読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2017年11月に読んだ新作おすすめ本

 今月の新作オススメはライトノベル4冊、その他文庫11冊、単行本5冊です。数えてみたらライトノベルは今回続刊メインで、買った新作は厳選した分どれもオススメできる作品なんですが、それよりも今回その他文庫の方が粒ぞろいでした。竹宮ゆゆこさんはライト文芸に転身してから一番良かったと思いますし、「ニセモノだけど恋だった」(宝島社文庫)「恋虫」(角川文庫)あたりの不器用な恋心、またアニメの原作小説らしいですが「Just Because!」(メディアワークス文庫)もまた青春小説として自信を持っておすすめできる一冊です。このあたりは是非もっと多くの人に読んでもらいたいですね。なかなか積読消化できなくて長らく積んでしまいましたが、白河三兎さんの「他に好きな人がいるから」もまた、ちょっと変化球ながらも著者さんらしい少し変わった恋愛ものでなかなか良かったと思いました。

 

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)

 

 目立たず冴えない自称幽霊の大地は、憧れの生徒会長・獅子神玲花の雑務を手伝うために生徒会室に通う日々。ある日偶然必勝の女神・白星絵馬の秘密に触れ、絵馬が大地の恋愛を全力応援し始める青春ラブコメ。絵馬に巻き込まれた彼女の友人・猪熊みりあと鷹見エレナに指導を受けて始まる大地のモテ改革。天然で暴走気味の絵馬が抱える秘密と、知ってしまった玲花の想い。いかにもありそうな揺れる心情を繊細に描きつつ、テンポが良く進む展開はぐいぐい読ませるパワーもあって、なかなか面白いラブコメになってきたと思いました。これは続巻に期待。 

青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中 (電撃文庫)

青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中 (電撃文庫)

 

 ARの技術が進化したアキバ特区でオタクの歩夢が偶然出くわしたスクールカースト最上位の同級生衣更着アマタ。歩夢がアマタに近づいた時、特区のAR空間に重篤な異変が発生してしまう青春小説。特区のバグ解消のためもあってオタショップバイト仲間の腹黒ロリっ子瑠璃や金髪コスプレ女ノエルの悩みに一緒に向き合ってゆく歩夢に突きつけられた、アマタの意外な正体と自身の過去の苦い思い出。失敗を悔いていたからこそ今があって、特区や歩夢に救われた人たちがいて、悩める不器用な登場人物たちの成長とほのかな想いを応援したくなる物語でした。

 五年前の大災害をきっかけに、不思議生物ニムエが体内に棲んでいる悠太。同じようにニムエを飼っていた同級生恵と出会い、二人で過去の大災厄回避と亡くなった恵の幼馴染・玖瑠美の救出を目指す物語。ニムエをきっかけに急速に距離を縮める二人の微笑ましい関係。ニムエを使い過去に戻る方法を発見して始まった計画の成果と思ってもみなかった大きな代償。それまでの展開を考えると悠太に突きつけられた運命の選択肢はあまりにも絶望的なものでしたけど、それでも諦めなかった彼らの機転と覚悟で乗り越え再構築されてゆく結末はとても良かったです。

 西洋・東洋の魔術師たちが闇に潜みながら生きる現代。陰陽師だった父の後を継いで探偵事務所を経営する女子高生ひよりが、同居人の魔女術使いレイジや女性魔術師・史鳳とともに謎の箱探しと連続殺人件解決に動き出す物語。史鳳が謎の女性から引き受けた詳細が不明な謎の過去探し。ひよりたちが警察から依頼を受けた不審な連続殺人事件の解決。繋がってゆく二つの事件に実力者のレイジと現時点では未熟なひよりのコンビを軸に挑む構図はさすがの安定感で、主人公の成長とレイジとの関係が今後どう変化していくのか、次巻に期待というところですかね。

 

 

応えろ生きてる星 (文春文庫)

応えろ生きてる星 (文春文庫)

 

 結婚直前の廉次の前に現れて突然のキスと謎の予言を残して消えた女。直後に婚約者に目の前で別の男と駆け落ちをされた廉次が、再会した女・朔と婚約者を取り戻すために奔走する物語。新婚旅行に行くはずだった二週間、謎多い朔と一緒に婚約者に見せつけるかのようにデートを満喫するフリをする廉次。彼女のことが気になり始めた頃にうっかり知ってしまうその背景。劇的な展開と爆発的な行動力が物語を動かし、因果応報をしっかり忘れないあたりに著者さんらしさがよく出ていましたが、ほろ苦くも未来を予感させる結末はとても良かったと思いました。

ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)

ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)

 

 俳優だった夢を諦めてレンタル彼氏として働いているカオル。そんな彼が高額な料金にもかかわらず職業を偽って予約を入れ続けるエイコと出会う物語。エイコが職業を偽ってお金を払いデートをする理由。偶然エイコの似たような境遇を知り複雑な想いを抱くカオル。夢を追いかけ続けるべきか現実を思い求めるか、分岐点で心揺れる二人が疑似恋愛のデートを重ねるからこそ育まれ、複雑になってゆくそれぞれの想いにはもどかしくなりましたが、不器用な二人が出会ったことで切り開かれた未来に明るい予感をつい期待したくなる不毛で素敵な恋の物語でした。

恋虫 (角川文庫)

恋虫 (角川文庫)

 

 政府が結婚相手を決めて、恋をした人は「恋虫」に感染したとして他者の感染を防ぐために駆除される世界。念願の『恋虫駆除隊』に入隊した四ノ宮美季が、救世主と呼ばれる上官・冬野花火と出会う物語。同期の首席で誰よりも恋という病に熟知しているはずの四ノ宮が直面する駆除の現実と苦悩する想い。感染した花火の兄・雪尋と婚約者・千春、二人に関わった花火それぞれのエピソード。こんな時代に美しくも儚い恋に向き合った彼らの真っ直ぐな想いにはじわじわと来るものがあって、諦めない孤独な花火が四ノ宮と巡り会えた幸運に救われる思いでした。

Just Because! (メディアワークス文庫)

Just Because! (メディアワークス文庫)

 

 高校三年の冬、残りわずかとなった高校生活。このまま何となく卒業していくのだと誰もが思っていた中、突然中学の頃に親の転勤で引っ越した瑛太が戻ってきて、少しずつ関係が変わってゆくTVアニメ原作小説。瑛太がかつて淡い恋心を抱いていた美緒、美緒が想いを寄せていた親友・陽斗との再会。陽斗の葉月への想いや、写真部存続のために奔走する恵那の思いも絡めて展開されてゆくこの青春群像劇は、止まったままだった過去の想いにきちんと向き合う物語でもあって、ひたむきで不器用なもどかしい想いを応援したくなるとても素敵な青春小説でした。

校舎五階の天才たち (講談社タイガ)

校舎五階の天才たち (講談社タイガ)

 

 「東高三人の天才」の一人篠崎から来光福音のもとへ届いた、僕を殺した犯人を見つけてほしいという手紙。福音は同じく手紙が届いた天才の一人加藤沙耶夏と事件を調べる学園ミステリ。遺書を残し電車に飛び込み自殺をした篠崎は誰かに本当に殺されたのか。天才であるということはどういうことか。傍若無人な加藤に振り回されつつ関係者たちから明かされる篠崎像から真相も掘り下げられてゆきましたが、深い苦悩を抱えていた彼のささやかな願いが、天才に憧れていた福音に伝わったのがこの物語の救いでしたかね。デビュー作ということで今後に期待。

螺旋の手術室 (新潮文庫)

螺旋の手術室 (新潮文庫)

 

 大学病院の教授選候補だった冴木真也准教授が手術中に不可解な死を遂げ、教授の座を争った医師も暴漢に襲われ殺害されるなど相次ぐ不可解な死。父・真也の死に疑惑を見つけた息子の裕也が同じ医師として調査を始める医療ミステリ。教授選が鍵と見据えその繋がりを調べる裕也。父の死がスキャンダルとなり婚約者の母に堕胎を迫られる妹の真奈美。真相を執拗に追う過程で明らかになる意外な真実。たったひとつの秘密を守るために起きた事件の真相は何とも切なくて、これから裕也が抱えながら生きてゆくものの重さについていろいろ考えてしまいました。

もってけ屋敷と僕の読書日記 (新潮文庫nex)

もってけ屋敷と僕の読書日記 (新潮文庫nex)

 

 尾道に暮らす中学2年の鈴川有季が、100円玉を投入すると老人・七曲が大量の本を押し付けてくる奇妙な自動販売機に遭遇して始まる友情と恋と家族の物語。本に埋もれた屋敷を終活整理するため本を手放そうとする七曲、小学校時代の同級生・翔矢、広島から引っ越してきた保育士・ひかり。紹介された本を絡めた4つのエピソードがあって、悩みや複雑な想いを抱えた彼らが本の自販機をきっかけにゆるく繋がるようになってゆく展開でしたけど、傷ついた時に自分のことを心配し奔走してくれる存在の大切さを改めて感じさせてくれた心温まる物語でした。

丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。 (角川文庫)

丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。 (角川文庫)

 

 本命の一流不動産会社の最終面接で大学生の澪が質問されたのは何と面接官の人数。質問した長崎次郎に霊が視えるその素質を買われ事故物件を扱う「第六物件管理部」で働くことになるオカルト仕事小説。これまで長崎一人だった「第六物件管理部」で働く澪が遭遇する数々の憑いている物件。ホラー展開が怖いわりに解決はわりとあっさりめでしたが、小心なのに暴走気味な澪に無愛想なイケメン・上司次郎、友人で霊障に敏感な爽やかイケメンの高木に霊犬・マメも相棒に加えテンポよく読めてシリーズ化もありそうですね。続巻出たらまた読んでみたいです。

今夜、きみは火星にもどる (角川文庫)

今夜、きみは火星にもどる (角川文庫)

 

 自分が火星人だと語る佐伯さんが気になって仕方ない国吉。突如数学で0点を取って留年の危機に陥った彼と、行き場のない想いを抱えた友人たちの青春小説。国吉が夏休みの数学の補修で毎日見る彼女と火星の白昼夢をきっかけに、急速に距離を縮めてゆく二人。彼らが積み重ねてゆくどこか危うい関係性が行き着いた、切ない現実が仄めかされる結末にはほろ苦さも残りましたが、国吉に邪険にされながら関わり続けることを選んだ高見の変化や、面倒見のいい相談相手だった山口先生たちとのやりとりも印象的で、著者さんらしさがよく出ていると思いました。

 同級生の不思議美少女・霧香と付き合い始めたばかりの大学生の凪が訪れた路地裏の珈琲店ブラックスノウ。店を手伝うことになった凪が霧香とともに様々なサイバー犯罪に触れてゆくサイバーサスペンス。凪たちが店に通う過程で明らかになってゆく実はサイバーセキュリティに精通しているマスターと、その彼を恨み大規模な犯罪を企む美青年・凌の因縁。最初に存在が示唆されてたびたび登場する凌と通じる内通者Aの正体が気になっていましたが、丁寧に展開を積み重ねていった末の少しばかりほろ苦い結末に、著者さんらしさがよく出ていたと思いました。

生きている理由 (講談社文庫)

生きている理由 (講談社文庫)

 

 滅び行く清の王女・愛新覚羅顯㺭として生まれて、日本に渡り父を助けた大陸浪人の川島浪速の養女となった川島芳子。国家を巡る思惑の間で翻弄された少女の数奇な運命と若き日の恋を描く激動の青春編。男装の麗人として波乱の人生を送った川島芳子を主人公に、滅びゆく清朝にあって身の危険を感じながらの日々と、日本に渡って人間関係や環境の大きな変化に直面した学生生活、そして恋と政略結婚に揺れる想いと、翻弄されながらも真っ直ぐに生きようとする多感な十代の芳子のありように、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。続巻も楽しみですね。 

 

 

さよなら僕らのスツールハウス

さよなら僕らのスツールハウス

 

 シェアハウス「スツールハウス」同じ屋根の下で笑い、ときめき、時間を共有した人たちがやがて懐かしく思い出す連作短編集。弁護士の直之が元彼女だったあゆみの結婚式の動画用に送った写真の意味、シャワールームの亡霊、フラワーショップで働く白石がかつての同居人で既婚の花織に見せられた写真、主と呼ばれた鶴屋素子がそこを去った理由。一緒に住んでいた思い出は楽しいことばかりでもなく、容赦ない時の流れを感じさせましたけど、ほろ苦さ以外のものも少しだけ垣間見せてくれた結末に、切なくても大切な思い出は変わらないことを感じました。

他に好きな人がいるから

他に好きな人がいるから

 

 寂れてゆく造船の田舎町。目立たないように鬱屈を抱えながら生きている高校生・坂井が、夜のマンション屋上で危険な自撮りを投稿し続ける白兎のマスクを被った少女と出会う青春恋愛ミステリ。苦い過去に縛られる少年と兎人間の秘密の共犯関係。クラスで浮いている少女・峰に巻き込まれてゆく学校生活と、彼女が意識する優等生の少女・鈴木。どこか危うさを感じさせる日々が続いた末に起きた事件とその真相は衝撃的で、いつまでも忘れられない坂井がこれからどうするのか、読み終わるとタイトルの意味がじわじわと効いてくる印象的な物語でした。

誰が死んでも同じこと

誰が死んでも同じこと

 

 日本を代表する一大コンツェルンの中枢・河帝商事の創業者一族が相次いで殺された。警察庁から派遣されたキャリア捜査官・十常寺迅は、河帝商事の内部事情をよく知る秘書の灰原円に無理矢理協力させ一族の暗部に踏み込んでいくミステリ。動機は相続争いと思いきや被害者は一族の中で出来の悪い方。河帝にそれほど思い入れのない円を助手兼ツッコミ役として連続殺人事件の真相を追う展開でしたけど、謎ときそのものよりそれぞれが語る思いに重きが置かれていて、それが著者さんらしさといい感じにブレンドされてこれはこれでわりと面白く読めました。

みさと町立図書館分館

みさと町立図書館分館

 

 田舎の小さな町のみさと町立図書館分館。33歳独身の実家暮らしの職員・遥の視点から、その図書館にある出来事とそこで働く3人のそれぞれのエピソードが綴られてゆく物語。母を亡くして試行錯誤が続いている父との関係。本の貸借トラブル&クレーム対処といった業務のあれこれや、徐々に明らかになってゆく同僚たちの実家事情など、日々移りゆく日常の中で変わってゆくもの変わらないもの、変えたくない大切なものは確かにあって、それぞれ悩みを抱えながらも生きていくありようの描写には、著者さんの優しい想いが詰まっているように思いました。

米澤穂信と古典部

米澤穂信と古典部

 

 書き下ろし新作短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」の他、古典部メンバー四人の本棚、著者の仕事場や執筆資料も初公開の古典部シリーズファンブック。短編で中学時代の読書感想文とそこに込められた秘密をメンバーに暴露された奉太郎はこっ恥ずかしかっただろうなと苦笑いしつつ、北村薫さん、恩田陸さん、綾辻行人さん、大崎梢さんといった方たちとの対談や隠れネタ、著者さんのこれまでの歩みなど、紹介された作品も相当読み込んでいるのが伺えて、著者さんのミステリやこの作品に込めた思いとこだわりが随所に感じられて楽しかったですね。

11月に読んだ本 #読書メーターより

今月は全体で95冊、書籍のみでは61冊と忙しくて体調もずっと良くなかったことを考えるとまずまず読めました。例によってマンガまで含めると文字数オーバーとなるので今回も書籍のみの一覧です。新シリーズ・続刊含めてなかなか豊作の一ヶ月で、いつもこれくらい充実しているといいなとはしみじみと実感するところです。
 
11月の読書メーター
読んだ本の数:95
読んだページ数:23982
ナイス数:5937

この素晴らしい世界に祝福を!13 リッチーへの挑戦状 (角川スニーカー文庫)この素晴らしい世界に祝福を!13 リッチーへの挑戦状 (角川スニーカー文庫)感想
ストーカーに逃げ惑い朝帰りをかましたウィズがバニルやカズマに相談。どこか噛み合わないようにも見える話し合いの中で大いなる勘違いが始まる第十三弾。ダクネスがことあるごとにエロ担当&振られ役扱いでいじられたり、トドメをさすめぐみんだけさりげなくレベルが上がっている状況には苦笑いでしたけど、何よりストーカーとのどこか噛み合わないやりとりに周囲は首を傾げつつも、愛の告白と真摯に受け止めて戸惑うらしくないウィズは乙女な感じで可愛かったです(その分反動も凄かったですけどw)次はまた紅魔族ネタですか。どうなることやら。
読了日:11月30日 著者:暁 なつめ
絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)感想
目立たず冴えない自称幽霊の大地は、憧れの生徒会長・獅子神玲花の雑務を手伝うために生徒会室に通う日々。ある日偶然必勝の女神・白星絵馬の秘密に触れ、絵馬が大地の恋愛を全力応援し始める青春ラブコメ。絵馬に巻き込まれた彼女の友人・猪熊みりあと鷹見エレナに指導を受けて始まる大地のモテ改革。天然で暴走気味の絵馬が抱える秘密と、知ってしまった玲花の想い。いかにもありそうな揺れる心情を繊細に描きつつ、テンポが良く進む展開はぐいぐい読ませるパワーもあって、なかなか面白いラブコメになってきたと思いました。これは続巻に期待。 
読了日:11月30日 著者:まほろ勇太
いつかのクリスマスの日、きみは時の果てに消えて (ファミ通文庫)いつかのクリスマスの日、きみは時の果てに消えて (ファミ通文庫)感想
五年前の大災害をきっかけに、不思議生物ニムエが体内に棲んでいる悠太。同じようにニムエを飼っていた同級生恵と出会い、二人で過去の大災厄回避と亡くなった恵の幼馴染・玖瑠美の救出を目指す物語。ニムエをきっかけに急速に距離を縮める二人の微笑ましい関係。ニムエを使い過去に戻る方法を発見して始まった計画の成果と思ってもみなかった大きな代償。それまでの展開を考えると悠太に突きつけられた運命の選択肢はあまりにも絶望的なものでしたけど、それでも諦めなかった彼らの機転と覚悟で乗り越え再構築されてゆく結末はとても良かったです。
読了日:11月29日 著者:瀬尾 つかさ
赫光の護法枢機卿2 (ファミ通文庫)赫光の護法枢機卿2 (ファミ通文庫)感想
アルゾラに与えられた極秘聖務はとある小国レンドシャールへの潜入捜査。キュリアロスとともに動き出すも潜入初日にいきなり兵士に捕まってしまう第二弾。レンドシャールが密かに進める禁忌の実験を潜入捜査で目の当たりにするアルゾラたち。出身地へ派遣された枢機卿・ウニカが母国に抱く複雑な想い。相変わらずに見える実力はあっても口が悪いキュリアロスとドジっ子なアルゾラの関係にも変化の兆しがあって、それぞれ背景を抱えるクールな枢機卿ヒロインたちはカッコ良くて、著者さんらしい展開や世界観がとても良かったですね。続巻にも期待。 
読了日:11月29日 著者:嬉野 秋彦
もってけ屋敷と僕の読書日記もってけ屋敷と僕の読書日記感想
尾道に暮らす中学2年の鈴川有季が、100円玉を投入すると老人・七曲が大量の本を押し付けてくる奇妙な自動販売機に遭遇して始まる友情と恋と家族の物語。本に埋もれた屋敷を終活整理するため本を手放そうとする七曲、小学校時代の同級生・翔矢、広島から引っ越してきた保育士・ひかり。紹介された本を絡めた4つのエピソードがあって、悩みや複雑な想いを抱えた彼らが本の自販機をきっかけにゆるく繋がるようになってゆく展開でしたけど、傷ついた時に自分のことを心配し奔走してくれる存在の大切さを改めて感じさせてくれた心温まる物語でした。
読了日:11月28日 著者:三川 みり
内通と破滅と僕の恋人 珈琲店ブラックスノウのサイバー事件簿 (集英社文庫 い 72-3)内通と破滅と僕の恋人 珈琲店ブラックスノウのサイバー事件簿 (集英社文庫 い 72-3)感想
同級生の不思議美少女・霧香と付き合い始めたばかりの大学生の凪が訪れた路地裏の珈琲店ブラックスノウ。店を手伝うことになった凪が霧香とともに様々なサイバー犯罪に触れてゆくサイバーサスペンス。凪たちが店に通う過程で明らかになってゆく実はサイバーセキュリティに精通しているマスターと、その彼を恨み大規模な犯罪を企む美青年・凌の因縁。最初に存在が示唆されてたびたび登場する凌と通じる内通者Aの正体が気になっていましたが、丁寧に展開を積み重ねていった末の少しばかりほろ苦い結末に、著者さんらしさがよく出ていたと思いました。
読了日:11月28日 著者:一田 和樹
小説家・裏雅の気ままな探偵稼業 (オレンジ文庫)小説家・裏雅の気ままな探偵稼業 (オレンジ文庫)感想
売れない小説家・裏雅がひそかに観察を続ける、彼を「雅兄様」と慕う春宮伯爵家令嬢茉莉子。彼女の周囲で起こる謎を雅が解決する浪漫ホラーミステリ。幽霊に取り憑かれて自殺した同級生、茉莉子に執着する幼馴染、引きこもってしまった少女が抱える秘密。大正浪漫的な雰囲気を舞台に、感情が欠落した少女と物書き探偵が遭遇する同級生たちの闇を描いた連作短編で、愛するものに対する歪んだ執着がもたらしたそれぞれの悲劇が描かれていますが、せっかくの設定を活かしきれていなかった感もあって、少しばかりもったいなかったかなという印象でした。
読了日:11月28日 著者:丸木文華
エプロン男子2nd 今晩、出張シェフがうかがいます (オレンジ文庫)エプロン男子2nd 今晩、出張シェフがうかがいます (オレンジ文庫)感想
それぞれの事情を持つ女たちから依頼が舞い込む出張シェフを派遣する「エデン」カッコイイ料理上手な男たちが彼女たちの家で心を込めて腕をふるう第二弾。自分の本当の気持ちが分からない千鶴、夢見がちで妄想に浸ったまま再就職ができずにいる芽衣子、才色兼備ないのに過去にとらわれたままの友加里、離ればなれになる娘と翔子の最後のごはん。彼女たちのオーダーに込めた思いを汲み取り最高のご飯を食べてもらう展開は、一方で苦しかった過去を乗り越える転機にも繋がっていて、また読んでみたいと思わせるものがありますね。続巻期待しています。
読了日:11月27日 著者:山本 瑤
銃皇無尽のファフニール15 アンリミテッド・シャイン (講談社ラノベ文庫)銃皇無尽のファフニール15 アンリミテッド・シャイン (講談社ラノベ文庫)感想
これまで彼らが倒してきた敵を取り込み、全ての生命を否定して他世界そのものを喰らう闇と化した怪物アンゴルモア。死の化身たる巨竜に悠や少女たちが挑む第十五弾。学園長シャルロットの鼓舞による全人類からの支えを受けて、ロキ少佐や少女たちとも力を合わせて挑んだ総力戦。最後の戦いに向けた展開は少女たちそれぞれにきちんと見せ場があって、激闘だったわりには最後ちょっとしたオチもついて、読み始めた頃は正直ここまで長くなるとは思いませんでしたけど、みんなが笑い合えるいい感じにまとまった結末でした。短編集にも期待しています。 
読了日:11月27日 著者:ツカサ
これは経費で落ちません!  3 ~経理部の森若さん~ (集英社オレンジ文庫)これは経費で落ちません! 3 ~経理部の森若さん~ (集英社オレンジ文庫)感想
イーブンが信条な経理部の沙名子さん。プライベートでは太陽の存在に落ち着かなくなり、仕事でも様々な相談が持ち込まれる第三弾。広報課の契約社員・千晶の相談。責任逃れに走りがちな馬垣の言い分。倒されたツリー事件の真相。総務の平松さんの意外な一面。最近調子がいろいろ狂いがちな沙名子さんが可愛いですけど、曲者ぞろいの会社の中でも彼女はやはり破格の存在ですね。最後の勇太郎さんはそういうことだったのかな...真夕視点も興味深かったですが、これまた一癖ありそうな新しい経理部員が入ってきてどうなるのか次巻が楽しみですね。 
読了日:11月26日 著者:青木 祐子
Just Because! (メディアワークス文庫)Just Because! (メディアワークス文庫)感想
高校三年の冬、残りわずかとなった高校生活。このまま何となく卒業していくのだと誰もが思っていた中、突然中学の頃に親の転勤で引っ越した瑛太が戻ってきて、少しずつ関係が変わってゆくTVアニメ原作小説。瑛太がかつて淡い恋心を抱いていた美緒、美緒が想いを寄せていた親友・陽斗との再会。陽斗の葉月への想いや、写真部存続のために奔走する恵那の思いも絡めて展開されてゆくこの青春群像劇は、止まったままだった過去の想いにきちんと向き合う物語でもあって、ひたむきで不器用なもどかしい想いを応援したくなるとても素敵な青春小説でした。
読了日:11月26日 著者:鴨志田 一
DOUBLES!!―ダブルス―Final Set (メディアワークス文庫)DOUBLES!!―ダブルス―Final Set (メディアワークス文庫)感想
二年の冬、腕に大怪我を負った駆。一度は退部を考えながらもやっぱりテニスがしたいという駆の想い。相棒の琢磨は自らのテニスを研ぎ澄ませながら、駆の復帰を信じて待つシリーズ第五弾。テニスがしたいという想いがどんどん強くなってゆく駆と、他の仲間のように会いにいかず駆を信じる琢磨。最初は自分のことばかりでぶつかりあってばかりいた二人が、お互いの成長に刺激を受けながら絆を育んでいったり、部長や先輩として周囲にも目を向けるようになってゆく姿、そして最後の都立戦の激闘は熱く心に響く青春小説でした。次回作も期待しています。
読了日:11月25日 著者:天沢 夏月
さよなら僕らのスツールハウスさよなら僕らのスツールハウス感想
シェアハウス「スツールハウス」同じ屋根の下で笑い、ときめき、時間を共有した人たちがやがて懐かしく思い出す連作短編集。弁護士の直之が元彼女だったあゆみの結婚式の動画用に送った写真の意味、シャワールームの亡霊、フラワーショップで働く白石がかつての同居人で既婚の花織に見せられた写真、主と呼ばれた鶴屋素子がそこを去った理由。一緒に住んでいた思い出は楽しいことばかりでもなく、容赦ない時の流れを感じさせましたけど、ほろ苦さ以外のものも少しだけ垣間見せてくれた結末に、切なくても大切な思い出は変わらないことを感じました。
読了日:11月25日 著者:岡崎 琢磨
このライトノベルがすごい! 2018このライトノベルがすごい! 2018感想
今年の総合では40/50冊、新作で18/22冊。読んでないのはほぼ自分はいいかなと思った作品で、全体として見たら順位は異論ある人もいそうだけど、個人的には概ね納得のラインナップ。この時期出ているこの類の他の本はほとんどが新作メインで、そろそろ人気投票ではなく続刊シリーズ抜きの新作を中心に据えてもいいのでは?とはちらりと。とはいえどちらの良い点も活かせないか、あれこれ試行錯誤しているとは感じました。これだけ刊行点数がある中でアンケート回収者の71%が年間50冊以下だと、なかなか難しい部分もあるんでしょうね。
読了日:11月24日 著者: 
竜宮輝夜記 時めきたるは、月の竜王 (角川ビーンズ文庫)竜宮輝夜記 時めきたるは、月の竜王 (角川ビーンズ文庫)感想
神竜が禍神から国を護る『右記ノ國』。人の姿ではこの上なく美しい神竜の過酷な世話係として召し上げられた紗良が彼らの悲しみや不器用な気遣いを知る和風ファンタジー。ふとしたきっかけから冷酷に思えていた神竜たちの優しい本心が分かるようになってしまい、その姿を微笑ましく思ったり、愛しく思うようになってゆく紗良。そんな彼女を密かに気遣うイケメン神竜たちがツンデレというか、むしろ下手したらほとんどデレ?な感まであって、そんなバレバレなのに気付いてない状況がいたたまれないというか、読んでいてとても新鮮な感じがしました。 
読了日:11月24日 著者:糸森 環
月の都 海の果て (講談社X文庫)月の都 海の果て (講談社X文庫)感想
正王后の立場にある自らの大伯母を頼って東国の越を訪れた飛牙。そこでは王子二人が跡目争いの真っ最中で、折悪しく「屍蛾」と呼ばれる暗魅の大発生が重なる第三弾。徐国や燕ともまた違った趣の越で再会した裏雲。大伯母との出会いと後継者争いに巻き込まれてゆく飛牙たち。飄々としているように見える飛牙にも譲れない大切なものがあって、それでいて危機には自ら奔走して結果的にまた国の立て直しに貢献してるあたりがまた彼らしいですよね(苦笑)大切なものを諦めないために最後の国へ向かうことになりそうですけど、最終巻が今から楽しみです。
読了日:11月24日 著者:中村 ふみ,六七質
ぼくたちのリメイク3 共通ルート終了のお知らせ (MF文庫J)ぼくたちのリメイク3 共通ルート終了のお知らせ (MF文庫J)感想
貫之を退学にさせないため同人ゲーム制作を目指すチームきたやま。貫之の婚約者さゆりの訪問もありも、ゲーム制作を進めていくうちに少しずつ彼らの関係も変わっていく第三弾。期間内にゲームを完成させることを目標とした恭也が悩むシノアキ・ナナコとの距離感。思うように進まない状況の中で各人が見出す違和感と、目標を優先すべく恭也が下した決断がもたらしたその代償。目的を考えればなかなか厳しい結末に感じましたけど、一方で鍵を握りそうないくつもの示唆もあったりで、むしろここからが物語としても本番なんですかね。続巻が楽しみです。
読了日:11月23日 著者:木緒 なち
14歳とイラストレーター4 (MF文庫J)14歳とイラストレーター4 (MF文庫J)感想
ナスさんの引っ越し手伝いの最中に意外な告白を聞いてしまった悠斗。一方マリィの新作のイラストレーターとして人気絵師・白砂が抜擢されるも、何度もボツにされて困惑する彼女がコミケで悠斗を訊ねてくる第四弾。現時点ではお互い恋愛感情に疎いナスさんと悠斗の関係。ダメ出しに悩む白砂と悠斗の邂逅と、友人との距離感に対する彼女の葛藤。今回は自分の立ち位置の変化をよく理解してなくて、ひたすら絵描きバカな悠斗らしい展開でしたけど、新キャラ・白砂の今後も気になるし、またマリィに振り回される展開になりそうですね(苦笑)続巻も期待。
読了日:11月23日 著者:むらさき ゆきや
魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>18 (MF文庫J)魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>18 (MF文庫J)感想
ガヌロンを討ち果たした代償として竜具の力を失ったエレンたち。ソフィーがヴァレンティナの凶刃の餌食となり、彼女と戦うべくティグルは残された戦姫たちと連合軍を結成する第十八弾。玉座にあと一歩というところに迫ったヴァレンティナの野望。苦しい状況でも立ち上がった戦姫たちとティグルの選択。これまでの展開から考えると、最後の戦いからの顛末はややあっけないものにも感じましたけど、辺境の小貴族だったティグルが魔弾の王となるまで、エレンとの出会いから全て始まったことを改めて実感する素敵な物語でした。次回作も期待しています。
読了日:11月22日 著者:川口 士
一華後宮料理帖 第五品 (角川ビーンズ文庫)一華後宮料理帖 第五品 (角川ビーンズ文庫)感想
朱西の秘密を知り、彼を守るため皇后となる道を選んだ理美。料理を作る余裕もないまま立后式に向け皇后教育が始まる中、その講師を朱西が務めることになる第五弾。和国人である理美の立后を快く思わない勢力による妨害とそれを覆すための秘策。朱西を心配する理美の窮地を救った丈鉄の負傷と明らかになるその生い立ち。理美の料理を介して祥飛と朱西の三人の絆を再確認できて良かったとか思っていたら、そこからのまさかの急展開には驚きました。朱西の真意が気になるところではありますが、正直なところ理美のことは半ば本気ですよね、これ...。
読了日:11月22日 著者:三川 みり
バビロン 3 ―終― (講談社タイガ)バビロン 3 ―終― (講談社タイガ)感想
日本の新域で発令された自死の権利を認める「自殺法」。世界で新法に追随する都市が次々に出現して自殺者が急増。揺れる米国で各国首脳が生と死について語り合うG7が開催される第三弾。深く思考し正しい答えを導き出してゆく米大統領アレックスの生い立ち。自殺法を話し合うG7と同時開催される自殺サミットの思惑。部下を死なせてしまった正崎の選択と覚悟。登場人物たちの言葉を通じて自殺について深く考察されてゆく展開でしたが、それも「最悪の女」曲世愛の強烈な存在感に全て吹き飛ばされてしまいました。続刊あるんですよね、これ...。
読了日:11月22日 著者:野崎 まど
ひみつの小説家の偽装結婚 恋の始まりは遺言状!? (コバルト文庫)ひみつの小説家の偽装結婚 恋の始まりは遺言状!? (コバルト文庫)感想
没落貴族の両親から逃れるため後見人の騎士ヒースと名目上の結婚をしていた覆面小説家セシリア。だがヒースが亡くなり部下クラウスと再婚を遺言される文学少女と堅物騎士のラブロマンス。次の小説大賞を獲らなければ契約を切られる危機のセシリアと持ち込まれる婚姻が煩わしいクラウスの契約結婚。二人を手のひらの上で転がすようなヒースの遺言を効果的に使いつつエピソードを積み重ねて不器用な二人の距離感の変化を繊細に描いていく展開は、ベタでしたけどなかなか良かったですね。ようやく本物の夫婦になった二人の今後をまた読んでみたいです。
読了日:11月21日 著者:仲村 つばき
その絆は対角線 (日曜は憧れの国) (創元推理文庫)その絆は対角線 (日曜は憧れの国) (創元推理文庫)感想
四谷のカルチャーセンターに通い始めた、性格も学校もばらばらな中学生の千鶴、桃、真紀、公子が講座絡みのささやかな謎に遭遇する第二弾。桃が密かに抱える悩み、マナー講師が激昂した理由、死の間際に骨董コレクターが取った不可解な行動、そして作者不明の原稿。それぞれが育った環境、考え方や感じ方も違う4人が、時には助け合ったりぶつかったりしながら一緒に過ごすことで得る刺激や成長はかけがえのないものですね。そんな中で今回キーマンだったエリカさんの意外な正体と、彼女に対する4人の印象の違いがなかなか効いていたと思いました。
読了日:11月21日 著者:円居 挽
誰が死んでも同じこと誰が死んでも同じこと感想
日本を代表する一大コンツェルンの中枢・河帝商事の創業者一族が相次いで殺された。警察庁から派遣されたキャリア捜査官・十常寺迅は、河帝商事の内部事情をよく知る秘書の灰原円に無理矢理協力させ一族の暗部に踏み込んでいくミステリ。動機は相続争いと思いきや被害者は一族の中で出来の悪い方。河帝にそれほど思い入れのない円を助手兼ツッコミ役として連続殺人事件の真相を追う展開でしたけど、謎ときそのものよりそれぞれが語る思いに重きが置かれていて、それが著者さんらしさといい感じにブレンドされてこれはこれでわりと面白く読めました。
読了日:11月20日 著者:円居 挽
櫻子さんの足下には死体が埋まっている わたしのおうちはどこですか (角川文庫)櫻子さんの足下には死体が埋まっている わたしのおうちはどこですか (角川文庫)感想
姿を消した幼子いいちゃんと百合子を追って櫻子さんと正太郎が辿り着いた先で、正太郎を絶句させた百合子が彼の絶対的な秘密を突きつける第十三弾。花房の影を匂わせつつ、それ以上に百合子の悲痛な叫びがあまりにも痛い。正太郎は鈍いし状況的には仕方ないけど、でも今居の存在で毎回思考停止してしまうのは正直そりゃないよな...とも思ってしまうわけですよ。もやもやとしてぎくしゃくとして、複雑な想いが消えたわけではないけれど、二人でいる姿は好きだけど、いつかその想いに気づいてもらえる日が来ることを祈らずにはいられませんでした。
読了日:11月20日 著者:太田 紫織
マスカレード・ナイトマスカレード・ナイト感想
若い女性が殺害された不可解な事件。警視庁に届いた「犯人はコルテシア東京のカウントダウンパーティに姿を現す」という一通の密告状から始まるマスカレードシリーズ第三弾。密告者の指示により再び始まったコルテシアでの潜入捜査。立場の違いから時には衝突しながらも、コンコルジェとしてお客様の難題を解決し、一方で鋭い視点からアプローチしてゆく展開は登場人物がいかにも怪しげな人ばかりで、どんどん複雑になっていった関係を解いてゆく解決編、そしてエピローグまでぐいぐいと読ませてゆく流れは流石ですね。これはロサンゼルス編も期待。
読了日:11月19日 著者:東野 圭吾
追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ3 (ファンタジア文庫)追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ3 (ファンタジア文庫)感想
街にクリスマスソングが響く季節。なぜか同じ学校にいるハルカはこれまでの記憶を失っていたことに戸惑い、解決の糸口を探すため驚くほど優しいハルカへの接近を試み、一緒にテスト勉強やクリスマスパーティーの準備をする第三弾。今までと態度が違うハルカに戸惑いつつ、それを乗り越え距離を縮めてゆくマサキが感じる彼女の暖かさと違和感。おばあちゃんの手術やおじいちゃんの過去を絡めつつな時間遡行は少しばかりややこしかったですが、改変の原因を突き詰めてゆく過程で明らかになる複雑な想いという構図は自分好みでした。次回作も期待です。
読了日:11月18日 著者:田辺 屋敷
契約結婚はじめました。 2 ~椿屋敷の偽夫婦~ (オレンジ文庫)契約結婚はじめました。 2 ~椿屋敷の偽夫婦~ (オレンジ文庫)感想
ワケあって結婚した「偽装夫婦」でもある十九歳の香澄と、若隠居と呼ばれる柊一。ある日の昼下がり、柊一の母・美幸が椿屋敷を訪ねてくる第二弾。たびたび椿屋敷を訪れるようになった美幸の思惑。黄色い椿の謎、亡き母が愛した椿をめぐる父娘ケンカ、ご近所に入った空き巣の正体といった謎も解決していく中で見せる偽夫婦の自覚なき仲良しぶりにニヤニヤしましたけど、柊一も渡さない宣言したりとお互いの中で育まれつつあるものがうまく繋がっていくといいなと思いました。柊一の弟・壇と絢さんをめぐるエピソードも素敵で続巻がとても楽しみです。
読了日:11月18日 著者:白川紺子
ロクでなし魔術講師と禁忌教典10 (ファンタジア文庫)ロクでなし魔術講師と禁忌教典10 (ファンタジア文庫)感想
現世の復活を果たした魔人アセロ・イエロによるフェジテ破壊を止めるべく力を結集するグレン陣営。ルミアは自分のせいで起きる悲劇に耐えきれず、己が身を犠牲に戦うことを決意する第十弾。学院・宮廷魔導士団の総力を結集しても倒せない魔人相手の絶望的な戦い。級友たちに出自と秘密が明かされたルミアの歪んだ願い。そして魔人を倒すべく血に染まった過去と向き合うグレン。危機的状況での熱い共闘も見どころでしたけど、自分に向き合って乗り越えたルミアとようやく自らの想いを自覚しつつあるシスティのライバル関係も楽しみになってきました。
読了日:11月17日 著者:羊太郎
ストライクフォール3 (ガガガ文庫) (ガガガ文庫 は)ストライクフォール3 (ガガガ文庫) (ガガガ文庫 は)感想
シーズンオフ。一軍強化キャンプ参加を許されるも既に慣性制御は普及し、自分以上の使い手がチーム内にもごろごろいる厳しい現実に直面する雄星。チームも慣性制御の扱いを巡ってアデーレが一軍リーダーケイトリンと対立する第三弾。慣性制御を何とかフォーメーションに取り込もうとするケイトリンとそれでいいのか疑問を感じるアデーレの熱いぶつかり合い。慣性制御の戦術も雄星を巡る環境も激変してゆく中で迎えた優勝候補との開幕戦は予想を超える展開の連続で圧巻でした。正妻感ある幼馴染・環とアデーレの水面下での駆け引きもこれからですね。
読了日:11月17日 著者:長谷 敏司
弱キャラ友崎くん Lv.5 (ガガガ文庫)弱キャラ友崎くん Lv.5 (ガガガ文庫)感想
紺野との関係が急速に悪化する中、まさかの師弟関係と相成った友崎とたまちゃん。師匠としてこれまでの努力とノウハウをたまちゃんに伝えて現状を打開しようと奮闘する第五弾。経験した通りにはいかなくても仲間たちと一緒に試行錯誤を続ける友崎の成長。一方たまちゃんが変わることをよしとしない葵に感じた違和感とらしくない行動。今回は友崎なりに考えて行動し、解決方法の違いからすれ違った二人でしたけど、それぞれのアプローチがあってこそなし得た成果だとも思いましたし、自分がどうしたいのかようやく自覚した友崎の今後が楽しみですね。
読了日:11月16日 著者:屋久 ユウキ
えほんのせかい こどものせかい (文春文庫 ま 40-1)えほんのせかい こどものせかい (文春文庫 ま 40-1)感想
長年児童文学の翻訳や研究をし、アメリカや日本の図書館や家庭文庫で子供を観察し続けてきた著者が、子どもの読書の楽しさを発見するために大人は何を手助けできるのか解説したロングセラーの文庫版。まだ文字をうまく読めない子供と一緒に読む読み聞かせがなぜ大切なのか、読み聞かせをしていく上でどういう部分がポイントなのか、子供の視点も踏まえて丁寧に解説してくれていて、改めて読んでみても参考になる部分が多かったです。巻末についている初めての読み聞かせ向きの絵本、幅広く楽しめる絵本が紹介されていてこれも参考になると思います。
読了日:11月16日 著者:松岡 享子
他に好きな人がいるから他に好きな人がいるから感想
寂れてゆく造船の田舎町。目立たないように鬱屈を抱えながら生きている高校生・坂井が、夜のマンション屋上で危険な自撮りを投稿し続ける白兎のマスクを被った少女と出会う青春恋愛ミステリ。苦い過去に縛られる少年と兎人間の秘密の共犯関係。クラスで浮いている少女・峰に巻き込まれてゆく学校生活と、彼女が意識する優等生の少女・鈴木。どこか危うさを感じさせる日々が続いた末に起きた事件とその真相は衝撃的で、いつまでも忘れられない坂井がこれからどうするのか、読み終わるとタイトルの意味がじわじわと効いてくる印象的な物語でした。 
読了日:11月16日 著者:白河三兎
外資系秘書ノブコの オタク帝国の逆襲 (祥伝社文庫)外資系秘書ノブコの オタク帝国の逆襲 (祥伝社文庫)感想
突然のオタ友の裏切りや職場のレイオフ旋風。受けたショックを乗り越えた外資系銀行秘書ノブコが、愛するアニメ『バイファロス』のスピンオフ映画化知り、スポンサー獲得交渉が難航の知らせを聞き立ち上がる第三弾。外資系企業特有の突然の急展開とか、職場でも大変な状況に放り込まれたノブコ。これだけの激務で仲がいいオタク友達との間にも難しい人間関係があって、それでも趣味を満喫しようとする彼女はホントタフですね(苦笑)周囲もいろいろ変わろうとしている時期の中、ノブコにも変化がありそうですかね。早めの続刊期待しています。 
読了日:11月15日 著者:泉ハナ
いつかのレクイエム case.1 少女陰陽師とサウル王の箱 (GA文庫)いつかのレクイエム case.1 少女陰陽師とサウル王の箱 (GA文庫)感想
西洋・東洋の魔術師たちが闇に潜みながら生きる現代。陰陽師だった父の後を継いで探偵事務所を経営する女子高生ひよりが、同居人の魔女術使いレイジや女性魔術師・史鳳とともに謎の箱探しと連続殺人件解決に動き出す物語。史鳳が謎の女性から引き受けた詳細が不明な謎の過去探し。ひよりたちが警察から依頼を受けた不審な連続殺人事件の解決。繋がってゆく二つの事件に実力者のレイジと現時点では未熟なひよりのコンビを軸に挑む構図はさすがの安定感で、主人公の成長とレイジとの関係が今後どう変化していくのか、次巻に期待というところですかね。
読了日:11月15日 著者:嬉野 秋彦
浅草鬼嫁日記 三 あやかし夫婦は、もう一度恋をする。 (富士見L文庫)浅草鬼嫁日記 三 あやかし夫婦は、もう一度恋をする。 (富士見L文庫)感想
真紀たち三人の前に宿敵・安倍晴明の生まれ変わりだという教師・叶冬夜が現れ、彼らがお互いに前世にまつわる3つの嘘をついていると暴き、その言葉に真紀と馨はギクシャクしたまま修学旅行で因縁の地・京都に向かう第三弾。現世で二人が幸せになるために嘘を否定しなかった真紀。気にはなるものの彼女にどんな嘘か聞けない馨。今回様々な懐かしい再会があって、京都ではあやかしが攫われる事件も起きていて。一時はどうなることかと思いましたけど、この二人ならきっと乗り越えられるはずと信じてましたよ。二人の関係が本当に大好きで続巻も期待。
読了日:11月14日 著者:友麻碧
おいしいベランダ。 午後4時の留守番フルーツティー (富士見L文庫)おいしいベランダ。 午後4時の留守番フルーツティー (富士見L文庫)感想
夏を前にベランダ菜園の失敗から散財したまもりはバイト先閉店も重なり大ピンチ。運良く古書店のバイトに採用されたと喜んでいたら同僚として昨年まもりを好きだと告白した佐倉井くんに再会する第四弾。相変わらず一緒に美味しそうに食べるご飯や、北斗たちも巻き込んでの海水浴イベントも交えつつ、ちょくちょく男に対して無防備なまもりに平静でいられない亜潟さんの姿や、転機に何が大切なのか考えたその結論に、何だかんだ言いながら大切な存在なんだなあと微笑ましい気持ちになりました。相変わらずなようで少しずつ進展する二人の今後に期待。
読了日:11月14日 著者:竹岡 葉月
かくりよの宿飯 七 あやかしお宿の勝負めし出します。 (富士見L文庫)かくりよの宿飯 七 あやかしお宿の勝負めし出します。 (富士見L文庫)感想
かくりよの妖都へ向かった大旦那様が行方不明に。天神屋史上最大の危機に動揺する葵は、お帳場長の白夜から密命を受けて妖都行きの宙船に屋台を出して出張営業することになる第七弾。天神屋を狙い八葉廃止に暗躍する雷獣によって正体を暴かれてしまった大旦那。自分にできることをしようと奮闘する葵が訳ありの過去を持つ八葉ザクロに出会ったことで生じた迷い。今回はいろいろな過去が明らかになって、葵の気持ちのありようにも少しずつ変化があって。まだまだ予断を許さない状況ですけど、次巻でまた二人やりとりが見れることを期待したいですね。
読了日:11月13日 著者:友麻碧
お世話になっております。陰陽課です4 (メディアワークス文庫)お世話になっております。陰陽課です4 (メディアワークス文庫)感想
冬の京都。忙しい春明に代わり祈理は陰陽課の公務を初めて一人で行うことになり、張り切って現場に向かうもそこで呪詛の封印が解け、絶体絶命のピンチに陥ることになってしまう第四弾。工事現場から出土した平安時代の遺物鑑定から広がってゆく数々の騒動。記憶喪失の霊や悪霊を退治してゆく過程で彼女を救った春明の先代の主・安倍晴明の提案。強力なラスボスに見せかけてマッチポンプ的な展開にはあれれ?と苦笑いでしたが、新米公務員として頑張ってきて成長した祈理を周囲も信頼してくれて、何より主任との主従関係の変化に心温まる結末でした。
読了日:11月13日 著者:峰守 ひろかず
落第騎士の英雄譚13 (GA文庫)落第騎士の英雄譚13 (GA文庫)感想
ヴァーミリオンの国家としての命運を懸けた戦争で、各々が信じるもの、護るべきもの、そして果たすべき使命のため、《傀儡王》オル=ゴール率いる最凶の魔人たちに再戦を挑む第十三弾。最初に不安を煽っておいて肝心の主人公一輝とステラの決戦がわりとあっさり決着してしまったのは正直拍子抜けでしたけど、ステラの姉ルナアイズの変わらぬ想いと、《不転凶手》多々良幽衣と《黒騎士》アイリスあたりの過去の因縁の決着あたりが前半のポイントでしたかね。ここから後編でどう決着をつけるのか、今回の分も合わせての盛り上がりを期待ということで。
読了日:11月13日 著者:海空 りく
裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト(ハヤカワ文庫JA)裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト(ハヤカワ文庫JA)感想
現実と隣合わせで裏世界で女子大生の紙越空魚と仁科鳥子がコンビを組んで、互いの仲を深めながら探検を続けるネットロア×異世界探検サバイバル第二弾。迷い込んだ米軍の救出作戦、沖縄リゾートの裏側にある果ての浜辺の夜、猫の忍者に狙われるカラテ使いの後輩女子、そして鳥子が追いかける大切な人・閏間冴月の謎。勢いのまま危ない場所へ次々に首を突っ込んでいる感もあった二人でしたけど、危うい鳥子が大切だから空魚も放っておけないんですよね。様々な謎もそうですけど、やはり面倒な二人の関係が今後どうなってゆくのかが気になりますね。 
読了日:11月13日 著者:宮澤 伊織
丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。 (角川文庫)丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。 (角川文庫)感想
本命の一流不動産会社の最終面接で大学生の澪が質問されたのは何と面接官の人数。質問した長崎次郎に霊が視えるその素質を買われ事故物件を扱う「第六物件管理部」で働くことになるオカルト仕事小説。これまで長崎一人だった「第六物件管理部」で働く澪が遭遇する数々の憑いている物件。ホラー展開が怖いわりに解決はわりとあっさりめでしたが、小心なのに暴走気味な澪に無愛想なイケメン・上司次郎、友人で霊障に敏感な爽やかイケメンの高木に霊犬・マメも相棒に加えテンポよく読めてシリーズ化もありそうですね。続巻出たらまた読んでみたいです。
読了日:11月12日 著者:竹村優希
剣と炎のディアスフェルドIII (電撃文庫)剣と炎のディアスフェルドIII (電撃文庫)感想
蛮夷皇ディロークの護衛として東方の国境紛争地へ赴くことになったディアスフェルドの騎士ルスタット。広大な領土を巡る長い旅路の途上で盗賊や悪徳太守、異端の狂信者達が次々と襲い来る第三弾。ディロークを仇として狙う亡国の王女と奴隷となっているその妹の救出。そして失われていたモルフェスの剣。これは巨大化したことで矛盾が渦巻く大国アルキランにおいて数々の伝説を打ち立てる一方で、古きアルキランの伝説もまた若き異国の騎士ルスタットとともに蘇る壮大で王道な英雄譚ですね。弟レオームの物語とどう絡んでいくのか続巻が楽しみです。
読了日:11月11日 著者:佐藤 ケイ
青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中 (電撃文庫)青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中 (電撃文庫)感想
ARの技術が進化したアキバ特区でオタクの歩夢が偶然出くわしたスクールカースト最上位の同級生衣更着アマタ。歩夢がアマタに近づいた時、特区のAR空間に重篤な異変が発生してしまう青春小説。特区のバグ解消のためもあってオタショップバイト仲間の腹黒ロリっ子瑠璃や金髪コスプレ女ノエルの悩みに一緒に向き合ってゆく歩夢に突きつけられた、アマタの意外な正体と自身の過去の苦い思い出。失敗を悔いていたからこそ今があって、特区や歩夢に救われた人たちがいて、悩める不器用な登場人物たちの成長とほのかな想いを応援したくなる物語でした。
読了日:11月10日 著者:旭 蓑雄
ストライク・ザ・ブラッド18 真説・ヴァルキュリアの王国 (電撃文庫)ストライク・ザ・ブラッド18 真説・ヴァルキュリアの王国 (電撃文庫)感想
夏音に同行する形で王女ラ・フォリアからアルディギア王国に招待された古城。雪菜や仲間たちとに向かったアルディギアで、戦王領域との平和条約締結記念式典を巡る戦王領域を巻きこんだ大規模テロ計画に巻き込まれる第18弾。ラ・フォリアが密かに画策する夏音復権と、古城にぶつけられる真摯な想い。娘バカな国王をやり込めるしたたかな王妃・王女には苦笑いでしたけど、矢瀬や浅葱も活躍するテロ計画阻止には古城を取り巻くヒロインたちのお互いを認め合う絆も感じられて良かったですね。でも早くも次巻も波乱の予感があって今から楽しみです。
読了日:11月10日 著者:三雲 岳斗
俺を好きなのはお前だけかよ(7) (電撃文庫)俺を好きなのはお前だけかよ(7) (電撃文庫)感想
サザンカとチェリーのストーカー騒動に巻き込まれたジョーロが、ダブル彼氏役を演じて問題解決に挑む第七弾。学校ではサザンカを助けるために彼氏役を演じ、放課後はコスモスとともに文化祭の準備を手伝いチェリーの彼氏を演じる日々。仕方ないとは思いつつもヒロインたちともなかなか会う機会が得られなくて、じわじわとストレスも溜まりそうな展開でしたけど、後半のテンポよく進む解決編はジョーロの面目躍如で、まさかの共闘でお互いを認め合っていたりうまくまとめあげる手腕に感心しました。まだまだいろいろありそうですが次巻も楽しみです。
読了日:11月10日 著者:駱駝
生きている理由 (講談社文庫)生きている理由 (講談社文庫)感想
滅び行く清の王女・愛新覚羅顯㺭として生まれて、日本に渡り父を助けた大陸浪人の川島浪速の養女となった川島芳子。国家を巡る思惑の間で翻弄された少女の数奇な運命と若き日の恋を描く激動の青春編。男装の麗人として波乱の人生を送った川島芳子を主人公に、滅びゆく清朝にあって身の危険を感じながらの日々と、日本に渡って人間関係や環境の大きな変化に直面した学生生活、そして恋と政略結婚に揺れる想いと、翻弄されながらも真っ直ぐに生きようとする多感な十代の芳子のありように、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。続巻も楽しみですね。 
読了日:11月09日 著者:松岡 圭祐
応えろ生きてる星 (文春文庫)応えろ生きてる星 (文春文庫)感想
結婚直前の廉次の前に現れて突然のキスと謎の予言を残して消えた女。直後に婚約者に目の前で別の男と駆け落ちをされた廉次が、再会した女・朔と婚約者を取り戻すために奔走する物語。新婚旅行に行くはずだった二週間、謎多い朔と一緒に婚約者に見せつけるかのようにデートを満喫するフリをする廉次。彼女のことが気になり始めた頃にうっかり知ってしまうその背景。劇的な展開と爆発的な行動力が物語を動かし、因果応報をしっかり忘れないあたりに著者さんらしさがよく出ていましたが、ほろ苦くも未来を予感させる結末はとても良かったと思いました。
読了日:11月09日 著者:竹宮 ゆゆこ
今からあなたを脅迫します 白と黒の交差点 (講談社タイガ)今からあなたを脅迫します 白と黒の交差点 (講談社タイガ)感想
普通の女子大生のはずなのに、いつの間にか脅迫屋・千川たちの悪事を止めるために奔走しているお人よしお嬢様の澪。今回もまた千川たちの脅迫に首を突っ込んでゆく第三弾。結婚詐欺師の息子、脅迫したい同僚の真意、親友を脅迫してほしい脚本家、そして千川が追う組織へ繋がる男。仲間たちともすっかり仲良くなった澪が千川の邪魔をするせいで、千川も調子が狂うというか悪い人になりきれないというか(苦笑)脅迫依頼者たちの複雑な心境がなかなか興味深かったですけど、少しずつ物語の核心に近づきつつはあるんでしょうか。続巻も期待しています。
読了日:11月09日 著者:藤石 波矢
スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 想いを伝えるシチュー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 想いを伝えるシチュー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
理恵の上司夫妻に持ち上がった疑惑、真っ黒に変色したジャガ芋の謎、入籍間近だったカップル客が結婚延期になった謎と鉄鍋の関係など、今回もお客が抱える様々な悩みや謎が舞い込んでくる第三弾。麻野の一番近い位置にいながら半年以上ほとんど進展がない二人の距離感。そんな状況で今回は夫婦や婚約者、長年連れ添った夫婦の関係に絡めたエピソードだったりで、相変わらず美味しそうなスープもいろいろ出てきますが、きちんと相手の想いに配慮できる理恵だから周囲に信頼されるんですよね。時間は必要でしょうけど着実に前進していると感じました。
読了日:11月08日 著者:友井 羊
ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)感想
俳優だった夢を諦めてレンタル彼氏として働いているカオル。そんな彼が高額な料金にもかかわらず職業を偽って予約を入れ続けるエイコと出会う物語。エイコが職業を偽ってお金を払いデートをする理由。偶然エイコの似たような境遇を知り複雑な想いを抱くカオル。夢を追いかけ続けるべきか現実を思い求めるか、分岐点で心揺れる二人が疑似恋愛のデートを重ねるからこそ育まれ、複雑になってゆくそれぞれの想いにはもどかしくなりましたが、不器用な二人が出会ったことで切り開かれた未来に明るい予感をつい期待したくなる不毛で素敵な恋の物語でした。
読了日:11月07日 著者:齋藤 ゆうこ
恋虫 (角川文庫)恋虫 (角川文庫)感想
政府が結婚相手を決めて、恋をした人は「恋虫」に感染したとして他者の感染を防ぐために駆除される世界。念願の『恋虫駆除隊』に入隊した四ノ宮美季が、救世主と呼ばれる上官・冬野花火と出会う物語。同期の首席で誰よりも恋という病に熟知しているはずの四ノ宮が直面する駆除の現実と苦悩する想い。感染した花火の兄・雪尋と婚約者・千春、二人に関わった花火それぞれのエピソード。こんな時代に美しくも儚い恋に向き合った彼らの真っ直ぐな想いにはじわじわと来るものがあって、諦めない孤独な花火が四ノ宮と巡り会えた幸運に救われる思いでした。
読了日:11月07日 著者:白土 夏海
弁当屋さんのおもてなし 海薫るホッケフライと思い出ソース (角川文庫)弁当屋さんのおもてなし 海薫るホッケフライと思い出ソース (角川文庫)感想
『くま弁』の作り手・ユウの優しさに触れ、もっと彼に近づきたいと思いつつ客と店員の関係から一歩を踏み出せずにいた千春。そんな時に悩み相談で人気の占い師がくま弁を訪れる第二弾。人気占い師の「魔法のお弁当」を巡る二十年越しの想い、すれ違う常連のお客さん二人のキューピット役やお互いうまく言えない親子の料理の好き嫌い、千春の友人の次代に繋がってゆくお弁当。親の立場としては好き嫌いは言いづらいよなあ…と苦笑いしつつ、友人のお節介もあってわりと奥手な感もあった二人の仲もようやく進展してほっと一安心。続巻も楽しみですね。
読了日:11月06日 著者:喜多 みどり
螺旋の手術室 (新潮文庫)螺旋の手術室 (新潮文庫)感想
大学病院の教授選候補だった冴木真也准教授が手術中に不可解な死を遂げ、教授の座を争った医師も暴漢に襲われ殺害されるなど相次ぐ不可解な死。父・真也の死に疑惑を見つけた息子の裕也が同じ医師として調査を始める医療ミステリ。教授選が鍵と見据えその繋がりを調べる裕也。父の死がスキャンダルとなり婚約者の母に堕胎を迫られる妹の真奈美。真相を執拗に追う過程で明らかになる意外な真実。たったひとつの秘密を守るために起きた事件の真相は何とも切なくて、これから裕也が抱えながら生きてゆくものの重さについていろいろ考えてしまいました。
読了日:11月06日 著者:知念 実希人
夜明けのカノープス (実業之日本社文庫)夜明けのカノープス (実業之日本社文庫)感想
教師への夢をあきらめ、小さな出版社で契約社員として働く映子。何事もうまくいかないと感じている彼女が、仕事で長らく生き別れていた父と再会し物語。教師を諦めない友人のような粘り強さもなく、仕事にやりがいも見いだせず、憧れる先輩も遠い存在で何もかもが中途半端に感じる映子。そんな彼女が執筆依頼をきっかけに父と再会し「カノープス」という一等星を知ったことで少しずつ物語が動き出してゆく展開で、これまでの彼女の葛藤を思えばあっさりめな結末かなとも感じましたけど、これからの変化を予感させる読後感は悪くないとは思いました。
読了日:11月05日 著者:穂高 明
今夜、きみは火星にもどる (角川文庫)今夜、きみは火星にもどる (角川文庫)感想
自分が火星人だと語る佐伯さんが気になって仕方ない国吉。突如数学で0点を取って留年の危機に陥った彼と、行き場のない想いを抱えた友人たちの青春小説。国吉が夏休みの数学の補修で毎日見る彼女と火星の白昼夢をきっかけに、急速に距離を縮めてゆく二人。彼らが積み重ねてゆくどこか危うい関係性が行き着いた、切ない現実が仄めかされる結末にはほろ苦さも残りましたが、国吉に邪険にされながら関わり続けることを選んだ高見の変化や、面倒見のいい相談相手だった山口先生たちとのやりとりも印象的で、著者さんらしさがよく出ていると思いました。
読了日:11月04日 著者:小嶋 陽太郎
みさと町立図書館分館みさと町立図書館分館感想
田舎の小さな町のみさと町立図書館分館。33歳独身の実家暮らしの職員・遥の視点から、その図書館にある出来事とそこで働く3人のそれぞれのエピソードが綴られてゆく物語。母を亡くして試行錯誤が続いている父との関係。本の貸借トラブル&クレーム対処といった業務のあれこれや、徐々に明らかになってゆく同僚たちの実家事情など、日々移りゆく日常の中で変わってゆくもの変わらないもの、変えたくない大切なものは確かにあって、それぞれ悩みを抱えながらも生きていくありようの描写には、著者さんの優しい想いが詰まっているように思いました。
読了日:11月03日 著者:髙森 美由紀
双子喫茶と悪魔の料理書2 (講談社ラノベ文庫)双子喫茶と悪魔の料理書2 (講談社ラノベ文庫)感想
この世界から消えかけた水希を取り戻して約一ヵ月。今度は双子の姉・葉月の何気ない一言から『悪魔の料理書』の力が発動し、子供に戻りたいという彼女の願いを叶えてしまう第二弾。穏やかに二人のことを見守ってきた葉月。元に戻るため子供の頃のように楽しい日々を皆と過ごした彼女でしたけど、だからこそこれまでのように三人一緒に居続ける難しさを痛感してしまったんでしょうか。ようやく向き合った二人でしたけど、その思うところは相手にきちんと伝わったのか、複雑な想いが交錯する三角関係の行方がどうなるのか。続刊が早く読みたいですね。
読了日:11月02日 著者:望月 唯一
米澤穂信と古典部米澤穂信と古典部感想
書き下ろし新作短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」の他、古典部メンバー四人の本棚、著者の仕事場や執筆資料も初公開の古典部シリーズファンブック。短編で中学時代の読書感想文とそこに込められた秘密をメンバーに暴露された奉太郎はこっ恥ずかしかっただろうなと苦笑いしつつ、北村薫さん、恩田陸さん、綾辻行人さん、大崎梢さんといった方たちとの対談や隠れネタ、著者さんのこれまでの歩みなど、紹介された作品も相当読み込んでいるのが伺えて、著者さんのミステリやこの作品に込めた思いとこだわりが随所に感じられて楽しかったですね。
読了日:11月02日 著者:米澤 穂信
なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか? 運命の剣 (MF文庫J)なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか? 運命の剣 (MF文庫J)感想
地上の覇権を争う五種族大戦が英雄シド率いる人類の勝利に終わった時代を生きていたはずの少年カイ。突如人間が五種族大戦に敗れた世界に飛ばされ謎の少女リンネと巡り合う物語。自分を知らない世界で友人や幼馴染たちと再会し、手に入れたシドの剣と囚われていた少女リンネとの出会い。劣勢の人間族の窮地にあえて強敵に挑む展開はテンポも良くて読みやすく、物語の方向性も今回できちんと提示されましたね。リンネや幼馴染との関係や謎めいた花琳さんとか、世界がどうなっているのかも含めて気になるところもいろいろあったりで続巻が楽しみです。
読了日:11月01日 著者:細音 啓
校舎五階の天才たち (講談社タイガ)校舎五階の天才たち (講談社タイガ)感想
「東高三人の天才」の一人篠崎から来光福音のもとへ届いた、僕を殺した犯人を見つけてほしいという手紙。福音は同じく手紙が届いた天才の一人加藤沙耶夏と事件を調べる学園ミステリ。遺書を残し電車に飛び込み自殺をした篠崎は誰かに本当に殺されたのか。天才であるということはどういうことか。傍若無人な加藤に振り回されつつ関係者たちから明かされる篠崎像から真相も掘り下げられてゆきましたが、深い苦悩を抱えていた彼のささやかな願いが、天才に憧れていた福音に伝わったのがこの物語の救いでしたかね。デビュー作ということで今後に期待。 
読了日:11月01日 著者:神宮司 いずみ
おやつカフェでひとやすみ 死に神とショコラタルト (集英社オレンジ文庫)おやつカフェでひとやすみ 死に神とショコラタルト (集英社オレンジ文庫)感想
「座敷わらしを見ると、幸せになれる」との噂がある江ノ島の三兄弟が営むカフェ。そこに三年前の事故で死んでいるはずだった三男の綾人を迎えに来たという死神が現れる第二弾。カフェを訪れる初恋の人を探しに来た老婦人、父を慕う引きこもりの少年、海難事故にあった息子を憂う母親。それぞれの印象的なお話でしたが、カフェを訪れるのを楽しみにしている死神と綾人のエピソードはうまく話と絡めてまとめてみせた感。時を超えて巡り合うことになった想い人の孫同士の今後が少しばかり気になりました。続刊あったらそのあたりも読んでみたいです。 
読了日:11月01日 著者:瀬王 みかる

読書メーター

12月の購入検討&気になる本ほかピックアップ

 

というわけで12月の購入検討&気になる本ほかピックアップです。ガガガ文庫の「漂海のレクキール2」は延期ということで残念ですが、「アルスラーン戦記」の最終巻、「異人館画廊」「RDG レッドデータガール」の新刊などなかなか楽しみな続巻もあります。12月は発売日が前倒しになっていたり、角川文庫やMW文庫の発売日がずれていたり、月末は1月上旬分も含めて年内刊行となるので変則的です。これだけ集中するとセレクトが悩ましいことになりそうです。

 

新シリーズ・新作の注目としては久遠侑さんの新作、GA文庫の「君と夏と、約束と。」、スニーカー文庫の新作あたりですかね。「文句の付けようがないラブコメ」の続巻と一緒に刊行される鈴木大輔さんの新作、「明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。」の藤まるさんの新作、講談社タイガの第54回メフィスト賞受賞作「毎年、記憶を失う彼女の救いかた」あたりも気になるところではあります。 

親しい君との見知らぬ記憶 (ファミ通文庫)

親しい君との見知らぬ記憶 (ファミ通文庫)

 
君と夏と、約束と。 (GA文庫)

君と夏と、約束と。 (GA文庫)

 
僕と君だけに聖夜は来ない (角川スニーカー文庫)

僕と君だけに聖夜は来ない (角川スニーカー文庫)

 

 

時給300円の死神 (双葉文庫)

時給300円の死神 (双葉文庫)

 
毎年、記憶を失う彼女の救いかた (講談社タイガ)

毎年、記憶を失う彼女の救いかた (講談社タイガ)

 
この終末、ぼくらは100日だけの恋をする (メディアワークス文庫)

この終末、ぼくらは100日だけの恋をする (メディアワークス文庫)

 

 

※【新】は文庫新シリーズ・新作、【文】は文庫化(分かる範囲で記載)

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HJ文庫(12/1発売)                     

最強魔法師の隠遁計画4    イズシロ              ミユキルリア

                           

スニーカー文庫(12/1発売)                       

この素晴らしい世界に祝福を!13 リッチーへの挑戦状          暁なつめ              三嶋くろね

                           

ポプラ文庫(12/5発売)                

活版印刷日月堂 庭のアルバム     ほしおさなえ      

                           

講談社単行本(12/6発売)                          

ビギナーズ・ドラッグ       喜多 喜久           

                           

TOブックス(12/9発売)              

本好きの下剋上 第四部 「貴族院の自称図書委員 I」              香月美夜              椎名優

                           

電撃文庫(12/9発売)                   

86―エイティシックス― Ep.3〈下〉             安里アサト           しらび メカニックデザイン:I-IV

ゼロから始める魔法の書 XI   虎走かける           しずまよしのり

天鏡のアルデラミン XIII  宇野朴人              竜徹

【新】1パーセントの教室 松村涼哉              竹岡美穂

【新】魔術監獄のマリアンヌ           松山剛    パセリ

                           

創元推理文庫(12/11発売)                         

鳥籠の家              廣嶋 玲子           

                           

集英社オレンジ文庫(12/14発売)              

異人館画廊 失われた絵と学園の秘密           谷瑞恵    詩縞つぐこ

下鴨アンティーク 白鳥と紫式部    白川紺子              井上のきあ

ゆきうさぎのお品書き 祝い膳には天ぷらを              小湊悠貴              イシヤマアズサ

Bの戦場3 さいたま新都心ブライダル課の果断       ゆきた志旗           伊東フミ

                           

集英社文庫(12/14発売)                      

【文】2.43 清陰高校男子バレー部 代表決定戦編2 壁井ユカコ          

屋上で縁結び 日曜日のゆうれい    岡篠名桜             

【新】今夜、ロマンス劇場で        宇山佳佑             

                           

双葉文庫(12/14発売)                 

【新】時給300円の死神   藤まる   

                           

GA文庫(12/15発売)                  

【新】君と夏と、約束と。              麻中郷矢              磁油2

我が驍勇にふるえよ天地6 ~アレクシス帝国興隆記~           あわむら赤光       卵の黄身

最弱無敗の神装機竜14      明月千里              春日歩

中古でも恋がしたい!11   田尾典丈              ReDrop

                           

富士見L文庫(12/15発売)                        

【新】飯テロ 真夜中に読めない20人の美味しい物語            富士見L文庫編集部           alma

【新】恋テロ 真夜中に読みたい20人のトキメク物語            富士見L文庫編集部              alma

ぼんくら陰陽師の鬼嫁 三  秋田みやび           しのとうこ

 

講談社文庫(12/15発売)
【文】身元不明特殊殺人対策官 箱崎ひかり 古野まほろ

 

カッパ・ノベルス(12/15発売)              

天涯無限 アルスラーン戦記 (15)  田中芳樹              丹野忍

                           

星海社FICTIONS(12/15発売)                

マージナル・オペレーション改03  芝村裕吏              しずまよしのり

                           

集英社(12/15発売)                     

コバルト文庫40年カタログ コバルト文庫創刊40年公式記録 烏兎沼 佳代        

                           

ファンタジア文庫(12/20発売)                 

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦3              細音啓    猫鍋蒼

豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい4              合田拍子              nauribon

デート・ア・ライブ アンコール7  橘公司    つなこ

                           

講談社タイガ(12/20発売)                        

【新】算額タイムトンネル 上         向井湘吾             

【新】毎年、記憶を失う彼女の救いかた       望月拓海             

<第54回メフィスト賞受賞作>

 

角川文庫(12/21発売)                 

【新】京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ           円居挽   

【新】俳優探偵 僕と舞台と輝くあいつ       佐藤友哉              サマミヤアカザ

【文】そして僕等の初恋に会いに行く          西田 俊也           

                           

銀のさじ (12/21発売)                

RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴          荻原規子              酒井駒子

                           

メディアワークス文庫(12/22発売)                        

【新】この終末、ぼくらは100日だけの恋をする       似鳥航一             

 

ダッシュエックス文庫(12/22発売)                        

【新】貴方がわたしを好きになる自信はありませんが、わたしが貴方を好きになる自信はあります              鈴木大輔       タイキ

文句の付けようがないラブコメ7    鈴木大輔              肋兵器

【新】神域のカンピオーネス トロイア戦争              丈月城    BUNBUN

 

MF文庫J(12/25発売)               

【新】あまのじゃくな氷室さん 広ノ祥人              うなさか

[第13回MF文庫Jライトノベル新人賞<審査員特別賞>]                   

Re:ゼロから始める異世界生活15  長月達平              大塚真一郎

Re:ゼロから始める異世界生活 短編集3     長月達平              楓月誠

ワキヤくんの主役理論2    涼暮皐    すし*

                           

オーバーラップ文庫(12/25発売)              

灰と幻想のグリムガル level.12     十文字青              白井鋭利

                                        

講談社ラノベ文庫(12/27発売)                 

終わりのセラフ 一瀬グレン、19歳の世界再誕1      鏡貴也    浅見よう

                           

スニーカー文庫(12/29発売)                     

【新】僕と君だけに聖夜は来ない    藤宮カズキ           ファルまろ

【新】ラブノート 俺だけが知っているヒロインルートの攻略法           藤井論理              富士フジノ

                           

ファミ通文庫(12/29発売)                        

【新】親しい君との見知らぬ記憶    久遠侑    Tiv

【新】人なき世界を、魔女と京都へ。           津田夕也              U35

                           

HJ文庫(12/29発売)                   

精霊幻想記 9. 月下の勇者          北山結莉             

2017年10月に読んだ新作おすすめ本

 

10月に読んだ新作では何といっても「6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。」 (角川スニーカー文庫)でしょう。衝撃のデビュー作「おにぎりスタッバー」で度肝を抜いた著者さんが、今度はガラリと違うストレートな青春小説を書いてきて、最後の最後でびっくりさせられました。スニーカー文庫は最近いい青春小説をコンスタントに出すようになっていてうれしいですね。

 

あとは電撃文庫「幼馴染の山吹さん」、ライト文芸ではオレンジ文庫「どこよりも遠い場所にいる君へ」メディアワークス文庫「この世界に i をこめて」、一般文庫では創元推理文庫「ぬばたまおろち、しらたまおろち」宝島社文庫「妻を殺してもバレない確率」、単行本では「崩れる脳を抱きしめて」などがありましたが、なかなか充実した新作ラインナップでした。

 

6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)

6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)

 

 人間関係に焦燥を募らせる優等生香衣。サッカー部のエースで香衣が気になる隆生。香衣に一目惚れした不良・龍輝。付かず離れずの距離で香衣の友人を演じるセリカ。それぞれの視点から綴られる出会いと別れの物語。中学時代一緒に勉強して同じ高校に合格したのに、いつの間にか距離ができてしまった香衣と隆生。その関係を起点に描かれてゆく読んでいる方がもどかしくなるような青春群像劇は、前作とはまたガラリと違う読みやすさと繊細さが感じられて、こういう作品も書けるのかとビックリしました。こういう王道の青春小説をまた読んでみたいです。

幼馴染の山吹さん (電撃文庫)

幼馴染の山吹さん (電撃文庫)

 

 幼い頃に約束を交わしながら疎遠になってしまった可愛い幼馴染の灯里。青春の呪いを掛けられた幼馴染を救うため平凡な喜一郎が一緒に数々の青春の試練に挑む青春ラブコメディ。くしゃみをすると一定期間ものに触れなくなる呪いを受けた灯里と、彼女のために気後れしていた経緯を乗り越え勇気を出した喜一郎。試練とはいってもやってることはただのバカップル体験で(苦笑)一緒に行動する中で積み重なってゆく想いと、過去の誤解と約束もうまく絡めていい感じに盛り上がってゆく展開はとても良かったです。最後の流れは続巻を期待していいですよね?

陰キャになりたい陽乃森さん Step1 (電撃文庫)

陰キャになりたい陽乃森さん Step1 (電撃文庫)

 

 圧倒的存在感で陽キャラの頂点に君臨する陽乃森さん。そんな彼女がとある事情から陰キャラの鹿家野たちに陰キャラになれるよう協力を依頼する青春ラブコメ。彼女の事情を知って意識や常識の違いに戸惑いつつも協力する鹿家野たちに突きつけられる、いい子だけど何をしても陽キャラ感がにじみ出てしまう陽乃森さんを変える無理ゲー感。それでも楽しそうなラブコメエピソードからの急展開には驚きましたけど、一緒に行動することでお互い大切なことを知り、そのために奔走する姿は良かったですね。最後まで破壊力あった陽乃森さんはやはり破格でしたw

 魔王軍の紅蓮の騎士カズキ(人間)は魔王の娘で幼馴染のアストリッドのコミュ障を治すため、魔王の命で人間の田舎町に二人一緒に暮らすスローライフ幼馴染ラブコメ。魔王に間違いがあったら死罪と言われながら、その配慮でかいがいしく世話をするアストリッドにたびたび理性が崩壊寸前のカズキ。そんな彼らの前に現れる宿敵でバカップルな勇者アスマと女神官ミラ。安心安定の甘々な展開にカズキの秘密や魔王の思惑も絡めた展開は、ハッピーエンドのために立ち上がったアストリッドの決意もあって面白くなりそうですね。続巻に期待の新シリーズです。

 帝国に家族を殺されて黒天十二騎士団の座も追われ、今は反帝国派の希望・軍師アートルム卿として活動する少年シオン。辺境の王国騎士セレインとの出会いから、西方大陸の歴史を変える復讐の戦いが始まる戦記ファンタジー。帝国の対応を巡って王女派と宰相派に分かれるエルザイムを舞台に、王女派として旅の剣士シオンとアートルム卿の二役を演じつつ戦いを主導する展開。野心を胸に秘めた王女やツンデレなセレインといったヒロインたちを魅力的に描きつつ複雑な因縁も絡めてゆく構成は、戦記物として見るとこれからですけど期待の新シリーズですね。

タイムシフト 君と見た海、君がいた空 (ダッシュエックス文庫)
 

 壊れつつある世界で印象的な出会いを果たした少女・八神リノと、偶然同じ家に同居することになった少年・七尾レキ。彼らが世界の崩壊を食い止めるため立ち上がる青春SF小説。不具合が顕在化した世界でカムナギという異常体質に蝕まれているレキたち。それでも親友のユウキやアザミに妹ミナたちも交えた青春な日々を過ごす中で起きた事件。初々しいやり取りが甘酸っぱい不器用な二人が直面する真実と運命はどこまでも残酷で、絶望的な状況でも諦めなかった彼らの強い思いがどのような結末に繋がってゆくのか、続きをまた読んでみたいと思いました。

 「僕とキミの15センチ」をテーマに総勢20名の作家が参加して描かれたショートストーリー集。同じテーマで書いていても著者さんそれぞれで着目点が違ったり、作品にらしさがよく出ていてとても興味深かったですが、個人的には九曜さんや三田千恵さん、久遠侑さんあたりの青春小説は今後も期待したくなりましたね。そして何よりもう読めないと思っていた東雲侑子シリーズ文学少女のエピソードが読めたのは嬉しかったです。一つ一つの作品がもう少しボリュームあると良かったかなとは感じましたが、全体としてみれば十分満足できる一冊でした。 

平浦ファミリズム (ガガガ文庫)

平浦ファミリズム (ガガガ文庫)

 

 五年前にベンチャー企業社長である母を亡くした平浦一慶。残されたトランスジェンダーの姉、オタクで引き籠りの妹、コミュ障でフリーターの父とともに過ごす日々が描かれる青春小説。何でも自分でできてしまうがゆえに高校にもろくに通わず、アプリ開発に精を出す日々を送る一慶。過去の苦い経験から周囲に無関心でしたけど、誤解されて窮地に陥った時でも彼のことを気にかけてくれる人たちがいて、不器用な交流の中にもたくさん気づけたことがあって、彼だけでなく周囲もまたその影響を受けて成長してゆく展開は、とても心に響くものがありました。

スーパーカブ (角川スニーカー文庫)

スーパーカブ (角川スニーカー文庫)

 

 父親を亡くし母親が失踪、友達も趣味も何もない日々を送っていた山梨の高校に通う女子高生・小熊。そんな彼女が中古のスーパーカブに出会い、それをきっかけに世界が広がってゆく物語。奨学金で高校に通う慎ましい生活を送る子熊視点で淡々と綴られる、同じカブに乗る同級生の礼子と知り合ったり、カブを巡る様々な出来事に遭遇したり、これまで目を向けてこなかったものに気づいてゆく展開。著者さんの深いカブ愛を感じつつ、子熊らしい慎重なペースで、けれど確実に世界が広がっていてゆく様子がとてもいいと思いました。これは続巻も期待ですね。

 

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

 

 訳ありの過去もあり友人の幹也と采岐島のシマ高に進学した月ヶ瀬和希。そんな彼が初夏に神隠しの入江で倒れていた少女・七緒を発見するボーイミーツガール青春小説。過去からやって来た七緒と少しずつやりとりを重ねてゆく日々。何気なく過ごせていた高校生活の突然の暗転。明かされる過去の真相と、変わらず向き合ってくれる友人たちの存在、そして覚悟を決めた七緒。甘酸っぱく初々しかった出会いの結末には切なくなりましたけど、繋がって行く過去と未来、そして意外な形で届けられた真摯な思いは、かけがえのないとても素敵なものに思えました。

この世界に i をこめて (メディアワークス文庫)
 

 屈折した高校生・染井浩平唯一の女友達で、半年前に死んでしまった天才作家・吉野紫苑。退屈な高校生活から逃避して届くはずのない彼女へメールを送り続ける染井の元に彼女のアドレスからメールが届き始める物語。不器用で人を好きになることを知らず、染井と多くの創作を語り合った吉野。そんな彼のもとに現れた転校生・真白。それぞれが抱く思いは複雑でも話の構図としてはわりとシンプルで、遺された吉野の最後の物語と言葉、そして彼女を介して繋がったうまく生きられない二人が少しずつ積み重ねてゆく不器用な関係は心に響くものがありました。

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

 

 周囲に迎合しグループ内で平穏に生きていくことに全力を傾けてきた女子高生の小野ひなた。ある日、憧れの同級生結城さんに誘われグループの約束をドタキャンしたことで周囲から孤立してしまう青春小説。これまで無難に生きることに心を砕いてきたはずが、偶然結城の秘密を知り興味を抱いたことで結果的に失った自分の居場所。息苦しい狭い世界でどう生きるのかというお話でしたけど、焦燥を募らせていた彼女が姉や師匠、結城さんなど、たくさんの人と話し合い悩みながらもこれまでの自分を省みて、大切なことを見出してゆく姿はとても印象的でした。

 中学時代の苦い経験から人と関わることが苦手な女子高生・舞。競技ポールダンス部設立を目指す舞が周囲に猛反対され、部設立を認可する条件として大会入賞を言い渡されてしまう青春小説。マネージャー役を買って出た友人と一緒に立ち上げたポールダンスに加わることになる、わけありで廃部した元競技ダンス部の郁斗先輩と白谷先輩。周囲とのやりとりが拙く空回り気味だった主人公でしたが、友人や先輩たちもまた苦い過去を抱えていて、ぶつかり合いながら競技に挑んで喜びを見出してゆく様子は、展開的にベタではありましたがなかなか良かったです。

おとなりの晴明さん ~陰陽師は左京区にいる~ (メディアワークス文庫)
 

 一家で京都に引っ越してきた女子高生・桃花。隣に住んでいたのは琥珀の髪と瞳をもつ青年・晴明さん。子どもの頃出会っていて不思議な術で桃花の猫を助けてくれた晴明さんと女子高生のあやかしファンタジー。二人の前に現れる優しい鬼や京都の街を守る平安京サル会議、美の御利益をもたらす女神様たち。勉強を教えてもらうはずがいつの間にか弟子みたいな扱いで関わっていた桃花でしたけど、浮世離れした晴明さんはこれまでの作品にも登場していたあのお人で、からくさ図書館の二人や茜さんなども登場したり世界観の広がりを感じる素敵な物語でした。

サイメシスの迷宮 完璧な死体 (講談社タイガ)

サイメシスの迷宮 完璧な死体 (講談社タイガ)

 

 警視庁特異犯罪分析班に異動した神尾文孝が、協調性ゼロだが優秀なプロファイラー羽吹允とコンビを組み、連続猟奇殺人の謎に挑む警察ミステリ。マイペースな言動で神尾を振り回す羽吹が抱える過去と、経験したもの全てを忘れることができない超記憶症候群。銀色の繭に包まれた美しいともいえる異常な死体を残す連続殺人事件。その記憶を活かして事件に繋がる鍵を探す過程で、噛み合わなかった二人が徐々にコンビになってゆくのがいい感じで、まだまだ終わらないことを予感させる結末に続巻をまた読みたくなりました。今後に期待の新シリーズですね。

 現在に至るまで受け継がれた部族の教えがあるけど海を愛し、浮いた存在の集落で生贄とされて海の底に沈んだ一人ぼっちの少女が、自らを神と称した無知な少女・メイと出会うSF的ガール・ミーツ・ガールな物語。未開の地で疎まれていた少女と海底で眠っていた少女・メイの出会いが転機となり、原始的な環境で二人が拙いながらも交流してゆく展開でしたけど、冒頭の流れから何となく思い描いていたSF的展開よりはよほど現実的な顛末が待っていて、二人で選んだ決断にはやるせなさもありましたが、それだけでは終わらない何かがあったと思いました。

木津音紅葉はあきらめない (集英社オレンジ文庫)

木津音紅葉はあきらめない (集英社オレンジ文庫)

 

 御印を持ち分家の娘ながら資産家の木津音本家に迎えられた紅葉。しかしその目的が神狐とつがい次代の巫女を産むためと知り、養父に対して反逆を企てる物語。傍若無人で嫌われものの養女・紅葉と、常に努力し周囲に愛されながら御印を持たない実娘・結花。モフモフ狐たちと紅葉の出会いをきっかけに、対照的な立ち位置だった二人がそれぞれ新たな一面を見せ始めたり、人間関係も変わってゆく構図は印象的で、今巻の騒動を経て彼女が目指す目標の具体的な形が見えてきましたね。真意が見えないお目付け役の思惑も気になる続巻に期待の新シリーズです。

 

 

ぬばたまおろち、しらたまおろち (創元推理文庫)

ぬばたまおろち、しらたまおろち (創元推理文庫)

 

 両親を亡くし角田村で叔父夫婦に育てられた綾乃。小さい頃からの秘密の親友・大蛇のアロウにプロポーズされた彼女が、別の大蛇に襲われる事件を経て母校ディアーヌ学園で学ぶことになるファンタジー。妖魅子女も通うディアーヌ学園で楽しい友人たちと出会い魔女の修行をする日々。そこから繋がる雪之丞との縁と過去の因縁もまた明らかになってゆく展開で、アロウとの約束に心揺れる綾乃と共に過ごすうちに絆を深めてゆく雪之丞が過去に飛んで、そこで果たした役割が現在に繋がってゆくその結末にはなるほどと唸らされた、とても素敵な物語でした。 

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

 

 未来に起こる確率を調べる技術が確立した世界。自らが抱える苦しい思いをどうにかしたくて、確率をつい確認し続けてしまう人たちの物語を描く連作短編集。政略結婚や大怪我、路面電車での出会い、届かぬ思いや父と娘の関係、忘れられない運命の出会いなど、停滞する状況を抱える登場人物たち。それでも人との関わりの積み重ねから事態や心境も少しずつ変化して、それに向き合ったり素直になったり次に向けた一歩を踏み出してゆく7つのエピソードは、表題作でもあるタイトルイメージをいい意味で裏切る思いのほか爽やかな読後感の素敵な物語でした。

ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)

ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)

 

 1クールごとに組む相手を変え覇権を競うアニメ制作現場。伝説の天才監督・王子を口説いた有科、同じクールで勝負を挑む監督・斎藤瞳と行城のコンビ、そして原画に携わる和奈と地元のそれぞれの視点から語られるお仕事小説。人間関係にも苦労する不器用だけどアニメに賭ける想いは熱い登場人物たち。見えているもの思うところは違っても、けれどアニメのためならいくらでも頑張れるし、苦難を乗り越えてしまうパワーが感じられて楽しかったです。ちょっと今後が気になるコンビもあったけど、文庫版で追加された「執事とかぐや姫」も良かったですね。

京都烏丸御池のお祓い本舗 (双葉文庫)

京都烏丸御池のお祓い本舗 (双葉文庫)

 

 会社をリストラされ彼にも振られた木崎朋美が、レトロなBARで弁護士・城之内にスカウトされ、本業はお祓いの事務所で持ち込まれる奇妙な依頼を解決してゆく物語。イイ男なのに残念な京男子・ジョー先生や特別な霊能力を持つバイトの美少年高校生・海斗君と組み、3人で力を合わせ猫探しからストーカー退治、憑き物や呪い絡みの案件まで解決する展開で、お人好しだけど人情に厚くピンチの時ほど大活躍の規格外な朋美はこれまでとはまた一味違った魅力のあるヒロインでした。寺町三条のホームズさんたちも登場したりで、今後に期待の新リーズです。

 部活必須の御出学園で通学地域で社会奉仕を義務付けられた独特の帰宅部。そこに所属する佐々木幸弘が地域で起こる謎や事件を仲間とともに解いていく青春ミステリ。夜な夜な動くという噂のベニヤ製の人形の謎やたたかうにんじん、双子を巡る複雑な想い、商店街文化祭のお姫様コンテストにまつわるあれこれ。やや若干登場人物が多いかなという印象はありましたけど、繊細な人間関係の機微にも配慮しながら解き明かしてゆく謎解きは主人公らしくて、彼がようやく意識し始めた幼馴染との関係が今後どうなってゆくのか、続きが読んでみたいと思いました。

マンガハウス! (光文社文庫)

マンガハウス! (光文社文庫)

 

 超人気漫画を突如休載した神野拓が指導する新人育成プロジェクト。そこにワケありの三人が集まってぶつかり合いながら切磋琢磨の共同生活を送るお仕事小説。再デビューを目指すが伸び悩む滝川あさひ、会社を辞めて漫画家を志す林一樹、絵は下手だが発想力は人一倍の星塚未来。そして指導役の神野が悩む親子関係と彼が突如休載した真相。それぞれが深い悩みや戸惑いを抱え、身近に競い合う存在がいるとどうしても避けられない嫉妬や悪魔の声に苛まれながら、それでも逃げずに向き合い自らの答えを出してゆく彼らの姿には共感できるものがありました。

すべての神様の十月 (PHP文芸文庫)

すべての神様の十月 (PHP文芸文庫)

 

 人生の大切なものを見失いかけた人たちの前に現れた様々な神様たちとのやりとりと、その優しさや切なさが描かれる連作短編集。バーで隣りあったこれまで幸せを感じたことがない死神が出会った喜び、貧乏神や疫病神が取り憑いていた理由、ひっそりと警備員として暮らす道祖神八咫烏が出会った母子、おばあちゃんの釜に取り憑いた付喪神、周囲の人ばかり幸せになるOLの正体など、どこか人間離れしている神様たちは、一方で関わる人たちを見守るような優しさがあって、彼らが果たしている役割とそのありようは読んでいて心温まるものがありました。

ババチャリの神様 (双葉文庫)

ババチャリの神様 (双葉文庫)

 

 父親の失業で東京から父の故郷である島根の四葉島に移り住んだ高校生鳥羽心一。都会への未練を捨て切れない心一が、ある日蔵で死んだばあちゃんが宿っていた古いババチャリを見つける青春小説。真剣に祈れば望むところへ連れて行ってくれるというババチャリに取り憑いたおばあちゃんの霊。島で出会った女の子に一目惚れしたり、仲間たちと島での生活を満喫したり、みんなでババチャリで東京に行ったりとだんだん島の生活に馴染んでいった心一が、苦い過去も乗り越えて大切な人の窮地にババチャリに乗って奮闘する涙あり笑いありの素敵な物語でした。

おせっかい屋のお鈴さん (角川文庫)

おせっかい屋のお鈴さん (角川文庫)

 

 仙台で暮らす村田カエデ27歳。ぽっちゃり体型の優しい彼氏がいて、地元の信金勤務の平凡な人生を送っていた彼女が、生き別れていた父のお墓で困った人を放っておけず騒動ばかり引き起こす幽霊のお鈴さんに振り回される物語。160年前に許嫁に駆け落ちされて無念から成仏できず、その子孫を探すようにカエデに命じるお鈴さん。子孫を見つけても簡単には成仏しない彼女や周囲の人たちに、彼氏のこんちゃん共々振り回されるいくつかのドタバタエピソードは、人間の生々しい本性を描きつつどこかほのぼのとした心温まる感じで悪くない読後感でした。

桜のような僕の恋人 (集英社文庫)

桜のような僕の恋人 (集英社文庫)

 

 恋した美容師の美咲の叱咤激励もあって、諦めかけていたカメラマンになる夢を再び追いかけるようになった晴人。ようやく幸せを見出しかけた状況で美咲が人の何十倍もの早さで年老いる難病を発症してしまう物語。これからというところでの悲劇に、これは女性には残酷だな...と思いながら読んでいましたが、彼を思うがゆえの決別があまりにも切なくて、そんな彼女に変わらないものを教えてくれた彼の写真に込めた想いがあって、会いたいけど彼に姿は見せられない彼女の複雑な心境を象徴するかのような結末には、胸が締め付けられる思いがしました。

 

崩れる脳を抱きしめて

崩れる脳を抱きしめて

 

 広島から神奈川の病院に実習に来て、脳腫瘍を患う女性・ユカリと出会い次第に心を通わせてゆく研修医の碓氷。実習を終え広島に帰った彼の元にユカリの死の知らせが届くが、その死に疑問を抱く青春ミステリ。過去に縛られていた碓氷が、解消してくれたユカリに惹かれるも果たせず終わった結末。その死に感じた違和感をそのままにできず、神奈川に飛びユカリの足跡を追う碓氷。ミステリとしての構図はさほど意外なものではなかったですけれど、読みやすくテンポよく進む展開と最後にたどり着いた結末は、その真摯な想いが報われた素敵な読後感でした。

金木犀と彼女の時間 (ミステリ・フロンティア)
 

 同じ一時間を五回繰り返すタイムリープを過去に経験し、無難に生きることを選択した女子高生の菜月。そんな彼女が文化祭で同級生の拓未に告白され、繰り返すはずのループで墜死した拓未を目撃してしまう学園青春ミステリ。無難に周囲に合わせてきた高校生活のいきなりの暗転。拓未の墜死に動揺しやり直しで何とか救おうとするものの、毎回違う形で失敗し死なせてしまう絶望。親友とのすれ違いが周囲との人間関係も少しずつ変化して、誰も彼も疑わしく見える中で自分から勇気を出して一歩を踏み出し流れを変えてゆく展開はなかなか良かったですね。 

滑らかな虹〈上〉 (ミステリ・フロンティア)

滑らかな虹〈上〉 (ミステリ・フロンティア)

 

 中学3年になる春、山坂百音は3年半前に起きたできごとについて5年3組の担任教師だった柿埼に向けて手紙という形で思い出を綴ってゆくミステリ。当時の思い出を百音と小学校の元教員・田児あやめの2人の視点から描いていく展開で、普通だったらまず実現しないのでは?とも感じる柿埼が生徒たちに提案した「ニンテイ」というゲーム。生徒たちの思惑も複雑に絡む不穏な雰囲気の中で当然起こりうる事態と、それが意外な形で転機を迎えてゆくあたりなかなか興味深かったです。田児先生の複雑な想いも気になるところですが、下巻でどうなるのか期待。

滑らかな虹〈下〉 (ミステリ・フロンティア)

滑らかな虹〈下〉 (ミステリ・フロンティア)

 

 「ニンテイゲーム」を続ける五年三組で密かに起こった変化。その結果起こった事件、クラスメイトのその後や柿埼先生とあやめ先生の思いの行方が描かれた下巻。バンパイアチームによって徐々に取り込まれてゆくクラスメイト。取り込まれて元気をなくしていく親友を心配するけれど上手くいかない構図は難しいなとも思いましたけど、それ以上に決死の思いから起こした事件とその顛末に何とも言えない気分になりました。切ないけれど穏やかな結末かと思ったら、最後に思わぬことに気付かされてビックリ...でもいつか二人が仲直りできるといいですね。

アゲハの公約

アゲハの公約

 

 彼氏に二股を掛けられ仕事を辞めて郷里に帰ることにしたアゲハが、ふとしたきっかけから過疎化が進む故郷を復活させるため、26歳にして市長選に立候補することになる選挙小説。4つの町が合併して初の市長選挙。故郷の梅林を守るため、町長だった祖父や男中心の後援会の助けを得て立候補したアゲハ。ど田舎らしい公職選挙法違反やライバルたちのえげつない妨害はいかにもありそうな感じでしたけど、苦境にもめげずに街コンを公約に掲げて再選挙まで戦い抜いたアゲハの奮闘ぶりと、落ち着くべきところに落ち着いたその結末はなかなか良かったです。

10月に読んだ本 #読書メーターより

10月は週末のたびに忙しかったりでなかなか苦戦しましたが、電撃文庫の新作だったり、ファンタジア文庫の楽しみなシリーズだったり、ホーンテッド・キャンパスだったり読んだラインナップは充実していました。あとは発売日が集中しがちなので少し発売月分散してくれると良いなとか密かに思ったりしますが、そのへんはまあ思い通りにはいかないですね…(苦笑)

 

10月の読書メーター
読んだ本の数:96
読んだページ数:24986
ナイス数:5900


6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)感想
人間関係に焦燥を募らせる優等生香衣。サッカー部のエースで香衣が気になる隆生。香衣に一目惚れした不良・龍輝。付かず離れずの距離で香衣の友人を演じるセリカ。それぞれの視点から綴られる出会いと別れの物語。中学時代一緒に勉強して同じ高校に合格したのに、いつの間にか距離ができてしまった香衣と隆生。その関係を起点に描かれてゆく読んでいる方がもどかしくなるような青春群像劇は、前作とはまたガラリと違う読みやすさと繊細さが感じられて、こういう作品も書けるのかとビックリしました。こういう王道の青春小説をまた読んでみたいです。
読了日:10月31日 著者:大澤 めぐみ
ブラック企業に勤めております。 仁義なき営業対決 (集英社オレンジ文庫)ブラック企業に勤めております。 仁義なき営業対決 (集英社オレンジ文庫)感想
川原が去り、中杉支店長のもと新体制となったK支店。川原とは違うタイプの厄介者である中杉に振り回され、市制八十周年記念のシティガイド制作のために支店で営業プロジェクトが始まる第三弾。それにしてもこの会社残念な人が多過ぎて夏実はこんな環境でほんとよく続くよなあと感心してしまうレベル。桑原代理は言うまでもなく、相対的に支店レギュラーすらもまともないい人に思えてしまった(苦笑)そんな人たち相手に何とかフォローしてしまう夏実がほんとすごい。林さんとの関係も今後進展ありそうですかね。相手の上司が応援体制なのは心強い。
読了日:10月31日 著者:要 はる
百錬の覇王と聖約の戦乙女 14 (HJ文庫)百錬の覇王と聖約の戦乙女 14 (HJ文庫)感想
鋼討伐軍を打ち倒し、ハールバルズに心を囚われたリーファも無事助け出した勇斗。冬が近づく中兵の疲労も顧みずすぐさま軍を神都グラズヘイムへと進める第十四弾。ユグドラシル崩壊に対処するため、リーファと婚姻を結び神帝の地位を得ることを目指す勇斗。苦境に陥って自分も貢献しようとして空回りするリーファは微笑ましかったですが、諦めの悪いハールバルズとの決着は何とも切ない結末でしたね。意外な形で繋がった因縁も明らかになって物語としても結末が近づいて来ているのを感じますが、いよいよあの人と直接対決ですか。次巻も楽しみです。
読了日:10月30日 著者:鷹山誠一
マンガハウス! (光文社文庫)マンガハウス! (光文社文庫)感想
超人気漫画を突如休載した神野拓が指導する新人育成プロジェクト。そこにワケありの三人が集まってぶつかり合いながら切磋琢磨の共同生活を送るお仕事小説。再デビューを目指すが伸び悩む滝川あさひ、会社を辞めて漫画家を志す林一樹、絵は下手だが発想力は人一倍の星塚未来。そして指導役の神野が悩む親子関係と彼が突如休載した真相。それぞれが深い悩みや戸惑いを抱え、身近に競い合う存在がいるとどうしても避けられない嫉妬や悪魔の声に苛まれながら、それでも逃げずに向き合い自らの答えを出してゆく彼らの姿には共感できるものがありました。
読了日:10月30日 著者:桜井 美奈
ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)感想
1クールごとに組む相手を変え覇権を競うアニメ制作現場。伝説の天才監督・王子を口説いた有科、同じクールで勝負を挑む監督・斎藤瞳と行城のコンビ、そして原画に携わる和奈と地元のそれぞれの視点から語られるお仕事小説。人間関係にも苦労する不器用だけどアニメに賭ける想いは熱い登場人物たち。見えているもの思うところは違っても、けれどアニメのためならいくらでも頑張れるし、苦難を乗り越えてしまうパワーが感じられて楽しかったです。ちょっと今後が気になるコンビもあったけど、文庫版で追加された「執事とかぐや姫」も良かったですね。
読了日:10月29日 著者:辻村 深月
甦る殺人者: 天久鷹央の事件カルテ甦る殺人者: 天久鷹央の事件カルテ感想
都内近郊で若い女性が次々と首を絞められて惨殺される連続殺人事件。しかし現場に残された血痕で割り出された容疑者は四年前に死んだ男だったという第八弾。弟に酷似したDNA鑑定から割り出されたその容疑者はかつて鷹央が死亡診断を下した男で、死者を生き返らせることができるという新興宗教にハマっていたその母。果たしてシリアルキラーは誰なのか、どうにも後味が悪い結末は予想もしなかったもので驚きました。今回は鷹央の意外な心情も吐露されましたけど、傍らで支えてくれる小鳥先生がいればきっと大丈夫ですよね。続巻に期待しています。
読了日:10月29日 著者:知念 実希人
ショートストーリーズ 僕とキミの15センチ (ファミ通文庫)ショートストーリーズ 僕とキミの15センチ (ファミ通文庫)感想
「僕とキミの15センチ」をテーマに総勢20名の作家が参加して描かれたショートストーリー集。同じテーマで書いていても著者さんそれぞれで着目点が違ったり、作品にらしさがよく出ていてとても興味深かったですが、個人的には九曜さんや三田千恵さん、久遠侑さんあたりの青春小説は今後も期待したくなりましたね。そして何よりもう読めないと思っていた東雲侑子シリーズ文学少女のエピソードが読めたのは嬉しかったです。一つ一つの作品がもう少しボリュームあると良かったかなとは感じましたが、全体としてみれば十分満足できる一冊でした。 
読了日:10月27日 著者:井上 堅二,庵田 定夏,綾里 けいし,石川 博品,岡本 タクヤ,九曜,佐々原 史緒,更伊 俊介,三田 千恵,竹岡 葉月,羽根川 牧人,御影 瑛路,水城 水城,野村 美月,森橋 ビンゴ,田口 仙年堂,築地 俊彦,伊東 京一,久遠 侑,くさなぎ そうし
佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 3 (ファミ通文庫)佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 3 (ファミ通文庫)感想
桜井さん主導で佐伯さんや友人と一緒にプールに行ったり、夏休み明け二学期は学園祭準備も始まり、佐伯さんのご両親帰国で一緒に訪問することになる第三弾。弓月と佐伯さんに宝龍や桜井たちが絡んで広がるエピソードはお約束ですが、自身の実家帰省はあっさりなのに佐伯さんご両親の片付けを手伝ったり、マメな弓月の外堀は順調に埋まっていってる感。かと思えば諸事情あって相手に配慮していたら二人がすれ違うまさかの急展開には驚きましたが、傍にいないからこそ改めて分かった大切な想いをきちんと確認しあえて良かったです。続巻も期待ですね。
読了日:10月27日 著者:九曜
金木犀と彼女の時間 (ミステリ・フロンティア)金木犀と彼女の時間 (ミステリ・フロンティア)感想
同じ一時間を五回繰り返すタイムリープを過去に経験し、無難に生きることを選択した女子高生の菜月。そんな彼女が文化祭で同級生の拓未に告白され、繰り返すはずのループで墜死した拓未を目撃してしまう学園青春ミステリ。無難に周囲に合わせてきた高校生活のいきなりの暗転。拓未の墜死に動揺しやり直しで何とか救おうとするものの、毎回違う形で失敗し死なせてしまう絶望。親友とのすれ違いが周囲との人間関係も少しずつ変化して、誰も彼も疑わしく見える中で自分から勇気を出して一歩を踏み出し流れを変えてゆく展開はなかなか良かったですね。 
読了日:10月26日 著者:彩坂 美月
この世界に i をこめて (メディアワークス文庫)この世界に i をこめて (メディアワークス文庫)感想
屈折した高校生・染井浩平唯一の女友達で、半年前に死んでしまった天才作家・吉野紫苑。退屈な高校生活から逃避して届くはずのない彼女へメールを送り続ける染井の元に彼女のアドレスからメールが届き始める物語。不器用で人を好きになることを知らず、染井と多くの創作を語り合った吉野。そんな彼のもとに現れた転校生・真白。それぞれが抱く思いは複雑でも話の構図としてはわりとシンプルで、遺された吉野の最後の物語と言葉、そして彼女を介して繋がったうまく生きられない二人が少しずつ積み重ねてゆく不器用な関係は心に響くものがありました。
読了日:10月26日 著者:佐野 徹夜
おとなりの晴明さん ~陰陽師は左京区にいる~ (メディアワークス文庫)おとなりの晴明さん ~陰陽師は左京区にいる~ (メディアワークス文庫)感想
一家で京都に引っ越してきた女子高生・桃花。隣に住んでいたのは琥珀の髪と瞳をもつ青年・晴明さん。子どもの頃出会っていて不思議な術で桃花の猫を助けてくれた晴明さんと女子高生のあやかしファンタジー。二人の前に現れる優しい鬼や京都の街を守る平安京サル会議、美の御利益をもたらす女神様たち。勉強を教えてもらうはずがいつの間にか弟子みたいな扱いで関わっていた桃花でしたけど、浮世離れした晴明さんはこれまでの作品にも登場していたあのお人で、からくさ図書館の二人や茜さんなども登場したり世界観の広がりを感じる素敵な物語でした。
読了日:10月25日 著者:仲町 六絵
タイムシフト 君と見た海、君がいた空 (ダッシュエックス文庫)タイムシフト 君と見た海、君がいた空 (ダッシュエックス文庫)感想
壊れつつある世界で印象的な出会いを果たした少女・八神リノと、偶然同じ家に同居することになった少年・七尾レキ。彼らが世界の崩壊を食い止めるため立ち上がる青春SF小説。不具合が顕在化した世界でカムナギという異常体質に蝕まれているレキたち。それでも親友のユウキやアザミに妹ミナたちも交えた青春な日々を過ごす中で起きた事件。初々しいやり取りが甘酸っぱい不器用な二人が直面する真実と運命はどこまでも残酷で、絶望的な状況でも諦めなかった彼らの強い思いがどのような結末に繋がってゆくのか、続きをまた読んでみたいと思いました。
読了日:10月25日 著者:午後12時の男
ホーンテッド・キャンパス 水無月のひとしずく (角川ホラー文庫)ホーンテッド・キャンパス 水無月のひとしずく (角川ホラー文庫)感想
ストーカー気味の男子学生がいて、こよみから突然恋人の振りをしてほしいと依頼された森司。二つ返事で彼氏役を引き受ける一方、オカ研の依頼は禍々しさを増してゆく第十二弾。オカ研に持ち込まれた依頼は事故現場の花束の怪や足を這い上る虫の感触、閉じ込められて消えた中学生など、相対的強者が立場を利用し弱者を支配しようとする構図はどこにでもある話で唸ってしまいました。こよみとの距離を縮めつつも毎回もどかしい森司ですけど、その真っ直ぐで真摯な彼だからこそ周囲の人たちに愛されているのかなと。でもそろそろ進展あるといいですねw
読了日:10月25日 著者:櫛木 理宇
華鬼2 (講談社文庫)華鬼2 (講談社文庫)感想
国一が刺され重体になったことで、その場にいた華鬼や神無に響の敵意が向かい、幾度も学園で命を狙われた神無は華鬼の生家で父の忠尚やその花嫁たちと出会う第二弾。どうにもならない苛立ちを持て余し気味の華鬼と不器用で言葉足らずな神無の距離感はなかなか縮まらなくて、忠尚や花嫁たちとの関係も一時はどうなるかと思いましたけど意外といい人たちでしたね。普段はあんな感じなのに負傷した華鬼が無意識のうちに神無に甘えててびっくりしましたが、その辺期待感は感じつつも変わりつつある神無に複雑な思いをいだき始めた桃子の今後が心配です。
読了日:10月24日 著者:梨沙
現実主義勇者の王国再建記V (オーバーラップ文庫)現実主義勇者の王国再建記V (オーバーラップ文庫)感想
アドミニアを併合しフリードニア王国の新国王となったソーマ。教育番組の放送で国民の啓蒙を進めたり軍の極秘プロジェクトを披露するなど着々と国を整備する一方で、聖女が来訪したりドラゴンに招待される第五弾。将来を見据えた施策を整備する中で出てきたベタな教育番組には苦笑いでしたが、振り回されてばかりのカルラにはちょっと同情…そして強烈なテコ入れで婚約者たちとの関係もようやく一歩前進ですか。急成長し注目されて周辺国との対応もこれまでとまた違った難しさが出てきそうですが、まずはドラゴンとの対面ですね。続刊も楽しみです。
読了日:10月24日 著者:どぜう丸
木津音紅葉はあきらめない (集英社オレンジ文庫)木津音紅葉はあきらめない (集英社オレンジ文庫)感想
御印を持ち分家の娘ながら資産家の木津音本家に迎えられた紅葉。しかしその目的が神狐とつがい次代の巫女を産むためと知り、養父に対して反逆を企てる物語。傍若無人で嫌われものの養女・紅葉と、常に努力し周囲に愛されながら御印を持たない実娘・結花。モフモフ狐たちと紅葉の出会いをきっかけに、対照的な立ち位置だった二人がそれぞれ新たな一面を見せ始めたり、人間関係も変わってゆく構図は印象的で、今巻の騒動を経て彼女が目指す目標の具体的な形が見えてきましたね。真意が見えないお目付け役の思惑も気になる続巻に期待の新シリーズです。
読了日:10月23日 著者:梨沙
どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)感想
訳ありの過去もあり友人の幹也と采岐島のシマ高に進学した月ヶ瀬和希。そんな彼が初夏に神隠しの入江で倒れていた少女・七緒を発見するボーイミーツガール青春小説。過去からやって来た七緒と少しずつやりとりを重ねてゆく日々。何気なく過ごせていた高校生活の突然の暗転。明かされる過去の真相と、変わらず向き合ってくれる友人たちの存在、そして覚悟を決めた七緒。甘酸っぱく初々しかった出会いの結末には切なくなりましたけど、繋がって行く過去と未来、そして意外な形で届けられた真摯な思いは、かけがえのないとても素敵なものに思えました。
読了日:10月23日 著者:阿部 暁子
グランクレスト戦記 9 決戦の刻 (ファンタジア文庫)グランクレスト戦記 9 決戦の刻 (ファンタジア文庫)感想
愛するマリーネのためについに立ち上がったアレクシスの決意。海洋王を相手にあえて不利な海上での戦いを選択。条約、連合、同盟の三勢力が決戦の時が近づく第九弾。皇帝に近い男・海洋王エリークとの決戦であえて海上で戦うことを選んだアレクシスの奇策。交渉が決裂し決戦となった状況であえて条約のみで同盟に対峙しようと決意するテオの真意。一度はぶつからないと分かり合えなかった二人にとっては転機でしたけど、この決戦がもたらした結果と様々な急展開によって最終局面に向けた舞台が整ってゆく中で、最終巻でどうなるか今から楽しみです。
読了日:10月22日 著者:水野 良 
エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 7 (MF文庫J)エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 7 (MF文庫J)感想
欧州経済と食糧の限界を受け決定された史上二回目の反攻作戦。デストブルムを含む4機のネイバーを同時投入し群生地を制圧する大規模作戦が実施される第七弾。エルイン亡き後、飛躍的に成長したセレンたち強力なネイバーを軸に絶対種キングに挑ませる展開は、国際連合首脳陣のクズっぷりが凝縮された構図。絶望的な状況に颯爽と現れる味方がいて、首脳陣も真っ青のこれまでの経緯も暴露されて。それでも苦しくなる一方の過酷な戦いを覆して希望をもたらした大逆転劇には、これまで溜まった鬱屈がある分凄まじいカタルシスがありました。続巻も期待。
読了日:10月21日 著者:東 龍乃助
デュシア・クロニクル 十二騎士団の反逆軍師〈リヴェンジャー〉 (ファンタジア文庫)デュシア・クロニクル 十二騎士団の反逆軍師〈リヴェンジャー〉 (ファンタジア文庫)感想
帝国に家族を殺されて黒天十二騎士団の座も追われ、今は反帝国派の希望・軍師アートルム卿として活動する少年シオン。辺境の王国騎士セレインとの出会いから、西方大陸の歴史を変える復讐の戦いが始まる戦記ファンタジー。帝国の対応を巡って王女派と宰相派に分かれるエルザイムを舞台に、王女派として旅の剣士シオンとアートルム卿の二役を演じつつ戦いを主導する展開。野心を胸に秘めた王女やツンデレなセレインといったヒロインたちを魅力的に描きつつ複雑な因縁も絡めてゆく構成は、戦記物として見るとこれからですけど期待の新シリーズですね。
読了日:10月21日 著者:大黒 尚人
アサシンズプライド7 暗殺教師と業火剣舞祭 (ファンタジア文庫)アサシンズプライド7 暗殺教師と業火剣舞祭 (ファンタジア文庫)感想
メリダの祖父モルドリュー卿から白夜騎兵団とクーファに下されたのは鋼鉄宮博覧会においてメリダを聖騎士と偽ったまま永遠に葬り去ること。クーファも指令を明かせないままメリダが舞台に向かう第七弾。密かにメリダのために特訓を施すクーファと暗殺指令を利用し襲撃を企む黎明戯兵団。複数の思いが交錯する舞台ではそれぞれの矜持を賭けた戦いがあって、自らの運命に向き合い公爵家令嬢たちと力を合わせ窮地を乗り越えてみせたメリダの成長と覚悟は、物語の大きな転機になりそうですね。まだまだ二人の茨の道は続きそうですけど次巻が楽しみです。
読了日:10月20日 著者:天城ケイ
冴えない彼女の育てかた13 (ファンタジア文庫)冴えない彼女の育てかた13 (ファンタジア文庫)感想
加藤恵への告白とゲーム完成に向けてのラストスパート。あの日、あの坂道での運命の出会いからすべては始まった一巻まるごとエピローグの第十三弾。何というかそこに落ち着いたのかというか、そういう理由だったのかというか。告白された加藤も相変わらず面倒な女の子で、倫也は一応ちゃんとケジメはつけつつも、結局加藤とずっとイチャイチャしてるだけのようにも見えて、そんな二人に周囲も呆れ気味の展開にはまあそうなるよね…というオチがきちんとついてて安心しました(違)本編は残念ながらこれで完結ですけど、番外編とかも期待してますよ。
読了日:10月20日 著者:丸戸 史明
後宮刷華伝 ひもとく花嫁は依依恋恋たる謎を梓に鏤む (コバルト文庫)後宮刷華伝 ひもとく花嫁は依依恋恋たる謎を梓に鏤む (コバルト文庫)感想
母が皇族殺しという大罪を犯し、自身も母に斬りつけられ心身に深い傷を負った高秀麒。ごくつぶしの六皇子として日陰を生きてきた彼のもとに皇太子の花嫁候補・念玉兎が嫁ぐことになる第七弾。本の刊行を続けたいがために秀麒に一目惚れしたと偽って皇太子妃候補を逃れ、彼のもとに元に嫁いできた玉兎。裏があるのではと疑い玉兎の本音を知ってしまう秀麒。最初が最初だけに変わってゆく想いになかなか素直に向き合えない展開でしたけど、二人の関係がようやく好転するようになってホッとした分、悲劇がもたらした顛末には切ない気持ちになりました。
読了日:10月19日 著者:はるおか りの
ジャナ研の憂鬱な事件簿 2 (ガガガ文庫)ジャナ研の憂鬱な事件簿 2 (ガガガ文庫)感想
先輩も卒業し真冬と啓介の二人になったジャナ研に再び身近な事件が持ち込まれ、同級生の妹により啓介の苦い過去が暴露される第二弾。軽音部の新たな歌姫を付け狙うストーカー、ユリの姉が受け取った奇妙な手紙の本当の意図、かつて中学時代に啓介が糾弾した脚本盗作事件の真実。今回もまた事件を解き明かしていった先には複雑な思いの吐露があって、ほろ苦いけれど今はそれを受け止めるしかなくて。真冬の夢や進路も明らかになってお互いのことを知るようになってはいても、周囲が思うほどは進展していない二人の今後が気になりますね。続巻に期待。
読了日:10月18日 著者:酒井田 寛太郎
スピンガール! 海浜千葉高校競技ポールダンス部 (メディアワークス文庫)スピンガール! 海浜千葉高校競技ポールダンス部 (メディアワークス文庫)感想
中学時代の苦い経験から人と関わることが苦手な女子高生・舞。競技ポールダンス部設立を目指す舞が周囲に猛反対され、部設立を認可する条件として大会入賞を言い渡されてしまう青春小説。マネージャー役を買って出た友人と一緒に立ち上げたポールダンスに加わることになる、わけありで廃部した元競技ダンス部の郁斗先輩と白谷先輩。周囲とのやりとりが拙く空回り気味だった主人公でしたが、友人や先輩たちもまた苦い過去を抱えていて、ぶつかり合いながら競技に挑んで喜びを見出してゆく様子は、展開的にベタではありましたがなかなか良かったです。
読了日:10月18日 著者:神戸遥真
明治あやかし新聞 二 怠惰な記者の裏稼業 (メディアワークス文庫)明治あやかし新聞 二 怠惰な記者の裏稼業 (メディアワークス文庫)感想
久馬たちの妖怪記事によって人助けをする裏稼業を手伝う事となった香澄。真実を知らない兄の主計がそれを快く思わず、同僚との見合いの席を設けてしまう第二弾。子を身籠った女を振った兄の同僚への復讐、道場の娘をかどわかす男への対応、間違って納本してしまった本をめぐる顛末。わかりやすい勧善懲悪に加えて、今回は兄との意見の対立が顕在化しましたけど、それは妹を心配するがゆえの想いであって、いろいろ頑張った久馬はどうやら兄に認められたような気がしないでもないですが、香澄自身はまだまだ自覚には遠そうですね(苦笑)続刊に期待。
読了日:10月17日 著者:さとみ桜
おせっかい屋のお鈴さん (角川文庫)おせっかい屋のお鈴さん (角川文庫)感想
仙台で暮らす村田カエデ27歳。ぽっちゃり体型の優しい彼氏がいて、地元の信金勤務の平凡な人生を送っていた彼女が、生き別れていた父のお墓で困った人を放っておけず騒動ばかり引き起こす幽霊のお鈴さんに振り回される物語。160年前に許嫁に駆け落ちされて無念から成仏できず、その子孫を探すようにカエデに命じるお鈴さん。子孫を見つけても簡単には成仏しない彼女や周囲の人たちに、彼氏のこんちゃん共々振り回されるいくつかのドタバタエピソードは、人間の生々しい本性を描きつつどこかほのぼのとした心温まる感じで悪くない読後感でした。
読了日:10月17日 著者:堀川 アサコ
Re:ゼロから始める異世界生活14 (MF文庫J)Re:ゼロから始める異世界生活14 (MF文庫J)感想
墓所の試練で心の奥深くに封じた自分の過去と対面するエミリア。彼女の無事を信じて待つスバルたちにリューズの複製体の一人シーマもまた聖域の成り立ちを語り始める第十四弾。奇しくも同時に蘇ることになったエミリアと聖域の二つの過去。父母がいないなりに満ち足りた生活を送っていたエミリアの暗転と危機に陥ったリューズたちの決断。いろいろな関わりと過去が明らかになりましたが、ペテルギウスもまあ業が深いですね...これは。現時点ではまだまだ未熟でも、それぞれの大切なもののために戦う結末がどうなるのか、次巻に期待ということで。
読了日:10月16日 著者:長月 達平
アゲハの公約アゲハの公約感想
彼氏に二股を掛けられ仕事を辞めて郷里に帰ることにしたアゲハが、ふとしたきっかけから過疎化が進む故郷を復活させるため、26歳にして市長選に立候補することになる選挙小説。4つの町が合併して初の市長選挙。故郷の梅林を守るため、町長だった祖父や男中心の後援会の助けを得て立候補したアゲハ。ど田舎らしい公職選挙法違反やライバルたちのえげつない妨害はいかにもありそうな感じでしたけど、苦境にもめげずに街コンを公約に掲げて再選挙まで戦い抜いたアゲハの奮闘ぶりと、落ち着くべきところに落ち着いたその結末はなかなか良かったです。
読了日:10月15日 著者:三萩 せんや
妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)感想
未来に起こる確率を調べる技術が確立した世界。自らが抱える苦しい思いをどうにかしたくて、確率をつい確認し続けてしまう人たちの物語を描く連作短編集。政略結婚や大怪我、路面電車での出会い、届かぬ思いや父と娘の関係、忘れられない運命の出会いなど、停滞する状況を抱える登場人物たち。それでも人との関わりの積み重ねから事態や心境も少しずつ変化して、それに向き合ったり素直になったり次に向けた一歩を踏み出してゆく7つのエピソードは、表題作でもあるタイトルイメージをいい意味で裏切る思いのほか爽やかな読後感の素敵な物語でした。
読了日:10月15日 著者:桜川 ヒロ
スーパーカブ (角川スニーカー文庫)スーパーカブ (角川スニーカー文庫)感想
父親を亡くし母親が失踪、友達も趣味も何もない日々を送っていた山梨の高校に通う女子高生・小熊。そんな彼女が中古のスーパーカブに出会い、それをきっかけに世界が広がってゆく物語。奨学金で高校に通う慎ましい生活を送る子熊視点で淡々と綴られる、同じカブに乗る同級生の礼子と知り合ったり、カブを巡る様々な出来事に遭遇したり、これまで目を向けてこなかったものに気づいてゆく展開。著者さんの深いカブ愛を感じつつ、子熊らしい慎重なペースで、けれど確実に世界が広がっていてゆく様子がとてもいいと思いました。これは続巻も期待ですね。
読了日:10月14日 著者:トネ・コーケン
すべての神様の十月 (PHP文芸文庫)すべての神様の十月 (PHP文芸文庫)感想
人生の大切なものを見失いかけた人たちの前に現れた様々な神様たちとのやりとりと、その優しさや切なさが描かれる連作短編集。バーで隣りあったこれまで幸せを感じたことがない死神が出会った喜び、貧乏神や疫病神が取り憑いていた理由、ひっそりと警備員として暮らす道祖神八咫烏が出会った母子、おばあちゃんの釜に取り憑いた付喪神、周囲の人ばかり幸せになるOLの正体など、どこか人間離れしている神様たちは、一方で関わる人たちを見守るような優しさがあって、彼らが果たしている役割とそのありようは読んでいて心温まるものがありました。
読了日:10月13日 著者:小路 幸也
桜のような僕の恋人 (集英社文庫)桜のような僕の恋人 (集英社文庫)感想
恋した美容師の美咲の叱咤激励もあって、諦めかけていたカメラマンになる夢を再び追いかけるようになった晴人。ようやく幸せを見出しかけた状況で美咲が人の何十倍もの早さで年老いる難病を発症してしまう物語。これからというところでの悲劇に、これは女性には残酷だな...と思いながら読んでいましたが、彼を思うがゆえの決別があまりにも切なくて、そんな彼女に変わらないものを教えてくれた彼の写真に込めた想いがあって、会いたいけど彼に姿は見せられない彼女の複雑な心境を象徴するかのような結末には、胸が締め付けられる思いがしました。
読了日:10月13日 著者:宇山 佳佑
翠玉姫演義 二 ‐戦場の天女‐ (富士見L文庫)翠玉姫演義 二 ‐戦場の天女‐ (富士見L文庫)感想
持ち前の商才と度胸で極南を烈英の領地として国に認めさせた香月。だが民に捨てられた辺境の地は得体のしれない宗教勢力と盗賊がひしめく無法地帯と化していた第二弾。国に認められていても実効支配できていない厳しい状況。立場が変わればそれぞれ思うところも変わり、自分が有用な人材でいられるか現状に焦燥を募らせてゆく香月。そんな彼女の採った即効性のある行動がそれで良かったのか判断が難しいところでしたけど、一方でそれによって極南が国として歩み始められたのも確かで、これから香月のありようがどう変わってゆくか続巻に期待ですね。
読了日:10月12日 著者:柊平 ハルモ
魔法使いにはさせませんよ! (GA文庫)魔法使いにはさせませんよ! (GA文庫)感想
異世界からの侵略獣に人類が脅かされ、30歳まで貞操を守らないと対抗する魔法使いになれない世界。候補生鞘波黒刃が通う女子禁制の育成学院に魔法少女白啾なしろが転校してくる物語。共通の敵がいるのに魔法少女貞操を脅かされる候補生の構図や残念エピソードの数々には苦笑いでしたけど、幼馴染との約束のために魔法使いを目指す黒刃の秘めた力が発動するバトル、貞操を脅かすなしろの魅力に翻弄され幼馴染も心穏やかではいられないラブコメ展開、最後には執念の大技も炸裂したりで、荒削りながらも十分魅力ある作品でしたし続巻に期待ですね。
読了日:10月12日 著者:朝日乃 ケイ
魔王の娘を嫁に田舎暮らしを始めたが、幸せになってはダメらしい。 (GA文庫)魔王の娘を嫁に田舎暮らしを始めたが、幸せになってはダメらしい。 (GA文庫)感想
魔王軍の紅蓮の騎士カズキ(人間)は魔王の娘で幼馴染のアストリッドのコミュ障を治すため、魔王の命で人間の田舎町に二人一緒に暮らすスローライフ幼馴染ラブコメ。魔王に間違いがあったら死罪と言われながら、その配慮でかいがいしく世話をするアストリッドにたびたび理性が崩壊寸前のカズキ。そんな彼らの前に現れる宿敵でバカップルな勇者アスマと女神官ミラ。安心安定の甘々な展開にカズキの秘密や魔王の思惑も絡めた展開は、ハッピーエンドのために立ち上がったアストリッドの決意もあって面白くなりそうですね。続巻に期待の新シリーズです。
読了日:10月12日 著者:手島 史詞
京都烏丸御池のお祓い本舗 (双葉文庫)京都烏丸御池のお祓い本舗 (双葉文庫)感想
会社をリストラされ彼にも振られた木崎朋美が、レトロなBARで弁護士・城之内にスカウトされ、本業はお祓いの事務所で持ち込まれる奇妙な依頼を解決してゆく物語。イイ男なのに残念な京男子・ジョー先生や特別な霊能力を持つバイトの美少年高校生・海斗君と組み、3人で力を合わせ猫探しからストーカー退治、憑き物や呪い絡みの案件まで解決する展開で、お人好しだけど人情に厚くピンチの時ほど大活躍の規格外な朋美はこれまでとはまた一味違った魅力のあるヒロインでした。寺町三条のホームズさんたちも登場したりで、今後に期待の新リーズです。
読了日:10月11日 著者:望月 麻衣
きっと彼女は神様なんかじゃない (メディアワークス文庫)きっと彼女は神様なんかじゃない (メディアワークス文庫)感想
現在に至るまで受け継がれた部族の教えがあるけど海を愛し、浮いた存在の集落で生贄とされて海の底に沈んだ一人ぼっちの少女が、自らを神と称した無知な少女・メイと出会うSF的ガール・ミーツ・ガールな物語。未開の地で疎まれていた少女と海底で眠っていた少女・メイの出会いが転機となり、原始的な環境で二人が拙いながらも交流してゆく展開でしたけど、冒頭の流れから何となく思い描いていたSF的展開よりはよほど現実的な顛末が待っていて、二人で選んだ決断にはやるせなさもありましたが、それだけでは終わらない何かがあったと思いました。
読了日:10月11日 著者:入間 人間
憧れの作家は人間じゃありませんでした2 (角川文庫)憧れの作家は人間じゃありませんでした2 (角川文庫)感想
死んだ人が化けて出ているという噂話に、門脇先生と首がなくなってしまった彼女の話、そしてあさひのドッペルゲンガーが現れる第二弾。今回あさひが関わることになった3つの事件はそれぞれ複雑な背景があっての話で、起こった事件をどう捉えるべきなのか、切ないけどいつか乗り越えないといけなかったり、どうするのか良かったのかとても難しい問題だったりしましたが、この世に生きている妖怪って孤独なんですよね。あさひに対する御崎禅の変化も気になるところですが、ルーナの視点から描かれた番外編もまた良かったです。また続巻が楽しみです。
読了日:10月11日 著者:澤村 御影
ぬばたまおろち、しらたまおろち (創元推理文庫)ぬばたまおろち、しらたまおろち (創元推理文庫)感想
両親を亡くし角田村で叔父夫婦に育てられた綾乃。小さい頃からの秘密の親友・大蛇のアロウにプロポーズされた彼女が、別の大蛇に襲われる事件を経て母校ディアーヌ学園で学ぶことになるファンタジー。妖魅子女も通うディアーヌ学園で楽しい友人たちと出会い魔女の修行をする日々。そこから繋がる雪之丞との縁と過去の因縁もまた明らかになってゆく展開で、アロウとの約束に心揺れる綾乃と共に過ごすうちに絆を深めてゆく雪之丞が過去に飛んで、そこで果たした役割が現在に繋がってゆくその結末にはなるほどと唸らされた、とても素敵な物語でした。 
読了日:10月10日 著者:白鷺 あおい
櫻子さんの足下には死体が埋まっている ジュリエットの告白 (角川文庫)櫻子さんの足下には死体が埋まっている ジュリエットの告白 (角川文庫)感想
突然、東京の兄からきた連絡。櫻子さんからの提案で足寄と網走に三人で旅することになった顛末と、友人の鴻上百合子には、宿敵・花房の影が忍び寄る第十二弾。初登場の正太郎の兄は小難しい人物かと思ったら、ツンデレというか弟大好き過ぎて苦笑いでしたけど、兄の指摘で少なからず意識した正太郎に今後何か変化はあるんでしょうかね。そして何とも悲哀なエピソードの一方で花房の影を感じる失踪。鴻上さん好きなキャラだし幸せになって欲しいんですけどね...物語も終盤に近づいているのを感じる中で、その結末がとても気になる終わり方でした。
読了日:10月09日 著者:太田 紫織
崩れる脳を抱きしめて崩れる脳を抱きしめて感想
広島から神奈川の病院に実習に来て、脳腫瘍を患う女性・ユカリと出会い次第に心を通わせてゆく研修医の碓氷。実習を終え広島に帰った彼の元にユカリの死の知らせが届くが、その死に疑問を抱く青春ミステリ。過去に縛られていた碓氷が、解消してくれたユカリに惹かれるも果たせず終わった結末。その死に感じた違和感をそのままにできず、神奈川に飛びユカリの足跡を追う碓氷。ミステリとしての構図はさほど意外なものではなかったですけれど、読みやすくテンポよく進む展開と最後にたどり着いた結末は、その真摯な想いが報われた素敵な読後感でした。
読了日:10月08日 著者:知念 実希人
ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.15 (電撃文庫)ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.15 (電撃文庫)感想
二年生組は修学旅行の時期。ルシアンが抱いた野望は「修学旅行でアコとファーストキスをしたい!」直前に期間限定の周回クエストと被っていることも判明して、関西での修学旅行が始まる第十五弾。まずこの学校の修学旅行はオーストラリアと関西に別れちゃうの?みたいな驚きもありましたが、居残り組のマスターにもミッションがあったりで、彼ららしい目的地への訪問ぶりと感想、忘れかけられてるクエストのノルマ、そしてなかなかファーストキスの雰囲気にならない二人と、いろいろ詰まった修学旅行をドタバタしながら満喫していて面白かったです。
読了日:10月08日 著者:聴猫 芝居
陰キャになりたい陽乃森さん Step1 (電撃文庫)陰キャになりたい陽乃森さん Step1 (電撃文庫)感想
圧倒的存在感で陽キャラの頂点に君臨する陽乃森さん。そんな彼女がとある事情から陰キャラの鹿家野たちに陰キャラになれるよう協力を依頼する青春ラブコメ。彼女の事情を知って意識や常識の違いに戸惑いつつも協力する鹿家野たちに突きつけられる、いい子だけど何をしても陽キャラ感がにじみ出てしまう陽乃森さんを変える無理ゲー感。それでも楽しそうなラブコメエピソードからの急展開には驚きましたけど、一緒に行動することでお互い大切なことを知り、そのために奔走する姿は良かったですね。最後まで破壊力あった陽乃森さんはやはり破格でしたw
読了日:10月07日 著者:岬 鷺宮
幼馴染の山吹さん (電撃文庫)幼馴染の山吹さん (電撃文庫)感想
幼い頃に約束を交わしながら疎遠になってしまった可愛い幼馴染の灯里。青春の呪いを掛けられた幼馴染を救うため平凡な喜一郎が一緒に数々の青春の試練に挑む青春ラブコメディ。くしゃみをすると一定期間ものに触れなくなる呪いを受けた灯里と、彼女のために気後れしていた経緯を乗り越え勇気を出した喜一郎。試練とはいってもやってることはただのバカップル体験で(苦笑)一緒に行動する中で積み重なってゆく想いと、過去の誤解と約束もうまく絡めていい感じに盛り上がってゆく展開はとても良かったです。最後の流れは続巻を期待していいですよね?
読了日:10月07日 著者:道草よもぎ
滑らかな虹〈下〉 (ミステリ・フロンティア)滑らかな虹〈下〉 (ミステリ・フロンティア)感想
「ニンテイゲーム」を続ける五年三組で密かに起こった変化。その結果起こった事件、クラスメイトのその後や柿埼先生とあやめ先生の思いの行方が描かれた下巻。バンパイアチームによって徐々に取り込まれてゆくクラスメイト。取り込まれて元気をなくしていく親友を心配するけれど上手くいかない構図は難しいなとも思いましたけど、それ以上に決死の思いから起こした事件とその顛末に何とも言えない気分になりました。切ないけれど穏やかな結末かと思ったら、最後に思わぬことに気付かされてビックリ...でもいつか二人が仲直りできるといいですね。
読了日:10月07日 著者:十市 社
少女手帖 (集英社オレンジ文庫)少女手帖 (集英社オレンジ文庫)感想
周囲に迎合しグループ内で平穏に生きていくことに全力を傾けてきた女子高生の小野ひなた。ある日、憧れの同級生結城さんに誘われグループの約束をドタキャンしたことで周囲から孤立してしまう青春小説。これまで無難に生きることに心を砕いてきたはずが、偶然結城の秘密を知り興味を抱いたことで結果的に失った自分の居場所。息苦しい狭い世界でどう生きるのかというお話でしたけど、焦燥を募らせていた彼女が姉や師匠、結城さんなど、たくさんの人と話し合い悩みながらもこれまでの自分を省みて、大切なことを見出してゆく姿はとても印象的でした。
読了日:10月06日 著者:紙上 ユキ
滑らかな虹〈上〉 (ミステリ・フロンティア)滑らかな虹〈上〉 (ミステリ・フロンティア)感想
中学3年になる春、山坂百音は3年半前に起きたできごとについて5年3組の担任教師だった柿埼に向けて手紙という形で思い出を綴ってゆくミステリ。当時の思い出を百音と小学校の元教員・田児あやめの2人の視点から描いていく展開で、普通だったらまず実現しないのでは?とも感じる柿埼が生徒たちに提案した「ニンテイ」というゲーム。生徒たちの思惑も複雑に絡む不穏な雰囲気の中で当然起こりうる事態と、それが意外な形で転機を迎えてゆくあたりなかなか興味深かったです。田児先生の複雑な想いも気になるところですが、下巻でどうなるのか期待。
読了日:10月06日 著者:十市 社
響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編 (宝島社文庫)響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編 (宝島社文庫)感想
一年生部員たちもようやく部活に慣れ、コンクールに向けた練習もいよいよ本格的になってきた北宇治高校吹奏楽部。大会へ向けてのあれこれと、悩める部員たちの葛藤が描かれる後編。オーボエのみぞれの出来に不満を感じる麗奈と、ソロを務めるみぞれと希美の関係。新体制で臨んだこと変化を感じつつ、ぶつかりあいながらも実力を高めてゆく久美子たちの姿が眩しかったですが、力を出し切ってもそれで勝てるとは限らないんですよね...難しい。三年生が引退しての新体制はなるほどなと思う布陣でしたけど、最後の夏に向けた新章が今から楽しみです。
読了日:10月05日 著者:武田 綾乃
お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) (創元推理文庫)お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) (創元推理文庫)感想
部活必須の御出学園で通学地域で社会奉仕を義務付けられた独特の帰宅部。そこに所属する佐々木幸弘が地域で起こる謎や事件を仲間とともに解いていく青春ミステリ。夜な夜な動くという噂のベニヤ製の人形の謎やたたかうにんじん、双子を巡る複雑な想い、商店街文化祭のお姫様コンテストにまつわるあれこれ。やや若干登場人物が多いかなという印象はありましたけど、繊細な人間関係の機微にも配慮しながら解き明かしてゆく謎解きは主人公らしくて、彼がようやく意識し始めた幼馴染との関係が今後どうなってゆくのか、続きが読んでみたいと思いました。
読了日:10月05日 著者:阿藤 玲
真夜中の本屋戦争2 (ホワイトブックス)真夜中の本屋戦争2 (ホワイトブックス)感想
年度末の返品作業に追われる書店アルバイトの渡鍋渉と竹河紫野。本のゴーストたちで毎日ドタバタ続きの書店に、今度はいかにも怪しげな店長が着任する第二弾。まさかの二巻目刊行には驚きましたけど、狐の新任妖怪店長・玉緒の挙動に振り回されたり、方向性が見えてこない渉の就職活動に頭を悩ませつつな今回。ポイントを押さえたゆるい雰囲気の中でサイン会やビブリオバトルといったイベント開催もあり、付き合い始めたばかりの渉と紫音の初々しい距離感もまたいい感じで、物語の雰囲気と素敵なフカヒレさんのイラストもよくマッチしていました。
読了日:10月04日 著者:藤春 都
サイメシスの迷宮 完璧な死体 (講談社タイガ)サイメシスの迷宮 完璧な死体 (講談社タイガ)感想
警視庁特異犯罪分析班に異動した神尾文孝が、協調性ゼロだが優秀なプロファイラー羽吹允とコンビを組み、連続猟奇殺人の謎に挑む警察ミステリ。マイペースな言動で神尾を振り回す羽吹が抱える過去と、経験したもの全てを忘れることができない超記憶症候群。銀色の繭に包まれた美しいともいえる異常な死体を残す連続殺人事件。その記憶を活かして事件に繋がる鍵を探す過程で、噛み合わなかった二人が徐々にコンビになってゆくのがいい感じで、まだまだ終わらないことを予感させる結末に続巻をまた読みたくなりました。今後に期待の新シリーズですね。
読了日:10月04日 著者:アイダ サキ
旧暦屋、始めました (ハヤカワ文庫JA)旧暦屋、始めました (ハヤカワ文庫JA)感想
奈良で再会した大学生になった八重と、その近くで着物の店・旧暦屋を開いた天才和裁士琥珀。バイトを引き受けた八重と和の知識豊富な琥珀の元に次々と着物を巡る事件が持ち込まれる第二弾。人形に隠されたメッセージや模様柄が語る恋の罠、そして八重に出された「旧暦屋にない密」の謎。着物やいろいろな背景になるほどなあと思ったり、なかなか伝わらない粋な琥珀の八重への想いにどかしいとも感じつつ、見通すかのように琥珀が解き明かした謎解きには裏があって、琥珀が八重にこだわる理由も垣間見えたりで今後の展開が改めて楽しみになりました。
読了日:10月03日 著者:春坂 咲月
ババチャリの神様 (双葉文庫)ババチャリの神様 (双葉文庫)感想
父親の失業で東京から父の故郷である島根の四葉島に移り住んだ高校生鳥羽心一。都会への未練を捨て切れない心一が、ある日蔵で死んだばあちゃんが宿っていた古いババチャリを見つける青春小説。真剣に祈れば望むところへ連れて行ってくれるというババチャリに取り憑いたおばあちゃんの霊。島で出会った女の子に一目惚れしたり、仲間たちと島での生活を満喫したり、みんなでババチャリで東京に行ったりとだんだん島の生活に馴染んでいった心一が、苦い過去も乗り越えて大切な人の窮地にババチャリに乗って奮闘する涙あり笑いありの素敵な物語でした。
読了日:10月03日 著者:皆藤 黒助
平浦ファミリズム (ガガガ文庫)平浦ファミリズム (ガガガ文庫)感想
五年前にベンチャー企業社長である母を亡くした平浦一慶。残されたトランスジェンダーの姉、オタクで引き籠りの妹、コミュ障でフリーターの父とともに過ごす日々が描かれる青春小説。何でも自分でできてしまうがゆえに高校にもろくに通わず、アプリ開発に精を出す日々を送る一慶。過去の苦い経験から周囲に無関心でしたけど、誤解されて窮地に陥った時でも彼のことを気にかけてくれる人たちがいて、不器用な交流の中にもたくさん気づけたことがあって、彼だけでなく周囲もまたその影響を受けて成長してゆく展開は、とても心に響くものがありました。
読了日:10月02日 著者:遍 柳一
また、同じ夢を見ていたまた、同じ夢を見ていた感想
周りよりちょっと賢いけれど、周囲から浮き気味の小学生なっちゃん。彼女がリストカットを繰り返す女子高生、アバズレと呼ばれる女、一人静かに余生を送る老婆たちと関わり合いながら幸せとは何かを考えてゆく物語。同級生よりちょっとだけいろんなものが見えてしまうがゆえに、周囲とうまくやれずにいるなっちゃんが放課後に出会う不可思議な大人たちとの宝物のようなやりとり。読んでいていろいろもどかしい気持ちにもなりましたが、分からないなりに一生懸命考えて自分なりの答えを出してゆくなっちゃんの未来を応援したくなる素敵な物語でした。
読了日:10月02日 著者:住野 よる
華鬼 (講談社文庫)華鬼 (講談社文庫)感想
鬼の花嫁の刻印を持つ少女・朝霧神無は、十六歳の誕生日に鬼の末裔、木藤華鬼のもとに嫁ぐべく連れさられ、多くの鬼とその花嫁たちが通う全寮制私立高校で華鬼と出会う学園ファンタジー。鬼の花嫁の刻印の影響でこれまで過酷な人生を送ってきた神無。彼女に冷たい華鬼と彼女を守ろうとする三翼たち。置かれた場は過酷なのに、積み重ねた過去のせいで自信がなく人を頼れず自分を大切にできない神無の行動が不用意過ぎて、守ってくれる人がいるからまだいいですけど華鬼がここからどう変わっていくのか。番外編の邂逅を見る限り期待してもいいのかな。
読了日:10月01日 著者:梨沙
終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#05 (角川スニーカー文庫)終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#05 (角川スニーカー文庫)感想
遺跡兵装モウルネンの真実を知るべく、護翼軍司令本部に忍び込んだ元四位武官フェオドール。そんな彼の前にかつての妖精兵ノフトが立ちはだかる第五弾。浮遊大陸が置かれている厳しい現状が明らかになり、いろいろ懐かしい人物も登場したりする中で、一番後悔する道を選択し続けるフェオドール姉が辛い現実を突きつけ誘導してゆく流れに、各々が決断し動き出すことがどういう結末をもたらすのか。切迫した状況の中で、何とかしようとあがく健気な彼女たちや素直になれない彼の想いがいつか報われるといいなと思わずにいられません。続巻に期待です。
読了日:10月01日 著者:枯野 瑛

読書メーター

11月の購入検討&気になる本ほかピックアップ

毎回ギリギリになりつつある11月の11月の購入検討&気になる本ほかピックアップです。さりげなくOVL文庫の「灰と幻想のグリムガル」「そして黄昏の終末世界」あたりが延期になっていますが、楽しみにしているシリーズ続巻も結構出るので期待の月ではあります。しかしわりと読むことが多いガガガ文庫ファンタジア文庫(あとさりげなくオレンジ文庫)あたりを同じ発売日にするのはほんと勘弁してほしいです(苦笑)

 

気になる新作としてはデビュー作「おにぎりスタッバー」で度肝を抜いた大澤めぐみさんの新刊、宝島社文庫「ニセモノだけど恋だった」、青春小説期待枠としてMF文庫J「僕の知らないラブコメ」、ファミ通文庫瀬尾つかささんの新刊あたりでしょうか。三川みりさんの新潮文庫nex初登場も気になるところではあります。

6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)

6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)

 
ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)

ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)

 
応えろ生きてる星 (文春文庫)

応えろ生きてる星 (文春文庫)

 
僕の知らないラブコメ (MF文庫J)

僕の知らないラブコメ (MF文庫J)

 
もってけ屋敷と僕の読書日記

もってけ屋敷と僕の読書日記

 

 

ポプラ文庫ピュアフル(10/28発売)
・君の嘘と、やさしい死神 青谷真未

スニーカー文庫(11/1発売)
・戦闘員、派遣します! 暁なつめ/カカオ・ランタン
・6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 大澤 めぐみ/もりちか

HJ文庫(11/1発売)
百錬の覇王と聖約の戦乙女14 鷹山誠一/ゆきさん

講談社X文庫
・月の都 海の果て 中村ふみ/六七質

講談社ラノベ文庫(11/2発売)
銃皇無尽のファフニール XV アンリミテッド・シャイン ツカサ/梱枝りこ
・双子喫茶と悪魔の料理書2 望月唯一

実業之日本社文庫(11/2発売)
スケートボーイズ 碧野 圭

宝島社文庫(11/7発売)
・スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 想いを伝えるシチュー 友井羊
異世界居酒屋「のぶ」 四杯目 蝉川夏哉/転
・ニセモノだけど恋だった 齋藤ゆうこ

文春文庫(11/9発売)
・応えろ生きてる星 竹宮ゆゆこ

幻冬舎文庫(11/9発売)
・がらくた屋と月の夜話 谷瑞穂
・心中探偵 蜜約または闇夜の解釈 森晶麿

電撃文庫(11/10発売)
ストライク・ザ・ブラッド18 真説・ヴァルキュリアの王国 三雲岳斗/マニャ子
俺を好きなのはお前だけかよ (7) 駱駝/ブリキ
ガーリー・エアフォース VIII 夏海公司/遠坂あさぎ
・剣と炎のディアスフェルド III 佐藤ケイ/PALOW
・青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中 旭蓑雄/白井鋭利

宝島社単行本(11/10発売)
・麗人賢者の薬屋さん 江本 マシメサ

GA文庫(11/14発売)
・いつかのレクイエム case.1 少女陰陽師とサウル王の箱 嬉野秋彦/POKImari
・変奏神話群 剣風斬花のソーサリーライム 千羽十訊/桑島黎音

富士見L文庫(11/15発売)
・おいしいベランダ。 午後4時の留守番フルーツティー 竹岡葉月/おかざきおか
・かくりよの宿飯 七 あやかしお宿の勝負めし出します。 友麻碧/Laruha
・浅草鬼嫁日記 三 あやかし夫婦は、もう一度恋をする。 友麻碧/あやとき

ガガガ文庫(11/17発売)
・年下寮母に甘えていいですよ? 今慈ムジナ/はねこと
・俺と彼女の恋を超能力が邪魔している。2 助供珠樹/いつい
・俺の立ち位置はココじゃない! 宇津田晴/おしおしお
弱キャラ友崎くん Lv.5 屋久ユウキ/フライ
・ストライクフォール3 長谷敏司/筑波マサヒロ

ファンタジア文庫(11/17発売)
・僕はリア充絶対爆発させるマン 浅岡旭/アマガイタロー
・追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ3 田辺屋敷/美和野らぐ
ロクでなし魔術講師と禁忌教典10 羊太郎/三嶋くろね

オレンジ文庫(11/17発売)
契約結婚はじめました。2 ~椿屋敷の偽夫婦~ 白川紺子/わみず
・エプロン男子 2nd 今晩、出張シェフがうかがいます 山本瑤/玉島ノン
・私の愛しいモーツァルト 悪妻コンスタンツェの告白 一原みう/井上のきあ
・小説家・裏雅の気ままな探偵稼業 丸木文華/笠井あゆみ
・何度でも永遠 岡本千紘/もりちか

集英社文庫(11/17発売)
・2.43 清陰高校男子バレー部 代表決定戦編1 壁井ユカコ

マイクロマガジン社(11/18発売)
・天竜川高校 竜競部! 郁子匠/左折

マイナビ出版ファン文庫(11/20発売)
司書子さんとタンテイさん ~木苺はわたしと犬のもの~ 冬木洋子/庭春樹

HJノベルス(11/22発売)
・ウォルテニア戦記 VIII 保利亮太/bob

講談社タイガ(11/22発売)
・バビロン III ―終― 野崎まど/ざいん

MF文庫J(11/25発売)
・14歳とイラストレーター4 むらさきゆきや/溝口ケージ
・ぼくたちのリメイク3 共通ルート終了のお知らせ 木緒なち/えれっと
・僕の知らないラブコメ 樫本燕/ぴょん吉
魔弾の王と戦姫18 川口士/片桐雛太

角川文庫(11/25発売)
・全日本探偵道コンクール セーラー服と黙示録 古野まほろ/九条キヨ
後宮に日輪は蝕す 金椛国春秋 篠原悠希
カブキブ!榎田ユウリ
・撮影現場は止まらせない! 制作部女子・万理の謎解き 藤石波矢

メディアワークス文庫(11/25発売)
・死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録 古宮九時
・お点前頂戴いたします泡沫亭あやかし茶の湯 神田夏生
・DOUBLES!! ―ダブルス― Final Set (仮) 天沢夏月

新潮文庫nex(11/29発売)
・もってけ屋敷と僕の読書日記 三川みり

KADOKAWA単行本(11/29発売)
・悲しい話は終わりにしよう 小嶋 陽太郎

ファミ通文庫(11/30発売)
・皇女の騎士 壊れた世界と姫君の楽園 やのゆい/mmu
・いつかのクリスマスの日、君は時の果てに消えて 瀬尾つかさ/椎名優
・赫光の護法枢機卿嬉野秋彦/新堂アラタ

2017年9月に読んだ新作おすすめ本

 9月は刊行点数が多い分新作も多めですが、現時点でも読みたい本が多過ぎて追いかけるのも追いついてないので、どれを読むか読まないのか、その辺のバランスは考えないといけないところではあります。ラノベ文庫の青春ものは相変わらず突き抜けていますが、ほかのレーベルも少しずつらしい色がある青春小説を出してきていますし、この流れは今後も大事にしてほしいですね。

 

語り部は悪魔と本を編む (ファミ通文庫)

語り部は悪魔と本を編む (ファミ通文庫)

 

 バイト先で素敵な女性絵美瑠と運命的に出会い交際することになった拾い上げ作家の中村雄一。しかも彼女が新担当編集であることが発覚、デビューを目指す二人の前に悪魔のような編集長が立ちはだかる恋と戦いの物語。作家と担当という立場の違いが生まれ、複雑になってゆく二人の関係。お互い乗り越えるべき課題を抱え、編集長に厳しい指摘を突きつけられ選択に苦悩する想像以上にビターな展開でしたが、だからこそすれ違いかけた二人が向き合いぶつかりあったことで見えてきた光明と、初々しさの残る二人の恋の行方にはぐっと来るものがありました。 

ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)

ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)

 

 高校入学を機に「主役理論」を掲げ夢の一人暮らしを勝ち取った我喜屋未那。彼が隣に住むクラスメイトで、バイト先も趣味嗜好も同じなのに真逆の「脇役哲学」を掲げる少女・友利叶と遭遇する青春小説。運命的出会いなのに相容れない天敵な二人が部屋の壁を壊してしまったことで始まる疑似同棲生活。脇役哲学がややしっくり来なかった感はありますけど、暑苦しくてやる気が空回る未那とやる気がないデキる女なのに振り回される叶が繰り広げる、いがみ合いながらも息の合ったやり取りが楽しかったです。接続章がどう今後に繋がるのか気になりますね。  

クラスの立ち位置を気にする真面目系クズの八卜が、性格の悪い黒内に絶対見られたくない場面を見られ、それをネタに八卜の潜在的クズを開花させるべく一緒にクズ活することを強要される青春小説。二人がクズ活を続ける過程で関わってゆく聖人君子のような白庭さんと、幼馴染なのに学校では交流が断絶しているトップカーストの鈴堂。黒内によって次々と本性が暴かれてゆく一方、相反する複雑な想いや距離感に戸惑う心理描写は繊細で、らしさを自覚してゆく八卜と彼女たちの関係が描かれた今回も期待を裏切らない著者さんらしい怪作でした(褒め言葉) 

 成績優秀だがクズを自認する浅井悠馬が偶然クラス演劇主役を演じることになり、幼馴染の明日香とともにクラスの中心に君臨する荒川唯のグループに巻き込まれてゆく青春ラブコメディ。行動をともにする機会が増えてゆく唯の見た目とは全然違う純真さとひたむきさ。少しずつ惹かれてゆく悠馬が知ってしまった唯のらしくない秘密。何ともほろ苦い気持ちを抱えながら、それでも彼女のために奮闘する悠馬の姿は心に響きましたが、だからといって頑張れば報われるとは限らないのが現実で、そんな迷える彼らの行く末を続巻でまた読んでみたいと思いました。 

リア充にもオタクにもなれない俺の青春 (電撃文庫)

リア充にもオタクにもなれない俺の青春 (電撃文庫)

 

 覇権にこだわるオタクたちについていけず、リア充のやりとりもまた面倒くさいと感じてしまう中途半端な荒川亮太が、公園である事件に遭遇しいろいろ巻き込まれてゆく青春小説。いかにもリア充っぽいメグと、自らがかつて決別したオタ仲間の一人だと思っていた奈々子がそれぞれ抱える密かな想い。一見対極に思えるオタクとリア充を突き詰めてゆくと、避けられないのはそのどうにも面倒な窮屈さで、それでも居場所を大切にしたい彼女たちの切実な想いに応えてみせた亮太の解決法には苦笑いでしたが、こういうのもありかなと思えた興味深い物語でした。 

ラノベ作家になりたくて震える。 (電撃文庫)

ラノベ作家になりたくて震える。 (電撃文庫)

 

 ラノベ作家志望の高校生・冬野藍介は自分の作品が何者かに盗作され新人賞を受賞したことを知る。ショックを受ける藍介がクラスメイトの睡蓮から衝撃的な告白を受け二人で続編を書き始める青春小説。元天才子役かつ幼馴染で苦手な存在の睡蓮。そんな彼女から告げられた受賞作の真実から始まった二人の続巻執筆作業。もやもやを抱えたままでは上手くいかないのは当然で、けれど失ってから初めて分かる想いもあって。すれ違う展開がどうにももどかしかったですが、乗り越えた二人がこれからどんな物語を紡いでいくのかまた続きを読みたいと思いました。

嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)

嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)

 

 前年甲子園予選決勝まで残った結果、爆発的に増加した女子マネ志望者。決勝戦敗北のA級戦犯で今は男子マネとなった「嫌われエース」押井数奇と門前払いされる中で一人だけ残った強者・蓮尾凜が織りなす青春小説。難しい状況であえて男子マネとして部に残った数奇と、彼に因縁があるらしく何かと張り合う凜。少しずつ変わってゆく状況と諦めない不器用な数奇の頑張りがあるからこそ、ままならない現実にはもどかしい気持ちにもなりましたが、そこからの彼の頑張りと葛藤もまた青春の1ページで、これはこれで良かったのかなと思える青春物語でした。 

君との恋は、画面の中で (オーバーラップ文庫)

君との恋は、画面の中で (オーバーラップ文庫)

 

 過去のトラウマを抱える高校生・優弥がSNSだけで繋がりを持つ自称JKタカネさん。彼女とのやり取りを楽しみに日々生きていた優弥が、まさかのリアルで彼女と遭遇してしまう青春小説。コミュ障な優弥が友人の紹介で出会った可愛い高宮さん。タカネさんとリアルな高宮さんを同一視できず大混乱する優弥と、そんな彼相手に粘り強く頑張る高宮さんの間で育まれてゆく何とも複雑な関係。健気な高宮さんのエピソードが明らかになってゆくたびにもどかしさが募る展開でしたけど、遠回りしながらもあるべきところに落ち着いた結末にはホッとしました。  

さくらとともに舞う (講談社ラノベ文庫)

さくらとともに舞う (講談社ラノベ文庫)

 

 人々を殺め苦しめる荒人魂が出没する世界。荒人魂に母を殺された明石めぐるが剪定士をめざして鸞鳳学院に入学し、舞姫候補の桜みらいと10年振りの再会を果たす物語。舞姫が放つ「花力」を借りて荒人魂と戦う剪定士。学院で出会うやちよやゆらといった仲間たち、さくらと因縁がある吉野ととわこ。秘密を抱えるさくらのめぐる大好きっぷりが微笑ましかったですが、それぞれ舞姫や剪定士を目指す背景があり、騒動の元凶・黒胡蝶にも理由があって、そういう心情を丁寧に描きつつ苦しい戦いを力を合わせて乗り越えてゆく姿は心に響くものがありました。

 

 郡上踊りが終わるまでの死と生が入り混じる場所。なぜ死んだのかも忘れた高校生大和と、彼を生き返らせようとする幼馴染凛虎の不器用で真っ直ぐで凛としたひと夏の物語。二年前に死んだ凛虎の兄で親友の雪夜と、雪夜と凛虎の師匠である魔女の存在。理由を明かさないまま愚直に大和を生き返らせると告げる凛虎。終わりに向かう夏を二人で過ごす中で明らかになる事情は過去の謎に繋がっていて、譲らない頑固者の二人が散々ぶつかり合って出した諦めの悪い選択には、よくある切ない終わりの物語とはひと味違う彼ららしい後悔のない充足感がありました。 

R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室 (新潮文庫nex)

R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室 (新潮文庫nex)

 

 東京五輪後、災厄により中京に暫定首都が移転した世界。急速に治安が悪化する中、テロ計画を未然に鎮圧すべく総理直轄・女性 6 名の特殊捜査班R.E.D.が警察庁に設立される警察小説。いかにも著者さんが好きそうな世界観で、敵も多い傑物な女総理の下、ケチな神代を指揮官に個性豊かな異能を持つ少女たちを従え、副総理と警視総監が絡む難しい政官業巨大疑獄を追う展開。一風変わった彼女たちと上司たちの使い使われる関係も気になるところですが、破格な彼女たちの活躍は圧倒的でした。登場人物たちもいろいろありそうで続巻が楽しみです。 

 可憐でドSな女子高生の女流探偵・穴井戸栄子とその下僕で助手の古野まほろが不思議な4つの事件を解決する天帝とセーラー服と黙示録シリーズのクロスオーバーかつホームズパスティーシュな連作短編集。事件を操作するドSな探偵と下僕な助手たちのテンポの良い掛け合い、Zガンダムネタやエヴァネタ満載の思い切り趣味に走った世界観は本格ミステリを楽しむというより著者さんの世界を堪能するようなテイストで、そういうものだと思って読む分にはなかなか面白かったです。どんどん迷走していく栄子の推理を次々にぶった切るまほろには笑いました。 

歯科女探偵 (実業之日本社文庫)

歯科女探偵 (実業之日本社文庫)

 

 スタッフ全員が女性の錦織デンタルオフィス。もの静かな美人歯科医・月城この葉が歯科衛生士の高橋彩女とともに周囲で起こる日常の謎や連続殺人事件に挑む歯科医療ミステリ。文中で歯科医療絡みの描写がやたら詳しいと思ったら、そういえば著者さん歯科医でしたよね。法歯科医だった父を持つこの葉が探偵役で彩女が助手、登場するキャラたちや舞台装置はわかりやすくて、発生する事件に奇想天外さはなかったですが、一見関係なさそうに見えるエピソードの数々が、最終的にはこの葉が追っていた過去の事件に繋がっていく展開は上手いなと思いました。 

捕食 (創元推理文庫)

捕食 (創元推理文庫)

 

 つらい過去があり男性が苦手な真尋と、彼女と知り合い急速に距離を縮めるいづみ。彼女と一緒なら自分は変われると信じていたはずの真尋に不審が芽生え、いづみの謎多き過去を追うサスペンスミステリ。過去を追う過程で明らかになってゆく、似た境遇だった彼女の選択とその周囲で姿を消してしまった人たち。何かあるたびにハナカマキリのように脱皮を繰り返してきた彼女がなり得たものは何だったのか。やや詰め込み過ぎた感もありましたが、ぐいぐい読ませる展開の末に迎えるいろいろ想像できてしまうエピローグは、この物語らしい結末に思えました。 

君を一人にしないための歌 (だいわ文庫 I)

君を一人にしないための歌 (だいわ文庫 I)

 

 中3の夏、吹奏楽コンクールの大失敗をきっかけにドラムをやめたモリソンが、高校入学後七海に強引に誘われ凛も加わりバンドを結成する青春ミステリ。ドラムはもうやらないはずがいつの間にか巻き込まれたモリソン。ただ最後のメンバーとして募集したギタリストが訳ありだらけで、なかなか演奏までいかずにもどかしかったですが、普段はおどおどしがちなモリソンが見せる意外な鋭さのギャップ、一方で過去に苦しい出来事があったのは彼だけでなく、彼女たちのヒミツが明らかになるたびに印象も変わり、絆が育まれてゆく展開は上手いなと思いました。 

 入社式当日に会社が倒産し路頭に迷った朝霧夕霞。失意の中で公園の掲示板にあった国交省臨時職員募集の貼紙を見つけ、特殊能力を買われて採用されるあやかしお仕事小説。夕霞が不可思議な採用試験を乗り越え採用された、国土開発の妨げになる地縛霊などを立ち退かせるのが仕事で実質的に「人」が夕霞しかいない謎の部署「幽冥推進課」。自殺したアイドルや事故死で家に帰れなくなった会社員、百五十年も橋を守り続けてきた少女など、真っ向から向き合い体当たりでその心残りを解消してゆく夕霞の奮闘ぶりはなかなか良かったです。シリーズ化も期待。

放課後、君はさくらのなかで (集英社オレンジ文庫)

放課後、君はさくらのなかで (集英社オレンジ文庫)

 

 通勤途中で事故に遭った市ノ瀬桜。目覚めると女子高生・円城咲良として生活する羽目になった桜は、担任の鹿山に事情を打ち明けて咲良の魂を探す青春小説。あまり報われない人生を送っていたはずの桜が直面するまさかの状況。そんな彼女が遭遇するかつての同級生で因縁もある鹿山の存在。難しい立場を自覚しつつも咲良のためにと一念発起して状況を変えてゆく彼女が、これまで知らなかった真実に直面して切なくもなりましたが、そんな彼女へ提示された少なからず複雑な想いも交じる未来は、やや意外でしたけど頑張って欲しいと応援したくなりました。 

家政婦ですがなにか? 蔵元・和泉家のお手伝い日誌 (集英社オレンジ文庫)

家政婦ですがなにか? 蔵元・和泉家のお手伝い日誌 (集英社オレンジ文庫)

 

 短大卒業後、母の遺言で彼女がかつて働いていた蔵元・和泉家で家政婦として働くことになったみやび。そこで泉家の四兄弟やその母と関わってゆく物語。クールで切実にお金を稼ぎたい事情を抱えるみやびが、和泉家で働きたいもう一つの目的。蔵元ネタ自体はほどほどでしたが、母君にコスプレじみたメイド姿にさせられたり、四兄弟に難癖をつけられたり、彼女役を依頼されたりと、忙しい日々の中でいろいろな出来事に遭遇しながら少しずつ和泉家に馴染んでいく展開はなかなか悪くなかったです。今後が気になる終わり方だったので、続刊期待しています。

魔法使いの願いごと (講談社タイガ)

魔法使いの願いごと (講談社タイガ)

 

目が見えない幼いヒカリに出会った魔法使い・ヒトがくれたのは、「綺麗なものだけが見える」不思議な目。しかし再び目の光を失いつつあった彼女が一人の少年と出会う物語。「綺麗なもの」も慣れるうちにどんどん見えなくなっていくヒカリ。そんな彼女とお手伝いの息子・セカイとの出会いから始まる変化の兆し。童話のような雰囲気があって、幼き日に「綺麗なものだけが見える」不思議な目がヒカリに与えられたのには理由に何とも切ない気持ちになったりしましたが、大切なものをきちんと見誤らなかったヒカリの想いとその後には救われる思いでした。 

八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

 

 1943年、北の最果て・キスカ島であった忘れられた救出劇。多忙の外務省担当官に上司から渡された太平洋戦争時のアメリカの公文書から、戦後の占領政策を変える鍵となった報告の存在が明らかになってゆく物語。劣勢に陥りつつあった第二世界大戦末期、北の最果てにあるアメリカから奪った日本の占領地。アッツ島が玉成したことでアメリカ軍に包囲され取り残されたキスカ島の軍人五千人。そんな絶望的ともいえる難しい状況の中で知恵を振り絞ってその救出に向かい、見事それを成し遂げた木村少将たちのありようはとても心に響くものがありました。 

 地球人類は国籍の区別なく商連と呼ばれる異星の民の隷属階級に落ちた未来世界。閉塞した日本から抜け出すため、アキラは募兵官の調理師パプキンの誘いで商連の惑星機動歩兵―通称ヤキトリに志願する近未来ファンタジー。国籍も違う癖の強いメンバー四人と実験ユニットK-321に配属され、火星に向かうアキラ。その過程で嫌というほど思い知らされるヤキトリの過酷な待遇。どれだけ屈辱的な扱いを受けたり凹まされても反骨心を失わないアキラたちには凄いなと感心しきりでしたが、だからこそ見出した活路が変革の兆しになるか続巻に期待ですね。

 

宝石鳥

宝石鳥

 

 神の遣いである宝石鳥の子孫が治めるシリーシャ島。新たな女王即位の儀式カーシェ・ルフが近づく中、不思議な力を持つ仮面の次期後継者候補と、百年前の因縁が複雑に絡み合う死と再生のファンタジー。肖像画のモデルである謎の女性を生涯追い続けた天才画家、飛行機事故で舞踏家の妻を亡くした音楽家、学術調査に出かけた島で行方不明になった婚約者を追う美大生。いくつもの因縁が儀式の下に繋がってゆくことで、止まったままだった過去が再び動き出して再生に繋がってゆく壮大な展開はとても読み応えがありました。これはもう次回作も期待ですね。

潮風エスケープ

潮風エスケープ

 

 実家との関係に悩む高校生の深冬が、思いを寄せる大学生の優弥とともに島の伝統「潮祭」が開かれる彼の故郷・潮見島へ向かい、様々な出会いや経験を経て成長してゆく青春小説。実家の農家を継ぐことに抵抗を覚え全寮制の高校に進学した深冬。想いを寄せる優弥の故郷で出会った祭の神女となる少女・柑奈。そして島に現れる優弥の想い人渚。廃れゆく伝統とどう向き合うのかという問題は形は違えどどこにでもあって、ぶつかり合って簡単に出ない答えに対して、きちんと自分で見出そうとするようになった彼女たちの成長がとても眩しい素敵な物語でした。

今日も君は、約束の旅に出る

今日も君は、約束の旅に出る

 

 女優を志し上京して10年。全てを賭けて臨んだオーディションでも落選し夢を諦めかけた国木アオ。一人自室で呆然とする中で突如地震が発生、目の前にかつての思い人・森久太郎が現れる物語。16年前に交わした久太郎とアオの約束。絶対に約束を破ることができない体質になり、約束を果たすべき時間が来るとその場所にワープしてしまう久太郎。出会いからアオと久太郎が再び積み重ねてゆく約束や、交わした約束を果たしてゆく久太郎の姿に人と人が繋がる大切さを実感する展開でしたが、約束があったからこそ迎えられた結末はとても心に響きました。

人魚に嘘はつけない

人魚に嘘はつけない

 

 漁師の親父が溺れている「何か」を助けて行方不明になったあの日、浜辺に打ち上げられ海に帰れなくなった人魚・ユーユ。彼女との出会いが海町に住む高校二年生のアサたちを変えてゆく青春小説。行方不明になった父に反発していたアサ、走れない陸上部の幼馴染・シオ、波にのれないサーファーの親友・ウミ。そして陸上での生活を満喫してはいるけれど、海に帰りたいと願うユーユ。彼女との出会いをきっかけに彼らが自らの悩みに向き合い答えを見出してゆく連作短編的な構成で、それぞれが選んだ未来でも彼らの確かな絆を感じられる素敵な物語でした。

100億人のヨリコさん

100億人のヨリコさん

 

 カネがない苦学生の小磯が入居することになったオンボロの学生寮。先輩やシングルーマザー母娘とともに暮らすうちに、天井に貼り付いた血まみれのヨリコさんに遭遇するようになる物語。著者さんのあとがきにたびたび登場していたヨリコさんが登場。個性の濃い寮生たちに、得体の知れないモノに囲まれた自給自足生活。そんな中、寮内のあちこちで見かけるようになるヨリコさん。そんなヨリコさんを真面目に考察していたと思ったらまさかの超展開で、ヨリコさんを止めるために奔走する寮生たちの逞しさと楽しい掛け合いがとても熱くて楽しかったです。