2023年9月改訂の最新版はこちらになります。↓
以前作った記事。実は検索で当ブログを訪れてくださっている方の中では更新時からずっと一番アクセス数の多い記事であり続けており、昨年10月にその後の刊行分を追加・整理などして一度改訂版を作りました。
そこからまたさらに時間が経過し、新シリーズが刊行されていたり、巻数を重ねていたりでいろいろ当時とは変わってきています。そこで作品・刊行情報などを更新した改訂第二版を作ろうと思いました。今回は前回記事から入れ替えをしつつ、再び自分が読んだ作品のうち比較的最近に刊行されている25作品を紹介しています。
ちなみに中華風ファンタジーというと当然「十二国記」は?というツッコミが入りそうですが、この記事を訪れてくれる人はそれ以外の作品を探して訪れてくれる方が圧倒的に多そうなので、今回もあえてスルーしました(おい そんな方向けに紹介する記事ということでよろしくお願いします。
1.流転の貴妃 或いは塞外の女王 (集英社オレンジ文庫)
流転の貴妃 或いは塞外の女王
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喜咲 冬子/巖本 英利 集英社 2020年01月17日
商人の娘として生まれ、後宮の貴妃になった柴紅玉。それが勢力を拡大しつつある北方の遊牧民族の盟主へと嫁がされることになり、さらにその途上で嫁ぎ先の敵対部族による襲撃で攫われてしまう中華風浪漫譚。帝の寵愛はなくとも後宮で謳歌していた生活から、二転三転する運命に翻弄され激変する紅玉の人生は大変だなあと思わずにいられませんでしたが、族長の末子アマルの妻となった彼女があるべき姿を見定めて覚悟を決め、遊牧民族の妻としては型破りな、けれど自分らしいやり方でアマルを支えるようになってゆく姿にはぐっと来るものがありました。
2.仙文閣の稀書目録 (角川文庫)
そこに干渉した王朝は程なく滅びるという伝説の巨大書庫・仙文閣。帝国春の少女・文杏が、危険思想の持主として粛清された恩師が遺した唯一の書物を届けるべく訪れ、仙文閣の典書・徐麗考と出会う中華ファンタジー。麗考に救われたものの、無事蔵書される心配で住み込むことになった文杏が知る壮大な仙文閣の威容。文杏を持ち込んだ書物を巡って、権力に屈しない図書館めいた仙文閣で必要とされる資質が問われる展開でしたけど、知識云々よりももっと大切なことがあるんですよね。文杏がこれからどう成長してゆくのかまた読んでみたいと思いました。
3.廃妃は再び玉座に昇る 耀帝後宮異史 (小学館文庫キャラブン)
廃妃は再び玉座に昇る 耀帝後宮異史
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はるおか りの 小学館 2020年07月07日
残虐非道な凶后の姪として政変で断罪され、天下万民の怨敵として刑場に引っ立てられた先帝の廃妃・劉美凰。死ねずに幽閉された血染めの廃妃が、十年ぶりに後宮に帰還する中華風ファンタジー。彼女の身に宿る奇しき力を必要とし、皇太后とした現皇帝・天凱。表向きは白き喪服をまとった皇太后として、裏では天凱と一緒に都で猛威をふるう鬼病の原因を突き止めるため、未だ怨憎が煮えたつ禁城に舞い戻った美凰の苦悩がまた壮絶で、二人の愛憎が入り交じる複雑な因縁があまりにも切なくて、そんな二人の行く末がとても気になる注目の新シリーズですね。
4.後宮染華伝 黒の罪妃と紫の寵妃 (集英社オレンジ文庫)
後宮染華伝 黒の罪妃と紫の寵妃
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はるおか りの/Say HANa 集英社 2020年06月19日
諍いの絶えない後宮を治めるため、凱帝国皇帝・高隆青の皇貴妃となった共紫蓮。聡明さを買われて入宮した紫蓮が、職務上の信頼関係で結ばれた隆青を巡る妃たちの野心と嫉妬に巻き込まれてゆく中華風ファンタジー。皇太后・李飛燕の後ろ盾の下で蔡貴妃と許麗妃の派閥がぶつかり合う後宮を統率する紫蓮、そしてかつて隆青が寵愛した冷宮にいる元皇貴妃・黛玉の存在。より重厚な雰囲気にシフトする中で対比するように様々な愛が描かれましたが、重責に苦悩する隆青と彼を支える覚悟を決めた紫蓮がぶつかり合いながら育んでいく絆がとても印象的でした。
関連シリーズ:後宮シリーズ|BOOK☆WALKER
5.後宮の花は偽りをまとう (双葉文庫)
大陸西方の相国で部署を渡り歩いて勤続十年の三十路手前の女官吏・陶蓮珠。新皇帝の双子の弟・郭翔央から声を掛けられて、新皇帝が娶る予定だった威国の妃の身代わりとなる中華後宮ファンタジー。威妃を迎えに行くと新皇帝が姿をくらませ、双子の弟・翔央と共に威国語を話せる蓮珠がその身代わりを務める展開。官吏としては有能で、自ら抱えてきた想いや翔央から聞いた志から、新皇帝即位を巡る陰謀を何とかしようとして空回りする蓮珠がやや危なっかしかったですが、そんな中でお互い惹かれつつある翔央との今後がなかなか楽しみなシリーズですね。現在4巻まで刊行。
6.威風堂々惡女 (集英社オレンジ文庫)
その出自から瑞燕国で虐げられる尹族の少女・玉瑛。皇帝が発した「尹族国外追放」の勅命により屋敷を追われ命を失った彼女が、謀反を起こして虐げられる原因となった皇帝の愛妾・柳雪媛として目覚める中華幻想復讐譚。未来を変えるため柳雪媛として過去をやり直すことになった玉瑛と、その護衛役に任命された生真面目な若き武人・王青嘉の因縁の出会い。お互いの真意を知らずに反発し合っていたはずの二人がいつの間にか奇妙な縁で紡がれていって、二人だけにしか分からない何とも複雑な感情を育んでゆくこの主従の絆に期待したい新シリーズですね。現在4巻まで刊行。
7.後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)
後宮奥深くにいる夜伽をしない不思議な力を持つ特別な妃「烏妃」。翡翠の耳飾りに取り憑いた女の幽霊の正体を探るべく訪れた皇帝・高峻が、その不思議な力を目の当たりにする中華風ファンタジー。辛い過去を抱え烏妃として孤独に生きようとする寿雪と、少年時代に生母を皇太后に殺され辛酸を舐めた高峻。後宮で起きる幽鬼絡みの事件を解き明かす過程で二人が関わる機会は増えていって、不器用な彼らの距離感や周囲との関係の変化はとても微笑ましくて、秘密を共有した二人がこれからどう変わってゆくのか、この続きを是非読んでみたいと思いました。現在4巻まで刊行。
8.金椛国春秋シリーズ (角川文庫)
後宮に星は宿る 金椛国春秋
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篠原 悠希 KADOKAWA 2016年12月22日頃
金椛帝国の皇帝崩御に伴い、「皇帝に外戚なし」の法のもとに皇后に選ばれた星皇后の一族は全て殉死を命じられ、胡娘の助けにより御曹司の遊圭がひとり生き延びる中華ファンタジー。追われる身だった遊圭が、以前助けた縁で匿ってくれた町娘の明々と一緒に密かに男の身で後宮に出仕するまさかの展開。病弱で世間知らずゆえか義憤に駆られて自らの身を危うくするような状況にはハラハラしましたが、宦官・玄月に正体を疑われながらも知恵を駆使して何とか乗り切った展開はなかなか面白かったですね。遊圭たちの数奇な運命を描く注目のシリーズです。現在8巻まで刊行。
9.薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)
花街の薬師だったのをさらわれて後宮で下働き中の娘・猫猫が、薬師としての能力を美形の宦官・壬氏に見込まれ、後宮の事件や噂を解決する物語。中華風の後宮にいるものの特に出世を目指すわけでもない猫猫はわりとさっぱりとした性格で、周囲が色めき立つ美貌の壬氏にも醒めた視線を向けるわけですが、そんな猫猫を壬氏が何となく気にかけている構図が面白いですね。陰謀渦巻く狭い世界で繰り広げられる事件に、薬と毒には並々ならぬ執着とこだわりを見せて謎解きに挑む猫猫、彼女を取り巻く登場人物たちも魅力的で、テンポの良いやりとりを楽しめるシリーズです。現在9巻まで刊行。
10.茉莉花官吏伝 (ビーズログ文庫)
茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず
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石田 リンネ/Izumi KADOKAWA 2017年07月15日頃
『物覚えがいい』という特技がある後宮の女官・茉莉花が、名家の子息のお見合い練習を引き受けたら相手はなんと皇帝・珀陽で、彼女の特技を知った縁から科挙に合格して官吏を目指すよう言われる中華ファンタジー。明らかに興味津々の皇帝に、そこまでの意気込みもなく戸惑い気味の茉莉花。そんな状況から太学に編集した彼女には様々な出会いや転機があって、覚悟を決めて危機を乗り切った彼女自身にも思いの変化があって。そんな茉莉花が官吏としてヒロインとしてこれから皇帝と今後どのような関係を築いていくのか楽しみなシリーズ。現在8巻まで刊行。
11.十三歳の誕生日、皇后になりました。(ビーズログ文庫)
十三歳の誕生日、皇后になりました。
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石田 リンネ/Izumi KADOKAWA 2018年10月15日頃
十三歳の誕生日、赤奏国皇帝に後宮入りを願い出た莉杏。そんな彼女が帝位を簒奪し、新たな皇帝となった暁月と謁見の間で運命の出会いを果たすもう一つの物語。まさかの簒奪帝の皇后に祭り上げられた莉杏が、まだまだ幼くて暁月に子供扱いされながらも、彼の国を何とかしたいという思いにも感化されて彼女なりに健気に頑張って支える姿は応援したくなりますね。なんか人材不足感が凄くてこの国大丈夫なのかちょっと心配になりますが、何だかんだでいい夫婦になっていきそうな微笑ましい二人の今後を見守っていきたいです。現在3巻まで刊行。
12.紅霞後宮物語 (富士見L文庫)
女性ながら不世出の軍人と評される将軍・関小玉33歳が、かつての相棒にして今は皇帝である文林の懇願を受けある日突然皇后となり、嫉妬と欲望が渦巻く後宮「紅霞宮」に入る物語。軍人らしいきっぱりさっぱりな性格の小玉と、皇帝として公人としての意識も持たざるをえなくなった文林。絆こそ感じられるもののお互い立場も変わり、変わってしまったところと変わらないところに戸惑い葛藤する展開でしたが、ついに覚悟を決めた小玉と、そんな彼女に複雑な想いを抱いたままに見える文林がどんな夫婦になっていくのかいろいろ気になるシリーズです。現在本編11巻+前日譚4巻刊行。
13.天下四国シリーズ(講談社文庫)
徐の王太子・寿白は革命の混乱のさなかに王の証・王玉を得たが庚に取って代わられ、十年後に飛牙と名乗って再び国を訪れる中華風ファンタジー。飛牙から玉を取り戻すべく現れた天令の那兪とともに訪れたかつての王都。天から見放され荒れる庚の治政と、寿白時代の飛牙を知る宦官・裏雲や王太后が抱えていた秘密。明かされた事情と混乱の最中で上手く立ち回り、どうにかこうにかうまく取りまとめてみせた飛牙が、裏雲を追って天下四国を旅しながら行く先々で活躍するシリーズです20年8月に5巻目刊行予定。
14.蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)
蠱毒をこよなく愛し周囲から「毒の姫」とあだ名される斎帝国の第十七皇女・李玲琳。そんな彼女が最愛の姉である斎国の女帝・彩蘭の指示で魁国の王・楊鍠牙のもとへ嫁ぐ物語。華やかな衣裳や宝石より蟲が大好きな著者さんらしい強烈なキャラクターですけど、嫁ぎ先もまた鍠牙が命を狙われたりいろいろ物騒なところで、彼女の特技を活かしてその存在を認められてゆく展開はいいですね。姉に劣らず鍠牙も少しばかり執着気味なのはアレですが、結果から見れば水が合ったと言うかいい居場所を見つけられたみたいですね。第3巻まで刊行。
15.後宮妃の管理人 (富士見L文庫)
後宮妃の管理人 〜寵臣夫婦は試される〜
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しきみ 彰/Izumi KADOKAWA 2019年05月15日頃
右丞相の珀皓月と結婚し、妃嬪の健康管理と美容を維持して後宮を管理することを帝より命ぜられた大手商家の娘・優蘭。女装して後宮にたびたび出入りする夫とともに夫婦で後宮の闇に挑む物語。背景に政治的対立もあったりで、妨害工作の末に身の危険を感じたりしながらも、損得勘定を計算しつつも、要所を抑えて妃嬪たちに向き合っていく優蘭がいいですね。高級貴族で美丈夫の皓月もワケありでいろいろ大変なんだなあと思いつつも、不器用なりに妻となった優蘭を大切にしようという思いが感じられてよかったです。現在3巻まで刊行。
16.榮国物語 春華とりかえ抄 (富士見L文庫)
榮国物語 春華とりかえ抄
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一石月下/ノクシ KADOKAWA 2017年09月15日頃
榮の貧乏官僚の家に生まれた双子、金勘定にシビアな姉・春蘭と刺繍を得意とする立派な淑女に育った弟の春雷。誤った噂は皇帝の耳にも届き春蘭の後宮入りと春雷も科挙受験が決まり、追い詰められた二人が入れ替わることを決意する中華ファンタジー。双子を利用しようとする野心家・天海宝が出世を目論む理由。妃嬪を避けるため双子が近づいた公主が知ってしまった陰謀。春蘭と口が悪い海宝の毎度いがみ合う関係からの変化や、そんな彼の意外な一面と窮地に双子たちも協力しての大逆転劇はなかなか面白かったです。現在6巻まで刊行。
17.彩蓮景国記 (角川文庫)
天命の巫女は紫雲に輝く 彩蓮景国記
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朝田小夏 KADOKAWA 2019年05月24日頃
景国の祭祀を司る貞家の一人娘なのに、宮廷の華やかな儀式には参加させてもらえない貞彩蓮が、護衛の皇甫珪と宦官殺人事件を調べるうちに第三公子・騎遼と出会い、宮廷内の争いに巻き込まれてゆく中華風ファンタジー。野心家の騎遼と出会い興味を持たれ、蠱毒や息壌を用いた巫覡を阻止するために関わってゆく彩蓮と皇甫珪。護衛として凸凹コンビを組む三十路男・皇甫珪に加えて、騎遼もまた彩蓮に興味津々で、彩蓮自身がどうありたいのかを問われる展開でしたが、座して待つのではなく自ら立ち向かう彩蓮の決断はなかなか悪くなかったと思いました。現在3巻まで刊行。
18.紫微国妖夜話 (小学館文庫キャラブン!)
太陽と月の眠るところ 紫微国妖夜話
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宮池 貴巳/由羅 カイリ 小学館 2019年01月04日頃
幼少時から驚くほど不運なのに奇跡的に科挙に登第して進士となった青年・梁脩徳。しかし赴任先の侶州は鬼怪が跋扈する妖しい西方の僻地で、日々勃発する怪異事件に巻き込まれてゆく中華風怪異譚。基本的にいろいろな意味で残念な脩徳は怪異の引き寄せ体質で、それを辛辣な部下たちに利用される日々。様々な怪異に脅かされて、辛過ぎる料理に辟易し、素敵な女性との出会いがあったら中身はあれで、災難続きでしたけど転任願いを出そうにも採用された理由が理由と、選択肢を考えるとこれはもう諦めるしかないですね(苦笑)現在2巻目まで刊行。
19.紫微国後宮秘話 (小学館文庫キャラブン!)
理想の伴侶を夢見て女ばかりの宮観を抜けだして婚活の旅に出た南天宮の道姑・成君。そこへ南天宮から「六星鏡」盗難の報が入る紫微国を舞台としたもうひとつの物語。「六星鏡」盗難で責を問わる恩人の観主を救うため幼馴染の喬賀とともに都で神鏡を捜索しようとする成君。都で宇遠と巡り合ったことで宮城の陰謀にも巻き込まれてゆく展開でしたけど、乙女思考の成君と呆れながらもついてくる喬賀の関係に、宇遠やその周囲もまた複雑な過去を抱えていて、それらを絡めて繰り広げられる愛憎劇がまた印象的でした。この続きも妖夜秘話も期待しています。
20.宮廷のまじない師: 白妃、後宮の闇夜に舞う (ポプラ文庫ピュアフル)
白髪に赤い瞳の容姿で親に捨てられ、街のまじない屋で見習いとして働いていた李珠華。そんな彼女の腕を見込んだ皇帝・白焔に、後宮で起こる怪異事件と女性に触ると蕁麻疹が出る呪いの解決を依頼される中華風ファンタジー。最高の待遇と報酬を約束され偽の妃として後宮入りを果たし式神を使って調査を始めた彼女と、新たなライバル登場に反応が対照的な白焔の妃たち。分かりやすい構図に思えた事件の真相は何となく予想した通りでしたけど、少しずつ変わっていった白焔との関係と、自ら道を切り開こうとする珠華の心意気がなかなか良かったですね。
21.執筆中につき後宮ではお静かに: 愛書妃の朱国宮廷抄 (ポプラ文庫ピュアフル)
自室に引きこもれるという理由で後宮入りし、日々執筆にいそしむ娘・青楓。謎の襲撃者たちに襲われたところを皇帝に救われ、愛憎渦巻く後宮の陰謀に巻き込まれてゆく中華風ファンタジー。皇帝から後宮の不審死事件の真相を掴むべく協力を命じられた青楓は意外と才色兼備なのに価値観がズレていて、自分を雑に扱う彼女を新鮮に感じる皇帝との距離感はこれからな感じでしたけど、個性的な上級妃嬪たちにも振り回され、複雑な想いを抱えながら事件を解決に導く青楓のありようがなかなか印象的で面白かったです。
22.後宮妖幻想奇譚-鳳凰の巫女は時を舞う (双葉文庫)
鳳凰の力で国を護る巫女に選ばれた、貧民街に住む少女・小鈴。巫女として勤勉…ではなく怠惰な生活を送る彼女のもとに、国を揺るがす事件の解決依頼が舞い込んでくる中華風ファンタジー。先代巫女・環雲に託された小鈴のもとに、宦官・申栄や皇太子・天暘から持ち込まれる国を滅ぼすかもしれない妖の事件。小鈴が依頼をさぼろうとしたり失敗すると何度でも時間が巻き戻る状況の中、たびたび巻き込まれる天暘と共に解決してゆくストーリーはどこかほのぼのとしていて、何だかんだでお互いに大切な存在となってゆく二人の関係がなかなか良かったです。
23.宮廷医の娘 (メディアワークス文庫)
由緒正しい医の家系に生まれ仁の医師を志す陽香蘭。法外な治療費を請求する闇医者・白蓮の施術を見て強引に弟子入りし、衝突しながら真の医療を追い求めていく中華風ファンタジー。白蓮の次元の違う施術に可能性を感じ弟子入りした香蘭が遭遇する、腹痛の商人と木から落ちた少年の識別救急、醜い官吏と火傷を負った娘の整形手術、引きこもりの貴妃と東宮を巡る陰謀。白蓮はどうも出自が現代人っぽい雰囲気ですが、弟子と認めた香蘭の師匠としてまだ若い彼女を教え導き手綱を締めるいいコンビっぷりでした。彼女たちの活躍をまた読んでみたいです。
24.一華後宮料理帖 (角川ビーンズ文庫)
大帝国・崑国へ小国の和国から貢物として後宮入りした皇女・理美。他国の姫という理由で後宮の妃嬪たちから嫌がらせを受ける彼女が、皇帝不敬罪の窮地に食物博士の朱西に救われる物語。和国では姉皇女においしいものを捧げる役割を担っていた理美が、朱西の協力も得つつその料理の腕前と持ち前の明るさを活かして、ピンチを乗り越えるべく奮闘する展開はなかなか良かったですね。朱西とのコンビで料理研究もなかなか面白そうですけど、皇帝もまた理美が気になるようで、そんな三角関係の行方が混沌としてゆくシリーズです。全11巻。
関連作品:「双花斎宮料理帖」(角川ビーンズ文庫)
25.華仙公主夜話 (富士見L文庫)
華仙公主夜話 その麗人、後宮の闇を討つ
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喜咲冬子/上條ロロ KADOKAWA 2018年07月14日頃
仙人の力を借りて建国した伝説を持つ基照国。先帝の落とし胤と噂の酒楼の女主・明花のもとに、滅亡寸前の国と幼い次期皇帝・紫旗を守るため次期宰相の李伯慶が訪ねてくる中華ファンタジー。紫旗を取り巻く不穏な状況とそれを打開するために動く伯慶、可愛い紫旗を助けたいという思いからその誘いに乗る明花。テンポの良いストーリーに紫旗のためという利害の一致で相棒となった腕力頼み公主とケチな伯慶が、言い争いながらも相手のことを認め合うようになってゆくサッパリした関係もなかなか良かったですね。全3巻。
以上です。気になる作品があったら是非手にとって読んでみて下さい。正直なところをいうと、中華風ファンタジーは思っている以上にたくさん刊行されていて、カバーして切れていない面白い作品もまだあるかもしれません(苦笑)これからもこのジャンルの面白い作品がたくさん出てきてくれることを期待します。