読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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【年末企画その2】独断と偏見で選ぶ16年にスタートしたオススメライトノベルファンタジー+4

 というわけで昨日の青春小説に引き続き第二弾としてファンタジーものです。とはいっても自分の中のその辺の定義はわりと適当なので、面白いから紹介しているくらいの感覚で眺めてもらえたら幸いです(これは違うかもだけど紹介したいと思った4作品もおまけで最後に追加しています)。今年もなかなかいい作品がたくさん刊行されていますが、売上が厳しいのか続巻の予定が見えてこないものも多いです。続きが読みたい作品ばかりなので、気になった作品があったら是非買ってみてください。

アサシンズプライド 暗殺教師と無能才女 (ファンタジア文庫)

アサシンズプライド 暗殺教師と無能才女 (ファンタジア文庫)

 

 マナという能力を持つ貴族が人類を守る責務を負う世界。公爵家の生まれながらマナを持たない少女・メリダの元に、依頼を受けた暗殺者のクーファが家庭教師として派遣される物語。努力家なのにマナを発現させる見込みに乏しいメリダを見て、家庭教師を続けるか暗殺するか決断を迫られたクーファの意外な行動から動き出す物語は、テンポの良いストーリー展開にキャラもよく動いてとても面白かったです。素直で努力家なメリダと、一見クールなのに彼女のために奔走せずにいられない訳あり家庭教師クーファの今後がどうなるのか注目のシリーズです。現在4巻まで刊行。

いつかの空、君との魔法 (角川スニーカー文庫)

いつかの空、君との魔法 (角川スニーカー文庫)

 

 上空を覆うダスト層雲によって空の青さを知らず、人々の生命活動に精霊が不可欠な世界。ダスト層雲を払い精霊を呼び寄せるヘクセを務める高所恐怖症のカリムと幼馴染の少女・揺月の物語。幼い頃のカリムの危機を救い代償を負った揺月に負い目を感じて、長らくすれ違ったままの二人。街を危機に陥れる規模の精霊不足という危機に共に挑む中で描かれる精霊と戯れるグラオベーゼンの幻想的な描写や、随分遠回りこそしたものの自分の気持ちにきちんと向き合って、失われかけた絆を取り戻してゆく二人の繊細な距離感がとても素晴らしかったと思いました。12月末に2巻目が刊行予定。

ゴブリンスレイヤー (GA文庫)

ゴブリンスレイヤー (GA文庫)

 

 ゴブリン討伐だけで銀等級まで上り詰めた稀有な存在・ゴブリンスレイヤー。そんな彼が冒険者として初めての依頼でピンチだった女神官を助けるところから始まる物語。冒頭から情け容赦のない展開が待っていて面食らいますが、視点を変えるとゴブリン相手の戦い方も奥が深く、えげつない方法も厭わずにゴブリンの習性や倒し方をひたすら極め、世界を救うことには興味がない変わり者のゴブリンスレイヤーが、直面した危機的状況で身近な人を失うことを繰り返さないために、仲間に助けを求めて立ち上がる展開はなかなか来るものがあって面白かったです。17年1月に4巻刊行予定。

 聖職者になる夢を志す青年コルは恩人のロレンスが営む湯屋『狼と香辛料亭』を旅立ち、そんなコルの荷物にこっそり潜んでロレンスとホロの娘・ミューリが共に旅立つ新シリーズ。ホロの娘らしさも兼ね備えた自由奔放で天真爛漫なミューリと、そんな彼女に振り回される良くも悪くも真面目なコル。王国の王子に誘われ教会の不正を正す手伝いをする中で二人のひらめきと行動力で窮地を打開してゆく展開は、懐かしさと同時に新コンビらしさも感じられて楽しかったです。まだまだ未熟な二人が今後どのように成長して関係を築いていくのか楽しみです。

 亡くなった義妹の願いを胸に、どん底から這い上がってヴィヴィ・レインを探す旅に出た少年・ルカが戦いの中で3人の少女と運命の出会いを果たす恋と会戦の物語。再会した幼馴染の天才操縦士・ミズキ、王国軍を急襲した義妹と瓜二つの人造人間・アステル、そして二人きりの逃避行でルカに惹かれ、敗色濃厚な形勢をひっくり返したのを目の当たりにした斜陽の王国の王女・フィニア。それぞれ抱えるものがあり、強い因縁を匂わせながらも袂を分かった彼らが今後どんな物語を紡いでゆくのか。どうなるのか目が離せない、今後に期待大の新シリーズですね。17年1月に2巻刊行予定。

 大平原「大陸の皿」を統べる大国レーヴァテインにあるフィッシュバーン家の聖騎士伝説。聖騎士を継承した姉・アシュリーが巻き込まれた過去の因縁と、そんな姉を救うため弟・アイザックが旅立つ正統派ファンタジー。ブラコン気味な完璧超人のアシュリーと、それを疎ましく思いがちなそこそこ優秀なアイザック。旅立つ目的となった過去の因縁を巡る聖獣たちの執着にどう向き合うかがポイントになりそうですけど、今回の顛末を見る限りだとなかなか前途多難そうですね。途上で新たな出会いもあったりで今後に期待のシリーズです。現在2巻まで刊行。

 言葉を話す事を禁じられた王女・アルナと護舞官ユウファ。密かに想いを交わし合う二人が国を挙げての耀天祭に向かう途中で突如襲われ、放浪娘イルナや軍犬ベオルらと逃避行することになる物語。再会しても結ばれることはない二人が5年前に交わしていた約束。逃避行における不器用で繊細な交流や、育まれていった絆がかけがえのないものに思えたからこそ、いくつもの複雑な想いから引き起こされた事件の顛末は…。作品の世界観や概念はやや独特でしたが、彼らの数奇な運命が興味深い物語でした。全3巻。

魔法使いと僕1 (オーバーラップ文庫)

魔法使いと僕1 (オーバーラップ文庫)

 

 故郷と同胞を奪われ旅をしていたカルルが、旅の荷物さえ失い行き倒れていた少女エルシーと出会い、共に旅するボーイ・ミーツ・ガールファンタジー。全てを失い生きる意味を求めて旅するカルルと、世間知らずで未熟な訳あり魔法使いのエルシー。世慣れているカルルと一緒に旅することを望んだ優しいエルシーは、彼と引き離されて厳しい現実を突きつけられても芯の部分ではブレなくて、そんな彼女をカルルもまた放っておけないんですよね。エルシー自身は気づかぬまま秘密の契約を結んだ二人。その旅がどんなものになってゆくのか、今後が楽しみな新シリーズ。

デボネア・リアル・エステート 傭兵は剣を抜き、ハイエルフは土地を転がす。 (GA文庫)

デボネア・リアル・エステート 傭兵は剣を抜き、ハイエルフは土地を転がす。 (GA文庫)

 

 ダークエルフの呪いで少年の姿になってしまい餓死寸前な伝説の傭兵・ルーウィンが、人使いが荒く金に汚いハイ=エルフ・デボネアの下僕募集に応じ、不動産屋の仕事を手伝うことになる物語。見た目で伝説の傭兵と誰にも信じてもらえないルーウィン、唯我独尊で守銭奴なのに、どこかちぐはぐな行動を見せるデボネアの目的。ツンデレデボネアだけでなく無邪気な魔法人形ココや侠気のヴェローニカといった魅力的なキャラたちを上手く配した勢いのあるストーリー展開は、それでいて意外と筋立てもしっかりしていて好感のシリーズですね。現在2巻まで刊行。

この大陸で、フィジカは悪い薬師だった (電撃文庫)

この大陸で、フィジカは悪い薬師だった (電撃文庫)

 

 エイル教の新米角守となったアッシュが、教典に記された禁忌を冒し『害獣』を治療する異端者の薬師フィジカに命を救われ、二人で共に旅するファンタジー。経験不足もあって何事も教典に書いてあることを前提に善悪を判断しがちな頭の堅いアッシュと、そんな彼に呆れながら出会った害獣とされるものたちにきちんと向き合って治療し、もうひとつの真実を突きつけてゆくフィジカ。教えと現実の乖離にどうあるべきか苦悩するアッシュが、危機に陥ったフィジカを救い信頼関係を育んでゆく過程はとても良かったですね。全2巻。

ディエゴの巨神 (電撃文庫)

ディエゴの巨神 (電撃文庫)

 

 新大陸発見に沸き立つ変革の時代。密かに陰陽術の研究に励む海洋国家スピネイア王国の青年ディエゴが、腐れ縁の友人アルバロと共に新大陸遠征軍の船に乗り込む物語。遠征軍を撃退する森を守る巨神の存在と欺かれた原住民たちの不信、そしてディエゴの悔恨と彼を取り巻く複雑な因縁。理想を持つがゆえに現実に思い至らない面もあったディエゴでしたけど、レラやローゼンといった原住民たちと交流するうちに自分のなすべきことを見出してゆく展開は、新大陸と旧大陸の間で新たに時代を切り開こうとする熱い想いがぶつかりあってとても面白かったです。

 神に与えられた神剣とそれを駆る剣聖が祖国の威信をかけて戦う戦乱の時代。一匹狼の剣聖・リューインがラドガヴィガ王国から神剣を強奪した際、絶華十剣のソーロッドらと遭遇したことで物語が動き出すボーイ・ミーツ・ガールなファンタジー。王国と大公国が要塞を巡って対峙する状況で、卓越した強さを見せつつぬけぬけと両陣営に顔を出すリューインはいろいろと謎の多い主人公でしたが、いかにも著者さんらしいヒロインのソーロッドも記憶を失っている過去が何か曰くありげで、神剣を巡る物語がどんな方向に向かうのか、今後の展開が楽しみです。現在2巻まで刊行。

造られしイノチとキレイなセカイ (HJ文庫)

造られしイノチとキレイなセカイ (HJ文庫)

 

 トリティス教国有数の実力を持つ騎士・カリアスが幼馴染フィアナと共に向かった遺跡でホムンクルスの少女・イリスを保護し、二人で一緒に少女を育てる物語。実力者なのに自覚がなくモテているのに鈍感なカリアス、彼を慕いながらも気づいてもらえずやきもきする幼馴染のフィアナ、可愛くて猛烈な勢いで成長しながらもどこか機微には疎いイリスが、周囲の暖かな人たちに見守られながら家族としての絆を育み、街の危機には力を合わせて奮闘する物語は、のんびりした雰囲気の中にニヤニヤする展開もあってとても楽しかったです。現在2巻まで刊行。

 育ての親ルイジアが遺したボロ宿で借金取りに追われるラザロ。そんな彼のもとに北の王国随一の竜砲騎士だったルイジアの姪マデリーンが現れ、一緒に宿の再建を目指すことになる物語。見た目は金髪碧眼の美女で真摯な性格も、世間知らずで何をやらせてもポンコツなマドリーン。そんな彼女に振り回される日々に、借金取りや彼女を連れ帰ろうとする竜砲騎士見習いレティシア、さらにはルイジアと密約を結んでいた大海賊まで現れてドラバタ具合が加速してゆく展開はとても面白かったです。彼女の魅力で人が集まる(目標だけは壮大な)宿屋の今後に期待。

 

我が驍勇にふるえよ天地 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)

我が驍勇にふるえよ天地 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)

 

防衛戦の最中に味方の裏切りに遭い、師とも仰ぐ叔母と故郷とも言える領地を失ってしまった吸血皇子・レオナートが、仲間を集め再び立ち上がるファンタジー戦記。貴族たちが権力争いに明け暮れて内憂外患を抱える斜陽の帝国、その中で失ったものを取り戻すために地道に準備していたレオナートと仲間たちがついに迎えた転機。レオナートと彼を支えるシェーラを始めとする群像劇ならではの登場人物たちはそれぞれ存在感があって、今回の因縁にきっちりと決着を付け、裏で暗躍する存在も明らかにしてゆく展開は良かったです。今後の展開が楽しみのシリーズです。現在3巻まで刊行。

現実主義勇者の王国再建記 1 (オーバーラップ文庫)

現実主義勇者の王国再建記 1 (オーバーラップ文庫)

 

 勇者として突如異世界召喚された相馬一也が、富国強兵の献策からなぜか国王に気に入られて王位を譲られてしまい、国家再建に取り組む物語。率先して社畜のごとく働いて外交や食糧不足の問題に取り組むソーマと、そんな彼を頼もしく思うようになってゆく婚約者になった国王の娘・リーシア、そしてソーマに発掘された人材たち。精一杯取り組むソーマの姿勢が周囲に大きな影響を与えてゆく様子はなかなか面白かったですが、そんな彼に希望を見出す人たちもいれば反発する人たちもいたりで、またいろいろ事態が大きく動きそうな今後の展開が楽しみです。現在2巻まで刊行。

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

 

 超大国アルキランに突如侵攻されたイアンマッド王国。和議と引き替えに人質として赴くことになった国王の長男王子ルスタットと、残されて次々と危機に見舞われる弟王子レオームの二人の王子の物語。神話的な超越した力と、人が技術を覚え始めた端境期の世界観で、周囲で引き起こされる危機的状況に否応もなく巻き込まれてゆく弟レオームと、アルキランの先進的技術に触れつつ伝説の存在となってゆく兄ルスタットの数奇な運命はとても興味深いですが、それぞれの道を歩み始めた二人がどのような形で再会することになるのか今後がとても楽しみですね。17年1月に2巻が刊行予定。

白き姫騎士と黒の戦略家 (講談社ラノベ文庫)

白き姫騎士と黒の戦略家 (講談社ラノベ文庫)

 

 王太子レオンハルトを支え王国を発展させていく未来を夢想していた若き騎士ジーク。隣国の侵攻で王太子を喪った彼が、犬猿の仲である妹姫リーゼロッテとともに仇敵の勇者王ベルトランに立ち向かうファンタジー戦姫。規格外のベルトランの力に敗北した王国軍の殿を引き受けたジークとそこに押しかけたリーゼロッテ。大軍相手に寡兵で向かうため手段を厭わずにベルトラン打倒を狙うジークと、あくまで騎士道を重んじる彼女が対立しながらも同じ目的を果たすために力を合わせて打倒を目指してゆく展開はなかなか面白かったです。

 黒狐と怖れられる帝国皇太子ウィルフレドは、亜人との一戦に勝利しながら凱旋後一転して偽嫡の嫌疑で罪人とされてしまい、自ら捕縛から解放した獣姫に救われ亜人たちの元へ向かうファンタジー戦記。冷静で必ずしも戦いを好まない探究心旺盛なウィルフレドと、帝国と敵対する亜人たちとの邂逅。内乱状態にある国内の政治的理由から侵攻してくる帝国軍と、自らが生きるために亜人に協力するウィルフレド。複雑な立ち位置にありながらも意外と迷わない彼よりも、周囲の方が色々と辛い選択を強いられそうですね。とても面白かったので続刊を期待しているシリーズです。

獅子皇と異端の戦巫女 (ファミ通文庫)

獅子皇と異端の戦巫女 (ファミ通文庫)

 

 「災禍の翠蛇」復活の兆候がある中、対抗できる力を持った凪姫たちが消息を絶ったことが明らかになり、彼女たちを率いる獅子皇・ウィズが唯一残る凪姫・メロフィーユと共に凪姫たちを探す旅に出る物語。消息を絶ったことが明らかになった五人の凪姫。彼らが旅先で出会った異世界から強制召喚された魔王・デミシア、災禍の翠蛇復活のためには手段を選ばない黎明衆の存在。メロフィーユにはヒロインたちの軸になる存在感がありますが、戦友の凪姫たちもまた様々な事情を抱えていそうですし、面白くなりそうな雰囲気は十分感じられたので続巻に期待。

押しかけ軍師と獅子の戦乙女 (HJ文庫)

押しかけ軍師と獅子の戦乙女 (HJ文庫)

 

 明津国生まれのクロウが遠い異郷の地エルトレス王国で若き騎士団長クラヴェリーナと出会い、軍師として押しかける物語。クロウが言葉を十分に理解しきれない序盤はもどかしく、また軍略を軽視しがちな王国のありようにも首を傾げましたが、高い志を持ち続け不遇にも屈しないクラヴェリーナがたびたび陥る窮地に、最初は不審者扱いだったクロウが限られた条件の中で状況を打破して、彼女や従卒リフィの信頼を得てゆく展開はなかなか面白かったです。次巻では腐敗した王国内での立身出世だけでなく、外敵の侵攻や難敵も出現しそうで戦記としても期待。

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 1.可能性の始まり (HJ文庫)

-インフィニット・デンドログラム- 1.可能性の始まり (HJ文庫)

 

 画期的で一大ムーブメントとなったダイブ型VRMMO。大学受験で周回遅れになってしまったものの、兄に誘われて大学生・玲二がゲームに参加する物語。プレイスタイルによって独自に進化する<エンブリオ>を相棒に戦う世界。様々な思惑で事態が再び動き始めた状況で参加した玲二が、癖のある能力の活かし方を試行錯誤しつつ、面白い仲間も加えていく展開はテンポも良くてキャラもよく動き、クマキグルミ姿の兄が解説・サポート役として配置される安心設計。1巻目としては十分な可能性を提示してくれましたし、ここからどう動かすのか次巻に期待。

異世界詐欺師のなんちゃって経営術 (角川スニーカー文庫)

異世界詐欺師のなんちゃって経営術 (角川スニーカー文庫)

 

 大詐欺師のヤシロが『嘘が吐けない巨大都市』に16歳の少年として転生し、お人好し巨乳美少女ジネットの経営する食堂を救うために力を貸す物語。『精霊神』により嘘吐きはカエルにされてしまう多層世界。通貨偽造を疑われて逃亡の身となったヤシロを救ってくれたジネット。主人公にセクハラまがいの言動がやや多いあたりは読む人を選びそうですが、窮地に陥った彼女を見捨てられないあたり、ヤシロも決して悪い人ではないんですよね(苦笑)尻上がりにテンポも良くなるコメディ展開でなかなか面白かったです。現在3巻まで刊行。

図書館ドラゴンは火を吹かない

図書館ドラゴンは火を吹かない

 

 森に住む骨の魔法使いに拾われて育てられた少年ユカが、魔法使いへの偏見を払拭するための旅に出て、火竜のリエッキと運命的な出会いを果たし共に旅を始める物語。ユカを育てた骨の魔法使いと、お互いをかけがえのない存在と思う二人の旅、ユカの師となった踊り子と彼女の想い人・色の魔法使いの物語。100年後を生きるリエッキが抱える寂しさが切ないですが、それだけ彼らと共に生きた時間がかけがえのないものだったんですよね。物語の雰囲気もなかなかで、ユカたちの旅の続きも気になりますし、リエッキとカルメたちの今後も期待したいですね。

 

あと以下4点はジャンル的にちょっと違うのかもですが、面白かったのでついでにここで紹介。

ストライクフォール (ガガガ文庫)

ストライクフォール (ガガガ文庫)

 

 代理戦争として発展した宇宙競技ストライクフォール。そんなストライクフォールに魅せられたひとり鷹森雄星が、ストライクシェルに身をつつみ広大な宇宙のフィールドに挑む物語。はるか先を行く若き天才な弟・英俊と雄星を見守る幼馴染・環という定まらない三角関係。雄星に変化をもたらしたアデーレとの出会い。アデーレや英俊との戦いの中からようやく力の片鱗を見出しつつあった雄星が思わぬ事態に遭遇し、あえて無謀な戦いに挑むことを決意する熱くスピード感溢れる展開はとても面白かったです。今後の困難を予感させる結末でしたが続編に期待。

インスタント・ビジョン 3分間の未来視宣告 (角川スニーカー文庫)

インスタント・ビジョン 3分間の未来視宣告 (角川スニーカー文庫)

 

 未来に3分間だけ自分の意識が飛ばされる奇病「夢現譜症候群」のパンデミックで大混乱に陥りがちな世界。殺人鬼になる未来視を見たレオが相棒の少女・ティアと出会う物語。未来視を知られているがゆえに難しい立場にあるレオと謎めいた立ち位置のティア。パンデミックを発生させる犯人を追う中で異能を用いた熱く勢いのあるバトルと、それぞれの立ち位置での正義が対立するシリアスな世界観はなかなか面白くて、そんな中で揺れる相棒・ティアとの信頼関係を再構築してゆく過程が著者さんの真骨頂なのかなと(苦笑)続巻期待したい新シリーズですね。

夜明けのヴィラン 聖邪たちの行進 (ダッシュエックス文庫)

夜明けのヴィラン 聖邪たちの行進 (ダッシュエックス文庫)

 

 ヒーローと悪人であるヴィランの存在が科学的に証明された世界。最凶最悪のヴィランの息子として生まれた高校生のユウマが、Dr.デブリードマンが巻き起こしたヒーロとヴィランの境を超えた壮大な戦いに巻き込まれてゆく物語。分かりやすいヒーローとヴィランの構図がどこかアメコミっぽい雰囲気でしたが、ヒーローを次々と殺しテロを仕掛けるDr.デブリードマンと超人協会の因縁もあり、立ち位置の難しい主人公や正義とは何かというテーマをテンポの良い読みやすい文章で上手く描いていたと思いました。面白かったので続きが出るようなら期待。

 新宿『くじら堂書店』店長・宮内の元にアイドルの桃坂琴美が現れ、元トラブルシューターだった彼にストーカー解決の依頼を持ちかける物語。バイトにも舐められ仕事に対して思うことはあっても、自らが書店人であることに生き甲斐を感じている宮内ですが、一方で困った人のために奔走する姿もまた彼らしさなんですよね。宮内も頭が上がらない店員吉村さんや意外な一面も見せた琴美、そしてかつての仲間たちも魅力的な存在で、レーベルの路線に沿いながらも著者さんらしさがよく出ていた作品でした。まだまだいろいろ書けそうですし続編にも期待です。

 

年末企画としてはあと2本、「オススメライト文芸」「その他一般文庫単行本」を予定しています。なんとか年内にはアップしたいと思いますので、よろしくお願いします。