読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2017年上半期注目のオススメ新作ライトノベル恋愛・青春小説14選

 6月ももうすぐ終わりということで、一年の半分を過ぎます。ということで今年1~6月に刊行になった新作で自分が読んだ中から上半期のオススメを紹介したいと思います。現時点で予定しているのは【ライトノベル恋愛・青春小説】【ライトノベルファンタジー】【ライト文芸】【一般文庫】の4選。今回その第一弾としてライトノベル恋愛・青春小説を14作品紹介します。

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

 

 期待もない新学年のホームルーム。高校生・細野亮の前に愛してやまない物語の中にいた「トキコ」そのままの少女・柊時子が現れる出会うはずがなかった読者と主人公の物語。見れば見るほどそのままの時子との出会い。一緒に過ごしてゆくうちに想いが少しずつ積もってゆく一方で、自分の中で湧き上がってくる違和感。主人公の周辺を切り取ったようなクローズな世界観で、あまりにも不器用な二人の距離感にもどかしくもなりましたが、物語をきっかけに知り合った二人が物語で心を通わせて、これからの二人の世界の広がりを予感させる素敵な物語でした。 

リンドウにさよならを (ファミ通文庫)

リンドウにさよならを (ファミ通文庫)

 

 【第18回えんため大賞ファミ通文庫部門<優秀賞>】
想いを寄せていた少女・襟仁遥人と共に屋上から落下し死んでしまったらしい神田幸久。二年後地縛霊として目覚めた彼はクラスでいじめに遭う穂積美咲に存在を気づかれ彼女と友達になる青春小説。自分の存在に気づいてくれた少女・美咲の優しい一面を知って現状を変えようとアドバイスをし、美咲が勇気を持って踏み出した一歩から少しずつつ変わってゆくその境遇。繊細な描写を積み重ねて作り上げられた伏線を回収してゆくことで意外な事実も明らかになっていって、爽やかで納得感のある結末まで組み上げたその構成力は今後に期待の作家さんですね。 

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

 

【第1回カクヨムWeb小説コンテスト<特別賞>】
高校二年生の春、ひとり暮らしを始めるはずだった弓月恭嗣が、不動産屋の手違いでひとつ年下の帰国子女・佐伯貴理華と同居するはめになってしまう物語。無防備な距離感で接してきて家の中と外とでは印象が違う佐伯さんと、苦い過去を持つがゆえに家の外では一定の距離を置こうとささやかな抵抗を続ける弓月くん。表情豊かでキャラとしてもよく動いている佐伯さんとの同居生活が弓月くんを少しずつ変えていって、その変化がクールな弓月くんの元カノ宝龍さんや周囲の友人たちにもまた影響を及ぼしてゆく展開はとても良かったです。現在二巻まで刊行。

いなり寿司しか食べられない呪いを祓うため神々の住む島・白結木島を訪れた高校生春秋。そんな彼が神様との縁を切ることで怪異を祓う花人の後継者の少女・空と出会い、怪異解決に挑む沖縄青春ファンタジー。天真爛漫でどこまでもフリーダムだけれど島想いな空たちに翻弄されながら、徐々に変わってゆく春秋の心境。師匠を亡くし未熟を自覚しつつも、事情を知って春秋のために呪いを解こうとする空の決意。のびやかな舞台で繰り広げられる物語の結末はちょっぴり切なくて、けれどそれを乗り越える爽快な読後感は著者さんらしい魅力に溢れていました。

追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ (ファンタジア文庫)

追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ (ファンタジア文庫)

 

【第29回ファンタジア大賞<金賞+審査員特別賞>】
二学期初日。野球部を辞めた篠山マサキが教室で遭遇したのは、自分の記憶にだけ存在しない少女・風間ハルカ。手紙の送り間違いを知らせてくれた女の子との文通をきっかけにその世界が変わってゆくSF系青春小説。うっかり優等生と評判のハルカの意外な一面を知ってしまうマサキ。怪しい文通をやりとりするたびになぜか突如変わってゆくハルカとの関係性。不器用な二人の距離感が微笑ましくて突然の急展開には呆然としましたが、真相を知って彼女のために奔走したマサキの決意と顛末は、荒削りながらも今後に期待したくなる爽やかな読後感でした。現在二巻まで刊行。 

【第1回カクヨムWeb小説コンテスト<特別賞>】
好意を寄せるクラスメイト・愛原そよぎの悩み事は想像を遥かに超えるもの。本気とも冗談ともつかない相談に真剣にアドバイスを送る二人による非日常系お悩み相談日常ラブコメ。秘密のはずなのにバレバレな質問をする天然娘・そよぎと、彼女に惹かれ気づかないふりをして真摯に答えてあげる幸助。そよぎだけでなく彼女の友人や弟・雪弥にも振り回されるドタバタ展開で、けれどそよぎが抱える秘密と次々と明らかになってゆく切ない過去や複雑な事情は切なくて、それでも周囲の人たちがいたからこそ迎えられたほっとする結末はなかなか良かったです。 

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (ガガガ文庫)

 

訳あって親友以外の他人との接触を断ち、部員が自分だけのジャーナリズム研究会に属する高校2年生の啓介。しかしうっかり美人な先輩の白鳥真冬の抱える謎を解いたことをきっかけに様々な事件やトラブルに巻き込まれてゆく日常系ミステリ。真冬のジャナ研入部により少しずつ変化し広がってゆく啓介の世界。彼が親友の大地や良太郎の協力も得ながら解いてゆく謎の真相。当事者にとってはほろ苦い結末であることが多かった一方で、それが停滞から前に進むための転機にも繋がっていて、続巻が出るようならまた読んでみたいと思わせるものがありました。 

青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。 (ガガガ文庫)
 

 勝ち組を呪う負け犬高校生の狭山明人と冷血美少女・小野寺薫。放課後に呼び出しを受けた二人が中等部の少女・藤崎小夜子の謎のボランティア活動に巻き込まれてゆく痛青春ラブコメ。藤崎の電波発言にドン引きしつつもいがみ合う二人が、やる気がないなりにメンヘラハンサムやヒキニートといった濃いキャラの相談者たちが抱える問題解決に動いて仲間が増えてゆく展開でしたが、負け犬を自負しひねくれた言動ばかりの狭山だからこそ誰も気づかなった真意に気づいてしまう皮肉な結末は、今後に期待したくなるポテンシャルを感じました。8月に2巻刊行予定。

しがないゲームディレクターで会社は倒産、企画も頓挫して実家に帰ることになった橋場恭也。輝かしいクリエイターの活躍を横目にふて寝して目覚めると、なぜか十年前の大学入学時に巻き戻っていた青春リメイクストーリー。落ちたはずの大学に受かっていて憧れの芸大ライフ、さらにはシェアハウスで男女四人の共同生活。とはいえ同居人はそれぞれキラリと光るものを持っているのが垣間見えてしまう厳しい現実。今回はこれまでの経験を活かして存在感を出せましたけど、まだまだ試される状況は続きそうで、気になる人間模様も含めて続巻が楽しみです。

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

 

 ある朝、同級生の雨宮翼が列車へ飛び込み自殺を図るのに関与してしまった永瀬。その自殺が忘れられない彼が友人の深井から過去に戻れるカプセルを手渡され、やり直すために過去へ遡る物語。最初は彼女に関わらないと決意したはずなのに、逆に雨宮に関わる機会が増えてしまう永瀬。そんな彼に改めて突きつけられる「蝶は羽ばたかない」という事実。それでも当事者の変えようとする意志によって変わることもあって、多くの人にとってはさほど変わらない、けれど確実に変わったその結末に、一抹のほろ苦さを感じながらもどこか救われる思いがしました。 

君と四度目の学園祭 (角川スニーカー文庫)

君と四度目の学園祭 (角川スニーカー文庫)

 

学園祭が間近に迫る高2の秋。連日大事故に繋がりかねないトラブルに見舞われ続けながら、なぜか幼馴染の少女・久遠に助けられていた結羽太。そんな折り久遠が学園祭で誰かに告白するという噂を聞く青春小説。そばにいるのが当たり前な久遠の想い人に気づけない結羽太。彼を死から救うためにやり直し続けてきた久遠に突きつけられる絶望。序盤展開の分かりづらさはやや気になりましたが、最後まで諦めない久遠の過去を知り、結羽太が失われかけていたものを取り戻しに行く展開は、報われないことも多い幼馴染ものとしてぐっと来るものがありました。 

ありえない青と、終わらない春 (講談社ラノベ文庫)

ありえない青と、終わらない春 (講談社ラノベ文庫)

 

 選択しなかった運命を選択するために未来から戻ってきたという少女・前田きららと出会った石崎海。戸惑いながらも真っ直ぐな彼女に惹かれてゆく物語。令嬢としてすでに敷かれているレールを歩むだけのきららの人生。イケメンで優秀な婚約者の存在。一緒にいるうちに想いを自覚してゆく一方で、突きつけられる容易には叶わない現実。二人の想いに焦点を当てるシンプルな構図にしたことで、その分周囲の人物描写があっさりとしていた感はありましたが、逡巡を乗り越えて未来を一緒に切り開いた二人のこれからを応援したくなる爽やかな青春小説でした。

終わる世界の片隅で、また君に恋をする (電撃文庫)
 

 名前も周囲の人たちとの関係も、その存在すらも全てを忘れ去られてしまう忘却病。全ての人々の記憶が消えていくこの世界で、アキが桜良先輩と忘却病に罹った人の最後の望みを叶えてゆく物語。保健室登校の桜良先輩の発案で始まった『忘却病相談部』。同級生とデートしたり、後輩の家族として過ごしたり、親友を思い出したい先輩など、その願いに寄り添い手伝うアキ。忘れられてしまう、忘れてしまう残酷な現実に向き合うことで見え隠れする複雑な想いがとても切なかったですが、それでも大切な想いを取り戻したエピローグには少しだけ救われました。

モノクローム・サイダー あの日の君とレトロゲームへ

モノクローム・サイダー あの日の君とレトロゲームへ

 

カクヨム「エッセイ・実話・実用作品コンテスト」受賞作】 

高校最後の夏を迎えた平凡なゲームオタクの高校生・百式長之介が、昼休みの屋上でゲームをしている女の子・鯨武由美と出会い人生が動き出す自伝的小説。最初は彼女の前を通るくらいで精一杯だった彼が、勇気を出して声を掛けたことで始まった一緒にゲームをするようになる日々。なかなか思うようにいかないことばかりでしたけど、不器用でも諦めずにきちんと向き合おうと奮闘する百式くんと、共に過ごす日々を送るようになった鯨武さんが二人らしい形で積み重ねてきた関係がとても素敵だと思いました。続編もまた書籍で読めること期待しています。

 

以上です。予定している残り3選も6月の新作を消化次第随時アップしていく予定です。よろしくお願いします。

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