読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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2019年7月に読んだ本 #読書メーターより

7月は前半仕事が忙しくてなかなか冊数を読めませんでしたが、気になる本も多くて最終的にはコミック以外でも63冊とそこそこ読めました。シリーズ続巻も新作もなかなか豊作で充実の一ヶ月でした。読んでも読んでも積ん読がむしろ増えてるのがあれですけど、この冊数読んで増えてるなら仕方ないですね…。

 

7月の読書メーター
読んだ本の数:99
読んだページ数:25697
ナイス数:5974

五位鷺の姫君、うるはしき男どもに憂ひたまふ 平安ロマンチカ (メディアワークス文庫)五位鷺の姫君、うるはしき男どもに憂ひたまふ 平安ロマンチカ (メディアワークス文庫)感想
十二歳で夫と死に別れ尼となった五位鷺の姫君・預流の前。功徳を積み清く正しく生きようとしているのに僧正も一目置く超エリート阿闍梨、不幸体質陰陽師、さらに色男の中将にまで絡まれる平安恋愛絵巻。現代的ミーハー感覚で平安時代を描写しているからか、やや文章が頭に入ってこなかった感はありましたけど、やたらリアルな陰陽師事情や信心深い貴族生活だったり、彼らの恋愛脳的発想はなかなか斬新でした。みんな何も考えてないようでいろいろ考えてるんだな…というのも見えてきて、そんな中でも預流の破格っぷりは際立っていて面白かったです。
読了日:07月01日 著者:汀 こるもの
主婦やめます! 家事代行チーム松竹梅 (富士見L文庫)主婦やめます! 家事代行チーム松竹梅 (富士見L文庫)感想
育ち盛りの子供を抱えて夫が突然のリストラ。松枝梨沙は、姑の反対や子供といたい葛藤を押し切り、主婦友の奥竹美加子、汐田梅の3人で、会社の立ち上げを決意する物語。資格マニアの梨沙、人脈が広い美加子、知恵袋の梅で組んだ家事代行『チーム松竹梅』。喧嘩した雑誌編集長と奥さんの仲を取り持ったり、訪問先の引きこもりの息子を気にかけたり、訪問先の事情にやや首を突っ込みすぎる感もありましたけど、局面を打開する彼女たちのスキルや、家事代行業を始めたことで周囲との関係が変わってゆく展開はなかなか良かったですね。続巻にも期待。 
読了日:07月01日 著者:桜川 ヒロ
鹿の王 水底の橋鹿の王 水底の橋感想
黒狼熱大流行の危機が去り、東乎瑠帝国では次期皇帝争いが勃発。オタワルの天才医術師ホッサルは祭司医・真那の招きに応じて、恋人ミラルとともに清心教医術の発祥の地・安房那領へと向かう続編。清心教医術に秘められた驚くべき歴史を知るホッサルと、オタワルが危うい立ち位置にいる状況で持ち上がる縁談話、そして次期工程暗殺未遂事件。様々な思惑が絡み合う政争に巻き込まれ状況が二転三転する展開でしたけど、そんな事態を好転させて希望の光を見出したのが、大切なものを見失わない真摯な想いだったという結末はなかなか深いと思いました。 
読了日:07月02日 著者:上橋 菜穂子
育休刑事育休刑事感想
生後三ヶ月の息子・蓮のため、刑事としては初めての育休に挑戦中の県警本部捜査一課・秋月春風。育休中なのになぜか次々と事件に巻き込まれてゆく物語。妻の親友でもある秋月の姉に助けられたり振り回されたりしながら、子連れで質屋強盗殺人事件に巻き込まれラッピングカーのアリバイ作りを目撃し、爆弾騒ぎに巻き込まれたりと、子連れで何度も引っ張り出されて事件解決に奔走する状況は育休としてどうなんだとも思いましたが、最後に明かされた妻の沙樹の事情を知ると育休に至った経緯には納得。彼らにはまたどこかの作品で会ってみたいですねー。
読了日:07月03日 著者:似鳥 鶏
蛇苺の魔女がやってきた (創元推理文庫)蛇苺の魔女がやってきた (創元推理文庫)感想
水晶玉占いの授業中突然気を失った綾乃。生徒会主催の夏至祭も大成功に終わり、夏休みを前に五郎丸湖でネッシーに似た生物が目撃される第二弾。二年前に綾乃が襲った首長竜との関連性が気になる中、五郎丸温泉の別荘に招待された彼女たちが巻き込まれるイギリスの魔女と英国稀少生物保護協会との争い。日本と英国、古き魔女と新しい魔女の違いも興味深かったですが、今回は蛇状態も長かったりでアロウも絡めた雪之丞と綾乃の関係がなかなか楽しかったです。なんかいろいろいい感じに収まった感じはありましたけど、ここからの続巻はあるんですかね?
読了日:07月04日 著者:白鷺あおい
文具店シエル ひみつのレターセット (メディアワークス文庫)文具店シエル ひみつのレターセット (メディアワークス文庫)感想
商店街の一角にある文具店・シエル。突然兄から店を任された空良は、無愛想な看板猫と共に毎日店に立ち、店にやってくるのは様々な悩みを抱えた人たちに文具を紹介することで解決に導いてゆく物語。辛い現実に直面して引きこもっていた空良が、文具店で手紙でやり取りをする少女、母親が消したい秘密、旅立つ部下への餞別、夫が使っていたインクを探す老齢の女性と出会い、不器用なりに訪れた人たちのために何とかしたいと思う彼女の気持ちはとても真摯で、ようやく気づけた自分の大切なものに向き合うようになってゆく展開はなかなか良かったです。
読了日:07月04日 著者:さとみ桜
鬼とめおとの古物商 アンティークに思い出をこめて (メディアワークス文庫)鬼とめおとの古物商 アンティークに思い出をこめて (メディアワークス文庫)感想
鑑定する店主は鬼の男・鬼蔵。彼を支えるのは人間の妻・渚。鴫沢古物店に集まるアンティークにまつわる小さな不思議を奇妙な縁で夫婦となった二人が解き明かしてゆく物語。真空管ラジオから流れるもう会えない母親の声、ドールハウスに住む小さな住人たちと家族の絆、戦地に向かった夫と妻を繋ぐめおと茶碗。昭和最後の夏を舞台になかなか素直になれない家族関係に関わって解き明かしたり、亡くなった夫婦の過去を探る中で鬼蔵と渚の出会いのエピソードも絡めてゆく展開は、時折切なさを感じさせつつも最後には良かったなと思える素敵な物語でした。
読了日:07月05日 著者:藻野 多摩夫
ユリイカ 2019年6月臨時増刊号 総特集◎書店の未来 ―本を愛する全ての人に―ユリイカ 2019年6月臨時増刊号 総特集◎書店の未来 ―本を愛する全ての人に―感想
書店に見る活字文化の未来。本の出版、流通、販売の課題と展望について書店の立場から再検証した一冊。ここに寄稿していた方たちの多くは、状況が大きく変わっていくのを感じつつも、過去は良かった何が悪い今はダメだということは考えていなくて、これからどうすべきか、どういうことを考えていくべきか、自分はどうするのかと現状に満足せずに試行錯誤する前向きな姿勢がとても印象的ですね。本が好きな人がいないわけじゃないですし、情報に埋もれてしまいがちな中で本をどう知ってもらうのか届けていくのか、もう一度考えてみたいと思いました。
読了日:07月05日 著者: 
やがて君になる 佐伯沙弥香について(2) (電撃文庫)やがて君になる 佐伯沙弥香について(2) (電撃文庫)感想
燈子の隣りにいようとするがために、その本質が気になりつつもあえて踏み込まないと決めた沙弥香。何というかどうすれば良かったのかと言われると、沙弥香自身はその時々の自分なりの最善を選択してきたわけで、結果をきちんと受け止める沙弥香が切ない。そんな沙弥香のその後があるのならまた読んでみたいです。
読了日:07月06日 著者:入間 人間
異世界温泉郷 あやかし湯屋の誘拐事件 (集英社オレンジ文庫)異世界温泉郷 あやかし湯屋の誘拐事件 (集英社オレンジ文庫)感想
人間界に戻り箱根で温泉を満喫していた凛子。ところが狗神・京之介の窮地に、凛子の力が必要だといわれ、またしても不思議な温泉郷に連れてこられてしまう第二弾。客を傷つけたとして疑われる京之介の気になる過去、たまたまこの世界に迷い込んでしまった子供・翔太を元の世界に帰すために奔走する凛子。最初は不本意だった凛子も京之介のことを知るうちに少しずつ心境が変わり始めましたかね。何だかんだいいながらも人のために頑張れる彼女を周囲も認め始めていて、そんな凛子がこれからどうするのか、二人の関係も気になるところで続刊に期待。 
読了日:07月07日 著者:高山 ちあき
京都府警あやかし課の事件簿 2 祇園祭の奇跡 (PHP文芸文庫)京都府警あやかし課の事件簿 2 祇園祭の奇跡 (PHP文芸文庫)感想
先輩の坂本塔太郎と修業に励む日々を送る大たちのもとにある男性から「妙な笛を買って以来、化け猫につきまとわれているから助けてほしい」と依頼が来る第二弾。鬼笛を巡る騒動に、塔太郎を好きになってしまった女性を巡る騒動、そして初めての宵山祇園祭の奇跡。新キャラとか在原業平なども登場しましたけど、まさる状態をだいぶコントロールできるようになってきた大と塔太郎の距離感も、垣間見えるそれぞれの言動だったり第三者から見た印象からするとだいぶ変わってきてるんですかね(苦笑)そんな二人の今後もどうなってゆくのか楽しみです。
読了日:07月08日 著者:天花寺さやか
何度でも、紙飛行機がとどくまで何度でも、紙飛行機がとどくまで感想
10年前に出会って結婚し、もうすぐ子供が生まれるはずだった明良と千花。二人が事故に遭遇し出会う日の10日前に戻って抜け出せないループに気づく青春小説。友人たちの協力を得て再び千花と出会い、自らの人生をやり直そうとする明良。しかし些細な差異がやり直しに繋がり、やり直すたびに少しずつ失われてゆく彼女の記憶。この物語の重要なポイントになったもうひとつのエピソードも印象的で、試行錯誤の中で垣間見えた別の幸せや未来を知りつつも、最後まで諦めなかった二人の物語の結末に残されたもう一つの可能性を信じてみたくなりました。
読了日:07月08日 著者:大城 密
絵に隠された記憶 熊沢アート心療所の謎解きカルテ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)絵に隠された記憶 熊沢アート心療所の謎解きカルテ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
絵画療法の第一人者・熊沢が営む心療所にインターンとしてやってきたスクールカウンセラーを目指す大学院生・日向聡子。様々な悩みを持つ人々の本心や過去を、絵を通して解決していく物語。飛行機に強い恐怖心があるサラリーマンや、スマホ依存に悩む学生、ユニコーンの絵ばかり描く少女、認知症で自宅に帰れなくなった老女、そして幼少期の記憶がない聡子自身の過去。描かれた絵をヒントに症状を解決してゆくミステリーで、繊細な心理を抱える人に寄り添う優しさから導かれ、明らかになってゆく謎とそれぞれの結末はなかなか良かったと思いました。
読了日:07月09日 著者:一色 さゆり
60分でわかる!  プログラミング教育 最前線60分でわかる! プログラミング教育 最前線感想
2020年度から小学校でのプログラミング教育必修化が始まり、21年度には中学校、22年度には高校で公教育で情報教育の強化が進む予定。そんなプログラム教育に関する最新トピックをまとめた1冊。目的としてはあくまでプログラミングそのものではなく論理的思考の学習で、その過程で初歩的なプログラミング教育は行われる、中高生になったらもう少し高度な試みにも挑戦というところですか。まだ始まっておらず先行事例も試行錯誤段階ですが、こういう方向性なのかな?をざっくりと知るには読みやすくてよくまとまっているのかなと思いました。
読了日:07月09日 著者:プログラミング教育研究会
つるぎのかなた(2) (電撃文庫)つるぎのかなた(2) (電撃文庫)感想
乾快晴との運命の一戦を越えて、団体戦まで残りわずか二週間。再び立ちふさがる「常勝」秋水大付属を打倒するため、悠は再び心を殺して「剣鬼」となることを決意する第二弾。三年生最後大会で江坂部長と二人の三年生ヒロインの物語を軸に据えた展開でしたけど、勝つために情け容赦ない練習を課していく一方で、因縁にまみれた秋水大付属の面々とバチバチ火花が散らす展開、史織と吹雪たちの悠の隣を巡る熾烈な争いも盛り上がって、それぞれの意地がぶつかり合う団体戦も熱い戦いの連続で、そんな決着の先にあったひとつの結末がまた効いてました。 
読了日:07月10日 著者:渋谷 瑞也
京都寺町三条のホームズ(12)-祗園探偵の事件手帖 (双葉文庫)京都寺町三条のホームズ(12)-祗園探偵の事件手帖 (双葉文庫)感想
夏休みも終わった9月。清貴は、最後の修業先である「小松勝也探偵事務所」で働き始め、円生を相棒に京都で起こる数々の事件を解決する第十二弾。もはや清貴次第で繁盛具合が左右されつつある探偵事務所でしたけど、自分を殺そうとした犯人探しと幽霊騒動、金庫を開けるための暗号解読と浮気調査といった複数の事件が同時進行する展開で、円生と絡みながら事件の意外な形で繋がる構図を見定めて解決してみせる清貴は大活躍でしたけど、合間に出てきた秋人は相変わらずな感じでしたね(苦笑)清貴も葵もそれぞれ新展開で次巻も面白くなりそうです。 
読了日:07月10日 著者:望月 麻衣
(P[お]5-1)世界の終わりと嘘つき少女 (ポプラ文庫ピュアフル)(P[お]5-1)世界の終わりと嘘つき少女 (ポプラ文庫ピュアフル)感想
幼馴染の平間律さえいればいいと他人と距離を取っていた遠河れん。そんな彼女が不思議な空の写真を撮影する黒百合やそれに感化された赤穂と出会い、少しずつ変化してゆく青春小説。黒百合の印象的な写真をきっかけに関わりが増えていった三人が、共に過ごす時間が増えてゆく中で育まれてゆく絆と、少しずつ垣間見えてゆくそれぞれが抱える事情。不器用ゆえにすれ違いを解消できない彼女たちがもどかしかったですが、それぞれが抱える葛藤に向き合い、窮地に陥った友達のために奔走して、一緒に乗り越えた先にあった結末はなかなか良かったですね。 
読了日:07月11日 著者:小野崎 まち
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア12 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア12 (GA文庫)感想
完全勝利を目前に盤上をひっくり返され惨敗を喫した派閥連合。思わぬ形で「エニュオ」の真の目的が明らかになり、オラリオ崩壊を阻止するため総力を結集して再び人造迷宮攻略に挑む外伝第十一弾。今回は一度壊れた人形と化したレフィーヤがキーマンでしたけど、文字通りの死力を尽くした総力戦に因縁の対決もあって、キャラたちの見せ場も満載の凄まじい攻防、切り札に希望を見出すたびに突き落とされる展開の決着はそう来たか!と思わずにはいられませんでした。毎巻熱い展開の連続ですけど、ここからどう本編が展開してゆくのか気になりますね…。
読了日:07月11日 著者:大森 藤ノ
友達の妹が俺にだけウザい2 (GA文庫)友達の妹が俺にだけウザい2 (GA文庫)感想
真白が起こした波紋によって心揺れる明照に、どこか不機嫌気味の彩羽。同盟の要・巻貝なまこ先生がまさかの大スランプに陥り、メンバー・菫先生の窮地で演劇部を救うため同盟のみんなが立ち上がる第二弾。告白してきた真白の対応が面倒すぎて苦笑いしましたが、彩羽の反応もまたいろいろ興味深い展開で、廃部寸前の演劇部をプロデュースしようとして結果、思わぬ形からいろいろと転機に繋がりましたね…。何とも複雑なダブルヒロインと彼の関係も面白いですけど、周辺事情もいろいろ明らかになってきたと思ったら、最後は何があったんですか(苦笑)
読了日:07月12日 著者:三河ごーすと
わたしの幸せな結婚 二 (富士見L文庫)わたしの幸せな結婚 二 (富士見L文庫)感想
美しく強い清霞に少しでも追いつきたくて、二か月後のパーティでの社交デビューを目標に勉強を始めた美世。しかし夜ごと悪夢に苛まれ美世は体調を崩してしまい、さらに美世を狙う者が現れる第二弾。お互い相手に対する心境はだいぶ変わったようでも、相変わらず不器用だなと思える二人に過去の因縁が絡む展開で、不器用で相手への想いを素直に伝えられない二人にはもどかしくもなりましたが、こういう時には意外と美世の方が強いですよね(苦笑)清霞の姉・葉月もいい人で、少しずついい感じになっていく二人の関係をもう少し見守りたくなりました。
読了日:07月12日 著者:顎木 あくみ
処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る― (GA文庫)処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る― (GA文庫)感想
過去に起きた人災で異世界からの召喚者は見つけ次第処刑される世界。躊躇なく冷徹に任務を遂行する処刑人の少女・メノウが、迷い人の少女アカリと運命の出会いを果たすファンタジー。不可避に思えた運命をあっさり乗り越えるアカリと、そんな彼女に調子が狂わせながらも決着をつけるべく二人で旅するメノウの距離感がなかなかいい感じで、それに処刑人補佐のモモや王の娘アーシュナといった魅力的なキャラを絡めて展開する物語の安定感には驚かされました。ワケありな二人の旅がこれからどのようなものになるのか、続巻が楽しみな新シリーズですね。
読了日:07月12日 著者:佐藤 真登
帝国の勇者 世界より少女を守りたい、と“まがいもの"は叫んだ (GA文庫)帝国の勇者 世界より少女を守りたい、と“まがいもの"は叫んだ (GA文庫)感想
ベルカ帝国が誇る無敵の異能兵士「帝国の勇者」が反乱軍に殺害され、事態を重視した帝国によって派遣された勇者カイムが勇者殺しと遭遇するファンタジー。帝国に敗戦し休戦条約を結ぼうとするハルダート王国を巡って暗躍する隣国、伝説の聖剣を掲げ帝国の殲滅を宣言する古の英雄レオンを名乗る勇者殺しとカイムの因縁。信念でもぶつかり合う甦った英雄の圧倒的な力に苦戦しながらも、たったひとつの大切なものを取り戻すため、その可能性を信じて諦めないカイムの熱い想いは難儀だなとは思いつつもぐっと来るものがありました。続巻にも期待ですね。
読了日:07月12日 著者:有澤 有
地獄くらやみ花もなき 参 蛇喰らう宿 (角川文庫)地獄くらやみ花もなき 参 蛇喰らう宿 (角川文庫)感想
地獄代行業の皓と助手・青児は、不可解な過去の通り魔殺人を調べるため奥飛騨の旅館へ向かい、闇に蠢く蛇と前夜に急死した女将の亡骸に遭遇する第三弾。再び起こった不審死の迫り近付き行方不明になる皓。棘の双子の兄・荊も登場して、棘と行動を共にする青児という斜め上の展開でしたけど、閻魔庁にもすっかりペット扱いされる青児に苦笑いしたり、身体を張った兄への紅子さんの想いがさりげなく酷かったり、メリハリが効いた展開の中で垣間見えてゆく皓と青児の絆めいた繋がりや、犬を探すおばあちゃんのお話の結末が何とも切なくて印象的でした。
読了日:07月13日 著者:路生 よる
後宮妃の管理人 ~寵臣夫婦は試される~ (富士見L文庫)後宮妃の管理人 ~寵臣夫婦は試される~ (富士見L文庫)感想
右丞相の珀皓月と結婚し、妃嬪の健康管理と美容を維持して後宮を管理することを帝より命ぜられた大手商家の娘・優蘭。女装して後宮にたびたび出入りする夫とともに夫婦で後宮の闇に挑む物語。背景に政治的対立もあったりで、妨害工作の末に身の危険を感じたりしながらも、損得勘定を計算しつつも、要所を抑えて妃嬪たちに向き合っていく優蘭がいいですね。高級貴族で美丈夫の皓月もワケありでいろいろ大変なんだなあと思いつつも、不器用なりに妻となった優蘭を大切にしようという思いが感じられてよかったです。続巻出たらまた読んでみたいですね。
読了日:07月14日 著者:しきみ 彰
〔少女庭国〕 (ハヤカワ文庫JA)〔少女庭国〕 (ハヤカワ文庫JA)感想
卒業式会場に向かっていたはずなのに気づくと暗い部屋で目覚めた中3の羊歯子。ドアには不条理な試験が書かれた貼り紙があって、ドアを開けると同じく寝ていた女生徒が目覚め13人の少女たちが究極の命題に望む物語。終わりのない命題にはどうやってもやるせない結末しかなかったですけど、そこからの補遺があそこまで続くとは思いませんでした(苦笑)どこまでも続く終わりが見えない条件に目に見える範囲で自分なりの選択をする生徒たちの一方で、ここで生き残ろうと試行錯誤した末の世界を目の当たりにしていろいろ考えてしまいました、うーん。
読了日:07月15日 著者:矢部 嵩
愛を知らない愛を知らない感想
ヤマオの推薦で合唱コンクールのソロパートを任された高校二年生の橙子。親戚でクラスメイトの涼の視点から彼女の苦悩と決意が描かれる青春小説。気難しくて周囲から浮いていた橙子に期待するヤマオ、一緒に練習することになった伴奏役の涼と委員長で指揮者の青木、共に過ごす中で意外な一面を見せてゆく橙子が抱える苦悩。これまで見えていたものがガラリと反転した世界で、どうにもならないところまで拗れてしまった関係があって、やりきって勝ち取った結果にはぐっと来ましたが、だからこそその先にあったこの物語の結末が胸に突き刺さりました。
読了日:07月15日 著者:一木 けい
(P[し]3-1)終電前のちょいごはん: 薬院文月のみかづきレシピ(P[し]3-1)終電前のちょいごはん: 薬院文月のみかづきレシピ感想
福岡の古いビル2階にある小さなお店「文月」。三日月から満月の間だけ営業する店主の文が作る季節のちょいご飯が訪れる人たちの心を癒やす物語。思うような仕事ができないインテリアデザイナー、結婚を焦るアラサー女子、地方出版社の編集、実家の和菓子屋を手伝う男の憂鬱、突然亡くなった友人、人事部の古株女子社員、受付社員の片思い、仕事に生きる百貨店員といった登場人物同士を絡めつつエピソードを構成する中で、のんびりとマイペースな文がまたいい感じに効いていました。巻末レシピも良かったですし続編があるならまた読んでみたいです。
読了日:07月16日 著者:標野 凪
ガーリー・エアフォースXII (電撃文庫)ガーリー・エアフォースXII (電撃文庫)感想
米国で新たなドーター適合機が発見されて、調整のため小松にやって来たアニマの少女・レイピア。覚醒前で眠りについたままの彼女を巡り慧たちは不可思議な事態に巻き込まれてゆく連作短編集。レイピアを巡るエピソードは戦略空軍構想の話も絡んできたりでなかなか興味深かったですし、それぞれのマニアのキャラが活きる前日譚や、ロシアのマニア三人衆に溶け込もうとするベルクトの話もなかなか良かったですね。巻末に50ページほど著者新作の試し読みも付いてましたけど、これでもうこの物語も終わりなんだなとしんみりとした気持ちになりました。
読了日:07月16日 著者:夏海 公司
居酒屋ぼったくり〈7〉 (アルファポリス文庫)居酒屋ぼったくり〈7〉 (アルファポリス文庫)感想
予防接種とか介護問題とかわりと他人事じゃないよなーと思いながら読んでましたけど、お店の来た人のためには何とかしようとしてしまう美音が、要と付き合っていることを知った彼の兄や祖父と対した時の一貫した態度はあっぱれでしたね。常連客たちもしっかり支えてくれたし、やり方はあれでも要の祖父や兄たちもいろいろ考えた末での行動で、そういうところに気づけるような美音だからこそ、要も惹かれたんですよね。あと図書館で借りた本のたばこのニオイ問題がここで出てくるとは思いませんでしたけど、確かにニオイついてると気になりますよね。
読了日:07月17日 著者:秋川 滝美
猟犬の旗 (角川文庫)猟犬の旗 (角川文庫)感想
関西国際空港新宿駅、日本の主要都市で次々と起きる爆弾テロに銃撃テロ。凄惨な事件に発展していく中、外国人にもかかわらず不本意ながら猟犬となった男が奔走するシリーズ第二弾。休暇中に襲われたり相変わらず物騒な日常を送っていますが、人質を取られ文句を言いながらも矜持だけは失わない主人公が、何だかんだで道端で途方に暮れている少女を救ったり、何事もない日常を取り戻すためテロリストに立ち向かう姿がいいですね。それにしても日本も一歩間違えれば…とかいろいろ考えてしまいましたが、このエピソードは前巻の前日譚なんですかね?
読了日:07月17日 著者:芝村 裕吏
夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)感想
海に面する田舎町・香崎。家族崩壊させた過去を悔やむ高校生・塔野カオルが、クラスで浮いた存在になっていた転校生・花城あんずと互いの欲しいものを手に入れるため協力関係を結ぶ青春小説。夏の日のある朝、塔野カオルが偶然耳にした、中に入れば年を取る代わりに欲しいものが何でも手に入る『ウラシマトンネル』の都市伝説。周囲との関係を拒絶していたあんずの言動はなかなかぶっ飛んでいましたが、彼女との協力関係から始まった二人の不器用なやりとりはとても甘酸っぱくて、大切なものに向き合った二人の結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:07月17日 著者:八目 迷
これは経費で落ちません! 6 ~ 経理部の森若さん ~ (集英社オレンジ文庫)これは経費で落ちません! 6 ~ 経理部の森若さん ~ (集英社オレンジ文庫)感想
制服を巡るすれ違いに巻き込まれたり、勘違いコスパ至上主義の鎌本や自分勝手なマリナに振り回されているうちに、またもや思わぬ騒動に巻き込まれてゆく第六弾。太陽と付き合った影響なのか意識の変化を感じる沙名子さんでしたが、危機的状況にこっそり事態を動かす一手を打ったり、淡々としているように見えて会社への愛着があるし、少しずつ変わってきているのかな?「堕ちろ」にはぐっと来ました(苦笑)激動の展開でこれからもいろいろありそうですけど、それでも相変わらずのんびりな真夕のエピローグがなかなか効いていました。面白かったです
読了日:07月18日 著者:青木 祐子
京都伏見のあやかし甘味帖 紫陽花ゆれて、夢の跡 (宝島社文庫)京都伏見のあやかし甘味帖 紫陽花ゆれて、夢の跡 (宝島社文庫)感想
ひょんなことから面倒を見ることになった源義経武蔵坊弁慶を連れて、京都から平泉へと赴くことになったれんげ。そこでまたもや運命を動かす出来事に遭遇する第四弾。ずいぶんな大移動だなと思ったら、東京での後始末を経て再び京都へ。いったん距離が離れたからこそれんげと虎太郎もいろいろ現状を見つめ直す機会があって、将来を意識するようになった虎太郎はもちろん、れんげにも少しばかり意識の変化があったみたいですね…。思わぬ形で判明したれんげの出自だったり、突然姿を消したクロにも思うところがあるようで、今後の展開が楽しみです。
読了日:07月19日 著者:柏 てん
HELLO WORLD (集英社文庫)HELLO WORLD (集英社文庫)感想
本好きで内気な男子高校生直実が、突如現れた「未来の自分」ナオミから未来の恋人・瑠璃の存在と彼女が事故死する運命を聞かされ、悲劇の記録を書き換えるため奔走する青春恋愛SFノベライズ。仮想と現実の混じり合う世界を舞台に、未来の自分と出会ったことでその過去をなぞって瑠璃との距離を縮めてゆく直実。けれど直実にも育まれていた瑠璃への想いがあって、ナオミにも秘められた切実な願いがあって、世界が転回する中でも変わらない彼女を真摯に想う二人が導く結末にはぐっと来るものがありました。これは映画が楽しみになる世界観ですね。 
読了日:07月20日 著者:野崎 まど
黒猫のおうて! (ファンタジア文庫)黒猫のおうて! (ファンタジア文庫)感想
奨励会三段リーグを全勝しながら突如理由も告げずに将棋界を去った天才棋士長門成海。そんな彼のもとに強くなりたい一心でゴスロリ猫耳姿で女流棋士三河美弦が弟子入りを志願する将棋小説。服装にインパクトはありますが、ストーリーとしては将棋から距離を置いていた成海が、将棋で強くなるために真っ直ぐにぶつかってくる美弦の熱い想いに心揺さぶられてゆく展開で、美弦の姉で女流棋士の美夏や初心者の大家の娘・茜も絡めつつ、真摯な想いを胸に秘めた美弦が因縁のプロ棋士加賀薫七段に挑む戦いとその結末には強く心に響くものがありました。
読了日:07月20日 著者:八奈川 景晶
デート・ア・ライブ アンコール9 (ファンタジア文庫)デート・ア・ライブ アンコール9 (ファンタジア文庫)感想
アンコール短編集第九弾。家に帰ってきた士道たちの両親と精霊たちの邂逅、二亜の家探し、学校に行くのを避けたい七罪のマンガ家・小説家・音楽挑戦、折紙の花嫁修業、美九を付け狙う芸能記者、精霊みんなと行くクルージングの旅と今回も安定の面白さでした。士道の両親と見るや掌返しでお義父さんお義母さん呼びする折紙には笑いましたけど、暴走しがちな二亜とか実は多才なのに自虐的な七罪、女の子大好き美九のように、こういうコメディめいた短編でも魅力的なヒロインたちがいきいきと動くのがこの物語の特徴ですね(士道は毎回大変だけどw)。
読了日:07月21日 著者:橘 公司
終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ (角川スニーカー文庫)終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ (角川スニーカー文庫)感想
極位の聖剣セニオリスに資格を認めらた正規勇者の少女・リーリア。彼女に並び立つことを諦めない兄弟子に複雑な感情を抱きながら過ごす烈しくも可憐な日々を描く異伝。本編から遡ること500年前の世界を生きた正規勇者リーリァとヴィレムの物語で、大きすぎるものを背負いままならないことも多い正規勇者であるリーリァにとって、絶望的な力の差はあっても自分の手が届かないところで身体を張って奔走してくれるヴィレムが相変わらずというか、かけがえのない存在であるのがよくわかりますね。聖剣セニオリス成立のエピソードもまた良かったです。
読了日:07月21日 著者:枯野 瑛
路地裏のほたる食堂 3つの嘘 (講談社タイガ)路地裏のほたる食堂 3つの嘘 (講談社タイガ)感想
ビーフストロガノフを食べた客・久藤がもたらした「駆け落ちした一人娘の行方不明」事件に、店主の神宗吾と学生アルバイトの鈴井遙太が巻き込まれてゆく第三弾。駆け落ちした娘探しに積極的な遙太と、あまり乗り気になれない神。そんな二人が久藤の娘の三葉を追ううちに二転三転していく久藤の秘書・寿の印象。そのたびに見えてくる構図もいろいろ変わってきて、それでも紆余曲折の末に何だかんだでいい感じにまとまった思ったら、今回のエピソードはその先に繋がる話だったんですね…ここから神の過去が明らかにされてゆくのか続巻が気になります。
読了日:07月22日 著者:大沼 紀子
菓子屋横丁月光荘 浮草の灯 (ハルキ文庫)菓子屋横丁月光荘 浮草の灯 (ハルキ文庫)感想
築七十年の古民家“月光荘”で住みこみの管理人となって数ヶ月。大学院生・遠野守人は気に入りの古書店「浮草」の店主が入院中だと知る第二弾。「活版印刷日月堂」にも出てきた古書店「浮草」の店主を巡るエピソードを軸に、お店を継ぐか迷うバイトの女子大生・安西や、IT企業を辞めて紙を扱う仕事を模索する笠原先輩たちなど、それぞれが働くことを意味を考えさせられるエピソードがなかなか印象的でした。周囲の人との繋がりが確実に増えている守人ですが、この優しく温かい物語をここからどのように展開してゆくのか続巻に期待ということで。
読了日:07月23日 著者:ほしおさなえ
未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること (講談社現代新書)未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること (講談社現代新書)感想
総務省住民基本台帳に基づく、人口動態及び世帯数」などのータを元に分析して、現在を生きる人々が国土をどう動いているのか、「未来の日本人」が日本列島のどこに暮らしているのかを予測した一冊。政令指定都市や市町村の人口転入/転出をベースに、どの年齢が流出しているのか流入しているのか、どの都道府県に流出しているのか明らかにしていて、予測はあくまで予測ではありますが、ここのまま減っていったらどうなるのか、容易ならざる状況を不可避のまま放置してもいいことは何もないので、できることからでも意識していけるといいですね。 
読了日:07月23日 著者:河合 雅司
ウタカイ  異能短歌遊戯 (ハヤカワ文庫JA)ウタカイ 異能短歌遊戯 (ハヤカワ文庫JA)感想
短歌を歌い異能「歌垣」を互いにぶつけあう「歌会」。歌聖高校に通う一年生の登尾伊勢が、最大のライバルであり先輩の朝良木鏡霞への燃える恋心をウタに乗せて、歌会の全国高校選抜トーナメントに挑む物語。先輩に対する想いに葛藤しながら、個性派揃いの他校の少女たちとの試合を勝ち抜いていくひたむきな伊勢の想いが熱くて、つまるところ先輩への愛なんだよなあというか、先輩も何だかんだいいながら真摯に向き合っていて、対戦相手の名前やエピソードはややアバウトな印象もありましたけど、そのシンプルで真っ直ぐな展開が心地よかったです。 
読了日:07月24日 著者:森田 季節
異世界迷宮の最深部を目指そう 12 (オーバーラップ文庫)異世界迷宮の最深部を目指そう 12 (オーバーラップ文庫)感想
ディアと陽滝を取り戻して『風の理を盗むもの』ティティーを故郷へ送るべく、ヴィアイシア国へ向かうカナミたち。一方、『木の理を盗むもの』アイドは、その王都にて着々とカナミとの決闘に備える第十二弾。すれ違ってしまった姉である『統べる王』のため、カナミに挑むアイドの悲壮な決意。そんなアイドに真っ向からぶつかって大切なことを思い出させて、自らの大切なものも取り戻したカナミがとてもカッコよかったです…が、相変わらずヒロイン周りにはこれからも苦労しそうな予感しかしなくて、大変だろうけど頑張って欲しいと思いました(苦笑)
読了日:07月24日 著者:割内タリサ
エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 10 (MF文庫J)エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 10 (MF文庫J)感想
エイルンの負傷と記憶の喪失。代償により人類は救われたように思われたが、地球自体を修復しなければマリスは再発生してしまうとジンは警告。『夏樹』を失ったセレンがこの任務に志願する第十弾。起動したネイバーが取り込まれてしまう環境修復型ネイバー『ワールドガード』。悲壮な決意で志願するセレンとそんな彼女を救うために立ち上がるエルイン。どちらを選ぶのか究極の選択を迫られる塾生それぞれの想いもまた熱かったですが、その結末はやや複雑な思いを感じつつこれはこれでこの物語らしかったのかなと思いました。次回作も期待しています。
読了日:07月24日 著者:東 龍乃助
君死にたもう流星群4 (MF文庫J)君死にたもう流星群4 (MF文庫J)感想
自らのタイムリープを星乃に告白したものの、関係をかえってギクシャクさせてしまう大地。イオの意味深な言葉に呼応するように驚愕の人物が大地たちの前に姿を現す第四弾。かつて星乃の母親を襲撃した因縁の相手『エウロパ』と、どうにも不気味だった黒井冥子の意外な正体。今回のタイムリープを巡るもうひとつのエピソードがなかなか印象的で、一方で物語の本質に関わる謎も徐々に明らかになっていって、紆余曲折あった大地と星乃もようやく一歩前に進めたようですけど、その裏で進行するエピローグがまたどうにも不穏な展開を予感させますね…。 
読了日:07月24日 著者:松山 剛
友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 1 (オーバーラップ文庫)友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 1 (オーバーラップ文庫)感想
目つきの悪さから不良のレッテルを貼られた友木優児。『主人公キャラ』池春馬以外に誰も近寄らない彼が、春馬の妹で美少女の池冬華に突然告白されるラブコメディ。腑に落ちない告白の真意を問いただす優児と、思うところあって彼とニセの恋人関係を結んだ新入生の冬華。外見がアレで不器用だから誤解されがちだけれど、困った人を助けることを厭わず、相手にきちんと真摯に向き合える優児の良さを知ってゆく人が増えていって、そんなエピソードを積み重ねて冬華の想いも変化してゆく展開がとても良かったです。これは続巻に期待の新シリーズですね。
読了日:07月25日 著者:世界一
夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)感想
片田舎の劣悪な家庭環境に育ち将来に希望を抱けずにいた少年・日向が、身体が金塊に変わる致死の病「金塊病」を患う女子大生・都村弥子と運命の出会いを果たす壮絶で切ない最後の夏の物語。死後三億で売れる『自分』の相続を突如彼に持ち掛けた弥子と、相続の条件として提示された古い盤上ゲーム・チェッカーを通じて心を通わせてゆく日向。絶望を抱えた二人が惹かれていけばいくほど、彼女の死に三億円の価値があることの意味が重くのしかかってきて、明かされてゆくそれぞれの秘密と葛藤の末に二人が選択した「正解」がとても印象的な物語でした。
読了日:07月25日 著者:斜線堂 有紀
おとなりの晴明さん 第五集 ~陰陽師は雪の文様を愛でる~ (メディアワークス文庫)おとなりの晴明さん 第五集 ~陰陽師は雪の文様を愛でる~ (メディアワークス文庫)感想
おけら参りを控え、寒さが身に染みる京都の歳末。お隣に住む陰陽師・晴明さんとともに桃花が骨董鑑定のお仕事に足を運ぶ第五弾。現世に馴染んでいく晴明さんに雪の文様をかたどった香立を贈る桃花。一方、陰陽術に目覚めた桃花に師として結び桜の紋を授ける晴明さん。そんな中で付喪神や狸、白朮の花精、道祖神、最後には蝦夷百鬼夜行まで向き合う師弟でしたけど、絆の深まりを感じるからこそ生きる時間が違う二人の関係が今後どうなるのかやはり気になりますね。晴明に時子を偏愛とか桃花に時子様を溺愛とか色々言われている篁には苦笑いでした。
読了日:07月25日 著者:仲町 六絵
みどり町の怪人みどり町の怪人感想
埼玉県のローカルな田舎町・みどり町。以前あった未解決の殺人事件もあって、どことなく閉塞感を感じさせる小さな町に都市伝説の噂も絡んで怪人が出ると噂されるミステリ。地方FM局の放送がきっかけで全国的に広まっていくみどり町の怪人の伝説。閉塞的な地域ゆえに登場人物たちが思わぬ形で繋がっていて、そんなみどり町に住む人々の鬱屈からの魔が差したとしか思えない行動が、結果として意外な真実に結びついていって、みどり町の怪人の噂が燻るようになかなか消えない理由と、ひっそりと収束した過去の事件の意外な結末が印象的な物語でした。
読了日:07月26日 著者:彩坂 美月
魔法使いと契約結婚 ふしぎな旦那様としあわせ同居生活 (双葉文庫)魔法使いと契約結婚 ふしぎな旦那様としあわせ同居生活 (双葉文庫)感想
結婚コンサルタントとして働くアラサー会社員・深月が、飲み会の帰り道に行き倒れていたイケメン魔法使い・キリヤを拾い、契約結婚を申し込んできた彼とおためしの同棲生活を送る契約結婚ブコメディ。炊事、洗濯、掃除など、全ての家事を引き受けてくれるという甘い言葉に負けて同棲生活を始めた深月。出会いはあれでも深月のそれまでの生活崩壊ぶりを思えば、胃袋掴まれて快適な生活提供されたらハマりますよねよね…という分かりやすい展開でしたが、彼の優しさを実感して自覚した想いに向き合うようになってゆく結末はなかなか良かったですね。
読了日:07月26日 著者:三萩 せんや
自殺予定日 (創元推理文庫)自殺予定日 (創元推理文庫)感想
再婚してわずか二年。父の死後、遺産とビジネスを継ぎ様々なものを変えてゆく継母の姿に父を殺したと確信する女子高生瑠璃は、自らの死で罪を告発するため山奥で首を吊ろうと決意するミステリ。自殺の名所で出会った幽霊の裕章と交わした、一週間以内に証拠が見つからなければ自殺するという約束。探っていくうちに継母への疑惑が膨らんでいく瑠璃。そこからの急展開と明らかになってゆく真相は、見えていたものの印象をガラリと変えていって、瑠璃が改めて実感した大切なものへと思いと、新たな人生を予感させる結末はぐっと来るものがありました。
読了日:07月26日 著者:秋吉 理香子
灰と幻想のグリムガル level.14++ もし君とまた会えたなら (オーバーラップ文庫)灰と幻想のグリムガル level.14++ もし君とまた会えたなら (オーバーラップ文庫)感想
ランタとモグゾーの料理対決、メリィがハルヒロたちと出会う前のエピソード、ハルヒロたちと別れたユメのその後、そしてユメと再会したランタ。メリィは最初そっけなかった印象でしたけど、メリィ視点の心情描写を読むと本編の時どんな風に描かれていたのか読み返したくなりますね。それにしてもユメもそんなことになってたのかとか、意外な人物との邂逅に驚きましたが、それだけ時間経過しているとみんないろいろありますね。ユメもランタも随分強くなったみたいで、ハルヒロたちもどうなっているのか、どれくらい強くなっているのか気になります。
読了日:07月27日 著者:十文字青
化学探偵Mr.キュリー8 (中公文庫)化学探偵Mr.キュリー8 (中公文庫)感想
理学部の排水から検出された覚醒剤。大学内で撮影された爆破動画。そして研究室で体調を崩す学生の意外な原因を沖野と彼のライバル・氷上が探る第八弾。大学内のいろいろな問題に首をツッコミ解決してゆく舞衣と、それに巻き込まれる沖野という構図が定番化してきてますが、やってくるたびにあーだこうだ言ってはいても沖野は舞衣の行動を評価してるんだと思うんですよね。もう少し二人の関係が進展してもいいとは思うんですが、舞衣の天然発言に動揺することはあっても道のりはまだまだ険しそうですね(苦笑)その点国島さんあたりに期待ですか。 
読了日:07月28日 著者:喜多 喜久
ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式感想
今注目の著者が明かす、大きく切り替わった時代をしなやかに生き抜く「思考法」「働き方」「生き方」「キャリア」「学び方」についての考え方。「役に立つ」から「意味がある」に価値観がシフトしつつあるこれからの時代に必要なのは物事を解決する力や予測ではなく、物事を発見する力や構想力。社会構造の変化を6つのトレンドで読み解きつつ、24の新時代の思考・行動様式をオールドタイプからニュータイプへのシフトという形で解説した本書は頷けるところも多く、時代とともに求められる力も変わってゆくことを改めて実感するオススメの一冊。 
読了日:07月28日 著者:山口 周
Think CIVILITY(シンク シビリティ) 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略であるThink CIVILITY(シンク シビリティ) 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である感想
ビジネスでも人間関係でも最強の武器になる礼節の力を解説した一冊。不機嫌だったり独善的だったり横暴だったり、つまらない無礼な態度がストレスに繋がってパフォーマンスの低下を招き、人間関係を破壊し、優秀な人材を去らせる負のスパイラルに陥るという指摘はもっともで、礼節を重視した姿勢が職場の良好な人間関係がポジティブな仕事へと繋がるというのはそのとおりなんですよね。不要なコミュケーションのストレスを抱えたり、労力を割くのは本当に時間のムダで、これを読んでそういう部分を少しでも減らしていければとしみじみと思いました。
読了日:07月28日 著者:クリスティーン・ポラス
線は、僕を描く線は、僕を描く感想
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生・青山霜介。アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会い、初めての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく青春小説。湖山に気に入られてその場で内弟子にされた霜介と、反発して翌年の「湖山賞」での勝負を宣言する湖山の孫・千瑛。初心者ながらも水墨画にのめり込んでいく霜介に、彼と関わるうちに千瑛もお互いに刺激を受けて変わっていって、才能だけでも技術だけでもない水墨画の世界で、その本質に向き合い続けた二人が迎える結末には新たな未来が垣間見えました。面白かったです。
読了日:07月29日 著者:砥上 裕將
スーパーカブ4 (角川スニーカー文庫)スーパーカブ4 (角川スニーカー文庫)感想
卒業も近づく高校3年生の冬。小熊をヘッドハンティングしたいというバイク便会社の社長・浮谷が現れ、バイク便のバイトを始め、大晦日の夜に幽霊のような少女・史に出くわす第四弾。何というかすっかりカブ中心の生活になっている小熊とか礼子がほんとに女子高生なの?と思うハードボイルドっぷりで、そんな彼女たちが不器用なりに友人たちのためにアドバイスしたり、人の恋路に余計なおせっかいをしてみたり、さらには災害ボランティアにまで奔走する展開には驚かされましたが、これはこれでこの物語らしいエピソードだったのかもしれないですね。
読了日:07月29日 著者:トネ・コーケン
九度目の十八歳を迎えた君と (ミステリ・フロンティア)九度目の十八歳を迎えた君と (ミステリ・フロンティア)感想
通勤途中の駅のホームで十八歳のままの姿の高校の同級生・二和美咲の姿を目撃した間瀬。周囲は感じない違和感を持った彼が、九度目の十八歳を迎える彼女の謎を追う追憶のミステリ。間もなく三十歳になる間瀬と再会した十八歳の美咲。十八歳の繰り返しから彼女を解放するため、かつての友人や恩師を訪れる展開では、再会する夢破れた同級生たちのありようや、振り返る自らの過去やかつて抱いた美咲への想い、そして回収されてゆく伏線の先には当時知り得なかったほろ苦い真相があって、けれどそれだけでは終わらない結末がとても印象的な物語でした。
読了日:07月30日 著者:浅倉 秋成
精霊幻想記 14.復讐の叙情詩 (HJ文庫)精霊幻想記 14.復讐の叙情詩 (HJ文庫)感想
ロダニアの客船から二人の王女・クリスティーナとフローラが誘拐され、一方プロキシア帝国の初代皇帝から仇敵ルシウスの行方に関する情報を入手したリオがパラディア王国へと向かう第十四弾。圧倒的なリオと対決する前に着々と罠を張り巡らせてゆくレイスとルシウスの確執。そして再び対峙するリオとルシウスの因縁の決着。そこまでの流れが最終的にこの状況を作り出すための伏線だったと思えば、今回のエピローグもまた次なる展開に向けた布石ということになりそうですね。今回新たに登場した勇者・蓮司の今後の動向も気になるところではあります。
読了日:07月30日 著者:北山結莉
最強魔法師の隠遁計画 9 (HJ文庫)最強魔法師の隠遁計画 9 (HJ文庫)感想
突如乱入してきたイリイスを退け、何とか学園祭の賑わいを守ったアルス。続く学園祭に今度はシングル魔法師・レティが学院を訪れる第十弾。そんな風に公然と学園祭訪れたら騒ぎになるのも当然な有名人・レティの登場の仕方や自由人ぶりには苦笑いでしたが、そんな彼女がもたらした「バナリス」奪還任務は諸々の解説を含めて今回が繋ぎという印象で、最後に状況が明らかになったことで次巻あたりから奪還に向けて本格的に動きそうですね。新キャラ・リリシャはいろいろありそうですが今回は顔見世程度で、今後どう絡んでくるのか期待というところで。
読了日:07月30日 著者:イズシロ
ロードス島戦記 誓約の宝冠1 (角川スニーカー文庫)ロードス島戦記 誓約の宝冠1 (角川スニーカー文庫)感想
呪われた島ロードスに平和が訪れて百年、フレイムの王位継承者に禁忌を犯すディアスが現れ、不戦の誓いに仇なす帝国に対抗すべくマーモ公国の王子・ライルたちが立ち上がる新たなロードスの騎士を巡る物語。前作から百年後の世界で圧倒的な力を誇るフレイム王国を軸とした争乱に、マーモ公国の王子・王女たちがそれぞれ動き出す群像劇的な展開でしたけど、特にここからどう状況を覆すのか期待したい主人公・ライルと、あえてフレイムに身を投じたその兄・ザイードという対照的な二人が物語を盛り上げてくれそうです。いやこれは続巻が楽しみですね。
読了日:07月31日 著者:水野 良
あなたのことを、嫌いになるから。 (講談社ラノベ文庫)あなたのことを、嫌いになるから。 (講談社ラノベ文庫)感想
感情が昂ぶると最悪死に至る病『感情性自己免疫疾患』。そう診断されて以来、感情を無価値なものだと思い生きてきた四東愛都が、笑顔を絶やさない元気なクラスメイト奈々川恵実と出会う青春小説。事情を知らないまま一緒に過ごす時間を増やしていく積極的な恵実、愛都を見守ってきたいとこの春乃と主治医の橙香。命を落とすかもしれないと知りつつも育まれてゆく感情と、大切な存在だからこそ分からなくなってゆく複雑な想いがあって、手放したくない共にありたいと葛藤し続けた二人の選択がとても印象的な物語でした。これは是非読んで欲しいです。
読了日:07月31日 著者:氷高 悠
スーサイド少女 (講談社ラノベ文庫)スーサイド少女 (講談社ラノベ文庫)感想
立入禁止の屋上が主な生息地の高校生・因幡が、そこで出会った先輩の鈴鹿涼子。飛び降り自殺を止めた鈴鹿に興味を覚えた因幡が、いじめられっ子の後輩・小刑部智世とともに鈴鹿のストーキングを始める青春小説。死のうとしては無感動にやめる鈴鹿の背中を押したいと感じ、小刑部のストーキング技術を使って鈴鹿の心情に迫ってゆく因幡。それぞれが抱えるどうにも屈折した想いは複雑で、執着ゆえにその行動もどんどんエスカレートしていって、育まれてゆく奇妙な連帯感をぶち壊し本音でぶつかり合ってしまう不器用な彼らの結末は悪くなかったですね。
読了日:07月31日 著者:衛元 藤吾
全肯定奴隷少女:1回10分1000リン (MF文庫J)全肯定奴隷少女:1回10分1000リン (MF文庫J)感想
英雄に憧れて冒険者になった少年・レンが、公園で見かけた貫頭衣を身に纏う銀髪で奴隷姿の全肯定少女。彼女に1回10分1000リンで全肯定してもらううちに、肯定された人々の心境も変わってゆくファンタジー。怪しい看板を掲げて全肯定・全否定を使い分けつつ悩める人々を導いてゆく奴隷少女のお悩み相談。シンプルなストーリーから垣間見えてくる彼女の事情があって、彼女に励まされながら成長してゆくレンの物語があって、そんなエピソードの積み重ねが効いてくる展開が印象的でした。彼らの微笑ましい恋模様の行方も気になるところですね。 
読了日:07月31日 著者:佐藤 真登

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