5年くらい前に書いた以下の記事。
やはり発売協定などが気になる方が多いのか、未だに検索でアクセスされる方が多いのですが、当時とはまた少し変わってきている部分もあり、上で書いたものをベースに現状を踏まえてもう一度まとめてみました。
まず雑誌コミックを含む雑誌は「同一地区同日発売」という原則があり、首都圏を基準発売日として遠隔地から逆算して先に出荷し、できるだけズレないよう発売日を定めています。確か兵庫県までは同日発売地域、中四国は1日、九州は2日、沖縄は船便もあってさらに1日余計に掛かるので、逆算して出荷日を決めています。(ただ19年4月から中国地方と九州地方で書籍雑誌の発売日が一日遅れるようになりました)。
一方、書籍の発売日は取次協会での協議を経て取次が定める発売協定品を除くと、基本的には一律の発売日というものはなく、書店が入荷した日が発売日となります。そのため中国・九州地区、沖縄、あるいは北海道など、遠隔地であればあるほど物理的な配送に時間がかかるため入荷がずれることが多いのが現状です。
書籍の方は協定の有無で見ると、割合としては明確な発売日が定められている方が圧倒的に少なく、発売日が定められている商品の多くは一部の圧倒的人気商品と、文庫・書籍扱いコミックなどに限られます。取次の協定品として定めているものには大きく分けると「積込商品」「東京出荷協定」の2種類があって、それ以外が入荷次第発売開始となる俗に言う「搬入発売」扱いとなります。
発売日を起点にざっくりと表にまとめると以下のような形です。
ここから主要ライトノベル/文庫レーベルを中心に発売協定振り分けを解説していきたいと思います(取次協会の協定品一覧より抽出)。
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1.搬入発売型
取次協会による事前の発売日協定が存在しない商品。取次協会によって定められた発売協定がある一部商品を除く、大部分の書籍がこれに該当する。多くのケースでは公式発売日前日が取次搬入で、搬入日午後に都内近郊、翌日より全国順次発売であることが多いですが、一部出版社やレーベルによっては発売日2日前に搬入発売になっていることもあります。後述する「東京出荷協定型」「積込型」以外はこの搬入発売になっていることが多いですね。多くの書店では取次搬入日の翌日以降の出荷になっているパターンです。
該当レーベル
【KADOKAWA】ファミ通文庫/富士見L文庫
【SBクリエイティブ】GA文庫
【主婦の友社】ヒーロー文庫
【講談社】ラノベ文庫など
2.東京出荷協定型
取次協会で出荷日を都内は協定日(だいたい取次搬入日の翌日)に、その翌日より全国順次発売するよう各取次間で統一する出荷方法。公式発売日表記はだいたい東京出荷協定の翌日。
該当レーベル
【KADOKAWA】MF文庫J・MFブックス・書籍扱いコミック
【集英社】ダッシュエックス文庫
【オーバーラップ】オーバーラップ文庫
【ホビージャパン】HJ文庫
【双葉社】モンスター文庫/双葉文庫
【新潮社】新潮文庫nex
【その他】ハーレクインシリーズ/祥伝社文庫・黄金文庫/ハルキ文庫/実業之日本社文庫など
3.積込型(発売協定)
取次協会で特定銘柄の出荷日を地区別に定め、公式発売日を各取次間で統一する出荷方法。出版社が2日ないし1日で事前搬入し、取次搬入日~積込日当日の朝までに遠隔地から順次商品は出荷されるが、発売日前に書店入荷しないよう出荷日を調整する。
該当レーベル
【KADOKAWA】
角川文庫/メディアワークス文庫
電撃文庫
富士見ファンタジア文庫/ドラゴンブック
スニーカー文庫/ビーンズ文庫/ルビー文庫
【集英社】集英社文庫/オレンジ文庫
【小学館】小学館文庫/ガガガ文庫/ルルル文庫
【講談社】講談社文庫
【文藝春秋】文春文庫
【光文社】光文社文庫/古典新訳文庫
【幻冬舎】幻冬舎文庫
【中央公論新社】中公文庫
【徳間書店】徳間文庫/キャラ文庫
【ポプラ社】ポプラ文庫
【宝島社】宝島社文庫
この方式では以前は積込3日型も多かったですが、今は上の表にあるような発売2日前から出荷を開始する2日型が主流です。出荷が早ければ早いほど遠隔地でも発売日に近づくものの、今3日型を使うのはかいけつゾロリや半沢直樹クラスの大型商品、さらにその上の4日型というのもありますが、六法全書や村上春樹、大野智くんの写真集やハリーポッタークラスであまり見かけません。
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基本的に東京から遠隔地であればあるほど、物理的な輸送時間が発生し店頭に並ぶ日は遅くなりがちなので、積込型>東京出荷協定>搬入発売の順で発売日のブレは少なくなります。ただ実際問題として取次の休配日や祭日などがあるとスケジュールが狂うこともありますし、書店によって取次からの午後便があるかどうかでも違います。
都内でもライトノベルだったら専門店あるかどうかなどで入荷のタイミングは書店によって異なることが多いです。いつ入荷するかは出版社の搬入形態や書店と取次の取引関係次第なので、読者から見るとそのあたりが非常に分かりづらいですね。このレーベルはこの書店ならいつ入荷するはず…というように経験則で覚えている方も多いと思います。
例えば積込型を使っているKADOKAWA系は昔から発売協定を特に厳密に適用しているレーベル群です(特に電撃文庫はその辺り敏感です)。そういう意味ではわりと読者に配慮しているのかなと感じなくもないですが、スニーカー文庫は遠隔地を意識してかいつも1日発売と記載しているものの、実際に発売開始はその前日だったりするのでちょっと分かりづらかったりしますね。
最近はTwitterなどのSNSでも著者と読者が直接交流できるようになっていますし、出版社や著者さんからすると自分の本が発売すれば読者に向けて発売告知などをしていきたいと思うのは当然なわけですが、公式で言われている発売日と実際の入手できるタイミングがずれていたり、地域によってまちまちだったりな状況であるために、実際のところどのタイミングで告知するのがベストなのかというと、とても悩ましいところなのかもしれません。
以上ざっと書いてみましたが、ご参考になれば。
ちなみに余談ですが、岡田さんが書かれている奥付の発行日と実際の発売日の話もなかなか面白いので、興味ある方は是非ご一読を。