探索者 (ドラゴンノベルス)
楓原こうた/ファルまろ スクウェア・エニックス 2025年02月06日頃
気づけばゲームの悪役イクスに転生していた主人公が、誰よりも強くなって、破滅フラグを叩き折ることを目指す勘違い英雄譚。すでに悪評まみれで破滅回避するには手遅れとしか思えない状況に直面して、専属メイドのセレシアとともに三年の間必死に鍛錬を積んで力をつけたイクス。その力で早速窮地に陥っていた貴族の令嬢、聖女たちを救い、入学した学園でも勝負を挑んできた女騎士クレアを返り討ちにするものの、言葉足らずゆえにヒロインたちの勘違いが加速して、なぜか彼女たちに慕われるようになっていく展開には苦笑いでしたけど、困っているヒロインを放っておけないイクスが、聖女を襲撃者から守るために繰り広げる熱い戦いはなかなか良かったです。
手持ちの特殊能力が貧弱で、2年以上たっても最底辺の10級から抜け出せなかった探索者リオン。運良く強力な特殊能力を得た彼が貧乏生活から抜け出してゆく異世界出世ファンタジー。たまたま運良く漁夫の利で『魔眼』『時空操作』といったレアな特殊能力を手に入れて、これまで上手く使いこなせていなかった『結晶』の使い道を見出したリオン。ストイックに強くなるための努力を怠らず、持てる力をうまく組み合わせて試行錯誤を繰り返しながら新たな可能性を見出してゆく彼が、エリアボスも難なく倒せるようになり、隠し通路からたびたびお宝アイテムを発見するようになって、 探索者ミドリやその妹アオイに慕われ、友人に協力して希少な自らの力を有効活用して評価され、報われてゆく展開はなかなか良かったです。