今回は3月の電撃文庫・SQEXノベル・DREノベルス・ドラゴンノベルス新刊感想まとめです。内訳は電撃文庫の新作4点、続巻4点、SQEXノベル続巻2点、DREノベルス続巻2点、ドラゴンノベルス新作1点の計13点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
蒼剣の歪み絶ち (電撃文庫)
【第30回電撃小説大賞<金賞>受賞作】
この世界の歪みを内包した超常の物体《歪理物》《本》に運命を縛られた無機質な少女・アーカイブと共に歪理物が関わる凄絶な事件と戦いの日々へ身を投じる物語。願いの代償に持ち主を破滅させる《魔剣》に「生きたい」と願った伽羅森迅が、意外に微笑ましい一面もある相棒のアーカイブとともに、文字を食らう本の起こした事件に巻き込まれた普通の女子高生・藤中日継を救い行動を共にする展開で、半端者や複製樹、フォースといった歪理物の事件に挑む一方、アーカイブの依代とされてしまった少女を救うため、そして迅やアーカイブ、日継の因縁に決着を付けるためにも最後まで諦めない熱いバトルと、その結末の余韻がなかなか効いていました。
少女星間漂流記 (電撃文庫)
少女星間漂流記(1)
posted with ヨメレバ
東崎 惟子/ソノ フワン KADOKAWA 2024年03月08日
移住できる安住の星を探し求めて、馬車を模した宇宙船で風変わりな宇宙船を造った科学者リドリーと、相棒の内気な少女ワタリがそれぞれ特徴ある星々を訪れる連作短編集。環境汚染で住めなくなった地球に代わる安住の星を探し求めて馬車を走らせるリドリーとワタリ。死者を生き返らせることができるという神のいる星、運が良い人間ほど偉いとされる星、無数の図書館からなる星など、一見安住したい思える星の様子と、それぞれが抱えるもうひとつの一面が描かれる展開で、その星々で出会う人々たちとの切ないエピソードだったり、何ともあれな出来事に遭遇して、時には翻弄されながら楽しみ、生き延びる二人の揺るぎない絆がとても素敵な物語になっていました。
あんたで日常(せかい)を彩りたい (電撃文庫)
あんたで日常(せかい)を彩りたい(1)
posted with ヨメレバ
駿馬 京/みれあ KADOKAWA 2024年03月08日
男の身でありがなら姉になりすまし、芸能・芸術の道を志す学生が集う朱門塚女学院に入学した花菱夜風。彼が一度も学校に姿を見せない謎の生徒・橘棗と運命の出会いを果たす青春小説。破壊的な描写と独特の色彩感覚で日常生活を風刺し、数々のフォロワーを集めながら、相手に想いを上手く伝えられず、普通の生活を送ることもできなかった棗。彼女を救ったことをきっかけに寮で同居して深く関わっていく中で、コミュ強の同級生・小町も絡めた葛藤を抱える三人の特異性が際立っていて、自分のことがよく分からない、うまく言葉にできないもどかしさに向き合ってぶつけ合って、それを一つの形に結実させた今回の結末は圧巻でしたけど、未来へ期待を抱かせる余韻がある最後にそうきましたか…これは続刊に期待感しかありません。
プラントピア (電撃文庫)
九岡 望/LAM/Plantopia partners KADOKAWA 2024年03月08日
人に似た姿で花の特性を持つ「花人」が旧文明の遺跡を発掘しながら独自のコミュニティを築く世界。そこで記憶喪失の少女ハルが目を覚ます近未来ファンタジー。花人がクラス学園で唯一の人間として花人たちと交流を深めてゆくハルと、たびたび衝突する花園を守る役目を負った花守アルファ、花人を脅かす天敵的存在の剪定者と、ハルに執着する謎の少女クストス。その衝突により多くの花人たちが喪われる一方、生まれ変わる性質も持つ花人の特性があって、枯れつつある世界樹の危機に直面して、それを救うために向かったハルが取り戻してゆく記憶と、覚悟して向き合った彼女の決断がもたらしたその後の世界がなかなか印象的な物語になっていました。
青春2周目の俺がやり直す、ぼっちな彼女との陽キャな夏2 (電撃文庫)
青春2周目の俺がやり直す、ぼっちな彼女との陽キャな夏2
posted with ヨメレバ
五十嵐 雄策/はねこと KADOKAWA 2024年03月08日
『あの夏』の事件を乗り越え、ついに安芸宮羽純と心を通わせることができた藤ヶ谷。しかし安芸宮が消えた二周目の高校一年生に再びタイムリープしてしまう第2弾。安芸宮と別れてしまい、別の進学校で美羽や佐伯さんと過ごす一度目とは違う青春に満ちあふれた初めての夏。しかしそこには安芸宮の姿はなく、彼女の行方を知る人すら誰もいない八方塞がりな状況でも、諦めきれない藤ヶ谷の前に現れた一周目で人生を変えるきっかけをくれた天川日輪先輩。もうこういうのは理屈ではないだよなあとはしみじみ思うところで、けれど懸命に想いを通わせても運命は想像以上に過酷で、それでも二人は幸せを掴み取れるのか、最後のタイムリープでどうなるのか続刊に期待しています。
君の先生でもヒロインになれますか?2 (電撃文庫)
君の先生でもヒロインになれますか?2
posted with ヨメレバ
羽場 楽人/塩こうじ KADOKAWA 2024年03月08日
錦悠凪の部屋で謎の美少女・錦輝夜が抱きついている姿に動揺を隠せない担任教師の天条レイユ。兄である悠凪に禁断の恋をする義妹に振り回される第2弾。隣室に入ってきたレイユと悠凪の仲を疑い、うかつに担任教師であることも本名も名乗れず困ってしまうレイユ。これまで拒絶していて、一度繋がったら甘え続ける依存度高めの義妹に手を焼く悠凪に、大人として助けてあげたいレイユが、一方で彼の積極的なアプローチにたじたじになっていく展開で、やや厳し目ながら輝夜自身のためにもビシッと諭したあたりはさすが先生だなあ…と思いましたけど、疎遠になっていた家族にも、彼のためにあえて不器用な手段を取った大切な関係にもしっかりと向き合った悠凪は今回本当に頑張りましたね。
飯楽園-メシトピア- II 憂食ガバメント (電撃文庫)
飯楽園ーメシトピアー II 憂食ガバメント(2)
posted with ヨメレバ
和ヶ原 聡司/とうち KADOKAWA 2024年03月08日
横須賀浄化作戦の阻止と引き換えに囚われの身となった矢坂弥登。この世の地獄《農場》に収容された彼女を救出するため、ニッシンたちが脱獄の計画を練り始める第2弾。国営農場である箱根NFPに収容された弥登が直面する過酷な農作業の現実。一方、時を同じくして頻繁に外部で摘発されるようになっていく違法食物「魔法のドーナツ」。そんな中、食料国防隊の松下や古閑と連携しながら、救出計画の手段を探るニッシンたちが直面する困難な状況と見出した思わぬ活路。意外な一面が明かされた維持法の裏事情がポイントで、分かりやすく素直になった弥登にたじたじのニッシンが微笑ましかったですけど、今回だいぶ頑張った明日音とのキャットファイトがこれから大変なことになりそうですね(苦笑)
わたし、二番目の彼女でいいから。7 (電撃文庫)
わたし、二番目の彼女でいいから。7
posted with ヨメレバ
西 条陽/Re岳 KADOKAWA 2024年03月08日
早坂さん、橘さん、宮前を二番目の彼女として付き合い始めた桐島。そんなある日、遠野が偶然桐島の昔の恋人の正体に気づいてしまう第7弾。茶番とはわかっていても手放せない感情。誰しも静かな破綻を予感しながら、誰もが見て見ぬふりをして進む物語の結末。今回はいやそれはどうみても無理あるだろと突っ込みたくなる相変わらずな桐島と、天才軍師・浜波がビターエンドを目指す展開が楽しすぎていつまでも読んでいたくなりましたが、火花を散らすヒロンたちにはなかなか来るものがありましたね…。でも過去を精算しないまま見て見ぬふりをしようとしても、ふとしたきっかけでそうなってしまうのはある意味必然の結末のように思いましたけど、ここからどう動くのか続刊に期待。
悪役令嬢の矜持 3 ~深淵の虚ろより、遥か未来の安寧を。~ (SQEXノベル)
悪役令嬢の矜持(3)〜深淵の虚ろより、遥か未来の安寧を。〜
posted with ヨメレバ
メアリー=ドゥ/久賀フーナ スクウェア・エニックス 2024年03月07日頃
エイデスとの婚約が発表されてしばらくして、別邸で囲われていたウェルミィがついに本邸に入ることとなり、そこで侯爵夫人付き侍女の選抜試験の開催が決定する第3弾。エイデスの依頼で懸念を抱える社交界を見事掌握してみせたウェルミィが、義姉イオーラの専属次女選びが難航しているのを受けて、彼女とともに自ら潜り込む候補者が様々な思惑を抱き、噂話が飛び交う本邸。その中で因縁もあって逆恨みを買い虐げられる少女ヘーデルの壮絶な過去も描かれる中、状況を冷静に見極めて盤面を覆してみせたウェルミィの手腕は流石でしたけど、その後も次々と明らかになる衝撃的な背景に、インパクトがある上にやはり何事も起きないはずはない合同結婚式まであって、今回は最後まで激動の展開でしたね(苦笑)
剣聖が死を遂げる2 ~呪われ聖者の学院無双~ (DREノベルス)
骨骸の剣聖が死を遂げる2 〜呪われ聖者の学院無双〜
posted with ヨメレバ
御鷹穂積/fame ドリコム 2024年03月08日頃
毒炎の守護竜を討伐して聖女アストランティアと共に『雪白』の称号を賜った十二形骸のアル。彼らの前に同じ十二形骸の聖騎士セオフィラスを伴った聖女ネモフィラが現れる第2弾。実はパートナーの聖騎士を殺した仇でもあるセオフィラスを従えながら、一方で密かに彼のことを討伐させようと目論むネモフィラの思惑。そんな中で提案された十二形骸『片腕の巨人兵』の討伐に参加する展開で、今回は先輩コンビたちや、十二聖者といった個性豊かな新キャラたちも登場して、魅力的なヒロインたちがアルを慕い、アストランティアやクフェアがやきもきする展開はなかなか微笑ましかったですけど、ネモフィラたちだけでなく巨人兵の悔恨にも最後までしっかりと向き合って見届けたその結末はなかなか良かったですね。
ルチルクォーツの戴冠2 -若き王の歩み- (DREノベルス)
ルチルクォーツの戴冠2 -若き王の歩みー
posted with ヨメレバ
エノキスルメ/ttl ドリコム 2024年03月08日頃
ガレド大帝国の侵攻を退けて無事王冠を戴いたスレイン。副官兼恋人のモニカのと結婚準備も進む中、スレインを狙った暗殺未遂事件と謀反が起こる第2弾。自らの信念に基づいてスレインの暗殺を図り、反旗を翻したウォレンハイト公爵相手に犠牲を出さずに勝つための秘策。結婚式の準備を進めながら食糧事情を改善する手立てを考える中、雪辱を期して借金をして傭兵を集め再侵攻の機会を伺うフロレンツ。そんな苦境続きの状況を打開するために難攻不落と名高いザウアーラント要塞攻略を目指すスレインの知略が光る展開でしたけど、一方で小国として対峙する帝国の強大さを改めて実感する規模感の違いはなかなかリアルでしたし、帝国の皇太子マクシミリアンの存在も効いていました。
やがて英雄になる最強主人公に転生したけど、僕には荷が重かったようです (ドラゴンノベルス)
やがて英雄になる最強主人公に転生したけど、僕には荷が重かったようです(1)
posted with ヨメレバ
坂石 遊作/輝竜 司 KADOKAWA 2024年03月05日頃
王道RPGの主人公ルークに転生したとあるゲームオタク。才能に恵まれ予習も完璧のはずなのに、必ずしも原作通りにはいかない英雄になる使命を負った少年の偽りの英雄譚。チュートリアルでいきなり幼馴染の本命ヒロインを守りきれない絶望を突きつけられたルークが、精霊のサラマンダーに見守られながら、本来の自分を隠して取り憑かれたように強くなろうとあがいて、ルークの冒険をなぞる過程で概ね原作通りに進行するものの、時折直面するいくつものイレギュラー。英雄たらんとするルークを演じ、過酷な努力により卓越した実力を身につけてゆく中で、実際に周囲からも英雄として期待されるようになっていくものの、一方で本来の彼の実像と乖離してゆくその孤独な戦いの行方が気になるところではあります…。