「このライトノベルがすごい2021」今年も発売になりましたね。今年も協力者として参加しましたが、今回は文庫ランキング掲載のうち総合で既読は32/40冊、新作で18/26冊は読んでました。自分は好みでないものはもう無理して手を出していないので、カバー率的にはこんなものですね(苦笑)今回はアンケート参加者がぐぐっと増えて協力者も新規参加の人たちが増えて、ランキングもだいたい納得の順位。新作がだいぶ増えたので、今回はその中から自分が既読の20作品を紹介します。
基本的に自分が投票しているのは毎回新作のみと決めていますが、今回は5作品とも無事ランクインできました。それと新作でランクインした作品を合わせると18作品と微妙にキリが悪かったので、さらに文庫・単行本合算アンケートポイントでランクインした新作から2作品をチョイスしています。上の5作品は自分が選んだ作品ですが、以降は何となく自分の好みで並べてあります。新作が気になる人向けに少しでも参考になれば幸いです。
1.楽園ノイズ (電撃文庫)
女装して演奏動画をネットにアップし(男だけど)謎の女子高生ネットミュージシャンとして一躍有名になってしまった村瀬真琴。音楽教師・華園先生に正体を知られ、その弱みからこき使われる羽目に陥った彼が、三人の少女と巡り合うボーイ・ミーツ・ガールズ。不真面目な教師・華園を通じて巡り逢うひねた天才ピアニストの凛子、華道お姫様ドラマーの詩月、不登校座敷童ヴォーカリストの朱音。いかにも著者さんらしい主人公にヒロインたちがいて、そのテンポの良いやり取りは癖になって、熱く盛り上がってゆくストーリーは控えめに言って最高でした。
2.プロペラオペラ (ガガガ文庫)
追い詰められた極東の島国・日之雄。悲壮な決意で駆逐艦「井吹」の艦長として戦いに挑む皇家第一王女イザヤのもとに、かつて最低の事件を起こして皇籍剥奪された幼馴染・クロトが部下として乗り込む空戦ファンタジー。敵国ガメリア合衆国で投資家として成功していたクロトが日之雄に戻ってきた理由。苦戦必至の状況の中、超傲慢で頭が切れてバカがつく努力家クロトが、アホな部下たちと共にイザヤを支えて大逆転に導く熱い展開で、異国で台頭しつつある因縁のライバルの魔の手から彼女を守りきれるのか、これは今後がとても楽しみなシリーズですね。2020年12月に3巻目刊行予定。
3.オーバーライト ―ブリストルのゴースト (電撃文庫)
ブリストルに留学中の大学生ヨシがバイト先の店頭で発見したグラフィティ。何故か絵には詳しい先輩ブーディシアとともに落書きの犯人探しに乗り出す物語。犯人探しをする過程で出会ったグラフィティを競い合う少女ララや仲間たち。グラフィティの聖地を脅かす巨大な陰謀と、かつて「ブリストルのゴースト」と呼ばれたブーディシアが描くのを止めてしまった理由。登場人物たちのグラフィティへの熱く複雑な想いが交錯する展開でしたけど、真相にたどり着く中で明かされる過去と、葛藤を乗り越えて立ち向かうその姿にはぐっと来るものがありました。20年10月に2巻目刊行。
4.竜と祭礼 ―魔法杖職人の見地から― (GA文庫)
師の遺言により少女ユーイの杖を修理することになった、半人前の魔法杖職人・イクス。姉弟子たちの助けも借りてどうにか破損していた芯材を特定した彼が、1000年以上前に絶滅した竜の心臓を求めて旅する物語。夏の終わりまでを期限とした竜の伝承を求めての探索、ユーイが抱える過去と杖が壊れた理由、明らかになってゆく竜が絶滅した真相。戦えない二人が主人公であるがために、派手な展開とは無縁でインパクトには欠けますが、しっかりとした世界観の中で動く登場人物の描写は繊細で、明かされた真実とその結末は心に響くものがありました。20年9月に3巻目刊行。
5.現実でラブコメできないとだれが決めた? (ガガガ文庫)
義理の妹も、幼馴染も、現役アイドルなクラスメイトもミステリアスな先輩も、親友キャラもいない高校生・長坂耕平が、知り合った上野原彩乃を共犯者に巻き込んでラブコメすべく挑戦する青春小説。膨大なデータ収集と分析、綿密なシミュレーションと反復練習でラブコメしようとする耕平と、呆れながらもそれに協力する付き合いのいい彩乃。時折非常識で不器用な面も見せる耕平をフォローする彩乃のツッコミが効いていて、そんな彼女の窮地に奔走する耕平が熱かったですね。それぞれひと癖ありそうなヒロインたちとの今後にも期待大の新シリーズです。2020年12月に2巻目刊行予定。
6.スパイ教室 (ファンタジア文庫)
各国スパイが「影の戦争」を繰り広げる世界。落ちこぼれのメンバーばかり7人が集められ、凄腕スパイ・クラウスの指導の下、死亡率九割を超える『不可能任務』に挑むスパイファンタジー。凄腕だけど説明できない教えベタの教師役相手に、騙しあいで打ち勝つ実地訓練に挑む不器用な少女たち。チームとして挑んだ過酷なスパイ任務にも最後まで諦めない少女たちの想いに、ともに戦ったクラウスも少なからず感化されていって、普段の日常からスパイらしい仕掛けを感じさせる展開と、そんな絆を育んでいった彼らの物語をまた読んでみたいと思いました。20年12月に4巻目刊行予定。
8.声優ラジオのウラオモテ (電撃文庫)
声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない?(1)
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二月 公/さばみぞれ KADOKAWA 2020年02月07日
高校のクラス内では相性最悪なギャルと根暗地味子。そんな二人が実は声優で、同じ高校に通う仲良し声優コンビとしてほんわかラジオ番組をスタートさせる青春小説。声以外の仕事は苦手でも意識は高い千佳と、なかなか芽が出ない境遇に自信喪失気味の由美子。お互い正体を知らないままコンビを組んだ、ないものねだりの複雑な二人の関係や距離感が絶妙で、けれど真摯に仕事に向き合う姿を知るからこそ、相手の逆境に奔走できるんですよね...熱い想いで危機的な炎上を乗り切ったからこそ、そんな彼女たちのこれからをまた読んでみたいと思いました。20年11月に3巻目刊行。
8.カノジョの妹とキスをした。 (GA文庫)
人生で初めての恋人晴香と交際一ヵ月。幸せ絶頂の佐藤博道は突然父親が再婚し、家庭の事情で晴香と離ればなれになった双子の妹・時雨と突然同居することになってしまう青春ラブコメ。小学校からの幼馴染で天真爛漫な晴香と、対照的に学校では猫を被っている優等生でことあるごとにからかってくる義妹の時雨。博道の晴香への想いは真っすぐで、けれど同じ顔の義妹との同居は彼女には秘密で、双子姉妹の両親が離婚した経緯や、時雨の複雑な想いも絡めて描かれる三人の関係は波乱必至ですね。突き付けられた衝撃の結末に続巻が気になって仕方ないです。20年9月に2巻目刊行。
9.Babel I 少女は言葉の旅に出る (電撃の新文芸)
現代日本から突如異世界に迷い込んだ女子大生の水瀬雫。異世界の辺境に降り立ってしまい途方に暮れる彼女が、魔法文字を研究する風変わりな魔法士・エリクと出会うファンタジー。雫が日本に帰還する術を探すため、魔法大国ファルサスを目指す旅に出る二人。二人の言語を巡るやりとりや考察はとても興味深くて、傭兵ターキスとの出会いという転機から、ネビス湖での出会いやノイ家の塔の呪い、カンデラの街で次々と事件に巻き込まれ、困った人を放っておけない雫の奔走が周囲の人々や事態を動かし、状況を打開してゆく結末がなかなか印象的でした。20年12月に3巻目刊行予定。
10.異修羅I 新魔王戦争 (DENGEKI)
魔王が死んだ後の世界。魔王さえも殺しうるありとあらゆる種族、能力の頂点を極めた修羅達がさらなる強敵を、本物の勇者という栄光を求め、新たな闘争の火種を生み出すファンタジー。異世界の剣豪、神速の槍兵、鳥竜の冒険者、一言で全てを実現する全能の詞術士、不可知でありながら即死を司る天使の暗殺者など、修羅たちの背景が綴られて、黄都と新公国を巡る争いの中で彼らが激突して、本物の勇者を決めるという意味でも熱い戦いを繰り広げてゆく先に何が待っているのか、一巻自体が壮大なプロローグといった感じで続巻の展開に期待のシリーズ。20年8月に3巻目刊行。
11.今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。 (MF文庫J)
今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。 せんぱい、ひとつお願いがあります(1)
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涼暮 皐/あやみ KADOKAWA 2020年01月24日頃
丘の上の七河公園で再会した幼馴染の妹・双原灯火。「流宮の氷点下男」と呼ばれる冬月伊織と、「自称・先輩を慕う美少女」の灯火の大切な人を取り戻そうと願う不器用な二人の物語。住む町に伝わる星の涙の都市伝説と、翌日からあざとく伊織に付きまとうようになった灯火の真意。幼馴染の妹とのあざといラブコメ展開はものの見事に裏切られて、伊織の苦い過去を絡めながら明らかになる不穏な状況があって、大切なものを諦められない灯火に真正面からぶつかってみせた伊織の想いと、二人で乗り越えた先に迎えた結末にはぐっと来るものがありました。20年10月に3巻目刊行。
12.探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)
完全無欠に巻き込まれ体質で天使のように美しい探偵・シエスタの助手だった君塚君彦。その探偵と死に別れ高校生になり、日常というぬるま湯に浸っていた彼が一人の少女と出会う物語。ひとを探してほしいという依頼を持ってきた同級生・夏川渚、三十億のサファイアが盗まれるのを防いで欲しいというアイドル・斎川唯、そして探偵のかつての弟子・シャーロット。彼女たちと出会いが探偵の死によって止まっていた君彦の時間を動かし始めて、この一冊自体がまるごとプロローグでしたけど、彼らがこれからどんな活躍を見せてくれるのか今後に期待ですね。20年11月に4巻目刊行。
13.きのうの春で、君を待つ (ガガガ文庫)
引っ越した先の東京でうまく行かず、かつて住んでいた離島・袖島に家出してきた船見カナエが、幼馴染だった保科あかりと再会。時間を遡る現象「ロールバック」に巻き込まれる青春小説。カナエが巻き込まれた飛ばされた四日後から夕方6時になると一日ずつ遡るロールバック現象。遡る中で明らかになってゆくあかりの兄・彰二の死とあかりの恋心と兄への複雑な思い。ひたむきに頑張ってきたからこそ、失われたものの喪失感も大きくて、けれど何とかしようと懸命だったカナエの奔走が、未来への希望を引き寄せる展開にはぐっと来るものがありました。
14.星降る夜になったら (MF文庫J)
省エネで適当な日々を過ごす花菱准汰。彼が卒業に必要な補習のために向かった美術室で、ただひとりの美術部員・渡良瀬佳乃と運命の出会いを果たす青春小説。准汰が目をそらせなかった絵に真っすぐに向き合う佳乃の姿。不器用な佳乃がずっと抱いてきた悔恨とずっと忘れなかった幼き日の約束があって、一見正反対な二人が育んでゆく不器用な想いは何とも儚くて、彼女を大切に想う人たちの優しい願いはひとつの未来を垣間見せてくれましたけど、何よりも大切な人のために祈ってしまう人たちのがもたらした結末が、何とも切なくて印象に残る物語でした。
15.日和ちゃんのお願いは絶対 (電撃文庫)
どんな「お願い」でも叶えられる葉群日和。始まるはずじゃなかった彼女との恋が、頃橋深春の人生や世界全てを決定的に変えていく、終われないセカイの、もしかして最後の恋物語。告白を断るはずだったのに、うっかり知ってしまった日和の秘密。そんな彼女との過ごしてゆく初々しい日々は楽しくて、けれど垣間見える複雑な想いをたくさん抱えた彼女の日常は想像以上に過酷で、幸せを諦めてしまった少女との思い出を忘れても、改めて想いを育んでゆく彼らが取り戻してみせた未来にはぐっと来るものがありました。幼馴染の存在もまた効いていましたね。20年11月に2巻目刊行。
16.結婚が前提のラブコメ (ガガガ文庫)
母親から継いだ結婚相談所で婚活女子のサポートに奔走する「結婚できない人を結婚させる仲人」縁太郎。とある婚活パーティーで結衣と出会う婚活ラブコメ。エロ漫画家・牡丹、玉の輿を狙う元令嬢・カレン、究極のダメンズほいほいな保育士・まひるといった会員とも出会い、結婚に向き合えていなかったワケありな結衣も少しずつ変化してゆく展開で、単なる仲人と関係という関係にとどまらない、彼女たちのために奔走する縁太郎とヒロインたちの絆にはぐっと来るものがあって、縁太郎が応援する彼女たちの婚活の結末を最後まで見届けたいと思えました。20年11月に3巻目刊行。
17.最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する (角川スニーカー文庫)
最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する(1)
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タンバ/夕薙 KADOKAWA 2019年08月30日
双子の弟に良い所を吸い取られた「出涸らし皇子」と呼ばれながらも気ままに過ごすアルノルト。皇子たちの帝位争いが激化し危機が迫ったことで、弟レオを支えて暗躍するファンタジー。最強SS級冒険者という隠れた一面を持つアルノルトが、有力な候補者たちに対抗するため様々な手を打っていく展開で、彼を慕う美姫・フィーネや勇爵家の幼馴染・エルナ、元凄腕暗殺者の執事だったり、その周囲を支える人材もなかなか濃いですね(苦笑)その垣間見せた実力には皇帝も気づいていそうですが、ここからどう陣営の劣勢を覆してゆくのか今後の展開に期待。20年12月末に5巻目刊行予定。
18.―異能― (MF文庫J)
屈指の進学校に入学し自分の凡庸さを痛感した大迫祐樹。成績優秀で野球部エース赤根凛空と学校一可愛い月摘知海という二人の友人を取り持つモブキャラ役を自認する彼が、謎の少年から異能バトルロワイヤルに招待される物語。甘酸っぱい青春小説っぽい導入からの思っても見なかったいきなりの急展開。次々と登場する異能を秘めた登場人物たちのバトルロワイヤルを引き起こした黒幕の真意。強者と思われた異能者たちが次々と退場してゆく展開には驚かされましたが、伏線を回収していった先にあった意外な対決とその決着はなかなか良かったですね。
19.弱小ソシャゲ部の僕らが神ゲーを作るまで (オーバーラップ文庫)
「IT促進法」により学生の部活にソシャゲ開発が推進される世界。不正の内部告発を行いソシャゲの名門校から命薫高校へと転校してきた白析解が、弱小ソシャゲ部の部長・青井七花に出会う青春小説。廃部寸前の部に所属するガチャ狂いのプログラマー・黄島文、思い込みの激しいイラストレーター・黒羽絵瑠といった優秀で個性的な部員たちと出会い、ぶつかり合いながら絆を育んでいって、そんな新しい仲間たちに支えられながら過去を乗り越える展開はなかなか良かったですね。スタートラインに立った続巻ではヒロインたちの掘り下げも期待しています。20年6月に2巻目刊行。
20.カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています (角川スニーカー文庫)
カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています(1)
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御宮 ゆう/えーる KADOKAWA 2019年11月30日
クリスマス直前に彼女に浮気されて別れた大学二年生の羽瀬川悠太。そんな傷心の彼がサンタのバイトをしていた後輩・志乃原真由と出会う青春小説。いつの間にか懐いて勝手に家にまで上がり込んでくるようになった後輩・志乃原と、付き合いが長い友人ヒロイン・彩華、そして悠太を気にかける元カノの存在。三者三様のヒロインたちはそれぞれに事情があるようで、その妙に狭い人間関係の繋がりも地味に効いていますが、単純な恋愛模様にはならなさそうな彼女たちとの繊細な距離感や関係がこれからどう変わってゆくのか、続巻に期待のシリーズですね。20年11月3巻目刊行。
以上です。気になる本があったらぜひ手にとって見て下さい。