今回は3月富士見ファンタジア文庫の新刊感想まとめです。内訳は富士見ファンタジア文庫の新作5点、続巻2点の計7点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
魔王は扇子で蕎麦を食う (富士見ファンタジア文庫)
春風亭 吉好/絵葉 ましろ/落語芸術協会 KADOKAWA 2025年03月19日
天才的な落語の才能を持ちながらも、とあるトラウマを抱えて伸び悩む前座の高校生・浮乃家陽太。突如彼の前に現れた魔王が同じ師匠の妹弟子として一緒に前座修行を始める落語小説。先代魔王で落語が好きな彼女の母マ魔王により、落語を修行するよう命じられた魔王。八子を名乗ることになり、天真爛漫で常識知らずな妹弟子に最初は振り回されていたものの、だんだんと天賦の能力を開花させてゆく中で密かに彼女なりに頑張っていた八子と、お互いに刺激しあえる関係になっていって、陽太のトラウマの原因も明らかにしていきながら、それを乗り越えて成長してみせた覚悟も良かったですね。そこに新たな波乱を巻き起こしそうな新キャラの登場もあって、これからの展開が楽しみです。
天羽ルイナの空想遊戯 彼女の作った鬼畜ゲームを、僕が攻略するまで (富士見ファンタジア文庫)
【第37回ファンタジア大賞＜金賞＞＜羊太郎特別賞＞受賞】
ショーン 田中/輝竜 司 KADOKAWA 2025年03月19日
美少女なのに自己紹介で他者の不幸を好んでいると宣ったバッドエンド至上主義者の天羽ルイナ。彼女が作ったTRPGのゲームシナリオに同級生の高瀬が挑むゲームファンタジー。ずば抜けた力を持つ、不死の存在・英雄ですら救えない、滅ぼされるために存在する絶望の世界バリスノーン。彼女が作り上げた不幸な世界を、物語はハッピーエンドであるべきだと考えて、魔導英雄となって多くの国を滅ぼしてきた夜天竜ヴリガストに挑む高瀬。希望が見えない絶望的な状況ではあるものの、彼女が作り上げたゲームなら必ずどこかに活路があるはずと信じて、第三者的観察者ポジションの友人・有栖川も絡めながら、主義が正反対の2人がお互いの思考を読み合いながら駆け引きを繰り広げていく展開はなかなか面白かったです。
ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする (富士見ファンタジア文庫)
烏丸 英/瑠川 ねぎ KADOKAWA 2025年03月19日
クラスメイトの修羅場に偶然居合わせた尾上雄介。浮気を隠していたクズ彼氏に傷付く七瀬ひよりを放っておけず、思わず声をかける青春ラブコメ。すっかり自信を失い自虐的に落ち込んでいたひよりを励ましたことをきっかけに、彼女も笑顔を取り戻して少しずつ仲良くなっていく雄介。お礼として雄介の家で家族と一緒にご飯を食べることになったり、2人きりでデートに行ったり、期せずしてお泊りすることになったりと楽しい日々を過ごす中で、ひよりを大切に思う雄介の気持ちが感じられた分、元カレのクズっぷりが際立ちましたね…。お互いに相手を想う気持ちを知って焦らず仲良くなっていく、身長差30cm以上の凸凹カップルな2人のこれからが楽しみです。
仮面の黒騎士。正体バレたのでもう学園でも無双する (富士見ファンタジア文庫)
楓原 こうた/へいろー KADOKAWA 2025年03月19日
侯爵家の恥さらしと呼ばれながら、人々の窮地を救う『黒騎士』として暗躍していた事実がバレてしまったアデル。彼がほとぼりが冷めるまで学園に入学する学園ファンタジー。由緒正しい騎士家系に生まれながら、以前助けてから彼のメイドになっている貴族令嬢エレシアに甘やかされる自堕落な生活を夢見ていたはずなのに、黒騎士の正体がバレたことで計算が狂い、猶予を得るためにエレシアと共に学園に入学するアデル。けれど力の加減が分からず逆に学園でも目立ってしまい、困った女の子たちを見捨てられないアデルは、彼を慕う王女ルナの王位継承権に巻き込まれていく中で、助けを求める声に応えて年上の強敵相手でも恐れず立ち向かい、自らの力で守りきってみせる熱い展開はなかなか良かったです。
アフタヌーンティーはいかがですか? 私と先輩の、不純で一途なふたり暮らし (富士見ファンタジア文庫)
桃田 ロウ/塩こうじ KADOKAWA 2025年03月19日
大学在学中、女たらしとして有名な先輩一ノ瀬結衣の家に居候することになった青沢かなた。「恋愛対象外」と告げた結衣との変わってゆく関係を描いた物語。嘘つきで意地悪な同居人の結衣が、誰とどんな夜を過ごそうと自分には関係ない。最初はそう思っていたはずなのに、毎日自分だけに向けられる彼女の優しさに、もっと甘やかされたいと思うようになり、絆されていることを自覚しながらも、かなたを特別だと言う結衣のことをだんだんを意識してゆく展開で、一緒にいない時間を痛感したことで寄り添える喜びを自覚して、相手の人間関係を気にせずにはいられなくなった2人が、これからどんな関係になっていくのか、そして垣間見えてきたそれぞれの事情も気になるところですね。
経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。その10 (富士見ファンタジア文庫)
長岡 マキ子/magako KADOKAWA 2025年03月19日
最初は罰ゲームがきっかけでお付き合いすることになって、一緒に初めての経験をいっぱい重ねていった2人が、ついに大団円を迎える第10弾。日本を離れて海外で編集者として働き始めて3ヶ月、ついに月愛と結婚式を挙げるために帰国した龍斗。久しぶりに再会した2人の甘い日々や、仲間たちの近況も描かれる中で、思わぬ流れから大きな決断をする海愛。周囲の人間関係にもいろいろ激動の展開もあって、仲睦まじいのになかなか前に進まない2人の関係にもどかしさを感じたこともありましたけど、紆余曲折を経ながらなんだかんだでみんな収まるべきところに収まりましたね。何より2人の幸せそうな結婚式を挙げるところまでちゃんと読めて完結を迎えられて良かったです。
ロクでなし魔術講師と福音後記 (富士見ファンタジア文庫)
羊太郎/三嶋 くろね KADOKAWA 2025年03月19日
《無垢なる闇》そして禁忌教典をめぐる戦いを乗り越えて皆の下に帰ってきたグレン。彼がその後どんな未来を歩むことになったのか、様々な可能性に分岐した公式if後日譚。ナムルスと共に無限の世界を渡り歩いたり、帝国軍の大元帥ですっかり甘えん坊になってしまったイヴに寄り添ったり、リィエルと家族になったり、ルミアとの婚約する未来だったり、魔導考古学者となったシスティーナと道を共にしたり、セリカについに想いを告げる未来、そして彼女との出会い。これだけ魅力的でグレンを好きなヒロインたちがたくさん出てくれば、最終的にグレンが誰と結ばれるのかはやはり気になるわけで、どれもまた彼さえ望めば実現しうる未来の可能性を存分に堪能できる後日談が読めて良かったです。
