読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

等身大の苦悩や繊細な描写が光る相沢沙呼さんの10作品

当ブログは本の紹介を中心としたまとめ記事で構成されています。なのでブログで記事作るのにどういう切り口がいいのか、最近いろいろ試行錯誤しているのですが、その中で著者さん企画もありかな…?と構想にありました。今回はその第一弾として相沢沙呼さんの作品を紹介したいと思います。

 

正直に話すと、先週「ことのはロジック」の読了待ちだった講談社タイガの記事を作った時に「小説の神様」を見て何か忘れていたような気がしたのですが、少し前に著者さんの誕生日が3/3らしいことを確認してそれに合わせようと思っていたのに、2月下旬辺りから酷い風邪を引いたりで絶不調な状況が今週まで続いていて、すっかり頭から抜け落ちてました...orz

 

何とも個人的に締まらないスタートになってしまったのですが、相沢沙呼さんの作品はわりと初期の頃から追いかけていて、登場人物たちの等身大の葛藤や繊細な描写を積み重ねた先にある結末がとても秀逸な青春小説が多いです。いろいろチャレンジをされていて、難しいことも思うようにいかないことも多々あるようですが、それでもキラリと光るものを持っている作家さんだと思っていますし、これからも印象的な作品を期待しています。もし気になる作品があったらぜひ読んでみて下さい。

 

1.マツリカ・マジョルカ (角川文庫)

マツリカ・マジョルカ (角川文庫)
 

冴えない高校生柴山が雑居ビルで一日中望遠鏡で観察している謎の女子高生マツリカと出会い、徐々に変わっていく物語。マツリカの理不尽な無茶ぶりに振り回されながらも、クールでミステリアスな彼女が気になって仕方ない柴山は、交流を通じて快活な同級生小西さんと絡むようになったり、目を背けていた辛い事実に向きあうようになったり、彼女が不器用なだけで一種のリハビリだったんですよね。上手く話せないのにマツリカさんの太腿注視し過ぎな柴山とか、著者さんの妙にこだわりを感じるリアルな太腿描写には苦笑いですが、安楽椅子探偵的な謎解きも面白いシリーズです。
【関連作品】「マツリカ・マハリタ」(角川文庫)、「マツリカ・マトリョシカ

2.午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

 

著者さんのデビュー作。不器用な須川くんが不器用なマジシャン酉乃さんに出会って、身の回りに起こる様々な事件を解決していく青春ミステリ。時にはうまくやろうとして失敗したりはあっても、最終的に事件を解決に導くことができたのは、酉乃さんや須川くんの、何とか事件を解決しようとする真摯な気持ちがあったからこそだと思います。途中残念なところもあったけれど、最後きちんと酉乃さんに言葉で思いを伝えた須川くんは、とてもカッコ良かったです。
【関連作品】「ロートケプシェン、こっちにおいで」(創元推理文庫)

3.小説の神様講談社タイガ

小説の神様 (講談社タイガ)

小説の神様 (講談社タイガ)

 

作家としてデビューするも酷評されて書く自信を失っていた高校生・一也が人気作家の転校生・小余綾詩凪と出会い、彼女との小説合作を提案される青春小説。重い病気の妹のためにと思いながら、厳しい評価にネガティブになりがちな一也と、小説の力を信じていて彼に辛辣な詩凪。書く楽しさを思い出してゆく一也に突きつけられた残酷な現実はとても苦しかったですが、そんな彼が完璧に見えていた詩凪の苦しみに気づき、再び向きあおうと決意する姿は応援したくなります。作品を書くことに対するとても繊細で、強い想いを感じられる素晴らしい作品です。現在三巻まで刊行。

4.雨の降る日は学校に行かない (集英社文庫)

スクールカースト保健室登校…学校生活に息苦しさを感じる女子中学生たちの揺れ動く心を綴った連作短編集。短編の主人公は自分の居場所を見いだせない女の子たち。時が経てば分かることも、今見えている世界だけではなかなか分からないんですよね。誰もが不安を抱えていて閉塞感のある世界は些細なきっかけで変わる。周囲のストレートな悪意に葛藤しながらも向き合い変わっていこうとする少女たちを描いた物語は、雨上がりのようなこれから良くなる期待を予感させる読後感でした。スカートの長さとカーストを対比させてみせる視点もまた秀逸です。

5.ココロ・ファインダ (光文社文庫)

ココロ・ファインダ (光文社文庫)

ココロ・ファインダ (光文社文庫)

 

高校の写真部を舞台とした、女子高生たちの心の揺らぎとミステリーの物語。写真部へのスタンス、好きなカメラや性格も違う4人ですが、容姿にコンプレックスを持つミラや、自分らしさについて悩む秋穂だけでなくて、人気者のカオリや周囲と交わろうとしないシズもまた人知れず悩みを抱え込んでいました。そんな不安定な彼女たちがファインダーから見える風景や写真をめぐる謎をきっかけに、悩んでいるのが自分だけでないと気づいたり、等身大の自分を受け入れて前向きに生きるきっかけを見出していく描写には、素直に応援したい気持ちになれました。

6.卯月の雪のレター・レター (創元推理文庫)

卯月の雪のレター・レター (創元推理文庫)
 

一緒に住むようになった妹との距離が変わってしまった理由、入院している友人との訳ありなやりとりと顛末、蔵から消えた花瓶の犯人探し、死んだはずの祖母から祖父に届いた手紙の謎など、友情や姉妹、家族の絆の確かさを再確認するような短編集。相手のことを大切に思っているというその気持ちは、近しい存在だからこそいつの間にかわかりづらくなってしまっていて、きちんと言葉にして伝えることの大切さを思い出させてくれますね。謎解き要素としてはやや薄味でしたが、著者さんならではの繊細な心理描写にはらしさがよく出ている青春小説でした。

7.スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫nex)

スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫nex)

スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫nex)

 

近未来の街で起きている連続変死事件、女の子の間で流通しているピーキーという薬、噂される人狼の都市伝説。そして金髪ハーフの女子高生此花ねむりの際立った存在感。そんな彼女に魅了されたり、その秘密を嗅ぎつけて様々な人物が関わって話は大きく動いていきますが、退廃的で背徳感のある雰囲気を漂わせながら、孤独な彼女たちが惹かれてやまない存在に対する葛藤が、とても繊細な描写で描かれていました。自分の欲求に素直に向きあう彼女が印象的で、著者得意の描写は健在でしたが、今までと少しテイストの違う物語ですね。

8.緑陽のクエスタ・リリカ 魂の彫塑 (MF文庫J)

落ちこぼれだった魔術師学校を自主退学し、冒険者を目指すジゼルが姉を探す少女の依頼を受け、途上で多くの襲撃者と戦っていた少女・アルミラージを助太刀し、事件に巻き込まれてゆく物語。優しく困った人を見捨てられないジゼルが出会ったアルミラージもある組織を追っていて、それらがひとつに繋がってゆくミステリ要素もあるファンタジー。著者さんらしい登場人物たちと緻密に作り込まれた因縁、それらをうまく絡めて作られていくストーリーには大きなポテンシャルを感じました。

9.放課後探偵団 (書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー) (創元推理文庫)

放課後探偵団 (書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー) (創元推理文庫)
 

バレンタインの日、教室に戻った生徒たちが見たのは、教卓に積み上げられたチョコレートの山の謎を解く短編「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」を収録。

 

10.現代魔女の就職事情 (電撃コミックスNEXT)

 原作が相沢沙呼さん。修業のため仕事探しに見知らぬ田舎町へやってきた魔女・玉城禰子15歳の奮闘を描く物語。共存こそするものの、魔女という存在そのものが希少種となりつつある時代に生まれた禰子が直面する理想と現実のギャップ。特にやりたいことや夢もなく普通の高校生になりたかった彼女が知り合った同年代の友人たちとの繊細な距離感だったりやりとりだったり、不器用なりに奮闘する禰子の頑張りやそれを支えてくれる友人たちといった構図が良かったです。全5巻。

 

相沢沙呼 (@sakomoko) · Twitter 

相沢沙呼 - Wikipedia

 

作家の新たな魅力を引き出す講談社タイガ33選

 オレンジ文庫角川文庫宝島社文庫に続くレーベル企画第四弾として、今回は講談社タイガを紹介したいと思います。2015年にレーベルとして創刊して以来、2019年2月までに149点を刊行していますが、自分の読んだ本を数えてみたらそのうち73タイトル読んでいました。刊行点数の半分に届いていないですが、メジャーな作家さんは何となくスルーしてしまう方なのでそれもあるんだと思います(苦笑)

 

講談社タイガの特徴は他のレーベルとはまた一味違った著者さんの新たな魅力を引き出していることですね。レーベルとして意識しているのだろうとは思いますが、知っている作家さんでも読んでみると意外な一面を発見できるかもしれません。自分は青春小説や怪奇譚的な作品を中心に読んでいますが、今回33点を紹介しています。ちょっと多いな...とも思いましたが、それだけ印象的な作品が多いレーベルです。気になる本があったら是非手にとって読んでみて下さい。

 

1.小説の神様

小説の神様 (講談社タイガ)

小説の神様 (講談社タイガ)

 

 作家としてデビューするも酷評されて書く自信を失っていた高校生・一也が人気作家の転校生・小余綾詩凪と出会い、彼女との小説合作を提案される青春小説。重い病気の妹のためにと思いながら、厳しい評価にネガティブになりがちな一也と、小説の力を信じていて彼に辛辣な詩凪。書く楽しさを思い出してゆく一也に突きつけられた残酷な現実はとても苦しかったですが、そんな彼が完璧に見えていた詩凪の苦しみに気づき、再び向きあおうと決意する姿は応援したくなります。作品を書くことに対するとても繊細で、強い想いを感じられる素晴らしい作品です。現在三巻まで刊行。

2.世界で一番かわいそうな私たち

戦後最大の未解決事件「瀬戸内バスジャック事件」に巻き込まれたあの夏から声を失った三好詠葉。舞原杏が教壇に立つフリースクールで学ぶ彼女が教師・佐伯道成と出会う物語。事件に振り回され、居場所と声を失ってしまった詠葉が巡り合った一冊の小説とフリースクール。そこで教師として働くことになった佐伯。不器用で不確かな詠葉の想いと、生徒と真摯に向き合って何とかしようと奔走する佐伯。正解なんてない生徒と向き合うことの難しさを痛感する展開でしたけど、最後の急展開からどんな物語が紡がれてゆくのか、続巻に期待の新シリーズですね。3月に2巻目が刊行。

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3.君と時計と嘘の塔

君と時計と嘘の塔 第一幕 (講談社タイガ)

君と時計と嘘の塔 第一幕 (講談社タイガ)

 

幼いころに自分のつまらない意地で孤独に追いやった幼馴染・芹愛をいつまでも忘れられない綜士が、唯一の親友の消失した理由を探すうちに、自分が芹愛の死をきっかけにタイムリープしていたことに気づく物語。高校に留年し続ける千歳、自らも同様のタイムリープを繰り返していた雛美と共に芹愛を救うべく行動する展開は、改めて芹愛と自分の現在地を直視させるものでもあって、それぞれの思惑も絡む状況の中で遭遇したショッキングな結末と、突きつけられたもう取り戻せない厳しい現実があって、それにどう向き合うかが問われてゆくシリーズです。全四巻。

4.ミウ -skeleton in the closet-

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)
 

就職を前にした何も変わらない灰色の日々。実家に戻り中学時代の卒業文集を開いた池境千弦が気になる作文を発見し、元同級生のその後を追い始めた数日後、接触してきた別の元同級生が謎の死を遂げるミステリ。元同級生・田中美奈子の自殺の真相を探るうちに起きた転落死事件と、縁が繋がって再会したかつての同級生で作家のミユ。千弦だけが分かるように発信されていたミユからのメッセージ。新米編集者と作家による探偵役コンビが真相に迫るたびに意味合いが変わる構図の変化は鮮烈で、秘密を積み重ねてゆく二人が迎えた結末はとても印象的でした。

5.雨の日も神様と相撲を

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

 

子供の頃から相撲漬けの生活を送ってきた文季が、両親の交通事故死で引き取られた先は相撲好きのカエルの神様が崇められている村で、知恵と知識を見込まれ外来種との相撲勝負を手助けすることになる物語。村を治める一族の娘・真夏と出会い、思いとは裏腹に相撲や村の事情にがっつり関わってゆく文季の洞察力や覚悟には年相応に思えないものもありましたけど、一方でそんな彼の自分に向けられる評価や想いには鈍感だったりするギャップや、相撲勝負にも意外な背景があったことに納得したりで、爽やかな読後感を堪能できる素晴らしい青春小説でした。

6.カタナなでしこ

カタナなでしこ (講談社タイガ)

カタナなでしこ (講談社タイガ)

 

女子高生の千鶴が駆りだされた祖父の形見分けの蔵整理で、夢に見た一振りの刀身だけの日本刀と出会い、同級生たちと無くなった「刀の拵え」作りに挑戦する物語。4人の女子高生がそれぞれクオーターな外見で日本人であることだったり、しっくりしない家族関係や将来のこと、地味であることなどの悩みを抱えながらも、挑戦を通じて様々な人と出会ったり経験を重ねて、これまで気づいていなかったことに気づいたり、自分らしさを見出したり、複雑な想いを乗り越えて試行錯誤する姿はとても心に響きました。読みやすく読後感も爽やかな青春小説でした。

7.ことのはロジック

ことのはロジック (講談社タイガ)

ことのはロジック (講談社タイガ)

 

書くべき言葉を見失った元天才書道少年の墨森肇。金髪碧眼の転校生・アキに一目惚れした彼が、彼女とともに校内で発生する言葉にまつわる事件を解決してゆくミステリ。好奇心旺盛なアキや仲間たちと一緒に挑む回し手紙の伝言ゲーム、存在しない幽霊文字、同人誌の不可解な改変、そしてアキに対する違和感。探し続ける「月が綺麗ですね」を超える告白の言葉。彼らの心境の変化に繋がってゆくひとつひとつのエピソードがまた絶妙で、明らかになった真実にしっかりと向き合い、想いを込めた回答を提示してみせた結末にはぐっと来るものがありました。

8.やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

 

危篤に陥ったおじいちゃんが肌身離さず持っていた写真の謎。雨女の五雨がその謎を解くために、雨の日にだけ登校する不思議な雨月先輩に相談を持ちかける雨の物語。おじいちゃんの写真や七夕の催涙雨といった雨に関する謎を、どこか複雑な気持ちで雨月先輩の下に持ち込む五雨。雨に関する無駄に詳しい知識を活かして優しい解決に導いてゆく雨月先輩の謎は深まるばかりで、五雨がその謎を追うことでたどり着いた真相は切なくもありましたが、それでも相変わらずなように見えて何かが変わったようにも思える二人の今後をまた読んでみたいと思いました。

9.今夜、君に殺されたとしても

今夜、君に殺されたとしても (講談社タイガ)

今夜、君に殺されたとしても (講談社タイガ)

 

連続殺人の現場には謎の紐と鏡。逃亡中の容疑者は橘終の双子の妹・乙黒アザミ。大切な彼女を密かに匿いつつ、常識では測れない彼女の想いを理解するため、他の異常犯罪を調べ始めるミステリ。近くで立て続けに起こる連続殺人・吸血事件・児童誘拐といった異常犯罪に巻き込まれてゆく終と、信じたいと思いながらも拭えないアザミへの疑惑。ホラーテイストのぞわりと来るような雰囲気の物語で、「向こう側」の人たちを引き寄せずにはいられない二人を取り巻く特異性と、最初は対極に思えた終とアザミに共通するどこか歪んだ愛情がとても印象的でした。現在二巻まで刊行。

10.終わらない夏のハローグッバイ

終わらない夏のハローグッバイ (講談社タイガ)

終わらない夏のハローグッバイ (講談社タイガ)

 

あらゆる感覚を五感に再現する端末・サードアイを手に入れたことで装いを変えた世界。そのきっかけとなりながらも二年前から眠り続ける幼馴染・結日を救うため、日々原周が仲間とともに立ち上がるひと夏の物語。サードアイの開発者で鍵を握る結日の姉・沙月の存在と、計画に手を貸す同級生・先崎との邂逅。打開する方法を模索するうちに見出したひとつの真相。立ち位置が変わっても何かを引き起こす彼女と、そんな彼女のために奔走する周という二人の関係は変わらなくて、可能性を信じて諦めず何度でもチャレンジし続ける周を応援したくなりました。

11.七日目は夏への扉

七日目は夏への扉 (講談社タイガ)

七日目は夏への扉 (講談社タイガ)

 

妙にリアルな死亡事故現場を夢だと思っていた朱音の元にもたらされた、学生時代の恋人・森野の訃報。その死の真相を探るうちに一週間の時系列がどんどん崩れてゆく物語。朱音が何かに直面するたび意識が途切れ、気づくと曜日が前後する一週間。欠けたピースが次第に埋まってゆく展開で突きつけられる理不尽な呪い。一見サバサバしている朱音は、一方で大切な人たちのためならいくらでも頑張れる人で、繰り返さないために強引に運命を変えてしまうパワーには苦笑い。それで全てが解決するわけではないですが、生きているって大事なことなんですよね。

12.そして僕らはいなくなる

そして僕らはいなくなる (講談社タイガ)

そして僕らはいなくなる (講談社タイガ)

 

優等生の「着ぐるみ」をかぶって生活する高校生・宗也。帰宅の遅い幼馴染を捜しに出かけ事故に遭った宗也は断片的な幻覚に襲われるようになり、クラスで孤立する志緒と謎を追う青春ミステリ。不可思議な幻覚を共有した志緒と関わり、事件の真相を追ううちに少しずつ変わってゆく宗也の日常や心境。誰もが複雑な思いを抱える登場人物たちの心理描写は繊細で、幻覚を頼りに迫った事件の意外な真相は明示されないまま推測するに留まりましたが、それでもぐいぐい読ませる緊張感のある展開と、彼らが迎えた悪くない結末には充実した読後感がありました。

13.緋紗子さんには、9つの秘密がある

緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)

緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)

 

自分を出せない性格に悩む学級委員長・由宇と「誰も仲良くしないでください」と衝撃的な挨拶をした転校生・緋紗子さんの出会い。偶然、緋紗子さんの身体の重大な秘密を知ったことで二人の関係が変わってゆく青春小説。学級委員長を押し付けられ両親が離婚の危機、幼馴染への恋心も封印していた由宇。秘密を抱えるがゆえに孤高を貫いていた緋紗子さんとの不器用な交流は微笑ましくて、だからこそままならないすれ違いがもどかしくもなりましたが、二人の出会いと育んだ友情がそれぞれにもたらした確実な変化の兆しは、とても素敵なものに思えました。

 

14.先生、大事なものが盗まれました

灯台守高校に入学した雪子が、探偵高校と怪盗高校に入学した幼馴染とともに凪島のアートギャラリーに犯行後カードを残した伝説の怪盗・フェレスの調査に乗り出すミステリ。島の中にある3つの高校が影響の影響力が大きい世界観で、残された犯行カードを元に盗まれたものを探していくストーリーでしたが、盗まれたものが思いもよらないものだったりでちょっと斬新でしたね(苦笑)雪子や彼女を取り巻くキャラクターも魅力的でよく動いていましたし、雪子を陰ながらサポートしたフェレスの過去も謎のままで、その辺りは続編に期待したいところですね。

15.校舎五階の天才たち

校舎五階の天才たち (講談社タイガ)

校舎五階の天才たち (講談社タイガ)

 

 「東高三人の天才」の一人篠崎から来光福音のもとへ届いた、僕を殺した犯人を見つけてほしいという手紙。福音は同じく手紙が届いた天才の一人加藤沙耶夏と事件を調べる学園ミステリ。遺書を残し電車に飛び込み自殺をした篠崎は誰かに本当に殺されたのか。天才であるということはどういうことか。傍若無人な加藤に振り回されつつ関係者たちから明かされる篠崎像から真相も掘り下げられてゆきましたが、深い苦悩を抱えていた彼のささやかな願いが、天才に憧れていた福音に伝わったのがこの物語の救いでしたかね。デビュー作ということで今後に期待。

 

 

16.閻魔堂沙羅の推理奇譚

閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)

 

現世に未練を残した人間の前に現われる閻魔大王の娘・沙羅。彼女がそんな彼らに願いに応じてある持ちかける生と死を賭けた霊界推理ゲーム。登場人物たちが直面する突然の暗転と、沙羅によって提示される究極の選択。読みやすいテンポよく進む展開の中にヒントを織り交ぜつつ提示されてゆく謎解き。被害者たちに容赦のない現実を突きつけながら解決する可能性も提示して、彼らにしっかり考えさせてそれぞれのエピソードを良かったなと思える結末に導いてゆく沙羅の不思議な魅力が効いていました。現在四巻まで刊行。

17.探偵が早すぎる

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

 
探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)

 

 父の死により莫大な遺産を相続した女子高生の一華。遺産を狙って親族たちが彼女を事故に見せかけ殺害しようとするのに対抗して、一華が唯一信頼する使用人の橋田がある探偵を雇う物語。遺産目当てとは言えここまで露骨に命を狙いに来る親族たちも相当アレですが、それ以上に事件が起こる前にトリックを看破して犯罪を止めて「トリック返し」までしてしまう究極の探偵とか新しいですね(苦笑)そこまでするか感もあった殺害計画の連続と、依頼人にそれと気づかれぬままそれをテンポよくそれを阻止してゆく千曲川の活躍が小気味よかったです

18.臨床真実士ユイカの論理

言葉の真偽・虚実を瞬時に判別できてしまう本多唯花。大学で心理学を学ぶ彼女のもとに旧家の跡取り息子、文渡英佐から依頼が持ち込まれる物語。特異な障害に起因する唯花の卓越した「嘘」を見抜く論理的鑑定とそれをサポートする晴彦。閉じられた文渡村で起こった殺人事件と文渡一族の複雑な関係。謎解きのアプローチはやや難解な感がありましたが、ストーリー自体はわりとあっさりめで、研究分野以外はあまり興味なさ気な唯花が意外な部分に反応したり、意外な方向に収束してゆく展開は面白かったです。現在二巻まで刊行。

19.おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱

山中にある屋敷の座敷牢で出会った少女ツナ。怖い話を聞かせることを条件に週一回会うことを許されたミミズクが十年目に転機を迎える物語。育ての親や友人にもツナのことを隠し続けてきたミミズクこと瑞樹。かつて投稿した怪談記事が縁で多津音一と出会ったことにより徐々に明かされてゆくツナを巡るからくり。丁寧で繊細なことばによって恐怖が描かれる一方で、瑞樹がきちんと向き合ったことで明らかになった真実は思わぬ奇跡にも繋がっていて、どうにか折り合いをつけて迎えたその結末は、これまでの想いが報われたとても素敵なものに思えました。

 

20.異セカイ系

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)

 

小説投稿サイトでトップ10にランクインし、「死にたい」と思うことで、自分の書いた小説世界に入れることに気がついた名倉編。自分が作った世界を守るため、投稿作家たちと試行錯誤してゆく物語。小説の中の世界とあちらの世界を行き来しながら、現実でも異世界でも全員が幸せになる方法を探そうとする編。作中の登場人物に対する愛があって、自らの意思を表明するようになってゆく作中人物もそんな作家に対する愛が溢れていて。だんだん訳がわからなくなりながらも、みんなで幸せになろうとする展開は予定調和でしたけどなかなか面白かったです。

21.バビロン

バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)

バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)

 

製薬会社と大学が関与する臨床研究不正事件を追っていた東京地検特捜部検事正崎善が、捜査資料の中にあった謎の血痕や毛髪混じりの書面を発見し、相棒の事務官文緒とともにそれを探るうちに大型選挙の裏に潜む陰謀に巻き込まれていく物語。最初は奇異な事件こそあるものの、全体としては正崎が感じた違和感をきっかけにターゲットを絞り込んでいく、わりとオーソドックなストーリーだと思っていたのですが、後半の怒涛の急展開は予想の斜め上でしたね。一人の女により大きく動かされ、二転三転してゆく物語の行方が気になりますね。現在三巻まで刊行。

22.アンデッドガール・マーダーファルス

アンデッドガール・マーダーファルス 1 (講談社タイガ)

アンデッドガール・マーダーファルス 1 (講談社タイガ)

 

異形が蠢く十九世紀末ヨーロッパ。怪異絡みの凄惨な事件解決のために呼ばれた怪物事件専門の探偵輪堂鴉夜と鳥籠を持つ男・真打津軽が、残された手がかりや怪物故の特性から推理を導き出すミステリ。シリアスな状況下でも変わらない、どこか道化めいた津軽と誰もが驚く見た目の鴉夜の軽妙なトークのギャップと、事件に繋がってゆく二人の因縁や怪異同士の迫力のあるバトル。ダークというだけでは言い表せないこの作品独特の世界観はとても興味深かったですね。著者さんの作風からやや意外な感もありましたが、これはこれで面白かったです。現在二巻まで刊行。

23.大正箱娘 見習い記者と謎解き姫

新米新聞記者の英田紺が旧家の蔵で見つかった呪いの箱を始末してほしいという依頼を受け、呪いの解明のため神楽坂の箱屋敷に住む箱娘・うららを訪れる物語。大正という世の中が少しずつ変わりつつある時代を舞台に、自らの経験もあって窮屈な生き方をせねばならない女性たちのために奮闘する紺と、自らもワケありの縛られた境遇にありながらも紺を助ける謎の多い箱娘・うららの関係や、登場した女性たちもまた矜持を持って生きる姿が印象的でした。まだうららの境遇含めて謎も多いですし、姿を変えて奮闘する紺の行く末も気になりますね。現在二巻まで刊行。

24.殺人鬼探偵の捏造美学

殺人鬼探偵の捏造美学 (講談社タイガ)

殺人鬼探偵の捏造美学 (講談社タイガ)

 

新米刑事・百合が殺人鬼マスカレードに殺されたと思われる怪死体に遭遇し、先輩刑事に捜査協力者として精神科医・氷鉋を紹介されて共に事件解決に挑む物語。妹をマスカレードに殺され家庭崩壊し復讐を誓う百合。調べれば調べるほどいくつもの顔が見えてくる謎めいた被害者・妙高麗奈、証言が食い違う父親、婚約者、恋人。二転三転する展開とそれを独特な視点から解き明かしてみせる氷鉋、そして最後に明かされた真相はこれはこれでわりと楽しめました。邂逅した宿敵とも言える二人が今後どんな結末を見せてくれるのか、続巻に期待したいと思います。

25.サイメシスの迷宮

サイメシスの迷宮 完璧な死体 (講談社タイガ)

サイメシスの迷宮 完璧な死体 (講談社タイガ)

 

警視庁特異犯罪分析班に異動した神尾文孝が、協調性ゼロだが優秀なプロファイラー羽吹允とコンビを組み、連続猟奇殺人の謎に挑む警察ミステリ。マイペースな言動で神尾を振り回す羽吹が抱える過去と、経験したもの全てを忘れることができない超記憶症候群。銀色の繭に包まれた美しいともいえる異常な死体を残す連続殺人事件。その記憶を活かして事件に繋がる鍵を探す過程で、噛み合わなかった二人が徐々にコンビになってゆくのがいい感じで、まだまだ終わらないことを予感させる結末に続巻をまた読みたくなりました。現在二巻まで刊行。

26.ジンカン 宮内庁神祇鑑定人・九鬼隗一郎

就職活動に失敗した夏芽勇作が出会った呪いを招く特殊文化財を専門とする、神祇鑑定人・九鬼隗一郎。相棒となった二人が奇怪な謎を解いてゆく物語。魔術に傾倒した詩人・イェイツの日本刀、キプロスの死の女神像、豊臣秀吉が愛した月の小面。多くを語らない謎めいた九鬼によって明かされてゆく勇作が隠していた秘密と、勇作の力を上手く使って問題を解決してゆく九鬼。魔術や曰くある骨董品を絡めたオカルティックな内容で、登場人物たちもまたミステリアスで存在感がありましたし、彼らの関係がどう変わってゆくのか、続巻に期待のシリーズですね。

27.蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ

大学を留年しネット小銭を稼ぐ生活を送る葉山理久央が、新曲の作詞を依頼してきた破天荒な天才作曲家・蓮見律子と出会い、いろいろと巻き込まれてゆく音楽ミステリ。気まぐれな律子に振り回される葉山が大学の授業で出会った美沙、そして弟で若き音楽家本城湊人との邂逅。複雑な関係の姉弟との交流からの予想もしなかった急展開は物語の雰囲気をガラリと変えて、探偵役として律子が葉山と解き明かしてみせた謎と事件の真相、ほろ苦く切ないだけでは終わらない結末には著者さんらしさがよく出ていると思いました。シリーズ化を是非期待したいですね。

28.永劫回帰ステルス 九十九号室にワトスンはいるのか?

大学に入学した新入生・秋太郎が選んだサークルは、人嫌いの来見行が専有する謎の仮面応用研究会。入部を願い出るも断固拒否された秋太郎が、直後にサークル棟で墜落死体を発見する物語。お互いが深刻な事情を抱える秋太郎とコウの邂逅。やや過剰に心配症で正義感が強い秋太郎に寄り添う彼女・ハゴロモ。そして謎めいたコウの兄・ショウの存在。オカルトめいた事件に心理学や哲学を絡めたストーリー、登場人物たちのテンポのよいやりとりは久しぶりに著者らしさを楽しめました。謎を提示するショウが今後もポイントになりそうですね。続巻も期待。

 

 

29.路地裏のほたる食堂

路地裏のほたる食堂 (講談社タイガ)

路地裏のほたる食堂 (講談社タイガ)

 

 各地を訪れる風変わりな屋台料理店「ほたる食堂」。子供原則無料の条件は「誰も知らない自身の秘密を教えること」で店主を相手に語られる物語。今回は地元でとりあえず教育実習に参加することになった亘と同じく教育実習生の幼馴染・結衣が遭遇した「猫缶事件」。亘や結衣が抱える過去やいわくありげな美形の炊飯器王子たちも絡めた事件は、導入部がやや分かりづらかったものの、過去と現在をうまく対比させつつ、抱えていたそのわだかまりを解消して乗り越える物語として面白かったです。現在二巻まで刊行。

30.神様のスイッチ

神様のスイッチ (講談社タイガ)

神様のスイッチ (講談社タイガ)

 

同棲相手との未来に迷うフリーター、街を警らする女性警察官、親友の彼女に横恋慕する大学生小説家、駆け出しやくざ、八方美人の会社員。神様が押した偶然という名の奇跡のスイッチによって繋がってゆく一夜限りの物語。年齢も生い立ちも違う五人それぞれの視点から始まるストーリーで、最初は頻繁に視点が切り替わる展開に困惑しましたが、話が進んでゆくごとに明らかになってゆく登場人物たちの意外な接点があって、それらが交差するたびに起きる変化を巧みに活かしつつ、それぞれのエピソードにもたらされた結末には心地よい読後感がありました。

31.今からあなたを脅迫します

今からあなたを脅迫します (講談社タイガ)

今からあなたを脅迫します (講談社タイガ)

 

 恋人なんていたことないのに、元カレを人質に取ったから命が惜しければ身代金を払えと脅迫された大学生の澪。それをきっかけに彼女が脅迫屋の仕事に関わってゆく物語。依頼を受けて名誉回復や身の安全を守るため、あるいは犯罪や暴走を止めるために、チームで動かぬ証拠を掴んで対象人物を脅迫する脅迫屋。一見バラバラに起こっているように見えた事件はひとつの流れに繋がっていて、明らかになってゆく自身の複雑な生い立ちもあり、脅迫屋の仕事が正しいことなのか苦悩していた澪がひとつの答えを出す結末には、彼女の確かな成長が感じられました。現在四巻まで刊行。

32.毎年、記憶を失う彼女の救いかた

毎年、記憶を失う彼女の救いかた (講談社タイガ)

毎年、記憶を失う彼女の救いかた (講談社タイガ)

 

両親が事故死したショックで、毎年その日近くになると記憶が事故直後に戻ってしまう尾崎千鳥。空白の3年間を抱えた千鳥の元に小説家・天津真人が現れ、ある賭けを持ちかけられる物語。デートするたびに千鳥の心を揺さぶる真人。少しずつ確実に惹かれていくのを自覚しながらも、だからこそ彼を信じていいのか戸惑う臆病な千鳥の想い。そんな中で明らかになってゆく二人の関係、そしてそれ以上に困難にも諦めずに特別で大切な千鳥に向き合い続ける真人の決意には心打たれるものがあって、そんな二人が紡いでいく真摯な想いがとても素敵な物語でした。

33.顔の見えない僕と嘘つきな君の恋

顔の見えない僕と嘘つきな君の恋 (講談社タイガ)

顔の見えない僕と嘘つきな君の恋 (講談社タイガ)

 

事故のために人の顔を識別できなくなった夏目達也。占い師に「君は運命の女性と出会う。ただし四回」と言われ、半信半疑だった彼がたびたび運命的な恋に巡り合う物語。人には言えない特殊な体質と家族を持ち人生を諦めかけていた達也が、閉塞感のある状況で運命的な出会いを果たした鈴木和花との出会いと別れ。そこから最悪な状況から逃れるため、葉子のために懸命にあがく達也が巡り合う運命の恋は思わぬところで繋がっていて、そこからさらに踏み込んでくる展開は大切な人を想う真摯な想いに溢れていて、とても著者さんらしい作品だと思いました。

 

以上です。

また別レーベルについても企画を立てていきたいと思います。

 

印象に残る作品が多い宝島社文庫25選

オレンジ文庫角川文庫に続くレーベル企画第三弾ということで今回は宝島社文庫を紹介します。宝島社文庫というと岡崎琢磨さんの「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズ、武田綾乃さんの「響け! ユーフォニアム」シリーズ、友井羊さんの「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」、蝉川夏哉さんの「異世界居酒屋「のぶ」」、七月隆文さんの「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」「君にさよならを言わない」などの人気作、あるいは毎年恒例のこのミス大賞シリーズなどの印象的な作品が多いですが、それ以外にも興味深い作品がたくさんあります。

 

そこで今回上記以外で自分の読んだ本の中からオススメの本を選んで紹介します。選んでみたら意外に多かったので、そこからさらに厳選して25作品をセレクトしました(厳選というには多いような気がするのはたぶん気のせい)。宝島社文庫電子書籍化をしておらず、また既刊もどれくらい入手できるのかという点で懸念もなくはないのですが、宝島社の公式サイトで大部分は買えるようです。運良く巡り会えたらぜひ手に取って読んでみてください。

 

1.君に恋をするなんて、ありえないはずだった/そして卒業

勉強合宿の夜に困っていた同級生の北岡恵麻を助けた地味で冴えない飯島靖貴。それをきっかけに密かな交流が生まれてゆく地味系眼鏡男子と人気者ギャルのすれ違いラブストーリー。入学直後の出来事で恵麻に苦手意識を持っていた靖貴と、助けてくれた靖貴が気になってゆく恵麻。学校では知らんぷりだけれど予備校帰りのわずかな時間で育まれてゆく二人の交流。少しずつ想いが積み重なってゆくのに、繊細で不器用な二人が距離を詰め切れないうちに起きる様々なすれ違いがとても切なかったです。だからこそギリギリでの巡り合わせの妙がうまいなと思わされました。
2.君に恋をしただけじゃ、何も変わらないはずだった

 異様に運の悪い大学生・柏原玲二が元カノの部屋へ大切な物を取りに行き、そこに住む見知らぬ女子・磯貝久美子に不審者扱いされる最悪の出会いを果たすもう一つの物語。玲二の後輩・奈央矢と幼馴染で偶然の出会いを果たした久美子。期せずして久美子を取り巻く恋愛模様に巻き込まれてゆく玲二。誤解から始まって結果的に他人の恋の邪魔をしてしまう間の悪さが、巡り巡って容易には変わらないはずの気持ちを少しずつ動かしてゆく展開が面白いですね。久美子が自分らしさを出せる相手は誰なのか、前作とも繋がるもう一つの物語を十分に堪能できました。
3.静かの海 その切ない恋心を、月だけが見ていた 上・下

 内定を取り消され将来の不安に苛まれる大学生・行成と、引っ越してきたばかりで周りに馴染めずにいる小学生・マサキ。それぞれ悩みを抱える二人が歳の離れた友人として徐々に親交を深めてゆく物語。行成が「可愛らしい男の子」だとばかり思い込んでいた真咲。誤解が解く機会がないまま共に過ごし積み重ねてゆく二人の思い出と、それを転機に新たに築かれてゆくそれぞれの人間関係。マサキが女の子だと微塵も気づかない行成と、自らの想いを自覚してゆく真咲という危うくて繊細な距離感がそのままでいられるはずもなくて、それでも二人のためにかすかな希望をきちんと提示してくれるあたりに、著者さんの優しさを感じたりしました。

4.筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)

 

祖父が残した謎を解き明かすため、大学生の美咲が著名な書道家で端正な顔立ちながら毒舌家の同級生・東雲清一郎を訪ねる連作短編ミステリ。清一郎が書に対する知識を披露しつつ筆跡を分析して様々な事件を解決していくストーリーで、始めは美咲を邪険に扱っていた清一郎も、真っ直ぐな彼女と接するうち意外な優しさを見せたり、美咲のために事件解決に奔走したりと徐々に感化されてゆく過程がなかなか良かったですね。そんな二人の関係が変わってゆく様子がとても楽しみなシリーズです。現在4巻まで刊行。
5.京都伏見のあやかし甘味帖

京都伏見のあやかし甘味帖 おねだり狐との町屋暮らし (宝島社文庫)

京都伏見のあやかし甘味帖 おねだり狐との町屋暮らし (宝島社文庫)

 

働いていた商社を自主退職せざるをえなくなり、帰宅したら結婚予定の彼氏と見知らぬ女に遭遇したれんげ29歳。憤怒しつつも傷心のれんげが未踏の地・京都へ旅立ち、そこでおっとり系大学生とおしゃべりな黒狐と出会う物語。少し気が強くて不器用だけれど根は優しいれんげ、密かに和菓子大好きな虎太郎、ちゃっかりれんげと契約する伏見稲荷の神使・クロの軽妙な掛け合いと、時折衝突しながら少しずつ打ち解けて絆めいたものを育んでいく展開や、章の合間に挿入されている虎太郎の京都甘味レポもなかなか良かったですね。現在3巻まで刊行。
6.妻を殺してもバレない確率

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

 

未来に起こる確率を調べる技術が確立した世界。自らが抱える苦しい思いをどうにかしたくて、確率をつい確認し続けてしまう人たちの物語を描く連作短編集。政略結婚や大怪我、路面電車での出会い、届かぬ思いや父と娘の関係、忘れられない運命の出会いなど、停滞する状況を抱える登場人物たち。それでも人との関わりの積み重ねから事態や心境も少しずつ変化して、それに向き合ったり素直になったり次に向けた一歩を踏み出してゆく7つのエピソードは、表題作でもあるタイトルイメージをいい意味で裏切る思いのほか爽やかな読後感の素敵な物語でした。
7.ニセモノだけど恋だった

ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)

ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)

 

俳優だった夢を諦めてレンタル彼氏として働いているカオル。そんな彼が高額な料金にもかかわらず職業を偽って予約を入れ続けるエイコと出会う物語。エイコが職業を偽ってお金を払いデートをする理由。偶然エイコの似たような境遇を知り複雑な想いを抱くカオル。夢を追いかけ続けるべきか現実を思い求めるか、分岐点で心揺れる二人が疑似恋愛のデートを重ねるからこそ育まれ、複雑になってゆくそれぞれの想いにはもどかしくなりましたが、不器用な二人が出会ったことで切り開かれた未来に明るい予感をつい期待したくなる不毛で素敵な恋の物語でした。
8.長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本

長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)

長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)

 

長崎の女子大学に入学した東京出身の日高乙女。バイトで不採用続きの乙女がオランダ坂の外れに不思議な洋館カフェを見つけ、そこで不機嫌顔のオーナーと一緒にバイトとして働くようになる物語。東京っぽさがないとある作家の熱烈大ファンな天然の乙女と、本業が不明で雨降る夜にしか開店しない無愛想で謎めいたカフェ・オーナーの向井。長崎の美味しいものがたくさん紹介されつつ、それと少しずつ増えてゆくお客さんとのエピソードや積み重なってゆく向井への想いがとてもいい感じに組み合わさって、不器用な二人を見守りたくなる素敵な物語でした。
9.八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く

八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)

八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)

 

「最後のチャンス」と位置づけたピアノコンクール予選で落選した高校三年生の北沢鳴海。諦められない彼が時間を巻き戻すため、トリガーとなる音楽の神に愛された少女・神崎杏子と久しぶりに再会する青春小説。かつて才能の差を見せつけられたのに彼女にときめいてしまう鳴海が、そのたびに何度もやり直して距離を置いた過去と、再びピアノと彼女への想いに葛藤し続けたリピートの思わぬ結末。そして明かされてゆくもう一つの物語。託された真実を知った鳴海が大切な人のために、そして自らの想いや夢を取り戻すべく奔走するとても素敵な物語でした。
10.僕たちの小指は数式でつながっている

僕たちの小指は数式でつながっている (宝島社文庫)

僕たちの小指は数式でつながっている (宝島社文庫)

 

友達を作らないと決めていた僕に唐突に話しかけてきた、数学が好きで天才で孤独な少女・秋山明日菜。不本意ながら始まった彼女との交流が僕を変えてゆく青春小説。心臓移植の影響で前向性健忘症となり一ヶ月しか記憶を保てない明日菜。彼女の日記を頼りに二人の思い出を積み重ねてゆく僕と、少しずつ変わってゆく明日菜との関係。そして僕の暗い過去と意外な形で繋がる彼女の秘密。あれほど望んでいたはずの治癒がもたらした皮肉な転機でしたが、ゼロではない可能性を信じ続けた二人の真摯な想いが引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。
11.君の思い出が消えたとしても

君の思い出が消えたとしても (宝島社文庫)

君の思い出が消えたとしても (宝島社文庫)

 

理解されづらい持病を抱え、仕事もうまく行かず自暴自棄になりかけていた遠藤が出会う思い出コーディネーターの月尾。彼女と過ごす一ヶ月間が描かれる物語。月尾から指摘されるあと一ヶ月の寿命と、思い出を寿命に変えられるという話。そんな遠藤が彼女と共に過去の思い出の悔いを解消していったり、楽しい日々を過ごしていゆくなかでの心境の変化。だからこそ分かりやすい存在に思わせて、意外と謎めいた部分も多い彼女の正体や、抱える秘密が焦点になってゆく展開でしたが、思わぬ真実にもあくまで可能性を信じた二人が迎えた結末は印象的でした。
12.春、ひとり暮らし。隣に住むのはお姉さん。

春、ひとり暮らし。隣に住むのはお姉さん。 (宝島社文庫)

春、ひとり暮らし。隣に住むのはお姉さん。 (宝島社文庫)

 

急な両親の海外赴任で高三の春から一人暮らしを始めた黒塚誠一郎。マンションの同じフロアに住む女子大生の神田すず・野花茜と出会う青春小説。タイプの違う二人のお姉さんと手料理をおすそ分けしたり、家で一緒にご飯を食べたりと友人たちに羨ましがられる日々。かわいい系男子として扱われがちでどこか自信がない誠一郎と、彼を気に掛けるようになっていったすずの距離感がもどかしかったですが、そんな二人にもお互いを意識し始める転機があって、そんな積み重ねから想いが育まれてかけがえのない存在となってゆく展開はなかなか良かったですね。

13.科警研のホームズ

科警研のホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

科警研のホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

それぞれ思うところがあって科学警察研究所・本郷分室にやってきた、北上・伊達・岡安の三人の研修生たち。科警研の仕事に興味を示さない室長・土屋に困惑しつつ、事件解決に挑む警察ミステリ。容疑者が黙秘を続ける理由、司法解剖でも特定できなかった死因、監視カメラに映った双生児、連続辻切り事件の犯人。三人の研修生がそれぞれ持ち味を生かして試行錯誤しながらアプローチしていくあたりには成長が感じられましたけど、それでもここぞという時に冴える土屋の視点は流石でしたね。研修期間が延長された彼らのその後の捜査も読んでみたいです。
14.推理は空から舞い降りる

 優秀な管制官だった叔母の真紀子に憧れ、日夜奮闘する新米航空管制官の藤宮つばさ。同期の情報官・戸神大地とともに、空港で発生する様々なトラブルや謎を解決していくお仕事ミステリ。鳥が原因のエンジントラブルや、不定期に鳴り響く発信源不明の遭難信号、外国要人専用機の離陸失敗事故など、トラブルに巻き込まれるつばさを少し変わった同期の大地や職場の同僚・上司の協力で解決してゆく展開で、お仕事小説としてもなかなか興味深かったですが、探していた叔母の「管制官に一番必要なもの」を見出してゆく結末にもぐっと来るものがありました。

15.女流棋士は三度殺される

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

 

自分の目の前で幼馴染・歩巳が暴漢に襲われ姿を消した事件をきっかけに、棋士を諦めたかつての天才少年棋士・香丞。高校で美貌の女流棋士として再会した彼女が再び何者かに襲われ、その事件の真相を追う将棋ミステリ。コンピューター将棋が棋士に勝つのが当たり前になった近未来が舞台。謎解きのアプローチにいくつか後出し設定もあったのは少し気になりましたが、棋士を目指すもう一人の幼馴染・桂花も交えた三角関係の機微や、コンピューター将棋の考察も絡めながらたどり着いた結末の意味にはなるほどと納得してしまいました。面白かったです。
16.谷中レトロカメラ店の謎日和

谷中レトロカメラ店の謎日和 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

谷中レトロカメラ店の謎日和 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

思い入れのあった故人のカメラ売却をきっかけに下町谷中のレトロカメラ店でバイトすることになった山之内来夏が、三代目店主の今宮とともに客が持ち込む謎を解決する連作ミステリ。中古クラシックカメラを専門に扱う落ち着いた雰囲気のお店を舞台に、優れたカメラ修理技術や知識、そして卓越した観察眼を持つ今宮と写真に関連する謎を解いたり、様々なやりとりを重ねていく中、徐々に変わってゆく来夏さんの気持ち。繊細な描写を積み重ねた末に明らかにされた事実はやや意外なものでしたが、それを乗り越えようとする二人の今後に期待のシリーズです。現在2巻まで刊行。
17.人生写真館の奇跡

人生写真館の奇跡 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

人生写真館の奇跡 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 天国までの道の途中に佇む人生写真館。人生を振り返りながら、自分が生きた年数だけの写真を選び、自らの手で走馬燈を作る死者たちとその儀式を手伝う青年・平坂の奇跡の物語。九十二歳の老婆が選んだバスの写真、四十七歳のヤクザが選んだクリスマス・イブの写真、そして七歳の子どもと笑顔を浮かべる青年の写真。平坂と寄り添うように振り返ってゆく人生と、今までで最も印象的な場面を撮り直す思い出の写真にはぐっと来るものがあって、抗えぬはずの運命に立ち向かった平坂がいて、それらが全て繋がってゆくエピローグがとても素敵な物語でした。

18.いなくなった私へ

いなくなった私へ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

いなくなった私へ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

ある朝、渋谷のゴミ捨て場で目を覚ました人気シンガーソングライターの上条梨乃。誰にも彼女が上条梨乃だと気づかれず、さらに自身の自殺報道を知った彼女が、ふとしたきっかけで出会った優斗、樹と共に奇妙な現象の原因を追う物語。彼女はどうして自殺したことになっているのか、偽名を使い所属していた芸能事務所にバイトで入りつつ、二人と事態の真相を探る展開。彼女たちのありようや今後どうしていくのかといったディテールはやや気になりましたが、それでも後半の怒涛の展開やほろっとするラストはページ数も気にならない面白さを感じました。

19.天才詐欺師・夏目恭輔の善行日和

天才詐欺師・夏目恭輔の善行日和 (宝島社文庫)

天才詐欺師・夏目恭輔の善行日和 (宝島社文庫)

 

かつて天才詐欺師として名を馳せた夏目。突然目の前に現れた自分の娘だという小春から依頼を受け、仲間とともに依頼者たちを救う父と娘の連作短編ミステリ。小春が生まれ育った修道院の危機、YouTuberと大人気ゲーム機の不正抽選の謎、結婚詐欺師へ仕掛けるペテンや老人を狙った霊感詐欺と、辛い思いをした依頼人たちのため仲間と仕掛ける夏目の用意周到な解決策は、相手を心理的に追い詰めていく過程が秀逸でその結末も効いていました。小春との親子関係の今後や因縁の橋爪との決着も残っていますし、続巻あったらまた読んでみたいですね。
20.塩見﨑理人の謎解き定理 丸い三角について考える仕事をしています

大学生の凜香が蔵書整理アルバイトをする研究室に所属している変人揃いの哲学科でも有名な若き准教授・塩見﨑。常識外れで機械音痴、知を愛する若き哲学者が言葉を疑い真理を読み解く哲学ミステリ。消えたレポートに芸ができなくなってしまった大学に住む猫、不可解な怪文書、凜香が喧嘩別れしていた友人との過去。哲学の命題を使って事件を解決してゆく塩見﨑には凜香や周囲も振り回され気味で、どこをどう見ても残念な変人の類なんですが、それでも彼が導き出してゆく解決にはどこか優しさが感じられて、もし続巻があるならまた読んでみたいです。
21.三度目の少女

三度目の少女 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

三度目の少女 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

 

原因不明のトラウマによって他者を否定できない大学生・関口藍が、ゼミの担当教授に前世の記憶を持つ中学一年生の伊藤杏寿を紹介され、彼女の記憶を巡る謎を追うミステリ。前世・前々世の記憶を持つ杏寿が、教授の紹介で藍と前世の木綿子の生家を訪れて直面した当主・昌一の毒殺事件。運命に導かれるように出会った彼らが疑問を解消しつつ真相に迫る展開は、昔殺された木綿子の事件の真相も追う関係上消去法寄りのアプローチになりましたが、意外な急展開によって過去から解き放たれて、事件を解き明かしてゆく杏寿らの推理はなかなか良かったです。
22.四月一日(わたぬき)さんは代筆屋

四月一日(わたぬき)さんは代筆屋 (宝島社文庫)

四月一日(わたぬき)さんは代筆屋 (宝島社文庫)

 

『筆の都』と呼ばれるところにある代筆屋。四月一日(わたぬき)さんというふくよかで可愛らしい男性の元を訪れる様々な人たちの物語。結婚を前にわだかまりを残した両親への手紙や、すれ違ってしまった年上の幼馴染に対する変わらぬ想い、孫にあてた入学祝いの手紙や就職活動の履歴書など、それぞれのエピソードには意外な事情もあって、個別の話かと思ったら思わぬ形で繋がりも見えてきたりで、代筆するだけでなくさりげなく軌道修正しながら最善へと導いてゆく訳ありな四月一日さんの仕事ぶりと、後日談的なエピソードがとても素敵な物語でした。

23.サブマリンによろしく

サブマリンによろしく (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

サブマリンによろしく (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 28年前に八百長疑惑で自殺した伝説のサブマリン投手K・M。行方不明だった1500奪三振の記念ボールが発見されたのをきっかけに再評価する動きが起き、野球嫌いの駆け出しの作家が謎に迫っていくミステリ。誤審、乱闘、転向、落球、そして八百長疑惑…彼にまつわるエピソードの謎を追うために取材した関係者を通じて浮き彫りになってゆくK・Mの人柄と明らかになってゆく真実。視点がイマイチ分かりづらい点にもまた意図的なものだったようで、読み進めてゆくごとに悪くない結末が積み重ねられてゆくその結末はとても印象的でした。

24.小さいそれがいるところ 根室本線・狩勝の事件録

 母を癌で亡くした大学生の白木恭介は、遺言に従い母が30年前に佐伯義春という友人から貰った宝石を返すため北海道を訪れ、集落の因縁に巻き込まれてゆくひと夏の物語。秘境駅羽帯を訪れた恭介が知る三十年前に東羽帯の集落で起こった凄惨な事件。同時期に訪れた鉄道マニア吉井が知る根室本線に眠る裏金の噂。調べてゆくうちにふとした縁で出会った二人が集落の過去を知って因縁に巻き込まてゆく展開でしたが、情緒溢れる秘境駅近辺の描写を交えながら過去が丁寧に語られ、精算されてゆく結末は読み終わってみるとなかなか趣深いものがありました。

25.皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王

皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王 (宝島社文庫)

皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王 (宝島社文庫)

 

 中華平原に名を馳せる強国・禍国。十八年前、「覇王」の宿星を持って生まれた皇子・戰と、人扱いされず書庫に引き篭もる少年・真が出会ったことで運命が変わってゆく中華ファンタジー。兵部尚書である父の側室腹として生まれたがゆえに戸籍を持たなかった真が、皇子・戰と出会ったことで得た転機。生い立ちが影響してか多くを望まず怠惰になりがちな真が、それでも戰のため、訳ありの幼き妻・薔姫のために智謀を活かして自らの奔走し窮地を打開していく展開は、登場人物たちもよく動いてテンポも良くなかなか面白かったです。続巻も期待しています。

 

以上です。ちなみに紹介した作品の中で個人的に好みどストライクなのは「筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。」「妻を殺してもバレない確率」「女流棋士は三度殺される」「谷中レトロカメラ店の謎日和」あたりですね。ほんとはもっと紹介したかったのですが、これ以上増やすと間延びしそうだったので今回ここまでにしました。すいません。

2019年2月に読んだ新作おすすめ本

 2月はシリーズ続刊の刊行が多すぎて、それをひたすら消化してたら新作はラノベが少し読めたくらいでライト文芸はあまり手を出せなかったですね(追いかけるのもあるかもしれませんが)。一般文庫はなかなか面白い作品に巡り会えました。話題だった「トラペジウム」は後追いで読んでみましたが、あれはあれでなかなか面白く読めるんじゃないかと自分は感じた一冊です。

 

注目はライトノベルだと電撃文庫から荒削りな感でしたけど熱量が好みだった「つるぎのかなた」、涼暮さんの対になる作品「滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた」「死にゆく騎士と、ただしい世界の壊しかた」、ライト文芸から武田綾乃さんの「君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部」、一般文庫からはあさばみゆきさんの「ただいま、ふたりの宝石箱」、九岡望さんの「言鯨【イサナ】16号」、筏田かつらさんの「ヘタレな僕はノーと言えない」、単行本からは武田綾乃さん二冊目ですが「その日、朱音は空を飛んだ」を挙げておきます。武田綾乃さんは面白い本いろいろ出してますね。注目している作家さんの一人です。

つるぎのかなた (電撃文庫)

つるぎのかなた (電撃文庫)

 

高二の春に藤宮高校に転校してきた水上悠。そんな彼が負けず嫌いな新入生・深瀬史織と出会い、一緒に剣道部に入部する青春小説。昔、剣道で最強と呼ばれながら一度はその座を降りた悠を少しずつ変えていった剣道部の仲間たちとの出会い、剣姫と呼ばれる吹雪との運命的な邂逅と、かつての約束に妄執する吹雪の兄で高校剣道界最強の男・快晴。複雑に絡み合う因縁と剣道に賭ける想いをぶつけ合う熱い戦いがあって、不器用なヒロインたちも自分の想いにまっすぐで、荒削りなところも散見されましたが、それでも十分に魅力的な物語に仕上がっていました。

鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王 (電撃文庫)

鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王 (電撃文庫)

 

空間が意思と魔力を持ち、様々な魔物が息づく世界・パライナ。その北端に誰も訪れない「最果て図書館」の記憶のない館長ウォレスが、鏡越しに《はじまりの町》の少女・ルチアと出会うファンタジー。勇者様の魔王討伐を手伝いたいというルチアと、魔王討伐はどこか他人事のウォレス。けれどそんなウォルスも積み重ねてゆくルチアとのかげがえのないやりとりやメイド・リィリの変化、勇者一行らとの出会いを通じて少しずつ心境の変化があって、封じられていた過去の因縁にも向き合いつつ、しっかりと決着をつけてみせた結末はなかなか良かったですね。

リベリオ・マキナ ―《白檀式》水無月の再起動― (電撃文庫)

リベリオ・マキナ ―《白檀式》水無月の再起動― (電撃文庫)

 

吸血鬼と戦う中で戦闘用絡繰騎士《白檀式》が暴走し、結果的に人間と吸血鬼が平等に暮らす共和国へと変貌を遂げたヘルヴァイツ公国。そこに十年ぶりに白檀式の失敗作・水無月が目覚めるバトルファンジー。亡き博士の娘でマスターのカノンとの不本意な関係と、偏見を持たない吸血鬼王女・リタとの出会い。世間知らずな自覚がない水無月とヒロインたちのズレた会話のやりとりは微笑ましくて、一方で巻き込まれてゆく争いの中で過去の真実と向き合うことにもなって、葛藤しながらも自分のありようを見出していく王道展開はなかなか良かったですね。 

滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた (Novel 0)

滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた (Novel 0)

 

歴代の神子にのみ完遂することが出来ると言われる救星のための試練「十の天命」。幼馴染みの騎士ラミと神子エイネが滅びゆく世界を救うための旅に出る物語。神子として選ばれたエイネと彼女に並び立つために十三騎士まで登りつめたラミ。数百年かけて未だ六つしか達成されていない十の天命を残り全て二人で成し遂げるため、二人はお互いさえいれば何もいらなくて、一緒にいれば運命に抗えると信じていて。けれどそれは神子の命を犠牲にすることでしかなくて、突きつけられる残酷な事実に精一杯立ち向かった二人の結末には切ない気持ちになりました。

死にゆく騎士と、ただしい世界の壊しかた (Novel 0)

死にゆく騎士と、ただしい世界の壊しかた (Novel 0)

 

最愛の女性を目の前で喪い、彼女の命と引き替えに生き延びて「しまった」救世の騎士ラミ。エイネと同じ「神子」の資格を持つキトリーと出会った彼が、師匠として再び彼女と旅に出るもうひとつの物語。常に明るく世界を救うことを信じて疑わない天真爛漫なキトリーと、時には優しく厳しく先輩として導くラミ。短い間にも育まれてゆく彼らの絆があって、救星の真実を知ってしまったがゆえにどうするべきか葛藤し続けるラミがいて。だからこそ希望を信じ続けるキトリーや彼らに向き合ってくれる存在と、彼らが迎えた結末には救いがあったと思いました。

ワールドエンドクロニクル 君がセカイを裏切る前に (GA文庫)

ワールドエンドクロニクル 君がセカイを裏切る前に (GA文庫)

 

王国の姫君・リィンの裏切りによって魔族の手に堕ちた世界。王国騎士にして不世出の魔術師・クロウが時を超え十年前に遡り、最悪の未来を避けるため、彼女を暗殺する使命を本人から託されるヒロイック・ファンタジー。遡った世界で再会するクロウの裏切りを阻止するためもうひとつの十年後からやってきたリィン。裏切り者としてお互い疑いつつも、かつて恋人だった相手を信じたい複雑な想いもあって、何者かの企みによって心揺れる二人の絆が試される展開にはぐっと来るものがありましたね。空気だった幼馴染も今後キーマンになりそうで続巻に期待。

義妹から日々結婚を迫られていた藍原優斗が咄嗟に彼女がいると嘘をついてしまい、三人の女の子に偽恋人関係を頼み込んだらみんな偽彼女になってしまう間違いだらけのラブコメ。幼馴染の蛍、リア充の桜井、完璧主義な千本木と利害関係が一致しての三股関係。優斗のターニングポイントにおける行きあたりばったりな対応のまずさが、ことごとく裏目に出てドツボにはまっていくのに、なぜか男らしさを見せて彼女たちの好感度を上げてしまう泥沼っぷりで、幼馴染一択で良かったんじゃ…と思わなくもないですが、ここからどうまとめあげるのか続巻に期待。

 

君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部 (新潮文庫)

君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部 (新潮文庫)

 

両親の離婚で引っ越してきた高校一年生の舞奈。地元の川でカヌーを操る少女・恵梨香に出会った彼女が、一緒にながとろ高校カヌー部に入部する青春部活小説。長年コンビを組むも少しずつ想いがすれ違ってきた先輩の希衣と千帆。実力者恵梨香の出現による希衣の決意。初心者の舞奈は今後に期待ですけど、過去に執着していたり今の自分を見て欲しいと願う、それぞれの繊細で複雑な心情を巧みに描きつつ、ずっともやもやしていた思いをぶつけ合って、前に進む力に昇華させてゆく展開にはぐっと来るものがありますね。これは続巻に期待の新シリーズです。

同棲相手に浮気されて飛び出したあやめが向かったのは館山。そこで紅茶専門の喫茶店『Tea Room 渚』を営む秀二と出会い、偽装夫婦として助け合いながら店を営むことになる紅茶と家族の物語。途方に暮れていたあやめを拾った秀二と、クールなのに残念な部分も多い秀二を放っておけないお節介なあやめが始めた共同生活。補いあえる関係でも不安定な距離感の二人が、訪れた客との関係から時には揺らぎならも自らの家族関係にも向き合い、お互いの存在を必要と自覚するようになってゆく家族をテーマとしたエピソードはなかなか良かったですね。

 

 

ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)

ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)

 

 仮面を被った仕事ぶりに限界が来て退職し、譲り受けた古民家で趣味のアクセサリーづくりをして暮らす涼子。そんな家に店子として宝飾職人「希美」さん住むことになるあたたかな再生の物語。趣味も合い配慮が行き届いていて、欲しい時に欲しい言葉をくれる希美に惹かれていく涼子。一方で未だに引きずる複雑な過去の想いや、容易に解けない呪いから素直に心を開けない状況にもどかしくもなりましたが、そんな彼女を尊重しつつ粘り強く向き合って、様々な過去のわだかまりを解きほぐすのを手伝ってくれた彼に出会えてほんとに良かったなと思えました。

言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)

言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)

 

全土は砂漠化し、人々は神である「言鯨」の遺骸周辺に鯨骨街を造って暮らす世界。街々を渡る骨摘みとして働く旗魚は、旅の途中で裏の運び屋・鯱と憧れの歴史学者浅蜊に出会い物語が動き出すファンタジー。内密に十五番鯨骨街へ奇病の調査に行った浅蜊が引き起こした言鯨の覚醒と仲間の消失。もたらされた旗魚の劇的な変化と、鯱や蟲使いの珊瑚との逃亡劇、そして言鯨と世界の核心に迫ってゆく展開で、明らかになってゆくこの世界の哀しい真実と登場人物たちそれぞれの熱い想い、そしてそれらに向き合ってゆく旗魚の姿がとても印象的な物語でした。

ゲームでNPCの中の人やってます! (ハヤカワ文庫JA)

ゲームでNPCの中の人やってます! (ハヤカワ文庫JA)

 

就職に失敗しフリーター生活を続けていた森野一樹(28歳)が、VRMMOを手がける大手ゲーム会社の緊急オファーで正社員として採用されゲームの中でNPCを演じる物語。NPCを演じながらゲームの不具合や問題を解決するお仕事で正社員になれるのか(先行きが不安…)とも思いましたが、重要キャラな位置づけのマッチョなエルフ「オリジン・エルフ」やギルマスなどを演じ分けつつ、ブラコン気味の妹やその友人と出会ったりしながら(業務時間はわりとブラック)お仕事してる感じは何だかんだで楽しそうで、続巻出るならまた読んでみたいです。

ヘタレな僕はノーと言えない (幻冬舎文庫)

ヘタレな僕はノーと言えない (幻冬舎文庫)

 

前任者の指示で県内に住む凄腕の女職人・彬のもとへ向かった県庁職員・浩己。納品する代わりにあらゆる雑用を命じられ、いじられるのに彼女が気になってゆく年上美女×年下ヘタレの不器用な恋と仕事の物語。真面目で融通が効かず垢抜けない浩己と、彼をいじることが楽しそうな彬の面倒くさい距離感が絶妙で、強烈なインパクトがあった浩己の忘れられない過去や、彬にもいろいろ複雑そうな事情もあったりで、読んでいる方がもどかしくなる展開でしたけど、だからこそ遠回りしながらもいろいろなものが繋がった結末がかけがえのないものに思えました。

春、ひとり暮らし。隣に住むのはお姉さん。 (宝島社文庫)

春、ひとり暮らし。隣に住むのはお姉さん。 (宝島社文庫)

 

急な両親の海外赴任で高三の春から一人暮らしを始めた黒塚誠一郎。マンションの同じフロアに住む女子大生の神田すず・野花茜と出会う青春小説。タイプの違う二人のお姉さんと手料理をおすそ分けしたり、家で一緒にご飯を食べたりと友人たちに羨ましがられる日々。かわいい系男子として扱われがちでどこか自信がない誠一郎と、彼を気に掛けるようになっていったすずの距離感がもどかしかったですが、そんな二人にもお互いを意識し始める転機があって、そんな積み重ねから想いが育まれてかけがえのない存在となってゆく展開はなかなか良かったですね。

札幌にあるホームズ超常科学研究所長の河邊鐡臣の助手となったアフリカ帰りの医師・和戸一郎。ある事故をきっかけに16歳の可憐な少女の魂が乗り移っていた河邊はホームズを名乗り、二人で北海道の怪事件に挑むミステリ。オカルト好きな見た目青年の少女・ホームズとワトソンが羊の吸血事件、花婿の失踪、議員の醜聞といった風変わりな事件を解決していく展開で、何とも形容するのが難しい奇妙な二人の関係と、ほろ苦くもそれだけで終わらない事件の結末はなかなか良かったですね。ホームズは元の身体に戻れるのか続巻に期待したい新シリーズです。

([あ]8-2)ショパンの心臓 (ポプラ文庫)

([あ]8-2)ショパンの心臓 (ポプラ文庫)

 

就職先が決まらないまま大学を卒業してしまった羽山健太が、「よろず美術探偵」という風変わりな看板を掲げた店と店主・南雲に出会い働き始めるミステリ。健太は就活上手くいかないのも仕方ないと思うような空気読めない/活字読めないタイプで、そんな彼に美術館に勤める貴和子さんの絵を探す依頼を店主が丸投げした時にはびっくりしましたが、最初やらかしまくっていた健太にもそうなるだけの理由があったんですね…彼の成長とシリアスになってゆく展開の中で話をうまくまとめ上げていくところは流石で、読み応えがある話に仕上がっていました。 

世界が記憶であふれる前に (小学館文庫)

世界が記憶であふれる前に (小学館文庫)

 

超記憶を持ち壮絶な半生を送ってきた少女ナノ。一人でひっそりと生きていくためのどんでもない計画を実行した彼女が、宅配ドライバーのソライと運命の出会いを果たす物語。自身の寿命が長くないと悟った彼女が実行する普通なら考えもつかない二億円強奪計画。巻き込まれて口座の金を奪われたソライが偶然発見したナノ、お金を取り戻すために彼女と一緒に向かう香港。そこからのトラブル続きの状況を二人で乗り越えるうちに育まれた想いがあって、なのに相手を思う気持ちがなかなか上手く噛み合わない不器用な二人が迎えた結末はとても印象的でした。

 

その日、朱音は空を飛んだ

その日、朱音は空を飛んだ

 

学校の屋上から飛び降りた川崎朱音。自殺現場の動画がネットに流れ、明らかになってゆく自殺の原因。クラスメイトに配られたアンケートから見え隠れする歪められた青春ミステリ。動画撮影者、地味なクラスメイト、対立者、学年一位、恋人、幼馴染、そして本人の視点から浮き彫りになってゆく自殺に至るまでの構図。視点が変わるたびに見えてくるものも変わって、愚直なまでの想いがすれ違いからどんどん歪んでいって、それがどうにもならないところまで行き着いた先にあった真相と、最後に提示されたもうひとつの目次や結末はなかなか衝撃的でした。

そして旅にいる

そして旅にいる

 

小さい頃から親友と約束していたハワイ旅行、長い片想い相手との冬の千葉の動物園、失恋を慰めてくれた香港の喧噪と担担麺、婚約破棄の姉との奇妙な里帰り、密かな思いを打ち明けると決めていた伊豆への旅、密かな想いを長らく抱えたまま向かったニュージーランドなど、旅をテーマに主人公たちの揺れ動く繊細な気持ちが描かれた8つの連作短編集で、悩める主人公たちの憂いは容易には晴れませんが、大切な人と作るかけがえのない旅の思い出がひとつの転機となって、彼女たちにとって忘れられない特別な旅となってゆくそれぞれの結末は印象的でした。

神のダイスを見上げて

神のダイスを見上げて

 

巨大小惑星ダイスが接近し人類があと5日で終わりを迎える『裁きの刻』。最愛の姉・圭子を殺された高校生の漆原亮が、自分の手で復讐すべく犯人を調べ始まる青春タイムリミットミステリ。唯一の家族だった圭子の衝撃的な死。ダイス接近により国内が大混乱に陥る中、恋人がいたらしい圭子の背後関係を調べていくうちに判明するダイスを崇拝するオカルト集団「賽の目」の存在。一連の事件を引き起こした妄執の結末を思うと何とも複雑な気持ちになりましたが、残された彼らが『裁きの刻』が迎える時、寄り添える理解者が傍にいてくれて良かったです。

トラペジウム

トラペジウム

 

「絶対にアイドルになる」ため己に4箇条を課して高校生活を送る高校1年生の東ゆうが、東西南北の仲間を集めて高校生活をかけて追いかけた夢を描く青春小説。「SNSはやらない」「彼氏は作らない」「学校では目立たない」「東西南北の美少女を仲間にする」を信条に掲げて、他校の個性的な女の子を仲間にしながら地道に積み上げていったアイドルへの道。したたかにひたすら自らの夢を叶えるため邁進するがゆえに、仲間に助けられることもあればすれ違うこともあって、挫折しながらも夢を諦めなかったゆうが迎えた結末はなかなか悪くなかったです。 

千年図書館 (講談社ノベルス)

千年図書館 (講談社ノベルス)

 

見返り谷に心を囚われた少女の物語、村で凶兆があるたび若者が捧げられる千年図書館の秘密、地球侵略中の異星人に遭遇した大学生、墓として大きく塔を村のあちこちに建てる男爵の謎、大きく奇怪な墓を村のあちこちに建てる男爵の謎、呪われた曲を奏でた傷心の高校生におこる不可思議。不可思議な出来事をテーマに、何の気なしに読んでいくと最後の最後で物語の見え方がガラリと変わってしまうやられたと思った5つの連作短編集でした。個人的には「見返り谷から呼ぶ声」「千年図書館」「さかさま少女のためのピアノソナタ」あたりが良かったですね。

2019年2月に読んだ本 #読書メーターより

2月はさすがに忙しくて減速というか、コミックまで手が回らなくなりました(苦笑)でも今までよく毎月90冊も読めてたなとも思っていたので、今後も似たような感じになっていくのかもしれないです。まあ積む本減らせば問題はずですよね…たぶん。

シリーズ追いかけすぎて後追いになっている続巻もたくさんありますが、手を出して面白いと思った作品しか続刊読んでないので満足度は高いです。せめてもう少し追いかけている作品の発売月が分散してくれるといいのですが、そうそううまくもいかないですね(仕方ない)

 2月の読書メーター
読んだ本の数:82
読んだページ数:22219
ナイス数:5133

宝石商リチャード氏の謎鑑定: 夏の庭と黄金の愛 (集英社オレンジ文庫)宝石商リチャード氏の謎鑑定: 夏の庭と黄金の愛 (集英社オレンジ文庫)感想
リチャードから母のカトリーヌが正義に会いたがっているとメールが届き、夏の南仏プロヴァンスのヴィラで正義とリチャードの敷地中のどこかある32個の石を探し出す宝探しが始まる第八弾。お兄さんたちとも普通に関わるようになっていた正義が、今度はリチャードの母・カトリーヌと対面。カトリーヌもわりと独特な価値観の持ち主のようで、それでも彼女は何だかんだ言いながらもリチャードの母で、リチャードのことを大切な存在と思っている正義のことを認めてくれたのかな。とはいえ最後にこれからまた何かありそうな結末で続巻が気になりますね。
読了日:02月01日 著者:辻村 七子
会社人生を後悔しない 40代からの仕事術会社人生を後悔しない 40代からの仕事術感想
なぜ企業で働く人は、ミドル・シニア期(40~60代)に入ると、言い知れぬ停滞感を抱くのか?4700人の大規模リサーチで科学のメスを入れた一冊。思うようなキャリアが描けないと気づく40代半ばと、ピークアウトする50代に2つの谷があって、そういう時こそまずやってみて、仕事の意義を再定義したり年下との上手い付き合い方を意識し、居場所を作りつつ学んだことを実践に活かすようにする。漫然と日々を過ごすのではなく、先を見据えて自分がどうすべきか考えることが重要ということですね。客観的に振り返るための参考になりました。 
読了日:02月01日 著者:石山 恒貴,パーソル総合研究所
トラペジウムトラペジウム感想
「絶対にアイドルになる」ため己に4箇条を課して高校生活を送る高校1年生の東ゆうが、東西南北の仲間を集めて高校生活をかけて追いかけた夢を描く青春小説。「SNSはやらない」「彼氏は作らない」「学校では目立たない」「東西南北の美少女を仲間にする」を信条に掲げて、他校の個性的な女の子を仲間にしながら地道に積み上げていったアイドルへの道。したたかにひたすら自らの夢を叶えるため邁進するがゆえに、仲間に助けられることもあればすれ違うこともあって、挫折しながらも夢を諦めなかったゆうが迎えた結末はなかなか悪くなかったです。
読了日:02月02日 著者:高山 一実
神のダイスを見上げて神のダイスを見上げて感想
巨大小惑星ダイスが接近し人類があと5日で終わりを迎える『裁きの刻』。最愛の姉・圭子を殺された高校生の漆原亮が、自分の手で復讐すべく犯人を調べ始まる青春タイムリミットミステリ。唯一の家族だった圭子の衝撃的な死。ダイス接近により国内が大混乱に陥る中、恋人がいたらしい圭子の背後関係を調べていくうちに判明するダイスを崇拝するオカルト集団「賽の目」の存在。一連の事件を引き起こした妄執の結末を思うと何とも複雑な気持ちになりましたが、残された彼らが『裁きの刻』が迎える時、寄り添える理解者が傍にいてくれて良かったです。 
読了日:02月02日 著者:知念実希人
千年図書館 (講談社ノベルス)千年図書館 (講談社ノベルス)感想
見返り谷に心を囚われた少女の物語、村で凶兆があるたび若者が捧げられる千年図書館の秘密、地球侵略中の異星人に遭遇した大学生、墓として大きく塔を村のあちこちに建てる男爵の謎、大きく奇怪な墓を村のあちこちに建てる男爵の謎、呪われた曲を奏でた傷心の高校生におこる不可思議。不可思議な出来事をテーマに、何の気なしに読んでいくと最後の最後で物語の見え方がガラリと変わってしまうやられたと思った5つの連作短編集でした。個人的には「見返り谷から呼ぶ声」「千年図書館」「さかさま少女のためのピアノソナタ」あたりが良かったですね。
読了日:02月03日 著者:北山 猛邦
その日、朱音は空を飛んだその日、朱音は空を飛んだ感想
学校の屋上から飛び降りた川崎朱音。自殺現場の動画がネットに流れ、明らかになってゆく自殺の原因。クラスメイトに配られたアンケートから見え隠れする歪められた青春ミステリ。動画撮影者、地味なクラスメイト、対立者、学年一位、恋人、幼馴染、そして本人の視点から浮き彫りになってゆく自殺に至るまでの構図。視点が変わるたびに見えてくるものも変わって、愚直なまでの想いがすれ違いからどんどん歪んでいって、それがどうにもならないところまで行き着いた先にあった真相と、最後に提示されたもうひとつの目次や結末はなかなか衝撃的でした。
読了日:02月04日 著者:武田 綾乃
昨日の僕が僕を殺す リュウグウノハナヨメ (角川文庫)昨日の僕が僕を殺す リュウグウノハナヨメ (角川文庫)感想
今回はルカが振り込め詐欺を阻止したおばあちゃんの心残り、榊の姉が働く水族館へ遊びに行った先で彼女を粘着質に見つめる不穏な女、都市伝説「テケテケ」に怯える同級生といった事件を仲間たちと解決してゆく第二弾で、突き放せず少しずつ受け入れつつある冥婚相手の千代子さんとの距離感が興味深いですが、一緒に事件を解決したあやかしの仲間たちとは何だかんだでいい関係を構築しつつありますね。事件の結末はどこか切なかったりもしますけど、状況を前向きに受け入れつつあるルカが今後どんな事件に巻き込まれるのか、続巻に期待ということで。
読了日:02月05日 著者:太田 紫織
言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)感想
全土は砂漠化し、人々は神である「言鯨」の遺骸周辺に鯨骨街を造って暮らす世界。街々を渡る骨摘みとして働く旗魚は、旅の途中で裏の運び屋・鯱と憧れの歴史学者浅蜊に出会い物語が動き出すファンタジー。内密に十五番鯨骨街へ奇病の調査に行った浅蜊が引き起こした言鯨の覚醒と仲間の消失。もたらされた旗魚の劇的な変化と、鯱や蟲使いの珊瑚との逃亡劇、そして言鯨と世界の核心に迫ってゆく展開で、明らかになってゆくこの世界の哀しい真実と登場人物たちそれぞれの熱い想い、そしてそれらに向き合ってゆく旗魚の姿がとても印象的な物語でした。
読了日:02月06日 著者:九岡 望
春、ひとり暮らし。隣に住むのはお姉さん。 (宝島社文庫)春、ひとり暮らし。隣に住むのはお姉さん。 (宝島社文庫)感想
急な両親の海外赴任で高三の春から一人暮らしを始めた黒塚誠一郎。マンションの同じフロアに住む女子大生の神田すず・野花茜と出会う青春小説。タイプの違う二人のお姉さんと手料理をおすそ分けしたり、家で一緒にご飯を食べたりと友人たちに羨ましがられる日々。かわいい系男子として扱われがちでどこか自信がない誠一郎と、彼を気に掛けるようになっていったすずの距離感がもどかしかったですが、そんな二人にもお互いを意識し始める転機があって、そんな積み重ねから想いが育まれてかけがえのない存在となってゆく展開はなかなか良かったですね。
読了日:02月06日 著者:森川 絵夢
([あ]8-2)ショパンの心臓 (ポプラ文庫)([あ]8-2)ショパンの心臓 (ポプラ文庫)感想
就職先が決まらないまま大学を卒業してしまった羽山健太が、「よろず美術探偵」という風変わりな看板を掲げた店と店主・南雲に出会い働き始めるミステリ。健太は就活上手くいかないのも仕方ないと思うような空気読めない/活字読めないタイプで、そんな彼に美術館に勤める貴和子さんの絵を探す依頼を店主が丸投げした時にはびっくりしましたが、最初やらかしまくっていた健太にもそうなるだけの理由があったんですね…彼の成長とシリアスになってゆく展開の中で話をうまくまとめ上げていくところは流石で、読み応えがある話に仕上がっていました。 
読了日:02月06日 著者:青谷 真未
世界が記憶であふれる前に (小学館文庫)世界が記憶であふれる前に (小学館文庫)感想
超記憶を持ち壮絶な半生を送ってきた少女ナノ。一人でひっそりと生きていくためのどんでもない計画を実行した彼女が、宅配ドライバーのソライと運命の出会いを果たす物語。自身の寿命が長くないと悟った彼女が実行する普通なら考えもつかない二億円強奪計画。巻き込まれて口座の金を奪われたソライが偶然発見したナノ、お金を取り戻すために彼女と一緒に向かう香港。そこからのトラブル続きの状況を二人で乗り越えるうちに育まれた想いがあって、なのに相手を思う気持ちがなかなか上手く噛み合わない不器用な二人が迎えた結末はとても印象的でした。
読了日:02月07日 著者:岡本 貴也
ヘタレな僕はノーと言えない (幻冬舎文庫)ヘタレな僕はノーと言えない (幻冬舎文庫)感想
前任者の指示で県内に住む凄腕の女職人・彬のもとへ向かった県庁職員・浩己。納品する代わりにあらゆる雑用を命じられ、いじられるのに彼女が気になってゆく年上美女×年下ヘタレの不器用な恋と仕事の物語。真面目で融通が効かず垢抜けない浩己と、彼をいじることが楽しそうな彬の面倒くさい距離感が絶妙で、強烈なインパクトがあった浩己の忘れられない過去や、彬にもいろいろ複雑そうな事情もあったりで、読んでいる方がもどかしくなる展開でしたけど、だからこそ遠回りしながらもいろいろなものが繋がった結末がかけがえのないものに思えました。
読了日:02月07日 著者:筏田 かつら
鳥居の向こうは、知らない世界でした。3 後宮の妖精と真夏の恋の夢 (幻冬舎文庫)鳥居の向こうは、知らない世界でした。3 後宮の妖精と真夏の恋の夢 (幻冬舎文庫)感想
王宮から千歳にもたらされた「第三王子・透李に嫁ぐ西国の王女を世話せよ」との命。複雑な想いを抱きながらも王女を支える千歳が、流行している危険な「惚れ薬」を調べる第三弾。透李の政略結婚の相手・大エグレスのジゼル王女。彼女に献身的に寄り添い二人を応援したいと思いつつも、自分の気持ちを押し殺すこともできなくて深く思い悩む彼女でしたけど、それでも危険な惚れ薬による暴走を阻止するため、危険を顧みずに奔走した千歳の想いをみんなわかってくれてたんですよね。終わってみればいい感じにまとまって覚悟を決めた透李の頑張りに期待。
読了日:02月07日 著者:友麻 碧
ガーリー・エアフォースX (電撃文庫)ガーリー・エアフォースX (電撃文庫)感想
ロシアのアニマ達との共同ミッションを終え、調整のために小松にやってきたパクファ。彼女が行方不明になって基地内が騒然とし、ザイへの大反抗が始まる第十弾。パクファに振り回されたりしながらも、千年前のF15やグリペンの記憶などからループを断ち切るための突破口を見出す慧。ここで慧との関係にひとつの決着をつけることになった明華でしたけど、結局蚊帳の外のままでこれはちょっと切なかったですね...。しかも慧は決断を迫られることになりそうで、話をどうまとめ上げるのか気になるところではあります。巻末パクファの短編は癒やし。
読了日:02月08日 著者:夏海 公司
そして旅にいるそして旅にいる感想
小さい頃から親友と約束していたハワイ旅行、長い片想い相手との冬の千葉の動物園、失恋を慰めてくれた香港の喧噪と担担麺、婚約破棄の姉との奇妙な里帰り、密かな思いを打ち明けると決めていた伊豆への旅、密かな想いを長らく抱えたまま向かったニュージーランドなど、旅をテーマに主人公たちの揺れ動く繊細な気持ちが描かれた8つの連作短編集で、悩める主人公たちの憂いは容易には晴れませんが、大切な人と作るかけがえのない旅の思い出がひとつの転機となって、彼女たちにとって忘れられない特別な旅となってゆくそれぞれの結末は印象的でした。
読了日:02月08日 著者:加藤 千恵
鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王 (電撃文庫)鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王 (電撃文庫)感想
空間が意思と魔力を持ち、様々な魔物が息づく世界・パライナ。その北端に誰も訪れない「最果て図書館」の記憶のない館長ウォレスが、鏡越しに《はじまりの町》の少女・ルチアと出会うファンタジー。勇者様の魔王討伐を手伝いたいというルチアと、魔王討伐はどこか他人事のウォレス。けれどそんなウォルスも積み重ねてゆくルチアとのかげがえのないやりとりやメイド・リィリの変化、勇者一行らとの出会いを通じて少しずつ心境の変化があって、封じられていた過去の因縁にも向き合いつつ、しっかりと決着をつけてみせた結末はなかなか良かったですね。
読了日:02月09日 著者:冬月いろり
つるぎのかなた (電撃文庫)つるぎのかなた (電撃文庫)感想
高二の春に藤宮高校に転校してきた水上悠。そんな彼が負けず嫌いな新入生・深瀬史織と出会い、一緒に剣道部に入部する青春小説。昔、剣道で最強と呼ばれながら一度はその座を降りた悠を少しずつ変えていった剣道部の仲間たちとの出会い、剣姫と呼ばれる吹雪との運命的な邂逅と、かつての約束に妄執する吹雪の兄で高校剣道界最強の男・快晴。複雑に絡み合う因縁と剣道に賭ける想いをぶつけ合う熱い戦いがあって、不器用なヒロインたちも自分の想いにまっすぐで、荒削りなところも散見されましたが、それでも十分に魅力的な物語に仕上がっていました。
読了日:02月09日 著者:渋谷 瑞也
リベリオ・マキナ ―《白檀式》水無月の再起動― (電撃文庫)リベリオ・マキナ ―《白檀式》水無月の再起動― (電撃文庫)感想
吸血鬼と戦う中で戦闘用絡繰騎士《白檀式》が暴走し、結果的に人間と吸血鬼が平等に暮らす共和国へと変貌を遂げたヘルヴァイツ公国。そこに十年ぶりに白檀式の失敗作・水無月が目覚めるバトルファンジー。亡き博士の娘でマスターのカノンとの不本意な関係と、偏見を持たない吸血鬼王女・リタとの出会い。世間知らずな自覚がない水無月とヒロインたちのズレた会話のやりとりは微笑ましくて、一方で巻き込まれてゆく争いの中で過去の真実と向き合うことにもなって、葛藤しながらも自分のありようを見出していく王道展開はなかなか良かったですね。 
読了日:02月09日 著者:ミサキナギ
魔法科高校の劣等生 司波達也暗殺計画(2) (電撃文庫)魔法科高校の劣等生 司波達也暗殺計画(2) (電撃文庫)感想
榛有希が司波達也に敗北をしてから約二年の月日が流れた二〇九六年、黒羽文弥直轄の暗殺者として日々依頼される仕事をこなす彼女の元に、暗殺者見習いの少女・桜崎奈穂が派遣されてくる第二弾。普段は家政婦として生活指導をしてくる奈穂との生活と、『人間主義』を掲げ司波達也暗殺を目論むとある教団。達也に対するフォローなんていらないんじゃないかとも思いつつも、自らの持てる力を使って戦う有希と自分のありように自信を持ちたい菜穂の関係だったり、女装させられて複雑な文哉と亜夜子の姉弟関係だったり、これはこれで面白いシリーズです。
読了日:02月09日 著者:佐島 勤
後宮天后物語 ~幼馴染の猛攻はご迷惑!~ (ビーズログ文庫)後宮天后物語 ~幼馴染の猛攻はご迷惑!~ (ビーズログ文庫)感想
告白し開き直った志紅に押されっぱなしの雛花。一方、知れば命がない皇室の秘密を知ってしまった雛花が己に宿ったものと命を賭けた謎解きに挑む第三弾。お互い相手のことが大切なのは分かっていて、志紅もわりと怒涛の勢いで攻めてるのに、それでも変わらない雛花の頑なさというか志紅の報われなさっぷりに切なくなりました。一方で暗躍してるお人もいたり、今回物語をめぐる背景もいろいろ明らかになってきて、思わぬ急展開もありましたけどどういつもこいつも自己犠牲なひとばかりで、みんな幸せになれる終わりを迎えられるといいんですけどね…。
読了日:02月10日 著者:夕鷺 かのう
昨日がなければ明日もない昨日がなければ明日もない感想
今回は「杉村vs.ちょっと困った女たち」。自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳あり家庭の訳あり新婦、自己中なシングルマザーを相手に杉村が奮闘するシリーズ第五弾。どの話も終わってみたらまた違った視点での哀しい真実があったりで切なくなりましたが、身近にどうしようもない人がいるために、ささやかに生きたいという人生すら歪められ、台無しにされてしまうのはやりきれないですね…。それでも真摯に向き合い自分にできる範囲で何とかしようとする杉村さんの姿勢は心に響くものがありました。元家族との距離感も気になりながら読んでます…。
読了日:02月10日 著者:宮部 みゆき
ゲームでNPCの中の人やってます! (ハヤカワ文庫JA)ゲームでNPCの中の人やってます! (ハヤカワ文庫JA)感想
就職に失敗しフリーター生活を続けていた森野一樹(28歳)が、VRMMOを手がける大手ゲーム会社の緊急オファーで正社員として採用されゲームの中でNPCを演じる物語。NPCを演じながらゲームの不具合や問題を解決するお仕事で正社員になれるのか(先行きが不安…)とも思いましたが、重要キャラな位置づけのマッチョなエルフ「オリジン・エルフ」やギルマスなどを演じ分けつつ、ブラコン気味の妹やその友人と出会ったりしながら(業務時間はわりとブラック)お仕事してる感じは何だかんだで楽しそうで、続巻出るならまた読んでみたいです。
読了日:02月11日 著者:もちだ もちこ
天才ハッカー安部響子と2,048人の犯罪者たち (集英社文庫)天才ハッカー安部響子と2,048人の犯罪者たち (集英社文庫)感想
都内の高校に通う希美が出会った、ロボットのような受け答えをする風変わりな同級生・佐野良子。のちの天才ハッカーがいかに誕生したか、そして彼女と次世代の天才の邂逅と活躍を描く青春サイバーサスペンス。のちの天才ハッカー安部響子がどのようにして生まるまでの前日譚と、次世代の天才である女子高生・鈴木沙穂梨がどのように彼女と邂逅したのかが描かれる展開で、今回も貴重な知見がいくつもありましたが、安部響子が生まれるまでにはいくつもの貴重な出会いがあって、肇との出会いもそこまで用意周到に準備してたのかと感心しました(苦笑)
読了日:02月12日 著者:一田 和樹
Re:ゼロから始める異世界生活18 (MF文庫J)Re:ゼロから始める異世界生活18 (MF文庫J)感想
都市庁舎奪還作戦が失敗に終わり、一時は濁流に呑まれる水門都市プリステラ。手痛い敗北を味わい、大罪司教の魔の手は都市の混迷をより深く悪辣に増大させていく第十八弾。要求を突きつける大罪司教たちと、その一人レグルスに結婚を迫られるエミリア。何一つ譲れない状況で、都市の人々を救うために演説を行うスバル。彼らしい見事な演説をかましたスバルもつくづく成長したなと思う一方で、剣鬼さんの業がどこまでも深過ぎて何ともあれな感じですが、次巻では大罪司教たちを相手にそれぞれ華々しい戦いが展開される感じですかね。オットー大丈夫?
読了日:02月12日 著者:長月 達平
ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)感想
仮面を被った仕事ぶりに限界が来て退職し、譲り受けた古民家で趣味のアクセサリーづくりをして暮らす涼子。そんな家に店子として宝飾職人「希美」さん住むことになるあたたかな再生の物語。趣味も合い配慮が行き届いていて、欲しい時に欲しい言葉をくれる希美に惹かれていく涼子。一方で未だに引きずる複雑な過去の想いや、容易に解けない呪いから素直に心を開けない状況にもどかしくもなりましたが、そんな彼女を尊重しつつ粘り強く向き合って、様々な過去のわだかまりを解きほぐすのを手伝ってくれた彼に出会えてほんとに良かったなと思えました。
読了日:02月13日 著者:あさば みゆき
夜と会う。III: もう一人の僕と光差す未来 (新潮文庫nex)夜と会う。III: もう一人の僕と光差す未来 (新潮文庫nex)感想
致命的な代償を負ってでも親友・カジカを救おうとした氷室。彼の願いを叶えるべく、澪音たちは仲間たちと協力して《夜の世界》に消えたカジカを探す第三弾。昨日の敵は今日の味方というか、氷室の想いを知った澪音たちが協力してカジカ救出に動き、澪音自身もまた仲間たちの協力を得て自らの夜の世界を攻略する展開でしたが、強敵だった氷室は味方になってみると何とも頼もしい存在でしたね(正直そんなに年上だったの?とも思いましたがw)。著者さんらしい幻想的な世界で、真摯な思いのこもったひとつひとつの言葉がとても印象的な物語でした。 
読了日:02月13日 著者:蒼月 海里
りゅうおうのおしごと!10 (GA文庫)りゅうおうのおしごと!10 (GA文庫)感想
小学生の将棋大会『なにわ王将戦』で優勝を目指すJS研。しかしあいの新担任にJSとの同居を問題視された八一は、自らの潔白を証明するため小学校で将棋の授業を受け持つことになる第十弾。序盤戦の弱さから疑問視されていたあいに対する指導法の真相、JS研メンバーそれぞれの想いと激闘、そして地獄の三段リーグで孤独に戦う銀子の苦闘…。いや新キャラも登場したり天衣もさりげなくデレたり、今回も相変わらず密度の濃いそれぞれの生き様が描かれる熱く盛りだくさんな展開でしたけど、それにしても銀子がこれからどうなるのか気になりますね。
読了日:02月13日 著者:白鳥 士郎
おいしいベランダ。 スミレと6粒のチョコレート (富士見L文庫)おいしいベランダ。 スミレと6粒のチョコレート (富士見L文庫)感想
マンション改装も終わりスミレをベランダ菜園にお迎えしたまもり。バレンタインにこの花を活躍させる計画でわくわくする一方、友人の湊と周の間には不協和音が訪れる第六弾。湊と周の趣味と恋人のどっちが大事なの問題の意外な結末だったり、成人式に絡めた幼馴染とのわだかまりやまもり母と葉二の関係、葉二の仕事絡みのトラブルなど、周囲で起きる出来事に対応していくうちに見えてくるものがあって、二人の揺るぎない絆みたいなものも周囲に認知されつつあるのかなとも感じましたけど、葉二の決断によって訪れそうな転機が今から気になります…。
読了日:02月13日 著者:竹岡 葉月
紅霞後宮物語 第九幕 (富士見L文庫)紅霞後宮物語 第九幕 (富士見L文庫)感想
敵対する司馬氏は消えたものの、梅花がいなくなったことで後宮の規律は乱れ増大する小玉の負担。そんな状況で鴻が立太子され、反小玉の動きも出てきて、死んだはずの鳳に関するある噂も届く第九弾。長期的に小玉を守る体制づくりの布石として鴻の立太子を決断した文林。鴻との別居に伴う小玉の喪失感、空気が変わり騒動が頻発する後宮。いつまでもそのままではいられなくて、変化に適応していく必要もあって、それぞれの立場や背景から複雑な想いが絡む不安定な状況の中、それでも小玉のために懸命に奔走する李真桂のありようがとても印象的でした。
読了日:02月14日 著者:雪村花菜
ワールドエンドクロニクル 君がセカイを裏切る前に (GA文庫)ワールドエンドクロニクル 君がセカイを裏切る前に (GA文庫)感想
王国の姫君・リィンの裏切りによって魔族の手に堕ちた世界。王国騎士にして不世出の魔術師・クロウが時を超え十年前に遡り、最悪の未来を避けるため、彼女を暗殺する使命を本人から託されるヒロイック・ファンタジー。遡った世界で再会するクロウの裏切りを阻止するためもうひとつの十年後からやってきたリィン。裏切り者としてお互い疑いつつも、かつて恋人だった相手を信じたい複雑な想いもあって、何者かの企みによって心揺れる二人の絆が試される展開にはぐっと来るものがありましたね。空気だった幼馴染も今後キーマンになりそうで続巻に期待。
読了日:02月14日 著者:霜野おつかい
辺境貴族、未来の歴史書で成り上がる2~イリスガルド興国記~ (GA文庫)辺境貴族、未来の歴史書で成り上がる2~イリスガルド興国記~ (GA文庫)感想
宰相ジストリエの反乱を鎮圧し、王女リーゼロッテからの宰相代行に任命されたど田舎貴族のアルト。そんな中、イリスガルド王国の腐敗を憂いた第二王子ルディアードが王国に反旗を翻す第二弾。課題を解決するために辺境貴族の元を訪れたアルトたちが直面する第二王子の挙兵。その上さらに混迷を極めてゆく王国を取り巻く状況。『未来の歴史書』の存在が大きいとはいえ、今回も限られた手段・人材を駆使して絶体絶命の局面をギリギリで打開していく冷静なアルトの着眼点は面白かったです。ヒロインたちの存在感も効いていて続巻でさらなる飛躍を期待。
読了日:02月14日 著者:三門鉄狼
滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた (Novel 0)滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた (Novel 0)感想
歴代の神子にのみ完遂することが出来ると言われる救星のための試練「十の天命」。幼馴染みの騎士ラミと神子エイネが滅びゆく世界を救うための旅に出る物語。神子として選ばれたエイネと彼女に並び立つために十三騎士まで登りつめたラミ。数百年かけて未だ六つしか達成されていない十の天命を残り全て二人で成し遂げるため、二人はお互いさえいれば何もいらなくて、一緒にいれば運命に抗えると信じていて。けれどそれは神子の命を犠牲にすることでしかなくて、突きつけられる残酷な事実に精一杯立ち向かった二人の結末には切ない気持ちになりました。
読了日:02月15日 著者:涼暮 皐
死にゆく騎士と、ただしい世界の壊しかた (Novel 0)死にゆく騎士と、ただしい世界の壊しかた (Novel 0)感想
最愛の女性を目の前で喪い、彼女の命と引き替えに生き延びて「しまった」救世の騎士ラミ。エイネと同じ「神子」の資格を持つキトリーと出会った彼が、師匠として再び彼女と旅に出るもうひとつの物語。常に明るく世界を救うことを信じて疑わない天真爛漫なキトリーと、時には優しく厳しく先輩として導くラミ。短い間にも育まれてゆく彼らの絆があって、救星の真実を知ってしまったがゆえにどうするべきか葛藤し続けるラミがいて。だからこそ希望を信じ続けるキトリーや彼らに向き合ってくれる存在と、彼らが迎えた結末には救いがあったと思いました。
読了日:02月15日 著者:涼暮 皐
最弱無敗の神装機竜《バハムート》17 (GA文庫)最弱無敗の神装機竜《バハムート》17 (GA文庫)感想
平和の裏で『大聖域』を操り支配を目論むラフィ女王の陰謀を止めるため、『蒼穹師団』の指導者となったルクス。その正体を皆に隠し『新王国崩し』を開始する第十七弾。表向きは気心の知れた騎士団の少女たちと癒やしの日々を過ごす裏で、夜架やエーリル、アルマらを指揮し、『大聖域』の捜索と『聖蝕』の秘密に切り込んでいくルクス。ラフィが差し向けてきた彼に想いを寄せる騎士団のヒロインたちと対決する展開には何とも複雑な気持ちになりましたけど、何より難しい立ち位置にあるリーファとの邂逅が悪い方向に向かわないことを祈るばかりです…。
読了日:02月16日 著者:明月 千里
狼と香辛料XXI Spring LogIV (電撃文庫)狼と香辛料XXI Spring LogIV (電撃文庫)感想
家を飛び出したミューリが心配で憔悴するロレンス。それを見かねたホロが、湯屋をセリムたちに任せ娘を訪ねて一緒に十数年ぶりの旅に出る第二十一弾。以前旅していたようにはいかない、けれどそれはそれで楽しいたくさんの頼まれごとと思いを乗せたふたり旅。ホロのために頑張ろうとしたロレンスが空回りし、思わぬ騒動に巻き込まれる展開はお約束なんですが、今回は娘たちの尻拭い的な意味合いもあって、それを周囲とも協力して鮮やかに収束させつつ、それでいて十数年一緒にいたんだなあということを改めて感じさせる二人の関係が良かったですね。
読了日:02月16日 著者:支倉 凍砂
君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部感想
両親の離婚で引っ越してきた高校一年生の舞奈。地元の川でカヌーを操る少女・恵梨香に出会った彼女が、一緒にながとろ高校カヌー部に入部する青春部活小説。長年コンビを組むも少しずつ想いがすれ違ってきた先輩の希衣と千帆。実力者恵梨香の出現による希衣の決意。初心者の舞奈は今後に期待ですけど、過去に執着していたり今の自分を見て欲しいと願う、それぞれの繊細で複雑な心情を巧みに描きつつ、ずっともやもやしていた思いをぶつけ合って、前に進む力に昇華させてゆく展開にはぐっと来るものがありますね。これは続巻に期待の新シリーズです。
読了日:02月17日 著者:武田 綾乃
沈黙のパレード沈黙のパレード感想
突然行方不明になった町の人気娘・佐織が、数年後に遺体となって発見された。容疑者はかつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。パレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたか。アメリカ帰りの湯川が挑むシリーズ第九弾。黙秘権行使で二度の逮捕を切り抜けてきた蓮沼には驚かされましたが、だからこそ今回の展開はなかなか皮肉が効いていましたね…。あんな傍若無人ぶりに遭遇したら町の人たちが憤るのも当然で、だからこそ明らかになってゆくやりきれない真相に、少しばかりの救いを見出した湯川教授の優しさがとても心に染みました…。
読了日:02月18日 著者:東野 圭吾
ジャナ研の憂鬱な事件簿 (5) (ガガガ文庫 さ 11-5)ジャナ研の憂鬱な事件簿 (5) (ガガガ文庫 さ 11-5)感想
真冬の卒業が近づく中、すれ違った関係を修復するきっかけを掴めないでいた啓介。そんな彼が未だ登校できないままのユリに連れられ、とある教会を訪れる第五弾。亡くなった神父が残した小説と1枚の写真の真実、突然退学すると言い出した良太郎のために奔走する啓介と大地、卒業式を間近に控えた追い出し祭の日に啓介と真冬が遭遇した最後の事件。印象的な事件を経てようやく自分のありようを見出した啓介は最後にもうひと頑張り欲しかったですが、それでも未来に期待したくなる結末はこの作品らしいのかなとも思いました。次回作も期待しています。
読了日:02月18日 著者:酒井田 寛太郎
遺跡発掘師は笑わない 縄文のニケ (角川文庫)遺跡発掘師は笑わない 縄文のニケ (角川文庫)感想
長野県諏訪地方の御座遺跡で発掘を行うことになった若き天才発掘師・無量が、遺物捏造事件の関係者で初恋の相手だった理恵と再会する第九弾。今回は諏訪大社近辺の縄文文化事情に新興宗教や忍の旧友、三十年前の小学生連続失踪事件など複雑な要素が絡み合う展開でしたけど、過去の捏造事件は無量やその家族だけでなく様々な人たちの人生を歪めてしまっていたんですね…。新興宗教の後継者争いに巻き込まれてゆく無量でしたけど、頑張ろうとして毎度空回りする萌絵が相変わらずで微笑ましかったですが、そのライバル・忍の立ち位置は今後が心配です。
読了日:02月19日 著者:桑原 水菜
契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)感想
ワケあって結婚した仲良しだけど「偽夫婦」の香澄と柊一。晶紀も頻繁に訪れるようになり、二人の間に偽とも言い切れない感情が育まれていく第四弾。夕立のたび夏椿をもらいに現れる老婦人、旧友が持ち込んだ椿の絵、柊一と担当編集・二本松、晶紀、男三人の一夜、そしてすみれ荘での思わぬ急展開。晶紀も何だか柊一とも仲良しな感じになりつつありますが、話に出てきた二本松の初恋の相手は…。転機を迎えそうな二人の今後に期待が高まりますね。何よりすみれ荘での茶番劇がもたらした思わぬ結末には驚かされました。いやこれは次巻が楽しみですね。
読了日:02月19日 著者:白川 紺子
これは経費で落ちません! 5 ~落としてください森若さん~ (集英社オレンジ文庫)これは経費で落ちません! 5 ~落としてください森若さん~ (集英社オレンジ文庫)感想
経理部に配属された真夕、実はわりといい加減な営業部のエース山崎、思わぬ一面を見せた総務の由香利、男っぽい女と称する希梨香、案外周囲に振り回されている田倉勇太郎の複雑な想いが語られてゆく連作短編集の第五弾。視点が変わることで様々なことがまた違って見える会社の諸事情や人間関係、そしていろんな人から見た森若さんの印象をとても興味深く読みましたけど、何より田倉がのめり込んでいった意外な関係のその後が気になりますね…。こういう流れでさらっと描かれた描写が後々効いてきそうな展開で、続巻で何か起きるのか気になります。 
読了日:02月19日 著者:青木 祐子
ファイフステル・サーガ3 再臨の魔王と草原の灰エルフ (ファンタジア文庫)ファイフステル・サーガ3 再臨の魔王と草原の灰エルフ (ファンタジア文庫)感想
かつて魔王戦役にて魔王軍に与した灰エルフの子孫たちが、魔王の左腕を奪還すべく五芒国へ再侵略を開始。フライスラントなどで敗北を重ねる戦況にカレルが、ヴェッセルが動き出す第三弾。カレル、ヴェッセルに続く灰エルフの英雄・ギルセリオンがなかなか魅力的なキャラで、複雑な思惑が絡み合う灰エルフの中で冷徹にしたたかに動くことで、なかなか面白い局面を作り出していますね。魅力的なヒロインたちもまたいい感じに物語に絡む存在感があって、難局続きの生き残りを賭けた戦いはますます盛り上がりそうです。これは続刊が早く読みたいですね。
読了日:02月20日 著者:師走 トオル
公女殿下の家庭教師2 最強剣姫と新たな伝説をつくります (ファンタジア文庫)公女殿下の家庭教師2 最強剣姫と新たな伝説をつくります (ファンタジア文庫)感想
公女殿下ティナとエリーの才能を十二分に引き出し、王立学校へ見事合格させたアレン。そんな彼がかつて魔法を教えた腐れ縁で、今は王国にその名を轟かせる『剣姫』リディヤと再会する第二弾。自分の実力や魅力に無自覚なまま、登場するヒロインたちを次々と魅了していくアレンというお約束展開の中、魅力的な年下ヒロインたちをものともせずに隣をしっかり確保してみせるリディヤの抜群の存在感は現段階では一歩抜け出てますかね。わかりやすいゲス王子は当然の結末でしたけど、いろいろ出てきた伏線をどう活かしてくるのか続巻に期待ということで。
読了日:02月20日 著者:七野りく
ゲーマーズ!DLC2 (ファンタジア文庫)ゲーマーズ!DLC2 (ファンタジア文庫)感想
雨野景太断ちを決めた女子大生ゲーム実況者の霧夜歩。新たな相方を探していた彼女の前に、雨野を彷彿とさせるワカメ系女子と出会う外伝第二弾。女子大生が高校男子を家に連れ込むまずさから景太と距離を置いたはずなのに、新那とオフ会するついでに花憐やゲーム部の仲間、さらには千秋に心春、亜久里まで芋づる式に遭遇してそれが全て気になる景太に繋がっていくとか、流石に偶然にもほどがありますね(苦笑)本編の大勢に影響するわけでもなくて、スタンスもそれそれ違うけれど、ゲームを楽しもうという気持ちが十分に感じられた楽しい外伝でした。
読了日:02月21日 著者:葵 せきな
豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい7 (ファンタジア文庫)豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい7 (ファンタジア文庫)感想
次代女王を決める先触れとして儀礼の場として選ばれたクルッシュ魔法学園。現女王エレノアがカリーナ姫を餌に、戦争を起こさんと逃げ出した魔女を誘きよせようとする作戦にスロウが立ち上がる第七弾。過酷な筋トレで豚公爵かからすっかりマッチョさんになってて驚きましたが、シャーロットの関係にもとうとう転機が訪れそうですね。その上で王女と女王の不器用な関係のために立ち上がって、難局を乗り越えてみせるスロウがカッコよかったです。でも頑張ってしまったからこそ平穏無事に甘々な日々を過ごせるのか、今後の展開が気になりますね(苦笑)
読了日:02月21日 著者:合田拍子
遊牧少女を花嫁に 2 (PASH! ブックス)遊牧少女を花嫁に 2 (PASH! ブックス)感想
調停者の一族の青年リュザールと出会い、思いがけない新婚生活が始まった不遇な羊飼いの少女アユ。そんな彼女がユルドゥスの温かい人々との遊牧暮らしのなかで生きる希望を取り戻し、リュザールとの絆も深めてゆく第二弾。働きものなのに自己評価の低かったアユを変えていった、ユルドゥスでの暮らしやリュザールの存在。危機的状況に遭遇したりでハラハラしましたが、自らの過去にもきちんと向き合って決着をつけられて良かったですね。様々なエピソードが綴られた番外編も興味深くて、特にイミカンにもいい出会いがあったことにはほっとしました。
読了日:02月21日 著者:江本 マシメサ
魔弾の王と凍漣の雪姫2 (ダッシュエックス文庫)魔弾の王と凍漣の雪姫2 (ダッシュエックス文庫)感想
失敗に終わったブリューヌ・ジスタート連合軍によるムオジネル侵攻。アルサスに帰還したティグルが国王からの密命を受けてジスタートへ向かう第二弾。オルミュッツを訪れてミラと再会したティグルと、彼女と険悪な戦姫・エレンとの新たな出会い。公国の境界線に位置する不気味な森とアスヴァール王国の野望。やはりエレンはミラのライバルらしいインパクトがありましたけど、浮気には厳しそうなミラへの一途な想いを語ったティグルがどこまで頑張れるのか、戦姫は今後も増えそうですし、前作とまた違った展開がどうなってゆくのかも楽しみですね。 
読了日:02月22日 著者:川口 士,美弥月いつか
うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。 8 (HJ NOVELS)うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。 8 (HJ NOVELS)感想
クロイツでの平穏な日常を取り戻したラティナのもとに、お忍びで訪問中な一の魔王フリソス。そんな彼女が人間族側との正式な外交にラティナを巻き込んでゆく後日談的第八弾。人間族側との通訳として同行させられた妖精姫・ラティナの困惑、幼馴染・クロエの結婚式、二人の結婚式を巡る常連客たちとのクロイツでの一騒動と、彼らの幸せに満ちた素敵な結婚式。庶民感覚な妖精姫・ラティナと相変わらず親バカでデレデレなデイルの甘々な関係には苦笑いでしたけど、みんなに愛されて祝福される彼らの結婚式エピソードがじっくりと読めて良かったです。 
読了日:02月22日 著者:CHIROLU
現実主義勇者の王国再建記Ⅸ (オーバーラップ文庫)現実主義勇者の王国再建記Ⅸ (オーバーラップ文庫)感想
魔浪(まなみ)の対処にあたるため東方諸国連合の激戦地のチマ公国へ東進を決めるたソーマたち。戦況が膠着状態に陥っているチマ公国で遊牧国家マルムキタンの王フウガと出会う第九弾。東方諸国連合の統一を目指すフウガの志とその驚異的な武力。優秀な六人の兄弟姉妹を家臣として供出する約束で援軍を集めていたチマ公国の話はソーマらしい結末でしたけど、ようやく子供が生まれた一方で、周辺地域にもいろいろな動きが出てきていて、ポイントとなりそうなフウガとの関係が今後協力関係となるのか、敵対関係となるのか気になるところではあります。
読了日:02月23日 著者:どぜう丸
君は月夜に光り輝く +Fragments (メディアワークス文庫)君は月夜に光り輝く +Fragments (メディアワークス文庫)感想
不治の病「発光病」の渡良瀬まみずと岡田卓也に託された「最期の願い」の代行。少しだけ大人になった卓也と、卓也の友人・香山のその後が描かれた短編集。彼女の死後、最後までその願いを果たした卓也。運命的な出会いから彼女を気にかけながらも、何もできなかった香山。そんな彼女を忘れられない彼らのその後は対照的で、卓也とまみずの断片的なエピソードは切なく甘酸っぱかったですが、一方で香山が出会った侑季・声親子とのエピソードはうまく気持ちを切り替えられない、それでも生きていくしかない残された人たちの複雑な想いが印象的でした。
読了日:02月23日 著者:佐野 徹夜
君死にたもう流星群3 (MF文庫J)君死にたもう流星群3 (MF文庫J)感想
宇野宙海がアイドルを夢見ていることを偶然に知ってしまった大地。失敗が確定した夢は果たして夢と呼べるのか。大地が苦悩する中、アパート上空に謎のドローンが出現し星乃を監視し始める第三弾。自分の知る未来では公務員だったはずの宙海と対立するその母親にかつての自分の姿を見る大地。一方で星乃に対する六星の動きが活発化していて、さらに思わぬ急展開におおぅ…と絶望的な気分にもなりましたが、二周目での彼は確実に変わりつつあるということなんですかね。いろいろ構図が変わってきた状況での転校生…またひと騒動ありそうですね(苦笑)
読了日:02月23日 著者:松山 剛
おとなりの晴明さん 第四集 ~陰陽師は月の女神と出逢う~ (メディアワークス文庫)おとなりの晴明さん 第四集 ~陰陽師は月の女神と出逢う~ (メディアワークス文庫)感想
京の街が紅葉に彩られる秋。お隣に住む晴明さんは桃花に「秋は植物の実りに感謝し祝福する季節」と教えてくれる第四弾。文化祭に紛れこむ子狸と晴明さん、祇園に住む伝説の猫又、蚕の精霊を癒す月の女神、晴明さんに化けた結界の石、秋の女神・龍田姫平安京の雅を作ったある帝。晴明さんを慕う桃花が素直ないい子だなと毎回思うこの作品ですが、時子様愛がダダ漏れな篁卿や茜さん、今回はムスルも登場したりで、各話で登場するキャラたちがいい感じに効いていて、けれど桃花と晴明さんの不思議で素敵な関係がこれからどうなるのか気になりますね。
読了日:02月23日 著者:仲町 六絵
ニセモノ夫婦の紅茶店 ~あなたを迎える幸せの一杯~ (メディアワークス文庫)ニセモノ夫婦の紅茶店 ~あなたを迎える幸せの一杯~ (メディアワークス文庫)感想
同棲相手に浮気されて飛び出したあやめが向かったのは館山。そこで紅茶専門の喫茶店『Tea Room 渚』を営む秀二と出会い、偽装夫婦として助け合いながら店を営むことになる紅茶と家族の物語。途方に暮れていたあやめを拾った秀二と、クールなのに残念な部分も多い秀二を放っておけないお節介なあやめが始めた共同生活。補いあえる関係でも不安定な距離感の二人が、訪れた客との関係から時には揺らぎならも自らの家族関係にも向き合い、お互いの存在を必要と自覚するようになってゆく家族をテーマとしたエピソードはなかなか良かったですね。
読了日:02月24日 著者:神戸遥真
京都東山 美術館と夜のアート (創元推理文庫)京都東山 美術館と夜のアート (創元推理文庫)感想
学芸員志望も果たせず、地元の市立美術館の警備員となった神戸静河。そんな彼女が京都の町と美術館を舞台に地道な警備のお仕事事情だったり、美術にまつわるに謎に挑むミステリ。深夜に美術館前庭園で遭遇した不審な男の正体、展示室の浮世絵は写楽か?騒動、展示物紹介が縁で見つかった神社の失われた刀剣など、美術館の中の人と一緒に挑む謎解きはなかなか興味深いお話もありましたが、学芸員志望の人が警備員になるのかなとか女性だらけの警備員とか、設定の方が気になってしまった感。話がこなれてきたらもう少し面白くなるかもしれないですね。
読了日:02月25日 著者:高井 忍
宮廷神官物語 五 (角川文庫)宮廷神官物語 五 (角川文庫)感想
もう一人の慧眼児との勝負に敗れ、慧眼を制御する力を付けるため王都を離れた天青。男装の姫君・櫻嵐とともに旅芸人の一座に紛れ故郷の村へと向かう第五弾。政敵への毒殺未遂という濡れ衣を着せられ、投獄されてしまう世継ぎの王子・藍晶。旅の出来事から自らの優先順位を自覚し、修行でまた少し慧眼の力を使えるようになって宮廷に復帰した天青でしたけど、さすが大臣たちは切り抜け方が上手いというか、追い詰めるには決め手に欠けましたかね。一難去ってまた一難というか、肝心の王があんな煮え切らない感じだとまだしばらく振り回されそうです。
読了日:02月25日 著者:榎田 ユウリ
ホームズは北海道で怪異を嗤う (双葉文庫)ホームズは北海道で怪異を嗤う (双葉文庫)感想
札幌にあるホームズ超常科学研究所長の河邊鐡臣の助手となったアフリカ帰りの医師・和戸一郎。ある事故をきっかけに16歳の可憐な少女の魂が乗り移っていた河邊はホームズを名乗り、二人で北海道の怪事件に挑むミステリ。オカルト好きな見た目青年の少女・ホームズとワトソンが羊の吸血事件、花婿の失踪、議員の醜聞といった風変わりな事件を解決していく展開で、何とも形容するのが難しい奇妙な二人の関係と、ほろ苦くもそれだけで終わらない事件の結末はなかなか良かったですね。ホームズは元の身体に戻れるのか続巻に期待したい新シリーズです。
読了日:02月26日 著者:太田 紫織
偽の恋人だったクラスの美少女たちが、本当に俺のことを好きになっていた件 (ファミ通文庫)偽の恋人だったクラスの美少女たちが、本当に俺のことを好きになっていた件 (ファミ通文庫)感想
義妹から日々結婚を迫られていた藍原優斗が咄嗟に彼女がいると嘘をついてしまい、三人の女の子に偽恋人関係を頼み込んだらみんな偽彼女になってしまう間違いだらけのラブコメ。幼馴染の蛍、リア充の桜井、完璧主義な千本木と利害関係が一致しての三股関係。優斗のターニングポイントにおける行きあたりばったりな対応のまずさが、ことごとく裏目に出てドツボにはまっていくのに、なぜか男らしさを見せて彼女たちの好感度を上げてしまう泥沼っぷりで、幼馴染一択で良かったんじゃ…と思わなくもないですが、ここからどうまとめあげるのか続巻に期待。
読了日:02月26日 著者:友橋 かめつ
薬屋のひとりごと 8 (ヒーロー文庫)薬屋のひとりごと 8 (ヒーロー文庫)感想
羅漢から猫猫のもとに届いた大量の碁の教本。その本をきっかけに宮中では碁が流行し、多忙を極めていた壬氏は宮廷内で碁の大会が企画されていることを知り、羅漢のもとに直接交渉に赴く第八弾。毒白粉事件によって市中にまで波及した思わぬ影響と蝗害の兆し、玉葉后周辺の不穏な空気、碁大会で羅漢に挑んだ壬氏の決意。相変わらず周囲に振り回されてばかりの猫猫でしたけど、何よりも壬氏がまた思い切ったことをやってのけましたね(正直ビックリしました)。これが今後に向けた転機となるのか、その影響も含めて続巻が俄然楽しみになってきました。
読了日:02月27日 著者:日向 夏
NO HARD WORK!: 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方NO HARD WORK!: 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方感想
そんな時代は過ぎ去ったはずなのに、長時間労働を続け、大量のメールやチャットにいら立ち、慢性的な寝不足を抱えて働く人たち。そんな人たちに向けて「クレイジー」に頑張るのをやめて「穏やかに」働くことを説く著者。頭では分かっていても何となくそうしてしまうことに対してそれでいいのか、本当に必要なのか、どうするのがいいのか、シンプルに向き合ってもう一度考えてみるきっかけを与えてくれる一冊ですね。きちんと本質を見極めて優先順位をつけたり大切にすることや、仕事のしやすさとは何かのヒントを教えてもらったような気がしました。
読了日:02月27日 著者:ジェイソン フリード,デイヴィッド ハイネマイヤー ハンソン,Jason Fried,David Heinemeier Hansson
君と読む場所 (新潮文庫 み 60-2 nex)君と読む場所 (新潮文庫 み 60-2 nex)感想
隣のクラスの無口な森田麻友と一緒に図書館で職場体験をすることになった鈴川有季。一方、年の離れた友だちである七曲老人がトラブルから引き籠もりになってしまう第二弾。保健室登校だった繊細な麻友と本を通じて始まる交流、図書館に蔵書寄贈を企む七曲老人と司書のバトル、七曲老人の苦い過去と自宅を無料休憩所やまちライブラリーにする試行錯誤。そういえば尾道はまちライブラリーありましたよね。著者さんの本に対する思いが随所に感じられて、相変わらず偏屈な七曲老人や増えてゆく仲間と本を通じて育まれてゆく絆がなかなか良かったですね。
読了日:02月27日 著者:三川 みり
百錬の覇王と聖約の戦乙女 17 (HJ文庫)百錬の覇王と聖約の戦乙女 17 (HJ文庫)感想
絹を撃破して降伏させたものの、糧秣不足で動けないと思われていた信長率いる炎が再度侵攻を開始。勇斗不在の中、ラスムス率いる角軍が炎の先陣を迎え撃つ第十七弾。ユグドラシル脱出に向けて絹が持つ港を確保した勇斗、糧秣不足を思わぬ方法で解決した炎の大軍での再侵攻。ジークルーネの意外な過去も明らかになりましたけど、厳しい状況でも転んでもただでは起きないあたり流石は勇斗というか。苦境をチートで解決した信長は戦う気満々ですし、次巻あたり一大決戦ありそうですかね。ちょこちょこ出てきた伏線がどう効いてくるのか気になるところ。
読了日:02月27日 著者:鷹山誠一
魔法使い黎明期2 魔力屋さんと恋の予感 (講談社ラノベ文庫)魔法使い黎明期2 魔力屋さんと恋の予感 (講談社ラノベ文庫)感想
出された課題をこなすべく、それぞれ得意な事を見つけて仕事を開始する特別実習生の面々。しかしホルトとクドーを補佐する魔力屋を始めたセービルが、それは魔法使いとしての活動ではないと言われてしまう第二弾。記憶喪失で感情の機微に疎く、自分の進む道について思い悩むセービル。魔法学校から魔女の村に視察に来たホルデムと彼らに忍び寄る陰謀。進度や方向性は違えど成長する三人の試行錯誤やもどかしいやり取りは微笑ましいですが、何だかんだ言いながらも確かな絆を感じさせるゼロや傭兵、神父やリーリの関係も良かったですね。続巻も期待。
読了日:02月28日 著者:虎走 かける,しずま よしのり
青春敗者ぼっち野郎、金髪尻軽ギャルのお気に入りになる2 (角川スニーカー文庫)青春敗者ぼっち野郎、金髪尻軽ギャルのお気に入りになる2 (角川スニーカー文庫)感想
学年一のギャル・橘かれんとテストの点数勝負で負けた一条純。「一日彼氏」として彼女の水着選びに付き合わされて夏休みにクラスの海合宿に参加する第二弾。初めて恋に落ちて積極的なかれんと彼女に押されっぱなしの一条。今回開始時の段階ですでに何で付き合ってないの?状態なイチャイチャっぷりでしたが、海合宿で一瞬周囲の男どもに期待を抱かせる展開から、でも実はすっかりラブラブでしたとかどん底に突き落とす展開が何気に酷い(苦笑)純の家族にもすっかり好感触で、どこまでも甘い二人がこれからどんな思い出を作ってゆくのか続巻に期待。
読了日:02月28日 著者:刑部 大輔
キミの忘れかたを教えて2 (角川スニーカー文庫)キミの忘れかたを教えて2 (角川スニーカー文庫)感想
好きな人と永遠に結ばれる。そんな噂があるスノーランタンフェスに参加することになった修たちが、フェスを企画した正清の妹分でもある三雲雛子と出会う第二弾。鞘音を共にあるために自分の病と向き合うことを選んだ修と、生き急ぐ彼を心配しつつも寄り添うことを決めた鞘音。そして雛子が未だ抱え続ける消えない想い。一緒にいられる幸せを実感するからこその焦燥があって、彼らを支えてくれるたくさんの故郷の人たちがいて。何度も心を揺さぶられる展開でしたが、彼らのささやかな願いは叶うのか、期待と不安を感じつつ続刊を楽しみにしています。
読了日:02月28日 著者:あまさきみりと

読書メーター

3巻以内!続きが読みたいラノベファンタジー10選

 ライトノベルでファンタジージャンルは最近いろいろな作品が刊行されるようになっています。多様なラインナップの中から選ぶのは難しくなってきていると感じますが、その過程で順調に重版を重ね巻数を伸ばしていく人気作品が出てきている一方で、クオリティは高いのに意外に苦戦している作品があります。やはりスタートダッシュが肝で、自分が読みたい作品の続きを読みたいと思ったら、早い段階でどんどん後押ししていく必要があるのかなと感じていました。

 

今回、順調に売れているタイトルも含めて、現時点で3巻以内の自分が続きを読みたいと思っているおすすめファンタジー作品を10点挙げました。もともと考えた候補としてはもう少しあったのですが、考えた末にこれだと思えるものに絞ってあえてこの点数に厳選しています。どれもクオリティは保証できる期待の作品です。続きが読みたいと思っているシリーズなので興味を持ってくれた方は手にとってみてください。

 

1.ファイフステル・サーガ (ファンタジア文庫)

 古の魔王が再臨する絶望の未来を変えるため「アレンヘムの聖女」セシリアと婚約し、傭兵団「狂嗤の団」団長となる道を選んだカレル。聖女の加護を受け死の未来を回避する英雄として奮闘するファンタジー戦記。二年後の魔王再臨を限られた人しか知らない中で、代替わりした王国や戦争を仕掛けてきた自治領相手にどう立ち回るのか。腕が立って商才があり現実的な手段を積み重ねるカレルだけでなく、ヒロインのセシリアや仲間たち、王国の登場人物たちもまた魅力的なキャラが多くて、ここから物語がどう動くのか続巻がとても楽しみな新シリーズです。現在3巻まで刊行。

ファイフステル・サーガ | 富士見書房


2.Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

 

幼い頃に受けた『子孫を残せない呪い』を解呪するため、強国ファルサスの王太子・オスカーが試練を乗り越えたものに望みのものを与える魔女・ティナーシャの塔に挑むファンタジー。解呪が容易でなく呪いに負けない女であればいい、という状況で目の前に好物件がいたことに気づき求婚するオスカー(苦笑)わりとシリアスな展開ですが繰り返される二人のやりとりが微笑ましくて、感化されつつも容易には頷きそうもない孤高の魔女・ティナーシャが、どんどん強くなってゆく諦めが悪そうなオスカー相手にどこまで頑張れるのか、続巻が今から楽しみです。

Unnamed Memory | 書籍情報 | 電撃文庫公式サイト


3.天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)

 病床の国王に代わり摂政として弱小国家を背負うことになった若き王子ウェイン。文武に秀で臣下からの信頼も厚い彼が、絶望的な状況から密かに売国を志す弱小国家運営譚。状況を正しく認識して先を見通せるからこそ絶望を感じるウェイン。上手く終わらせるための手を打つのに、それがなぜか効果的な一手に繋がる皮肉な状況の変化や展開の連続でしたけど、ウェインが彼なりに最善へ真摯に取り組んだ結果だからこそ納得感がありました。補佐官のニニムに対する想いも気になる彼にいつか心境の変化はあるのか、どこまでやれるのか続巻が楽しみですね。現在3巻まで刊行。


4.七つの魔剣が支配する (電撃文庫)

 名門キンバリー魔法学校に入学したオリバーが運命的な出会いを果たしたサムライ少女・ナナオ。魔法生物のパレードから始まるトラブルの連続に巻き込まれつつ出会った仲間たちと乗り越えてゆく学園ファンタジー。器用に魔法を応用しながら使いこなすオリバーと剣に突出した力を持つナナオを中心に、それぞれの想いを抱えながら入学した仲間たちと力を合わせ、危機的状況の連続を乗り越えて絆を育んでゆく展開がなかなか良かったからこそ、深い因縁を感じさせるエピローグが今後の波乱を予感させて、ここからどうなるのか楽しみな新シリーズですね。現在2巻まで刊行。

七つの魔剣が支配する | 電撃文庫公式サイト


5.ラストラウンド・アーサーズ (ファンタジア文庫)

来るべき世界危機を救うため真なるアーサー王を決める「アーサー王継承戦」完璧チート高校生・真神凜太朗が、暇つぶしのためあえて最弱と呼ばれる残念少女・瑠奈に協力する現代異能ファンタジー。金のために聖剣を売り払ってしまったり、召喚した「騎士」ケイ卿にコスプレさせて利用する瑠奈。あざとい生徒会長選の票稼ぎやデートさせられたり彼女のわがままに振り回されつつも、垣間見えるその真っ直ぐな想いに王の資質を見出して、曲者ぞろいの強敵を相手に共に戦い絆を育んでいく王道展開は面白かったです。これは今後に期待の新シリーズですね。現在2巻まで刊行。

ラストラウンド・アーサーズ | 富士見書房


6.1/2―デュアル― 死にすら値しない紅 (角川スニーカー文庫)

殺されヒトとしての一部分を失い、引き替えに特殊能力を得て生き返る偽生者。偽生者を殺し直すために生きる限夏が、不老不死な偽生者の少女・伴を相棒とする近未来SF。ぎこちない距離感から始まった二人が挑む、偽生者による国家統一を掲げたテロ事件発生と、首謀者と伴を巡る凄惨な因縁。そんな彼女に限夏がいかにして並び立つ存在になりうるのかが問われる展開でしたけど、絶妙のタイミングで複雑な過去や葛藤も絡めつつ、絶望する彼女が直面する最悪の状況にも最後まで諦めずに挑み、見事に伴の相棒たることを証明してみせた結末は見事でした。

1/2-デュアルー | シリーズ紹介 | スニーカー文庫

 

7.撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろ  (ファンタジア文庫)

機甲車と弾丸魔法による凄絶な戦争が続く世界。戦いの中で亡霊を名乗る少女・エアと出会い、被弾者の存在・功績を消滅させる悪魔の弾丸を入手した学生兵・レインが、戦争を終わらせようと立ち上がるミリタリックファンタジー。授けられた弾丸を使って世界を再編していくレイン、謎めいたエアの過去と亡霊を巡る因縁。レインの学生らしい生活と背中合わせの容赦ない戦争の凄惨さがうまく描かれていて、因縁の決着をつけるために戦う二人の間で育まれてゆく絆が印象的でしたが、最後の気になるエピソードが何をもたらすのか続巻に期待の新シリーズですね。

撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろ | 富士見書房


8.僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

 

29歳で死んだ社畜が生まれ変わるたびに、18歳で漆黒の髪・赤い眼の帝国皇女に殺される運命。5回目の人生で傭兵暮らしをしていたロワが魔王の隠し子とされ、急転する運命に巻き込まれてゆく物語。容赦なく蹂躙し続ける帝国への対抗で送り込まれた先での王女との結婚と母国滅亡。またもや対峙することになるあの女に、醒めていたロワが大切の人たちを守るため泥臭く奔走するようになり、キーマンとなっていったロワと負けられない皇女・リンゼンカが再び対峙する濃厚な展開とその結末は著者さんらしさに溢れていて、ぐっと来るものがありました。19年4月に2巻刊行予定。

僕は何度も生まれ変わる シリーズ紹介 | スニーカー文庫


9.ヒトよ、最弱なる牙を以て世界を灯す剣となれ (ファンタジア文庫)

人間が覇権を失い他種族の家畜や奴隷として虐げられる世界。ヒトが誇りをもって生きられる国を作るという大望を抱くジノが、公国の跡継ぎ候補ながら辺境で燻っていたヴァンパイアの姫ヘネシーと運命的な出会いを果たすファンタジー。被支配層のヒトながら貪欲な学習意欲もあって機知に富み、ヘネシーたちに自らの存在を認めさせたジノ。急速に信頼関係を深めながらも安直には変わらない二人の距離感があって、急展開からの唐突に訪れた難しい局面もギリギリで乗り切って、ここからどう広がってゆくのか今後が楽しみな新シリーズですね。現在2巻まで刊行。

ヒトよ、最弱なる牙を以て世界を灯す剣となれ | 富士見書房


10.辺境貴族、未来の歴史書で成り上がる ~イリスガルド興国記~ (GA文庫)

辺境の貧乏領地を治める若き領主アルトが偶然召還した刻の精霊クロノ。彼女と半強制的に契約を結び未来を書きかえることのできる歴史書を手に入れたアルトが、楽に暮らしたいという夢を叶えるため動き出す歴史ファンタジー。歴史書には書いても実現不可能なことは消えてしまう制約がある中、思いとは裏腹に様々な試行錯誤が必要な状況で着実な手を打てる才幹がアルトにあって、緊張感のある展開に幼馴染エレナや王女といったヒロインを絡めてゆくストーリーは面白かったです。ここからどこまで盛り上げていけるか今後に期待の新シリーズですね。現在2巻まで刊行。

 

以上です。

どれも応援したい作品なのでよろしくお願いします。

3月の購入検討&気になる本ほかピックアップ

3月の購入検討&気になる本ほかピックアップです。ざっと調べた限りではライトノベルでは「俺ガイル」最終巻、スニーカー文庫「キミの忘れかたを教えて」「薬屋のひとりごと」「ぼくたちのリメイク」、一般文庫では「ホーンテッド・キャンパス」「わが家は祇園の拝み屋さん」「君と放課後リスタート」「世界で一番かわいそうな私たち」などの注目している作品が刊行されることもあり、個人的には気になる続巻を中心に追っていく一ヶ月になりそうです。

 

 一方の気になる新作はそれなりに点数があるものの、もう直前まで少し調べてから判断したい作品が多いですね。現時点での注目としてはイラストレーターとして様々な作品の表紙を描いているloundrawさんの初小説「イミテーションと極彩色のグレー」、電撃文庫はフライさん絵の表紙に期待を込めて「あの日、神様に願ったことは」、双葉文庫の藤まるさんの新作「さとり世代の魔法使い」、オレンジ文庫の要はるさんの新作「リフトガール」、メディアワークス文庫の似鳥航一さんの一対の作品「そして、その日まで君を愛する」「あの日の君に恋をした、そして」、額賀澪さんの新潮文庫nex「青春の獣」を挙げておきます。

イミテーションと極彩色のグレー

イミテーションと極彩色のグレー

 
あの日、神様に願ったことはI kiss of the orange prince (電撃文庫)

あの日、神様に願ったことはI kiss of the orange prince (電撃文庫)

 
さとり世代の魔法使い

さとり世代の魔法使い

 
そして、その日まで君を愛する (メディアワークス文庫)

そして、その日まで君を愛する (メディアワークス文庫)

 
あの日の君に恋をした、そして (メディアワークス文庫)

あの日の君に恋をした、そして (メディアワークス文庫)

 

 

ヒーロー文庫(2/28発売)
薬屋のひとりごと日向夏/しのとうこ

KADOKAWA単行本(2/28発売)
イミテーションと極彩色のグレー loundraw

HJ文庫(3/1発売)
百錬の覇王と聖約の戦乙女17 鷹山誠一/ゆきさん

スニーカー文庫(3/1発売)
キミの忘れかたを教えて2 あまさきみりと/フライ
【新】好感度が見えるようになったんだが、ヒロインがカンストしている件 小牧亮介/遠坂あさぎ
青春敗者ぼっち野郎、金髪尻軽ギャルのお気に入りになる2 刑部大輔/あやみ

講談社ラノベ文庫(3/1発売)
魔法使い黎明期2 魔力屋さんと恋の予感 虎走かける/いわさきたかし

角川ビーンズ文庫(3/1発売)
アルバート家の令嬢は没落をご所望です5 さき/双葉はづき
後宮香妃物語 鳳凰の将軍と愛しき定め 伊藤たつき/カスカベアキラ

KADOKAWA単行本(3/1発売)
イシイカナコが笑うなら 額賀澪

ハヤカワ文庫JA(3/6発売)
revisions リヴィジョンズ3 木村航 原作:S・F・S

小学館文庫キャラブン!(3/6発売)
王宮の凶鳥姫 相内藍/くにみつ

宝島社文庫(3/6発売)
今、死ぬ夢を見ましたか 辻堂 ゆめ
菜の花工房の書籍修復家 大切な本と想い出、修復します 日野 祐希
【改】きみがすべてを忘れる前に 笑わない少女と見えない友達 喜多南

文春文庫(3/8発売)
君と放課後リスタート2 瀬川コウ

KADOKAWA単行本(3/8発売)
わたしたち、何者にもなれなかった 瀬那和章

徳間文庫(3/8発売)
【文】ノッキンオン・ロックドドア 青崎有吾

電撃文庫(3/9発売)
ガーリー・エアフォースXI 夏海公司/遠坂あさぎ
新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 IV 支倉凍砂/文倉十
魔王学院の不適合者4 〈上〉  秋/しずまよしのり
【新】君がいた美しい世界と、君のいない美しい世界のこと 神田夏生/Aちき
【新】ひきこもりな余をどうやって魔王にするというのじゃ? 柊遊馬/茨乃
【新】あの日、神様に願ったことは I kiss of the orange prince 葉月文/フライ
【新】ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか? 新八角/ちょこ庵

TOブックス(3/9発売)
本好きの下剋上  第四部 「貴族院の自称図書委員 VI」 香月美夜/椎名優

メゾン文庫(3/9発売)
近くて遠い嘘つきなキミへ ―電子恋愛― 月猫/TCB
ばけもの和紙庵の花嫁さん  糸森環/ハルカゼ

二見サラ文庫(3/9発売)
妖狐甘味宮廷伝 江本マシメサ/仁村水紀

双葉文庫(3/14発売)
さとり世代の魔法使い 藤まる

文藝春秋単行本(3/14発売)
レフトハンド・ブラザーフッド 知念実希人

GA文庫(3/15発売)
最果ての魔法使い2 岩柄イズカ/咲良ゆき
きれいな黒髪の高階さん(無職)と付き合うことになった2 森田季節/紅林のえ
ゴブリンスレイヤー10 蝸牛くも/神奈月昇
ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?3 ~時を超える愛~ 望公太/ななせめるち

富士見L文庫(3/15発売)
桜花妃料理帖 三 佐藤三/comet
華仙公主夜話 二 その麗人、後宮に嵐を招く 喜咲冬子/上條ロロ
浅草鬼嫁日記 六 あやかし夫婦は今ひとたび降臨する。 友麻碧/あやとき
ごちそうは残業のあとで 紅原香/斉木久美子

ビーズログ文庫(3/15発売)
女王の化粧師 千花鶏/起家一子

ガガガ文庫(3/19発売)
きゃくほんかのセリフ! ますもとたくや/祐
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (14) 渡航/ぽんかん(8)

講談社タイガ(3/19発売)
世界で一番かわいそうな私たち 第二幕 綾崎隼/ワカマツカオリ

ファンタジア文庫(3/20発売)
ロクでなし魔術講師と禁忌教典14 羊太郎/三嶋くろね
デート・ア・ライブ20 十香ワールド 橘公司/つなこ

オレンジ文庫(3/20発売)
京都伏見は水神さまのいたはるところ2 相川真/白谷ゆう
推定失踪 まだ失くしていない君を ひずき優/高階佑
平安あや解き草紙 ~その姫、後宮にて天職を知る~ 小田菜摘/シライシユウコ
リフトガール 要はる/八神あき

集英社文庫(3/20発売)
家庭教師は知っている 青柳碧人

中公文庫(3/20発売)
【文】デルフィニア戦記外伝2 コーラル城の平穏な日々 茅田砂胡

HJノベルス(3/22発売)
ウォルテニア戦記 XII 保利亮太/bob

メディアワークス文庫(3/23発売)
妖怪解析官・神代宇路子の追跡 人魚は嘘を云うものだ 峰守ひろかず
15歳のテロリスト 松村涼哉/海凪コウ
綺羅星王宮曲 七水美咲
百鬼夜行とご縁組 (仮) マサト真希
そして、その日まで君を愛する 似鳥航一
あの日の君に恋をした、そして 似鳥航一

角川文庫(3/23発売)
ビストロ三軒亭の美味なる秘密 斎藤千輪
わが家は祇園の拝み屋さん10 望月麻衣

角川ホラー文庫(3/23発売)
ホーンテッド・キャンパス 秋の猫は緋の色 櫛木理宇/ヤマウチシズ

MF文庫J(3/25発売)
何故か学校一の美少女が休み時間の度に、ぼっちの俺に話しかけてくるんだが?2 出井愛/西沢5ミリ
ぼくたちのリメイク6 アップロード日:9月1日 木緒なち/えれっと
Re:ゼロから始める異世界生活19 長月達平/大塚真一郎
Re:ゼロから始める異世界生活 短編集4 長月達平/イセ川ヤスタカ

オーバーラップ文庫(3/25発売)
灰と幻想のグリムガル level.14+ (仮) 十文字青/白井鋭利

KADOKAWA単行本(3/28発売)
鹿の王 水底の橋 上橋菜穂子

新潮文庫nex(3/28発売)
青春の獣 額賀澪

アルファポリス文庫(3/28発売)
居酒屋ぼったくり(6) 秋川滝美