GWも半ばを過ぎましたが、ここからおすすめできるものは何かと考えて、しばらくラノベ中心のまとめ記事が続いていたので、今回はキャラ文芸の単巻作品のまとめを作ることにしました。人気作品の著者が書いた単巻を含めた25選、どれも自信を持っておすすめできる作品です。関連作品やその著者さんのおすすめ作品も併記しているので、気になる本があったらぜひ読んでみて下さい。
※各作品タイトルのリンクはBookWalkerページに飛びます。
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1.六花城の嘘つきな客人 (集英社オレンジ文庫)
15歳の秋につらい失恋をして以来、いくつもの浮名を流し王都一の色男と噂され、賭けで借金を作って勘当されたりという生活を送っていたシリル。そんな彼が割り切った遊び相手である伯爵夫人から誘われ、一人娘の結婚相手を選ぶために貴公子たちを招待している北の大領主ネージュ家の六花城に同行する物語。借金をして父親に実家を追い出され居場所がなくなったシリルと、男装して男として振る舞うブランシュの運命の出会い。期せずして知ってしまういくつかの秘めた想い、そして友としてブランシュと意気投合するシリルがいて、真摯に向き合おうとしてすれ違う皮肉な展開は何とも切なかったですけど、変わろうとするシリルの成長、そして変わらなかった思いの先にあった結末がとても素敵な物語でした。
【著者さんのおすすめ作品】
威風堂々惡女 (集英社オレンジ文庫)
2.君を描けば嘘になる (角川文庫)
綾崎 隼 KADOKAWA 2020年07月16日
寝食も忘れてアトリエで感情の赴くまま創作に打ち込む毎日だった瀧本灯子が出会った、自分にはない技術を持つ南條遥都という少年の存在。お互いに認め合う二人の若き天才の喜びと絶望の物語。絵を描くこと以外の才能が壊滅的だった灯子と、そんな彼女の指針となったもう一人の天才・遥都。そんな二人のありようを影響を受けた周囲の視点からも浮き彫りにしつつ、良くも悪くも直情的な灯子に対して、断片的にしか描かれない不器用な遥都の積み重ねてきた想いが垣間見える結末は、ほんと素直じゃないなあと苦笑いしつつもとても良かったと思いました。
【著者さんのおすすめ作品】
3.クローゼット (新潮文庫)
男なのに女性服が好きというだけで傷つけられた過去を持つ芳と、幼い頃のある事件のせいで男性恐怖症を抱えていた纏子。十八世紀のコルセットやレース、バレンシアガのコートにディオールのドレスまで、約一万点が眠る服飾美術館を舞台に洋服の傷みと心の傷みにそっと寄り添うお仕事小説。芳が働くデパートでの特別展示を機に出会った服飾美術館の洋服補修士・纏子。芳は機会あって訪れた服飾美術館でめくるめく服の奥深い世界に魅せられて、美術館の中で働く人たちの雰囲気もなかなか興味深くて、それぞれの過去が繋がってしっかりと向き合い、服だけでなく心もまた少しずつ補修されて、新たな一歩踏み出す展開にはぐっと来るものがありました。
4.コミュ障探偵の地味すぎる事件簿 (角川文庫)
コミュ障探偵の地味すぎる事件簿(1)
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似鳥 鶏 KADOKAWA 2021年12月21日
入学早々友達づくりに乗り遅れていたことに気づいて愕然とする房総大学の新入生・藤村京。教室に残された高級な傘に気づき、その持ち主を推理し始めるコミュ障探偵ミステリ。教室に傘を忘れた人は誰か、服屋で消えた同級生の謎、カラオケで酒を飲ませた犯人、祭りの中での盗難事件、元喫煙室で起きた冤罪事件の真相。いろいろ考え過ぎて話せなくなる、動けなくなってしまう藤村だからこそ、その推理力には眼を見張るものがあって、少しずつ増えてゆくかけがえのない友人たちを助けるため、遭遇した謎を推理してゆく彼のありようはとても好ましかったです。
【著者さんのおすすめ作品】
彼女の色に届くまで (角川文庫)
5.僕が僕をやめる日 (メディアワークス文庫)
困窮し生きることに絶望した立井潤貴。そんな彼を救った高木健介の代わりに大学に通うようになった二年後、高木が突如失踪するミステリ。作家でもある高木との充実した共同生活、そして失踪から始まる突然の暗転。高木として殺人容疑をかけられ窮地に追い込まれた立井が、残された数少ない手掛かりと作品をもとに高木の過去を知る人に会い、その行方を追う過程で知ってゆく意外な繋がりと高木の壮絶な過去。彼らが置かれた環境の過酷さと、何度も絶望感を突き付けられる彼らの生々しい感情描写はインパクトがあって、繋がってゆく複雑な因縁とその結末に至るまでを描く著者の熱い想いで読ませる物語でした。
【著者さんのおすすめ作品】
犯人は僕だけが知っている (メディアワークス文庫)
監獄に生きる君たちへ (メディアワークス文庫)
6.すみれ荘ファミリア (講談社タイガ)
凪良 ゆう 講談社 2021年05月14日
病弱で気心知れた入居者たちと慎ましやかな日々を送る、下宿すみれ荘の管理人・一悟。そこに、芥と名乗る小説家が引っ越してきてから、周囲の人々の秘密と思わぬ一面が露わになっていく家族の物語。幼いころに生き別れた弟のようだが、なぜか正体を明かさない芥。月の半分は苦しい日々を送る美寿々、テレビ番組制作会社で働く隼人の複雑な心情、とそんな感じですみれ荘の住人たちのエピソードが続くのかと思っていたら、思ってもみなかった衝撃の展開が待っていて、ぱっと見た目ではわからないような執着を突きつけられましたけど、だからこそ淡々と関係を再構築していく兄弟のありようがとても印象に残りました。
【著者さんのおすすめ作品】
流浪の月(創元文芸文庫)
神さまのビオトープ(講談社タイガ)
7.きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)
きょうの日はさようなら
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一穂ミチ 集英社 2016年01月20日頃
2025年の夏休み。双子の高校生・明日子と日々人は突然いとことの同居を父から告げられ、やって来た今日子が実は長い眠りから目覚めた三十年前の女子高生だったという物語。時代のギャップに戸惑いながら徐々に双子と打ち解けてゆく今日子の存在は、バラバラになっていた家族を繋ぐきっかけにもなって、過去との繋がりを感じるがゆえにもう取り戻せないことを痛感する彼女と、どうにもならない現実に直面した双子の対照的な選択、昔の想い人の回想がとても印象に残りました。懐かしい気持ちと切ない気持ちが入り混じる素敵なひと夏の物語ですね。
【著者さんのおすすめ作品】
8.処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな (新潮文庫nex)
処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな
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葵 遼太 新潮社 2020年05月28日頃
留年して二回目の高校三年生となった佐藤晃に話しかけてきた同級生・白波瀬巳緒。それをきっかけに居場所がないと思っていた学校で周囲に輪ができて、かけがえのないものを取り戻してゆく喪失と再生の青春小説。留年の経緯で明らかになってゆく深い愛には驚かされましたが、あっけらかんとしたギャルの白波瀬巳緒、綺麗な声が耳に残る少女・御堂楓、そしてアニメ好きな和久井と出会い、大切な友人・藤田たちにも支えられながら、みんなで結成したバンドを通して熱い想いをぶつけ合い、未来に希望を見出してゆく結末にはぐっと来るものがありました。
9.恋になるまで、あと1センチ (宝島社文庫)
恋になるまで、あと1センチ
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六つ花 えいこ 宝島社 2022年03月04日
階段から天使のように落ちてきた篠先輩を助けた高校1年生の楢崎颯太。それからなぜか颯太は篠先輩に懐かれるようになり、彼女に振り回されながら心惹かれていく青春小説。助けてもらったことをきっかけに、ぐいぐいアプローチしてくる篠先輩。いつの間にか心の距離が近づき、互いが想い合うようになってゆく二人の関係が丁寧に描かれていて、さりげなく外堀を埋めてゆく抜け目なさはあるのに、どこか危なっかしい篠先輩がとても可愛くて、そんな彼女が気になって放っておけない颯太とのもどかしくてとても甘い関係にはぐっと来るものがありました。
【著者さんのおすすめ作品】
どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。(Mノベルスf)
死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから(※ただし好感度はゼロ)
10.総務課の播上君のお弁当 ひとくちもらえますか? (宝島社文庫)
総務課の播上君のお弁当 ひとくちもらえますか?
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森崎 緩 宝島社 2021年05月11日
札幌の企業に就職し新生活をスタートさせた料理男子・播上。料理好きで毎日弁当を持参する播上が、ある日弁当袋を手に暗い顔の同期の清水に気づく物語。仕事が上手く行かず落ち込んでいた清水に、播上がお弁当を少しおすそ分けしたことから始まった二人のメシ友関係。その距離感を同僚や先輩に勘ぐられながら、波乱の会社員生活の中で積み重ねてゆく、お互いに励まし合い癒やされる関係がとてもいい感じで、想いを自覚するまでに時間が掛かり過ぎな感もありましたけど、長らく友情を育んできた先にあった二人の結末にはぐっと来るものがありました。
【著者さんのおすすめ作品】
総務課の渋澤君のお弁当 ひとくち召し上がれ (宝島社文庫)
隣の席の佐藤さん(一二三文庫)
11.魔獣医とわたし 灰の世界に緑の言ノ葉 (富士見L文庫)
魔獣医とわたし 灰の世界に緑の言ノ葉
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三角 くるみ/切符 KADOKAWA 2021年12月15日頃
19世紀フランスの片田舎で親に捨てられ死にかけていた少女ニニの前に現れ「僕と契約をするか」と問いかける美しい悪魔・ダンタリオン。救われる代わりに彼と契約し、魔界で使い魔になることを選ぶファンタジー。甘い物が好きで思慮深い魔獣専門の獣医ダンタリオンに思いがけず手厚く庇護されて、少しずつ心の凍った部分が溶け始めるニニ。そんな彼女が出会うカーバンクルのデオ、年老いたワイバーン、失態を犯したケルベロス、そしてフェニックスと探していた姉・ネリとの再会。彼のことを知って使い魔として過ごすうちに育まれてゆく温かい絆があって、そんな彼女の選択がとても素敵な物語でした。
【著者さんのおすすめ作品】
香港シェヘラザード(富士見L文庫)
12.星辰の裔 (集英社オレンジ文庫)
男神と女神によって作られたという神話の島・十津島。薬師だった父の志を継ぎ、大陸からの先進知識が集まる町を目指して旅する少女アサが、その途中で馬賊と呼ぶ大陸からの侵略者・辰の奴婢狩りに遭い、捕まってしまった彼女が皇王の次男・季晨と運命の出会いを果たすファンタジー。宦官と勘違いされ皇女の側で働くアサが巻き込まれてゆく朝児に対する根強い差別と辰の後継者争い。薬師として生きたいと願うアサの願い、それを理解してくれる季晨との出会いと惹かれてゆく想いがあって、数奇な運命が激動の展開に繋がりましたけど、乗り越えた先の信念と想いの末に導き出された結末が印象的な物語でした。
【著者さんのおすすめ作品】
流転の貴妃 或いは塞外の女王 (集英社オレンジ文庫)
青の女公 (集英社オレンジ文庫)
13.室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君 (集英社文庫)
室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君
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阿部 暁子 集英社 2018年01月19日頃
南北朝時代。南朝帝の妹宮・透子が北朝に帰順した楠木正儀を連れ戻すべく、乳母と二人きり吉野から京へと乗り込む過程で、若き日の宿敵・足利義満や観阿弥・世阿弥親子と出会う時代小説。跳ねっ返りだった世間知らずな透子の無謀な行動の顛末と意外な出会い。周囲の言うことを鵜呑みにしていた透子が様々な人と出会い、真摯に語らうことで知ってゆく複雑な世界のありよう。自らの無力を痛感しつつも、無用な争いを回避するために奔走する彼女の成長があって、魅力的に描かれた実在の登場人物たちを絡めたテンポの良い展開はなかなか良かったですね。
【著者さんのおすすめ作品】
どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)
また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)
パラ・スター (集英社文庫)
14.木崎夫婦ものがたり 旦那さんのつくる毎日ご飯とお祝いのご馳走 (富士見L文庫)
木崎夫婦ものがたり 旦那さんのつくる毎日ご飯とお祝いのご馳走
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古池 ねじ/仲スナ子 KADOKAWA 2018年04月13日頃
著名な作家を父に持つ文筆家の島田ゆすらと、偶然出会った木崎修吾の電撃結婚。父の残した家で共同生活を始めた新米夫婦の日々が綴られてゆく物語。不安定だったゆすらと優しい木崎が作ってくれる美味しいものを食べたり、のんびりと寄り添うような夫婦生活。一方で作家としての自分のありように苦悩するゆすらのこと、作家だった父やふらりと家を出た弟の存在だったり、複雑な想いを抱く幼馴染・崇の存在もあったり、もしかしたらの可能性に切なくなりつつも、夫婦として作家として生きてゆくことにきちんと前向きになれた結末にはぐっとくるものがありました。
【著者さんのおすすめ作品】
京都烏丸のいつもの焼き菓子(富士見L文庫)
15.トオチカ (角川文庫)
崎谷はるひ KADOKAWA 2016年01月23日頃
親友と2人で鎌倉の小さなアクセサリー店「トオチカ」を営む里葎子。手痛い恋愛を乗り越えていたと思っていた彼女がバイヤーの千正と出会い、心揺さぶられてゆく不器用な大人の恋の物語。会えば行動の一つ一つが気になって苛立つ里葎子と、なぜかそんな彼女の地雷を踏みまくる千正。優しくされたり雑貨の趣味が似ていても素直になれず、距離感が分からなくなったり言葉の選択を間違えてしまう不器用な関係が、とあるきっかけから戸惑いながらもいい感じにまとまっていって安心しました。巻末の短編もいい感じに幸せ感を補足していて良かったですね。
【著者さんのおすすめ作品】
あの日、あの駅で。 駅小説アンソロジー (集英社オレンジ文庫)
16.おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱 (講談社タイガ)
おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱
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オキシ タケヒコ 講談社 2017年02月21日頃
山中にある屋敷の座敷牢で出会った下半身不随の少女ツナ。怖い話を聞かせることを条件に週一回会うことを許されたミミズクが十年目に転機を迎える物語。育ての親や友人にもツナのことを隠し続けてきたミミズクこと瑞樹。かつて投稿した怪談記事が縁で多津音一と出会ったことにより徐々に明かされてゆくツナを巡るからくり。丁寧で繊細なことばによって恐怖が描かれる一方で、瑞樹がきちんと向き合ったことで明らかになった真実は思わぬ奇跡にも繋がっていて、どうにか折り合いをつけて迎えたその結末は、これまでの想いが報われたとても素敵なものに思えました。
【著者さんのおすすめ作品】
筺底のエルピス(ガガガ文庫)
17.ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)
ミウ -skeleton in the closet-
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乙野 四方字 講談社 2018年09月20日頃
就職を前にした何も変わらない灰色の日々。実家に戻り中学時代の卒業文集を開いた池境千弦が『母校のとある教室にいじめの告発ノートが隠されている』という気になる作文を発見し、元同級生のその後を追い始めた数日後、接触してきた別の元同級生が謎の死を遂げるミステリ。母校のどこかにある告発ノートを見つける為に、自殺した元同級生のSNSにログインしてアカウントを再開させた「ちっち」。その自殺の真相を探るうちに起きた転落死事件と、縁が繋がって再会したかつての同級生で作家のミユ、そして千弦だけが分かるように発信されていたミユからのメッセージ。新米編集者と作家による探偵役コンビが真相に迫るたびに意味合いが変わる構図の変化は鮮烈で、秘密を積み重ねてゆく二人が迎えた結末はとても印象的な物語でした。
【著者さんのおすすめ作品】
君を愛したひとりの僕へ(ハヤカワ文庫JA)
僕が愛したすべての君へ(ハヤカワ文庫JA)
アイの歌声を聴かせて(講談社タイガ)
18.死者と言葉を交わすなかれ (講談社タイガ)
死者と言葉を交わすなかれ
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森川 智喜 講談社 2020年10月15日
探偵・不狼煙(のろさず)さくらは箒山小竹との浮気調査中に、調査対象の突然死に遭遇。病死とされたものの仕掛けた盗聴器からは死者との会話が流れ出して、真相を追う二人が予想だにしない悪意に出会うミステリ。調査対象が突然死する直前に話していた、話し声が聞こえない相手は誰だったのか。これは自然死か、死者の呪いなのか…。旧知の警察官に事務所廃業の脅しをかけられるなか、不狼煙と箒山のダブル女子探偵を中心に、調査対象の妻や実家、贔屓のバーなどで聞き込みした中で見出す些細なヒント、そこから導き出されてゆく真相には唸らされましたが、だからこそ事件解決の裏に隠されていた驚愕の事実に、これまでの全てを覆された気分になりました。
19.放課後の嘘つきたち (ハヤカワ文庫JA)
酒井田 寛太郎 早川書房 2020年11月19日頃
幼馴染で同級生の白瀬麻琴に誘われ、部活連絡会を手伝うことになった英印高校ボクシング部の寡黙なエース・蔵元修が、周囲で起きるトラブルを解決してゆく連作青春ミステリ。カンニング疑惑のある演劇部、陸上部の幽霊騒動や映画研究会の不可解な作品改竄など、皮肉屋なもうひとりの特待生・御堂慎司も加えて、時には衝突しながらタイプの違う修と御堂の二人をメインに謎解きに挑む展開で、同時に人に言えない苦い過去が、彼らのありようにもそれぞれ暗い影を落としますが、それらを癒やす何とも皮肉な構図がなかなか効いていて、とても印象的な物語でした。
【著者さんのおすすめ作品】
ジャナ研の憂鬱な事件簿(ガガガ文庫)
20.コーチ! はげまし屋・立花ことりのクライアントファイル (講談社文庫)
コーチ! はげまし屋・立花ことりのクライアントファイル
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青木 祐子 講談社 2021年03月12日
流されるままに25年生きてきたことりの転職先「はげまし屋」。おんぼろマンションの一室にあるオンライン専門の人生相談所での奮闘記。身近には打ち明けられないひそかな悩みを抱える、いいね探しの派遣社員、白雪姫に恋したカサノバさん、小説家志望の実家住まいのアラサー女子、行動力あるちょっと変わったネットビジネス志望など、顧客との距離感が難しそうだなあと思いながら読んでましたけど、偶然見つけたこの仕事にいつの間にかのめり込んで、ひとつひとつに真摯に向き合っていくことりの姿に、読んでる自分も応援されている気がしました。
【著者さんのおすすめ作品】
これは経費で落ちません!(集英社オレンジ文庫)
派遣社員あすみの家計簿(小学館文庫キャラブン!)
21.螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)
螺旋時空のラビリンス
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辻村七子 集英社 2015年02月20日頃
時間遡行機が開発されタイムトラベルが実用化された21世紀後半。過去の美術品を盗み出す泥棒のルフが、至宝・インペリアルイースターエッグを盗んで19世紀パリに逃亡した幼馴染のフォースを連れ戻すために過去へ跳ぶ物語。取り戻すまでは簡単に未来に戻れないと知ったルフがループを繰り返す覚悟を決めて試行錯誤していくうちに、高級娼婦“椿姫”になりすまして不治の病に侵されながらも気丈に振舞う彼女と、献身的に向き合うようになっていく姿が印象的でした。彼女が秘めていた想い、そして膨大な時間を乗り越えた二人だからこそ、あのラストシーンを迎えられて良かったです。
【著者さんのおすすめ作品】
宝石商リチャード氏の謎鑑定(集英社オレンジ文庫)
マグナ・キヴィタス(集英社オレンジ文庫)
忘れじのK(集英社オレンジ文庫)
僕たちの幕が上がる(ポプラ文庫ピュアフル)
22.吾輩は歌って踊れる猫である (講談社タイガ)
吾輩は歌って踊れる猫である
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芹沢 政信 講談社 2021年01月15日
バイトから帰るとなぜかベッドに鎮座していたしゃべる猫。化け猫の禁忌に触れてしまい、猫と化したミュージシャンとして活躍していた幼馴染のモニカと奇妙な同居生活を始める青春小説。使い古しのモップのような猫の姿になってしまった幼馴染をもとに戻すため、モノノ怪たちの祭典用の曲を作ることになった二人。邪魔は入るしモニカと喧嘩はするし前途は多難で、拗らせてゆくモニカとの関係には時折垣間見える不器用な思いがありましたけど、それでも諦めずに乗り越えた先にあった、何とも微笑ましくなる二人の結末にはぐっと来るものがありました。
【著者さんのおすすめ作品】
絶対小説(講談社タイガ)
23.附子の弁舌 (富士見L文庫)
沼矛 トモ/サイトー KADOKAWA 2021年01月15日頃
美容師の貝谷が同窓会で弁護士になった因縁ある異常に口の悪い馬場添泉と再会し、貝谷の周囲で起こるトラブルを彼女が毒舌と法律知識を武器に理不尽をぶったぎる痛快劇。再会してから、なぜか不倫された同級生、結婚相手に実は子供がいた友人、離婚したいオーナー、既婚者に騙された後輩、キャバクラを辞めたい後輩の妹など、貝谷の周囲に次々と問題が発生して、そのたびに馬場添に頼らざるをえない状況に陥るのには苦笑いでしたけど、口は悪くても垣間見える依頼者のために奔走する馬場添たちの奮闘ぶりや、腐れ縁な二人の応酬も面白かったですね。
24.レトロゲームファクトリー (新潮文庫nex)
レトロゲームファクトリー
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柳井 政和 新潮社 2018年10月27日頃
過去のゲームを最新機用に移植する会社「レトロゲームファクトリー」の社長・灰江田とプログラマー・コギーの元に伝説的ファミコンゲーム、UGOコレクション10本の復活プロジェクトが持ち込まれ、横取りを狙う大手企業を抑え封印ゲーム復活に奔走するお仕事小説。古巣の橘に騙されたコギーを救った灰江田。最後の作品の権利のみを買い、失踪していた開発者の謎。懐かしいレトロゲームをテーマに、手段を選ばない橘の様々な揺さぶりに振り回されつつ開発者の過去の因縁を探っていって、ゲーム愛と家族愛のために動く灰江田の熱い想いが周囲を動かし、力を合わせて開発者の真意にたどり着いて、ゲームに愛がない橘の企みを乗り越えてみせる展開にはぐっと来るものがありました。
25.向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)
向日葵ちゃん追跡する
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友井 羊 新潮社 2016年08月27日頃
ストーカー対策員原向日葵19歳。実は元ストーカーの過去を持つ彼女が、接近禁止を言い渡された元恋人を殺人現場で見かけてしまい、再び運命が動き出すほろ苦青春ミステリー。容疑者とされた彼の無実を何とか証明したいと思うものの、すれ違いの結果として接近禁止になった過去から行動を制限されている向日葵。頭では理解していても強い想いに揺れる彼女の複雑な葛藤が痛いほど伝わってきて、その自らの思考に向き合うことが事件解決の伏線に繋がってゆく皮肉な結末でしたけど、前に進むことを決意した彼女の幸せを願わずにはいられませんでした。
【著者さんのおすすめ作品】
スープ屋しずくの謎解き朝ごはん(宝島社文庫)