読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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2020年8月に読んだ本 #読書メーターより

8月はシリーズものの刊行が多く、新シリーズとの取捨選択に頭を悩ませた一ヶ月でしたが、一方で電撃文庫の「ストライク・ザ・ブラッド」「はたらく魔王さま!」、GA文庫の「最弱無敗の神装機竜《バハムート》」など長期シリーズが完結もあったりで、時代の移り変わりを感じた一ヶ月でもありました。一方で面白いシリーズもいろいろ出てきていますし、その辺りがまた伸びていってくれるよう頑張って盛り上げていきたいと思っています。

 

8月の読書メーター
読んだ本の数:68
読んだページ数:21164
ナイス数:4126

御苑筆姫物語 (富士見L文庫)御苑筆姫物語 (富士見L文庫)感想
定年後の呑気な隠居を夢みて円満退職を願う代筆係の采女・蒼月。期せずして皇帝とから姫へ贈る恋文と物語の執筆を頼まれ、さらには思わぬ争乱に巻き込まれてゆく中華風ファンタジー。今上帝・叡泉に字の上手さを見込まれたことによる転機。明らかになってゆく蒼月の秘めた過去と、周辺国を侵略する晏国の苛烈な遺臣狩り。次代への中継ぎに徹する叡泉と物語が好き過ぎて自らの計画に固執する蒼月でしたけど、巻き込まれた危機的状況に力を合わせて乗り越えたことでお互い心境の変化もありましたかね…そんな二人の行く末をもう少し読んでみたいです。
読了日:08月01日 著者:喜咲冬子
ないものねだりの君に光の花束をないものねだりの君に光の花束を感想
ごくごく普通で没個性が悩みの高校生・影子。そんな彼女が同じクラスの芸能人・鈴木真昼の隣の席になってしまい、さらには一緒に図書委員をすることになって、彼の意外な一面を知ってゆく青春小説。別世界すぎて真昼を苦手に感じていた影子が、図書委員の活動を通じて知ってゆく彼の意外な一面。二人の関係が少しずつ変わってゆく中、突然のスクープによって激変してゆく周囲の反応やSNSでの無責任な発言に翻弄される展開はなかなか厳しかったですが、それでも変わらなかった影子の献身と真昼の頑張りがもたらした結末はなかなか良かったですね。
読了日:08月02日 著者:汐見 夏衛
ドローン探偵と世界の終わりの館 (文春文庫)ドローン探偵と世界の終わりの館 (文春文庫)感想
颯爽と空から現れ犯人を捕獲する神出鬼没のドローン探偵こと飛鷹六騎。捜査中に両足を骨折したにも関わらず、大学探検部の面々と廃墟ヴァルハラへ向かった彼が、ドローン越しに連続殺人の謎に挑むミステリ。探検部員それぞれの思惑を秘めて行われた廃墟ヴァルハラの探索。骨折のため車に残った六騎以外の面々が、入り込んだ廃墟内で次々と襲われる展開で、それぞれの動機がありうる中で誰がどんな方法で連続殺人を成し遂げたのか、種明かしを読むとなるほどなあと思いましたけど、これは自分にはちょっと辿り着くのは難しかったかもと苦笑いでした。
読了日:08月03日 著者:早坂 吝
感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル コロナウィルス・インフルエンザ・溶連菌感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル コロナウィルス・インフルエンザ・溶連菌感想
新型コロナからインフルエンザ、溶連菌、ノロウイルスなど、様々な感染症に対する知識と感染症の専門医が普段やっている行動から、日常生活で感染症対策のために必要なことを紹介した一冊。外からウイルスを家に入れない方法や、電車内で感染しにくい場所など、実際に何に気を付けるべきか指針が欲しかったので手に取った一冊でしたが、ウイルスと細菌の違い、個人対策の基本、外から帰ったらすべきことなど参考になることも多かったです。これをやれば100%大丈夫ということはないですが、改めて気を付けるべきことは気を付けようと思いました。
読了日:08月03日 著者:佐藤昭裕
ネットビジネス進化論: 何が「成功」をもたらすのかネットビジネス進化論: 何が「成功」をもたらすのか感想
GAFAMの台頭からシェアリングエコノミーまで、インターネット登場から四半世紀にわたるネットビジネスの進化の要点を整理した一冊。検索、IDと決済を握るキャッシュレス決済とフリクションレス、信用経済とスモールビジネス市場など、今はいかに目をつけ一番手になるのかが求められているんですね。人や企業から人へ物を繋げる、サービスにシフトする中でのツメの開発やテイクレート、情報からマネタイズしたり有限資産を繋げることだったり、信頼する人の推すものを共有する「感情価値」の可能性にはなるほどなと思うところがありました。
読了日:08月04日 著者:尾原 和啓
海月館水葬夜話 (集英社オレンジ文庫)海月館水葬夜話 (集英社オレンジ文庫)感想
穏やかな港町の学園で司書として働く遠田湊。そんな彼女と幼馴染・凪が一緒に暮らす小さな洋館・海月館に死んでも忘れることのできなかった後悔を抱えて客人が訪れる葬送ミステリ。湊の先輩司書だった櫻子と図書委員の吉野、「私が朝香を殺した」と告げる二人が抱えていた秘密、妻が殺されてから気づいた夫の後悔、病死した兄と双子の妹の複雑な関係、訪れた死者たちの後悔に向き合い、真相を解き明かしてゆく湊と凪。そんな二人の関係もまた過去に縛られたものに思えましたけど、様々な後悔に向き合ってきた湊の選択がなかなか印象的な物語でした。
読了日:08月04日 著者:東堂 燦
赤ちゃんと教授 乳母猫より愛をこめて (集英社オレンジ文庫)赤ちゃんと教授 乳母猫より愛をこめて (集英社オレンジ文庫)感想
不運なトラブルで住む場所と仕事をいっぺんに失ってしまった有能なベビーシッター・西東鮎子。偶然立ち寄った公園で赤ん坊の養父で大学教授・島津伊織にベビーシッター兼偽婚約者役として雇われるお仕事小説。路頭に迷いかけていた鮎子を雇ってくれた伊織と亡き姉の子が抱える事情。「保育のプロでも子育てのプロではない」鮎子は偽婚約者として伊織の乳兄弟に対応したり、遺産相続争いにも巻き込まれましたけど、彼女の持ち前の機転で切り抜けてゆく展開はなかなか良かったですね。意外とお似合いな二人のその後が読んでみたくなる新シリーズです。
読了日:08月05日 著者:松田 志乃ぶ
りゅうおうのおしごと! 13 (GA文庫)りゅうおうのおしごと! 13 (GA文庫)感想
『史上初・女性プロ棋士誕生!』の報に日本全土が沸き立つ中、親友の水越澪が海外へ旅立つのを見送るために雛鶴あいは関西国際空港を訪れ、五人の少女が集う最後の一日を描いた短編集第十三弾。銀子やJS研を引き連れて向かった淡路島合宿、銀子の誕生日祝い、将棋クイズといった過去のドラマCDの内容を織り交ぜつつ描かれた、澪と迷えるあいの最後の一日も印象的でしたけど、盛り返す将棋パートがない分八一のクズっぷりが際立っていて、だからこそ最後の劇的な変化が異様に感じるんですよね…それぞれが転機を迎えたこれからの展開に期待です。
読了日:08月05日 著者:白鳥士郎
友達の妹が俺にだけウザい5 (GA文庫)友達の妹が俺にだけウザい5 (GA文庫)感想
アキがウザかわ彩羽についての認識を少し改めたりと、恋と友情に揺れ動く中、真白との恋人関係に疑問を感じ始めた月ノ森社長にニセ恋人関係をアピールするため、二人で夏祭りデートの計画を練りはじめる第五弾。彩羽とアキの秘密や距離の近さに危機感を覚えた真白。そんな彼女がプランを練った夏祭りデート計画が斜め上過ぎて苦笑いでしたけど、不器用な感じが微笑ましい真白とアキの過去を乗り越えるエピソードも、どうにも想いが噛み合わないアキと彩羽のもどかしい関係もなかなか良かったですね。ここから物語をどう動かしてくるのか続巻に期待。
読了日:08月05日 著者:三河ごーすと
痴漢されそうになっているS級美少女を助けたら隣の席の幼馴染だった2 (GA文庫)痴漢されそうになっているS級美少女を助けたら隣の席の幼馴染だった2 (GA文庫)感想
疎遠になっていた幼馴染・姫奈との関係を再び歩み始めた高森諒。さらに中学時代三日間だけ付き合った元カノ・篠原美南と再会する第二弾。静香とも友人関係で掴みどころのない新キャラ美南も絡めつつ、わりとぐいぐい来る姫奈が抱える秘密だったり、静香と姫奈が友情と諒との距離感にお互い心揺れる展開でしたが、確かに恋というものが分からず目標も見えない状況だと、自分の夢に突き進む姫奈の眩しさに引け目を感じてしまうのも分からなくはないというか…勇気を出して真摯に向き合おうとする姫奈の想いや文化祭が転機に繋がるのか期待しています。
読了日:08月06日 著者:ケンノジ
最弱無敗の神装機竜《バハムート》20 (GA文庫)最弱無敗の神装機竜《バハムート》20 (GA文庫)感想
世界の運命を分かつフギルとの最終決戦に勝利したルクス。次期国王となって新王国を立て直す決意を固めた彼が、今まで育んできた少女たちとの答えを出す第二十弾。保留していた決断を下そうとするルクスに対し、クルルシファーが出した意外な提案。数多の死闘を切り抜け英雄になったルクスと、彼を支え続けた『騎士団』の少女たちそれぞれとの最後の甘いエピソードは、彼とヒロインたちが積み上げてきた関係性がよく出ていました。ヒロインたちと力を合わせて最後まで戦い抜いたこの物語の結末と考えるとこれはこれで良かったのかもしれないですね。
読了日:08月06日 著者:明月千里
処刑少女の生きる道(バージンロード)4 ―赤い悪夢― (GA文庫)処刑少女の生きる道(バージンロード)4 ―赤い悪夢― (GA文庫)感想
モモの手引きによって消えたアカリ。信頼する後輩の裏切りに混乱するメノウは、教典から響くサハラの声に悩みつつも2人を追跡しはじめる第四弾。メノウからアカリを引き離したモモの思惑。アーシュナの力を借りて2人を追うメノウと、交錯する異世界人、「第四」、そして第一身分。二人ともメノウが大好きなのに、なぜか絶望的にウマが合わないアカリとモモの関係には混ぜたら危険感しかなくてもう笑うしかないですけど、各陣営の思惑が入り乱れる中で圧倒的な存在感を見せるメノウの師匠と、メノウたちがここからどう動くのか続巻が楽しみですね。
読了日:08月06日 著者:佐藤真登
遥かに届くきみの聲 (双葉文庫)遥かに届くきみの聲 (双葉文庫)感想
かつて天才子役だった過去を隠して高校生活を送る小宮透。当時彼が朗読に励んでいたことを知る同級生の沢本遥が、徹を所属する朗読部へ勧誘する青春小説。今の透が人前で声を出せなくなった苦い過去、かつてのライバルだった近藤先輩との再会、そして声を取り戻す手助けをしてくれた遥が抱える秘密。人に聞かせる朗読、そして競技としての朗読は、読む人が物語をどう解釈して聞かせるのか奥深いものがあって、遥たちと再び朗読に取む中で過去とも向き合い、自分と競い合い支えてくれる周囲の人たちの大切さを思い出してゆくとても素敵な物語でした。
読了日:08月06日 著者:大橋 崇行
京都寺町三条のホームズ(15) 劇中劇の悲劇 (双葉文庫)京都寺町三条のホームズ(15) 劇中劇の悲劇 (双葉文庫)感想
ニューヨークから戻ってきた清貴と葵。再び『蔵』での日常に戻った二人の前に、以前、吉田山荘で事件を殺人未遂を事件を解決した相笠くりすが現れる第十五弾。密かにくりすが清貴をモデルとして書き上げていた昭和初期が舞台の『華麗なる一族の悲劇』は劇中劇としてなかなかの存在感があって、けれどそれを読んだ清貴の感想にはそれなの?とついツッコミを入れたくなりました(まあ清貴らしいとも言えなくもないですが)悩める円生にきちんと向き合った葵も流石でしたけど、そんな彼女にどうにもやきもきしてしまう清貴の悩みは尽きませんね(苦笑)
読了日:08月06日 著者:望月 麻衣
ストライク・ザ・ブラッド22 暁の凱旋 (電撃文庫)ストライク・ザ・ブラッド22 暁の凱旋 (電撃文庫)感想
異境を制圧し、咎神カインの遺産・六千四百五十二発の眷獣弾頭を手に入れたシャフリヤル・レン。眷獣弾頭の圧倒的な威力の前に聖域条約機構軍の艦隊は壊滅、絃神島や囚われたアヴローラを救うため古城たちが立ち上がる第二十二弾。圧倒的な力を見せつけるレンや妹・ラードリーに世界も沈黙する絶望的な状況、仮の血の伴侶たちと打開策を模索する古城。時にはボロボロになりながら奮闘するヒロインたちにも存在感があって、彼女たちに支えられ苦境を覆すとてもらしい結末を堪能できました。描ききれなかったエピソードやその後の物語も期待してます。
読了日:08月07日 著者:三雲 岳斗
ダークエルフの森となれ -現代転生戦争- (電撃文庫)ダークエルフの森となれ -現代転生戦争- (電撃文庫)感想
輝獣と呼ばれる自然脅威に脅かされる近未来。駆動鉄騎RVで戦う騎士候補生として学園生活を過ごす朝倉練介が、異世界から転生してきた黒ギャル女子高生風のダークエルフ・シーナと巡り合うファンタジー。内心満ち足りない日々を送っていた練介が魅力的なシーナに眷属として見初められ、巻き込まれていく魔術種たちのバトルロイヤル。最初に遭遇した相手・スライムと戦う中でバトルの独特なルールも明らかになっていって、突き付けられた残酷な現実と葛藤を乗り越え、シーナと生きる覚悟を決めた練介のこれからが楽しみな期待大の新シリーズですね。
読了日:08月08日 著者:水瀬 葉月
メイデーア転生物語 3 扉の向こうの魔法使い(上) (富士見L文庫)メイデーア転生物語 3 扉の向こうの魔法使い(上) (富士見L文庫)感想
フレジール皇国の将軍カノンと名乗るかつて前世の自分を殺した金髪の男と巡り会うマキア。一方、魔法学校では第一学年最後の班課題が発表され、マキアたちの班も活動をはじめる中でフレイの様子が気になる第三弾。マキアに突き付けられた事実にショックを受け、役割から背を向ける救世主アイリ。特訓を受けるマキアやトールと、王子ギルバートとフレイの確執。大切な仲間のために奔走するマキアがらしさ全開でしたけど、今回で様々な背景もだいぶ明らかになって、マキアを巡るあれこれがどう変わるのか、物語もこれから大きく動きそうで楽しみです。
読了日:08月08日 著者:友麻碧
あの日、神様に願ったことはIII beginning of journey under the bright blue sky (電撃文庫)あの日、神様に願ったことはIII beginning of journey under the bright blue sky (電撃文庫)感想
夏休みを迎えた叶羽たち。ある夜、家出を決意した後輩の高峰瑠璃と出会った叶羽が行動を共にする第三弾。思い出の地を巡るたびに過去を思い出し、姿が幼くなってゆく瑠璃。本当の父親に会いたいと願う瑠璃と、父親との確執を未だ抱える叶羽が長い旅路の果てに辿り着いた答え。後輩の窮地にそっと寄り添えるのが彼らしいですけど、繊細な心理描写の積み重ねやはっとするような素顔を垣間見せてくれるヒロインが、試練を乗り越えて笑顔を取り戻す展開にはぐっと来るものがありますね。彼女たちとの距離感も絶妙で続巻読めるのを楽しみに待っています。
読了日:08月09日 著者:葉月 文
はたらく魔王さま!21 (電撃文庫)はたらく魔王さま!21 (電撃文庫)感想
魔王城を打ち上げ、エンテ・イスラでの人間同士の争いも治めた魔王たち。天界で神討ちに挑む前に魔王と勇者はじめ一同が心残りを決着をつけるべく正装する第二十二弾。神討ちの後日譚的内容と、神討ちに向かう前日譚が交互に描かれてゆく構成で、肝心の神討ちはあれほど引っ張った割にはあっさりで拍子抜けでしたけど、つまるところ魔王を巡る人間関係の決着と魔王のその後の人生が焦点だったということですかね。確かに想像できないという意味では納得の結末でしたけど、これでこの先どうなるのかはやっぱり気になりました。次回作も期待してます。
読了日:08月09日 著者:和ヶ原 聡司
傷心公爵令嬢レイラの逃避行 下 (電撃の新文芸)傷心公爵令嬢レイラの逃避行 下 (電撃の新文芸)感想
元婚約者である王太子・ルイスによって塔に監禁されたレイラ。レイラが憔悴し心が壊れる寸前まで追い詰められてゆく中、ルイスから提案された取引の回答期限が迫る第二弾。喧嘩別れになってしまっていたリーンハルトがせっかく救出してくれたのに、妹のことや公爵家、そして元婚約者ときちんとけじめをつけることにこだわるあたりが、なんかとても彼女らしいなと感じる展開で、その決着にはやっぱり…と正直感じましたけど、こうしないと前に進めない不器用な彼女と、ベタ惚れのリーンハルトの甘い結末にはこれまでの苦難が報われる思いがしました。
読了日:08月10日 著者:染井 由乃
東野圭吾公式ガイド 作家生活35周年ver. (講談社文庫)東野圭吾公式ガイド 作家生活35周年ver. (講談社文庫)感想
挑戦の連続だった人気作家の35年間。25周年版公式ガイドに新作の自作解説を加え、貴重なロングインタビューを収録した一冊。自分がリアルタイムに追い始めたのは「変身」あたりからで、当時は少し変わったテーマに挑戦する作家さんというイメージでした。なのでここまで人気作家になるとは思ってなかったですが、今にして思うとターニングポイントはいくつかありましたかね。作品リストを見たら小説は全部読んでいた一方でエッセイは一冊も読んでなかったです(苦笑)作品人気ランキングはドラマ化・映画化が上位に来るのはお約束ということで。
読了日:08月10日 著者: 
祭火小夜の再会 (角川ホラー文庫)祭火小夜の再会 (角川ホラー文庫)感想
真面目な優等生で「正しい」生活に息が詰まってしまった中学三年の浦沢圭香。気分転換に植物園へ赴いた彼女が、怪異に詳しい無口で笑わない謎の同級生・祭火小夜とと巡り合う第二弾。シラナメに付けられた文様、植物園の新種の花に多くの人が群がる理由、謎の包帯男が持ちかける身代わりの取引、地域で発生する夢遊病のような症状、そして目の前に現れたもうひとりの自分。圭香が小夜と共に怪異に遭遇するようになって、二人は友だちになれたんだなと思いながら読んでいたらそんな結末だったとは…今回のタイトルの意味を改めて考えてしまいました。
読了日:08月10日 著者:秋竹 サラダ
あの夏の日、私は君になりたかった。あの夏の日、私は君になりたかった。感想
幼い頃に母親を亡くして父親も仕事が忙しく、学校でもうまくいかず退屈な毎日を送る高校生の亜弥。夜の街を散歩している途中酔っ払いに絡まれたところを高校生のリョウに助けられる青春小説。家に不在がちな父親が期間限定で契約した伊予さんによる生活指導。カフェでバイトしているリョウに少しずつ惹かれ、些細な出来事に心揺れる亜弥。面倒だった高校の友人関係にも変化が訪れて、伊予さんの正体には驚きましたけど、今は上手く行かなくても、きっかけがあれば様々な物事の見え方も変わって前を向けるようになることを改めて実感した物語でした。
読了日:08月11日 著者:いぬじゅん
ただいま神様当番ただいま神様当番感想
バス停で毎朝出会う五人。ある朝目を覚ますと彼らの腕に「神様当番」と太く大きな文字が書かれていて、突如「神様」を名乗るおじいさんが目の前に現れる連作短編集。幸せを待つのに疲れた印刷所の事務員、理解不能な弟にうんざりしている小学生の女の子、SNSで繋がった女子にリア充と思われたい男子高校生、大学生の崩れた日本語に悩む外国語教師、部下が気入らないワンマン社長。「わしを楽しませて」という神様に振り回されながら、けれどそのお節介で今まで目を背けていたこと、大切だったものを思い出していく展開はなかなか良かったですね。
読了日:08月11日 著者:青山 美智子
戦国大名の経済学 (講談社現代新書)戦国大名の経済学 (講談社現代新書)感想
戦乱に明け暮れていた戦国時代に先立つお金をどう調達していたのか。あらゆる手段を講じて富国強兵に励んだその実態に迫った一冊。装備一式70万円、鉄炮1挺50万円、兵糧米代1000万といった金額もそうですが、一番驚いたのは動員数に占める戦闘要員の少なさでした。治水工事などのインフラ整備や鉱山開発、海外交易など様々な工夫や試行錯誤が取り上げられていましたが、自国貨幣を鋳造していないために北宋銭・明銭などが流通し、貨幣が不足しがちだったこと、それが米を基準とする石高制に繋がっていったことにはなるほどと思いました。
読了日:08月12日 著者:川戸 貴史
スマホ料金はなぜ高いのか (新潮新書)スマホ料金はなぜ高いのか (新潮新書)感想
5G対応や急増するテレワークなど通信インフラ大変革の時にあって、高止まりしたままの日本の通信料金。大手3社による寡占市場、歪んだ料金体系と収益構造、官民の馴れ合い体質を明かす一冊。日本の端末が海外に比べて安いのは高額な端末価格を通信価格に転嫁しているということなんですが、見方を変えれば高騰し続ける端末代というハードルの高さをどうするかって話でもあるんでしょうね…これ。ドコモやソフトバンクの話は興味深かったですが、三大キャリアが複雑怪奇に保守化して、楽天も軌道に乗せるのは大変そうで、改善は難しそうですね。
読了日:08月12日 著者:山田 明
後宮妃の管理人 三 ~寵臣夫婦は繋ぎとめる~ (富士見L文庫)後宮妃の管理人 三 ~寵臣夫婦は繋ぎとめる~ (富士見L文庫)感想
管理人・優蘭のおかげで皇帝の寵妃・紫薔の懐妊も落ち着いた頃。四夫人の一人・史賢妃から「陛下と離縁をしたいので支援してほしい」と一通の手紙が届く第三弾。皇帝の子を宿したが流産した過去を持ち、かつては皇帝・劉亮や晧月のともに留学したこともある賢妃の逡巡。賢妃も不器用過ぎるけど皇帝もまた面倒くさくて、優蘭夫婦も大変ですね(苦笑)貴妃や皇帝を狙う刺客まで現れて、黒幕らしき人物も出てきましたけど、二人揃ってワーカーホリック気味で、名前呼びとかで恥ずかしがってしまう初々しい優蘭夫婦の進展にもそろそろ期待したいですね。
読了日:08月12日 著者:しきみ 彰
縁結びカツサンド縁結びカツサンド感想
駒込うらら商店街に佇む、昔ながらのパン屋さん「ベーカリー・コテン」。その未来を背負う悩める三代目・和久が人の悩みに寄り添うパンを焼こうと奮闘する連作短編集。挙式に消極的な婚約者に悩む女性、就活に落ち続ける学生、中学受験する小学生の悩み、肉バカな肉屋の息子の恋。シェフから出戻りでパン屋を継いで、迷いを抱えながらも試行錯誤を続ける和久。そんなお店に訪れる悩めるお客さんたちがパンを通じて自分の本当に大切なものに気づき、お店の常連客となってゆく、とても温かくて優しい物語でしたね。賢介さんうまくいくといいな(苦笑)
読了日:08月13日 著者:冬森 灯
虜囚の犬虜囚の犬感想
過去の苦い事件から家裁調査官を辞め、妹の専業主夫代わりの日々を送る白石洛。友人の刑事・和井田からかつて担当した少年・薩摩治郎が死体となって発見されたことを知らされるサスペンスミステリ。治郎の自宅を訪れて判明する監禁虐待されていた女性たち。なぜ治郎は監禁したのか、史上最悪の監禁犯を殺したのは誰なのか。強権的な父や無力な母、家政婦や庭師、精神医を通じて明らかになる凄惨な背景。中学生二人の動向も絡めて組み上げられる構図に覚えた違和感の正体は見事打破されましたけど、根深く逃げられないその連鎖には戦慄を覚えました。
読了日:08月14日 著者:櫛木 理宇
悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。 (DENGEKI)悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。 (DENGEKI)感想
襲われた女の子を救おうとして命を落とし、悪役令嬢・キリハレーネとして転生したヤクザの女組長・霧羽。婚約破棄を迫る王子を始めとする破滅フラグを次々と粉砕してゆく物語。間違って悪役令嬢役として召喚された霧羽の魂。世界の創造神・ジェラルドを執事として従え、持ち前の度胸とハッタリで婚約破棄を迫る王子を逆にやり込め、たくましく冒険者として活躍して腹黒ヒロイン・ユリアナの企みを次々と打ち砕いて味方を増やし、さらには竜まで手なづけてしまうキリハの圧倒的な主人公感は爽快でした。ここからどんな展開が待つのか続巻に期待です。
読了日:08月14日 著者:翅田 大介
鬼滅の刃 風の道しるべ (JUMP j BOOKS)鬼滅の刃 風の道しるべ (JUMP j BOOKS)感想
ただ鬼を殺すことだけに己のすべてを賭す少年時代の実弥と鬼殺隊へ導いた鬼殺隊隊士・粂野匡近との出会い、鋼鐵塚のお見合い話、小鉄と一緒に縁壱零式を修理する無一郎、伊之助とカナヲの友情秘話といったサイドストーリーのほか、先生たちが話題の怪談を調査する「キメツ学園」を収録した第三弾。本編を補完するサイドストーリーは鬼殺隊の面々のキャラとか心情といった部分をより深く掘り下げていて、キメツ学園で義勇、杏寿郎、カナエら同僚教師に振り回される宇髄が微笑ましかったです。らしさがよく出ている中で善逸の俗物感には苦笑いでした。
読了日:08月15日 著者:吾峠 呼世晴,矢島 綾
日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?  結婚・出産が回避される本当の原因 (光文社新書)日本の少子化対策はなぜ失敗したのか? 結婚・出産が回避される本当の原因 (光文社新書)感想
1990年から30年間出生率が低迷する日本の少子化対策失敗の原因を分析総括し、対策は可能なのかを探る一冊。欧米には出生率回復した事例もありますが「子は独立前提・仕事は女性の自己実現恋愛至上主義・子育ては成人まで」の欧州と「リスク回避・世間体重視・子供に対する愛着が強い」日本では事情が違うこと、前提となる未婚化問題や結婚・子育ての経済的側面に対する心理を軽視したことは大きかったですね。米のように階層二極化が少子化を解消する可能性を目指すわけにもいかず、失われた世代は取り戻せないだけになかなか厳しいですね。
読了日:08月16日 著者:山田 昌弘
俺の残機を投下します俺の残機を投下します感想
家族を捨てて世界一のプロゲーマーを目指すも最近は成績が振るわず徐々に心も荒んでいく一輝。そんな悩める一輝の前に自分に似た謎の三人組が現れる物語。うまく行かない状況に荒れ、周囲を見下した態度でトラブルを起こしがちな一輝には好感を抱く要素に乏しかったですが、自らの残機だという三人に出会い、最初は不審に思い避けていた彼らにも抱えている複雑な想いがあることを知り、少しずつ変わっていった彼がどん底から這い上がって家族との絆を取り戻し、eスポーツワールドカップ格ゲー部門に挑む姿にはなかなかぐっと来るものがありました。
読了日:08月16日 著者:山田悠介
あめつちのうたあめつちのうた感想
運動が苦手で家族に抱える鬱屈から逃げ出したい思いもあって、甲子園球場の整備を請け負う阪神園芸へと入社した雨宮大地。そんな彼が仕事や人々の出会いから変わってゆくスポーツ裏方小説。仕事もなかなか覚えられない大地に突っかかってくる、ケガでプロへの道を断念した同僚の長谷。それに同性愛者であることを周囲に隠す親友・一志や、重い病気を乗り越えて歌手を目指すビールの売り子・真夏と、同じく「選べなかった」運命に思い悩む仲間たちの葛藤を知り、自らも仕事や家族とも向き合いながらともに成長してゆく展開はなかなか良かったですね。
読了日:08月17日 著者:朝倉 宏景
ファルセットの時間 (単行本)ファルセットの時間 (単行本)感想
かつて女装をしていた34歳の竹村がたまたま見つけた、16歳の「美少女」ユヅキ。その出会いから理想の女装像に惹かれ、複雑な想いや葛藤を描いてゆく物語。似たような嗜好の存在を見つけてそれが気になって仕方ない竹村。そこから始まった関係で感じる忘れていた思い、けれど今はもう自分は止めて仕事や家庭もあり、同じようにはなれない現実。かつての自分を知る人の変わった部分や変わらない部分に安堵し、自らにないユヅキの若さに対する複雑な想いを抱えて、けれどそんな自らの想いを認め折り合いをつけてゆく竹村の姿がとても印象的でした。
読了日:08月17日 著者:坂上 秋成
Re:ゼロから始める異世界生活 短編集6 (MF文庫J)Re:ゼロから始める異世界生活 短編集6 (MF文庫J)感想
ロズワール邸で働く鬼の姉妹、長年の呪縛から解放された二人の姉妹愛が暴発する誕生日祝い、ナツミ・シュバルツに加えて新た二人の美女が参戦する三馬鹿女装編、『聖域』を離れ自由を得た魔女の出会いの三編を収録した短編集第六弾。今回はわりとのんびりした雰囲気の短編集で、久方ぶりに動いているレムの様子が懐かしかったです(彼女のスバル甘やかしっぷりも思い出しましたがw)。ミステリ仕立てだった三馬鹿編もなかなか楽しかったですね。最後の話は強欲の魔女の前日譚的なお話なんですかね。三人の旅の行方をまた読んでみたいと思いました。
読了日:08月18日 著者:長月 達平
中流崩壊 (朝日新書)中流崩壊 (朝日新書)感想
かつてないほどに格差が拡大し消滅寸前の中流層。戦後日本における中流の生成と軌跡をデータを通じて論じるとともに、社会における「中流」の状況を検証し、理想的な「中流」のあり方を探る一冊。佐藤俊樹さんや橘木俊詔らの論も取り上げつつ、高度成長期に言われた「一億総中流」はミスリードと国民の願望による幻想だったという指摘、そこから旧来の中間層とは違う新中間層の登場、高度成長期以降の格差が拡大してゆく推移、旧中間層・新中間層を中心とした傾向分析は、最後の提案こそややありきたりではありましたけどなかなか興味深かったです。
読了日:08月18日 著者:橋本 健二
リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音 ―翼に焦がれた金の海― (集英社オレンジ文庫)リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音 ―翼に焦がれた金の海― (集英社オレンジ文庫)感想
拉致されたガウェインの遺品を大事に持っていたせいで恋人リヒトとすれ違ってしまうニナ。すれ違ったまま女騎士である王女ベアトリスに誘われ、彼女と二人で私的な競技会が盛んに催されている南方地域へ赴く第二弾。王女ベアトリスが抱えていた迷い。南方地域で再会したマルモア国の女騎士たちと不思議な少女・メルの存在。リヒトがいない戦いや、仲間やメルたちとの交流の中で二ナの成長があって、ベアトリスもまた異国での戦いの中で覚悟が決まって、密かにリヒトもまた頑張ってたんだなとは思いましたけど、そろそろ物語も大きく動きそうですね。
読了日:08月19日 著者:瑚池 ことり,六七質
九天に鹿を殺す 煋王朝八皇子奇計 (集英社オレンジ文庫)九天に鹿を殺す 煋王朝八皇子奇計 (集英社オレンジ文庫)感想
中原の覇者・煋王朝で皇帝の崩御とともに、次代の玉座を巡り八人の皇子が争う「九天逐鹿」。審判役・女帝の勅命のもと宮中に現れる蠱鬼を狩り、夭珠を増やす凄惨な戦いの幕が開ける中華謀略ファンタジー。母や家族だったり、妻や姉といった大切な存在のために集った八人の皇子たちが繰り広げる、卑劣な奸計が蠢いて情を断ち切れぬ者から滅びていく壮絶な後継者争い。新皇帝が誕生すれば殺される運命にある女帝・閨水娥。それぞれの想いが垣間見えるからこそ、それぞれの末路もまた印象的で、その先にあった結末にもまたぐっと来るものがありました。
読了日:08月19日 著者:はるおか りの,アオジ マイコ
クラスメイトが使い魔になりまして (4)クラスメイトが使い魔になりまして (4)感想
紆余曲折の末に晴れて恋人同士となったはずが、ソフィアとの対決で瀕死となった千影を救うため「神様」を頼ってしまう想太。再び改変され想太に恋人がいる世界で、再び想いを告げるために神様に勝負を挑む第四弾。神様もだいぶ性格悪いなと思った今回の改変でしたけど、残り少ない期間で千影と再び恋人になれるか神様と勝負することになった展開で、どこまでもブレないソフィアは相変わらずで苦笑いでしたが、素直になれない面倒な千影と、神様に妨害を残り超えて大切なものを取り戻した想太が迎えたこの物語の結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:08月20日 著者:鶴城 東
育ちざかりの教え子がやけにエモい (2) (ガガガ文庫)育ちざかりの教え子がやけにエモい (2) (ガガガ文庫)感想
風邪を引いた椿屋ひなたを、担任としてお隣さんとして彼女を看病する達也。ひなたは同級生と少しずつ交流を持つようになり、周囲にも影響を与えてゆく第二弾。時には子供のようで、そして大人びたような雰囲気も垣間見せるひなた。別格だけどどこか危うい中学生がいたら先生も戸惑うし、同級生にそんな子がいたらやっぱり落ち着かないよな…とは感じますね(本人はそんな気ないでしょうけど)。先生二人の距離感も気になるけど、彼女の影響を受けて少しずつ確実に変わってゆくゆく周囲の同級生や、ひなたの想いがどうなるのかは気になるところです。
読了日:08月20日 著者:鈴木 大輔
幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら 疎遠だった幼馴染が怖い (ファンタジア文庫)幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら 疎遠だった幼馴染が怖い (ファンタジア文庫)感想
学内でも人気の美少女で、いつの間にか遠い存在となってしまった康貴の幼馴染・高西愛沙。その妹まなみの家庭教師をきっかけに、彼女とも再び接点を持ち始める青春小説。まなみもまた中学の間では人気者で、康貴に甘える彼女にやきもきする不器用過ぎる愛沙が分かりやすいわけですが、学校とのギャップもあって康貴も彼女との距離感掴みかねてる感じなんですかね。そんな彼が気になるまなみも、お互いの両親やクラスメイトたちも二人に好意的で、このもどかしい幼馴染の両片想い関係をこれからどう盛り上げていくのか、今後に期待のシリーズですね。
読了日:08月20日 著者:すかいふぁーむ
恋愛する気がないので、隣の席の女友達と付き合うことにした。 (ファンタジア文庫)恋愛する気がないので、隣の席の女友達と付き合うことにした。 (ファンタジア文庫)感想
神戸で高校受験に失敗し、姉と一緒に香川の離島に移り住むことになった高校一年・凛太郎。そこで出会い仲良くなった女友達・友近姫乃に、秘密の偽装恋愛関係を持ちかけられる青春小説。一カ月で16回も告白され周りの恋愛ブームにうんざりしていた姫乃。偽装恋愛関係で今度は凛太郎が男に呼び出される展開には思わず笑いましたが、捉えどころのない姫乃の想い、凛太郎を目の敵にする有希、後輩のありなを絡めつつ、廃校危機を救うため教育実習中の姉と協力して文化祭を盛り上げるために奔走する凛太郎と、その結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:08月20日 著者:岬 かつみ
1LDK、そして2JK。III ~夏が始まる。二人はきっと、少し大人になる。~ (ファンタジア文庫)1LDK、そして2JK。III ~夏が始まる。二人はきっと、少し大人になる。~ (ファンタジア文庫)感想
夏を迎えた26歳サラリーマンとJK2人の奇妙な同居生活。心に小さな綻びを抱えるようにして過ごす二人のために、せめて夏休みに楽しい思い出を作ろうと駒村が奔走する第三弾。駒村が提案した三人でのキャンプ。三人で思い出を積み重ねてゆく夏休みがかけがえのないものに思える一方で、ひまりは実家に帰る必要性を痛感して、奏音の母親も戻ってきてその束の間の同居生活の終わりを予感させる展開の中、思わぬ形での大切な人との再会によって物語もまた大きく動きそうですね。就職先が決まった幼馴染・友梨との関係も気になるところではあります。
読了日:08月21日 著者:福山 陽士
デート・ア・ライブ アンコール10 (ファンタジア文庫)デート・ア・ライブ アンコール10 (ファンタジア文庫)感想
狂三と紗和の学園生活、十香社長と精霊たちの会社経営、士道の両親と真那の邂逅、美九の提案で開催される精霊たち全員集合の卒業旅行、精霊たちの人狼ゲーム、そして十香と再会後の物語も語られる外伝第十弾。今回も本編とはまた違う形のヒロインたちの個性が光る構成になっていて、十香社長の躍進と結末に爆笑し、士道たちの両親のエピソードに微笑ましい気持ちになり、精霊たちが暴走する卒業旅行や人狼ゲームににんまりし、そして相変わらずな彼女たちと十香と再会にじんわりして十分に堪能できました。まだ続きあるそうなので楽しみにしてます。
読了日:08月21日 著者:橘 公司
友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 3 (オーバーラップ文庫)友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 3 (オーバーラップ文庫)感想
定期テストを乗り越えればあとは夏休みを待つばかり。休みの間もニセモノの関係を続けたい冬華に、一度は告白を断った夏奈もグイグイ来るようになり、導いてくれる恩師・真桐先生の様子がどこか気になる第三弾。生徒会の合宿へ参加したりみんなで遊びに行ったり、それぞれに誠実であろうとする優児を巡り冬華と夏奈がバチバチと火花を散らす展開で、なぜかとばっちりで責められる春馬には苦笑いでしたけど、密かに要所で優児に弱い一面を見せたり、お互い理解を深めてゆく真桐先生の心境の変化は印象的で、今後の展開に大きく影響を与えそうですね。
読了日:08月21日 著者:世界一
小悪魔だけど恋愛音痴なセンパイが今日も可愛い 1 (オーバーラップ文庫)小悪魔だけど恋愛音痴なセンパイが今日も可愛い 1 (オーバーラップ文庫)感想
田舎から外部入学で名門校の吹奏楽部へ入部した三鼓拓斗。独学のみの初心者・拓斗に可能性を見出したOB女子大生・宮城恵理那と運命の出会いを果たし、彼女に師事する青春小説。彼女の奏でる素晴らしい音色にほれ込んだ拓斗と、それを彼の愛の告白と勘違いした恵理那。演奏と料理は素晴らしくても、それ以外は人知を超えたポンコツで恋愛音痴っぷりも斜め上の恵理那はなかなか強烈でしたが、二人の音楽に向き合う姿勢は真摯で、同級生の波音や恵理那に師事する小学生・リュシーたちと演奏する喜びを見出してゆく展開はぐっと来るものがありました。
読了日:08月22日 著者:遊歩新夢
魔女の愛し仔 (星海社FICTIONS)魔女の愛し仔 (星海社FICTIONS)感想
魔宴の夜、魔女集会へ生け贄として捧げられ、古き魔女エンゲル・ヘクセンナハトに拾われた少女・サラ。『幸福になれなかった物語』を管理する彼女の書架に眠る「呪われた御話」たちを二人で終わりに導いてゆく物語。在るべき結末を迎えなかった白雪姫、人魚姫、茨姫、赤頭巾、ラプンツェルの物語の世界と、二人が協力することで導かれてゆくもうひとつの結末。魔女と少女を待ち受ける運命を様々な形で示唆しつつ、共にあることで少しずつ変わってゆく二人の繊細な関係はとても優しくて、幸せとは何かを模索し続けたその結末はなかなか印象的でした。
読了日:08月23日 著者:綾里 けいし
灰と幻想のグリムガル level.16 さよならの訳さえ僕らは知らないままで (オーバーラップ文庫)灰と幻想のグリムガル level.16 さよならの訳さえ僕らは知らないままで (オーバーラップ文庫)感想
多大な犠牲を払ってオルタナ奪還を果たしたアラバキア王国遠征軍。ハルヒロは失ったものの大きさに打ちのめされる状況で、野心を抱く遠征軍のモーギス将軍にゴブリンとの同盟を命じられる第十六弾。謎めいた開かずの塔の住人や、様々な勢力の思惑が入り乱れる中、人質にとられ同盟を結ぶため新市街に潜入するハルヒロたち。自分たちでは決められないままならない状況に陥って、それを覆すこともできない現実を突きつけられる閉塞感が半端なかったですけど、久方ぶりなランタたちの合流が転機となるのか、これから面白くなる展開を期待したいですね。
読了日:08月23日 著者:十文字青
昨日星を探した言い訳昨日星を探した言い訳感想
全寮制中高一貫校・制道院学園に進学した坂口孝文。中等部2年進級の際、映画監督の清寺時生を養父にもつ茅森良子が転入してきて、坂口と運命の出会いを果たす青春小説。生徒会長を目指す真っ直ぐだけれど脇の甘い茅森を、影から支える坂口の密かな共犯関係。二人だけでたくさんの想いを語り合い、揺るぎない信頼と甘酸っぱい関係を積み上げてきたからこそ、思ってもみなかった急展開には驚かされましたけど、どこまでも頑固者で不器用で揺るぎない二人が、意外な転機と巡り合わせの末に迎えた結末には、苦笑いしつつもぐっと来るものがありました。
読了日:08月24日 著者:河野 裕
きみに、にゃあと鳴いてやる。 わたしが猫になった67日間 (富士見L文庫)きみに、にゃあと鳴いてやる。 わたしが猫になった67日間 (富士見L文庫)感想
ある日吉祥寺で金色の瞳の猫と出会い、一匹の猫となってしまった仕事に疲れたOL・舞原留里。そんな彼女が猫にだけ優しい偏屈な高校時代の元同級生・岸田頼朝と出会う物語。猫に好かれる特異体質を持つ岸田にお持ち帰られて、彼の家で一緒に過ごした67日間。共同生活で岸田の意外な一面がたくさん垣間見えて、共に過ごすうちに留里の中にも育まれてゆく想いがあって、改めて留里が人として対してみると岸田はほんとめんどいやつだなーと苦笑いでしたけど、それにめげずにしっかり向き合った留里と頼朝のお似合いな感じがとても素敵な物語でした。
読了日:08月24日 著者:村田 天
蒼天の王土蒼天の王土感想
久慈島で繰り返される争いをなくすため、大八洲のどこかにあるという金属の鉱脈を探しに、久慈島の東にある最大の島、秋津島を目指して隼人と鷹士が海を渡る第二弾。黒潮に乗って目指すは東海の美野、そして淡海、北陸、最高峰の不二の山へと向かう展開で、鷹士が複雑な想いを抱く因縁の相手との再会があって、美野での出会いが二人を少しずつ変えていって、苦難に遭いながらも仲間思いでどこまでも真っすぐな隼人と、少しずつ自分らしさを持ち始めた鷹士の成長が眩しかったです。そんな彼らがこれからどんな道を歩むのか続きを楽しみにしています。
読了日:08月25日 著者:篠原 悠希
星の降る家のローレン 僕を見つける旅にでる (メディアワークス文庫)星の降る家のローレン 僕を見つける旅にでる (メディアワークス文庫)感想
ある日姿を消し、生死不明となっていた少年時代の宏助の恩人で謎多き中年画家・ローレン。年月が過ぎて大学生になっていた宏助のもとに、突然ローレンから「自分の絵を売ってほしい」と手紙が届く物語。何とか個展を開催した宏助が、絵に描かれた友人を探す個展の客・雪子と一緒にローレンの行方を追う展開で、雪子と行方知れずになった親友・杏子のエピソード、そしてローレンの過去に迫ってゆく中で明らかになってゆく過去の真相は切なくて、けれどそれぞれがしっかりと向き合って新たな関係を見出してゆく結末にはぐっと来るものがありましたね。
読了日:08月25日 著者:北川 恵海
脱マウス最速仕事術 年間120時間の時短を実現した50のテクニック脱マウス最速仕事術 年間120時間の時短を実現した50のテクニック感想
前作「アウトルック最速仕事術」がなかなか良くて、キーボードのショートカットを生かした脱マウスパソコン仕事術にも興味があって手にとった一冊。単純なショートカット暗記術でなくなぜこれを使うのか、こう組み合わせて使うのかをきちんと解説してくれていて、書いてあるとおりに年間120時間の時短ができるかはともかく、時間をかけて実践できるようになれば格段に効率は良くなりそうな気はしました。ただ、効率がいいからと周囲が受け入れてくれるかはまた別の問題で、これまでのやり方を変えるというのはなかなか大変なんですよね…(遠い目
読了日:08月26日 著者:森 新
愛されなくても別に愛されなくても別に感想
学費と家に月八万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす彼女が、傍若無人な同級生・江永雅と運命の出会いを果たす青春小説。自分は母親に愛されていると思っていた陽彩が、訳ありの江永雅と出会ったことでようやく気づいた衝撃の真実。それが当たり前だと思わされ、がんじがらめに囚われていた登場人物たちが抱えるしんどさはあまりに重く心揺さぶられましたが、だからこそその呪縛を断ち切り、未来に希望を見出そうとする彼女たちの決意を応援したくなる物語でした。
読了日:08月26日 著者:武田 綾乃
月蝕の夜の子守歌 (大正浪漫 横濱魔女学校2) (創元推理文庫)月蝕の夜の子守歌 (大正浪漫 横濱魔女学校2) (創元推理文庫)感想
今夜は寮で月蝕観察なのに、未だ到着しない実家通いの透子。折しも横濱では子供の連続誘拐事件が発生し、横浜の街に探しに出た小春と都が、透子が連れてきた迷子の抜け首の女の子・アンと出会う第二弾。今回も迷い子のアンをキーマンに千秋やペルーに住む叔父さん、謎の弁護士リケーニさんに、横濱天狗団を名乗る誘拐犯や姑獲鳥、大天狗の妖魅たちも絡めての大騒動はなかなか賑やかでしたけど、千秋の家にあった動く密林の絵は今後の重要な鍵となりそうな感じですかね。ここから物語をどう結末に導いてゆくのか、三部作の最終巻に期待ということで。
読了日:08月26日 著者:白鷺 あおい
神話の密室 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫)神話の密室 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫)感想
かたや厳重な警備の病院で、こなた千人以上の観客が見守る中で、まるで神様が魔法を使ったかのような奇妙な「密室」事件。隠された思いもよらぬ病に天才女医・天久鷹央と小鳥遊が挑む新章第四弾。アルコールが一滴もないはずの閉鎖病棟で泥酔を繰り返す人気作家。キックボクシングのタイトルマッチ、勝利の瞬間にリングで死亡した王者。相変わらず騒がしい三人が隠された真相に挑む展開で、作家の苦悩が描かれていたり、もうひとつのエピソードは何ともほろ苦い結末でしたけど、鷹央も何だかんだで小鳥の成長を認めてるんだなとしみじみとしました。
読了日:08月27日 著者:知念 実希人
あなたのことならなんでも知ってる私が彼女になるべきだよね (ファミ通文庫)あなたのことならなんでも知ってる私が彼女になるべきだよね (ファミ通文庫)感想
描く絵が評価される一方で、人の感情が色で見える特殊能力の持ち主・宮代空也。そんな彼に密かに恋する隣の席の美少女・久城紅の青春ラブコメディ。悩める訳あり主人公の周囲をがっちり固めるパーフェクト幼馴染・翠香、凄腕プログラマの技術を活かし空也のデジタルストーキングにいそしむコミュ障美少女・紅。けれどそこからもう一歩が踏み込めないもどかしい彼女たちの重い所業には強烈なインパクトがあって、二人の彼を想う覚悟や気持ちもまたどこまでも真摯で、ゾクゾクするようなじわじわ効いてくるようなそんな物語の結末がまた印象的でした。
読了日:08月27日 著者:藍月 要
継母の連れ子が元カノだった5 あなたはこの世にただ一人 (角川スニーカー文庫)継母の連れ子が元カノだった5 あなたはこの世にただ一人 (角川スニーカー文庫)感想
夏休みも終盤。いつも通り水斗の部屋に入り浸りじゃれ合いを結女の母に見られてしまういさな。その親密な距離感からいさな=水斗の『今カノ』という誤解がどんどん広まってゆく第五弾。結女の母に誤解され、いさなの母には結婚しろと言われ、さらには学校でも噂される二人。前巻あんなに頑張ったのに、急展開でやることなすこと裏目に出てしまい涙目な結女のポンコツっぷりが際立っていましたが、最初は浮かれていたいさなが現実にしっかり向き合おうとする姿が印象的でしたね。予想もしなかった結末でしたけど、これはちょっと面白くなりそうです。
読了日:08月28日 著者:紙城 境介
第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 3 (ヒーロー文庫)第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 3 (ヒーロー文庫)感想
ウィンター・ローゼに到着して、魔術を存分に使って温泉掘削をしたり、次々に新しいアイデアを出したりと辺境開拓を進める第六皇女ヴィクトリア。順調に計画が進む中、残酷な事件が起きてしまう第三弾。姉たちを招いての施設案内やなぜか卓球大会で盛り上がる展開でしたけど、何というか殿下を思いやるアクレクシスの優しさが裏目に出たというか、真相を知ったヴィクトリアも突っ走っちゃいましたね…。でもそれを乗り越えて絆を育む二人はなんか微笑ましい感じでしたけど、話の内容からするとルーカスとかアメリアってやっぱりそうなんですよね…。
読了日:08月28日 著者:翠川 稜
夢見る男子は現実主義者 2 (HJ文庫)夢見る男子は現実主義者 2 (HJ文庫)感想
距離を置こうとする渉と、渉の変貌ぶりに戸惑いを隠せない愛華。これまでと違う微妙な距離感にモヤモヤが頂点に達した愛華が渉を家に誘う第二弾。親友の芦田が分析する愛華自身もよく分からない複雑な心情。拗らせ過ぎてて渉にも訳わかんないよな…と苦笑いでしたが、訪問や渉の体調不良で愛華が少しずつ意識してゆく一方で、渉も勧誘やバイトをきっかけにいろいろヒロインたちとの関わりが増えてきて環境の変化を感じますね。渉がわきまえている分愛華が自覚するまではもどかしい状況は続きそうですが、今は溜めに溜めてるということですか(苦笑)
読了日:08月28日 著者:おけまる
精霊幻想記 17.聖女の福音 (HJ文庫)精霊幻想記 17.聖女の福音 (HJ文庫)感想
復讐を終えた報告をすべくヤグモ地方への帰郷を決めたリオ。一方、シュトラール地方の辺境で民衆を革命へと導いた聖女エリカが、己の悲願を達成するために休む間もなく列強諸国へと自ら足を運ぶ第十七弾。近衛騎士や侍女たちとの剣を交えての講義でファンを増やすリオは相変わらずでしたけど、里帰りについていくヒロインたちの心境は実家にご挨拶に行くようなもんですよね(苦笑)意外な再会もありましたけど、それにしてもリーゼロッテも面倒なのに目をつけられちゃいましたね…とりあえず聖女様がヤバいですね。リオの奪還劇に期待ということで。
読了日:08月28日 著者:北山結莉
第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 4 (ヒーロー文庫)第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 4 (ヒーロー文庫)感想
第六皇女ヴィクトリアと黒騎士アレクシスが治める辺境領シュワルツ・レーヴェは、秋の収穫祭の時期を迎え、お忍びで訪れていた姉のエリザベートやハルトマン伯爵と楽しいひとときを過ごす第四弾。着々と整備されてゆく辺境領の様子や収穫祭での微笑ましいエピソード、子爵領の改易騒動の中で 突然全身を激痛に襲われ倒れてしまうヴィクトリア。全体的に順調で微笑ましい展開が続く中、アレクシスも気遣っていたヴィクトリアの不調でしたけど、まさかそんな結末が待っていたとは(苦笑)いやそれは配慮が必要ですよね…アレクシスも頑張って下さいw
読了日:08月29日 著者:翠川 稜
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義感想
2025年までに世界700兆円と言われる超巨大市場フードテック。植物性代替肉や培養肉、キッチンOSなど「食×テクノロジー」を起点にあらゆる業界を巻き込む状況を解説した一冊。地球の脊椎動物のほとんどが家畜でそこに多大な土地や水が費やされている状況や、人口がさらに増えてゆく中でどうべきか世界的に試行錯誤の動きがあって、日本でも味の素や不二製油といった企業、外食産業やスーパーの取り組みや将来への危機感が紹介されていましたが、日本人の性質的にこういったことにはどうしてもリアクションになりがちなのかなと感じました。
読了日:08月29日 著者:田中宏隆,岡田亜希子,瀬川明秀
いま、子どもの本が売れる理由 (筑摩選書)いま、子どもの本が売れる理由 (筑摩選書)感想
1997年より続く出版不況の中、逆に売上を伸ばしている児童書市場。なぜ「子どもの本」は売れるのか。資料と取材から解き明かしてゆく一冊。長らく続く出版不況の中、なぜ児童書市場に可能性が見出され、出版社の新規参入が続いているのか。戦後の学校図書館や朝読を含めた国の政策による子供の読書環境の変化ら出版社の動向、その年代の雑誌や児童文庫の変遷から代表作を取りつつヒット作の背景までの全体像をきちんと俯瞰できる力作で、本書は子供目線での視点が不足して長らく疑問に感じていた児童書の今を解説してくれる興味深い一冊でした。
読了日:08月30日 著者:飯田 一史
歪んだ正義 「普通の人」がなぜ過激化するのか歪んだ正義 「普通の人」がなぜ過激化するのか感想
テロリズム、学校襲撃、通り魔、コロナ禍に現れた「自粛警察」に共通する「歪んだ正義から」発生する暴力のメカニズムを、テロ加害者と被害者が混在するエルサレムで支局長を務めた著者が解き明かす一冊。現地での多くの取材から見えてくる、いわゆる「普通の人」が様々な経緯を経て過激化への道程を突き進んでしまう危険性には実感が伴っていて、強いストレスにさらされ続ける今の日本においても、その置き換えが歪んだ形で表出する今の状況はありますが、こういう時だからこそその意味を見極め、冷静に対処することの重要性を改めて痛感しました。
読了日:08月30日 著者:大治 朋子
彼女が天使でなくなる日彼女が天使でなくなる日感想
九州北部にある小さな星母島。1年前大野麦生と一緒に戻ってきて託児所併設の民宿を営むようになった千尋。島の「母子岩」と呼ばれる名所にご利益を求めて様々な人々が訪れる連作短編集。育児と仕事の両立に苦しむ妻、千尋に興味を持ち探りを入れるライター三崎塔子、子宝を願う娘と母の関係、千尋を育ててくれた政子とその孫まつりと息子の陽太、そして掴みどころのない同居人・麦生との関係。一見ドライに見える千尋も訪れる人たちや周囲の人たちと同じように悩むこともあって、そんな彼女だからこそ寄り添える優しさがとても印象的な物語でした。
読了日:08月31日 著者:寺地はるな
夏、君と運命の恋をするはずだった (角川文庫)夏、君と運命の恋をするはずだった (角川文庫)感想
出産間近の妻・千花と病院に向かう道中で不慮の事故に遭ってしまう明良。悲劇を拒絶したことで彼女と出会う10日前にタイムリープしてしまった明良が、彼女と再会すべく奔走するやり直し青春ミステリ。彼女を抱きしめた瞬間繰り返されるタイムリープ。その度に薄れる彼女の記憶や周囲で起きる事件の差異、事情を知って支えてくれる友人たち。なかなかうまく行かないのはなぜなのか、事件を防ぎ追い求めた過程で見えたもう一つの可能性や真相はほろ苦かったですが、それでも諦めなかった彼らが取り戻した大切な関係にはぐっと来るものがありました。
読了日:08月31日 著者:大城 密

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