2025年6月電撃文庫・PASH!文庫・カドカワBOOKS・ドラゴンノベルス新刊感想まとめ
今回は6月電撃文庫・PASH!文庫・カドカワBOOKS・ドラゴンノベルスの新刊感想まとめです。内訳は電撃文庫の新作3点、続刊7点、PASH!文庫の続刊1点、カドカワBOOKSの続巻2点、ドラゴンノベルスの続刊1点の計14点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
孤高の電波美少女と恋で繋がったらギガ重い (電撃文庫)
【第31回電撃小説大賞<金賞>受賞作】
神宮寺 文鷹/MAIRO KADOKAWA 2025年06月10日
孤高の電波美少女・貴家雲雀に罰ゲームで告白した楠木将臣。嘘から始まった想いがいつの間にか本当に変わっていく青春小説。精神界の救世者と電波な妄想を垂れ流し、周囲から孤立していた貴家と付き合うことになって、時々突然精神世界にダイブしてしまうものの、噂と違って普通に会話を楽しんで、時には素直に甘える彼女のことをかけがえのない存在と思うようになっていくなっていく将臣。そこに相棒の折戸啓示の思惑が絡み、当初の罰ゲームで告白した事実が重くのしかかっていく展開でしたけど、それでも彼女に寄り添う覚悟を決めて乗り越える展開はなかなか良かったですし、無邪気に振る舞えうかすかの存在も要所で効いていましたね。
天嬢天華生徒会プリフェイズ (電撃文庫)
杉井 光/パイレーツキャット KADOKAWA 2025年06月10日
やっとのことで教員資格をとった26歳の「ぼく」が、紹介された半島がまるごとキャンパスの独立学園国家《天涯学園》に新任教師として赴任する学園ラブコメミステリ。着任早々爆破事件に巻き込まれたぼくを救ってくれた生徒会長で学園の《王》天祿院凰華。謎に距離が近い彼女によって生徒会執行部の顧問に据えられ、生徒会の個性的なヒロインたちと知り合い、七つの家を完全に屈服させるという目的、そして学舎に潜むスパイを炙り出すことを依頼される展開で、独特の立ち位置を維持する学園の状況を舞台に、著者さんらしいテンポの良い掛け合いは楽しかったですし、そこから凰華の又従姉妹・珠音と互いを屈服させるための激突の末にたどり着いた思いもしないその結末には驚かされました。
ギャルゲー世界にニューゲームしたら、ヒロイン全員攻略された記憶があって修羅場です…… (電撃文庫)
ひつじ/かがちさく KADOKAWA 2025年06月10日
目を覚ますとギャルゲーの主人公・湊理玖として転生していたことを知り、それぞれ湊理玖に攻略された記憶があるゲームのヒロイン3人に出会う青春ラブコメ。お嬢様キャラのツンデレヒロイン姫乃、ギャル美少女の結衣、清純派ヒロインの若菜。それぞれがメインヒロインとして攻略された記憶を持ったままあ、理玖と一緒に再び学園生活を始めようとするというストーリーで、ルートが違うゆえに細かい齟齬がある中、ヒロインたちが自分を巡って相争う構図を忌避して、最初は彼女たちとの関わりをどうにか避けようとしていた理玖でしたけど、それでも悩めるヒロインたちを放っておけず、ドツボにはまるのを自覚ながらも彼女たちのために奔走する展開はなかなか良かったです。
魔剣少女の星探し2 魔剣名鑑 (電撃文庫)
セントラルの危機を救い一躍有名人になったリットたち。しかし金欠という現実に直面して引き受けた大賢人の護衛任務から、新たな陰謀が動き出す第2弾。それぞれの目的のため魔剣団「夜明けの星」を結成したものの、財政難から別行動で資金稼ぎをすることになった3人が各々騒動に巻き込まれていく中。ソフィアが北方連邦国から訪れた大陸最高峰の魔術師エカテリーナの護衛任務を引き受け、時を同じくして怪しげな魔術装置の存在も確認される展開で、ソフィアの背景を掘り下げつつ、一枚岩ではない結社の実情も浮き彫りにされていきましたけど、時代が変わりつつある混沌とした舞台の中で存在感あるヒロインたちが大活躍する展開は今回もなかなか面白かったです。
転生程度で胸の穴は埋まらない2 (電撃文庫)
シルメニアの一件を乗り越えて、テルネリカと穏やかな日々を送るコノエ。彼の学舎時代を知る超越者の同期メルミナと魔物巣食う汚染地の掃討に向かう第2弾。彼らをアデプトに育て上げ、救国の英雄でもある教官が密かに抱える苦悩。そしてその仕事ぶりから彼女に再教育されている同期メルミナ。10年ぶりの再会して、コノエの変化を敏感に感じ取るメルミナと一緒に任務に挑む中で、素直になれない不器用なメルミナとの掛け合いが微笑ましかったですが、密かに大きな欠落と渇望を抱えるがゆえに窮地に陥った彼女のために奔走する展開でしたけど、読んでいて迷えるヒロインたちに寄り添って救えるのはコノエしかいないのかもしれないな…と改めて感じる結末でしたね。
続・ツッコミ待ちの町野さん (電撃文庫)
2年に進級しても、相変わらず二反田がいるドミノ部室に顔を出す町野さん。部室に現れるメンバーも増える中、少しずつ2人の距離感も変わっていく第2弾。仲良くなったからこそ気になる進級時のクラス替えを巡るドキドキや、相変わらず部活に行く前にドミノ部に顔を出す町野さんが、後輩属性を演じたり、モーニングルーティンを明かしたり、エプロン姿になってみたり、積み重ねてきた想いも垣間見せることで、少しずつ変わっていく二反田との距離感。お互い意識しているのになかなか距離が縮まらない八木と雪出や、安楽寝さんが大変そうな坂本との関係も絡めながら、一緒にテスト勉強をしたり、みんなで熱海旅行も満喫したりと、彼ららしい青春を満喫する様子が眩しかったです。
こちら、終末停滞委員会。4 (電撃文庫)
大切な『誰か』の名前を取り戻すため、最も模範とすべき学園カウス・インスティトゥートへ留学する心葉。レアやカウスの精鋭とともに「焚火の国」へ向かう第4弾。新たな『斬撃』を獲得した心葉が向かう、ある巨人を封じている「焚火の国」。その裏で蒼の学園を憎み、世界の破滅を招く仮面の男が災厄の巨人を現世に解き放ち、宇宙を滅ぼしてしまおうと暗躍し始める展開で、相変わらずとんでもない情報量でしたが、ヒロインたちはそれぞれ鮮烈な存在感があって、巻を重ねていくごとにより浮き彫りになっていく心葉も印象的でしたし、何より線の人がわりとあれだった分、よりそれ以外の相手側にもしっかりとした信念が感じられる中での負けられない熱い戦いとその結末もなかなか良かったです。
凡人転生の努力無双4 ~赤ちゃんの頃から努力してたらいつのまにか日本の未来を背負ってました~ (電撃文庫)
シクラメン/夕薙 KADOKAWA 2025年06月10日
とある事件をきっかけにニーナと一つ屋根の下で暮らすことになったイツキ。しかし平穏な日常は突如変貌して、ニーナの父を殺した仇敵に立ち向かう第4弾。二年生に進級して友達も増え、ニーナとともに魔法の練習を重ねたり、デートをしたりと充実した毎日を送るイツキ。一方で魔物が父やニーナの母が各地を飛び回る日々を送る状況で、魔物討伐任務を初めて受けたイツキが知る「劇団員」の存在。そこからニーナの父を殺した仇敵でもある第六階位に目を付けられ、明らかになっていく眼の前で父を殺されてしまった彼女のトラウマや自らの前世の深い闇はなかなか重いものがありましたけど、それでも2人で一緒に向き合い、乗り越えていったその結末はなかなか良かったですね。
楽園ノイズ7 (電撃文庫)
ライヴ続きだった一学期も終わり、夏を迎えてレコーディングに備えて合宿をしようという話が持ち上がり、みんなで水着を買いにいく第7弾。水着売り場で男が混じるのは恥ずかしいと言ったらなぜか女装させられたり、海辺の別荘はスタジオ付きでひたすら曲作りの日々を送ったり。相変わらず真琴を慕う彼女たちとの愛が感じられる掛け合いがとても楽しくて、そんなヒロインたちに振り回される海でのやり取りもなかなか良かったですけど、それでいて相変わらず音楽のことで頭が一杯で、バンド活動の方も一見順調に見える状況の中、1人ズレを抱える真琴とそれを薄々感じている周囲という構図の中で、彼女たちとの今後がどうなるのか気になるところですね…。
男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Side 2. 夏目咲良の青春疑似録 (電撃文庫)
七菜 なな/Parum KADOKAWA 2025年06月10日
狂犬と呼ばれ孤独だった夏目咲良。それが高校2年生の春、放課後に1冊のノートを拾ったことをきっかけに、変わり始める兄姉世代の高校時代たちを咲良視点で描く番外編。学校では猫を被っている椎葉弥太郎や、頑固で思春期を拗らせている犬塚雲雀、穏やかだが底が知れない真木島秀和といった個性的なメンバーが集う演劇部の活動に意図せず巻き込まれていく咲良が、雲雀の想い人・榎本紅葉の勧誘に協力する展開で、らしさを垣間見せる紅葉に対する雲雀の拙い様子や、咲良とやりとりを重ねていくうちに、猫を被ることを止めてらしさを隠さなくなっていく弥太郎が印象的でしたが、そこにはこの1冊単体でも楽しめる彼らの青春があって、彼女たちの今に至る経緯が伺えてなかなか面白かったですね。
北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし 2 (PASH!文庫)
江本 マシメサ/あかねこ 主婦と生活社 2025年06月06日頃
極寒の地でのお試し婚にもようやく慣れてきたリツとジークの元に、待ちきれなくなったリツの祖父アーダルベルトが突然訪れてくる第2弾。フィッシングにベリー摘み、そしてキノコ狩りなど、厳しい自然の中で自給自足しながら、一日中太陽が沈まない夏を一緒に満喫していた2人。相手を好ましく思う気持ちが着実に育まれてきているのが伺えて、けれど周囲からしたらなかなか距離が縮まらない2人にやきもきしてしまう構図でしたけど、ようやくどうにか一歩前進できて良かったです。今回はもう一組の異文化カップル、アイナとエメリヒの恋の行方も描かれていて、もどかしい展開からの良かったを十分に満喫できました。また番外編も充実していて大満足です。
サイレント・ウィッチ IX -extra- 沈黙の魔女の短編集 (カドカワBOOKS)
依空 まつり/藤実 なんな KADOKAWA 2025年06月10日頃
7巻までの特典SSや期間限定フェアの特典、有償特典、書き下ろし作品3編を始め、10巻へと繋がる新規収録エピソードを収録した短編集第2弾。冒頭30ページの登場人物のフルカラーデザイン資料に、モニカの養母ヒルダとのエピソード、編入前後から学園祭前後、冬休み、新年、最高審議会前後の出来事が描かれた生徒会や友人たちとのかけがえのないショートストーリー集に加えて、サザンドールに引っ越してきたばかりのモニカの様子や、モニカとアイザックとのエピソードなどもあって、テンパると数式で解決しようとするモニカと周囲とのやりとりや、発想がどこかおかしいネロやリンもいい感じに存在感を見せてくれてなかなか楽しかったです。
図書館の天才少女 3 ~本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!~ (カドカワBOOKS)
蒼井 美紗/緋原ヨウ KADOKAWA 2025年06月10日頃
王国の浄化を終え世界を救う旅を始めたハルカ。聖女送還と瘴気溜まり対策の研究を続けるマルティナの下に、異国の古代遺跡の情報が届く第2弾。手がかりになる可能性はあるものの、絶対に迷い奥にたどり着けないという古代遺跡の謎の解明のため、知識と記憶力を買われ調査団の一員に抜擢され、遺跡のあるハーディ王国へと赴いたマルティナ。ハーディ王国までの道中や調査メンバーとの軋轢だったり、思わぬ動きから直面した危機もありましたけが、それでも知識を活かして機を逃さずに状況を打開していくマルティナの存在が効いていて、相変わらず本に執着する様子は微笑ましかったですが、過去の真相や謎を解き明かしていく展開はなかなか良かったですね。
私、蜘蛛なモンスターをテイムしたので、スパイダーシルクで裁縫を頑張ります!2 (ドラゴンノベルス)
あきさけ/タムラ ヨウ KADOKAWA 2025年06月05日頃
魔法裁縫士として腕を磨き、侯爵の援助もありついに自分の店『蜘蛛の綿雲』を開店させたリリィ。オーダーメイドから大量生産まで様々な要望に応えていく第2弾。品質のよさに加えて、姿見を用いての試着などの斬新なサービスが口コミで評判になってゆくリリィのお店。目の敵にされていた冒険者ギルドマスターが不正が正されたことで風向きも変わり、商品開発や大量生産を行ったり、テイマーギルドから新人育成の依頼を引き受けたり、孤児院にも関わり始めて、良心的な商品供給を心がけて困った人を迷わず助けるリリィは着実に味方を増やしていますね。周囲の意見も聞きながら試行錯誤して、自分の力を上手く活かす方向を考えていくこれからの展開が楽しみになってきました。