少し前から #1日1文庫 のハッシュタグで読んだ本の中から1日1作品紹介するようにしていますが、このまま流して終わりなのもあれなので、ここから10日ごとにまとめていこうと思います。Twitterの紹介は140文字に収まるようあっさりめですが、こちらはもう少し長めの紹介です。
【#1日1文庫71日目】
螺旋の手術室(新潮文庫)
大学病院の教授選候補だった冴木真也准教授が手術中に不可解な死を遂げ、教授の座を争った医師も暴漢に襲われ殺害されるなど相次ぐ不可解な死。父・真也の死に疑惑を見つけた息子の裕也が同じ医師として調査を始める医療ミステリ。教授選が鍵と見据えその繋がりを調べる裕也。父の死がスキャンダルとなり婚約者の母に堕胎を迫られる妹の真奈美。真相を執拗に追う過程で明らかになる意外な真実。たったひとつの秘密を守るために起きた事件の真相は何とも切なくて、これから裕也が抱えながら生きてゆくものの重さについていろいろ考えてしまいました。
【#1日1文庫72日目】
赤レンガの御庭番(講談社タイガ)
将軍直属の「御庭番」を務めた家で育った米国帰りの探偵・入江明彦。横濱を舞台に犯罪コンサルタント組織『灯台』と対峙する明治浪漫ミステリ。助手の少年・文弥に世話を焼かれつつ暮らす明彦が出会った訳ありの美青年・ミツ。彼らが遭遇する不老不死の霊薬、皇太子の切手、港の青年の行方、そして灯台の首領の意外な正体。著者さんらしい雰囲気描写に加えて、頭脳明晰で容姿端麗な明彦と有能な文哉、訳ありのミツたちのやりとりも軽妙でなかなか楽しめました。「灯台」を巡る事件は今巻で決着のようですが、続きがあるならまた読んでみたいですね。
【#1日1文庫73日目】
ぬばたまおろち、しらたまおろち(創元推理文庫)
両親を亡くし角田村で叔父夫婦に育てられた綾乃。小さい頃からの秘密の親友・大蛇のアロウにプロポーズされた彼女が、別の大蛇に襲われる事件を経て母校ディアーヌ学園で学ぶことになるファンタジー。妖魅子女も通うディアーヌ学園で楽しい友人たちと出会い魔女の修行をする日々。そこから繋がる雪之丞との縁と過去の因縁もまた明らかになってゆく展開で、アロウとの約束に心揺れる綾乃と共に過ごすうちに絆を深めてゆく雪之丞が過去に飛んで、そこで果たした役割が現在に繋がってゆくその結末にはなるほどと唸らされた、とても素敵な物語でした。全3巻。
【#1日1文庫74目】
さとり世代の魔法使い(双葉文庫)
魔女が隔世で生まれる家系の女子大生・北条雫、19歳。さとり世代のすっかり醒めた平成最後の魔女の前に、10年前いなくなった幼馴染の爽太が現れる物語。魔女だったおばあちゃんを巡る悔恨と姿を消していた爽太。再会した彼と一緒に果たしていく、好きな人に告白したい同級生の手伝い、素直になれない女の子と家族の仲直り、そして未来からやってきた孫娘との邂逅。素直になれないけれど雫は人のために頑張ろうとするいい子で、その過程でかけがえのないものを得ていった先の結末は切なくもありましたけど、未来に繋がるとても素敵な物語でした。
【#1日1文庫75日目】
千駄木ねこ茶房の文豪ごはん 二人でつくる幸せのシュガートースト(富士見L文庫)
千駄木ねこ茶房の文豪ごはん 二人でつくる幸せのシュガートースト(1)
posted with ヨメレバ
山本 風碧/花邑まい KADOKAWA 2020年09月15日頃
社畜生活に疲れ果て会社を休職中の亜紀。そんな彼女が倒れた祖母に「店を守ってくれ」と頼まれ、店の前に行き倒れていた見知らぬ美男子・寒月と、漱石の生まれ変わりを名乗る喋る不思議な黒猫と出会う物語。料理はできそうだけれど、カフェ経営の知識ゼロの未経験者なのに見切り発車する亜紀には勇気あるなあと思いましたけど、猫の漱石と的確な指示を出す寒月さんのサポートもあって、自身の忘れていた幼い頃の夢も思い出しつつ、ワケアリな寒月との関係も何とか乗り越えて、試行錯誤の末にらしいお店を見出していく展開はなかなか良かったですね。21年11月に2巻目刊行予定。
【#1日1文庫76日目】
トラットリア代官山 (ハルキ文庫)
亡き父から受け継いだ店を気丈に守り続ける男装の女支配人・大須薫と天涯孤独の年下敏腕シェフ・安東怜が、訪れたお客の問題を解決に導くグルメ小説。結婚して代官山で暮らす友人に抱く独身アラサー女子の複雑な思い、転落事故で記憶を失った父親と愛犬の失踪の真相、若きネイリストが抱いた彼への疑念の顛末といった事件をお客様と一緒に解決する展開で、そんな積み重ねが最後に繋がりましたね。美味しそうな料理との描写も合わせて著者さんらしい物語でした。薫と怜の関係も気になるところですけど、そのあたりも続刊で読めることを期待してます。
【#1日1文庫77日目】
ノノノ・ワールドエンド(ハヤカワ文庫JA)
暴力を振るう義父と受け入れるだけの母、いいことのない毎日が続き絶望する中学生ノノ。しかし突如白い霧に包まれた街から人々は消え、逃げ出した先で白衣の少女・加連と出会うガール・ミーツ・ガール。義父から逃げ出したノノと、現象に関わりながらとある目的のために組織から逃げ出してきた飛び級の天才少女・加連。偶然から出会った不器用な二人でしたけど、近づく終末を前にきちんと心残りを解決したい加連と行動を共にするうちに深まる絆と、お互いのためにという想いが感じられる切なく優しい物語でした。こういう作品もまた期待しています。
【#1日1文庫78日目】
座敷わらしとシェアハウス(角川文庫)
一人暮らしのマンションに祖母の形見の品を持ち帰った普通の女子高生・水分佳乃が、日に日に成長し大人の男になってしまった座敷わらし・暁星と一緒に住むことになる物語。その存在に戸惑いながらも、誤解した親友・真奈美との関係修復だったり、暁星をきっかけに変わりつつある幼馴染・俊之、環境の変化に戸惑いながらも使命を思い出し佳乃を守ろうと奮闘する暁星たちとの関係は、いい感じに落ち着いてくれるといいなあと思わせるものがありましたね。現時点ではまだぼんやりとした佳乃の夢をどう実現に近づけていくのか、そのあたりも今後に期待。2巻まで刊行。
【#1日1文庫79日目】
カロリーは引いてください! ~学食ガールと満腹男子~(富士見L文庫)
カロリーは引いてください! 〜学食ガールと満腹男子〜(1)
posted with ヨメレバ
日向夏/時々 KADOKAWA 2017年05月15日頃
大学の学食で働きながら、幼馴染・朝生くんと同じマンションに住んでご飯を作る契約をしている楓。体重を除けば完璧な朝生くんとのダイエットを巡る攻防と、身の回りで起こる謎を解くドタバタミステリ。痩せさせるべく日々工夫しながらご飯を作るのになかなか成果が出ない楓とたくさんご飯を食べたい朝生の探り合うような駆け引き、一方で身の回りで起こる謎に対して(デブだけど)無駄に多才な朝生が大活躍するギャップがなかなか面白かったです。そんな二人の何とも形容し難い関係も今後が気になったりで、続巻を是非期待したい新シリーズですね。
【#1日1文庫80日目】
グアムの探偵(角川文庫)
探偵の権限は日本よりも遙かに大きいアメリカの準州グアムで、ゲンゾー、デニス、レイ日系人3世代探偵が起きる事件を解決してゆくミステリ。日本人観光客が遭遇した奇妙な誘拐劇、国際結婚した日本人女性とストーカー、引きこもり大尉の真意、グアムで開店した日本人父娘が遭遇する強盗事件、誘拐事件の真相の5篇が収録されていて、日本とはいろいろ違うグアムの慣習に対するそうなんだ…があってすんなりと物語に入っていたわけではないですが、そういう中で世界観を活かしつつ展開していく探偵劇はなかなか新鮮でした。3巻まで刊行。