今回は8月の角川スニーカー文庫・HJ文庫・PASH!文庫・KADOKAWA新文芸・オーバーラップノベルスｆ・PASH!ブックス・Kラノベブックスfの新刊感想まとめです。内訳は角川スニーカー文庫が新作2点、続刊3点、HJ文庫が続刊3点、PASH!文庫が新作1点、KADOKAWA新文芸が続刊1点、新作2点、オーバーラップノベルスｆが新作1点、PASH!ブックスが続刊1点、Kラノベブックスfが新作1点の計15点です。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
異世界転生事件録 人見知り令嬢はいかにして事件を解決したか? (角川スニーカー文庫)
鏑木 ハルカ/フルーツパンチ KADOKAWA 2023年08月01日
新人の暴走をかばって命を落としたベテラン刑事・竜胆が、異世界の命を狙われた侯爵令嬢セラに転生して、自らを取り巻く事件の解決に挑む転生ファンタジー。侯爵令嬢という慣れぬ状況にいきなり放り込まれたことに戸惑いながら、侍女セシルの手助けも得て新生活を送り始めた竜胆。調べるうちに自身の昏睡の裏に事件の影を感じて、セシルを助手に錬金術師のライカに調査道具を製作してもらったりしながら、動きやすいように髪を切ったり体力作りをするセラ。刑事の経験を活かして犯人の調査を開始する物語の構図自体は、キーマンとなる登場人物もあまり多くないことから、わりとシンプルな印象でしたけど、ベテラン刑事が侯爵令嬢に転生したらどうなるか、そんなギャップを楽しめました。
恋愛相談役の親友♀に、告白されたことを伝えたら (角川スニーカー文庫)
離婚した両親のようになりたくないという思いから、恋に慎重な高校生・城戸彰吾。ある日、義妹・ゆいなと幼馴染・梓に告白され、親友にしてクラスのご意見番・真優に恋愛相談する青春ラブコメ。密かに彰吾のことを想いながらも、頼れる親友として二人の想いにどう応えるべきか真摯にアドバイスする真優。一方、ゆいなと梓の恋心をむしろ燃え上がらせてしまいドツボにハマってしまう彰吾。義妹や幼馴染は普段からあれだけぐいぐい行っても落とせなかったのかと決定力不足を感じましたけど、そんな状況の急変に振り回されて戸惑う彰吾が、今の自分にしっかりと寄り添ってくれた彼女をむしろ意識してゆく構図には納得感がありました。これから物語がどう動いていくのか続刊に期待。
喋らない来栖さん、心の中はスキでいっぱい。3 (角川スニーカー文庫)
律を取り巻く恋の気配に焦りを覚えたことを自覚する、生徒会役員を務める自称完璧美人こと雛森さくら。律を意識するヒロインたちが少しずつ自らの想いを自覚してゆく第三弾。いつの間にか律と距離を縮めて下の名前で呼び合うようになっていた涼音。彼を意識して恩返しがしたい、元気づけたいとますます距離が近くなってゆく来栖さん。それなのに他の男子なら恋に落ちる計算尽くな仕草も、律にはやっぱり通用しなくてヤキモキするさくらという構図を作り上げながら、姉である望月先生やヒロインたちとさくらの実家の旅館に泊まる旅行を舞台に、キャラたちのさらなる掘り下げが進む展開でしたけど、想いを自覚したヒロインたちに、彼女たちのお陰で変わりつつある律と関係性が変化しつつある今後の展開が楽しみです。
もしも明日、この世界が終わるとしたら2 (角川スニーカー文庫)
世界が終わりを迎えるまでおよそ一年。学園の襲撃やユーリの暴走、数々の困難を乗り越えついにユーリへ想いを伝えた空。限られた刻の中で少しずつ距離を縮める二人の前に、吸血鬼の少女クリスが現れる第二弾。積極的に空へ好意を伝えるクリスに、次第に焦りを募らせながら恋することの意味を知ってゆくユーリ。クリスが空に執着する理由と、彼らの前に現れたもう一人の少女が抱えている事情。英雄を巡る過去がまたひとつ明らかになって、クリスたちが直面している状況もまた複雑で切なくなりましたけど、大切な人のために覚悟を決めて、密かに何とかしようとするすれ違いを乗り越えて、しっかりと向き合うことができたその結末には救われる思いでした。またいつか二人の物語を読んでみたいです。
なーんにもできないギャルが唯一できるコト2 (角川スニーカー文庫)
絵を描くこと以外なーんにもできない、推しの神絵師で義妹ギャルの一ノ瀬涼風。彼女と同居する新太がマネージャーになってほしいというファン冥利につきる最高のお願い事をされてしまう第二弾。朝も当然のように起きられず、一人では学校へ行けそうにない涼風をお世話する新太。絵師案件が破綻している彼女のマネージャーとしてもサポートするようになってゆく中、一緒に住む二人の秘密を握って、密かに彼を脅迫する地雷系ギャル安城唯もなかなか掴みどころのないキャラでしたけど、涼風も肝心なところではこれまでの印象が変わる意外な一面を垣間見せてくれたりもして、彼女たちを巡る今後の展開がますます楽しみになってきました。
精霊幻想記24.闇の聖火 (HJ文庫)
ソラと共に聖都トネリコで迷宮探索や情報収集を続けるリオ。膨大な魔物との戦闘を終え地上へと戻った二人に、白い法衣を纏った少女エルが声を掛けてくる第二十四弾。レイスと裏で繋がり、リオたちと露骨に距離を詰めてくる少女エルの目的。一方、ガルアーク王城より失踪して、娼館街へと迷い込んだ勇者・貴久と邂逅した娼婦の少女ジュリア。そしてセリアが新しく身に着けた古代魔法。綺麗事ではどうにもならない地獄に直面した貴久はこのまま闇落ちしてしまうのか、暗躍するレイス相手に後手に回りがちな状況で、異変が起きた美春やリオたちにこれから何が起きるのかも気になるところではあります。
魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 17 (HJ文庫)
手島史詞/COMTA ホビージャパン 2023年08月01日頃
聖剣を破壊し、そこに封印された天使を解放するべく調査を開始したザガン。さらには暗躍するマルコシアス一派や魔族の出現など様々な難題を抱える中、ザガンは新たな一手を打つ第十七弾。サガンの計画に基づいて世界を激変させてしまい、渦中のシャルをすっかりポンコツな人にしてしまったゴメリの恐るべき一手。そして現存する最古の<魔王>フォルネウスとの交渉役として派遣されたシャックスと黒花。いろいろ気になる要素も出てきていますが、今回はある意味新婚旅行的要素もあった最後まで諦めない二人の激闘が引き寄せた結末には救われる思いでしたけど、新たに魔王の刻印を手に入れた人物がこれからどう動くのか気になるところではあります。
くたびれサラリーマンな俺、7年ぶりに再会した美少女JKと同棲を始める 2 (HJ文庫)
上村夏樹/Parum ホビージャパン 2023年08月01日頃
幼い頃から一途に想いを寄せてくれていた葵との同棲生活を経て、彼女のことを一人の女性として改めて好きになった雄也。可愛すぎる美少女JKとの歳の差同棲ラブコメ第二弾。正式な婚約者同士となり、いい意味で遠慮がなくなり素直に甘えられるようになってきた葵。一緒に居るだけで幸せを感じる一方、ちゃんと恋人らしいこともしたくてクリスマスデートを計画する雄也。彼の職場が比較的ホワイトなSEということもあり、葵の友人・瑠美と彼氏とのダブルデートだったり、健全に甘い関係を積み重ねてゆく二人の仲は順調でしたけど、一方で同志だったはずの飯塚にまで恋人ができてしまった不憫な上司・千鶴さんは、頼れるいい人だけにいつか報われて欲しいですね。
FPSゲームのコーチを引き受けたら依頼主が人気VTuberの美少女だった 1 (PASH!文庫)
すかいふぁーむ/みすみ 主婦と生活社 2023年08月04日頃
古いパソコンに見知らぬ連絡先からメールが届いていることに気ついた蒼井怜。コンタクトを取った人気VTuberの火鳥アリサから、FPSのゲーム大会出場に向けてコーチを依頼される青春小説。自身もサミクロの伝説のプレイヤーだった頃のゲーム勘を取り戻すために密かにやり込みながら、アリサやチームメイトのセツナ、メグたちを鍛えるうちに慕われてゆく怜。ヒロインたちのVTuber要素自体は今巻ではあまり活きなかったですけど、昔を思い起こさせる卓越したプレイを垣間見せることでかつての仲間や彼を目指してサミクロを始めたヒロインたちを刺激して、彼自身もまた彼女たちに影響を受けて熱い想いを取り戻してゆく展開はなかなか面白かったですね。
祝、新衣装お披露目。神坂怜としてVTuberデビューして早4ヶ月。そんなある日『あんだーらいぶ』から二人の新人がデビューする第三弾。mikuriママからもらった新衣装をお披露目、あんだーらいぶの男子3人で出場したFPS大会、男女ユニットの新人二人を影から支えようとする神坂。訓練場で特訓しまくってチートを疑われたり、気がつくと裏方作業をしている神坂っぷりが今回も炸裂していて、彼の思考や行動パターンに周囲も慣れてきたせいか、多少のことでは炎上しなくなってきた感もありますが、相変わらずのシスコンぶりを見せつけて、どんどん増えてゆく彼を慕っているヒロインたちを妹のように扱う神坂の人間関係がこれからどうなるのかも気になるところではあります。
彼女は回復魔法への適性を見出され、生まれ育った孤児院への資金援助のため軍に志願したトウリ・ノエル二等衛生兵。彼女の戦場日記を通じて描かれる過酷な戦場の物語。かつてFPSが得意だった前世から転生して性別も変わった彼女が、最も過酷な戦闘が繰り広げられている「西部戦線」の突撃部隊へと配属され、戦線のエース・ガーバック小隊長の専属衛生兵となり、絶対に彼を死なせないようにする任務を与えられる展開で、ゲームとは何もかも違う過酷な戦場に放り込まれて共に戦う登場人物たちの生き様が魅力的に描かれていましたが、戦い抜くために懸命に足掻く泥沼の展開はどこまでも壮絶でしたね…。これからどんな地獄の展開が待っているのか、楽しみな恐ろしいようなそんな気持ちです（苦笑）
琴子/藤 未都也 KADOKAWA 2023年08月04日頃
年々魔力が減り続け「空っぽ聖女」と虐げられていたティアナ。呪われた帝国の皇妃として送り出された途中で襲われ、帝国の大聖女・エルセだった前世を思い出す転生ファンタジー。辿り着いた帝国で皇妃として迎えてくれた、眉目秀麗でかつての弟子だった皇帝フェリクス。最初は契約結婚と割り切りながらも優しかった彼が、一緒に呪いの浄化を目指す中で彼女に忘れられない想いの人の面影を感じるようになって、でもやはりこういうのは真相がバレてからが楽しいですよね（苦笑）少しずついい感じになってきた二人の今後が楽しみですが、呪いの仕組みや元凶と思われるシルヴィアの思惑も気になるところではあります。
生贄姫の幸福 1 ～孤独な贄の少女は、魔物の王の花嫁となる～ (オーバーラップノベルスｆ)
雨咲はな/榊 空也 オーバーラップ 2023年07月25日
五十年前の誓約により、幼い頃から生贄として身を捧げて死ぬために生きてきた王国の第二王女リーディア。ついに迎えた運命の日、魔物の王ルイが来訪するファンタジー。花嫁を迎えに来たつもりだったのに、これまで日々精進してきて、美味しく食べてもらう気満々のリーディアとの認識のズレがあまりにも大きい状況に、頭を抱えて滞在する期間の延長を提案するルイ。彼女に様々なことを経験させて少しずつその世界を広げながら、明らかにしてゆく五十年前の真実。一方でこれまで彼女を見捨てて歩み寄ろうともせず、ただ不安を募らせてゆく国王たちは浅はかだな…と思ってしまう結末でしたけど、彼女はルイと幸せを見出せて良かったです。
元暗殺者、転生して貴族の令嬢になりました。 2 (PASH!ブックス)
スラム育ちの暗殺者からの転生者で公爵令嬢セレナが、今度はその頭脳と戦闘能力を見込まれて、第一王子のエヴァンと共に隣国からの留学生三人組の世話係を任される第二弾。不始末の決着を期待してアストラに丸投げしてきた隣国リエンブール。腹違いの兄弟で、王太子を虐げる妾腹双子兄妹がその生命を狙う厄介な構図に巻き込まれたセレナが、王太子シャガードの護衛につく中で彼を鍛え、王太子も覚悟を決めてゆく展開で、身の程知らずな兄妹たち相手に容赦しない相変わらずなセレナと周囲の関係性が面白かったですけど、面倒な騒動も上手く落ち着くべきところに落ち着かせましたかね。暗部に堕ちた彼女がどういう形で再登場するのか、続刊も期待しています。
悪役聖女のやり直し 冤罪で処刑された聖女は推しの英雄を救うために我慢をやめます (Kラノベブックスf)
山夜 みい/woonak 講談社 2023年08月02日
聖女として長年頑張ったのに、妹にハメられ冤罪で処刑されたローズ。目覚めると二年前の秋に戻ったことに気づき、我慢を止めて推し活に邁進するファンタジー。魔族と最前線で戦う推しの元に向かうため、わざと失態を犯して最前線へ追放されるローズ。死神と呼ばれるギルに認めさせて小隊に居場所を得た彼女が、彼をお世話して死なないようにフォローして、彼が孤立しないよう仲間を増やして、裏切り者をどうにかすべく手を打って、推しの悲劇を回避するために奔走するローズが健気でしたけど、最後まで諦めずに本当の幸せを手繰り寄せみせた、ややご都合主義かなとは感じつつもこの物語らしい素敵な結末だったと思いました。
