読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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2016年5月に読んだおすすめ本

5月はなかなか面白かった続巻を除いても新作に収穫の多い1ヶ月でした。一方で「この恋と、その未来。」「東京侵域:クローズドエデン」の続巻が危うい状況にあるという衝撃的な出来事もあり、思っていた以上に状況は厳しいようですが、2作品とも読んで後悔するような作品ではありません。読んでない方は是非ご一読をオススメします。

 三好を傷つけ未来の信頼も失ってしまった四郎は父の誘いで京都を訪問。そこで三並と西園から未来とともに結婚式に招待され困惑する第五弾。広美の支えや未来のフォローもあって徐々に落ち着いてゆく日常。どうにか少しずつ取り戻せたものがあった一方で、確実に失われてしまったこともあって、頭では分かっていてもどうにもならないことのように、時間が解決するしかないこともあるんですよね。だからこそ彼らがこの先どうなってゆくのかとても気になるので厳しい状況は残念ですが、媒体は何であれ最後をどうまとめるのか気長に待ちたいと思います。

決死の侵入で多くの人を救うもスポットとハーメルンへの手がかりを失った蓮次たち。窮地を打開するため叶方は気アイドルKANATAとして救務庁に潜入、別行動を取る蓮次にも救務庁の刺客が迫る第三弾。彼らを知る木村アルテミス捕縛を危惧する二人、見失ったハーメルンの行方、潜入したカナがまさかのクーデターに巻き込まれる展開。絶望的な状況からカナが託した情報を受け取ったレンが再びハーメルンに挑む展開はとても熱かったですけど、大きな成果を得た今回が転機になると同時に、二人の今後がとても気になる結末でしたね…続巻楽しみです。

 

今回は新作だけでも面白い本が多かったです。

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

 

 日本屈指のゲーマーながらリアルでは弱キャラの友崎が、同じくらいゲームを極めリアルでもパーフェクトヒロインの日南葵に炊きつけられ、クソゲーと断じるリアルで自己変革を目指す物語。ゲームに対する同じ想いを抱く葵の言葉を信じ、失敗しながらもチャレンジを諦めない友崎。そんな彼のフォローに奔走する葵が、凄まじいまでの努力家であることを何度も垣間見たこともきっと大きかったんですよね。魅力的なヒロインたちを絡めたテンポよく進む物語の顛末は友崎らしい現時点での精一杯でしたけど、続巻をまた読んでみたくなる期待感がありました。

キミもまた、偽恋だとしても。1〈上〉 (オーバーラップ文庫)

キミもまた、偽恋だとしても。1〈上〉 (オーバーラップ文庫)

 

 田舎町の岩下学園に越境入学した村上政樹に、地元旧家の娘で見合いを嫌い偽装恋人を提案してきた薫子。引き受けたら思わぬ繋がりが判明し婚約にまで発展してしまう物語。さすがに結婚までは意識できないものの見合いはしたくない薫子と、美少女の薫子と恋人になりたい政樹の利害が一致してとりあえず三年間偽装恋人として付き合うことになった二人。真っ直ぐに想いを伝えた政樹に好印象を抱く薫子のチョロインぶりや、お互いオタクや腐女子であることを隠す悩ましいドタバタぶりがいろいろ微笑ましくて、二人の今後がとても楽しみなシリーズですね。

現実主義勇者の王国再建記 1 (オーバーラップ文庫)

現実主義勇者の王国再建記 1 (オーバーラップ文庫)

 

勇者として突如異世界召喚された相馬一也が、富国強兵の献策からなぜか国王に気に入られて王位を譲られてしまい、国家再建に取り組む物語。率先して社畜のごとく働いて外交や食糧不足の問題に取り組むソーマと、そんな彼を頼もしく思うようになってゆく婚約者になった国王の娘・リーシア、そしてソーマに発掘された人材たち。精一杯取り組むソーマの姿勢が周囲に大きな影響を与えてゆく様子はなかなか面白かったですが、そんな彼に希望を見出す人たちもいれば反発する人たちもいたりで、またいろいろ事態が大きく動きそうな今後の展開が楽しみです。

異世界詐欺師のなんちゃって経営術 (角川スニーカー文庫)

異世界詐欺師のなんちゃって経営術 (角川スニーカー文庫)

 

大詐欺師のヤシロが『嘘が吐けない巨大都市』に16歳の少年として転生し、お人好し巨乳美少女ジネットの経営する食堂を救うために力を貸す物語。『精霊神』により嘘吐きはカエルにされてしまう多層世界。通貨偽造を疑われて逃亡の身となったヤシロを救ってくれたジネット。主人公にセクハラまがいの言動がやや多いあたりは読む人を選びそうですが、窮地に陥った彼女を見捨てられないあたり、ヤシロも決して悪い人ではないんですよね(苦笑)尻上がりにテンポも良くなるコメディ展開でなかなか面白かったです。次巻が出たらまた読んでみたいですね。

デボネア・リアル・エステート 傭兵は剣を抜き、ハイエルフは土地を転がす。 (GA文庫)

デボネア・リアル・エステート 傭兵は剣を抜き、ハイエルフは土地を転がす。 (GA文庫)

 

 ダークエルフの呪いで少年の姿になってしまい餓死寸前な伝説の傭兵・ルーウィンが、人使いが荒く金に汚いハイ=エルフ・デボネアの下僕募集に応じ、不動産屋の仕事を手伝うことになる物語。見た目で伝説の傭兵と誰にも信じてもらえないルーウィン、唯我独尊で守銭奴なのに、どこかちぐはぐな行動を見せるデボネアの目的。ツンデレデボネアだけでなく無邪気な魔法人形ココや侠気のヴェローニカといった魅力的なキャラたちを上手く配した勢いのあるストーリー展開は、それでいて意外と筋立てもしっかりしていて好感。次に期待したくなる作品ですね。

酒呑童子の化身・柊と式神として契約し、突如安倍家の当主に決まった安倍晴明の末裔・安倍春明。現代の陰陽寮『宇羅乃僚学園高等部』に転校し、校内で起こる怪異事件に挑む物語。本人も訳がわからないうちにテンポよく進む展開で明らかになってゆく主人公の秘めた力、妖艶な雰囲気の柊や賀茂・土御門・田村といったキャラたちもよく動けていて、魅力的な鵜飼さんのイラストも作品の雰囲気にうまくハマっていると思いました。今回だけではどれくらいのスケールになりそうなのかまだ何とも言えませんが、次巻以降の展開に期待したくなる作品でしたね。

 ダメダメな一人暮らし生活を送る大学生の栗坂まもりが、ふとしたきっかけからベランダで植物を育てては食すお隣のイケメン園芸男子・亜潟葉二の真の姿を知り、一緒に育てるようになる物語。一人暮らしにありがちなトラブルに巻き込まれて葉ニに救われるまもり。育てたものを一緒に食べることで育まれてゆく二人の交流と、そんな葉二に変わるきっかけを与えた千鶴との再会。不安を抱えながらも自分の思いに正直になって、不器用なりに決意したまもりの奮闘ぶりや、変わってゆく葉ニのまもりを呼ぶ名前の変化はなかなか良かったです。次回作にも期待。

古書カフェすみれ屋と本のソムリエ (だいわ文庫)

古書カフェすみれ屋と本のソムリエ (だいわ文庫)

 

 オーナーのすみれが心をこめて作る絶品カフェごはんと、紙野が担当する古書スペースで構成される古書カフェを舞台に起きる5つ小さな謎を解くミステリ。すみれの作る絶品の料理目当てに訪れる常連客たち。彼らの身の回りで起こる謎を紙野が選ぶ実際の本のエピソードを交えながら解決してゆくストーリーは、紙野の推理力がやや冴え過ぎな感もありましたが面白かったです。常連客がつい聞くらいバレバレな紙野と、一方でお客さんには細かい配慮ができるのに自分に向けられる想いにはどこか鈍いすみれ。そんな二人の今後を是非続編で読んでみたいです。

 入社以来経理一筋、きっちりとした仕事ぶりで評価される森若沙名子27歳。過剰なものも足りないものもないことを理想とする生活を送る彼女が、社内外で次々と起こる経理絡みの問題に巻き込まれてゆく物語。特に噂好きでもなく、社内の複雑な人間関係からどこか一歩引いた位置にいる彼女。怖いと誤解されてしまうこともあるけれど、やや不器用なだけできちんと相手を気遣える優しさを持っていて、幸せになりたくないわけじゃないんですよね。実はみんなに慕われていて、そんな彼女がいいと言ってくれる同僚の存在に気づく結末はとても良かったです。

神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん (双葉文庫)

神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん (双葉文庫)

 

 亡き祖父に譲られたアンティークショップを継ぐために、仕事を辞めて東京から神戸に移り住んだ高橋寛人が、お店を間借りしている修理職人の後野茉莉と出会う物語。何でもパソコンで調べる古い物に全く興味のない寛人と、物に宿る想いを大切にしてどんなものでも修理してしまう茉莉。そんな一見噛み合わなそうな二人が、抱えていた過去に決着をつけたり、亡き祖父・万の縁から多くの人たちと知り合ったりしながら、大切な居場所で過ごす家族のような存在として、共に過ごす時間や大切な想いを共有するようになってゆく物語はなかなか良かったですね。

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

 

 大学受験を間近に控えた三年生の濱田清澄が、全校集会で一年生の蔵本玻璃がいじめに遭っているのを目撃して割って入り、強烈な出会いを果たす物語。密かにヒーローに憧れ、余裕が無いはずなのに玻璃のためについつい奔走してしまう清澄。自分を救ってくれた清澄に好意を持ちながらも、どこか不穏な兆候を感じさせる玻璃。このままでは終わらない雰囲気が収束してゆく中での終盤怒涛の急展開に著者さんらしさがよく出ていましたが、波乱万丈なりにそこそこ幸せだったのかなと感じる二人のその後が描かれたエピローグは、決して悪くない読後感でした。

記憶屋 (角川ホラー文庫)

記憶屋 (角川ホラー文庫)

 

ただの都市伝説だと思っていた忘れたい記憶を消してくれるという「記憶屋」。しかし身近な先輩がトラウマと共に自分のことも忘れ去ってしまう状況を目の当たりにした大学生の遼一が、記憶屋の行方を追い始める物語。夜道恐怖症の先輩や不治の病で死を覚悟する男、大好きだった幼馴染に拒絶された少女。記憶屋を追う過程で身近な人が記憶を失ってゆくのを見て、記憶を消すことの是非に葛藤する遼一でしたけど、ようやくたどり着いた記憶屋が望む本当にささやかな願いがまた切なかったです。ここからどうやって続くのか、続巻が気になるところですね。

夜ふかし喫茶 どろぼう猫 (集英社オレンジ文庫)

夜ふかし喫茶 どろぼう猫 (集英社オレンジ文庫)

 

不眠で悩んでいる大学生の結月が、住んでいるマンションにある平日の夜中だけOPENする不思議な喫茶店に通うようになる物語。ふとしたきっかけで風変わりな店主・榊真臣と出会い、眠れない長い夜を過ごす人たちが集う喫茶店の常連になってしまった結月。そんな二人が関わった人たちの悩みを解決するために奔走するストーリーは、結月自身や榊もまた長らく抱えていた悩みへ踏み込んでゆくことにも繋がっていて、その過程でお互いの理解を深めていった二人の距離感が少しずつ、ゆっくりと変わってゆくその繊細な描写がとても良かったと思いました。

 

ではまた