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読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2017年4月に読んだ新作おすすめ本

 というわけで4月に読んだ新作おすすめです。今回は20点紹介します。「緋色の玉座」は最近では珍しい史実をベースに魅力的な物語にしてみせた注目の戦記ファンタジー。著者さんらしさの詰まった「読者と主人公と二人のこれから」、奇想天外のテロリスト青春小説「屋上のテロリスト」、浅葉なつさんの新作「カカノムモノ」、似鳥さんが描く恋愛小説「彼女の色に届くまで」など、魅力的な作品が多かったです。

 

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

 

 かつての栄光を失い虚栄と退廃に堕ちた東ローマ帝国。国の危機を憂う生真面目な騎士ベリスが、型破りな書記官プロックスと運命的な出会いを果たす戦記ファンタジー。ブロックスとの邂逅によって窮地を脱し、次期皇帝と目されるユスティンの元で頭角を現してゆくベリス。シリアスな展開続きでも脇を固めるキャラたちがよく動いて、その力が高く評価されることになったベリスとブロックスが、一方で皇妃となったテオドラと相容れない確執もあったりで面白かったです。それがいろいろな形で影響しそうな複雑な関係も絡めた今後の展開に期待大ですね。

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

 

 期待もない新学年のホームルーム。高校生・細野亮の前に愛してやまない物語の中にいた「トキコ」そのままの少女・柊時子が現れる出会うはずがなかった読者と主人公の物語。見れば見るほどそのままの時子との出会い。一緒に過ごしてゆくうちに想いが少しずつ積もってゆく一方で、自分の中で湧き上がってくる違和感。主人公の周辺を切り取ったようなクローズな世界観で、あまりにも不器用な二人の距離感にもどかしくもなりましたが、物語をきっかけに知り合った二人が物語で心を通わせて、これからの二人の世界の広がりを予感させる素敵な物語でした。

トリア・ルーセントが人間になるまで (ファミ通文庫)

トリア・ルーセントが人間になるまで (ファミ通文庫)

 

 病の父王を治す秘薬を手に入れるため、兄の特命でサルバドールを訪れた第二王子のランス。自らを薬と名乗る美少女トリアと護衛ロサと共に王都マキシムを目指すファンタジー。浮世離れしたトリアに戸惑いながらも共に旅するうちに惹かれてゆくランス。徐々に明らかになってゆく「ルーセント」の特異性と過酷な運命。宿命と自覚してゆく人間らしい想いに心揺れるトリアと、何とか救おうと奔走するランスに王家を巡る秘密も絡む展開にはハラハラさせられましたが、紆余曲折の末に迎えた二人のこれからを予感させる初々しい結末はなかなか良かったです。

ユリア・カエサルの決断 1 ガリア戦記 (オーバーラップ文庫)

ユリア・カエサルの決断 1 ガリア戦記 (オーバーラップ文庫)

 

 ローマ好きの高校生・糸原聖也が月の女神・ディアナに古代ローマそっくりの異世界へと転送され、ユリアという名の異世界のカエサルを支える異世界ファンタジー。カエサルクラッススキケロも女の子という近似ローマ世界で、女の子だからこその展開もあったりするわけですが、ユリアが女好きなのは変わらないんですね(苦笑)幼馴染も特異な存在だけど主人公自身にもいろいろ因縁がありそうで、今回は登場した主要人物や近似古代ローマの世界観説明もあったりしてテンポにはやや難がありましたけど、これから動きも多くなるでしょうし今後に期待。

天空の翼 地上の星 (講談社X文庫)

天空の翼 地上の星 (講談社X文庫)

 

 徐の王太子・寿白は革命の混乱のさなかに王の証・王玉を得たが庚に取って代わられ、十年後に飛牙と名乗って再び国を訪れる中華風ファンタジー。飛牙から玉を取り戻すべく現れた天令の那兪とともに訪れたかつての王都。天から見放され荒れる庚の治政と、寿白時代の飛牙を知る宦官・裏雲や王太后が抱えていた秘密。明かされた事情と混乱の最中で上手く立ち回った飛牙が、どうにかこうにかうまく取りまとめたなあと思えた結末でしたけど、裏雲との今後も気になりますし、この感じだと天下四国を旅する感じになるんですかね。続巻も楽しみにしています。

 

 

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)

 

 ポツダム宣言を受諾せず東西に分断された日本。七十数年後、高校の屋上で出会った不思議な少女・沙希からアルバイトに誘われた彰人が、彼女の壮大なテロ計画に巻き込まれてゆく物語。両親も亡くなって目的もなく死に魅入られていた彰人。彼に協力を求めた沙希が、思惑ある権力者たちをも巻き込んで邁進する真の目的。緊張が高まってゆく状況で大人たちの間を動き回り、ギリギリの駆け引きが続きながらも切り抜ける覚悟を見せた沙希と、彼女と一緒に最後まで走り抜けた彰人が最後に迎えた結末はとても素敵なものだったと思いました。面白かったです。

カカノムモノ (新潮文庫nex)

カカノムモノ (新潮文庫nex)

 

 悪夢を見続けるOL、穢れを内に抱える大学生、兄夫婦の子供を預かる花屋。「カカノムモノ」謎の美貌の青年・浪崎碧が、時に人を追い詰めてまで心の闇を暴き解決してゆく物語。昏い想いが育つことで生み出される大禍津日神と、一族の事情から人として生きてゆくためにそれを食らわねばならない碧の宿命。訳ありそうなカメラマン・桐島とともに闇を抱えた人を探し出して穢れを払うシリアスな過程には、ごくありふれたままらない日常の積み重ねがあって、宿業を抱えた碧を取り巻く事情がどのように変わってゆくのか続刊に期待したい新シリーズですね。

長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)

長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)

 

 長崎の女子大学に入学した東京出身の日高乙女。バイトで不採用続きの乙女がオランダ坂の外れに不思議な洋館カフェを見つけ、そこで不機嫌顔のオーナーと一緒にバイトとして働くようになる物語。東京っぽさがないとある作家の熱烈大ファンな天然の乙女と、本業が不明で雨降る夜にしか開店しない無愛想で謎めいたカフェ・オーナーの向井。長崎の美味しいものがたくさん紹介されつつ、それと少しずつ増えてゆくお客さんとのエピソードや積み重なってゆく向井への想いがとてもいい感じに組み合わさって、不器用な二人を見守りたくなる素敵な物語でした。

キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)

キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)

 

 留年の危機に瀕するダメ学生・奈緒崎が教授から救済措置として提示された難題は「休学中の嗄井戸を大学に連れ戻せ」。引きこもりの嗄井戸と奈緒崎が謎を解決する連作短編ミステリ。映画鑑賞に没頭して家から出ない嗄井戸が安楽椅子探偵よろしく事件を見通してみせる役割で、腐れ縁で彼の家を訪れるようになった奈緒崎が動くコンビ。二人を中心とする物語は一方で彼ら二人の不器用な友情の物語でもあり、キッパリサッパリなヒロイン・束ちゃんもいい感じに効いてテンポも良く、なかなか面白かったと思います。続編あるならまた読んでみたいですね。

 青森での田舎生活を厭いクリエイター職に憧れ上京した哲太。しかしブラック企業で限界を迎えて脱落し、人生に行き詰った彼が憧れだったクリエイティブ・ディレクターを捜し始める物語。好きな人も仕事も生きがいも一度に失った哲太が、中目黒のシェアオフィスで出会った仲間と協力し、顧客が始めたいカフェのプロデュースに挑戦する展開。一度は挫折した哲太もこれまでいろんなことに挑戦してきたことが無駄になっていなくて、仲間や顧客ときちんと向き合って頑張ろうと奔走するその思いは熱く心に響きました。続巻あるなら仲間の掘り下げも期待。

シマイチ古道具商: 春夏冬(あきない)人情ものがたり (新潮文庫nex)

シマイチ古道具商: 春夏冬(あきない)人情ものがたり (新潮文庫nex)

 

 生活を立て直すため大阪・堺市にある夫の実家「島市古道具商」へ引越し、義父と同居をすることになった透子一家。古い町家で紡がれるモノと想いの人情物語。両親を早くに亡くして社会経験にも乏しく、家族を取り巻く現状がこのままでいいのか思い悩む透子。お店を通じて義父やお客と一緒に古道具や人間関係に関わるようになったり、子供たちや夫ともなかなか上手くいかない状況になりかけたりな彼女は色々と大変でしたけど、多くの人に見守られていたことに気付いた彼女が、本当に大切なもののために周囲と協力して奔走する姿は強く心に響きました。

あした世界が、 (小学館文庫)

あした世界が、 (小学館文庫)

 

 音楽会社に勤める吉山朗美と、社長に契約解除され怒り狂う同級生のスーパースター・絹川空哉。十年前の高校時代にタイムスリップした朗美が当時の心残りをやり直す物語。極度のあがり症を抱える冴えない女子高生だった朗美。空哉と蓮に急接近していく一方で、すれ違い続けていた父との関係。無難に生きるしかなかった高校時代の人間関係も十年後の自分には大したことには思えなくて、だからといってままならないこともたくさんあって。それでも逃げずに困難に向き合った朗美の決断が、当時も今も変えてゆく結末は清々しい読後感で面白かったです。

ゲームセットにはまだ早い (幻冬舎文庫)

ゲームセットにはまだ早い (幻冬舎文庫)

 

 様々な事情で集まってきたはみ出し者のメンバーたちが、ど田舎のスーパーなどで働きながら、一緒にクラブチームの野球で社会人全国制覇を目指す物語。かつての過去の栄光だったり、自分の夢と家族との間の葛藤だったり、なかなかうまく行かずに拗らせてしまっている想いにどう向き合って、難しい環境の中でも好きなことをやり抜くのか。社会人野球を扱ったという点でも興味深く、分かりやすくプロを目指すことだけが野球をやる理由ではなくて、不器用にぶつかり合いながらチームとして一つにまとまってゆく彼らの奮闘は心に響くものがありました。

終電の神様 (実業之日本社文庫)

終電の神様 (実業之日本社文庫)

 

 父危篤の報せに病院へ急ぐ会社員、納期が迫ったエンジニア、背後から痴漢の手が忍び寄る美人...。それぞれの場所へ向かう人々を乗せた夜の満員電車が事故で運転を見合わせて、それが転機に繋がってゆく物語。たまたま深夜の満員電車に居合わせたことで同じ時間を共有した人々のエピソードが綴られる連作短編集で、積み重ねられていった思いだったり、秘密にしていた意外な一面だったり、決断を胸に秘めての乗車だったり、それぞれが抱えていたほろ苦い思いやその決断が良かったと思える結末に繋がっていて、なかなか素敵な物語になっていました。

 

 

彼女の色に届くまで

彼女の色に届くまで

 

 画廊の息子で幼い頃から才能を過信し画家を目指している緑川礼。しかしいつの間にか冴えない高校生活を送っていた礼が、無口で謎めいた同学年の美少女・千坂桜と出会うアートミステリ。礼が衝撃を受けた原石のような彼女の絵の才能。その推理で礼の窮地を救ってみせる桜の意外な一面と、共に過ごすようになってゆく日々。圧倒的な才能を前に平凡な自分を突きつけられる葛藤と少しの打算、生活力皆無な桜が気になって飼育係として世話を焼いてしまう礼の複雑な想いが悩ましいですが、それでも不器用な二人らしい結末はとても素敵なものに思えました。

禁じられたジュリエット

禁じられたジュリエット

 

 ミステリ小説が退廃文学として禁書扱いな世界観の日本で、それに触れてしまった女子高生6人が囚人として収監され、看守役2名を加えた8名で更正プログラムに参加させられる本格ミステリ。プログラムを早く切り上げられるよう協力するはずだった友人8人。役割に徹するうちに急速に対立を深めてゆく描写はあまりにも過酷で、二転三転してゆく展開には驚かされ、追い詰められた参加者たちの叫びは痛切で心に響くものがありましたが、終わってみるとなぜか清々しさすら感じてしまったその読後感に著者さんの深い本格ミステリ愛を見る思いがしました。

ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん

ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん

 

 今まですれ違い続けてきた父が癌で胃を全摘出したことをきっかけに、もう一度やり直したいと考えた息子がオンラインゲームのファイナルファンタジーXIVに父を誘い、正体を隠して父と共に冒険に出るブログ連載の書籍化。齢60を超えるお父さんの光の戦士計画。仲間の協力も得ながら密かにゲームの中での父の成長を見守る展開は、天然の父らしい姿やこれまで知らなかった一面を知ってゆく息子の反応が興味深ったですね。思わぬ展開やほのぼのした場面と、一緒にミッションを乗り越える緊迫感のあるチャレンジもメリハリが効いていて楽しめました。

江の島ねこもり食堂

江の島ねこもり食堂

 

 島の猫の世話をするとある江ノ島の食堂<半分亭>の隠れた仕事。代々「ねこもりさん」と呼ばれる女たちの生きたそれぞれの人生と、新しい命を結び未来を繋いでいく百年物語。猫とお客さんに助けられて続いてきたねこもりさんの半分亭。ひいおばあちゃんのすみゑ、祖母・筆、母・溶子、そして麻布。時代背景も半分亭を取り巻く事情も様々ながら、江ノ島やねこもりさんという仕事への思いや多くの人に支えられ人生を精一杯生きてゆく姿、紆余曲折はあってもそれが受け継がれ、百年前の約束が果たされてゆくその結末には強く心に響くものがありました。

密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク

密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク

 

第一次世界大戦後、極秘で設置された保安局六課でスパイとして国内の防諜活動を行っていた手嶋。ある事件をきっかけに目を付けた陸軍の武器密売疑惑の潜入捜査でカフェで働く落ちぶれた華族の令嬢・悠木志枝と出会うスパイアクション・サスペンス。手嶋が追う武器密売疑惑の鍵を握る少女・志枝が持つ特殊な力。そして手嶋の前に立ちはだかる旧知の陸軍士官・高柳。関東大震災直前の二転三転する状況で陰謀の核心がどこにあるのか駆け引きしつつ、その阻止と彼女を救うために奔走する展開はテンポも良く、余韻の残る結末がとても印象的な物語でした。

麻布ハレー

麻布ハレー

 

 76年ごとに地球へ接近するハレー彗星。1910年に天文台で出会った不思議で美しい女性・晴海と、売れない小説家志望の国善。ハレー彗星の出現とともに恋が始まる物語。どんどん天文にのめり込んでゆく国善の下宿先の子供・栄。一方で国善の作家としてのありように葛藤する姿や、彼への想いは感じるのに晴海との縮まりそうで縮まらないもどかしい距離感はとても切なくて、ハレー彗星と共に明かされる真実と交わされた約束がプロローグに繋がり果たされる結末は、振り返ると出版社や著者さんらしさを感じられる切なくも素敵な物語だと思えました。

4月に読んだ本 #読書メーターより

4月も額面上の数字は91冊となっていますが、今回もコミックが多分に含まれていて書籍は57冊ということで平常運転な感じの一ヶ月でした。例によってコミックも含めると余裕でブログの文字数制限を超えてしまうので書籍のみの表示です。新作も続刊も収穫が多くて読んでいて楽しい作品が多かった一ヶ月でした。

 

4月の読書メーター
読んだ本の数:91
読んだページ数:23834
ナイス数:6017

まるで人だな、ルーシー2 (角川スニーカー文庫)まるで人だな、ルーシー2 (角川スニーカー文庫)感想
スクランブルの力を使わないと決めた乃音が出会った美術部員・鶴見凛。世間から評価されない彼女の絵に欠落したはずの感情を想起したことで、彼女に興味を持つようになってゆく第二弾。感情が欠落しているがゆえに無自覚な美少女ハンターと化した乃音が重ねる不幸な誤解と、危うい均衡の上に成立していたそれらが迎えた必然の結末には何とも切ない気持ちになりましたが、一方で複雑な想いが錯綜しながらもそれだけでは終わらない辺りに本作らしさが滲み出ていると思いました。この物語が果たしてどこに向かうのか、続刊出たらまた読んでみたいです。
読了日:04月30日 著者:零真似
緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)感想
かつての栄光を失い虚栄と退廃に堕ちた東ローマ帝国。国の危機を憂う生真面目な騎士ベリスが、型破りな書記官プロックスと運命的な出会いを果たす戦記ファンタジー。ブロックスとの邂逅によって窮地を脱し、次期皇帝と目されるユスティンの元で頭角を現してゆくベリス。シリアスな展開続きでも脇を固めるキャラたちがよく動いて、その力が高く評価されることになったベリスとブロックスが、一方で皇妃となったテオドラと相容れない確執もあったりで面白かったです。それがいろいろな形で影響しそうな複雑な関係も絡めた今後の展開に期待大ですね。
読了日:04月29日 著者:高橋 祐一
この素晴らしい世界に祝福を!11 大魔法使いの妹 (角川スニーカー文庫)この素晴らしい世界に祝福を!11 大魔法使いの妹 (角川スニーカー文庫)感想
無事アイリスの護衛任務をやり遂げ、王宮でぐだぐだし始めたカズマ。見かねた王女の側近に追い出されて屋敷に戻ってみると、めぐみんの妹・こめっこが訪ねてくる第十一弾。相変わらずのクズっぷりをダグネスの説得で改心しかかったと思ったら、あっさり前言を翻すカズマさん。しかも戻ってきてからのカズマとアクアたちのやりとりが相変わらず過ぎて苦笑い。ちゃっかりこめっこも恐ろしい子ですが、紅魔族の黒歴史が次々と明らかになってゆきますねw 魔王の娘も関わってきそうですが、ダクネスもそろそろ何か動きありそうかな。続巻も楽しみです。
読了日:04月28日 著者:暁 なつめ
カカノムモノ (新潮文庫)カカノムモノ (新潮文庫)感想
悪夢を見続けるOL、穢れを内に抱える大学生、兄夫婦の子供を預かる花屋。「カカノムモノ」謎の美貌の青年・浪崎碧が、時に人を追い詰めてまで心の闇を暴き解決してゆく物語。昏い想いが育つことで生み出される大禍津日神と、一族の事情から人として生きてゆくためにそれを食らわねばならない碧の宿命。訳ありそうなカメラマン・桐島とともに闇を抱えた人を探し出して穢れを払うシリアスな過程には、ごくありふれたままらない日常の積み重ねがあって、宿業を抱えた碧を取り巻く事情がどのように変わってゆくのか続刊に期待したい新シリーズですね。
読了日:04月28日 著者:浅葉 なつ
最強魔法師の隠遁計画2 (HJ文庫)最強魔法師の隠遁計画2 (HJ文庫)感想
軍部の思惑で外界の課外授業で魔物を狩ることになった魔法学院の生徒たち。アルスがそのフォローに奔走し事態を収集する一方で、テスフィアの親友・アリスの過去も明らかになってゆく第二弾。学内の順位とはまた別物の外界での課外授業。そこで暴走するのがフォローすべき上級生たちだったのが何ともアレですが、それも予想済で実力者のアルスとロキが控えていてしっかり救う万全の体制w でもフィアもアリスも教師と生徒の関係になっていて人間関係的にはなかなか進展しないですね(苦笑)まずはアリスの因縁ということで、変化のきっかけを期待。
読了日:04月27日 著者:イズシロ
あした世界が、 (小学館文庫)あした世界が、 (小学館文庫)感想
音楽会社に勤める吉山朗美と、社長に契約解除され怒り狂う同級生のスーパースター・絹川空哉。十年前の高校時代にタイムスリップした朗美が当時の心残りをやり直す物語。極度のあがり症を抱える冴えない女子高生だった朗美。空哉と蓮に急接近していく一方で、すれ違い続けていた父との関係。無難に生きるしかなかった高校時代の人間関係も十年後の自分には大したことには思えなくて、だからといってままならないこともたくさんあって。それでも逃げずに困難に向き合った朗美の決断が、当時も今も変えてゆく結末は清々しい読後感で面白かったです。
読了日:04月27日 著者:柴崎 竜人
トリア・ルーセントが人間になるまで (ファミ通文庫)トリア・ルーセントが人間になるまで (ファミ通文庫)感想
病の父王を治す秘薬を手に入れるため、兄の特命でサルバドールを訪れた第二王子のランス。自らを薬と名乗る美少女トリアと護衛ロサと共に王都マキシムを目指すファンタジー。浮世離れしたトリアに戸惑いながらも共に旅するうちに惹かれてゆくランス。徐々に明らかになってゆく「ルーセント」の特異性と過酷な運命。宿命と自覚してゆく人間らしい想いに心揺れるトリアと、何とか救おうと奔走するランスに王家を巡る秘密も絡む展開にはハラハラさせられましたが、紆余曲折の末に迎えた二人のこれからを予感させる初々しい結末はなかなか良かったです。
読了日:04月27日 著者:三田 千恵
覇剣の皇姫アルティーナXII (ファミ通文庫)覇剣の皇姫アルティーナXII (ファミ通文庫)感想
ラトレイユによる謀殺を逃れ帝都で暗躍していたレジスが、戦死通知に激怒して軍を率いて帝都に現れたアルティーナとついに再会。新皇帝に即位したラトレイユにより南方戦線へと派兵される第十二弾。レジスの機転によって内戦勃発の危機をからくも切り抜けたアルティーナに下された意外な辞令。方針を転換せざるを得なくなり、戦術の変革期で先を見据えた駆け引きが繰り広げられる難しい状況。そんな中でも修羅場をくぐり抜けてきたレジスの卓越した見識が凄まじいですね。体制の再構築も始まって、今後どのように変わってゆくのか続巻が楽しみです。
読了日:04月26日 著者:むらさき ゆきや
Re:ゼロから始める異世界生活12 (MF文庫J)Re:ゼロから始める異世界生活12 (MF文庫J)感想
四度目の機会を得た『聖域』で『嫉妬の魔女』との邂逅を果たしたスバル。希望に裏切られて真実に絶望しながらも諦められないスバルが魔女との再会を求めて墓所へ挑む第十二弾。リューズさんにまつわる話やロズワールの真実を知っているかのような発言、ペアトリスの過去など、短期間にループを繰り返した上にいろいろあり過ぎて、何を信じたらいいのかわからなくなってゆく展開でしたけど、やっぱり魔女なんだなあと思わされたエキドナの持ちかけた契約に加えて魔女たちの集結もあったりで、続巻でいろいろな話がもう少し整理されることも期待です。
読了日:04月26日 著者:長月 達平
ちどり亭にようこそ2 ~夏の終わりのおくりもの~ (メディアワークス文庫)ちどり亭にようこそ2 ~夏の終わりのおくりもの~ (メディアワークス文庫)感想
花柚が風邪で寝込んでしまって店に手伝いが来ることになり、再び結婚に向け動き出した花柚と永谷の関係もどうも一筋縄にはいかない第二弾。結婚の準備を進める二人にはお互いの家の事情があり、花柚が風邪で寝込んだことで明らかになった「ちどり亭」の不透明な今後。総一郎と花柚も言葉足らずですれ違ったり、周囲の人間関係も少しずつ変わってゆきますが、そのあるべき形に収まった結末に意外性はなかったものの、作中に出てくる美味しそうな料理の描写や、登場人物らしさがよく出た繊細な心理描写の積み重ねがとても自分好みで素敵な物語でした。
読了日:04月25日 著者:十三 湊
終電の神様 (実業之日本社文庫)終電の神様 (実業之日本社文庫)感想
父危篤の報せに病院へ急ぐ会社員、納期が迫ったエンジニア、背後から痴漢の手が忍び寄る美人...。それぞれの場所へ向かう人々を乗せた夜の満員電車が事故で運転を見合わせて、それが転機に繋がってゆく物語。たまたま深夜の満員電車に居合わせたことで同じ時間を共有した人々のエピソードが綴られる連作短編集で、積み重ねられていった思いだったり、秘密にしていた意外な一面だったり、決断を胸に秘めての乗車だったり、それぞれが抱えていたほろ苦い思いやその決断が良かったと思える結末に繋がっていて、なかなか素敵な物語になっていました。
読了日:04月25日 著者:阿川大樹
彼女の色に届くまで彼女の色に届くまで感想
画廊の息子で幼い頃から才能を過信し画家を目指している緑川礼。しかしいつの間にか冴えない高校生活を送っていた礼が、無口で謎めいた同学年の美少女・千坂桜と出会うアートミステリ。礼が衝撃を受けた原石のような彼女の絵の才能。その推理で礼の窮地を救ってみせる桜の意外な一面と、共に過ごすようになってゆく日々。圧倒的な才能を前に平凡な自分を突きつけられる葛藤と少しの打算、生活力皆無な桜が気になって飼育係として世話を焼いてしまう礼の複雑な想いが悩ましいですが、それでも不器用な二人らしい結末はとても素敵なものに思えました。
読了日:04月24日 著者:似鳥 鶏
放課後図書室 (スターツ出版文庫)放課後図書室 (スターツ出版文庫)感想
高2になり掴みどころのない早瀬と一緒に図書委員になった真面目でおとなしい果歩。二人きりの放課後の図書室で再び動き始める恋の物語。実は中学時代に付き合いかけたものの、言葉すら交わしたことがないまま自然消滅してしまった二人。気になりながらも不器用なやりとりしかできなかったり第三者の言動が気になったり、自分の思うことを伝えられない自信のなさがとてももどかしかったですが、実際には意外とこうなりがちですよね。そんな二人が改めてお互い勇気を出して一歩を踏み出し積み重ねられてゆく想いが、繊細に丁寧に描かれていました。
読了日:04月24日 著者:麻沢奏
だいじな本のみつけ方 (光文社文庫)だいじな本のみつけ方 (光文社文庫)感想
中学生の野々香が放課後の校舎でまだ売られていないはずの大好きな作家の新刊をみつけ、同級生たちとともにその持ち主を探し始めるライトミステリ。読みやすい平易な文章で書いてあって、基本的には若い子向けの小説なのかなと思いましたが、スタンスは違うけれど本好きな同級生たちと時折衝突したりもしながら協力して身の回りの本絡みの謎や問題に挑む展開は、好きな本のことに積極的に関わってゆく姿勢が垣間見えて読んでいてとても気持ち良かったです。何となく本を好きになること、本を読むことについて改めていろいろ感じることがありました。
読了日:04月23日 著者:大崎 梢
ウォルテニア戦記VI (HJ NOVELS)ウォルテニア戦記VI (HJ NOVELS)感想
男爵としてウォルテニア半島を与えられた御子柴亮真が横領するザルツベルグ伯爵の腹を探りつつ、魔物だらけで海賊も根城にする半島の掌握に動き出す第六巻。購入した奴隷の少年少女たちを鍛えつつ、法術を学ばせて土木工事に応用するあたりは人手不足解消に繋げてますね(苦笑)伯爵との関係や他国の動きも気になりますが、海賊の始末も終わってここから半島を発展させるためにも、もう少し内政任せられる人材が欲しいところですかね。だんだん面白くなってきていますが、黒エルフの処遇と別行動してる飛鳥も気になるので早めに次巻読みたいです。
読了日:04月23日 著者:保利亮太
ユリア・カエサルの決断 1 ガリア戦記 (オーバーラップ文庫)ユリア・カエサルの決断 1 ガリア戦記 (オーバーラップ文庫)感想
ローマ好きの高校生・糸原聖也が月の女神・ディアナに古代ローマそっくりの異世界へと転送され、ユリアという名の異世界のカエサルを支える異世界ファンタジー。カエサルクラッススキケロも女の子という近似ローマ世界で、女の子だからこその展開もあったりするわけですが、ユリアが女好きなのは変わらないんですね(苦笑)幼馴染も特異な存在だけど主人公自身にもいろいろ因縁がありそうで、今回は登場した主要人物や近似古代ローマの世界観説明もあったりしてテンポにはやや難がありましたけど、これから動きも多くなるでしょうし今後に期待。
読了日:04月22日 著者:遠藤遼
エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 6 (MF文庫J)エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 6 (MF文庫J)感想
雷鳥失脚で氷室義塾は実質的に解体、規格外十番は世界列強に売られ散り散りに。ジンがクイーンを狩り各国と同盟を結ぶ一方で、ヘキサの実験施設や非合法武装組織を潰して回る謎のテロリストが出現する第六弾。何というか状況の激変でヘキサの非人道的扱いが加速していて、規格外十番もまたそれぞれ過酷な状況に置かれていたわけですけど、二つの新しい軸が生まれつつある転機を迎えて、絶望的な状況から再集結する仲間たちという熱い展開があって、前巻の絶望感があるからこそ今後に期待しちゃいますよ、これは。ここから始まる第二部に期待大です。
読了日:04月21日 著者:東 龍乃助
セブンキャストのひきこもり魔術王4 (ファンタジア文庫)セブンキャストのひきこもり魔術王4 (ファンタジア文庫)感想
デュセルが毎日遊びに来て風前の灯火となったブランの快適ひきこもり生活。『七詠唱』を乗っ取ったデュセルが、思いがけずブランの幼馴染・副会長の知られざる秘密と十年前の魔術実験の真相に近づいてしまう第四弾。ぼっちが長過ぎて適度な距離感が分かってない感じのデュセルには苦笑いでしたけど、これまでブランに執拗に絡んでいた幼馴染・副会長の思わぬ事情には驚かされましたね。十年前の実験にも繋がっていた一連の騒動は一気に解決とはいかなかったものの、笑顔で終わることができた今回の結末は良かったなと思えるものでした。続巻も期待。
読了日:04月21日 著者:岬 かつみ
豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい2 (ファンタジア文庫)豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい2 (ファンタジア文庫)感想
傭兵捕縛によって悪評からうって変わり一目置かれはじめたスロウ。王室から守護騎士選定試練の参加要請があり、アリシアと共に選定試練へ向かうことになる第二弾。今回は元婚約者のアリシア回。チャンスを伺いつつもスロウと話す機会を活かせなくてイライラする彼女でしたけど、何だかんだでスロウも気にかけているし、そんな彼に二度もピンチを救われたら自覚もしちゃいますよね(苦笑)スロウが知っている展開といろいろと変わりつつあるようですけど、出番が少ないなりにいろいろ重要な役割があったシャーロットメインの展開も今後期待してます。
読了日:04月20日 著者:合田拍子
ロクでなし魔術講師と追想日誌2 (ファンタジア文庫)ロクでなし魔術講師と追想日誌2 (ファンタジア文庫)感想
教授の実験に付き合わされたり、システィが罠で記憶喪失に陥ったり、アルベルトがグレンの裏切り疑惑を調査したり、グレンの過去話な短編集第二弾。この学院の教師陣は名門校のはずなのにこんなのしかいないの?と思ってしまうような濃いメンツで、バイトに初挑戦のリィエルとか儚げな雰囲気で男子生徒に人気急上昇したりなシスティとか、いろいろ面白かったですがやはりオチは相変わらずでした(苦笑)幼き日のグレンによる「愚者の世界」誕生秘話と、そこでの運命的な出会いが今に繋がっていて、彼女は是非本編にも登場を期待したいところですね。
読了日:04月20日 著者:羊太郎
ファイナルファンタジーXIV 光のお父さんファイナルファンタジーXIV 光のお父さん感想
今まですれ違い続けてきた父が癌で胃を全摘出したことをきっかけに、もう一度やり直したいと考えた息子がオンラインゲームのファイナルファンタジーXIVに父を誘い、正体を隠して父と共に冒険に出るブログ連載の書籍化。齢60を超えるお父さんの光の戦士計画。仲間の協力も得ながら密かにゲームの中での父の成長を見守る展開は、天然の父らしい姿やこれまで知らなかった一面を知ってゆく息子の反応が興味深ったですね。思わぬ展開やほのぼのした場面と、一緒にミッションを乗り越える緊迫感のあるチャレンジもメリハリが効いていて楽しめました。
読了日:04月19日 著者:マイディー
青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。 (ガガガ文庫)青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。 (ガガガ文庫)感想
勝ち組を呪う負け犬高校生の狭山明人と冷血美少女・小野寺薫。放課後に呼び出しを受けた二人が中等部の少女・藤崎小夜子の謎のボランティア活動に巻き込まれてゆく痛青春ラブコメ。藤崎の電波発言にドン引きしつつもいがみ合う二人が、やる気がないなりにメンヘラハンサムやヒキニートといった濃いキャラの相談者たちが抱える問題解決に動いて仲間が増えてゆく展開でしたが、負け犬を自負しひねくれた言動ばかりの狭山だからこそ、誰も気づかなった真意に気づいてしまう皮肉な結末は、続巻があったらまた読んでみたいと思わせるものがありました。
読了日:04月19日 著者:境田 吉孝
月とライカと吸血姫 2 (ガガガ文庫)月とライカと吸血姫 2 (ガガガ文庫)感想
吸血鬼の少女イリナの帰還後、晴れて念願の宇宙飛行士候補生に復帰したレフ。彼女を監視する任務から解かれその様子を気にかけつつも「人類史上初」を賭けた宇宙飛行士選抜試験に挑む第二弾。過酷な選抜試験でもらしさを失わないままのレフと、すれ違いが続くイリナの周囲に漂う不穏な空気。自分の気持ちに素直になれない不器用な二人の想いは切なくて、消化しきれない複雑な葛藤もままならなくて、だからこそ違和感だらけの土壇場で革命を起こしてみせた勇気と、それがもたらした奇跡がとても素敵なものに思えました。続刊また読めたらいいですね。
読了日:04月18日 著者:牧野 圭祐
天空の翼 地上の星 (講談社X文庫)天空の翼 地上の星 (講談社X文庫)感想
徐の王太子・寿白は革命の混乱のさなかに王の証・王玉を得たが庚に取って代わられ、十年後に飛牙と名乗って再び国を訪れる中華風ファンタジー。飛牙から玉を取り戻すべく現れた天令の那兪とともに訪れたかつての王都。天から見放され荒れる庚の治政と、寿白時代の飛牙を知る宦官・裏雲や王太后が抱えていた秘密。明かされた事情と混乱の最中で上手く立ち回った飛牙が、どうにかこうにかうまく取りまとめたなあと思えた結末でしたけど、裏雲との今後も気になりますし、この感じだと天下四国を旅する感じになるんですかね。続巻も楽しみにしています。
読了日:04月18日 著者:中村 ふみ,六七質
ゲームセットにはまだ早い (幻冬舎文庫)ゲームセットにはまだ早い (幻冬舎文庫)感想
様々な事情で集まってきたはみ出し者のメンバーたちが、ど田舎のスーパーなどで働きながら、一緒にクラブチームの野球で社会人全国制覇を目指す物語。かつての過去の栄光だったり、自分の夢と家族との間の葛藤だったり、なかなかうまく行かずに拗らせてしまっている想いにどう向き合って、難しい環境の中でも好きなことをやり抜くのか。社会人野球を扱ったという点でも興味深く、分かりやすくプロを目指すことだけが野球をやる理由ではなくて、不器用にぶつかり合いながらチームとして一つにまとまってゆく彼らの奮闘は心に響くものがありました。
読了日:04月17日 著者:須賀 しのぶ
図書室のピーナッツ図書室のピーナッツ感想
資格を持たない“なんちゃって司書”として直原高校の図書室で働く詩織。契約更新してもらえるのか不安に思いながらも、生徒たちから難問珍問が次々と持ちこまれる第二弾。学校司書さんの不安定な雇用形態や待遇の問題などは最近話題にもなりましたが、それはそれとして周囲に相談しながら、生徒と一緒に前向きに取り組んでいこうとする詩織さんの姿勢は好感。仕事で毎日大量の書誌情報を検索しているので、作中の調べ方の記述には深く頷くところがありました。変わりつつある詩織さんと図書室、素敵な問いかけがあった恋の予感が今後も楽しみです。
読了日:04月16日 著者:竹内 真
霊感検定 春にして君を離れ (講談社文庫)霊感検定 春にして君を離れ (講談社文庫)感想
最愛の兄を突然失い悲嘆に暮れる弟の携帯に届く兄からのあり得ない着信。霊が視えないのに心霊相談を持ち込む母親の苦悩など、人知れず霊に悩む者を心霊現象研究会が救う第三弾。馬渡先生は相変わらずでしたけど、さりげなく人を助けようとする夏目や空だけでなく、登場人物たちの相手を思いやるさりげない優しさが物語のベースになっているのがとてもいいですよね。修司と臣の空をめぐる葛藤とギリギリの攻防にはついニヤニヤしてしまいました。夏目の容赦ない突っ込みも(苦笑)挿入されていた短編もとても良かったですし、続巻も期待しています。
読了日:04月15日 著者:織守 きょうや
落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)12 (GA文庫)落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)12 (GA文庫)感想
ルナアイズの宣言によってクレーデルラントとの戦争は、代表戦によって雌雄を決することに。代表メンバーに選ばれたものの自分の力不足を痛感するステラが、自らの限界を超えるべく世界最強の剣士《比翼》のエーデルワイスに挑戦する第十二弾。力不足だからと言っていきなり最強に挑むとか発想が極端過ぎるだろとか思ったら、エーデルワイスの意外なギャップにビックリしました(苦笑)もはや職人芸的な手法で強さを極めてゆく一輝と対照的なステラの限界突破でしたけど、さりげなく出場メンバーも因縁も明らかになったりで、代表戦が楽しみですね。
読了日:04月15日 著者:海空 りく
最弱無敗の神装機竜《バハムート》12 (GA文庫)最弱無敗の神装機竜《バハムート》12 (GA文庫)感想
ソフィスの離反によって難局を迎えた遺跡攻略。束の間の待機を余儀なくされ、七日後に迫る学園の聖夜祭準備に盛り上がるルクスたち。一方で残された遺跡『月』に現れた不穏な影が策動する第十二弾。一般学生には危機が知らされぬまま、聖夜祭の準備で絆を深めるルクスと少女たち。一方でなかなか埋められないソフィスとの距離。ひとつひとつのエピソードに終盤に向けて物語が整理され、ひとつの方向に向かってゆくのを改めて感じた今回でしたが、ルクスに思いを寄せる少女たちに対する答えがどのようなものになるのかもまたちょっと気になりました。
読了日:04月14日 著者:明月 千里
レーゼンシア帝国繁栄紀 ~通りすがりの賢帝~ (GA文庫)レーゼンシア帝国繁栄紀 ~通りすがりの賢帝~ (GA文庫)感想
謎のアルバイト試験に合格し少女ユーリスと秘密の契約を交わした苦学生シュウが、まさかのレーゼンシア神聖帝国の皇帝に祭り上げられてしまう国家掌握ファンタジー。破格報酬のアルバイトは皇女の身代わりとしての皇帝就任。メイド姿のユーリスに振り回されるシュウの前に現れるお后候補たち。今回は一冊まるごと物語のプロローグといった趣でしたけど、国の難題を次々と解決するシュウの見事な采配や謎めいたユーリスの思惑、エピソードを積み重ねながら深めてゆく魅力的なヒロインたちとの関係が今後楽しみな新シリーズですね。これは続巻に期待。
読了日:04月14日 著者:七条 剛
我が驍勇にふるえよ天地4 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)我が驍勇にふるえよ天地4 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)感想
宿敵アドモフ帝国の軍勢を退けたレオナートたちのもとに吸血皇子の「伝説伝承」に魅せられてさらに人材が集い、ついに故郷・アレクシス州リント奪還作戦が始動する第四弾。いかにもらしい感じだったレオナートの筋金入りの朴念仁ぶりには苦笑いしましたが、ベタだなあとは思いつつ人材が集まってひとつの流れになり機が熟してゆく展開がいいですね。決戦では天才的な頭脳で意外な人物が戦局をリードしましたが、お互いの献策が激突するギリギリの駆け引きが連続した結果、思ってもみなかった形で迎えた新展開が今後どうなるのか、次巻が楽しみです。
読了日:04月14日 著者:あわむら 赤光
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア8 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア8 (GA文庫)感想
人造迷宮撤退での仲間の死にさえ嘲笑を向け派閥から孤立してしまうベート。しかし突如アマゾネスの少女レナとなし崩し的に同居生活が始まってしまい、己の過去と向き合うことになる第八弾。不器用な物言いしかできずに仲間からも誤解され、一時的にファミリアを離脱するベート。そんな彼の過去を思い出させる少女・レナとの出会い。巻き込まれてゆく暗躍する死神との眷属との闘争の中で爆発した本当の力は凄まじいものでしたが、積み重ねられたエピソードに垣間見えるその本性と、思ってもみなかったまさかの結末にはどこか救われる思いでした。
読了日:04月13日 著者:大森 藤ノ
贋作師と声なき依頼-京都寺町三条のホームズ(7) (双葉文庫)贋作師と声なき依頼-京都寺町三条のホームズ(7) (双葉文庫)感想
高校3年生になり大学受験も意識しだした葵。不器用ながらもゆっくりとお互いの距離を縮めていく葵と清貴の前に敵対視する贋作師・円生が再び現れる第七弾。関係が変わっても地に足付いた頑張り屋さんの葵と彼女にベタ惚れの清貴。いろいろあっても着実に関係を育んでいた二人の関係が思わぬ事態を迎えた時は愕然としましたが、周囲に温かく見守られつつそれを乗り越えた二人が一緒に対峙したからこそ、あの結末を迎えられたんですよね。あまりにもキレイにまとまっていて一瞬心配しましたが、ちゃんと第二部もあるそうなので楽しみに待っています。
読了日:04月13日 著者:望月 麻衣
ホームズと歩く京都-京都寺町三条のホームズ(6.5 ) (双葉文庫)ホームズと歩く京都-京都寺町三条のホームズ(6.5 ) (双葉文庫)感想
ヤマウチシズさんのイラスト付きの登場人物紹介&相関図、清貴による舞台案内、葵の誕生日パーティーなど描き下ろし中編や清貴の掌編、4コマや質問コーナーまである公式読本。中編や掌編で葵にベタ惚れ全開状態を隠さない清貴と、それを目の当たりにする周囲の反応には苦笑いでしたが、清貴視点で作中シーンを振り返りがらの舞台案内でもこんなこと思ってたんだとか正直過ぎる解説コメントが楽しかったです。これを読んでいると舞台となった場所を思いながら巡ってみたくなりますね。7巻も同時刊行ですが、これは巻数通りに読んだ方がよさげです。
読了日:04月12日 著者:望月 麻衣
カブキブ! 6 (角川文庫)カブキブ! 6 (角川文庫)感想
文化祭の公演を「毛抜」に選定したカブキ部一同。いよいよ本格的な練習を始めるものの、因縁の演劇部と再び公演場所を奪い合う勝負に発展する第六弾。芳先輩のこともあって未だ遺恨が残る演劇部との関係。不慮の事態から演劇部と観客動員数で勝負する事態に、クロとトンボの信頼関係ゆえのすれ違いもあったりでなかなか大変な状況でしたけど、助けてくれる周囲の人たちの存在もあって光明も見えかけていたのに、最後の事件には不安しかないですね...でもいろいろ頑張っていた遠見先生と生島さんコンビがいい味出していました。早めの続巻を期待。
読了日:04月12日 著者:榎田 ユウリ
東京すみっこごはん 親子丼に愛を込めて (光文社文庫)東京すみっこごはん 親子丼に愛を込めて (光文社文庫)感想
恋愛や結婚をコスパが悪いと考えるOLや誰にも言えぬ想いを抱える高校生、結婚した相手の娘との関係に悩むキャリアウーマンがすみっこごはんを訪れ、柿本と楓親子の出会いも綴られる第三弾。いつの間にか御利益がある存在になっているすみっこごはんですが、訪れた人たちが一緒に料理したり常連さんたちにお話を聞いたりしてもらううちに、自分なりに答えを見出してゆくお話はいいですね。常連さんたちの人間関係も少しずつ変わってきていますし、何より楓親子に出会った若き日の柿本の不器用な感じがとても良かったです。また続巻に期待してます。
読了日:04月12日 著者:成田 名璃子
屋上のテロリスト (光文社文庫)屋上のテロリスト (光文社文庫)感想
ポツダム宣言を受諾せず東西に分断された日本。七十数年後、高校の屋上で出会った不思議な少女・沙希からアルバイトに誘われた彰人が、彼女の壮大なテロ計画に巻き込まれてゆく物語。両親も亡くなって目的もなく死に魅入られていた彰人。彼に協力を求めた沙希が、思惑ある権力者たちをも巻き込んで邁進する真の目的。緊張が高まってゆく状況で大人たちの間を動き回り、ギリギリの駆け引きが続きながらも切り抜ける覚悟を見せた沙希と、彼女と一緒に最後まで走り抜けた彰人が最後に迎えた結末はとても素敵なものだったと思いました。面白かったです。
読了日:04月11日 著者:知念 実希人
横浜元町コレクターズ・カフェ (角川文庫)横浜元町コレクターズ・カフェ (角川文庫)感想
将来の夢が絵本作家ということ以外は平凡な大学生の大崎結人。就職活動を前に夢を諦めるため生まれ育った横浜元町で思い出の場所にあった喫茶店「ブラックバード」を訪れる物語。絵本の充実したレストランの場所にあった喫茶店のミステリアスな店主・佳野。どうにも立ち位置が難しかった結人のありようや佳野が抱えている悩みと、お店の客が抱える謎を住野が説いてゆく展開をどうやって絡めてゆくのかという意味では、設定をうまく活かしきれなかったかなと感じましたが、最後の謎を解き明かしたことでたどり着いた結末は悪くなかったと思いました。
読了日:04月11日 著者:柳瀬 みちる
大正箱娘 怪人カシオペイヤ (講談社タイガ)大正箱娘 怪人カシオペイヤ (講談社タイガ)感想
万病に効くとされる「箱薬」が巷で流行り、新米新聞記者の英田紺は箱娘・うららと調査に乗り出す一方、病に冒された伯爵の館には怪人・カシオペイヤから予告状が届く第二弾。潜入しようとした新薬を披露する伯爵家のパーティーで再会する時村燕也。何かしら事件があるたびに遭遇する、意外と友情に厚い一面を見せた彼と紺の奇妙な関係もまた今後のポイントになりそうですね。帝都のありように大きく関わっていそうな、依然として謎めいたままのうららの一端が垣間見えましたが、それでいて紺を気にかけるそのアンバランスなありようが良かったです。
読了日:04月11日 著者:紅玉 いづき
シマイチ古道具商: 春夏冬(あきない)人情ものがたり (新潮文庫nex)シマイチ古道具商: 春夏冬(あきない)人情ものがたり (新潮文庫nex)感想
生活を立て直すため大阪・堺市にある夫の実家「島市古道具商」へ引越し、義父と同居をすることになった透子一家。古い町家で紡がれるモノと想いの人情物語。両親を早くに亡くして社会経験にも乏しく、家族を取り巻く現状がこのままでいいのか思い悩む透子。お店を通じて義父やお客と一緒に古道具や人間関係に関わるようになったり、子供たちや夫ともなかなか上手くいかない状況になりかけたりな彼女は色々と大変でしたけど、多くの人に見守られていたことに気付いた彼女が、本当に大切なもののために周囲と協力して奔走する姿は強く心に響きました。
読了日:04月10日 著者:蓮見 恭子
いでおろーぐ!6 (電撃文庫)いでおろーぐ!6 (電撃文庫)感想
領家の呼びかけによりGWの遊園地に乗り込んだ反恋愛主義青年同盟部の面々。高砂による女児の観察日記だったり、女児の策略により高砂は未来を見せられ、異世界転生の物語まで書き出す短編集第六弾。トラウマな黒歴史を抱えていたり、怪しい挙動も散見される部員たちでしたけど、宮前会長の鋭いツッコミが全てですね(苦笑)高砂視点は客観性を欠いて実態はあんなだし、某特殊研究家とか業が深過ぎて心配になりましたw 部員が欲望のままに書いたリレー小説をうまくまとめたはずの高砂は報われなかったけど、女児も呆れる二人の今後も楽しみです。
読了日:04月09日 著者:椎田 十三
ゼロから始める魔法の書IX -ゼロの傭兵〈上〉- (電撃文庫)ゼロから始める魔法の書IX -ゼロの傭兵〈上〉- (電撃文庫)感想
北のノックス大聖堂へとたどり着いたゼロと教会騎士団一行たちが知る驚愕の真実。ゼロたちを快く思わない近衛騎士隊長のオルルクスが不穏な動きを見せる中、魔女であることを思い悩むゼロがひとつの決断をする第七弾。驚愕の真実に目的を見失う教会騎士団一行。神父たちがゼロたちの元に合流する状況に、ゼロと傭兵に突きつけられる非情な選択。共通の敵あってこその今の立ち位置はよくよく自覚しているところで、でも二人はうまくやっていけると思い込んでただけに、その決断はわかるけどちょっとなあ...傭兵の諦めの悪さに期待ですね、これは。
読了日:04月09日 著者:虎走 かける
読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)感想
期待もない新学年のホームルーム。高校生・細野亮の前に愛してやまない物語の中にいた「トキコ」そのままの少女・柊時子が現れる出会うはずがなかった読者と主人公の物語。見れば見るほどそのままの時子との出会い。一緒に過ごしてゆくうちに想いが少しずつ積もってゆく一方で、自分の中で湧き上がってくる違和感。主人公の周辺を切り取ったようなクローズな世界観で、あまりにも不器用な二人の距離感にもどかしくもなりましたが、物語をきっかけに知り合った二人が物語で心を通わせて、これからの二人の世界の広がりを予感させる素敵な物語でした。
読了日:04月08日 著者:岬 鷺宮
俺を好きなのはお前だけかよ(5) (電撃文庫)俺を好きなのはお前だけかよ(5) (電撃文庫)感想
因縁のあの場所・高校野球地区大会決勝戦へと移り、ジョーロとホースが決選投票という名のパンジー争奪戦に挑む第五弾。当て馬にしか見えないホースとの勝負自体は困難を極めても結末は残当というか。むしろ一見うまくいってないようにも思えるプロセスの積み重ねをひとつの形にまとめ上げてゆく手腕が素晴らしいですね。最後にそういう回収の仕方してくるかみたいな。どんだけ好きなんだよ(苦笑)ジョーロはやり方が不器用だけれど、それをみんなは分かってるしだからこそ愛される。デビュー作とは思えないクオリティですね。第二部も楽しみです。
読了日:04月08日 著者:駱駝
本を守ろうとする猫の話本を守ろうとする猫の話感想
二人で暮らしていた古書店を営む祖父が突然亡くなり、実感が湧かないままの高校生・夏木林太郎。そんな彼の元に人間の言葉を話すトラネコが現れ本を守るために力を貸して欲しいと頼まれる物語。最初はトラネコと一緒に、そして学級委員長の沙夜も加えて立ち向かう本を救うための冒険。それぞれのエピソードはわりとシンプルな構成を取りつつも、今の本を取り巻くとても難しい状況の本質に鋭く切り込んだなかなか奥が深い内容で、戸惑いながらもきちんと向き合うようになってゆく林太郎の熱い想いに自分も少なからず感化されてしまった一冊でした。
読了日:04月07日 著者:夏川 草介
禁じられたジュリエット禁じられたジュリエット感想
ミステリ小説が退廃文学として禁書扱いな世界観の日本で、それに触れてしまった女子高生6人が囚人として収監され、看守役2名を加えた8名で更正プログラムに参加させられる本格ミステリ。プログラムを早く切り上げられるよう協力するはずだった友人8人。役割に徹するうちに急速に対立を深めてゆく描写はあまりにも過酷で、二転三転してゆく展開には驚かされ、追い詰められた参加者たちの叫びは痛切で心に響くものがありましたが、終わってみるとなぜか清々しさすら感じてしまったその読後感に著者さんの深い本格ミステリ愛を見る思いがしました。
読了日:04月07日 著者:古野 まほろ
長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)感想
長崎の女子大学に入学した東京出身の日高乙女。バイトで不採用続きの乙女がオランダ坂の外れに不思議な洋館カフェを見つけ、そこで不機嫌顔のオーナーと一緒にバイトとして働くようになる物語。東京っぽさがないとある作家の熱烈大ファンな天然の乙女と、本業が不明で雨降る夜にしか開店しない無愛想で謎めいたカフェ・オーナーの向井。長崎の美味しいものがたくさん紹介されつつ、それと少しずつ増えてゆくお客さんとのエピソードや積み重なってゆく向井への想いがとてもいい感じに組み合わさって、不器用な二人を見守りたくなる素敵な物語でした。
読了日:04月06日 著者:江本 マシメサ
キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)感想
留年の危機に瀕するダメ学生・奈緒崎が教授から救済措置として提示された難題は「休学中の嗄井戸を大学に連れ戻せ」。引きこもりの嗄井戸と奈緒崎が謎を解決する連作短編ミステリ。映画鑑賞に没頭して家から出ない嗄井戸が安楽椅子探偵よろしく事件を見通してみせる役割で、腐れ縁で彼の家を訪れるようになった奈緒崎が動くコンビ。二人を中心とする物語は一方で彼ら二人の不器用な友情の物語でもあり、キッパリサッパリなヒロイン・束ちゃんもいい感じに効いてテンポも良く、なかなか面白かったと思います。続編あるならまた読んでみたいですね。
読了日:04月06日 著者:斜線堂 有紀
中目黒リバーエッジハウス ワケありだらけのシェアオフィス はじまりの春 (集英社オレンジ文庫)中目黒リバーエッジハウス ワケありだらけのシェアオフィス はじまりの春 (集英社オレンジ文庫)感想
青森での田舎生活を厭いクリエイター職に憧れ上京した哲太。しかしブラック企業で限界を迎えて脱落し、人生に行き詰った彼が憧れだったクリエイティブ・ディレクターを捜し始める物語。好きな人も仕事も生きがいも一度に失った哲太が、中目黒のシェアオフィスで出会った仲間と協力し、顧客が始めたいカフェのプロデュースに挑戦する展開。一度は挫折した哲太もこれまでいろんなことに挑戦してきたことが無駄になっていなくて、仲間や顧客ときちんと向き合って頑張ろうと奔走するその思いは熱く心に響きました。続巻あるなら仲間の掘り下げも期待。
読了日:04月05日 著者:岩本 薫
おやつカフェでひとやすみ しあわせの座敷わらし (集英社オレンジ文庫)おやつカフェでひとやすみ しあわせの座敷わらし (集英社オレンジ文庫)感想
鎌倉近くの丘の上の住宅街にひっそり建つ歳の離れた三兄弟が営む古民家カフェ。「そのカフェで座敷わらしを見ると、幸せになれる」噂につられて人生で迷った人びとがお店を訪れる物語。イケメンなお兄さんたちが美味しそうなおやつを提供してくれる訳ありの古民家カフェ。祖父母の借金を返すために意に染まぬ結婚を控えていたり、辛い秘密を抱えての別居状態、リストラされて家族に打ち明けられなかったりと厳しい事情を抱える訪問客たちが、お店の座敷わらしに出会い転機を迎えてゆく優しく温かいお話でした。続巻あるようなら読んでみたいですね。
読了日:04月05日 著者:瀬王 みかる
密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク感想
第一次世界大戦後、極秘で設置された保安局六課でスパイとして国内の防諜活動を行っていた手嶋。ある事件をきっかけに目を付けた陸軍の武器密売疑惑の潜入捜査でカフェで働く落ちぶれた華族の令嬢・悠木志枝と出会うスパイアクション・サスペンス。手嶋が追う武器密売疑惑の鍵を握る少女・志枝が持つ特殊な力。そして手嶋の前に立ちはだかる旧知の陸軍士官・高柳。関東大震災直前の二転三転する状況で陰謀の核心がどこにあるのか駆け引きしつつ、その阻止と彼女を救うために奔走する展開はテンポも良く、余韻の残る結末がとても印象的な物語でした。
読了日:04月04日 著者:三雲 岳斗
麻布ハレー麻布ハレー感想
76年ごとに地球へ接近するハレー彗星。1910年に天文台で出会った不思議で美しい女性・晴海と、売れない小説家志望の国善。ハレー彗星の出現とともに恋が始まる物語。どんどん天文にのめり込んでゆく国善の下宿先の子供・栄。一方で国善の作家としてのありように葛藤する姿や、彼への想いは感じるのに晴海との縮まりそうで縮まらないもどかしい距離感はとても切なくて、ハレー彗星と共に明かされる真実と交わされた約束がプロローグに繋がり果たされる結末は、振り返ると出版社や著者さんらしさを感じられる切なくも素敵な物語だと思えました。
読了日:04月04日 著者:松久 淳,田中 渉
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶の足跡 (角川文庫)櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶の足跡 (角川文庫)感想
行き先も告げず沢さんと旅行に出かけてしまった櫻子さん。不安を抱える正太郎が担任の磯崎先生たちと共に、櫻子さんが向かったと思われる層雲峡を目指す第十一弾。磯崎先生や薔子さんとともに櫻子さんたちを探し始めた過程で謎の自殺者を巡る事件に巻き込まれてゆく今回。事件の背景もいろいろ考えさせられる内容でしたが、今の状況からして将来の櫻子さんを危ういと感じてしまう正太郎の気持ちも分かるんですけど、正太郎もどこか危ういんですよね。お互いを思いやる二人が姉妹のようで微笑ましいというか不穏な感じもあるというか。続巻も期待。
読了日:04月03日 著者:太田 紫織
江の島ねこもり食堂江の島ねこもり食堂感想
島の猫の世話をするとある江ノ島の食堂<半分亭>の隠れた仕事。代々「ねこもりさん」と呼ばれる女たちの生きたそれぞれの人生と、新しい命を結び未来を繋いでいく百年物語。猫とお客さんに助けられて続いてきたねこもりさんの半分亭。ひいおばあちゃんのすみゑ、祖母・筆、母・溶子、そして麻布。時代背景も半分亭を取り巻く事情も様々ながら、江ノ島やねこもりさんという仕事への思いや多くの人に支えられ人生を精一杯生きてゆく姿、紆余曲折はあってもそれが受け継がれ、百年前の約束が果たされてゆくその結末には強く心に響くものがありました。
読了日:04月03日 著者:名取佐和子
押しかけ軍師と獅子の戦乙女2 (HJ文庫)押しかけ軍師と獅子の戦乙女2 (HJ文庫)感想
秋の武芸大会参加中に敵国アッガザールが大侵攻を開始したという情報が飛び込み、王国の他の騎士団たちとともに黄金獅子騎士団も防衛に参加することになる第二弾。ソンブラを雇い諜報を強化したクロウ。敬愛する王子フレスにクロウへ寄せる信頼に疑問を投げかけられ逡巡するクラヴェリーナ。今回は戦略に乏しく騎士団の足並みも揃わない中で、信頼に乏しい立場からどう戦略を組み立てる難しさがよく描写されていましたが、一方で諜報強化で具体的なアプローチもできるようになって、複雑な思惑が絡む状況は依然として厳しいですが続巻が楽しみです。
読了日:04月01日 著者:在原竹広
造られしイノチとキレイなセカイ3 (HJ文庫)造られしイノチとキレイなセカイ3 (HJ文庫)感想
厄災の日を乗り切ったカリアス一家。その際に発覚したリーゼの謎の力や、アリアの記憶に残る旧文明の真相に迫るため一同は遺跡を探索することになる第三弾。リーゼの力やいろいろな謎が明らかになった今回でしたけど、彼女だけでなくそれぞれが特殊な力を持つ子揃いで保護者は国有数の実力者コンビ。ほのぼの展開は遺跡探索になっても変わらなくて、ほんとピクニック状態になってたのは苦笑い。最後に出てきた登場人物も悲しいエピソード絡みなのかと思ったら思わぬ遺産まで一緒に出てきて、何より二人の関係も変わりつつあるようで今後に期待です。
読了日:04月01日 著者:緋月 薙

読書メーター

5月の購入検討&気になるラノベほかピックアップ

3~4月は気になる本が多くて削るのに四苦八苦しましたが、5月は比較的少なめというか抑えめで。たぶんまたいろいろここから削ったり追加したりが発生するわけですが、楽しみな本が結構多いですね。新作で個人的に注目しているのはスニーカー文庫刊行の東ローマ帝国を舞台とした「緋色の玉座」、ラノベ文庫の「自殺するには向かない季節」、PHP文芸文庫から出る仲町六絵さんの「京都西陣なごみ植物店」、富士見L文庫から出る日向夏さんの「カロリーは引いてください!」、新潮文庫nexから刊行の竹宮ゆゆこさんの「おまえのすべてが燃え上がる」あたりですか。GA文庫ダンまち12巻はこれだけ5/25発売に変更になっているので注意が必要ですね。

 

コバルト文庫(4/28発売)
ブライディ家の押しかけ花婿 白川紺子/庭春樹

HJ文庫(5/1発売)
フェンリルの鎖 I うかれ猫/わざきた
最強魔法師の隠遁計画2 イズシロ/ミユキルリア

スニーカー文庫(5/1発売)
この素晴らしい世界に祝福を!11 暁なつめ/三嶋くろね
緋色の玉座 高橋祐一/岩本ゼロゴ
まるで人だな、ルーシー2 零真似/ゆきさめ

ビーンズ文庫(5/1発売)
後宮香妃物語 龍の皇太子とめぐる恋 伊藤たつき/カスカベアキラ

ラノベ文庫(5/2発売)
自殺するには向かない季節 海老名龍人/椎名優

 

 

PHP文芸文庫(5/8発売)
京都西陣なごみ植物店 仲町 六絵


ポプラ文庫ピュアフル(5/9発売)
あざみ野高校女子送球部 小瀬木麻美

宝島社文庫(5/9発売)
北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし 江本マシメサ
リケジョ探偵の謎解きラボ 喜多喜久

電撃文庫(5/10発売)
はたらく魔王さま!17 和ヶ原聡司/029
狼と香辛料 XIX Spring Log II 支倉凍砂/文倉十
終わる世界の片隅で、また君に恋をする 五十嵐雄策/ぶーた

KADOKAWA単行本(5/10発売)
小説 夜明け告げるルーのうた 三萩 せんや

文春文庫(5/10発売)
モモンガの件はおまかせを 似鳥 鶏

双葉文庫(5/11発売)
君に出会えた4%の奇跡 広瀬未衣
京都の甘味処は神様専用です 桑野和昭

講談社(5/11発売)
幸腹な百貨店 デパ地下おにぎり騒動 秋川 滝美

河出書房新社(5/11発売)
重版未定 2 川崎 昌平

GA文庫(5/15発売)
ゴブリンスレイヤー蝸牛くも/神奈月昇

富士見L文庫(5/15発売)
浅草鬼嫁日記 二 あやかし夫婦は青春を謳歌する。 友麻碧/あやとき
かくりよの宿飯 六 あやかしお宿に新米入ります。 友麻碧/Laruha
カロリーは引いてください! ~学食ガールと満腹男子~ 日向夏/時々

講談社タイガ(5/17発売)
緋紗子さんには、9つの秘密がある 清水晴木

ガガガ文庫(5/18発売)
妹さえいればいい。平坂読/カントク
やがて恋するヴィヴィ・レイン3 犬村小六/岩崎美奈子

集英社オレンジ文庫(5/19発売)
契約結婚はじめました。 白川紺子/わみず
ブラック企業に勤めております その線を越えてはならぬ 要 はる/藤ヶ咲
先生、原稿まだですか! 織川制吾/ななひめ

ファンタジア文庫(5/20発売)
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 細音啓/猫鍋蒼
追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ2 田辺屋敷/美和野らぐ
勇者のパーティで、僕だけ二軍!?2 布施瓢箪/さくらねこ

創元推理文庫(5/22発売)
ウサギの天使が呼んでいる ほしがり探偵ユリオ 青柳碧人/ミキワカコ

GA文庫(5/25発売)
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか12 大森藤ノ

MF文庫J(5/25発売)
世界の終わりの世界録10 細音啓/ふゆの春秋

ダッシュエックス文庫(5/25発売)
クロニクル・レギオン6 丈月城/BUNBUN

角川文庫(5/25発売)
遺跡発掘師は笑わない 元寇船の眠る海 桑原水菜
弁当屋さんのおもてなし 喜多みどり
わが家は祇園の拝み屋さん5 望月麻衣

メディアワークス文庫(5/25発売)
兼業作家、八乙女累は充実している 夏海公司
時をめぐる少女 天沢夏月

新潮文庫nex(5/27発売)
おまえのすべてが燃え上がる 竹宮ゆゆこ
かぜまち美術館の謎便り 森 晶麿

ファミ通文庫(5/30発売)
我が偽りの名の下に集え、星々 庄司卓/sime
佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 2 九曜/フライ

 

新潮社(5/31発売)
新任刑事 古野 まほろ

2017年3月に読んだ新作おすすめ本

 というわけで3月の新作おすすめ本です。3月は刊行点数そのものが多い時期で、予算は有限なのでいつもセレクトに苦労していますが、それでも読んだ新作はなかなか豊作で今回24点をセレクトしました。それにしても今回の電撃小説大賞は強烈ですね。全部読んだわけではありませんが、読んだ本はいずれも十分なインパクトがありました。

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

 

第23回電撃小説大賞<金賞>

 十八世紀末ロンドン。うっかり大金を得た賭博師ラザルスが仕方なく購入させられたのは、喉を焼かれて声を失った奴隷の少女・リーラ。不器用な二人が戸惑いながらも心通わせてゆく物語。師の教え通り勝たない賭博師としてこれまで生きてきたラザルスの失敗。放り出すわけにもいかず感情に乏しいリーラを教育しながら一緒に生活するようになる日々。徐々に打ち解けてゆく二人の拙い関係の変化が繊細な積み重ねで描写されていて、強奪されたリーラを奪還するため冷静に計算して最後まで完遂してみせたラザルスのありようがとても見事で心に響きました。

オリンポスの郵便ポスト (電撃文庫)

オリンポスの郵便ポスト (電撃文庫)

 

第23回電撃小説大賞<選考委員奨励賞> 

度重なる災害と内乱が続いた火星で長距離郵便配達員として働く少女・エリスが、改造人類・クロを神様がどこへでも誰にでも届けてくれるというオリンポスの郵便ポストまで届ける仕事を依頼される物語。入植時代からの生き残りのクロと、両親を探して郵便配達員を続ける少女の二人による長い旅路。その過程で多くの人に出会い、いくつもの困難に遭遇することで絆が育まれてゆき、それぞれが秘密を抱え意外な縁もあった二人が想いを通わせてゆく物語は、その真実に近づいてゆくたびに切ない気持ちにもなりましたがとても良かったですね。次回作も期待。

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

 

第23回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>

 突然見知らぬ女性に三つの質問を問いかけられた雪の日。誰も好いたことがない掛橋啓太が問いかけた大野千草と夫婦になり、平穏な彼女との生活の中で過ぎ去った過去の日々を追憶させてゆく物語。お互いの過去を知らないまま三つの質問という契約によって夫婦になった二人。引きこもりの兄と共依存関係にあった母との辛い過去。徐々に惹かれ合っているのを自覚するがゆえに、じわじわと重くのしかかってゆく三つ目の質問。それぞれが抱える壮絶な過去も二人でなら乗り越えられると思えただけに、淡々と綴られたその不器用な結末には衝撃を受けました。

 

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

 

第6回講談社ラノベ文庫新人賞<佳作> 

人々が陸地のほとんどを失い、いくつかの巨大な船に都市国家を作ってわずかな資源を争う世界。船国を行き来して荷物を運ぶスワローの少年・シエルが、無人島に流れ着いた謎の少女・ステラと巡り合うボーイミーツガール。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせないシエル。理由を明かさないまま自分を荷物として運んで欲しいと依頼するステラ。その飛行は息苦しかった彼らにとって新鮮だけれど危険の連続でもあって、たびたび衝突しすれ違った彼らが力を合わせて乗り越えようと挑んだそのとても爽やかな結末は、次回作も期待したくなるものでした。

 密かに朗読配信する高校生の前河響平と幼馴染だった卯城野こぐちが鎌倉のとある高校で偶然再会。こぐちが所属する図書部と旧図書室廃止の危機に二人で書評バトル「ビブリアファイト」に挑むスピンオフ作品。密かにラノベが大好きな響平と、引っ込み思案だけれど児童書が好きで本に関しては人が変わるこぐち。周囲もからかう不器用な二人の距離感や図書部存続を賭けての定番古典を中心とする書評バトルをベースに、ビブリア古書堂のあの人たちもアドバイス役として登場。ラノベらしいテイストをうまく組み合わせた青春小説としても面白かったです。

 しがないゲームディレクターで会社は倒産、企画も頓挫して実家に帰ることになった橋場恭也。輝かしいクリエイターの活躍を横目にふて寝して目覚めると、なぜか十年前の大学入学時に巻き戻っていた青春リメイクストーリー。落ちたはずの大学に受かっていて憧れの芸大ライフ、さらにはシェアハウスで男女四人の共同生活。とはいえ同居人はそれぞれキラリと光るものを持っているのが垣間見えてしまう厳しい現実。今回はこれまでの経験を活かして存在感を出せましたけど、まだまだ試される状況は続きそうで、気になる人間模様も含めて続巻が楽しみです。

第1回カクヨムWeb小説コンテスト<特別賞> 

好意を寄せるクラスメイト・愛原そよぎの悩み事は想像を遥かに超えるもの。本気とも冗談ともつかない相談に真剣にアドバイスを送る二人による非日常系お悩み相談日常ラブコメ。秘密のはずなのにバレバレな質問をする天然娘・そよぎと、彼女に惹かれ気づかないふりをして真摯に答えてあげる幸助。そよぎだけでなく彼女の友人や弟・雪弥にも振り回されるドタバタ展開で、けれどそよぎが抱える秘密と次々と明らかになってゆく切ない過去や複雑な事情は切なくて、それでも周囲の人たちがいたからこそ迎えられたほっとする結末はなかなか良かったです。

縛りプレイ英雄記 奇跡の起きない聖女様 (角川スニーカー文庫)

縛りプレイ英雄記 奇跡の起きない聖女様 (角川スニーカー文庫)

 

 凶悪すぎる見た目の高校生・仁王院陣が、回復魔法の失われた異世界に転移し、回復魔法が使えない聖女と出会って先行き不安な旅をする物語。異世界に来てトラウマのある道具を召喚できるようになった陣と、お人好しで今の状況に責任を感じている聖女・マリー。見た目で誤解されがちですが、誤解されることを恐れずにマリーを気遣い、他人のために奔走する陣を彼女はきちんと見ていて、わりといいコンビな二人でしたね。召喚契約も結んで仲間も増えそうなドタバタの道中がこれからどのようなものになるのか、続巻が楽しみな新シリーズです。

モノクローム・サイダー あの日の君とレトロゲームへ

モノクローム・サイダー あの日の君とレトロゲームへ

 

 高校最後の夏を迎えた平凡なゲームオタクの高校生・百式長之介が、昼休みの屋上でゲームをしている女の子・鯨武由美と出会い人生が動き出す自伝的小説。最初は彼女の前を通るくらいで精一杯だった彼が、勇気を出して声を掛けたことで始まった一緒にゲームをするようになる日々。なかなか思うようにいかないことばかりでしたけど、不器用でも諦めずにきちんと向き合おうと奮闘する百式くんと、共に過ごす日々を送るようになった鯨武さんが二人らしい形で積み重ねてきた関係がとても素敵だと思いました。続編もまた書籍で読めること期待しています。

 天才錠前師・トマスの養女として育てられた少女・マージ。トマス亡きあと錠前店を継いだマージの元に伯爵家の若き当主・アレックスが破格の報酬で解錠依頼を持ってくるスチームパンクミステリ。複雑な事情を抱えた侯爵家の遺産相続を巡る解錠依頼。なぜか伯爵家で丁重な対応を受けて困惑するマージ。侯爵家の過去の事件の真相と明らかになる真実。物語の筋としては分かりやすいシンプルなものでしたが、ハッキリとした性格のマージや軽そうで意外と真摯なアレックスなど登場人物たちも魅力的に描かれていて、最後まで気持ちよく読めた物語でした。

 

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

 

 勉強合宿の夜に困っていた同級生の北岡恵麻を助けた地味で冴えない飯島靖貴。それをきっかけに密かな交流が生まれてゆく地味系眼鏡男子と人気者ギャルのすれ違いラブストーリー。入学直後の出来事で恵麻に苦手意識を持っていた靖貴と、助けてくれた靖貴が気になってゆく恵麻。学校では知らんぷりだけれど予備校帰りのわずかな時間で育まれてゆく二人の交流。少しずつ想いが積み重なってゆくのに、繊細で不器用な二人が距離を詰め切れないうちに起きる様々なすれ違いがとても切なかったです。気になるところで終わってしまったので早めに続きが読みたい注目の作品です。

 山中にある屋敷の座敷牢で出会った少女ツナ。怖い話を聞かせることを条件に週一回会うことを許されたミミズクが十年目に転機を迎える物語。育ての親や友人にもツナのことを隠し続けてきたミミズクこと瑞樹。かつて投稿した怪談記事が縁で多津音一と出会ったことにより徐々に明かされてゆくツナを巡るからくり。丁寧で繊細なことばによって恐怖が描かれる一方で、瑞樹がきちんと向き合ったことで明らかになった真実は思わぬ奇跡にも繋がっていて、どうにか折り合いをつけて迎えたその結末は、これまでの想いが報われたとても素敵なものに思えました。

雨の降る日は学校に行かない (集英社文庫)

雨の降る日は学校に行かない (集英社文庫)

 

 スクールカースト保健室登校…学校生活に息苦しさを感じる女子中学生たちの揺れ動く心を綴った連作短編集。短編の主人公は自分の居場所を見いだせない女の子たち。時が経てば分かることも、今見えている世界だけではなかなか分からないんですよね。誰もが不安を抱えていて閉塞感のある世界は些細なきっかけで変わる。周囲のストレートな悪意に葛藤しながらも向き合い変わっていこうとする少女たちを描いた物語は、雨上がりのようなこれから良くなる期待を予感させる読後感でした。スカートの長さとカーストを対比させてみせる視点もまた秀逸です。

ハッピー・レボリューション (メディアワークス文庫)

ハッピー・レボリューション (メディアワークス文庫)

 

 ゆるい部署に馴れきってしまい、気づけば20代最後の日を目前に焦りだした流され体質のOL夢子。空回り続きだった彼女がふとしたきっかけから一念発起して奮闘する物語。これまで共に受験や就活を乗り切ってきた脳内軍曹と自己変革に挑むも、うまくいかないことだらけで夢子に突き刺さる厳しい現実。前作の二人も甘々な恋人同士として登場したりで、ストーリーとしても分かりやすいベタな展開でしたけど、彼女を助けてくれる周囲の人たちにいい意味で感化され、彼女の頑張りによって周囲も変わってゆく好循環は読んでいて気持ちいい読後感でした。

 

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繰り返されるタイムリープの果てに、きみの瞳に映る人は (メディアワークス文庫) 

 作者:青葉優一

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/03/25
  • メディア: 文庫

順風満帆だったはずの慶介と亜子の関係。しかし突然亜子に別れを告げられた慶介に数か月前にタイムリープするという機会が与えられ、別れを回避すべく試行錯誤するファンタジー・ラブストーリー。突如態度が豹変した亜子の取り付く島もない別れの謎。代償を払いながらもタイムリープを繰り返す慶介の奔走がことごとく空振りに終わる回避の手立て。半ばで迎えた思わぬ真相と展開から今度は亜子がタイムリープに挑むことになり、ギリギリの綱渡りでも懸命にしたたかに乗り越えようとする彼女が引き寄せた結末に、お互いの強い想いを改めて感じました。

きみがすべてを忘れる前に (宝島社文庫)

きみがすべてを忘れる前に (宝島社文庫)

 

 放課後の教室で同級生だった長谷川紫音の幽霊と出会った霊感体質の結城クロ。そんな彼が紫音と一緒に学内にいる幽霊たちの心残りを解消してゆく切ない青春ラブストーリー。想い人で幽霊になってしまっている紫音とずっと彼女を支えてきた志郎、クロの複雑な三角関係。幽霊に対してそれぞれ異なる力を行使できるクロの三姉妹の力を借りて校内の幽霊問題を解決しながら、徐々に明かされる紫音の事情とその核心。明かされた真実はそれまでの流れからするとやや意外でしたけど、残された希望がどういう結末を迎えるのか最後まで読めることを期待します。

 幼少時に負った顔の傷が原因で周囲と馴染めず、高校を中退した直哉。そんな彼が星好きな不思議な青年・蒼史と出会い、その小学生の妹・桜月と営む天文館に通うようになる物語。根も葉もない噂に振り回され、親ともわだかまりを抱えていた直哉。複雑な事情があってお互いに少し遠慮のある蒼史と桜月。少しずつ足りない部分があった彼らが補い合うような関係を築いてゆくことで少しずつ周囲との交流も増えてゆき、誤解から危機的状況に陥りかけたりもしましたが、それを乗り越え未来へ向けて一歩踏み出すことを予感させる結末はとても心に響きました。

 ペンとノートを買えば店主が自分のためだけに物語を書いてくれる小さな文房具店「水沢文具店」。その謎めいた店主・龍臣と悩める小学校教師・栞、訪れるお客たちのエピソードが綴られる物語。教師を続けてゆくことに自信を持てない栞。彼女や元店主だった祖父の友人、書けなくなった作家といった店を訪れる悩める人たちの話を聞いて物語を書く龍臣。彼自身も抱える過去があって、物語の提示によって明確な解決方法が提示されるわけではないものの、辛い時に共感して背中を押してくれる、前を向けるきっかけの大切さをこの物語から改めて感じました。

律儀なひと

律儀なひと

 

 姿は見えないものの亡くなったばかりのおばあちゃんの声が聴こえるようになった貴雅が、おばあちゃんの叱咤激励に振り回されながらも悩める仕事や恋への向き合い方を変えてゆく物語。仕事では歳下の社員や上司に言いたいことも言えず、気にかけてくれている武田さんにも優柔不断な貴雅。心理としてすごくよく分かるけれど、これじゃおばあちゃんも成仏できないよねと思ってしまうような状況でしたが、自分らしく相手にきちんと向き合えるように努力するようになってゆく貴雅の頑張りはとても好ましいもので、切ないけれど心に響く素敵な物語でした。

君が描く空 - 帝都芸大剣道部 (中公文庫)

君が描く空 - 帝都芸大剣道部 (中公文庫)

 

 東京藝術大剣道部に事情があって三年生になってから入部してきた唯。それを指導することになった主将の壮介と、剣道部員たちが織りなす青春群像劇。複雑な家庭の事情を抱えながらも、画廊への契約条件として提示された初段を取ることを承諾した唯。割り切った唯の言動に戸惑い心配する一方で、憧れの部員・綾佳への想いにも揺れる壮介。そろそろ進路を意識せざるをえない部員たちが突きつけられる才能とそれに向き合う覚悟はシビアで、各々が直面する状況もまたほろ苦かったですが、それでも変わらない想いが垣間見える結末はとても心に響きました。

少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)

少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)

 

 二浪で中堅私大に入学するも目標を見失っていた十倉和成20歳。そんな彼のボロ下宿の天袋をセーラー服姿の少女・さちが住処としていることが判明し、庇護しようとしたことから物語も動き出す青春小説。十倉が動き出すきっかけとなったさちの出現。停滞の原因となった高校時代の親友・才条の謎の死。やや時代がかった言い回しが多かった停滞の前半はテンポが悪かったですが、そこから親友の死の謎を追い、志を受け継いで映画にのめり込んでいく怒涛の展開は読ませるものがありました。ファンタジーじみた結末も最後で救われてなかなか良かったです。

死と呪いの島で、僕らは (角川ホラー文庫)

死と呪いの島で、僕らは (角川ホラー文庫)

 

 沈没船が漂着した伊豆諸島東端にある須栄島。そこで村八分気味に扱われる美少女・椰々子と彼女が気になる同級生で名家の次男・杜弥たちが、島で起きる異変に巻き込まれてゆく青春ホラー。最初は親友の徹も含めた三人で謎解きするお話かと思って読んでいたのですが、海で死んだ男が甦り、巨大な人喰い鮫が現れ、さらにはブードゥー教などこれでもかと詰め込まれたカオスな状況。結果として終盤思わぬ展開になりましたが、あれだけ広げつつうまくまとめてみせたのは見事で、終わってみれば不思議と爽やかさすら感じさせる青春小説になっていました。

計画結婚 (文芸書)

計画結婚 (文芸書)

 

 とてつもない美人で頭もいいけど妙なところにこだわる久曽神静香が結婚?幼稚園からの唯一の友人や久曽神に恋をした美容師といった彼女に関わった人たちが、戸惑いながらも招待された結婚式に出席する物語。出席した友人によって語られる過去にあった静香の強烈なエピソード。一方で明かされてゆく新郎側出席者たちの事情と暴かれた新郎の過去。読めば読むほど何でこのような状況になったのかますます分からなくなっていきますが、そんな奇想天外に思える決断にも彼女にとっては確固たる理由があって、テンポよく進むストーリーは面白かったですね。

ぼくのとなりにきみ

ぼくのとなりにきみ

 

慎重で落ち着いた中学生のサクが、スポーツ万能で天真爛漫なハセや天然気味の同級生のチカとともに地元の古墳にまつわる謎の暗号解明に挑む青春小説。父親や妹との関係にもやもやしたものを抱える一方で、時には言動にイライラしつつチカのことが気になってゆくサク。言いたいことも言えなくて屈折した想いを抱えていた彼が、三人で謎解きを進める過程で事件解決に奔走したり暗号の意外な真実を解き明かしつつ、そんな積み重ねの先に変わるきっかけとなる着実な一歩があって、それを今後に期待感を抱かせる結末に導いてみせた素敵な物語でした。

3月に読んだ本 #読書メーターより

というわけで3月に読んだ本です。隙間時間に読んでいるマンガが1日1冊以上のペースで読んだので結果的にこんな冊数になっていますが、活字の本としては1日2冊ペースを割っているので実感としてはむしろ読めてない感じです。ただ分量的にブログ更新が結構重くなってきていて、読んだ本全部だと文字数制限オーバーしてしまったので今回コミック分は削りました。コミックは別エントリするほどでもないかなと個人的に思わなくもないですが、どうするのかちょっと考えています。

 

3月の読書メーター
読んだ本の数:97冊
読んだページ数:25125
ナイス数:6503

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)感想
人々が陸地のほとんどを失い、いくつかの巨大な船に都市国家を作ってわずかな資源を争う世界。船国を行き来して荷物を運ぶスワローの少年・シエルが、無人島に流れ着いた謎の少女・ステラと巡り合うボーイミーツガール。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせないシエル。理由を明かさないまま自分を荷物として運んで欲しいと依頼するステラ。その飛行は息苦しかった彼らにとって新鮮だけれど危険の連続でもあって、たびたび衝突しすれ違った彼らが力を合わせて乗り越えようと挑んだそのとても爽やかな結末は、次回作も期待したくなるものでした。
読了日:03月31日 著者:阿部 藍樹
終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#04 (角川スニーカー文庫)終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#04 (角川スニーカー文庫)感想
手負いのフェオドールとラキシュが目指すのはかつての戦場コリナディルーチェ市。ティアットは朱髪の先輩妖精兵らと邂逅を果たし、妖精倉庫の管理人喰人鬼もまた旧き知人を訪ねてその地を訪れる第四弾。護翼軍や貴翼帝国など様々な思惑による争いに巻き込まれてゆくフェオドールたち。ラキシュの身に起こった変化と、フェオドールの姉により画策された密かな再会。第一部の登場人物たちもまたここで徐々に集結し舞台は整いつつあるように思えますが、ラキシュとの繋がりや未だ気づかないままの彼女との関係が今後どうなるのか、続巻が楽しみですね。
読了日:03月31日 著者:枯野 瑛
<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 3.超級激突 (HJ文庫)<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 3.超級激突 (HJ文庫)感想
決闘都市ギデオンの闘技場で開催のイベント『超級激突』に町中がお祭り騒ぎで、アルター王国の「無限連鎖」フィガロ黄河帝国の「応龍」迅羽が激突する第三弾。レイは前回の戦後処理があったくらいで、また懲りずにちょっとやらかしそうな場面はありましたが、大食いエピソードのネメシス含めて今回はイベントの観戦者の立ち位置。本編としては次の展開に向けた繋の回でしたけど、ルークとマリーのエピソードを収録した短編は彼らの意外な素顔と秘めた力の一端が垣間見えて興味深かったです。それが今後にどう繋がってゆくのか続巻に期待します。
読了日:03月31日 著者:海道左近
精霊幻想記 7.夜明けの輪舞曲 (HJ文庫)精霊幻想記 7.夜明けの輪舞曲 (HJ文庫)感想
レイスが操る魔物の大群に襲われたリーゼロッテの一団に加勢したリオ。その圧倒的な力にその場にいた誰もが興味を持ち、またリオも勇者召喚の情報を求め貴族たちと関係を築こうと動き出す第七弾。襲撃を助けて強烈なインパクトを残したリオと、強烈なインパクトを残した救援をきっかけとした貴族たちとの交流と、密かに進行するレイスの襲撃計画。どうにも小物っぽいうざい勇者には苦笑いするしかなくて、過去の因縁の相手との決着はつけ損ないましたが、リオを気にかけるヒロインたちがさらに増えて、その関係や今後の展開も気になるところですね。
読了日:03月30日 著者:北山結莉
仕事の問題地図 ~「で、どこから変える?」進捗しない、ムリ・ムダだらけの働き方仕事の問題地図 ~「で、どこから変える?」進捗しない、ムリ・ムダだらけの働き方感想
「計画がない」「進捗が分からない」「バラバラなモチベーション」「抵抗勢力」「なぜ失敗を繰り返すのか」など仕事が思うように進まない要因を明らかにしてその解決策を提案する第二弾。どうしてよくあるムダな仕事や問題が発生してしまうのか。その原因やありがちな事例を地図として明確化し、分かりやすく分解して地に足付いた解決策を提示する本書。難しい言葉を使わずとても読みやすく書かれていて、問題解決の基本的な考え方を学ぶことができるとてもいい一冊だと思いました。同じ著者さんの「職場の問題地図」も併せて読むのがオススメです。
読了日:03月30日 著者:沢渡 あまね
飛べない鍵姫と解けない飛行士 その箱、開けるべからず (コバルト文庫)飛べない鍵姫と解けない飛行士 その箱、開けるべからず (コバルト文庫)感想
天才錠前師・トマスの養女として育てられた少女・マージ。トマス亡きあと錠前店を継いだマージの元に伯爵家の若き当主・アレックスが破格の報酬で解錠依頼を持ってくるスチームパンクミステリ。複雑な事情を抱えた侯爵家の遺産相続を巡る解錠依頼。なぜか伯爵家で丁重な対応を受けて困惑するマージ。侯爵家の過去の事件の真相と明らかになる真実。物語の筋としては分かりやすいシンプルなものでしたが、ハッキリとした性格のマージや軽そうで意外と真摯なアレックスなど登場人物たちも魅力的に描かれていて、最後まで気持ちよく読めた物語でした。
読了日:03月30日 著者:山本 瑤
(P[あ]6-3)水沢文具店: あなただけの物語つづります (ポプラ文庫ピュアフル)(P[あ]6-3)水沢文具店: あなただけの物語つづります (ポプラ文庫ピュアフル)感想
ペンとノートを買えば店主が自分のためだけに物語を書いてくれる小さな文房具店「水沢文具店」。その謎めいた店主・龍臣と悩める小学校教師・栞、訪れるお客たちのエピソードが綴られる物語。教師を続けてゆくことに自信を持てない栞。彼女や元店主だった祖父の友人、書けなくなった作家といった店を訪れる悩める人たちの話を聞いて物語を書く龍臣。彼自身も抱える過去があって、物語の提示によって明確な解決方法が提示されるわけではないものの、辛い時に共感して背中を押してくれる、前を向けるきっかけの大切さをこの物語から改めて感じました。
読了日:03月29日 著者:安澄 加奈
きみがすべてを忘れる前に (宝島社文庫)きみがすべてを忘れる前に (宝島社文庫)感想
放課後の教室で同級生だった長谷川紫音の幽霊と出会った霊感体質の結城クロ。そんな彼が紫音と一緒に学内にいる幽霊たちの心残りを解消してゆく切ない青春ラブストーリー。想い人で幽霊になってしまっている紫音とずっと彼女を支えてきた志郎、クロの複雑な三角関係。幽霊に対してそれぞれ異なる力を行使できるクロの三姉妹の力を借りて校内の幽霊問題を解決しながら、徐々に明かされる紫音の事情とその核心。明かされた真実はそれまでの流れからするとやや意外でしたけど、残された希望がどういう結末を迎えるのか最後まで読めることを期待します。
読了日:03月29日 著者:喜多 南
ケーキ王子の名推理2 (新潮文庫nex)ケーキ王子の名推理2 (新潮文庫nex)感想
世界一のパティシエ・青山から店のケーキバイキングに招待された未羽。そこで青山とただならぬ因縁があるらしい外国人の美女が現れ、彼の秘められた過去が明らかになる第二弾。進級し新しい友達もできて、青山のお店でアルバイトをすることになった未羽。リベンジするためにコンクールに挑む颯人。ややページ少なめの今回は青山さんのエピソードが中心でしたけど、相変わらずケーキが大好きな未羽の熱い語りは美味しそうで、一緒の時間を過ごすことで少しずつ変わり始めた颯人との関係も今後に期待というところですか。早めの続刊を期待しています。
読了日:03月28日 著者:七月 隆文
愛原そよぎのなやみごと 時を止める能力者にどうやったら勝てると思う? (ファミ通文庫)愛原そよぎのなやみごと 時を止める能力者にどうやったら勝てると思う? (ファミ通文庫)感想
好意を寄せるクラスメイト・愛原そよぎの悩み事は想像を遥かに超えるもの。本気とも冗談ともつかない相談に真剣にアドバイスを送る二人による非日常系お悩み相談日常ラブコメ。秘密のはずなのにバレバレな質問をする天然娘・そよぎと、彼女に惹かれ気づかないふりをして真摯に答えてあげる幸助。そよぎだけでなく彼女の友人や弟・雪弥にも振り回されるドタバタ展開で、けれどそよぎが抱える秘密と次々と明らかになってゆく切ない過去や複雑な事情は切なくて、それでも周囲の人たちがいたからこそ迎えられたほっとする結末はなかなか良かったです。
読了日:03月28日 著者:雪瀬 ひうろ
イスラーム入門 文明の共存を考えるための99の扉 (集英社新書)イスラーム入門 文明の共存を考えるための99の扉 (集英社新書)感想
世界のムスリムの人口16億人を超えると言われる今、日本人イスラーム法学者が「ムハンマド」「スンナ派」など99のトピックでイスラームの教えと歴史、多様性を解説した一冊。本書は宗教としてのイスラームの基本教義やその宗派とそれが成立した経緯、イスラーム教徒の信仰生活や社会の仕組みといったイスラームを理解するためのキーワードを取り上げつつ極力分かりやすい言葉で解説していて、全体像や関連性を把握するにはもうひと工夫あると良かったかな?とも感じましたが、イスラームの現況を知るには参考になる部分も多かったと思いました。
読了日:03月28日 著者:中田 考
君と星の話をしよう 降織天文館とオリオン座の少年 (集英社オレンジ文庫)君と星の話をしよう 降織天文館とオリオン座の少年 (集英社オレンジ文庫)感想
幼少時に負った顔の傷が原因で周囲と馴染めず、高校を中退した直哉。そんな彼が星好きな不思議な青年・蒼史と出会い、その小学生の妹・桜月と営む天文館に通うようになる物語。根も葉もない噂に振り回され、親ともわだかまりを抱えていた直哉。複雑な事情があってお互いに少し遠慮のある蒼史と桜月。少しずつ足りない部分があった彼らが補い合うような関係を築いてゆくことで少しずつ周囲との交流も増えてゆき、誤解から危機的状況に陥りかけたりもしましたが、それを乗り越え未来へ向けて一歩踏み出すことを予感させる結末はとても心に響きました。
読了日:03月28日 著者:相川 真
あなたのこども、そのままだと近視になります。 (ディスカヴァー携書)あなたのこども、そのままだと近視になります。 (ディスカヴァー携書)感想
最近娘の視力がやや不安定ということもあって、ちょっと気になってみて読んだ1冊。小学生の30%、高校生の65%が近視という状況の一方で、そういう子どもが急増している本当の原因は明らかになっていない現状。どうして近視になるのかという原因の解説や書かれている一部の内容は何とも評価が難しかったですが、詳しいメカニズムこそ明らかでないもののバイオレットライトを浴びることは近視防止に効果があるらしく「外で遊ぶことで近視になりにくい」のは確かなようです。それならすぐにできることですし、改めて意識してみようと思いました。
読了日:03月28日 著者:坪田 一男
裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)感想
裏側で「くねくね」を目にして死にかけていた時、仁科鳥子と運命的な出会いを果たした女子大生の紙越空魚。危険と隣合わせで謎だらけの裏世界に二人で足を踏み入れる怪異探検サバイバル。研究とお金稼ぎを目的とする空魚と、姿を消した大切な人を探すために非日常へと足を踏み入れる鳥子。始まりと出会いはやや唐突にも思えましたが、成り行きから何となくコンビを組んだ感もあった二人に絆めいたものが生まれて、相手のために奔走する展開は悪くなかったですね。タイトルにあるようなピクニックとはとても言えない怖いテイストでしたが続巻に期待。
読了日:03月27日 著者:宮澤 伊織
ハッピー・レボリューション (メディアワークス文庫)ハッピー・レボリューション (メディアワークス文庫)感想
ゆるい部署に馴れきってしまい、気づけば20代最後の日を目前に焦りだした流され体質のOL夢子。空回り続きだった彼女がふとしたきっかけから一念発起して奮闘する物語。これまで共に受験や就活を乗り切ってきた脳内軍曹と自己変革に挑むも、うまくいかないことだらけで夢子に突き刺さる厳しい現実。前作の二人も甘々な恋人同士として登場したりで、ストーリーとしても分かりやすいベタな展開でしたけど、彼女を助けてくれる周囲の人たちにいい意味で感化され、彼女の頑張りによって周囲も変わってゆく好循環は読んでいて気持ちいい読後感でした。
読了日:03月27日 著者:星奏 なつめ
繰り返されるタイムリープの果てに、きみの瞳に映る人は (メディアワークス文庫)繰り返されるタイムリープの果てに、きみの瞳に映る人は (メディアワークス文庫)感想
順風満帆だったはずの慶介と亜子の関係。しかし突然亜子に別れを告げられた慶介に数か月前にタイムリープするという機会が与えられ、別れを回避すべく試行錯誤するファンタジー・ラブストーリー。突如態度が豹変した亜子の取り付く島もない別れの謎。代償を払いながらもタイムリープを繰り返す慶介の奔走がことごとく空振りに終わる回避の手立て。半ばで迎えた思わぬ真相と展開から今度は亜子がタイムリープに挑むことになり、ギリギリの綱渡りでも懸命にしたたかに乗り越えようとする彼女が引き寄せた結末に、お互いの強い想いを改めて感じました。
読了日:03月26日 著者:青葉 優一
ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)感想
突然見知らぬ女性に三つの質問を問いかけられた雪の日。誰も好いたことがない掛橋啓太が問いかけた大野千草と夫婦になり、平穏な彼女との生活の中で過ぎ去った過去の日々を追憶させてゆく物語。お互いの過去を知らないまま三つの質問という契約によって夫婦になった二人。引きこもりの兄と共依存関係にあった母との辛い過去。徐々に惹かれ合っているのを自覚するがゆえに、じわじわと重くのしかかってゆく三つ目の質問。それぞれが抱える壮絶な過去も二人でなら乗り越えられると思えただけに、淡々と綴られたその不器用な結末には衝撃を受けました。
読了日:03月25日 著者:葦舟 ナツ
ホーンテッド・キャンパス 白い椿と落ちにけり (角川ホラー文庫)ホーンテッド・キャンパス 白い椿と落ちにけり (角川ホラー文庫)感想
こよみとの初デート以降森司がデート以降彼女と会うと頭が真っ白になって逃げ出したくなる怪現象に。一方で悪魔祓い系の映画がダメな学生から地縛霊、呪いまで様々な依頼者が訪れる第十一弾。今回の依頼は家族や近親者との複雑な関係をベースとした人の執念深い一面が垣間見えるお話でしたが、その怖さがある分違う意味での森司の重症ぶりが際立つというか。本人にとっては深刻でもこよみもあんなんだし、周囲が呆れて生温かい目で見守りたくなる気持ちはわかりますね(苦笑)付き合ってもいないのにお互いの両親公認って凄いw 続巻も楽しみです。
読了日:03月25日 著者:櫛木 理宇
君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)感想
勉強合宿の夜に困っていた同級生の北岡恵麻を助けた地味で冴えない飯島靖貴。それをきっかけに密かな交流が生まれてゆく地味系眼鏡男子と人気者ギャルのすれ違いラブストーリー。入学直後の出来事で恵麻に苦手意識を持っていた靖貴と、助けてくれた靖貴が気になってゆく恵麻。学校では知らんぷりだけれど予備校帰りのわずかな時間で育まれてゆく二人の交流。少しずつ想いが積み重なってゆくのに、繊細で不器用な二人が距離を詰め切れないうちに起きる様々なすれ違いがとても切なかったです。気になるところで終わってしまったので早めの続巻を期待。
読了日:03月24日 著者:筏田 かつら
ナイツ&マジック 7 (ヒーロー文庫)ナイツ&マジック 7 (ヒーロー文庫)感想
未知なる魔獣との遭遇により森へと墜ちてしまったエルとイカルガ。追いかけてきたアディも一緒に森を捜索するうちに巨人族と遭遇し、その争いに巻き込まれゆく第七弾。多眼の巨人族との遭遇と彼らの王位を巡る争いに巻き込まれてゆくエルたち。その過程で出会った巨人族の下につく小鬼族の意外な繋がり。わりと危機的状況にも物資が足りないなりに幻晶騎士を何とかしようとしたり、巨人族に魔法を指導したりと、環境が変わってもエルはエルなんだなあとしみじみと思ってしまいました(苦笑)小鬼族の思惑も絡む中での転機に今後の展開が楽しみです。
読了日:03月24日 著者:天酒之瓢
灰と幻想のグリムガル level.10 ラブソングは届かない (オーバーラップ文庫)灰と幻想のグリムガル level.10 ラブソングは届かない (オーバーラップ文庫)感想
千の峡谷を抜けオルタナを目指し東へ進む道中の森でモンスター・グォレラたちの襲撃を受けたハルヒロたち。辛うじて執拗な追撃を振り払い逃げ込んだ先の村で意外な住人たちと出会う第十弾。今回はいろいろ言い訳をしながらセトラに振り回されるハルヒロ、という構図が気になって仕方がないメリィの挙動がクザクも読者も気になりまくりの展開でしたけど、彼らが出会った意外なジェシーは物語の確信に迫る鍵を握っていそうでしたね。しかし難敵を相手にした苦戦の先にある衝撃の結末には絶望感しかなくて、予告読んだら続きが早く読みたくなりました。
読了日:03月23日 著者:十文字青
ぼくたちのリメイク 十年前に戻ってクリエイターになろう! (MF文庫J)ぼくたちのリメイク 十年前に戻ってクリエイターになろう! (MF文庫J)感想
しがないゲームディレクターで会社は倒産、企画も頓挫して実家に帰ることになった橋場恭也。輝かしいクリエイターの活躍を横目にふて寝して目覚めると、なぜか十年前の大学入学時に巻き戻っていた青春リメイクストーリー。落ちたはずの大学に受かっていて憧れの芸大ライフ、さらにはシェアハウスで男女四人の共同生活。とはいえ同居人はそれぞれキラリと光るものを持っているのが垣間見えてしまう厳しい現実。今回はこれまでの経験を活かして存在感を出せましたけど、まだまだ試される状況は続きそうで、気になる人間模様も含めて続巻が楽しみです。
読了日:03月23日 著者:木緒 なち
14歳とイラストレーター2 (MF文庫J)14歳とイラストレーター2 (MF文庫J)感想
自分が挿絵を担当するラノベ作家・マリィが担当と揉めて逃亡を図り、気分転換に彼女や14歳コスプレイヤー・乃ノ香まで連れて長崎へ旅行することになる第二弾。相変わらず不用意にやらかしてしまう神絵とか、事案的に大丈夫なのかついつい心配してしまう乃々香との無自覚でスレスレな距離感には苦笑いでしたが、仕事の依頼をきっかけにユウトが抱える複雑な想いも明らかになったり新キャラも登場しつつ、一方で楽しそうに長崎旅行を堪能していたりで面白かったです。変化の兆しを見せ始めた人間模様や、最後の急展開が今後どうなるのか続巻に期待。
読了日:03月22日 著者:むらさき ゆきや
律儀なひと律儀なひと感想
姿は見えないものの亡くなったばかりのおばあちゃんの声が聴こえるようになった貴雅が、おばあちゃんの叱咤激励に振り回されながらも悩める仕事や恋への向き合い方を変えてゆく物語。仕事では歳下の社員や上司に言いたいことも言えず、気にかけてくれている武田さんにも優柔不断な貴雅。心理としてすごくよく分かるけれど、これじゃおばあちゃんも成仏できないよねと思ってしまうような状況でしたが、自分らしく相手にきちんと向き合えるように努力するようになってゆく貴雅の頑張りはとても好ましいもので、切ないけれど心に響く素敵な物語でした。
読了日:03月22日 著者:上生 ミカ
決断のナポリタン-キッチン・ミクリヤの魔法の料理(2) (双葉文庫)決断のナポリタン-キッチン・ミクリヤの魔法の料理(2) (双葉文庫)感想
幼馴染の御厨陽一が経営する「キッチン・ミクリヤ」で、正社員として働き始めた桜木まどか。お子様ランチのメニュー追加に案を出したり、百瀬に興味がある金髪の白人男性が店を訪れたりする第二弾。相変わらず百瀬にいじられながらも、お店周りで起こる事件に関わったり巻き込まれたりな今回でしたけど、おじいちゃんの影響でサムライとして振る舞う子どもたちお子様ランチのお話は良かったですね。恋愛関係はあんまり進展しなさそうな雰囲気ですが、苦悩していた百瀬が出した結論は、それはそれでひとつのありようだと納得できるものがありました。
読了日:03月21日 著者:吉田 安寿
職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方感想
なぜ残業だらけで休めない働き方になるのか。手戻り(やり直し)の多さや上司と部下の意識がずれる理由。報連相や無駄な会議、仕事の所要時間の見積もり、属人化、過剰サービス、曖昧な状態など問題を分かりやすく解説した一冊。早い段階での意識の摺り合わせや、やるべきことの明確化・数値化、相談する時に報連相のどれをすべきなのか明確にする、属人化を正常化させるための当たり前の仕事と付加価値の部分の明確化、無駄なことの整理など、地に足付いたアプローチがとても実践的で参考になりました。「仕事の問題地図」の方も読んでみたいです。
読了日:03月21日 著者:沢渡 あまね
鎌倉おやつ処の死に神 3 (富士見L文庫)鎌倉おやつ処の死に神 3 (富士見L文庫)感想
柚琉の元に突如現れた長らく失踪していた父。その後の急展開に呆然とする間もなく、和花が倒れて難しい決断を迫られることになる第三弾。最後に父と再会できてよかったなとか、犀川さんのあれは教えた代償なのかなとかいろいろ思うところはありましたが、これまでずっと一人で秘密を抱え、あまりにも重い決断を下すことができなかった柚琉への犀川さんの優しさが印象的でした。ただここで完結なら和花だけでなく津守ですら決断したんだし、深町とはしっかり向き合って欲しかった。収まるところに収まったということなのかもしれませんけどね(苦笑)
読了日:03月21日 著者:谷崎 泉
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女III」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女III」感想
冬が近付く中、洗礼式や奉納式等への参加、貴族院入学前の子供の指導など、神殿長ローゼマインが城と神殿を行き来する慌しい毎日が描かれる第九弾。反逆した街への厳しい決断を目の当たりになんてこともありましたが、欲望のままにやりたい放題やっていた以前に比べると、戸惑いはあるもののいろいろと学んで変わったりだいぶ成長した部分もあったりで、同年代という物差しで見ると規格外なレベルにあるんだなあと納得。そんな中で時折年相応らしさや家族に対する変わらぬ想いが垣間見える描写がとてもいいなと思いました。続巻も期待しています。
読了日:03月21日 著者:香月美夜
空戦魔導士候補生の教官12 (ファンタジア文庫)空戦魔導士候補生の教官12 (ファンタジア文庫)感想
ゲート攻略作戦がいよいよ始まり、ミソラたちは切り札となるカナタと別々に戦うことに。最後の戦いを前にそれぞれの想いと葛藤が描かれる第十二弾。厳しい戦いであることが明らかな状況で、秘めた力を使う代償を一部の人だけに告げたカナタ。それを知って苦悩するユーリと、参戦する最後の戦いを前にカナタに会うべきか逡巡する小隊の面々。始まった最終決戦は激戦で、お互いの秘策が激突する駆け引きがとても良かったですが、最終決戦や小隊の面々とのその後がどういう決着に向かうのか、次巻は最終巻と短編集が同時発売とのことなので楽しみです。
読了日:03月20日 著者:諸星 悠
デート・ア・ライブ16 狂三リフレイン (ファンタジア文庫)デート・ア・ライブ16 狂三リフレイン (ファンタジア文庫)感想
来禅高校に復学し士道の前に再び現れた時崎狂三。その霊力を封印したい士道と士道が封印した精霊の霊力を欲する狂三が、バレンタインデーに向けて全てを懸けた二度目の戦争が始まる第十六弾。勝負を仕掛けて士道や他の精霊たちを女子力で圧倒する狂三。精霊たちもまたらしさ全開で突っ走ったりでエピソードとしてなかなか面白かったんですが、その裏で進行していた深刻な事態に対しての狂三の孤軍奮闘ぶりには衝撃でした。明らかになった意外な真実と行き着くところまで行き着いた感のある攻防、そして狂三との決着がどうなるのか次巻が楽しみです。
読了日:03月19日 著者:橘 公司
ゲーマーズ!7 ゲーマーズと口づけデッドエンド (ファンタジア文庫)ゲーマーズ!7 ゲーマーズと口づけデッドエンド (ファンタジア文庫)感想
ぼっちからリア充街道まっしぐらに見えた景太が直面した地獄の修学旅行。千秋との新たな関係へ旅行中に天道と話をつけたい景太と、なぜかそれを許さない花憐たちの様々な思惑が錯綜する第七弾。同じぼっちだったのに花憐に救われた千秋と、友好的でない班に組み込まれることになった景太。わりと悲惨な状況に置かれている景太に対するそれぞれの反応が印象的でしたけど、それぞれの想いを考えたら拗れるところじゃないし密かに頑張ってもいたのに、いろいろ考え過ぎな上原&花憐のまさかの決断には報われないですね。続巻でどうなるのか楽しみです。
読了日:03月19日 著者:葵 せきな
ロクでなし魔術講師と禁忌教典8 (ファンタジア文庫)ロクでなし魔術講師と禁忌教典8 (ファンタジア文庫)感想
成績不振による退学回避のため、聖リリィ魔術女学院に短期留学するリィエル。同行するシスティーナとルミアに加えてグレンも女に変身し臨時講師として赴任する第八弾。今回は環境が変わったことで、グレンの授業が分かりやすいことや修羅場をくぐってきたシスティたちが成長していること、何よりリィエルもまた少しずつ変わりつつあることを実感できたり、システィだけでなくルミアまで珍しく一緒にイライラする展開がちょっと新鮮な感じで楽しかったですね。復活してらしさ全開だったセリカも良かったですし新キャラエルザも再登場期待しています。
読了日:03月18日 著者:羊太郎
冴えない彼女の育てかた 12 (ファンタジア文庫)冴えない彼女の育てかた 12 (ファンタジア文庫)感想
恵と誕生日デートの約束をしたはずの倫也が当日にまさかのドタキャン。向かった先は病室でそこで状況を聞かされた倫也が大きな決断を下すことになる第十二弾。まさかの入院によって明らかになってしまった、その人頼みの思っていた以上に綱渡りな状況。その才能に惚れ込んだ二人が絡んでなかったら倫也もここまで無理しなかったんでしょうけどね。恵は恵で大きな葛藤があったとは思うんですけど、そういうのを乗り越えちゃうからこそあの結末だったのかなと。面倒な人たちばかりのドタバタ劇もあと2巻と思うと残念ですが、楽しみにしています。
読了日:03月18日 著者:丸戸 史明
七星のスバル 5 (ガガガ文庫)七星のスバル 5 (ガガガ文庫)感想
現実世界で希が失踪し大騒ぎになり、繋がりをたどってリユニオン上空を捜索するうち陽翔たちは空に夢の城を発見。そこで希を捜すスバル一行の前にグノーシスの使徒たちが現れる第四弾。誤解から決別した希との再会。苦い過去を思い出させる場所で再び起きてしまった二人の仲違い。今回は表紙を飾った貴法もなりふりかわまず思いをぶつけ合って奮闘しましたが、絶体絶命の中でチームとしての絆を取り戻したからこそ、敵の首魁が姿を現してからの展開は堪えましたね...でもあの日聞けなかった答えを聞けたからこそ、ここからの巻き返しに期待です。
読了日:03月18日 著者:田尾 典丈
ストライクフォール 2 (ガガガ文庫 は 5-2)ストライクフォール 2 (ガガガ文庫 は 5-2)感想
史上類を見ないルール違反で、契約こそしたものの処分決定を待つ間二軍へと送られる雄星。前代未聞のスキャンダルを起こした異邦人に選手たちはただただ冷たく、無数の敵意にさらされる第二弾。ストライクフォールを別の競技に変えてしまった雄星の慣性制御技術の衝撃。一方で孤立し基本もなっていないがために二軍の中でも活躍できない現実。葛藤しながらも新しい戦いを始める周囲に触発され、もう一度向き合うようになった雄星が出したひとつの答え。競技も転換期を迎えて彼を巡る人間関係を含めて物語としてもここからですね。次巻が楽しみです。
読了日:03月17日 著者:長谷 敏司
鎌倉香房メモリーズ 5 (集英社オレンジ文庫)鎌倉香房メモリーズ 5 (集英社オレンジ文庫)感想
ようやく気持ちを通わせた雪弥と香乃。しかし未だ雪弥の真意を掴みかねて戸惑いながらも、次々と香りに関する謎が持ち込まれる第五弾。姿を消した人から託された香木の真意、行方不明になった仏像の真実、送り主不明の雛人形の謎、源氏香図で書かれた暗号に秘められた想いなど、謎を解いて過去のわだかまりが解消されてゆく中、距離を縮めようと頑張る香乃だったり、過去にきちんと向き合うようになった雪弥だったり、これまでいろいろありましたが、そのひとつひとつに方向性が見えてゆく結末をじっくりと堪能できました。次回作も期待しています。
読了日:03月17日 著者:阿部 暁子
雨の降る日は学校に行かない (集英社文庫)雨の降る日は学校に行かない (集英社文庫)感想
スクールカースト保健室登校…学校生活に息苦しさを感じる女子中学生たちの揺れ動く心を綴った連作短編集。短編の主人公は自分の居場所を見いだせない女の子たち。時が経てば分かることも、今見えている世界だけではなかなか分からないんですよね。誰もが不安を抱えていて閉塞感のある世界は些細なきっかけで変わる。周囲のストレートな悪意に葛藤しながらも向き合い変わっていこうとする少女たちを描いた物語は、雨上がりのようなこれから良くなる期待を予感させる読後感でした。スカートの長さとカーストを対比させてみせる視点もまた秀逸です。
読了日:03月17日 著者:相沢 沙呼
ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇 (角川文庫)ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇 (角川文庫)感想
捨て犬をめぐり後藤朱里とカイユが奮闘したり、芹澤と片桐の駄菓子屋での邂逅、謎のアルバイトをしている名越をマレンが危惧したり、成島美代子がかつての吹奏楽部の活動日誌に思いを馳せるシリーズ番外編。今回はハルチカたちでなくその周囲の登場人物に焦点を充てた短編集になっていましたが、個々人の吹奏楽や楽器に対する思いだったり、部員たち同士の繊細な距離感だったり、なんかみんなそれぞれいろいろ考えたり悩んだりしてるんだなあというのが伺えて興味深く読みました。最後に収録されていた「ひとり吹奏楽部」もまたとても良かったです。
読了日:03月17日 著者:初野 晴
少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)感想
二浪で中堅私大に入学するも目標を見失っていた十倉和成20歳。そんな彼のボロ下宿の天袋をセーラー服姿の少女・さちが住処としていることが判明し、庇護しようとしたことから物語も動き出す青春小説。十倉が動き出すきっかけとなったさちの出現。停滞の原因となった高校時代の親友・才条の謎の死。やや時代がかった言い回しが多かった停滞の前半はテンポが悪かったですが、そこから親友の死の謎を追い、志を受け継いで映画にのめり込んでいく怒涛の展開は読ませるものがありました。ファンタジーじみた結末も最後で救われてなかなか良かったです。
読了日:03月16日 著者:一 肇
おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱 (講談社タイガ)おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱 (講談社タイガ)感想
山中にある屋敷の座敷牢で出会った少女ツナ。怖い話を聞かせることを条件に週一回会うことを許されたミミズクが十年目に転機を迎える物語。育ての親や友人にもツナのことを隠し続けてきたミミズクこと瑞樹。かつて投稿した怪談記事が縁で多津音一と出会ったことにより徐々に明かされてゆくツナを巡るからくり。丁寧で繊細なことばによって恐怖が描かれる一方で、瑞樹がきちんと向き合ったことで明らかになった真実は思わぬ奇跡にも繋がっていて、どうにか折り合いをつけて迎えたその結末は、これまでの想いが報われたとても素敵なものに思えました。
読了日:03月16日 著者:オキシ タケヒコ
一華後宮料理帖 第三品 (角川ビーンズ文庫)一華後宮料理帖 第三品 (角川ビーンズ文庫)感想
百年もの間ほぼ鎖国状態だった西沙国と崑国の国交樹立話が持ち上がり、交渉を成功させるため朱西は皇帝・祥飛の補佐を命じられ、理美は祥飛専属お夜食係に任命される第三弾。どことなくお互いを意識する朱西と理美、それを気にかける祥飛という危うさのある切ない三角関係の構図。やってきた外交使節団との進まない交渉では、これまた理美がいろいろ繋いだり提案したりといい感じに存在感ありましたね。祥飛も成長したところを見せ三角関係は二転三転しつつも少し風向きが変わってきたと思ったらここで波乱の予感とは…。次巻が早く読みたいです。
読了日:03月15日 著者:三川 みり
後宮幻華伝 奇奇怪怪なる花嫁は謎めく機巧を踊らす (コバルト文庫)後宮幻華伝 奇奇怪怪なる花嫁は謎めく機巧を踊らす (コバルト文庫)感想
12人の妃を一度に娶った凱帝国の崇成帝・高遊宵は、その全てを出自に関係なく貴人に任命。そのうちの一人貴重な科学の本が読めることと復讐を理由に後宮に入った李緋燕が密かに仇を探し始めるシリーズ第五弾。今回は恋い焦がれていた異母姉が結婚したドライな遊宵と、自分の目的のために後宮に入った緋燕の物語で、お互い打算から入った関係が様々な事件を経て想いを通わせてゆく辺りは、これまでの救いのない結末からやや身構えていたので、当人同士に関して言えばいい意味でちょっと意外な展開でした(苦笑)遊宵は幸せになれてよかったですね。
読了日:03月15日 著者:はるおか りの
勇者は、奴隷の君は笑え、と言った (Novel 0)勇者は、奴隷の君は笑え、と言った (Novel 0)感想
烙印の子として奴隷のように育った少年ヴィスとかつて世界を救った伝説の勇者グレン。そんな二人が魔族に奪われたヴィスの恩人を取り戻す旅に出るファンタジー。幼い頃からの虐待で様々なものが欠落したヴィスと彼に目をかけるグレン。そして彼に唯一の正義を教え聖女に選ばれた恩人に起きた事件。魔法使いの少女ニーニらと出会ってからのズレた噛み合わない会話が印象的でしたが、魔王復活を目指す魔族や皇国などの思惑が交錯する展開で、様々な出会いと別れを経て少しずつ変わり始めたヴィスの旅が今後どのようなものになるのか続巻が楽しみです。
読了日:03月14日 著者:内堀 優一
中古でも恋がしたい! 9 (GA文庫)中古でも恋がしたい! 9 (GA文庫)感想
恋愛経験が少なさから古都子への想いがなんなのか分からずにモヤモヤと悩む清一。初詣を経て京都への修学旅行で答えを出すため、古都子と二人だけで『戦百』の聖地巡礼をしようと誘う第九弾。自らが抱えるモヤモヤした思いに加えて、実態と周囲から見た二人の関係のギャップを感じるようになった清一。気持ちを隠さなくなった賢い初芝は効果的にアプローチしてきましたけど、そんな中での二人でのままならない行動をきっかけに、いろいろ思うところがあった清一にとってもようやく転機を迎えることになりそうですね。これは次巻が今から楽しみです。
読了日:03月13日 著者:田尾 典丈
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー (GA文庫)感想
働く『豊穣の女主人』でとある夫婦の一人娘がさらわれたことを知った腕利きの元冒険者リューが、調査をするうちに迷宮都市の治外法権・大賭博場にたどり着くクロニクル第一弾。リューとシルの二人で乗り込む大賭博場での大活劇や彼女と『豊穣の女主人』の出会い、そして『豊穣の女主人』の背景も少しだけ語られつつ、店で働く女の子たちについても掘り下げられていて、彼女たちがそれぞれの信念のもとに戦うその姿に、この作品に登場するヒロインたちがなぜ魅力的なのか改めて納得する思いでした。こういう外伝は大歓迎なので今後も期待しています。
読了日:03月13日 著者:大森 藤ノ
小説 ひるね姫 ~知らないワタシの物語~ (角川文庫)小説 ひるね姫 ~知らないワタシの物語~ (角川文庫)感想
昼寝が得意な女子高生の森川ココネ。東京オリンピックの3日前に岡山でともに暮らす修理工を営む父親が突然警察に東京へ連行され、幼馴染のモリオと東京に向かう道中が夢の世界とリアルをまたいだ不思議な旅となる映画の原作小説。ココネがしばし見る王国と囚われた魔法使いの姫のおとぎ話のような夢。自動運転技術を狙う渡辺一派の暗躍。夢とリアルの世界が交互に進んでゆく中で亡き母の想いとココネの知られざる関係が明らかになり、時を超えて失われかけていた想いが再び紡がれ、そして未来に繋がってゆく爽やかな結末はなかなか良かったですね。
オリンポスの郵便ポスト (電撃文庫)オリンポスの郵便ポスト (電撃文庫)感想
度重なる災害と内乱が続いた火星で長距離郵便配達員として働く少女・エリスが、改造人類・クロを神様がどこへでも誰にでも届けてくれるというオリンポスの郵便ポストまで届ける仕事を依頼される物語。入植時代からの生き残りのクロと、両親を探して郵便配達員を続ける少女の二人による長い旅路。その過程で多くの人に出会い、いくつもの困難に遭遇することで絆が育まれてゆき、それぞれが秘密を抱え意外な縁もあった二人が想いを通わせてゆく物語は、その真実に近づいてゆくたびに切ない気持ちにもなりましたがとても良かったですね。次回作も期待。
読了日:03月12日 著者:藻野 多摩夫
賭博師は祈らない (電撃文庫)賭博師は祈らない (電撃文庫)感想
十八世紀末ロンドン。うっかり大金を得た賭博師ラザルスが仕方なく購入させられたのは、喉を焼かれて声を失った奴隷の少女・リーラ。不器用な二人が戸惑いながらも心通わせてゆく物語。師の教え通り勝たない賭博師としてこれまで生きてきたラザルスの失敗。放り出すわけにもいかず感情に乏しいリーラを教育しながら一緒に生活するようになる日々。徐々に打ち解けてゆく二人の拙い関係の変化が繊細な積み重ねで描写されていて、強奪されたリーラを奪還するため冷静に計算して最後まで完遂してみせたラザルスのありようがとても見事で心に響きました。
読了日:03月11日 著者:周藤 蓮
新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙II (電撃文庫)新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙II (電撃文庫)感想
教皇との戦いに備えハイランド王子から北の群島に住む海賊たちが味方にすべき存在か調べて欲しいと依頼されたコルたち。島に潜入し探るうちに黒聖母信仰の真実を目の当たりにする第二弾。相変わらず理想主義者な一面があるコルと、海賊の海への冒険に胸を躍らせるミューリ。黒聖母像を作る修道院のオータムが語る厳しい現実と、島にやってきた大司教やルウィック同盟が持ちかけたしたたかな取引。重苦しくてコルの信仰心が試される展開でしたが、それでも彼が苦悩しながら現実との折り合いをつけて見つけた光明に救われる思いでした。続巻も期待。
読了日:03月11日 著者:支倉 凍砂
ビブリア古書堂の事件手帖スピンオフ こぐちさんと僕のビブリアファイト部活動日誌 (電撃文庫)ビブリア古書堂の事件手帖スピンオフ こぐちさんと僕のビブリアファイト部活動日誌 (電撃文庫)感想
密かに朗読配信する高校生の前河響平と幼馴染だった卯城野こぐちが鎌倉のとある高校で偶然再会。こぐちが所属する図書部と旧図書室廃止の危機に二人で書評バトル「ビブリアファイト」に挑むスピンオフ作品。密かにラノベが大好きな響平と、引っ込み思案だけれど児童書が好きで本に関しては人が変わるこぐち。周囲もからかう不器用な二人の距離感や図書部存続を賭けての定番古典を中心とする書評バトルをベースに、ビブリア古書堂のあの人たちもアドバイス役として登場。ラノベらしいテイストをうまく組み合わせた青春小説としても面白かったです。
読了日:03月10日 著者:峰守 ひろかず
古書カフェすみれ屋と悩める書店員 (だいわ文庫)古書カフェすみれ屋と悩める書店員 (だいわ文庫)感想
ほろ酔い姉さんの初デート相手のつれない対応の理由、見つからない問い合わせ本の正体、おばあちゃんが食べたいサンドイッチ、恋人が別れを匂わせた原因をお客様に薦める本で解決する第二弾。相変わらず解決のヒントになる本を薦める紙野の教養や洞察力が凄まじいですが、答えを教えるのではなく本を読んでもらってお客さん自身に解決方法を委ねるスタンスがいいですね。美味しそうな料理を作る古書カフェのパートナーすみれさんとも着実に信頼を育みつつ安直な展開にしないあたりは好感。頼れる店員も増えてまた続巻が出るのを楽しみにしています。
読了日:03月10日 著者:里見 蘭
シネマガール (角川文庫)シネマガール (角川文庫)感想
真琴が勤める廃校寸前の大学総務課にがやってきた前理事長の孫娘・リラ。ハリウッドでストーリー分析家として活動してきた彼女に振り回されながらも、仲間とともに大学存続に動き出すお仕事コメディ。理事長を中心に廃校に動き出した大学を存続させるべく、調査を始める真琴やリラたち。そのアプローチや真琴が密かに憧れる恋の行方にも映画を挙げて示唆するリラは自由奔放で、周囲は彼女の言動に振り回されがちでしたけど、秘密を探るうちに明らかになってゆく意外な真実と、恋に友情にテンポよく進むストーリー展開を楽しく読むことができました。
読了日:03月09日 著者:吉野 万理子
仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?感想
「失敗学」の見地から仕事の効率化や最短ルートを取るための考え方を説いた一冊。全体としては検索や付箋といったすでによく使われているツールをベースに、それをいかに使うのかポイントを押さえた解説はとても分かりやすかったです。自分の記憶力には限界があって、だからこそどうするのかの分かりやすい仕組み作りを考えるのは大事なことですね。いかに1回で終わらせるか、仕事の工数をきちんと見極めらえるようにすること、好奇心を失わないよう考え続けることの重要性。まずは何を考えるべきなのか改めてポイントを整理することができました。
読了日:03月09日 著者:飯野 謙次
君が描く空 - 帝都芸大剣道部 (中公文庫)君が描く空 - 帝都芸大剣道部 (中公文庫)感想
東京藝術大剣道部に事情があって三年生になってから入部してきた唯。それを指導することになった主将の壮介と、剣道部員たちが織りなす青春群像劇。複雑な家庭の事情を抱えながらも、画廊への契約条件として提示された初段を取ることを承諾した唯。割り切った唯の言動に戸惑い心配する一方で、憧れの部員・綾佳への想いにも揺れる壮介。そろそろ進路を意識せざるをえない部員たちが突きつけられる才能とそれに向き合う覚悟はシビアで、各々が直面する状況もまたほろ苦かったですが、それでも変わらない想いが垣間見える結末はとても心に響きました。
読了日:03月09日 著者:里見 蘭
死と呪いの島で、僕らは (角川ホラー文庫)死と呪いの島で、僕らは (角川ホラー文庫)感想
沈没船が漂着した伊豆諸島東端にある須栄島。そこで村八分気味に扱われる美少女・椰々子と彼女が気になる同級生で名家の次男・杜弥たちが、島で起きる異変に巻き込まれてゆく青春ホラー。最初は親友の徹も含めた三人で謎解きするお話かと思って読んでいたのですが、海で死んだ男が甦り、巨大な人喰い鮫が現れ、さらにはブードゥー教などこれでもかと詰め込まれたカオスな状況。結果として終盤思わぬ展開になりましたが、あれだけ広げつつうまくまとめてみせたのは見事で、終わってみれば不思議と爽やかさすら感じさせる青春小説になっていました。
読了日:03月08日 著者:雪富 千晶紀
金曜日の本屋さん―夏とサイダー (ハルキ文庫)金曜日の本屋さん―夏とサイダー (ハルキ文庫)感想
「読みたい本が見つかる」と評判の駅ナカ書店・金曜堂は、倉井以外の三人全員が地元・野原高校出身。「読書同好会」復活を目指す現役野原高生・紗世がやってきたことをきっかけに過去が明らかになる第二弾。パン屋さん夫婦のすれ違いや過去の読書同好会のこと、そして店長の槙乃が大切に思っていた存在。1巻目含めたこれまでのエピソードが覆らない過去としていろいろ繋がって倉井に突きつけられましたけど、苦悩しながらもきちんと向き合って必死に考え思いを伝えた彼はとても素敵でした。これからどうなってゆくのか続巻の刊行を期待しています。
読了日:03月07日 著者:名取 佐和子
鵬藤高校天文部:君が見つけた星座鵬藤高校天文部:君が見つけた星座感想
高校入学直前に事故に巻き込まれた美月。入学が遅れ周囲に取り残されつつあった彼女がクラスメイトの誠に誘われるまま天文部に入部し、様々な出会いといくつかの事件に遭遇する青春ミステリ。入部していきなりの殺人事件には面食らいましたが、意外な結末に繋がってゆく事件の顛末と悪くない読後感、そして難しい状況を乗り越えるのに苦労していた美月が、誠やその幼馴染の村山といった天文部の面々と共に過ごしたり事件解決に関わってゆくうちに、その距離感の難しさを感じさせながらも少しずつ心を開いて行く展開はなかなか良かったと思いました。
読了日:03月07日 著者:千澤 のり子
モノクローム・サイダー あの日の君とレトロゲームへモノクローム・サイダー あの日の君とレトロゲームへ感想
高校最後の夏を迎えた平凡なゲームオタクの高校生・百式長之介が、昼休みの屋上でゲームをしている女の子・鯨武由美と出会い人生が動き出す自伝的小説。最初は彼女の前を通るくらいで精一杯だった彼が、勇気を出して声を掛けたことで始まった一緒にゲームをするようになる日々。なかなか思うようにいかないことばかりでしたけど、不器用でも諦めずにきちんと向き合おうと奮闘する百式くんと、共に過ごす日々を送るようになった鯨武さんが二人らしい形で積み重ねてきた関係がとても素敵だと思いました。続編もまた書籍で読めること期待しています。
読了日:03月06日 著者:鯨武 長之介
計画結婚 (文芸書)計画結婚 (文芸書)感想
とてつもない美人で頭もいいけど妙なところにこだわる久曽神静香が結婚?幼稚園からの唯一の友人や久曽神に恋をした美容師といった彼女に関わった人たちが、戸惑いながらも招待された結婚式に出席する物語。出席した友人によって語られる過去にあった静香の強烈なエピソード。一方で明かされてゆく新郎側出席者たちの事情と暴かれた新郎の過去。読めば読むほど何でこのような状況になったのかますます分からなくなっていきますが、そんな奇想天外に思える決断にも彼女にとっては確固たる理由があって、テンポよく進むストーリーは面白かったですね。
読了日:03月06日 著者:白河 三兎
ぼくのとなりにきみぼくのとなりにきみ感想
慎重で落ち着いた中学生のサクが、スポーツ万能で天真爛漫なハセや天然気味の同級生のチカとともに地元の古墳にまつわる謎の暗号解明に挑む青春小説。父親や妹との関係にもやもやしたものを抱える一方で、時には言動にイライラしつつチカのことが気になってゆくサク。言いたいことも言えなくて屈折した想いを抱えていた彼が、三人で謎解きを進める過程で事件解決に奔走したり暗号の意外な真実を解き明かしつつ、そんな積み重ねの先に変わるきっかけとなる着実な一歩があって、それを今後に期待感を抱かせる結末に導いてみせた素敵な物語でした。
読了日:03月05日 著者:小嶋 陽太郎
異世界居酒屋「のぶ」三杯目 (宝島社文庫)異世界居酒屋「のぶ」三杯目 (宝島社文庫)感想
相変わらず美味しい料理が提供されてゆく居酒屋のぶで、親子関係の修復や若領主の夫婦喧嘩、皇帝のお見合いも描かれる第三弾。美味しそうな描写とともに来客の中から人間関係の繋がりが広がりを見せる本作ですが、今回は夫婦関係や親子関係のありように触れるエピソードが多かったですね。個人的に良かったのは報告を読んでお忍びでのぶにやってきたセレスと、政略結婚的お見合いを忌避する皇帝コンラートの出会うべくして出会った二人の物語。幼王の粋な計らいも効いていて、それらをきっかけにしのぶもまた一歩踏み出したようで続巻が楽しみです。
読了日:03月04日 著者:蝉川 夏哉
妄想刑事エニグマの執着 (徳間文庫)妄想刑事エニグマの執着 (徳間文庫)感想
女の勘を通り越してオカルトじみた直感力で事件を解決に導く警視庁捜査一課の美女刑事江仁熊氷見子30歳が、相棒の真山刑事とともに難事件を解決に導く警察小説。エニグマって普通に名字かよとか、数学やら美術とか心理学といったすぐには結びつかないようなアプローチから(結果的に)事件解決に結びつけていくあたりが、著者さんらしいちょっと斜め上のアプローチのミステリでした。捜査方法以外はわりとまともなんですけどね。対照的なベテラン刑事とのやりとりもベタだなあと苦笑いしま