読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

男女バディで挑む!相棒ライトノベル22選

前々から唯一無二の男女バディものの企画はいつかやりたいと思っていたのですが、先日スニーカー文庫「1/2―デュアル― 死にすら値しない紅」を読んで今このタイミングしかないと気持ちに再び火がつきました(苦笑)男女のコンビ自体はもともとラノベの王道テーマで、定番の狼と香辛料など古くからあるジャンルですが、今回はその中でも比較的最近の作品を中心に、いかにもバディという感じの22作品を勢いで選んで作った企画です。どれも個人的に読んだことがあるオススメの作品ばかりです(とある飛空士への追憶は10年以上前の作品ですが自分の好みであえて入れましたw)。気になる作品があったらぜひ読んでみて下さい。

 

1.1/2―デュアル― 死にすら値しない紅 (角川スニーカー文庫)

殺されヒトとしての一部分を失い、引き替えに特殊能力を得て生き返る偽生者。偽生者を殺し直すために生きる限夏が、不老不死な偽生者の少女・伴を相棒とする近未来SF。ぎこちない距離感から始まった二人が挑む、偽生者による国家統一を掲げたテロ事件発生と、首謀者と伴を巡る凄惨な因縁。そんな彼女に限夏がいかにして並び立つ存在になりうるのかが問われる展開でしたけど、絶妙のタイミングで複雑な過去や葛藤も絡めつつ、絶望する彼女が直面する最悪の状況にも最後まで諦めずに挑み、見事に伴の相棒たることを証明してみせた結末は見事でした。

2.とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

 

空に生き甲斐を見出す傭兵飛空士シャルルが、次期皇妃ファナを送り届けるため、単機敵制空権内を翔破することを命じられる物語。秘密作戦のはずなのに皇子の迂闊な連絡で敵に作戦が筒抜けという状況下、二人が協力して切り抜けていくうちに、命じられたことに従うだけだったファナも本来の自分を取り戻し、お互い想いを育んでいきながら、でも叶わないと知っているその思いに葛藤する展開は切なくて美しく、何度も心を揺さぶられました。もし読んだことがなければぜひ読んでみて欲しい一冊。

3.天球駆けるスプートニク 未到の空往く運送屋、ネジの外れた銀髪衛精 (Novel 0)

西暦二〇三〇年、突如上空に現れた正体不明の飛行物体「衛精」の無差別攻撃で人類が空を奪われた世界。低空飛行に特化させた飛行艇ULFを駆る運び屋タクロウと銀髪犬耳少女チェルシーの物語。チームを組まない訳ありげな青年タクロウと駄犬扱いの相棒チェルシー。彼らに託した想いのため危険と最速の限界を乗り越えようとする二人の物語は、明らかになってゆく彼らの過去や事情によってガラリと印象も変わりますが、メリハリの効いた展開やギリギリを攻め続ける飛行描写、二人を中心とする人間模様がとても良くてぜひ続刊を期待したい作品ですね。

4.飛べない蝶と空の鯱  (ガガガ文庫)

飛べない蝶と空の鯱 〜たゆたう島の郵便箱〜 (ガガガ文庫)

飛べない蝶と空の鯱 〜たゆたう島の郵便箱〜 (ガガガ文庫)

 

霧の上に浮かぶ島々に人々が住んでいる世界で、空を飛ぶ武装郵便屋を営む少年ウィルと、その相棒ジェシカのお話。飛ぶことが下手なウィルと、風を読むことが得意でも、過去の事故で高所恐怖症になってしまったジェシカは、一人では飛べなくても二人でなら飛べる。不器用なジェシカの思い、全てを知った上でそれを支えるウィル。こういう足りない者同士が力を合わせてみたいな感じがいいですね。封書を通じて物語が紡がれ、二人の絆もまた育まれてゆく展開はとても素敵なのでぜひ読んでみて欲しいシリーズです。全6巻。

5.白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

 

人々が陸地のほとんどを失い、いくつかの巨大な船に都市国家を作ってわずかな資源を争う世界。船国を行き来して荷物を運ぶスワローの少年・シエルが、無人島に流れ着いた謎の少女・ステラと巡り合うボーイミーツガール。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせないシエル。理由を明かさないまま自分を荷物として運んで欲しいと依頼するステラ。その飛行は息苦しかった彼らにとって新鮮だけれど危険の連続でもあって、たびたび衝突しすれ違った彼らが力を合わせて乗り越えようと挑んだそのとても爽やかな結末にはぐっと来るものがありました。現在2巻まで刊行。

6.空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)

空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)

空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)

 

人造豊穣神の大崩壊で跋扈するようになった異形の怪物により人類が地上から追放された世界。小型ヘリ<静かなる女王号>を操り樹竜を狩るモズと相棒ヤブサメが、その腕を買われ旧都市新宿での大規模探索作戦に参加する近未来ファンタジー。豪快なモズと彼女に振り回されながちなヤブサメのコンビを中心に、立場の違う空団の面々と時にはいがみ合いながらも、強大な敵を相手にギリギリの戦いを繰り広げてゆく中で認め合うようになってゆく熱い展開に、その物語を締めくくる意外なオチもまた効いていました。現在2巻まで刊行。

7.コップクラフト (ガガガ文庫)

コップクラフト (ガガガ文庫)

コップクラフト (ガガガ文庫)

 

ラノベらしからぬハードボイルドっぽい表紙で、以前から気になっていたシリーズ。アメリカドラマのポリスアクションっぽいテイストと、異世界との接続というファンタジーが交じり合った、一見ミスマッチに思える世界が、思ったほど違和感なく溶け込んでいました。男臭いけどお人好しな刑事と、外界から来た世間知らずの騎士身分の少女が、最悪な出会いからなりゆきでコンビを組むことになり、いがみ合いながらも相棒になっていく話は面白かったです。村田蓮爾氏のイラストも良かったですね。あとがきもまた思わせぶりな遊び心があって楽しめますね。現在6巻まで刊行。

8.七日の喰い神 (ガガガ文庫)

七日の喰い神 (ガガガ文庫)

七日の喰い神 (ガガガ文庫)

 

人間に害を為す禍々しい神々マガツガミと祈祷師が戦う世界。元祈祷師の古川七日と喰い神の少女ラティメリアが、依頼を受けて神々を葬っていくダークファンタジー。目的のため彼女の力を必要とする七日と、彼が死んだら喰らう約束をするラティメリア。相棒と呼ぶには微妙な関係の二人ですが、その繊細な距離感の描写がとてもいいですね。世界観や登場人物たちも魅力的で、特に可愛らしさと残酷さを兼ね備えたラティメリアがよく動き、素晴らしいイラストともマッチして存在感がありました。明らかになってゆく二人と宿敵の因縁も楽しみなシリーズです。全4巻。

9.不戦無敵の影殺師 (ガガガ文庫)

「異能力制限法」で異能力の無断使用が厳禁される世界に暮らす「暗殺異能」に特化した冬川朱雀と相棒の少女小手毬の物語。事務所に所属しているもののテレビに出演して映えるような能力でもなく、密かに引き受けた裏仕事も失敗し、普通に生活しようとしたらむしろ小手毬がバイトで密かに高給を稼いだりとなかなか上手くいかず、ダメダメな生活一直線になりかけていましたが、そんな流れが続く中でも最後のチャンスを逃さずに活かしきった展開はいいですね。葛藤したり愚痴の多い朱雀と、それを支える小手毬の二人の会話がじわじわ来る感じです。全7巻。

10.東京侵域:クローズドエデン (角川スニーカー文庫)

厄襲に巻き込まれ幼馴染を失った高校生・秋月蓮次と、弟を失ったアイドルの弓家叶方。そんな二人がコンビを組んで、行方不明の大切な人を取り戻すべく人類の敵EOMが跋扈する禁止区域・東京に侵入を繰り返す物語。政府機関「救務庁」とも相容れないギリギリの状況の中で抱き続けてきた、取り戻したい大切な人を渇望する気持ちと、共に戦ってきた二人の絆。そんな絆を大きく揺るがす幼馴染にそっくりな少女。様々な思惑が交錯する緊迫感のある展開はテンポも良く、読むのもあっという間でした。現在3巻まで刊行。

11.ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

自分が書いた魔法の書を奪われたゼロが、半獣半人の傭兵と一緒に取り戻すため旅をする物語。魔法を生み出せる「ゼロの書」を作り出したゼロと、現実主義だけれど仲間を見捨てられない情に厚い傭兵。人との関わりが少なく情に乏しいゼロがそんな傭兵を気に入っていく過程はややあっさりめでしたが、共に旅するうちに交流を積み重ねて変わってゆく関係があって、世界観や構成もしっかりと手堅く作られていて、物語として完成度も高いですね。じっくり書いている分文章はやや重いですが、広がっていくその世界を楽しめるシリーズです。全11巻。

12.白銀のソードブレイカー (電撃文庫)

聖剣で世界を護る7人の剣聖を殺そうとする少女エリザと、家族を殺した仇を探している傭兵レベンスの物語。バトル多めで、剣聖殺しエリザの剣技の拙さはちょっと気になりましたが、戦っている時と平時のまだ幼い感じのギャップは可愛くて、またレベンスとの組み合わせもなかなか良かったと感じました。戦ったりエリザとの話の中で剣聖と剣魔の謎も徐々に明らかになっていきますが、一方でまだエリザやその剣にも秘密があったりで、二人の道中を楽しめるシリーズです。全4巻。

13.D9―聖櫃の悪魔操者― (電撃文庫)

D9―聖櫃の悪魔操者― (電撃文庫)

D9―聖櫃の悪魔操者― (電撃文庫)

 

悪魔召喚して故郷を滅ぼした兄を倒すため悪魔メルヴィーユと契約した少年が、悪魔憑きとなって二人で兄を探す旅を続けるお話。クールで素っ気ないけど優しいソーマは、強力な悪魔も打ち破る力を持っていますが、それもメルヴィーユと二人力を合わせてこそ力を発揮できる関係。そんな二人の連携が問われるところが、お話の肝なのかなと思いました。ソーマ大好きな可愛い悪魔メルヴィーユも、作中に出てくる悪魔とは一線を画する存在で、話の謎にも深く関わっている模様。テンポ良く進むストーリーも好印象で楽しめます。全3巻。

14.この大陸で、フィジカは悪い薬師だった (電撃文庫)

この大陸で、フィジカは悪い薬師だった (電撃文庫)

この大陸で、フィジカは悪い薬師だった (電撃文庫)

 

エイル教の新米角守となったアッシュが、教典に記された禁忌を冒し『害獣』を治療する異端者の薬師フィジカに命を救われ、二人で共に旅するファンタジー。経験不足もあって何事も教典に書いてあることを前提に善悪を判断しがちな頭の堅いアッシュと、そんな彼に呆れながら出会った害獣とされるものたちにきちんと向き合って治療し、もうひとつの真実を突きつけてゆくフィジカ。教えと現実の乖離にどうあるべきか苦悩するアッシュが、危機に陥ったフィジカを救い信頼関係を育んでゆく過程はとても良かったです。全2巻。

15.ガーリー・エアフォース (電撃文庫)

突如出現した謎の飛翔体ザイに、母親と第二の故郷を奪われた少年鳴谷慧が、彼を救ったドーターを操る少女グリペンと出会うボーイミーツガールな物語。ザイに対抗する兵器として基地でも周囲から距離を置かれ、挙動が不安定で廃棄予定も囁かれているグリペン。そんな彼女が安定する存在として認識される慧が、その過酷な生い立ちを知って葛藤しながらも彼女を支えようと決意するストーリーは良かったと思いました。兵器とされるグリペンらも可愛くて、展開も設定もポイントを押さえた説明で複雑になり過ぎずわかりやすかったです。現在10巻まで刊行。

16.夜桜ヴァンパネルラ (電撃文庫)

吸血鬼が科学的に認められた近未来。人々を吸血種から護る『捜査第九課』に所属する真祖の少女・櫻夜倫子と、何も知らされないまま配属された新人・桐崎紅朗がコンビを組んで吸血鬼に挑む物語。業を背負って孤独に戦い続けてきた倫子と、辛い過去がありながら底抜けにバカで前向きな紅朗。どうしても凄惨なバトルに繋がりがちな展開で、著者さんらしい二人のボケツッコミが癒やしになっていましたね。敵味方の多くに忌避される倫子の終わりの見えない戦いがどこに向かうのか、紅朗の存在が重要なキーマンになっていきそうな予感のシリーズです。現在2巻まで刊行。

17.ラストラウンド・アーサーズ (ファンタジア文庫)

来るべき世界危機を救うため真なるアーサー王を決める「アーサー王継承戦」完璧チート高校生・真神凜太朗が、暇つぶしのためあえて最弱と呼ばれる残念少女・瑠奈に協力する現代異能ファンタジー。金のために聖剣を売り払ってしまったり、召喚した「騎士」ケイ卿にコスプレさせて利用する瑠奈。あざとい生徒会長選の票稼ぎやデートさせられたり彼女のわがままに振り回されつつも、垣間見えるその真っ直ぐな想いに王の資質を見出して、曲者ぞろいの強敵を相手に共に戦い絆を育んでいく王道展開は面白かったです。現在2巻まで刊行。

18.デボネア・リアル・エステート  (GA文庫)

ダークエルフの呪いで少年の姿になってしまい餓死寸前な伝説の傭兵・ルーウィンが、人使いが荒く金に汚いハイ=エルフ・デボネアの下僕募集に応じ、不動産屋の仕事を手伝うことになる物語。見た目で伝説の傭兵と誰にも信じてもらえないルーウィン、唯我独尊で守銭奴なのに、どこかちぐはぐな行動を見せるデボネアの目的。ツンデレデボネアとルーウィンのコンビだけでなく、無邪気な魔法人形ココや侠気のヴェローニカといった魅力的なキャラたちを上手く配した勢いのあるストーリー展開は、それでいて意外と筋立てもしっかりしていて好感です。全3巻。

19.幻葬神話のドレッドノート (GA文庫)

幻葬神話のドレッドノート (GA文庫)

幻葬神話のドレッドノート (GA文庫)

 

一族を神話級幻獣に滅ぼされ、全ての神話級幻獣を滅ぼす方法を探るために養成校に入学した御霊志雄とその嫁・日輪の物語。入学式早々新婚宣言したり惚気けたりとバカップル全開の二人でしたが、一方で二人は血の滲むような特訓で突出した存在でもあり、志雄は一族の仇を討つため、傍らに立つことを選んだ日輪も一族のしがらみを乗り越えてきていたりで、イチャイチャだけで終わらずに適度な緊張感もあるバランス感覚がよかったです。因縁の再会を果たしたバトル面も強敵相手に二人で力を合わせて討滅するならではの展開はグッと来るものがあるシリーズです。2巻まで刊行。

20.黒鋼の魔紋修復士 (ファミ通文庫)

黒鋼の魔紋修復士1 (ファミ通文庫)

黒鋼の魔紋修復士1 (ファミ通文庫)

 

神巫になったばかりの少女・ヴァレリアと、実力はあるものの性格に難のある紋章官ディミタール。肌に刻まれた魔紋を委ねる恥ずかしさや、プライドが高いのに自分の世間知らずを痛感させられるヴァレリアは、容赦無いディミタールの物言いに当然の如く反発するわけなんですが、そんな分かりやすい性格の彼女に現実を突きつけながらも囚われた彼女を救い出し、その思うところはよく理解していたようですね。反発することの多かった二人が、どう成長し絆を育んでいくのか楽しみなシリーズです。全13巻。

21.竜と正義 人魔調停局 捜査File.01 (NOVEL0)

竜と正義 人魔調停局 捜査File.01 (NOVEL0)

竜と正義 人魔調停局 捜査File.01 (NOVEL0)

 

人間と魔物が共存する現代。人魔社会の平和を維持する調停局の実働官ライルが、帰属するために魔物の里からやってきた竜族の姫を仲間とともに陰謀から守り抜こうと奔走する物語。説明が全体的に冗長で、文章のテンポがあまり良くないのは気になりましたけど、それ以上に現実の世界にファンタジーをうまく同居させつつ、護衛しながらも姫や仲間とも楽しみつつな日常パートの部分と、襲われての戦闘パートのメリハリは上手いですね。今後の展開を期待したいシリーズです。現在2巻まで刊行。

22.黒獅子城奇譚 (ダッシュエックス文庫)

黒獅子城奇譚 (ダッシュエックス文庫)

黒獅子城奇譚 (ダッシュエックス文庫)

 

旅の途中で雷雨に襲われ、黒獅子城と呼ばれる古い砦に逃げ込んだ放浪の騎士グレンと神官を装う魔術師のリュー。そこで同じく雨宿りする先客たちと出会い、陰謀に巻き込まれてゆく物語。視察を終えた騎士たち三人と義眼の老騎士、商人一家、吟遊詩人、町娘との一夜限りだったはずの出会い。老騎士殺害から続く惨劇と、不穏な雰囲気の中で明らかになってゆく複雑に絡み合ったそれぞれの関係。大人な関係にあるワケありな二人が事件を解決に導いてゆく展開は著者さんの新境地ですかね。目的があって旅を続ける二人のその後をまた読んでみたい作品です。

 

以上です。読んだ本の中から選んだこともあって、当然全部カバーできているわけではないので、こんな作品もあるよ的な他の方の企画も是非期待しています(ぇ

2018年下半期 続きが気になるライトノベル10選(2018下期好きラノ投票用エントリ)

また好きラノの投票時期がやってきました。

今回はどうしようかなといろいろ思案したのですが、これまでの作ったまとめ記事を踏襲しても面白くないので、とりあえず自分が続巻を読みたいシリーズということで10作品セレクトすることにしました。これはシリーズとして大丈夫だろうという作品は自分が心配することもないと思うので、続巻がどうなるのか気になる、シリーズとして是非続いて欲しいと思う作品から優先して選んでます(ぇ

 

注目としてオーバーラップ文庫虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん」はかのレーベルでは珍しい青春小説ですが、是非一読してみて欲しい作品です。あとは面白い青春小説を観光しているレーベルとして注目しているスニーカー文庫から「継母の連れ子が元カノだった」「青春敗者ぼっち野郎、金髪尻軽ギャルのお気に入りになる」「毒舌少女のために帰宅部辞めました」の3点、最近戦記物を出すようになってきたGA文庫からは「辺境貴族、未来の歴史書で成り上がる」、最後に自分は普段こういうライトノベル企画ではラノベレーベル以外からは選ばないのですが、これは読んでおきたい一冊ということであえて新レーベル一二三文庫から「隣の席の佐藤さん」を選出しました。

 

このラノの順位も気になるところではありますが、それ以上に分が選んだ作品の続きを是非読みたいという思いで今回選んだので気になる本があったら是非読んでみて下さい。

 

1.キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

 

余命半年を宣告されて大学を中退し実家でニートと成り果てた松本修。昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れた修が、かつて突き放した因縁の幼馴染・桐山鞘音と再会する青春小説。人生に絶望して投げやりな日々を送る修の後悔と、シンガーソングライターとして不調に陥り戻ってきた鞘音の覚悟。トミさんを介して昔のような不器用な二人の交流が再開して、鞘音と最後の共演のために覚悟を決めて自らを追い込んでゆく修。その過程で取り戻してゆくお互いの大切な想いと、彼らの決意がもたらしたエピローグにはぐっと来るものがありました。19年2月に2巻刊行予定。

【18下期ラノベ投票/9784041070918】

2.七つの魔剣が支配する (電撃文庫) 

名門キンバリー魔法学校に入学したオリバーが運命的な出会いを果たしたサムライ少女・ナナオ。魔法生物のパレードから始まるトラブルの連続に巻き込まれつつ出会った仲間たちと乗り越えてゆく学園ファンタジー。器用に魔法を応用しながら使いこなすオリバーと剣に突出した力を持つナナオを中心に、それぞれの想いを抱えながら入学した仲間たちと力を合わせ、危機的状況の連続を乗り越えて絆を育んでゆく展開がなかなか良かったからこそ、深い因縁を感じさせるエピローグが今後の波乱を予感させて、ここからどうなるのか楽しみな新シリーズですね。19年1月に2巻刊行予定。

【18下期ラノベ投票/9784048939645】

3.ラストラウンド・アーサーズ2 聖女アーサーと赤の幼女騎士 (ファンタジア文庫)

 一緒に住む提案をした凛太朗に、その全財産を使い込み屋敷を買うという相変わらずのロクでなしっぷりを発揮した瑠奈。そんな二人の前に凛太朗を師と慕うアーサー王候補の一角・エマとその騎士・ラモラック卿が現れる第二弾。凛太朗を陣営に引き入れようと積極的に来るエマの魅力が輝く一方で、やることなすこと裏目に出て空回りする残念な瑠奈というお約束展開ですが、それでも一本芯の通ったストーリーの中で魅力的なキャラがよく動いて、複雑に絡み合う想いをバトルで決着をつける熱い展開の安定感は流石の一言。今後も期待できるシリーズですね。

【18下期ラノベ投票/9784040728315】

4.虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん plan.1 (オーバーラップ文庫)

虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん plan.1 (オーバーラップ文庫)

虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん plan.1 (オーバーラップ文庫)

 

たまたま虐殺スペックな女子高生・赤三月朝火の自殺を阻止した低スペックの九木野瀬伊吹。翌朝、朝火から脅迫されて『人生の攻略本作り』を手伝わされる青春小説。容姿端麗の人気者で多才な朝火の素の性格はわりとあれで、低スペックと言われる九木野瀬は屈折した現実主義の努力家。まずは周囲に妬まれて孤立する下級生・黒花(彼女もいい性格w)が直面する困難の克服に協力する展開でしたが、何だかんだでわりといいコンビっぷりを見せた二人はそれぞれ事情を抱えているようで、その関係が今後どう変わってゆくのか続巻に期待大の新シリーズです。

【18下期ラノベ投票/9784865544251】

5.継母の連れ子が元カノだった (角川スニーカー文庫)

中学生の時に恋人となり些細なことですれ違い、卒業を機に別れた伊理戸水斗と綾井結女。そんな二人が高校入学を機に再婚した親の再婚相手の連れ子として同居する青春ラブコメディ。思ってもみなかった形での最悪の再会と些細なことで衝突する二人。終わったはずなのにふとした拍子に思い出す黒歴史に赤面し、素直になれないけれど何だかんだ言いながらお互いの存在を気にかけていたり再評価したり。恋愛ROM専やぐいぐい介入してくる友人たちに振り回されつつ、再び少しずつ育まれてゆく二人の関係がどう変わってゆくのか続編がとても楽しみです。

【18下期ラノベ投票/9784041076842】

 

6.青春敗者ぼっち野郎、金髪尻軽ギャルのお気に入りになる (角川スニーカー文庫)

ぼっちで昼休みに勉強ばかりしているガリ勉の一条純が、いかにもギャル風で噂も多い橘かれんに勉強を教えてほしいと請われ、そこからいろいろ変わってゆく青春ラブコメディ。ぐいぐい来るかれんに何で自分がと思ううちに教室でも話しかけられるようになって、クラスでの立ち位置も変わってゆく一条。最初は戸惑いながらもちゃんと向き合うようになってゆく彼は面倒見のいいやつで、見た目があれなかれんもまた真っすぐで応援したくなる二人ですね。かれんを意識するようになってツンデレ気味だった一条が陥落する日も近い?ということで続刊に期待。

【18下期ラノベ投票/9784041074619】

7.毒舌少女のために帰宅部辞めました (角川スニーカー文庫)

毒舌少女のために帰宅部辞めました (角川スニーカー文庫)

毒舌少女のために帰宅部辞めました (角川スニーカー文庫)

 

帰宅部生活を謳歌していた高校生・榊木彗が、美人教師の赤草先生から問題児・日羽アリナの毒舌を更生しろと命じられて放課後一緒に過ごす日々が始まる青春小説。毒舌で周囲を寄せ付けないアリナとそれをさらっと受け流す彗が、放課後に二人で一緒に彼女のコミュ力向上のため部活動や生徒会を手伝う日々。第一印象は最悪だった二人のやりとりが少しずつ変わってゆく中、アリナが密かに抱えている事情が明らかになる転機もあったりで、まだまだこれからな彼らの距離感がこれからどう変わってゆくのか、これは続巻に期待したくなる新シリーズですね。

【18下期ラノベ投票/9784041075487】

8.公女殿下の家庭教師 謙虚チートな魔法授業をはじめます (ファンタジア文庫)

公女殿下の家庭教師 謙虚チートな魔法授業をはじめます (ファンタジア文庫)
 

 魔法の実力が人生を左右する世界で、膨大な魔力を持ちながらなぜか魔法を構築できない公爵令嬢・ティナ。そんな彼女の家庭教師に任じられたアレンが、その封じられた才能を開花させて彼女の世界を変えてゆく物語。庶民出身ながら屈指の実力を持つアレンに師事して努力するティナや専属メイド・エリーの成長、アレンに甘える年下ヒロインたちの可愛らしい姿が物語の肝なんですかね。複雑な心情の親たちも絡むヒロインの座争いも熾烈ですが、ラスボス的存在感があるアレンの相方・リディヤは手強そうです(苦笑)これは続巻も期待の新シリーズですね。

【18下期ラノベ投票/9784040730219】

9.辺境貴族、未来の歴史書で成り上がる ~イリスガルド興国記~ (GA文庫)

辺境の貧乏領地を治める若き領主アルトが偶然召還した刻の精霊クロノ。彼女と半強制的に契約を結び未来を書きかえることのできる歴史書を手に入れたアルトが、楽に暮らしたいという夢を叶えるため動き出す歴史ファンタジー。歴史書には書いても実現不可能なことは消えてしまう制約がある中、思いとは裏腹に様々な試行錯誤が必要な状況で着実な手を打てる才幹がアルトにあって、緊張感のある展開に幼馴染エレナや王女といったヒロインを絡めてゆくストーリーは面白かったです。ここからどこまで盛り上げていけるか今後に期待大の新シリーズですね。

【18下期ラノベ投票/9784797398441】

10.隣の席の佐藤さん (一二三文庫)

隣の席の佐藤さん (一二三文庫)

隣の席の佐藤さん (一二三文庫)

 

地味でパッとしない佐藤さんと隣の席になった山口くん。隣の席で交流を積み重ねながら、二人の心境が少しずつ変化してゆく青春小説。始めは鈍くさいけど素直な佐藤さんに調子が狂いイライラしていたのに、いつの間にか彼女が気になってゆく山口くん。だからといってすんなり上手くいくわけでもなくて、ままならない状況でどう接するのがいいのか懸命に考える山口くんが微笑ましいですね。いろいろ遅れがちな彼女を気にかけて寄り添う山口くんの姿勢はカッコよくて、周囲にもバレバレで生温かく見守る二人のその後がまた読んでみたいと思いました。

 

【18下期ラノベ投票/9784891995317】

 

今回からこのラノTwitter投票は随分やりやすくなったそうなので、まだ参加していない方は自分の良かった本を投票してみましょう。以上です。

 

2018年12月に読んだ新作おすすめ本

12月に読んだ本にはなかなか興味深い新刊が目白押しでした。オーバーラップ文庫久しぶりの青春小説「虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん」やMF文庫Jの「聖語の皇弟と魔剣の騎士姫」は今後に期待の新シリーズで、「かぐや様は告らせたい」「憂国のモリアーティ」のノベライズも良かったですし、三田千恵さんの「あの日、恋に落ちなかった君と結婚を」(メゾン文庫)やオレンジ文庫新潮文庫nexの挙げた作品も期待していいと思います(というかライト文芸レーベルの掲載作品はみんな良かったです)。新レーベル一二三文庫の「隣の席の佐藤さん」も注目の一冊で、ポプラ文庫ピュアフルから「アンドロイドの恋なんて、おとぎ話みたいってあなたは笑う?」、角川文庫から「准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき」あたりも読んで欲しい一冊です。全体的に読んで良かったなと思える作品が多かった一ヶ月でした。

 

虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん plan.1 (オーバーラップ文庫)

虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん plan.1 (オーバーラップ文庫)

 

たまたま虐殺スペックな女子高生・赤三月朝火の自殺を阻止した低スペックの九木野瀬伊吹。翌朝、朝火から脅迫されて『人生の攻略本作り』を手伝わされる青春小説。容姿端麗の人気者で多才な朝火の素の性格はわりとあれで、低スペックと言われる九木野瀬は屈折した現実主義の努力家。まずは周囲に妬まれて孤立する下級生・黒花(彼女もいい性格w)が直面する困難の克服に協力する展開でしたが、何だかんだでわりといいコンビっぷりを見せた二人はそれぞれ事情を抱えているようで、その関係が今後どう変わってゆくのか続巻に期待大の新シリーズです。

キミのこと黒歴史もまとめて……ぜーんぶ大好きだよ (角川スニーカー文庫)

キミのこと黒歴史もまとめて……ぜーんぶ大好きだよ (角川スニーカー文庫)

 

意外と可愛い館崎栞奈のネット上での黒歴史をうっかり知ってしまった直後に告白された先名櫂。先名もまた黒歴史を彼女に知られていて、忘れたい過去を知る者同士の恥ずかしい青春ラブコメネゲットを嫌って告白を速攻で断った館崎の変わりたいという思いを、内心無理だとは思いつつ応援する先名。試行錯誤する中で意外な趣味から友人もできた館崎が直面する突然の暗転と、そのままにできなかった先名に突きつけられた皮肉な真相もまたほろ苦い青春だったりで、遠回りはしたけれどいろいろ向き合えるようになってゆく結末はなかなか良かったですね。

黒獅子城奇譚 (ダッシュエックス文庫)

黒獅子城奇譚 (ダッシュエックス文庫)

 

旅の途中で雷雨に襲われ、黒獅子城と呼ばれる古い砦に逃げ込んだ放浪の騎士グレンと神官を装う魔術師のリュー。そこで同じく雨宿りする先客たちと出会い、陰謀に巻き込まれてゆく物語。視察を終えた騎士たち三人と義眼の老騎士、商人一家、吟遊詩人、町娘との一夜限りだったはずの出会い。老騎士殺害から続く惨劇と、不穏な雰囲気の中で明らかになってゆく複雑に絡み合ったそれぞれの関係。大人な関係にあるワケありな二人が事件を解決に導いてゆく展開は著者さんの新境地ですかね。目的があって旅を続ける二人のその後をまた読んでみたい作品です。

聖語の皇弟と魔剣の騎士姫 ~蒼雪のクロニクル~ I (MF文庫J)

聖語の皇弟と魔剣の騎士姫 ~蒼雪のクロニクル~ I (MF文庫J)

 

「聖語」と呼ばれる言語体系が魔法の如く物理世界を書き換える時代。史上最強の聖語騎士たった姉の教えを受けた少年・カレンとその幼馴染・雪音に、とある事件の真相を探るよう極秘任務が下される魔法学園ファンタジー。複雑な立ち位置ゆえに目立たたぬよう過ごすカレンと、彼に寄り添う学年首席の雪音、そして彼を慕う留学生・カロリーナ。そんな三角関係が軸かと思った矢先の急展開、疑心暗鬼にもなりかねない状況の中で、ギリギリの戦いを切り抜けた先にあった結末がまた業が深そうで、どういう物語になってゆくのか今後に期待の新シリーズです。 

第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 1 (ヒーロー文庫)

第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 1 (ヒーロー文庫)

 

隣国との戦争が近づく中で第七師団師団長アレクシスに留学先から救出されたリーデルシュタイン帝国の第六皇女ヴィクトリア。見た目幼女な彼女が年上で強面の黒騎士アレクシスに降嫁するファンタジー。印象的な出会いと降って湧いたヴィクトリアの結婚話。実は相当なポテンシャルを秘めたヴィクトリアの迷いなき決断に、怖がられて女性に縁がなかったアレクシスも最初戸惑い気味でしたけど、やりとりを重ねていく中で育まれていった信頼する君主に絶対の忠誠を誓う騎士のごとき関係がここからどう変わるのか、二人で行う辺境伯領経営も楽しみです。 

 

かぐや様は告らせたい 小説版 ~秀知院学園七不思議~ (JUMP  jBOOKS)
 

体育祭前の知られざる物語が明らかになる、相手から告白させようと日常の全てで権謀術数の限りを尽くす物語の小説版。生徒会室に届いた一通の脅迫状らしき手紙を発端として勃発した頭脳戦、藤原がGMを務めるTRPGでの攻防、七不思議に呪われる石上、謎めいたかぐやの宣言から始まった学園内での指輪探し。マンガと活字の違いのせいかマンガほど勢いは感じなかったですが雰囲気は十分にあって、緻密に積み上げてゆく頭脳戦の数々はこういう形でも面白かったです。柏木さんと二人だけの世界を作ってしまう彼氏、名前覚えられてないですね(苦笑)

憂国のモリアーティ: “緋色”の研究 (JUMP  jBOOKS)

憂国のモリアーティ: “緋色”の研究 (JUMP jBOOKS)

 

憂国のモリアーティ』本編では描かれなかったオリジナルエピソードを収録した小説版連作短編集。酒場での賭けポーカーでモランのイカサマを見抜いた男に興味を持つウィリアム、任務で飼育することになった熱帯魚に熱を上げるルイス、アルバートとモランのワインの飲み比べ対決、ジョンがシャーロックの変わりに探偵となって奔走したりと、シリアスな展開が続く本編ではなかなか描かれる機会のないサイドストーリー的なエピソードがあって、原作の雰囲気を失わないようなテイストで登場人物たちの奥行きをうまく作り出していて興味深く読めました。

 

 

あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)

あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)

 

結婚を考えていた恋人に振られ、将来に不安を抱く持田麻衣。地元に帰ることを決めた麻衣が偶然高校のときのクラスメイト今井優人に再会、「恋のない結婚」を現実的に考えはじめる物語。高校時代の30歳になってもお互い独身だったら結婚しようという今井との冗談めいた約束。かつてお互いの恋を協力する関係だった二人の共同生活はしっくり来る部分もイライラする部分もあったりで、そんな二人が一つ一つ乗り越えて迎えたラストにはじんわり来るものがあって、積み重ねていったエピソードが見事に繋がってゆくとても素敵な物語だったと思いました。

拝啓 彼方からあなたへ (集英社オレンジ文庫)

拝啓 彼方からあなたへ (集英社オレンジ文庫)

 

「自分が死んだらこの手紙を投函してほしい」と中学時代の親友・響子に託されていた手紙雑貨店「おたより庵」店主・詩穂。人づてに彼女の死を知った詩穂が手紙を開封し、その過去にまつわる事件を解き明かしてゆく物語。響子に託された手紙の違和感と周囲で起きる怪文書事件、苦手に感じていた常連客の城山に対する心境の変化と再会した元カレの執着。大人しく見える印象から周囲に振り回されがちだった詩穂でしたけど、それでも彼女には譲れないものや大切にしているものがあって、誠実に向き合う彼女らしさが導いた結末はなかなか良かったですね。

容姿端麗で成績優秀、非の打ちどころがないのに人と距離を置く月島桜子。苦悩から奇怪な秘密を抱えた彼女が原因を知る転校生・水瀬和葉と出会う青春幻怪鬼譚。桜子と同様に密かに抱える苦悩から鏡に写った自分にツノが生えはじめた、成績上位の美少年・周防紫生、クラス女子の一軍グループでいることに必死な土田知香、ムードメーカー的存在の門倉翔平。彼女たちが和葉と協力して元凶たる鬼を探す展開で、狭い世界で逃げ場もなく追い詰められてゆく彼らには仲間がいて、葛藤を抱えながらも支え合い絶望を乗り越える姿はぐっと来るものがありました。

誰にも言えない (集英社オレンジ文庫)

誰にも言えない (集英社オレンジ文庫)

 

旧財閥で日本有数のセレブ一族の家に生まれた女子大生の葵。大好きな3人の女友達を誘い避暑地に遊びに来ていた彼女たちが、「誰にも打ち明けていない秘密の話」を順番に打ち明けてゆくサイコホラー。招待した葵の友人でモデルの結衣、美人小説家の莉子、有望なアスリートのひまりという目を引く美女たちが明かしてゆく、誰も知らなかった彼女たちの秘密。それぞれの打ち明け話の中で垣間見える彼女たちの生々しい悪意と、真相を明かしながらも平然としている彼女たちには戦慄しましたが、その先にあった思わぬ展開と迎えた結末には驚かされました。

花嫁レンタル、いかがですか?: よろず派遣株式会社 (集英社オレンジ文庫)

花嫁レンタル、いかがですか?: よろず派遣株式会社 (集英社オレンジ文庫)

 

早世した有名女優の娘として目立たぬようひっそり生きようとした鵜崎真尋25歳。セクハラに遭い会社を辞めた真尋が少し変わった人材派遣会社の社長杉埜と出会い、挙式直前に逃げた花嫁の身代わりを依頼される物語。自己評価は低いけどお節介でメイクで地味にも美人にもなれる真尋が、同僚の灰谷とも関わり合いつつこなしてゆく花嫁の身代わり、女子会のために見栄を張るOLの後輩役、亡くなった娘の代わりに両親と食べ歩きなど、登場人物たちのエピソードも交えながら進んでいく展開はなかなか良かったです。続編あるならまた読んでみたいですね。

レトロゲームファクトリー (新潮文庫nex)

レトロゲームファクトリー (新潮文庫nex)

 

過去のゲームを移植するレトロゲームファクトリー社長・灰江田とプログラマー・コギーの元に伝説のUGOコレクション復活依頼が持ち込まれ、横取りを狙う大手企業を抑え封印ゲーム復活に奔走するお仕事小説。古巣の橘に騙されたコギーを救った灰江田。懐かしいレトロゲームを取り上げながら、手段を選ばない橘の様々な揺さぶりに振り回されつつ開発者の過去の因縁を探りながら、ゲーム愛と家族愛のために動く灰江田の想いが周囲を動かし、力を合わせて開発者の真意を見出しゲームに愛がない橘の企みを乗り越えてみせる展開はなかなか熱かったです。

昭和少女探偵團 (新潮文庫)

昭和少女探偵團 (新潮文庫)

 

和洋折衷文化が花開く昭和6年。帝都の女学校に通う花村茜と級友たちに怪文書が届き。疑われた親友を庇う茜が謎めいた才女・夏我目潮や謎めいた才女・夏我目潮とともに少女探偵團を結成するレトロ青春ミステリ。怪文書の正体、ドッペルベンゲル遭遇の真相、そして級友の元婚約者が失踪した事情。のんびりとした茜の呼びかけで結成された少女探偵團が周囲で起きる事件を解決してゆく展開で、たびたびの視点変更が読んでいて多少混乱に繋がった感はありますが、登場人物たちもキャラが立っていて、のんびりとしたレトロな雰囲気を楽しめた一冊でした。

朝比奈うさぎの謎解き錬愛術 (新潮文庫)

朝比奈うさぎの謎解き錬愛術 (新潮文庫)

 

父の跡を継いだもののぱっとしない探偵の迅人。彼のことが好き過ぎるストーカー美少女・朝比奈うさぎが、事件に巻き込まれがちな迅人を救うため謎を解いてゆく連作短編集。行く先々で殺人事件に巻き込まれて、なぜか容疑者扱いされてしまう迅人と、愛を証明しながら事件を解決してしまううさぎ。迅人のことしか考えていないうさぎがなぜ論理的に解決できるのか謎ですが、うさぎの重過ぎる愛を戸惑いながらも何だかんだで受け入れつつある迅人はいいコンビで、二人を見守る姉を交えたやりとりも面白かったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。

長年勤めた小さな会社を退職した千束。実家からの電話で慌てて北陸の実家に戻った彼女が、名刹・成巌寺と実家の三百年以上続く精進料理屋「せんねん食堂」を巡る騒動に巻き込まれ、イケメン僧侶の幼馴染・清道&隆道兄弟と再会する物語。妥当な提案をろくに話すら聞かずにこじらせてゆく展開は田舎あるある話ですが、実家に居場所がなくなったと感じていた千束と、地域を盛り上げるために手を尽くす深謀遠慮な幼馴染・隆道もまたいろいろ複雑にこじらせていて、地域再興を二人で盛り上げていけるのか、二人の関係もどうなるのか続刊に期待ですね。 

終わらない夏のハローグッバイ (講談社タイガ)

終わらない夏のハローグッバイ (講談社タイガ)

 

あらゆる感覚を五感に再現する端末・サードアイを手に入れたことで装いを変えた世界。そのきっかけとなりながらも二年前から眠り続ける幼馴染・結日を救うため、日々原周が仲間とともに立ち上がるひと夏の物語。サードアイの開発者で鍵を握る結日の姉・沙月の存在と、計画に手を貸す同級生・先崎との邂逅。打開する方法を模索するうちに見出したひとつの真相。立ち位置が変わっても何かを引き起こす彼女と、そんな彼女のために奔走する周という二人の関係は変わらなくて、可能性を信じて諦めず何度でもチャレンジし続ける周を応援したくなりました。

図書室の神様たち (小学館文庫キャラブン!)

図書室の神様たち (小学館文庫キャラブン!)

 

とある本を探す女子高生の爽風が、学校の裏庭に建つ古い図書室で同じ学年らしいが全く顔を知らない生徒・笹木誠と出会い、様々なことが少しずつ変わってゆく青春小説。不仲の両親が頻繁に喧嘩し帰りたくない居心地の悪い家、無視されたままのクラスメイト、孤立するのに爽風と一線を引く親友、そして図書室でたびたび出会い重ねてゆく謎めいた誠とのやりとり。そこから見て見ぬふりを止め一歩を踏み出した爽風には逆風もありましたけど、それでも諦めずに手を伸ばして向き合おうとする彼女の頑張りが引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。

隣の席の佐藤さん (一二三文庫)

隣の席の佐藤さん (一二三文庫)

 

地味でパッとしない佐藤さんと隣の席になった山口くん。隣の席で交流を積み重ねながら、二人の心境が少しずつ変化してゆく青春小説。始めは鈍くさいけど素直な佐藤さんに調子が狂いイライラしていたのに、いつの間にか彼女が気になってゆく山口くん。だからといってすんなり上手くいくわけでもなくて、ままならない状況でどう接するのがいいのか懸命に考える山口くんが微笑ましいですね。いろいろ遅れがちな彼女を気にかけて寄り添う山口くんの姿勢はカッコよくて、周囲にもバレバレで生温かく見守る二人のその後がまた読んでみたいと思いました。

自意識過剰探偵の事件簿 (一二三文庫)

自意識過剰探偵の事件簿 (一二三文庫)

 

自称探偵の女子高生・雲雀野八雲の暴走に振り回されながらも、押し付けられた助手役をこなす幼馴染の明義。そんな彼女の尻拭いに明け暮れる中、体育倉庫で事件が発生する青春ミステリ。陸上部の部長候補二人が一晩閉じ込められた体育倉庫監禁事件と明義に届いた恋文発覚事件。事件を愛し過ぎて暴走する探偵に振り回される体を装いながら、ミスリードした隠れ敏腕助手が暗躍する構図をどう評価するか難しいですね(苦笑)登場人物の名字が難読ばかりなのは話の流れを阻害していて閉口しましたが、拗らせてしまっている二人の今後に期待ということで。

 

義肢のリハビリ専門病院で事務スタッフとして働く、実はある研究機関から送り込まれたアンドロイドの佐藤真白。そんな彼女が事故で左腕を失い、義肢のリハビリのため病院へやってきていた青年・響に出会い処理しきれない感情が生まれてゆく物語。自分の中でうまく処理しきれない感情を持て余す真白と、ぎこちない彼女にしっかりと向き合ってくれる響。そんなアンドロイドには本来ないはずの「エラー」に心揺れる彼女が真実を知ってからの思わぬ展開は切なくて、いつかこんな日が来るんだろうかとつい思ってしまうピュアで甘酸っぱい恋の物語でした。

准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき (角川文庫)

准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき (角川文庫)

 

幼い頃に遭遇した怪異によって人の嘘がわかる耳を持ち、それゆえに孤独になってしまった大学生・深町尚哉。そんな彼が怪異に目がないイケメン准教授・高槻と出会い、常識担当の助手として様々な事件に遭遇するミステリ。いないはずの隣の空き部屋から聞こえる奇妙な音の正体、ふと気がつくと周囲にいつも針が落ちている呪い、肝試しに出かけて神隠しに遭った少女。高槻を理解する周囲の人々もなかなか印象的で、孤独な尚哉を分け隔てなく受け入れてくれる彼らの優しさが染みますね。幼い頃に奇妙な体験をした二人の今後に期待したい新シリーズです。

科警研のホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

科警研のホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

それぞれ思うところがあって科学警察研究所・本郷分室にやってきた、北上・伊達・岡安の三人の研修生たち。科警研の仕事に興味を示さない室長・土屋に困惑しつつ、事件解決に挑む警察ミステリ。容疑者が黙秘を続ける理由、司法解剖でも特定できなかった死因、監視カメラに映った双生児、連続辻切り事件の犯人。三人の研修生がそれぞれ持ち味を生かして試行錯誤しながらアプローチしていくあたりには成長が感じられましたけど、それでもここぞという時に冴える土屋の視点は流石でしたね。研修期間が延長された彼らのその後の捜査も読んでみたいです。

大学生の凜香が蔵書整理アルバイトをする研究室に所属している変人揃いの哲学科でも有名な若き准教授・塩見﨑。常識外れで機械音痴、知を愛する若き哲学者が言葉を疑い真理を読み解く哲学ミステリ。消えたレポートに芸ができなくなってしまった大学に住む猫、不可解な怪文書、凜香が喧嘩別れしていた友人との過去。哲学の命題を使って事件を解決してゆく塩見﨑には凜香や周囲も振り回され気味で、どこをどう見ても残念な変人の類なんですが、それでも彼が導き出してゆく解決にはどこか優しさが感じられて、もし続巻があるならまた読んでみたいです。

九十九書店の地下には秘密のバーがある (ハルキ文庫)

九十九書店の地下には秘密のバーがある (ハルキ文庫)

 

仕事についていけず入社二年で会社を辞め、自信喪失していた長原佑。ある日訪れた九十九書店で、謎めいた女性店主トワコさんから書店の地下を改装した秘密のバーに誘われる物語。昼は小さな書店で仕事する話のメインは夜のバーを訪れる悩める人たちの問題解決。トワコさんに幼馴染のことだったり、男をペットとして飼う女性、不倫をする女性、そしてトワコさん自身のことなど、時にはやや無茶ぶりっぽい仕事を振られましたが、常連客と協力して向き合い選択してゆく中で過去を乗り越え、再び前に進むきっかけを得てゆく展開はなかなか良かったです。

休みの日〜その夢と、さよならの向こう側には〜 (スターツ出版文庫)
 

高校時代の後輩・奏との失恋を引きずっていた大学生の滝本悠。ある日、印象的な出会いを果たした美大生の多岐川梓を通じて同じく美大生になっていた奏と偶然再会する青春小説。素直で不器用な多岐川梓のありように少しずつ惹かれてゆく繊細な距離感があって、一方で縁はあるのにどうにも巡り合わせの良くない奏との関係が切ない展開でしたけど、どんどん追い詰められて余裕がなくなると、かけがえのない存在でもすれ違いから上手くいかなくなることありますよね。だからこそ不器用な決着しか知らなかった彼らに希望が垣間見えた結末で良かったです。

 

白の王

白の王

 

廃墟の塔が林立する「塔の森」で塔に棲む魔鳥が盗んできたものを集めて暮らしていた孤児のひとりアイシャが、胸に嵌ってしまった宝石を取り除くため、魔鳥に盗まれた宝石を取り戻すためやってきたタスランと共に旅に出る物語。前作「青の王」より少し後の時代で、赤いサソリ号も代々その気風を引き継がれながら登場しましたね。時代を超えた数奇な運命に振り回される二人でしたけど、ちょっと変わった仲間たちと出会い、時には喧嘩しながらも一緒に力を合わせて運命を切り開いていく展開はなかなか良かったですね。赤の王の続刊も期待しています。

ひとつむぎの手

ひとつむぎの手

 

心臓外科医を目指し大学病院で過酷な勤務に耐えている平良祐介が、医局の最高権力者・赤石教授に見返りの代わりに三人の研修医の指導を指示され、さらに医局内の権力争いに巻き込まれてゆく物語。最初は無難に指導しようとした平良が直面する研修医たちの不信感、そして赤石が論文データを捏造したと告発する怪文書事件。けれど平良の患者と真摯に向き合う姿勢は変わらなくて、多くの人たちの命を救ってきたんですよね。ほろ苦い現実にも直面しましたが、見る人はよく見ていて正しく評価されていたことが分かる結末にはグッと来るものがありました。

はつ恋

はつ恋

 

千葉の海の近くの日本家屋に愛猫と暮らす小説家のハナ。二度の離婚を経て、喪失も手放すことも知ったから辿り着いた、古くて新しい恋人との日々を描く物語。二度の離婚を経験しても何だかんだで恋愛体質なハナの新しい恋人は弟同然に育った幼馴染。お互い老いた親を抱えての千葉と大阪の遠距離恋愛が描かれていましたが、穏やかな日々の描写の端々にこれまで長年積み重ねてきた容易には手放せない、変われないものを感じつつも、それでも最終的に結ばれた幼馴染との自然体で揺るぎない想いや、この人がいる安心感みたいなものはいいなと思えました。

この恋は世界でいちばん美しい雨 (単行本)

この恋は世界でいちばん美しい雨 (単行本)

 

鎌倉の海辺の街で愛にあふれた同棲生活を送る駆け出しの建築家・誠とカフェで働く日菜。ある雨の日にバイク事故で瀕死の重傷を負ってしまった二人が、二人合わせて二十年の余命を授かり、お互いの命を奪い合う苛酷で切ない日々の物語。幸せを感じたら相手の命を奪ってしまい、悲しむと命を与えてしまう生活に、余裕を失い険悪になってゆく二人。あまりにも過酷な奇跡でしたけど、それでも根底には相手に幸せになって欲しい真摯な気持ちがあって、それぞれの決断には切なさを感じつつも、そんな中でも精一杯生きた二人らしい結末だったと思いました。

2018年12月に読んだ本 #読書メーターより

2018年もわりと読めた1年ではありました。12月はとにかくダンまちの14巻が圧巻でしたね。これがもう少し早く出ていたらこのラノの順位も変わっていたんじゃないでしょうか。いろいろ待っていた続巻もあったりで、何というか毎月予算から溢れない程度に本が刊行されるといいんですけどね(苦笑)ほんと読みたい本が多すぎて悩ましいです。

 

2018年の読書メーター
読んだ本の数:1136冊
読んだページ数:295329ページ
ナイス数:64470ナイス

 

12月の読書メーター
読んだ本の数:96
読んだページ数:24971
ナイス数:5334

レトロゲームファクトリー (新潮文庫nex)レトロゲームファクトリー (新潮文庫nex)感想
過去のゲームを移植するレトロゲームファクトリー社長・灰江田とプログラマー・コギーの元に伝説のUGOコレクション復活依頼が持ち込まれ、横取りを狙う大手企業を抑え封印ゲーム復活に奔走するお仕事小説。古巣の橘に騙されたコギーを救った灰江田。懐かしいレトロゲームを取り上げながら、手段を選ばない橘の様々な揺さぶりに振り回されつつ開発者の過去の因縁を探りながら、ゲーム愛と家族愛のために動く灰江田の想いが周囲を動かし、力を合わせて開発者の真意を見出しゲームに愛がない橘の企みを乗り越えてみせる展開はなかなか熱かったです。
読了日:12月01日 著者:柳井 政和
かぐや様は告らせたい 小説版 ~秀知院学園七不思議~ (JUMP  jBOOKS)かぐや様は告らせたい 小説版 ~秀知院学園七不思議~ (JUMP jBOOKS)感想
体育祭前の知られざる物語が明らかになる、相手から告白させようと日常の全てで権謀術数の限りを尽くす物語の小説版。生徒会室に届いた一通の脅迫状らしき手紙を発端として勃発した頭脳戦、藤原がGMを務めるTRPGでの攻防、七不思議に呪われる石上、謎めいたかぐやの宣言から始まった学園内での指輪探し。マンガと活字の違いのせいかマンガほど勢いは感じなかったですが雰囲気は十分にあって、緻密に積み上げてゆく頭脳戦の数々はこういう形でも面白かったです。柏木さんと二人だけの世界を作ってしまう彼氏、名前覚えられてないですね(苦笑)
読了日:12月02日 著者:赤坂 アカ,羊山 十一郎
弁当屋さんのおもてなし 甘やかおせちと年越しの願い (角川文庫)弁当屋さんのおもてなし 甘やかおせちと年越しの願い (角川文庫)感想
『くま弁』で大晦日に常連客が集まって忘年会が開催されることに。期間限定の転勤という状況下で千春は依然としてユウとの将来が見えず、不安な気持ちを募らせていく第四弾。食べるのが好きじゃない女の子の真意、大晦日に「嫌な思い出」がある千春の会社の後輩、三十年も引きずった喧嘩の真相、家業を継ぐか夢を追うかで仲違いする親子といった展開に、事態を解決に導く美味しそうなお弁当が美味しそうで食べたくなりますが、ユウの過去も明らかになってきて、千春とお互い思っていた事を伝えられてようやく前進できそうですかね。続巻にも期待。 
読了日:12月02日 著者:喜多 みどり
十三歳の誕生日、皇后になりました。 (ビーズログ文庫)十三歳の誕生日、皇后になりました。 (ビーズログ文庫)感想
十三歳の誕生日、赤奏国皇帝に後宮入りを願い出た莉杏。そんな彼女が帝位を簒奪し、新たな皇帝となった暁月と謁見の間で運命の出会いを果たすもう一つの物語。まさかの簒奪帝の皇后に祭り上げられた莉杏が、まだまだ幼くて暁月に子供扱いされながらも、彼の国を何とかしたいという思いにも感化されて彼女なりに健気に頑張って支える姿は応援したくなりますね。なんか人材不足感が凄くてこの国大丈夫なのかちょっと心配になりますが、何だかんだでいい夫婦になっていきそうな微笑ましい二人の今後を見守っていきたいです。続巻にも期待ということで。
読了日:12月03日 著者:石田 リンネ
誰にも言えない (集英社オレンジ文庫)誰にも言えない (集英社オレンジ文庫)感想
旧財閥で日本有数のセレブ一族の家に生まれた女子大生の葵。大好きな3人の女友達を誘い避暑地に遊びに来ていた彼女たちが、「誰にも打ち明けていない秘密の話」を順番に打ち明けてゆくサイコホラー。招待した葵の友人でモデルの結衣、美人小説家の莉子、有望なアスリートのひまりという目を引く美女たちが明かしてゆく、誰も知らなかった彼女たちの秘密。それぞれの打ち明け話の中で垣間見える彼女たちの生々しい悪意と、真相を明かしながらも平然としている彼女たちには戦慄しましたが、その先にあった思わぬ展開と迎えた結末には驚かされました。
読了日:12月03日 著者:丸木 文華
祈りの守――仕立屋・琥珀と着物の迷宮3 (ハヤカワ文庫JA)祈りの守――仕立屋・琥珀と着物の迷宮3 (ハヤカワ文庫JA)感想
七夕が近づき、浴衣イベントの傍ら、寺と提携し古裂を使ったお守りを売り出した旧暦屋。そこに妻にお守りを贈られた男が離婚の危機の印ではと訪ねてくる第三弾。柄に隠された裏の意味、旧家に遺る暗号、呉服屋の裔を狙う詐欺、子供和裁教室に流れた涙の理由など、少しばかりの行き違いが様々な思わぬ誤解へと繋がってゆく展開でしたが、どれも終わってみればそう悪くない結末に終わっているのがいいですね。どうにももどかしい八重どんと琥珀の恋模様ですけど、少しずつでも進展するといいですね。サの字もそうですが続巻ではそのあたりにも期待。 
読了日:12月04日 著者:春坂 咲月
今夜、君を壊したとしても (講談社タイガ)今夜、君を壊したとしても (講談社タイガ)感想
銃を片手に教室を占拠した同級生の津々寺。死を目前にクラスメイトが涙に暮れる中、終は彼女と過ごしたあの日からその真意を推理する第二弾。殺人衝動を抱えるアザミとの日々に少しずつ慣れ始めた頃に起こる一家失踪事件。その被害者家族の津々寺と友人の譲羽、そして再び危険な人物を誘き寄せてしまう有河。門をくぐってしまった人をいかに理解するか?という難問にそれぞれのアプローチがあって、容易に答えは出そうもないですが、それにしても引き寄せられるというか、周囲にヤバイ女の子ばかりが増えてゆく終は果たして大丈夫なんでしょうか…w
読了日:12月04日 著者:瀬川 コウ
隣の席の佐藤さん (一二三文庫)隣の席の佐藤さん (一二三文庫)感想
地味でパッとしない佐藤さんと隣の席になった山口くん。隣の席で交流を積み重ねながら、二人の心境が少しずつ変化してゆく青春小説。始めは鈍くさいけど素直な佐藤さんに調子が狂いイライラしていたのに、いつの間にか彼女が気になってゆく山口くん。だからといってすんなり上手くいくわけでもなくて、ままならない状況でどう接するのがいいのか懸命に考える山口くんが微笑ましいですね。いろいろ遅れがちな彼女を気にかけて寄り添う山口くんの姿勢はカッコよくて、周囲にもバレバレで生温かく見守る二人のその後がまた読んでみたいと思いました。 
読了日:12月04日 著者:森崎緩
きみがその群青、蹴散らすならば: わたしたちにはツノがある (集英社オレンジ文庫)きみがその群青、蹴散らすならば: わたしたちにはツノがある (集英社オレンジ文庫)感想
容姿端麗で成績優秀、非の打ちどころがないのに人と距離を置く月島桜子。苦悩から奇怪な秘密を抱えた彼女が原因を知る転校生・水瀬和葉と出会う青春幻怪鬼譚。桜子と同様に密かに抱える苦悩から鏡に写った自分にツノが生えはじめた、成績上位の美少年・周防紫生、クラス女子の一軍グループでいることに必死な土田知香、ムードメーカー的存在の門倉翔平。彼女たちが和葉と協力して元凶たる鬼を探す展開で、狭い世界で逃げ場もなく追い詰められてゆく彼らには仲間がいて、葛藤を抱えながらも支え合い絶望を乗り越える姿はぐっと来るものがありました。
読了日:12月05日 著者:山本 瑤
憂国のモリアーティ: “緋色”の研究 (JUMP  jBOOKS)憂国のモリアーティ: “緋色”の研究 (JUMP jBOOKS)感想
憂国のモリアーティ』本編では描かれなかったオリジナルエピソードを収録した小説版連作短編集。酒場での賭けポーカーでモランのイカサマを見抜いた男に興味を持つウィリアム、任務で飼育することになった熱帯魚に熱を上げるルイス、アルバートとモランのワインの飲み比べ対決、ジョンがシャーロックの変わりに探偵となって奔走したりと、シリアスな展開が続く本編ではなかなか描かれる機会のないサイドストーリー的なエピソードがあって、原作の雰囲気を失わないようなテイストで登場人物たちの奥行きをうまく作り出していて興味深く読めました。
読了日:12月05日 著者:竹内 良輔,三好 輝,埼田 要介
ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.18 (電撃文庫)ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.18 (電撃文庫)感想
進路を意識し始める時期に「私は高校を卒業したら会社を興すぞ」とか言い出したマスター。そんな彼女の前に顧問で教師でもある常識人の猫姫さんが立ちはだかる第十八弾。やっていけることを証明するため、売り言葉に買い言葉で仲間たちとLAのトップを目指すことになったマスター。ブラック企業的な地道な作業ばかりになったらゲームも楽しくないよね…とか感じつつ、猫姫さん意外と常識人で容赦ない人なんだなとの思いも新たにしましたが、そんなラスボス的存在の猫姫さん相手に斜め上の勝負を仕掛けてゆくはっちゃけぶりが今回も楽しかったです。
読了日:12月06日 著者:聴猫 芝居
スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
早朝にひっそりと営業しているスープ屋「しずく」に舞い込む様々な悩みな謎。そして理恵にもひとつの転機が訪れる第四弾。母親に幽霊が憑いているという露の同級生、カルガモジビエを食べられない理由、理恵の大叔父が隠したらしいお宝の正体、露の調理実習中に起きたスープ事件、そして転機を迎えて岐路に立った理恵。様々な悩ましい事情に決断する勇気が問われた今回、ままならない状況にあった理恵もいろいろ葛藤しながら新たな一歩を踏み出しましたけど、心機一転で最後のシーンの一言が次に繋がっていけばいいですね。その辺りも続巻に期待。
読了日:12月06日 著者:友井 羊
ゴスロリ卓球2 (電撃文庫)ゴスロリ卓球2 (電撃文庫)感想
斉木羽麗の父のあとを追って、莫大な借金を背負い堕ちた奈落の強制卓球訓練施設。だがすでに父が去ったと知った修と羽麗は、先に堕とされていた横川梓と協力して脱出を試みる第二弾。再会した梓を指導役にまずは目立たず地道に学習する日々。でも常に一緒にいられると思っていた修と別れての生活に、どんどんポンコツぶりが加速してゆく分かりやすい羽麗は、相変わらずゴスロリ可愛いけど梓がドン引きするレベルで愛が重い(苦笑)双子姉妹との対決から見える施設内の縮図に、さらに出会ってはいけない二人が出会ってしまったような…続巻も期待。 
読了日:12月07日 著者:蒼山 サグ
自意識過剰探偵の事件簿 (一二三文庫)自意識過剰探偵の事件簿 (一二三文庫)感想
自称探偵の女子高生・雲雀野八雲の暴走に振り回されながらも、押し付けられた助手役をこなす幼馴染の明義。そんな彼女の尻拭いに明け暮れる中、体育倉庫で事件が発生する青春ミステリ。陸上部の部長候補二人が一晩閉じ込められた体育倉庫監禁事件と明義に届いた恋文発覚事件。事件を愛し過ぎて暴走する探偵に振り回される体を装いながら、ミスリードした隠れ敏腕助手が暗躍する構図をどう評価するか難しいですね(苦笑)登場人物の名字が難読ばかりなのは話の流れを阻害していて閉口しましたが、拗らせてしまっている二人の今後に期待ということで。
読了日:12月07日 著者:真摯夜紳士
あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)感想
結婚を考えていた恋人に振られ、将来に不安を抱く持田麻衣。地元に帰ることを決めた麻衣が偶然高校のときのクラスメイト今井優人に再会、「恋のない結婚」を現実的に考えはじめる物語。高校時代の30歳になってもお互い独身だったら結婚しようという今井との冗談めいた約束。かつてお互いの恋を協力する関係だった二人の共同生活はしっくり来る部分もイライラする部分もあったりで、そんな二人が一つ一つ乗り越えて迎えたラストにはじんわり来るものがあって、積み重ねていったエピソードが見事に繋がってゆくとても素敵な物語だったと思いました。
読了日:12月07日 著者:三田 千恵
塩見﨑理人の謎解き定理 丸い三角について考える仕事をしています (宝島社文庫)塩見﨑理人の謎解き定理 丸い三角について考える仕事をしています (宝島社文庫)感想
大学生の凜香が蔵書整理アルバイトをする研究室に所属している変人揃いの哲学科でも有名な若き准教授・塩見﨑。常識外れで機械音痴、知を愛する若き哲学者が言葉を疑い真理を読み解く哲学ミステリ。消えたレポートに芸ができなくなってしまった大学に住む猫、不可解な怪文書、凜香が喧嘩別れしていた友人との過去。哲学の命題を使って事件を解決してゆく塩見﨑には凜香や周囲も振り回され気味で、どこをどう見ても残念な変人の類なんですが、それでも彼が導き出してゆく解決にはどこか優しさが感じられて、もし続巻があるならまた読んでみたいです。
読了日:12月08日 著者:甲斐田 紫乃
綺羅の皇女(2) (講談社文庫)綺羅の皇女(2) (講談社文庫)感想
真秀皇国を救うため西海国の王との婚約を破棄して舞い戻ってきた予知夢を見る皇女咲耶。真秀皇国の民が斬り合う血腥い夢に慄いた咲耶は、それを阻止すべく急ぐが、逆に民を扇動した罪を着せられてしまう第二弾。断片的な予知夢で後手に回る状況を、偏執的に咲耶を敵視する女官長の母・汀子に逆に利用されたわけですけど、後ろ盾がないままでは厳しいのは変わらずで今回の件が転機になりうるかどうか。それにしても皇帝自身は咲耶に対して好意的なのに、妄想で危機感を募らせてゆく汀子がなまじ権力を持っていて暴走しがちなだけに笑えないですね…。
読了日:12月08日 著者:宮乃崎 桜子
准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき (角川文庫)准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき (角川文庫)感想
幼い頃に遭遇した怪異によって人の嘘がわかる耳を持ち、それゆえに孤独になってしまった大学生・深町尚哉。そんな彼が怪異に目がないイケメン准教授・高槻と出会い、常識担当の助手として様々な事件に遭遇するミステリ。いないはずの隣の空き部屋から聞こえる奇妙な音の正体、ふと気がつくと周囲にいつも針が落ちている呪い、肝試しに出かけて神隠しに遭った少女。高槻を理解する周囲の人々もなかなか印象的で、孤独な尚哉を分け隔てなく受け入れてくれる彼らの優しさが染みますね。幼い頃に奇妙な体験をした二人の今後に期待したい新シリーズです。
読了日:12月09日 著者:澤村 御影
花嫁レンタル、いかがですか?: よろず派遣株式会社 (集英社オレンジ文庫)花嫁レンタル、いかがですか?: よろず派遣株式会社 (集英社オレンジ文庫)感想
早世した有名女優の娘として目立たぬようひっそり生きようとした鵜崎真尋25歳。セクハラに遭い会社を辞めた真尋が少し変わった人材派遣会社の社長杉埜と出会い、挙式直前に逃げた花嫁の身代わりを依頼される物語。自己評価は低いけどお節介でメイクで地味にも美人にもなれる真尋が、同僚の灰谷とも関わり合いつつこなしてゆく花嫁の身代わり、女子会のために見栄を張るOLの後輩役、亡くなった娘の代わりに両親と食べ歩きなど、登場人物たちのエピソードも交えながら進んでいく展開はなかなか良かったです。続編あるならまた読んでみたいですね。
読了日:12月10日 著者:瀬王 みかる
ポーラの戴冠式-デルフィニア戦記外伝3 (C・NOVELSファンタジア)ポーラの戴冠式-デルフィニア戦記外伝3 (C・NOVELSファンタジア)感想
リィが天上世界に帰還して十年。再び訪れたデルフィニアの危機に時空を超えて故国に降り立った「伝説の王妃」が滞在した短くも濃密な五日間を描く連作短編集。以前読んだのがもう何年前だよというレベルで、気がついたら登場人物たちの子供や孫まで生まれていてだいぶ隔世の感がありましたが、変わっていても変わらない彼ら彼女らの様子や、相変わらずなリィとウォルの距離感とかいろいろ懐かしい気持ちで読めました。最後にやり直したことをやり終えた感もありますが、そういえば全記録の方は読んでいなかったので機会があったら読んでみたいです。
読了日:12月10日 著者:茅田 砂胡
図書室の神様たち (小学館文庫キャラブン!)図書室の神様たち (小学館文庫キャラブン!)感想
とある本を探す女子高生の爽風が、学校の裏庭に建つ古い図書室で同じ学年らしいが全く顔を知らない生徒・笹木誠と出会い、様々なことが少しずつ変わってゆく青春小説。不仲の両親が頻繁に喧嘩し帰りたくない居心地の悪い家、無視されたままのクラスメイト、孤立するのに爽風と一線を引く親友、そして図書室でたびたび出会い重ねてゆく謎めいた誠とのやりとり。そこから見て見ぬふりを止め一歩を踏み出した爽風には逆風もありましたけど、それでも諦めずに手を伸ばして向き合おうとする彼女の頑張りが引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:12月11日 著者:櫻 いいよ
この恋は世界でいちばん美しい雨 (単行本)この恋は世界でいちばん美しい雨 (単行本)感想
鎌倉の海辺の街で愛にあふれた同棲生活を送る駆け出しの建築家・誠とカフェで働く日菜。ある雨の日にバイク事故で瀕死の重傷を負ってしまった二人が、二人合わせて二十年の余命を授かり、お互いの命を奪い合う苛酷で切ない日々の物語。幸せを感じたら相手の命を奪ってしまい、悲しむと命を与えてしまう生活に、余裕を失い険悪になってゆく二人。あまりにも過酷な奇跡でしたけど、それでも根底には相手に幸せになって欲しい真摯な気持ちがあって、それぞれの決断には切なさを感じつつも、そんな中でも精一杯生きた二人らしい結末だったと思いました。
読了日:12月11日 著者:宇山 佳佑
終わらない夏のハローグッバイ (講談社タイガ)終わらない夏のハローグッバイ (講談社タイガ)感想
あらゆる感覚を五感に再現する端末・サードアイを手に入れたことで装いを変えた世界。そのきっかけとなりながらも二年前から眠り続ける幼馴染・結日を救うため、日々原周が仲間とともに立ち上がるひと夏の物語。サードアイの開発者で鍵を握る結日の姉・沙月の存在と、計画に手を貸す同級生・先崎との邂逅。打開する方法を模索するうちに見出したひとつの真相。立ち位置が変わっても何かを引き起こす彼女と、そんな彼女のために奔走する周という二人の関係は変わらなくて、可能性を信じて諦めず何度でもチャレンジし続ける周を応援したくなりました。
読了日:12月12日 著者:本田 壱成
僕はいつも巻きこまれる (講談社タイガ)僕はいつも巻きこまれる (講談社タイガ)感想
大手損保会社に入社した椎名逸斗はコンビニで暴走車激突事故に遭遇。一人が死亡、一人が心不全の大惨事に救命処置で命を救った英雄のはずが、死亡した被害者が強盗犯だという事実に事態が一変する物語。いつの間にか共犯者だと疑われネットは炎上、会社には糾弾され、6年ぶりに再会した元カノと無実を証明するため事件を捜査する逸斗。不運な上に迂闊に動いて空回りした挙げ句、事態を悪化させてゆく展開には頭を抱えましたが、振り回され利用された逸斗が辿り着いた真相は確かに理不尽でしたけど、その立ち回りのまずさの方が印象に残りました…。
読了日:12月13日 著者:水生 大海
成巌寺せんねん食堂 おいしい料理と食えないお坊さん (メディアワークス文庫)成巌寺せんねん食堂 おいしい料理と食えないお坊さん (メディアワークス文庫)感想
長年勤めた小さな会社を退職した千束。実家からの電話で慌てて北陸の実家に戻った彼女が、名刹・成巌寺と実家の三百年以上続く精進料理屋「せんねん食堂」を巡る騒動に巻き込まれ、イケメン僧侶の幼馴染・清道&隆道兄弟と再会する物語。妥当な提案をろくに話すら聞かずにこじらせてゆく展開は田舎あるある話ですが、実家に居場所がなくなったと感じていた千束と、地域を盛り上げるために手を尽くす深謀遠慮な幼馴染・隆道もまたいろいろ複雑にこじらせていて、地域再興を二人で盛り上げていけるのか、二人の関係もどうなるのか続刊に期待ですね。 
読了日:12月13日 著者:十三 湊
あした世界が終わるとしても (角川文庫)あした世界が終わるとしても (角川文庫)感想
幼い頃母を亡くして心を閉ざしがちな真。彼をずっと見守ってきた幼馴染・琴莉。高3になってようやく一歩を踏み出そうとした2人の前に突然、もうひとつの世界からもう1人の「僕」が現れる映画原作小説。突然直面する父親の死、さらにもうひとつの世界からやってきた自分に知らされる向こうの世界とリンクする命と、敵味方に別れてしまう真と琴莉。薄い分展開も早くて物語もさくさく進みましたが、陰謀を打破して琴莉を取り戻すためにもうひとりの自分と向こうの世界に乗り込む真の奮闘と、異なる世界で迎えたそれぞれの結末の余韻が印象的でした。
読了日:12月13日 著者:櫻木 優平
ゴブリンスレイヤー9 (GA文庫)ゴブリンスレイヤー9 (GA文庫)感想
牧場の手伝いで牛飼娘とともに配達に出てゴブリンの大群に待ち伏せされたゴブリンスレイヤー。一方、彼が不在の一党は見習聖女の託宣を助けて雪山を目指し、氷の魔女が統べる永久の冬の領域に遭遇する第九弾。珍しい牛飼い娘との二人旅が平穏無事に終わるわけもなくて、彼女を守りつつ試行錯誤して最後まで諦めない彼の孤軍奮闘ぶりと、彼不在で遭遇した強敵相手に見事な采配を見せたすっかりゴブスレさんに感化されつつある女神官の成長が光りましたね。牛飼娘も家に帰る彼を迎えることの意味を改めて噛み締めたのかなと感じた今回の結末でした。 
読了日:12月13日 著者:蝸牛 くも
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか14 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか14 (GA文庫)感想
退路を断たれたリリ達が27階層で対峙を余儀なくされる異常事態。一方37階層まで落ちた満身創痍のベルとリューが、過酷で最悪な決死行に挑む第十四弾。絶望的な迷宮の孤王相手にしても諦めない仲間たちの奮闘、ギリギリの状況で絶望の深層から下層を目指すベルとリューが、何度も心折れそうになる状況を乗り越えた先に対峙する因縁の災厄との激闘。厚みを感じさせない怒涛の展開の連続で、リューの回想がまたどうしようもなく辛かったですけど、そんな悔恨を払拭してあれだけの絶望すら何とかしてしまったら、こんな結末も納得ですよね(苦笑) 
読了日:12月13日 著者:大森 藤ノ
この素晴らしい世界に祝福を!15 邪教シンドローム (角川スニーカー文庫)この素晴らしい世界に祝福を!15 邪教シンドローム (角川スニーカー文庫)感想
ウィズに正体を暴露され、バニルに金をむしられたダークプリースト・セレナはカズマとの交渉の末、これから行うことを口外しないようお互い約束。これをきっかけに再びアクセルの街に波乱が訪れる第十五弾。セレナが冒険者を癒やしまくったことで、自分の居場所がないと感じてゆくアクア。でもそこで傀儡とされながらもげんなりするような代償でセレナを疲弊させてゆくクズマが本領発揮しましたね(苦笑)ここまで残念女神でしかなかったアクアの心境の変化が物語を大きく動かしそうで、ここから物語も終わりに向かってゆくんですかね。続巻に期待。
読了日:12月14日 著者:暁 なつめ
宝石吐きのおんなのこ(8)~微睡みの中の貴方~ (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)宝石吐きのおんなのこ(8)~微睡みの中の貴方~ (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)感想
体験学校のさなかに体調を崩し休むことになったクリュー。見知らぬ土地へと飛ばされたスプートニクがナツと出会い、ソアランは協会に疑われて投獄される第八弾。思わぬ形で秘密をクルーロルに知られてしまったクリュー、記憶と違う事実に直面し疑惑を深めてゆくスプートニクの決断、そして獄中のソアランを助け出した一人の魔法使い。そこで別々に動いていたエピソードが一人の人物によって繋がり、様々なことが明らかになってゆく展開にはビックリしました。ここから物語も大きく動いてきそうで続巻に期待。若い頃の彼にも彼らしさがありましたね。
読了日:12月14日 著者:なみあと
彗星乙女後宮伝 (2) (双葉文庫 え)彗星乙女後宮伝 (2) (双葉文庫 え)感想
初めての恋心や母国への想いに翻弄されながらも、懸命に職務に励む珊瑚。そんな中で後宮対抗の武芸会が開催されることとなり、様々な思惑に巻き込まれてゆく第二弾。男装の麗人状態でいることに複雑な想いを抱く珊瑚に対して、鈍いけど何であろうと真っ直ぐな紘宇が清々しいですね(苦笑)ドタバタ続きの展開ではたぬきの存在が癒やしで、華烈国のありようが歪んでいるのが様々な問題を引き起こす原因なだけに、ここから本来あるべき形にしていけるのか、拗れているんだかないんだかよくわからない二人の想いが成就するのか続巻に期待ということで。
読了日:12月15日 著者:江本マシメサ
死神憑きの浮世堂 迷宮の戻り人 (2) (小学館文庫キャラブン!)死神憑きの浮世堂 迷宮の戻り人 (2) (小学館文庫キャラブン!)感想
友人の僧侶・愚浄からの紹介で伊武冬馬と名乗る青年仕事が舞い込み、古い家に憑いた人形の祟りを鎮めて欲しいと依頼された利市。そこで利市は新たな“死神”との闘いに巻き込まれてゆく第二弾。冬馬によって依頼される逆さ人形の呪い、壊されたバレリーナのオルゴール、そして利市の因縁とも繋がる人斬りの骸との邂逅。過去を簡単には許せないけれど何とかしたいという中での今回の事件が、ひとつの転機になってくれるといいんですけどね。ぬいと利市の今後も気になるけど、もしかして状況的に次回は愚浄と二人でタイ旅行ですか?楽しみにしてます。
読了日:12月16日 著者:中村 ふみ
<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 8.遺された希望 (HJ文庫)<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 8.遺された希望 (HJ文庫)感想
聖騎士をカンストし次に遺跡で発見されたジョブ・煌騎兵を目指すことにしたレイ。ジョブにつくために遺跡があるカルチェラタン伯爵領へと向かったレイが仮面の女剣士・アズライトと出会う第八弾。出てくるヒロインがことごとく濃いメンツばかりなレイの周辺でしたけど、ようやくヒロインらしいっぽい子が登場しましたね(なんか怪しい仮面つけてるけどw)。それっぽいイベントもあったりで期待は高まりますが、でもなんか国境付近が大変な状況になってきて、これ乗り越えれば彼女の好感度は上がりそうですが、またまた苦難に巻き込まれそうですね。
読了日:12月17日 著者:海道左近
後宮の烏 2 (集英社オレンジ文庫)後宮の烏 2 (集英社オレンジ文庫)感想
先代の言いつけに背き、侍女を傍に置いたことに深く戸惑う寿雪。そんな彼女のもとに「頼み事」のために様々な人が訪れる第二弾。同じ年頃の宦官の幽鬼を見た少年宦官、かつて使えていた妃の幽鬼を弔うことを望む老宮女、古い布作面に取り憑いた幽鬼、そしてある夜後宮で起きた凄惨な事件。自分のできることをするうちに少しずつ心境が変化し、周囲に人が増えてゆくことに戸惑う寿雪と、立場に縛られ自由に動けない高峻はその交流がかけがえのないものになりつつあるのに、お互い明らかになってゆく業が深過ぎてままならないのがもどかしいですね…。
読了日:12月17日 著者:白川 紺子
拝啓 彼方からあなたへ (集英社オレンジ文庫)拝啓 彼方からあなたへ (集英社オレンジ文庫)感想
「自分が死んだらこの手紙を投函してほしい」と中学時代の親友・響子に託されていた手紙雑貨店「おたより庵」店主・詩穂。人づてに彼女の死を知った詩穂が手紙を開封し、その過去にまつわる事件を解き明かしてゆく物語。響子に託された手紙の違和感と周囲で起きる怪文書事件、苦手に感じていた常連客の城山に対する心境の変化と再会した元カレの執着。大人しく見える印象から周囲に振り回されがちだった詩穂でしたけど、それでも彼女には譲れないものや大切にしているものがあって、誠実に向き合う彼女らしさが導いた結末はなかなか良かったですね。
読了日:12月17日 著者:谷 瑞恵,くまおり 純
妹さえいればいい。 (11) (ガガガ文庫 ひ 4-11)妹さえいればいい。 (11) (ガガガ文庫 ひ 4-11)感想
衝撃の事実に直面し小説が全く書けないという大スランプに陥った伊月。一方、女の子であることを隠さなくなった千尋にも大きな変化が訪れる第十一弾。今回も作家あるあるやゲームを織り交ぜつつ描かれてゆく伊月周りの人間模様。それにしても千尋はそっちへ行っちゃったか…と思いましたけど、春斗はモテモテ状態なのに何ともままならないというか。でもついに家族とも仲直りできて良かったと思っていたら、ここで思ってもみなかった急展開にびっくり。これで可能性でいえばどんな展開もあり得えるわけで、人間関係がどう変わってゆくのか気になる。
読了日:12月18日 著者:平坂 読
空飛ぶ卵の右舷砲 (2) (ガガガ文庫 き 3-2)空飛ぶ卵の右舷砲 (2) (ガガガ文庫 き 3-2)感想
旧都市新宿での作戦後、女王号を修理するため伊勢湾海上都市へ向かい、ヤドリギの弟を誘拐されたという少女・エナガと出会ったヤブサメが、その少女に協力しようとする第二弾。他人事とは思えず助けようとするヤブサメと現実的で冷静なモズ、そしてエナガが密かに抱える悔恨。幼い子が抱えるには厳しいヤドリギに対する世間の反応があって、それでも向き合うことを決意し勇気を持って立ち上がろうとする彼女を助力する二人の心意気があって。今回も女王号を駆ってギリギリの熱いバトルが繰り広げられましたが、因縁の男を追って向かう大阪編も期待。
読了日:12月18日 著者:喜多川 信
ハル遠カラジ (2) (ガガガ文庫 あ 15-3)ハル遠カラジ (2) (ガガガ文庫 あ 15-3)感想
機械の精神を蝕む病AIMDを専門とする医工師を求め、冬のチベットを訪れたハルたち。奇妙な手紙を見つけたことをきっかけに旧型のアンドロイドと出会う第二弾。共に旅するイリナの存在を意識して成長したい、勉強したいと思うようになるハル、廃校で出会った旧型アンドロイド・アニラの過去、そして病に倒れたイリナを救うために向かった先で出会うテスタの因縁。新たな出会いがあって少しずつハルたちにも変化があって、それぞれが過去に向き合って乗り越え仲間たちと共に前に進もうとする姿がとても印象的でした。また続巻を期待しています。 
読了日:12月19日 著者:遍 柳一
白の王白の王感想
廃墟の塔が林立する「塔の森」で塔に棲む魔鳥が盗んできたものを集めて暮らしていた孤児のひとりアイシャが、胸に嵌ってしまった宝石を取り除くため、魔鳥に盗まれた宝石を取り戻すためやってきたタスランと共に旅に出る物語。前作「青の王」より少し後の時代で、赤いサソリ号も代々その気風を引き継がれながら登場しましたね。時代を超えた数奇な運命に振り回される二人でしたけど、ちょっと変わった仲間たちと出会い、時には喧嘩しながらも一緒に力を合わせて運命を切り開いていく展開はなかなか良かったですね。赤の王の続刊も期待しています。 
読了日:12月20日 著者:廣嶋 玲子
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦6 (ファンタジア文庫)キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦6 (ファンタジア文庫)感想
女王暗殺計画の黒幕を追うアリス。そしてシスベルを護衛し王宮へと急ぐイスカ。そんな二人の前に王女姉妹の長女・イリーティアが姿を現し、イスカたち共々ルゥ家の別荘に招待される第六弾。別荘では真っ直ぐなシスベル、旧知であることを明かせないアリス、思わせぶりなイリーティアと、三姉妹によるイスカ争奪戦状態に苦笑いな展開でしたけど、そこから帝国使徒聖たちによる星庁襲撃で物語は大きく動きそうですね。実力者同士のそれぞれの戦いの行方はもちろん、混乱する状況の中で姉妹たちとイスカの関係もどう変わってゆくのか続巻が楽しみです。
読了日:12月20日 著者:細音 啓
公女殿下の家庭教師 謙虚チートな魔法授業をはじめます (ファンタジア文庫)公女殿下の家庭教師 謙虚チートな魔法授業をはじめます (ファンタジア文庫)感想
魔法の実力が人生を左右する世界で、膨大な魔力を持ちながらなぜか魔法を構築できない公爵令嬢・ティナ。そんな彼女の家庭教師に任じられたアレンが、その封じられた才能を開花させて彼女の世界を変えてゆく物語。庶民出身ながら屈指の実力を持つアレンに師事して努力するティナや専属メイド・エリーの成長、アレンに甘える年下ヒロインたちの可愛らしい姿が物語の肝なんですかね。複雑な心情の親たちも絡むヒロインの座争いも熾烈ですが、ラスボス的存在感があるアレンの相方・リディヤは手強そうです(苦笑)これは続巻も期待の新シリーズですね。
読了日:12月20日 著者:七野りく
灰と幻想のグリムガル level.14 パラノマニア [parano_mania] (オーバーラップ文庫)灰と幻想のグリムガル level.14 パラノマニア [parano_mania] (オーバーラップ文庫)感想
夢魔と呼ばれる怪物と魔法使いたちが闊歩する他界パラノで散り散りになったハルヒロたち。仲間たちとの再会と脱出を目指し、同じくパラノに迷い込んだアリスや暁連隊のイオらと鍵を握る王の元を目指す第十四弾。それぞれの深層心理がダダ漏れで生々しい感情に自己が揺らいでしまう展開でしたけど、らしくないメリィの様子やこれまであまり描写されてこなかったシホルの複雑な想いが印象的でした。全体的にややぼんやりとした展開に感じた他界パラノはようやく抜け出したようですけど、これからまたいろいろありそうな結末がちょっと気になりますね。
読了日:12月20日 著者:十文字青
虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん plan.1 (オーバーラップ文庫)虐殺スペック赤三月さんと低スペック九木野瀬くん plan.1 (オーバーラップ文庫)感想
たまたま虐殺スペックな女子高生・赤三月朝火の自殺を阻止した低スペックの九木野瀬伊吹。翌朝、朝火から脅迫されて『人生の攻略本作り』を手伝わされる青春小説。容姿端麗の人気者で多才な朝火の素の性格はわりとあれで、低スペックと言われる九木野瀬は屈折した現実主義の努力家。まずは周囲に妬まれて孤立する下級生・黒花(彼女もいい性格w)が直面する困難の克服に協力する展開でしたが、何だかんだでわりといいコンビっぷりを見せた二人はそれぞれ事情を抱えているようで、その関係が今後どう変わってゆくのか続巻に期待大の新シリーズです。
読了日:12月21日 著者:蓮見景夏
黒獅子城奇譚 (ダッシュエックス文庫)黒獅子城奇譚 (ダッシュエックス文庫)感想
旅の途中で雷雨に襲われ、黒獅子城と呼ばれる古い砦に逃げ込んだ放浪の騎士グレンと神官を装う魔術師のリュー。そこで同じく雨宿りする先客たちと出会い、陰謀に巻き込まれてゆく物語。視察を終えた騎士たち三人と義眼の老騎士、商人一家、吟遊詩人、町娘との一夜限りだったはずの出会い。老騎士殺害から続く惨劇と、不穏な雰囲気の中で明らかになってゆく複雑に絡み合ったそれぞれの関係。大人な関係にあるワケありな二人が事件を解決に導いてゆく展開は著者さんの新境地ですかね。目的があって旅を続ける二人のその後をまた読んでみたい作品です。
読了日:12月21日 著者:川口 士
聖語の皇弟と魔剣の騎士姫 ~蒼雪のクロニクル~ I (MF文庫J)聖語の皇弟と魔剣の騎士姫 ~蒼雪のクロニクル~ I (MF文庫J)感想
「聖語」と呼ばれる言語体系が魔法の如く物理世界を書き換える時代。史上最強の聖語騎士たった姉の教えを受けた少年・カレンとその幼馴染・雪音に、とある事件の真相を探るよう極秘任務が下される魔法学園ファンタジー。複雑な立ち位置ゆえに目立たたぬよう過ごすカレンと、彼に寄り添う学年首席の雪音、そして彼を慕う留学生・カロリーナ。そんな三角関係が軸かと思った矢先の急展開、疑心暗鬼にもなりかねない状況の中で、ギリギリの戦いを切り抜けた先にあった結末がまた業が深そうで、どういう物語になってゆくのか今後に期待の新シリーズです。
読了日:12月22日 著者:春楡遥
第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 1 (ヒーロー文庫)第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 1 (ヒーロー文庫)感想
隣国との戦争が近づく中で第七師団師団長アレクシスに留学先から救出されたリーデルシュタイン帝国の第六皇女ヴィクトリア。見た目幼女な彼女が年上で強面の黒騎士アレクシスに降嫁するファンタジー。印象的な出会いと降って湧いたヴィクトリアの結婚話。実は相当なポテンシャルを秘めたヴィクトリアの迷いなき決断に、怖がられて女性に縁がなかったアレクシスも最初戸惑い気味でしたけど、やりとりを重ねていく中で育まれていった信頼する君主に絶対の忠誠を誓う騎士のごとき関係がここからどう変わるのか、二人で行う辺境伯領経営も楽しみです。 
読了日:12月23日 著者:翠川 稜
はつ恋はつ恋感想
千葉の海の近くの日本家屋に愛猫と暮らす小説家のハナ。二度の離婚を経て、喪失も手放すことも知ったから辿り着いた、古くて新しい恋人との日々を描く物語。二度の離婚を経験しても何だかんだで恋愛体質なハナの新しい恋人は弟同然に育った幼馴染。お互い老いた親を抱えての千葉と大阪の遠距離恋愛が描かれていましたが、穏やかな日々の描写の端々にこれまで長年積み重ねてきた容易には手放せない、変われないものを感じつつも、それでも最終的に結ばれた幼馴染との自然体で揺るぎない想いや、この人がいる安心感みたいなものはいいなと思えました。
読了日:12月24日 著者:村山 由佳
ゆきうさぎのお品書き: 母と娘のちらし寿司 (集英社オレンジ文庫)ゆきうさぎのお品書き: 母と娘のちらし寿司 (集英社オレンジ文庫)感想
教員採用試験に向けて準備をしてきた碧が、試験の直前に思わぬ体調不良に襲われ緊急入院することに。一方、「ゆきうさぎ」は零一を迎えてメニューにも変化が訪れる第七弾。新しい料理人・零一が加わったことによる「ゆきうさぎ」の変化、そして常連客たちに訪れる転機。ついに碧と付き合うことになった大樹のもどかしい思い。就職活動時期の碧の緊急入院は不運でしたけど、大樹からしたらそんな時に彼女の力になれないのは頭では分かっていても少しもやもやしますよね(苦笑)これから「ゆきうさぎ」周辺にも変化が訪れそうな今後の展開に期待です。
読了日:12月24日 著者:小湊 悠貴
昭和少女探偵團 (新潮文庫)昭和少女探偵團 (新潮文庫)感想
和洋折衷文化が花開く昭和6年。帝都の女学校に通う花村茜と級友たちに怪文書が届き。疑われた親友を庇う茜が謎めいた才女・夏我目潮や謎めいた才女・夏我目潮とともに少女探偵團を結成するレトロ青春ミステリ。怪文書の正体、ドッペルベンゲル遭遇の真相、そして級友の元婚約者が失踪した事情。のんびりとした茜の呼びかけで結成された少女探偵團が周囲で起きる事件を解決してゆく展開で、たびたびの視点変更が読んでいて多少混乱に繋がった感はありますが、登場人物たちもキャラが立っていて、のんびりとしたレトロな雰囲気を楽しめた一冊でした。
読了日:12月25日 著者:彩藤 アザミ
朝比奈うさぎの謎解き錬愛術 (新潮文庫)朝比奈うさぎの謎解き錬愛術 (新潮文庫)感想
父の跡を継いだもののぱっとしない探偵の迅人。彼のことが好き過ぎるストーカー美少女・朝比奈うさぎが、事件に巻き込まれがちな迅人を救うため謎を解いてゆく連作短編集。行く先々で殺人事件に巻き込まれて、なぜか容疑者扱いされてしまう迅人と、愛を証明しながら事件を解決してしまううさぎ。迅人のことしか考えていないうさぎがなぜ論理的に解決できるのか謎ですが、うさぎの重過ぎる愛を戸惑いながらも何だかんだで受け入れつつある迅人はいいコンビで、二人を見守る姉を交えたやりとりも面白かったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。
読了日:12月25日 著者:柾木 政宗
九十九書店の地下には秘密のバーがある (ハルキ文庫)九十九書店の地下には秘密のバーがある (ハルキ文庫)感想
仕事についていけず入社二年で会社を辞め、自信喪失していた長原佑。ある日訪れた九十九書店で、謎めいた女性店主トワコさんから書店の地下を改装した秘密のバーに誘われる物語。昼は小さな書店で仕事する話のメインは夜のバーを訪れる悩める人たちの問題解決。トワコさんに幼馴染のことだったり、男をペットとして飼う女性、不倫をする女性、そしてトワコさん自身のことなど、時にはやや無茶ぶりっぽい仕事を振られましたが、常連客と協力して向き合い選択してゆく中で過去を乗り越え、再び前に進むきっかけを得てゆく展開はなかなか良かったです。
読了日:12月26日 著者:岡崎琢磨
休みの日〜その夢と、さよならの向こう側には〜 (スターツ出版文庫)休みの日〜その夢と、さよならの向こう側には〜 (スターツ出版文庫)感想
高校時代の後輩・奏との失恋を引きずっていた大学生の滝本悠。ある日、印象的な出会いを果たした美大生の多岐川梓を通じて同じく美大生になっていた奏と偶然再会する青春小説。素直で不器用な多岐川梓のありように少しずつ惹かれてゆく繊細な距離感があって、一方で縁はあるのにどうにも巡り合わせの良くない奏との関係が切ない展開でしたけど、どんどん追い詰められて余裕がなくなると、かけがえのない存在でもすれ違いから上手くいかなくなることありますよね。だからこそ不器用な決着しか知らなかった彼らに希望が垣間見えた結末で良かったです。
読了日:12月26日 著者:小鳥居ほたる
科警研のホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)科警研のホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
それぞれ思うところがあって科学警察研究所・本郷分室にやってきた、北上・伊達・岡安の三人の研修生たち。科警研の仕事に興味を示さない室長・土屋に困惑しつつ、事件解決に挑む警察ミステリ。容疑者が黙秘を続ける理由、司法解剖でも特定できなかった死因、監視カメラに映った双生児、連続辻切り事件の犯人。三人の研修生がそれぞれ持ち味を生かして試行錯誤しながらアプローチしていくあたりには成長が感じられましたけど、それでもここぞという時に冴える土屋の視点は流石でしたね。研修期間が延長された彼らのその後の捜査も読んでみたいです。
読了日:12月27日 著者:喜多 喜久
戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 9 (HJ文庫)戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 9 (HJ文庫)感想
マイッツァーを狙った機械兵の襲撃により、機械であるとルートにばれてしまったスヴェン。ダイアンとブリッツドナーまで現れ混迷を極めるトッカーブロートで、二人がすれ違い始める第九弾。ルートがどう思っているのか分からないままぎこちなくなってしまうスヴェン、ルートを訪問したダイアンの真意、そしてジェコブと邂逅したブリッツドナーの逡巡。ルートの決意から始まったひとつの結末はほんとに良かったなあという思いしかないですが、一方で明らかになっていった世界の真相と、裏で動き続けていた状況がこれから何をもたらすのか続巻に期待。
読了日:12月27日 著者:SOW
(P[あ]8-5)アンドロイドの恋なんて、おとぎ話みたいってあなたは笑う? (ポプラ文庫ピュアフル あ 8-5)(P[あ]8-5)アンドロイドの恋なんて、おとぎ話みたいってあなたは笑う? (ポプラ文庫ピュアフル あ 8-5)感想
義肢のリハビリ専門病院で事務スタッフとして働く、実はある研究機関から送り込まれたアンドロイドの佐藤真白。そんな彼女が事故で左腕を失い、義肢のリハビリのため病院へやってきていた青年・響に出会い処理しきれない感情が生まれてゆく物語。自分の中でうまく処理しきれない感情を持て余す真白と、ぎこちない彼女にしっかりと向き合ってくれる響。そんなアンドロイドには本来ないはずの「エラー」に心揺れる彼女が真実を知ってからの思わぬ展開は切なくて、いつかこんな日が来るんだろうかとつい思ってしまうピュアで甘酸っぱい恋の物語でした。
読了日:12月28日 著者:青谷 真未
第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 2 (ヒーロー文庫)第六皇女殿下は黒騎士様の花嫁様 2 (ヒーロー文庫)感想
屈強な強面騎士アレクシスの婚約発表は成功に終わり、辺境領に向かう準備を始める帝国の第六皇女ヴィクトリア。一方で隣国から留学してきたイザベラ王女のふるまいが思わぬ自体を引き起こす第二弾。相変わらず君主に仕える騎士みたいなアレクシスですけど、何だかんだで黒騎士様大好きなヴィクトリアを大切に思ってるみたいで、何だかんだでいい夫婦になりそうな二人ですね。やる気満々の第六皇女様が大活躍で辺境領は早々に凄いことになりそうな予感も。イザベラ王女は周囲に恵まれなかった感もありますが、今回のことが転機になればいいですね。 
読了日:12月28日 著者:翠川 稜
真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました3 (角川スニーカー文庫)真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました3 (角川スニーカー文庫)感想
冬の寒波がやってきた辺境ゾルタン。リットの提案から、レッドは新商品の開発に取りかかり、一方、勇者の加護による衝動から解き放たれる為、ルーティはティセと共に辺境の地・ゾルタンへと向かう第三弾。リットとレッドの仲がいい雰囲気は相変わらずいい感じでしたけど、ここでティセとともにパーティーを離脱してきた勇者ルーティと再会したことはひとつの転機になるんでしょうかね。加護に振り回され引き離された運命を何とかしようとする兄妹がいて、家の再興のために勇者に妄執する賢者がいて、ここまでくると衝突は不可避な気がしますが…。 
読了日:12月29日 著者:ざっぽん
ひげを剃る。そして女子高生を拾う。3 (角川スニーカー文庫)ひげを剃る。そして女子高生を拾う。3 (角川スニーカー文庫)感想
吉田と同居するうちに、自分の将来を考えるようになっていった沙優。そんなタイミングで吉田と同じ会社に、高校時代の元カノ神田先輩が異動してくる第三弾。状況に変化をもたらした神田先輩にやきもきする三島や沙優、どこか達観した後藤さん。ドキドキしながらも根本的なところはブレない吉田はらしいなと思いましたけど、一方で神田先輩からそのありように対し鋭い指摘があって、平静でいられない三島の様々な行動が図らずも現時点の構図を明確にして、自覚できずに自らの想いを持て余す沙優が迎えた転機にどうなるのか、続巻に期待したいですね。
読了日:12月29日 著者:しめさば
好感度120%の北条さんは俺のためなら何でもしてくれるんだよな…… (角川スニーカー文庫)好感度120%の北条さんは俺のためなら何でもしてくれるんだよな…… (角川スニーカー文庫)感想
「他人の自分に対する好感度」が見える雅継。それを利用して当たり障りのない生活を送っていた彼の前に、なぜか好感度120%の才色兼備な完璧お嬢様・北条朱雀が転校してくる学園ラブコメディ。早くも人気者だったのにドマイナーな現代歴史研究同好会に難癖を乗り越え入会する朱雀。横暴な生徒会による廃部危機を打開するため、体育祭優勝を目指す計画のキーマンは雅継大好き過ぎる朱雀で、隙を見つけては彼に甘えつつ計画を支える彼女の好感度が高い理由に説明があると良かったですけど、続きがあるならその辺や双子妹再登場に期待ということで。
読了日:12月29日 著者:本田セカイ
キミのこと黒歴史もまとめて……ぜーんぶ大好きだよ (角川スニーカー文庫)キミのこと黒歴史もまとめて……ぜーんぶ大好きだよ (角川スニーカー文庫)感想
意外と可愛い館崎栞奈のネット上での黒歴史をうっかり知ってしまった直後に告白された先名櫂。先名もまた黒歴史を彼女に知られていて、忘れたい過去を知る者同士の恥ずかしい青春ラブコメネゲットを嫌って告白を速攻で断った館崎の変わりたいという思いを、内心無理だとは思いつつ応援する先名。試行錯誤する中で意外な趣味から友人もできた館崎が直面する突然の暗転と、そのままにできなかった先名に突きつけられた皮肉な真相もまたほろ苦い青春だったりで、遠回りはしたけれどいろいろ向き合えるようになってゆく結末はなかなか良かったですね。
読了日:12月30日 著者:音無白野
ライト・ノベルライト・ノベル感想
貴重な青春を無難に過ごすだけの高校生・ふみひろの前に出現した光のゲート。そこで猫耳でしっぽのある美少女と出会ってから、謎の女の子たちと次々と出会う物語。やる気のない教師や息子に恋人役を期待する母親、優等生だった幼馴染が突然不良化して旅立ってしまったり、何気に救いのない環境にいる主人公が出会った奇妙な少女たちとの日常が何を意味するのかいろいろ考えてしまいましたけど、抽象的な描写も少なくない中で意識するようになっていった幼馴染と再会できた結末は良かったのかな?何を書きたかったのかあまりよく分からなかったです。
読了日:12月31日 著者:滝本 竜彦
ひとつむぎの手ひとつむぎの手感想
心臓外科医を目指し大学病院で過酷な勤務に耐えている平良祐介が、医局の最高権力者・赤石教授に見返りの代わりに三人の研修医の指導を指示され、さらに医局内の権力争いに巻き込まれてゆく物語。最初は無難に指導しようとした平良が直面する研修医たちの不信感、そして赤石が論文データを捏造したと告発する怪文書事件。けれど平良の患者と真摯に向き合う姿勢は変わらなくて、多くの人たちの命を救ってきたんですよね。ほろ苦い現実にも直面しましたが、見る人はよく見ていて正しく評価されていたことが分かる結末にはグッと来るものがありました。
読了日:12月31日 著者:知念 実希人

読書メーター

2018年下半期注目のオススメ単行本24選

本が読み進められなかったせいで下半期企画が思ったよりも進まなくて、年間まとめの方が先に出てしまいましたが、下半期注目のオススメ企画第四弾単行本編です。本当は積読にある単行本をもう少し読んでから記事を作りたかったのですが、時間切れでここまででまとめることにしました。上半期版とあわせて参考になれば幸いです。

 

 上半期版はこちら↓

 

【 2018年下半期注目のオススメ単行本24選】

1.探偵は教室にいない

探偵は教室にいない

探偵は教室にいない

 

 北海道の中学校に通う14歳の海砂真史を主人公に、英奈、総士、京介ら同級生たちとの日々の中で生まれるちょっとした謎を、真史のちょっと変わった幼馴染・鳥飼歩が解き明かしてゆく連作短編集。差出人不明のラブレター、ピアノに対する京介の複雑な想い、総士が隠していた真相、そして真史の家出と四つの物語が収録されていて、登場人物たちの周囲に対して素直になれない繊細な心情を巧みに描きつつ、相談された謎を解き明かしてゆく一見無頓着な探偵役・歩が見せる細やかな心遣いがなかなか効いていました。この作品の続編をまた読みたいです。

2.青少年のための小説入門

青少年のための小説入門 (単行本)

青少年のための小説入門 (単行本)

 

中学2年だった一真が万引きを強要された現場でヤンキーの登と出会い、幼い頃から自由に読み書きができなかった彼と共に小説家を目指す青春小説。文字を読むのには苦労する登が一真に小説の朗読をしてもらって、彼が頭の中に湧き出すストーリーを一真が小説にする日々。そして一真が出会った少女・かすみとのほのかな恋。二人で多くの印象的な作品を読みながらコンビで小説家を目指すべく試行錯誤を続ける二人が、作家になってから少しずつ歯車が狂ってゆく展開はもどかしくて、けれどそんな彼らのままならない青春にはぐっと来るものがありました。

3.風に恋う

風に恋う

風に恋う

 

 かつての栄光は見る影もなくなってしまっていた名門高校吹奏楽部。そこへ黄金時代の部長だった不破瑛太郎がコーチとして戻ってきて、入部したばかりの一年生の基を部長に任命する青春小説。幼馴染の部長・玲於奈の誘いにも入部に乗り気でなかった基を変えた瑛太郎の存在。部長としてひとりの演奏者として苦悩しながらもひたむきな想いでのめり込んでいく基。複雑な想いが入り交じる部員それぞれの葛藤に、自身もまた悩みを抱える瑛太郎も迷いながらもしっかり向き合って、全国大会目指して一丸となってゆく展開にはぐっと来るものがありました。

4.歪んだ波紋

歪んだ波紋

歪んだ波紋

 

新聞、テレビ、週刊誌、ネットメディアの「誤報」をテーマに、それが生み出される過程や、直面したり振り回される人たちの複雑な想い、それらがもたらした結末が描かる連作短編集。意図せずとも誤報に繋がってしまう構図や、誤報によって人生が歪められたり不安に怯えるようになったり、誤報を弾劾する側の人間もまた一歩間違えばフェイクニュースを掴まされ、容易に糾弾される側に回ってしまう構図に今のマスメディアの難しさと怖さがあって、報じる側の姿勢が問われると同時に、受け取る側にもまた判断が難しい時代になりつつあると痛感しました。

5.ひとつむぎの手

ひとつむぎの手

ひとつむぎの手

 

心臓外科医を目指し大学病院で過酷な勤務に耐えている平良祐介が、医局の最高権力者・赤石教授に見返りの代わりに三人の研修医の指導を指示され、さらに医局内の権力争いに巻き込まれてゆく物語。最初は無難に指導しようとした平良が直面する研修医たちの不信感、そして赤石が論文データを捏造したと告発する怪文書事件。けれど平良の患者と真摯に向き合う姿勢は変わらなくて、多くの人たちの命を救ってきたんですよね。ほろ苦い現実にも直面しましたが、見る人はよく見ていて正しく評価されていたことが分かる結末にはグッと来るものがありました。

関連作品:「祈りのカルテ

6.向日葵のある台所

向日葵のある台所

向日葵のある台所

 

 シングルマザーで中学二年の娘・葵を育ててきた美術館に勤める学芸員・麻有子。極力関わらないようにしていた根深い遺恨がある母が倒れ、その母と突然同居することになってしまう物語。これまで散々母に甘えながらも、いざとなると妹の麻有子に押し付けようとする姉・鈴子。すれ違いばかりだった過去のわだかまりはあまりも重くて、そう簡単には解消できないよなあと感じましたが、それでも母に様々なことを思い起こさせる自分と娘の関係の積み重ねがあって、不器用なりにお互い少しずつ向き合えるようになってゆく結末には救われる思いがしました。

7.君の話

君の話

君の話

 

記憶改変技術「義憶」が普及した世界。二十歳の夏、天谷千尋が一度も出会ったことのない、存在しないはずの幼馴染・夏凪灯火と再会し動き出す物語。何もない過去を消したかったはずが、植え付けられたたった一人の幼馴染の鮮明な記憶。あまりにも運命的な再会から突如目の前に現れた灯花の存在を疑いながらも、どうしようもなく惹かれてゆく千尋。そこにはもうひとつの物語があって、不器用でお互い遠回りせざるをえなかった二人がきちんと向き合って、儚く切ないけれど優しさが感じられる物語の結末に著者さんらしさがよく出ていると思いました。

8.忘られのリメメント

忘られのリメメント

忘られのリメメント

 

擬憶素子「MEM」を額に張るだけで、他者の記憶を擬憶体験できるようになった近未来。「憶え手」である歌手・宵野深菜が、リギウス社CEOの迫間影巌から脱法MEMの調査を依頼されるSFサスペンス。調べてゆく上で浮かび上がる深菜の生い立ちに深く関わる稀代の殺人鬼・朝来野と模倣犯の存在、そして殺されてしまった同居人・三崎真白。記憶を追体験できるという技術を物語のベースに据え、虚実織り交ぜた体験をしながら朝来野の行方を追ううちに特異だった自らのありようとも向き合い、しっかりと決着をつける展開はなかなか良かったですね。

9.世界の終わりと始まりの不完全な処遇

世界の終わりと始まりの不完全な処遇

世界の終わりと始まりの不完全な処遇

 

九年前一度会ったきりの美しい少女を想い続ける大学生の花村遠野。大学にほど近い住宅街で吸血種の仕業とも噂される惨殺事件が発生し、サークル仲間と現場を訪れた遠野が記憶の中の美しい少女にそっくりな姉妹と出会う物語。運命的な再会を果たした少女と繋がりを持ち続けるため、警戒されない言葉や距離感を慎重に選びつつ事件解決に協力を持ちかける遠野。思わぬ方向に向かう事件にもブレない彼には感心しましたが、迎えた皮肉な結末は…本人的に結果オーライとはいえなかなか重いものを背負いましたね。そんな彼らの今後をまた読んでみたいです。

10.「はじめまして」を3000回

「はじめまして」を3000回

「はじめまして」を3000回

 

プログラミングに没頭する高校生・北原恭介。夢に見た予知が外れると不幸が訪れるという人気者の同級生・佑那から告白をされ、そんな彼女に振り回されるようになってゆく青春小説。印象的な出会いから「私と付き合わないとずばり死んじゃう」と告げて、予知夢だという内容を恭介と二人で再現してゆく佑那。最初懐疑だった恭介の想いが徐々に変化する中で直面する急展開と、明かされてゆく彼女の秘密と覚悟は切なくて、彼女の想いを噛みしめるようなタイトルでしたが、諦めなかった恭介がもたらした一つの結末に著者さんらしさがよく出ていました。

11.永遠についての証明

永遠についての証明

永遠についての証明

 

特別推薦生として協和大学の数学科にやってきた瞭司と熊沢、そして佐那。眩いばかりの数学的才能で周囲の人生を変えていった瞭司の運命の出会いと失意、彼の遺した研究ノートから熊沢がその想いに再び向き合う物語。仲間と得た成果に希望を見出す瞭司と、突出した成果がそれぞれが別の道を選ぶきっかけとなってしまう皮肉。瞭司と仲間たちのすれ違いは残念でしたが、彼が遺した研究ノートに見出した可能性が、形は変わっても失われていなかったそれぞれの想いを再び繋げていって、それが新たな希望を紡いでゆく展開にはぐっと来るものがありました。

12.ひゃっか! 全国高校生花いけバトル

ひゃっか!  全国高校生花いけバトル

ひゃっか! 全国高校生花いけバトル

 

 「花いけバトル」決勝を見て出場が目標になった都内の高校二年生・大塚春乃が、転校生のパートナー山城貴音と出会う青春小説。二人一組での出場が義務の花いけバトルに、春乃の勉強を教えてもらう代わりに協力することになった大衆演劇座長の息子・貴音。人集めや練習用の花を用意するところからして大変なんだなと思いつつ読んでいましたが、逆境にも支えてくれる春乃の友人や家族、貴音の家族同然の仕事仲間たちもいて、乗り越えた二人が挑んだ大会にはライバルの存在やほのかな恋模様もあったりで、読みやすく熱い展開はなかなか良かったですね。

13.青い春を数えて

青い春を数えて

青い春を数えて

 

 数えても数えきれない複雑な思い。葛藤を抱える少女たちの逡巡とそれを乗り越えてゆく姿が描かれる5つの連作短編集。親友に対する複雑な想い、ズルイと思われたくないでも損したくない心境、天真爛漫な姉に対する器用貧乏な妹のコンプレックス、メガネにこだわる少女の心境を言い当てた電車の中での出会い、そして優等生が噂の不良少女に振り回されて気づいたこと。登場人物たちがゆるく繋がるひとつの世界観の物語で、繊細で複雑な想いをずっと抱えていた少女たちがきっかけを得てそれを乗り越え、新たな一歩を踏み出す姿はとても心に響きました。

14.夏空白花

夏空白花

夏空白花

 

昨日までの正義が否定され誰もが呆然とした終戦。未来を担う若者のために、戦争で失われた「高校野球大会」を復活させなければいけないと奔走する人々が描かれる物語。戦後の混乱期、GHQ占領下で思うようにままならない状況の中の中で始まった高校野球大会復活の動き。何のために復活させようとするのか、中心となって奔走する神住の複雑な想いや周囲の人たちの様々な想いも綴りながら、容易でない状況でも諦めない彼の熱意から意外な縁も繋がっていって、思わぬところから活路を見出し繋げてゆくてゆく熱い展開にはぐっと来るものがありました。

15.夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)

夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)

夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)

 

単なる自作自演の家出か悪ふざけと思われた子供たちの連続失踪事件。その真相を追う雑誌編集の猿渡と記者の佐々木が事件を調べるうちに、地域を巡る複雑な因縁と過去の事件との思わぬ繋がりが明らかになってゆくミステリ。失踪を画策する団地内の子たちと傘外の子たちの因縁、火災によって意識不明の子を出してしまったキャンプの事件。複雑に絡み合う事情に加えて子どもたちの真摯な願いから引き起こされた事件の意味合いは、真相が明らかになるたびにどんどん様相を変えていきましたけど、希望の光を垣間見せてくれた結末には救われる思いでした。

16.ドアを開けたら

ドアを開けたら

ドアを開けたら

 

借りた雑誌を返すため隣人の老人・串本を訪ねたところ、事切れている彼を発見しながら逃げ出してしまった鶴川。そんな姿を高校生・佐々木紘人に撮影され、最悪の五日間の幕が開くミステリ。翌朝、通報する覚悟を決めた佑作が紘人とともに部屋を訪れると消えていた遺体。高校生と五十四歳の一人暮らしという少し変わった組み合わせで調べてゆくうちに明らかになってゆく串本の不穏な噂と、徐々に判明してゆく意外な事実。様々な思惑が複雑に絡み合った事件の真相は思わぬ結末に繋がりましたけど、回復された名誉と残された絆はなかなか良かったです。

17.ただし、無音に限り (ミステリ・フロンティア)

ただし、無音に限り (ミステリ・フロンティア)

ただし、無音に限り (ミステリ・フロンティア)

 

探偵事務所を開いたけれど依頼は大抵浮気調査。密かに霊の記憶を読み取る能力を持つ探偵・春近が、能力の不自由さに振り回されつつも友人の弁護士の仲介で心霊絡みの事件を解決してゆくミステリ。遺産相続を巡る孫に感じた違和感を巡る調査と、行方不明になっていた倒産会社社長の行方を追う2つの中編という構成。自分が見える幽霊が体験した情景を断片的に知ることができる何とも中途半端な能力で真相を追う展開で、その結末はほろ苦いけれどそれだけに終わらない読後感があって、意外な助手候補も現れて今後のシリーズ化を期待したい作品ですね。

18.星空の16進数

星空の16進数

星空の16進数

 

高校を中退しウェブデザイナーとして働く17歳の藍葉。ある日、謝罪の100万円を渡すよう依頼された私立探偵・みどりが現れ、心当たりが6歳の頃の誘拐事件しかない藍葉がみどりに当時の誘拐犯・朱里の捜索を依頼する青春ミステリ。仕事で燻っていた状況からの転機に直面する藍葉、そしてみどりが追う朱里の行方とその過去。みどりにはみどりの事情があって、過去を追う過程で明らかになる事件の真相には複雑な気持ちでしたが、一方でもたらされた変化は今の藍葉に繋がっていて、色を通じて語られる繊細な藍葉の心境の変化がとても印象的でした。

19.祭火小夜の後悔

祭火小夜の後悔

祭火小夜の後悔

 

怪異現象に詳しい女子高校生・祭火小夜と、彼女に出会ったひとたちのある夏の連作短編集。床板をひっくり返す謎の存在を目撃する教師・坂口、巨大なムカデのようなものに憑かれて悩む少年、幼い頃に「しげとら」と取引をした少女たちと謎めいた小夜が出会い、彼女のアドバイスで彼らが救われてゆく展開で、消えない後悔を抱える小夜の事情が徐々に明らかになってゆく中、それらの出会いが彼女に心境の変化をもたらしていて、それを読みやすい文章で坂口の悔恨も踏まえて結末へと導いてゆく展開はなかなか良かったです。今後に期待の作家さんですね。

20.鵜頭川村事件

鵜頭川村事件

鵜頭川村事件

 

一九七九年夏。亡き妻・節子の田舎である鵜頭川村へ、三年ぶりに墓参りにやってきた岩森明と娘の愛子。突如、山間の村は豪雨に見舞われ閉じ込められる中で一人の若者の死体が発見され、閉塞した状況で蓄積していた鬱屈が狂気に繋がってゆく物語。村の有力者・矢萩家への鬱屈した想いと、外部と遮断された状況でうやむやにされた犯人探し。大人たちに不信を隠せない若者たちに対する扇動が暴走に繋がってゆくまでの描写には、追い詰められた人の危うさが生々しく描かれていて、ギリギリの状況で何とか娘を守ろうと奔走する岩森がとても印象的でした。

21.この恋は世界でいちばん美しい雨

この恋は世界でいちばん美しい雨 (単行本)

この恋は世界でいちばん美しい雨 (単行本)

 

鎌倉の海辺の街で愛にあふれた同棲生活を送る駆け出しの建築家・誠とカフェで働く日菜。ある雨の日にバイク事故で瀕死の重傷を負ってしまった二人が、二人合わせて二十年の余命を授かり、お互いの命を奪い合う苛酷で切ない日々の物語。幸せを感じたら相手の命を奪ってしまい、悲しむと命を与えてしまう生活に、余裕を失い険悪になってゆく二人。あまりにも過酷な奇跡でしたけど、それでも根底には相手に幸せになって欲しい真摯な気持ちがあって、それぞれの決断には切なさを感じつつも、そんな中でも精一杯生きた二人らしい結末だったと思いました。

22.猫町くんと猫と黒猫

猫町くんと猫と黒猫

猫町くんと猫と黒猫

 

 猫町夫妻に助けられた人間に化けられるという特技を持つ光太郎。猫ゆえの成長の早さで、二歳半ながら高校に通っている彼が密かに同級生の井浦さんに恋心を抱く青春小説。ちょっと変わった猫たちにも理解がある広島・尾道を舞台とした世界観で、転校生の化け猫たちに絡まれたりしながらも、困っている友人のために奔走したり、片想いの相手・井浦さんとの不器用な距離感や甘酸っぱいやりとりだったり、そんな悩み多き青春を精一杯生きる光太郎のありようと、そんな彼の想いにきちんと向き合って応えてくれる井浦さんの関係がなかなか良かったですね。

23.未来職安

未来職安

未来職安

 

国民が99%の働かない消費者と、働く1%のエリート生産者に分類された平成よりちょっと先の未来。運悪く県庁勤めを退職しなければならなくなった目黒が、少し変わった大塚を所長とする職安に転職し、仕事を求めて訪れる様々な人々と出会う近未来小説。財源的な部分をどう解決するのかは気になりましたが、仕事が機械に置き換えられてゆく中であえて人がする仕事とは何か?確かにそんな状況になったら消費者と生産者との間の微妙な距離感とか、仕事に対する本末転倒的な発想とか、いかにも起こりそうな興味深いエピソードがなかなか良かったです。

24.そいねドリーマー

そいねドリーマー

そいねドリーマー

 

不眠症により眠ることができない女子高生・帆影沙耶が出会ったどんな相手でも眠らせられる金春ひつじ。先輩の藍染蘭に適性を見出された沙耶が〈スリープウォーカー〉として人の精神に取り憑く睡獣と戦う添い寝ドリームSFノベル。4人の仲間と睡獣狩りすすめていたはずが、いつの間にか暗雲漂うようになってゆく展開は、夢の中では恋人なのに現実ではぎくしゃくしているひつじとの眠れない/眠らせてしまう二人の不器用な関係性がポイントになっていて、ふわっとした雰囲気の物語はまさにそれを描くために作られたということなんでしょうね(苦笑)

 

思っていた以上にギリギリになってしまいましたが、何とか今年も下半期企画を全て年内に更新できました。 当サイトを訪れてくださってありがとうございます。来年も引き続きいろいろ企画を作っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

 

2018年おすすめ本40冊(ライトノベル20冊/一般文芸・文庫・ライト文芸20冊)

年末最終日になりましたが、単行本オススメを書くまでに読んでおきたい本がまだ読み終わりません(苦笑)というわけで年末企画を先に作ってしまうことにしました。今回もだいぶ選ぶのに悩みましたが、 ライトノベル部門20冊、一般文芸・文庫本20冊ということで作りました。ご参考になれば幸いです。

 

ライトノベル部門20選】

1.三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

 

過去の苦い経験から「偽りの自分」を演じてしまう高校生・矢野四季が、印象的な出会いを果たした物静かな転校生・水瀬秋玻に惹かれ、彼女ともうひとりの人格・春珂を支えるようになってゆく不思議な恋物語。しっかりものの秋玻と対照的な危なっかしい印象の春珂。状況的に春珂をフォローすることが多い四季と二人を見つめる秋玻の繊細な距離感がまた絶妙で、大切な存在なのにすれ違ってしまうやるせなさだったり、ごまかさずにきちんと想いをぶつけてゆく彼らの青春がとても良かったですね。終盤は挿絵の使い方も効いていて続巻が楽しみです。現在2巻まで刊行。

2.彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

 

嘘がわかる特異体質を持つ遠藤正樹。そんな彼が気になる決して嘘をつかない川端小百合と常に振りまく学校のアイドル佐倉成美、死んだ共通の友人を巡る願いと嘘と恋が交錯する青春ミステリ。「彼女は殺された」という川端と「彼女を追い詰めたのは私」とうそぶく佐倉。ともに過ごす時間が増えてゆく中で正樹にだけ見せる彼女たちの素顔と、正樹と父親の関係。新事実が明らかになってゆくたびにガラリと変わってゆく構図。彼女たちがついた嘘は切なくも優しくて、真実に向き合ったからこそ見えたその想いとはっとするような結末はとても印象的でした。

3.キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

 

余命半年を宣告されて大学を中退し実家でニートと成り果てた松本修。昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れた修が、かつて突き放した因縁の幼馴染・桐山鞘音と再会する青春小説。人生に絶望して投げやりな日々を送る修の後悔と、シンガーソングライターとして不調に陥り戻ってきた鞘音の覚悟。トミさんを介して昔のような不器用な二人の交流が再開して、鞘音と最後の共演のために覚悟を決めて自らを追い込んでゆく修。その過程で取り戻してゆくお互いの大切な想いと、彼らの決意がもたらしたエピローグにはぐっと来るものがありました。19年2月に2巻刊行予定。

4.ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

 

5年片想いした上司の後藤さんにバッサリ振られたサラリーマンの吉田。ヤケ酒の帰り道に路上で家出女子高生・沙優を発見し、なし崩し的に同居生活が始まる日常ラブコメディ。自分を大切にしないことを叱る吉田の優しさに戸惑う沙優と、彼女の存在が自分の中で少しずつ大きくなってゆくことを自覚する吉田。そんな何事にも真摯に向き合う彼の変化が気になる後藤さんと後輩の三島柚葉。周囲に振り回されてはいても根幹はブレない、相手を大切にしようとする吉田のありようが素敵で、何とも複雑な関係ですが今後の展開がとても楽しみなシリーズですね。現在三巻まで刊行。

5.ファイフステル・サーガ (ファンタジア文庫)

古の魔王が再臨する絶望の未来を変えるため「アレンヘムの聖女」セシリアと婚約し、傭兵団「狂嗤の団」団長となる道を選んだカレル。聖女の加護を受け死の未来を回避する英雄として奮闘するファンタジー戦記。二年後の魔王再臨を限られた人しか知らない中で、代替わりした王国や戦争を仕掛けてきた自治領相手にどう立ち回るのか。腕が立って商才があり現実的な手段を積み重ねるカレルだけでなく、ヒロインのセシリアや仲間たち、王国の登場人物たちもまた魅力的なキャラが多くて、ここから物語がどう動くのか続巻がとても楽しみな新シリーズですね。

6.ピンポンラバー (ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

 

日本全国から集まった卓球エリートがひしめく私立卓越学園。そこにかつて天才卓球少年と呼ばれた飛鳥翔星が入学し、完敗した一年生最強の女子・白鳳院瑠璃と組んで、その姉で自らの因縁の相手でもある学園最強の女子・紅亜に挑む青春小説。膝の重症を乗り越えかつて対戦した少女を探していた翔星と、紅亜を負かすことに執念を燃やす瑠璃の共闘関係。衝突しつつも勝ちたい一心でのめり込んでいく、身を焦がすほどに卓球を愛する二人が挑む熱い勝負はこれまで積み重ねてきた想いもカタルシスに繋がっていて、そんな物語の結末もまた効いていました。現在二巻まで刊行。

7.公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

 

昔からの幼馴染、瀬川エリカと吾妻千里。そんな二人とその友人たちを中心とした公園でのやりとりや日常が描かれる青春小説。お隣さんな二人の家の近くの公園で繰り広げられる仲間とダベったり野球をしたり、走り回ったり少し喧嘩したりのありふれた日常。でもそんな中にも幼馴染の二人が積み重ねてきた様々なことや、傍から見たら何で付き合っていないの?とついちょっかいを出したくなる二人の確かな絆があって、それでいて相手の知らないことに遭遇すると思わず動揺してしまう関係が微笑ましくて、何かじわじわとこみ上げてくるものがありました。

8.天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)

病床の国王に代わり摂政として弱小国家を背負うことになった若き王子ウェイン。文武に秀で臣下からの信頼も厚い彼が、絶望的な状況から密かに売国を志す弱小国家運営譚。状況を正しく認識して先を見通せるからこそ絶望を感じるウェイン。上手く終わらせるための手を打つのに、それがなぜか効果的な一手に繋がる皮肉な状況の変化や展開の連続でしたけど、ウェインが彼なりに最善へ真摯に取り組んだ結果だからこそ納得感がありました。補佐官のニニムに対する想いも気になる彼にいつか心境の変化はあるのか、どこまでやれるのか続巻が楽しみですね。現在二巻まで刊行。

9.ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

 

突然失踪した卓球部のエースで幼馴染の羽麗。父親の抱える8000万の借金返済のため彼女が裏賭場で戦うことを知った坂井修が、幼馴染を救うため共に命賭けの無謀なギャンブルに挑む物語。ゴスロリ卓球は一見微笑ましいのにレバレッジの変動で勝負と獲得金額が一致しないヤバイ闇卓球で、一歩間違えば奈落の底という緊張感のある状況でしたけど、卓球以外は残念美少女の羽麗とお世話係と化していた修の距離感や、お互いが傍らにいたらどんな境遇でも信じて頑張れると思えてしまう幸せそうな二人の関係にはぐっと来るものがありました。現在2巻まで刊行。

10.七つの魔剣が支配する (電撃文庫)

名門キンバリー魔法学校に入学したオリバーが運命的な出会いを果たしたサムライ少女・ナナオ。魔法生物のパレードから始まるトラブルの連続に巻き込まれつつ出会った仲間たちと乗り越えてゆく学園ファンタジー。器用に魔法を応用しながら使いこなすオリバーと剣に突出した力を持つナナオを中心に、それぞれの想いを抱えながら入学した仲間たちと力を合わせ、危機的状況の連続を乗り越えて絆を育んでゆく展開がなかなか良かったからこそ、深い因縁を感じさせるエピローグが今後の波乱を予感させて、ここからどうなるのか楽しみな新シリーズですね。

11.それでも異能兵器はラブコメがしたい (角川スニーカー文庫)

「異能兵器」が趨勢を左右する世界。転校した初恋の女の子・市ヶ谷すずに再会した辰巳千樫が、引っ込み思案な夢見る彼女が抱える秘密に巻き込まれてゆくラブコメディ。テロに襲われすずの圧倒的な力を知る一方、瀕死の重傷から助けてもらった代償に交換条件を突きつけられた千樫。それでも中国やロシアの驚異的な異能兵器相手だろうが、すずは彼にとって守りたい女の子で、どこまでも献身的な奔走の先にあった噛みしめるような幕切れはあまりにも切なかったです。でもこれで終わりじゃないですよね?諦めない千樫たちの物語を最後まで読みたいです。

12.常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

 

 大国ザルツボルクの侵攻を受けたヘイミナル王国が存亡の危機を救う切り札として起用された傭兵・『常敗将軍』のドゥ・ダーカス。王弟や王の娘など様々な思惑が入り乱れる中、圧倒的不利な状況に立ち向かうファンタジー戦記。全幅の信頼を得られず思うように動けない中、要所要所の危機で最悪の状況を回避すべく動くダーカスの奮闘ぶりと、彼が見出そうとした決着の落とし所とその結末。テンポ良い展開に彼を見極めようとするティナや姫将軍・シャルナといった魅力的なキャラクターたちもよく動いて、これは続巻が楽しみな期待大の新シリーズです。現在二巻まで刊行。

13.継母の連れ子が元カノだった (角川スニーカー文庫)

ぼっちで昼休みに勉強ばかりしているガリ勉の一条純が、いかにもギャル風で噂も多い橘かれんに勉強を教えてほしいと請われ、そこからいろいろ変わってゆく青春ラブコメディ。ぐいぐい来るかれんに何で自分がと思ううちに教室でも話しかけられるようになって、クラスでの立ち位置も変わってゆく一条。最初は戸惑いながらもちゃんと向き合うようになってゆく彼は面倒見のいいやつで、見た目があれなかれんもまた真っすぐで応援したくなる二人ですね。かれんを意識するようになってツンデレ気味だった一条が陥落する日も近い?ということで続刊に期待。

13.君死にたもう流星群 (MF文庫J)

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

 

ほぼ全ての人工衛星が落下した大流星群から三年。たった一人の犠牲者・天野河星乃を救うため、全てを諦めかけていた平野大地が希望を見出し運命に抗う物語。宇宙飛行士だった両親の夢を追いかけていた星乃。コスパ重視だった人生も彼女を失いやる気をなくしていた大地。希望を見出すものの思うようにうまく行かなくて、それでも大切なものを取り戻すという熱い決意を胸に、危機になりふり構わず奔走して、醒めていた大地自身もまた変わってゆく展開はテンポも良くて、変化したことがこれからどう影響していくのか、非常に楽しみな新シリーズですね。現在二巻まで刊行。

14.僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

 

29歳で死んだ社畜が生まれ変わるたびに、18歳で漆黒の髪・赤い眼の帝国皇女に殺される運命。5回目の人生で傭兵暮らしをしていたロワが魔王の隠し子とされ、急転する運命に巻き込まれてゆく物語。容赦なく蹂躙し続ける帝国への対抗で送り込まれた先での王女との結婚と母国滅亡。またもや対峙することになるあの女に、醒めていたロワが大切の人たちを守るため泥臭く奔走するようになり、キーマンとなっていったロワと負けられない皇女・リンゼンカが再び対峙する濃厚な展開とその結末は著者さんらしさに溢れていて、ぐっと来るものがありました。

15.君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)

君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)
 

数百年続いた「帝国」と「王国」の戦争。その終戦記念日の慰霊祭で皇帝と国王を殺した「災厄の魔女」アンナ・マリアが世界を敵に回して戦うファンタジー。交互に語られる過去と現在、アニーとユージーンの運命的な出会いとその関係、そしてアニーの弟分・アローンとの邂逅による関係の変化。過去が明らかになってゆくたびに見えているものの印象がガラリと変わっていって、因縁に決着をつけた結末にすら皮肉な事実が提示されてしまう展開に思わず唸らされました。そうだったのか…毎回違うジャンルの作品描くのにそのインパクトは相変わらずですね。

16.女衒屋グエン (星海社FICTIONS)

女衒屋グエン (星海社FICTIONS)

女衒屋グエン (星海社FICTIONS)

 

とある花街のとある一角。妓館『太白楼』を舞台に春をひさいで生きている妓女たちそれぞれの人生と、都から届いた一通の文が妓館の運命を揺るがしていく物語。ワケありの冴えない女買いの男・虞淵と下働きの醜い少女・翡を物語の軸に据えて、旦那に売られた女や、兄が科挙を受ける学費のために売られた少女たちのこれまでの人生と葛藤が描かれていて、たくましく生きてきた矜持を失わない彼女たちのありようと、これまでの流れを踏まえて虞淵と複雑な過去に繋がってゆく最後の展開にはぐっと来るものがありますね。一琳のその後の話も印象的でした。

17.スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

 

同級生の八坂幸喜真に触発された女装男子の天野翔が、彼のプロデュースで女装に目覚めたメアリーと共に女装アイドルを目指す青春小説。病院にいる「あの子」のために女装アイドルを目指すことになった天野翔視点と、丸井宴花との出会いから人生が変わってゆく広瀬怜視点の二つの物語が交錯する展開はぐいぐい読ませるだけの勢いがあって、物語を牽引する目をそらせない八坂の圧倒的な存在感と、「あの子」への献身的で不器用な熱い思いがその心を揺さぶって、伏線を回収して収束してゆく物語が見せてくれたその結末にはぐっと来るものがありました。

18.優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

 

怪我でサッカーを辞めて灰色の高校生活を送る隼人と、歌姫として学校で注目される瑠子。近寄り難い存在だったはずなのに、ふとした繋がりからお互い意識するようになってゆくボーイミーツガール。周囲に上手く溶け込めない瑠子をさりげなくフォローする隼人と、そんな彼への評価が変わってゆく瑠子。お互い消化しきれない葛藤を抱えていて、強気なのに不器用で繊細な瑠子との出会いから隼人も少しずつ変化して、もがきながらも一緒に乗り越えようとする二人の関係と、強く心に訴えかけてくる熱い想いはとても真っ直ぐでぐっと来るものがありました。

19.オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

 

無表情・無感情で人と関わろうとせず、そこかしこに絵を書き散らす芸術科の天才・小海澤有紗。変人扱いの彼女を気にかける雪斗が関わってゆくうちに、彼女が抱える秘密に巻き込まれてゆく青春小説。コミュ障なオミサワさんと些細なやり取りを重ね交流を深めてゆく地道な努力が微笑ましくて、文字通り次元が違う秘密を知っても彼女を理解し共にあろうとする雪斗。大切だからこそ苦悩するオミサワさんでしたけど、彼女の想いを垣間見た雪斗と相変わらず難しい境遇でも確実に変わりつつある彼女が迎えた素敵な結末には、ついニヤニヤしてしまいました。

20.青春失格男と、ビタースイートキャット。 (ファンタジア文庫)

桜の木から落ちてきた宮村花恋と運命的な出会いを果たした野田進。なのにそんな幸せを実感できない彼の前に、エキセントリックな孤高の天才児・西條理々が現れる青春小説。進を青春不感症と指摘し、楽園追放計画に誘う西條との恋心とは呼べない背徳的な関係。一方で真っ直ぐないい子だとは思うものの、なぜか心動かない花恋との関係。不器用にしか生きられない彼らの最低の選択が皮肉にもその心境に変化をもたらしたりで、これから三人の関係がどのように変わってゆくのか、読む人を選びそうな作品ですが自分はその結末を読んでみたいと思いました。

 

 

【一般文芸・文庫・ライト文芸20選】

1.私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

 

突如失踪した人気小説家・遥川悠真。調査を進めるうちに彼の小説を愛した少女・幕居梓の存在が明らかになってゆく物語。追い詰められて絶望していた梓を偶然救ってくれた遥川。奇妙な共生関係を結んだ二人のささやかな癒やしと、小説を書けなくなってゆく遥川。何とかしたいという思い、魔が差した行為が二人の関係を決定的に変えていって、何とかしようとすればするほどすれ違って、垣間見えたいくつもの想い、ありえたかもしれない可能性が何とも切なかったですが、それでも真っ直ぐで不器用で優しかった二人らしい結末だったのかなと思いました。

2.後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

 

後宮奥深くにいる夜伽をしない不思議な力を持つ特別な妃「烏妃」。翡翠の耳飾りに取り憑いた女の幽霊の正体を探るべく訪れた皇帝・高峻が、その不思議な力を目の当たりにする中華風ファンタジー。辛い過去を抱え烏妃として孤独に生きようとする寿雪と、少年時代に生母を皇太后に殺され辛酸を舐めた高峻。後宮で起きる幽鬼絡みの事件を解き明かす過程で二人が関わる機会は増えていって、不器用な彼らの距離感や周囲との関係の変化はとても微笑ましくて、秘密を共有した二人がこれからどう変わってゆくのか、この続きを是非読んでみたいと思いました。現在二巻まで刊行。

3.アオハル・ポイント (メディアワークス文庫)

頭を殴られてその人を評価するポイントが頭上に見えるようになってしまった高校生・青木。それをひた隠して無難に生きてきた彼が、クラスで浮いている少女・春日と出会って変わってゆく青春小説。憧れの成瀬との関係に自信を持てずにいる一方で、好きな人と釣り合う存在になるべく変わってゆく春日に対する認識が少しずつ確実に変わってゆく青木。不安で空回りしてしまう彼らの行動は痛々しくて、それでも理不尽な目に遭う大切な人のために一生懸命で、遠回りしながらも素直に向き合えるようになった等身大な彼らのありようはとても心に響きました。

4.また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

 

小学校三年生の頃、遠い未来に時間を超えたことがある仙台の大学生・支倉爽太。未来で出会った年上の五鈴を忘れられずアルバイトに明け暮れる爽太が、過去から来た人にあったことがあるという八宮和希と出会うもうひとつの物語。前作から数年後の世界で、忘れられない人との再会を渇望する爽太と和希の出会いあって、彼と向かった采岐島で再会した面々が懐かしくて。ふとしたきっかけからたどり着いた意外な真実に、それでも覚悟を決めて向き合う爽太のひたむきな想いには心打たれるものがあって、諦めなかった彼らの今後を応援したくなりました。

関連作品:「どこよりも遠い場所にいる君へ」 (集英社オレンジ文庫)

5.名探偵誕生

名探偵誕生

名探偵誕生

 

小学生の頃から様々な冒険をしていたみーくんに不穏の影が差した時、いつも助けてくれた名探偵のお姉ちゃん。そんな千歳お姉ちゃんとの初恋とみーくんの成長を描くミステリ青春小説。ずっとみーくんに寄り添い見守ってくれていた千歳お姉ちゃんへの想いは募ってゆくのに、なかなか姉妹のような関係から抜け出せないもどかしさについ共感してしまいましたが、次々と事件を解決してきた生粋の探偵である彼女を救うため、ほろ苦い複雑な想いを乗り越えて自ら立ち上がるみーくんがとても格好良かったです。どこでまた彼らのその後を読めるといいですね。

6.君を描けば嘘になる

君を描けば嘘になる

君を描けば嘘になる

 

寝食も忘れてアトリエで感情の赴くまま創作に打ち込む毎日だった瀧本灯子が出会った、自分にはない技術を持つ南條遥都という少年の存在。お互いに認め合う二人の若き天才の喜びと絶望の物語。絵を描くこと以外の才能が壊滅的だった灯子と、そんな彼女の指針となったもう一人の天才・遥都。そんな二人のありようを影響を受けた周囲の視点からも浮き彫りにしつつ、良くも悪くも直情的な灯子に対して、断片的にしか描かれない不器用な遥都の積み重ねてきた想いが垣間見える結末は、ほんと素直じゃないなあと苦笑いしつつもとても良かったと思いました。

7.風に恋う

風に恋う

風に恋う

 

 かつての栄光は見る影もなくなってしまっていた名門高校吹奏楽部。そこへ黄金時代の部長だった不破瑛太郎がコーチとして戻ってきて、入部したばかりの一年生の基を部長に任命する青春小説。幼馴染の部長・玲於奈の誘いにも入部に乗り気でなかった基を変えた瑛太郎の存在。部長としてひとりの演奏者として苦悩しながらもひたむきな想いでのめり込んでいく基。複雑な想いが入り交じる部員それぞれの葛藤に、自身もまた悩みを抱える瑛太郎も迷いながらもしっかり向き合って、全国大会目指して一丸となってゆく展開にはぐっと来るものがありました。

8.忘られのリメメント

忘られのリメメント

忘られのリメメント

 

擬憶素子「MEM」を額に張るだけで、他者の記憶を擬憶体験できるようになった近未来。「憶え手」である歌手・宵野深菜が、リギウス社CEOの迫間影巌から脱法MEMの調査を依頼されるSFサスペンス。調べてゆく上で浮かび上がる深菜の生い立ちに深く関わる稀代の殺人鬼・朝来野と模倣犯の存在、そして殺されてしまった同居人・三崎真白。記憶を追体験できるという技術を物語のベースに据え、虚実織り交ぜた体験をしながら朝来野の行方を追ううちに特異だった自らのありようとも向き合い、しっかりと決着をつける展開はなかなか良かったですね。

9.僕と彼女の左手

僕と彼女の左手 (単行本)

僕と彼女の左手 (単行本)

 

幼い頃遭遇した事故のトラウマで、医者になる夢を前に壁にぶつかった医学生の習。そんな彼が左手一本でピアノを引く不思議な女性・さやこに出会い、共に時間を過ごすようになってゆくミステリ。教師を目指すさやこのために家庭教師として共に過ごすようになる二人。彼女にどんどん惹かれてゆき付き合うことになった習が、勉強よりもピアノに意識が向きがちな彼女のありように少しずつ感じるようになってゆく違和感。積み重ねられてゆく不安の先にあった真実は真摯な想いと共にあって、二人が出会えて本当に良かったと思えるとても素敵な物語でした。

10.あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)

あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)

あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)

 

結婚を考えていた恋人に振られ、将来に不安を抱く持田麻衣。地元に帰ることを決めた麻衣が偶然高校のときのクラスメイト今井優人に再会、「恋のない結婚」を現実的に考えはじめる物語。高校時代の30歳になってもお互い独身だったら結婚しようという今井との冗談めいた約束。かつてお互いの恋を協力する関係だった二人の共同生活はしっくり来る部分もイライラする部分もあったりで、そんな二人が一つ一つ乗り越えて迎えたラストにはじんわり来るものがあって、積み重ねていったエピソードが見事に繋がってゆくとても素敵な物語だったと思いました。

11.額を紡ぐひと

額を紡ぐひと

額を紡ぐひと

 

事故で婚約者を喪った額装師・奥野夏樹。少し変わった依頼でも真摯に向き合う夏樹が、彼女の作品の持つ雰囲気に惹かれた表具額縁店の次男坊・久遠純と出会う物語。時には依頼人の想いを暴いてしまう一方で、婚約者との過去にどう向き合うべきか悩む不器用な夏樹と、掴みどころのない純との微妙な距離感。そして二人の重要な過去に繋がる池端の存在。明らかになっていったそれぞれの過去に向き合うことにはほろ苦さも伴いましたけど、そんな自分に寄り添ってくれる存在がいて、新たな一歩を踏み出す姿が描かれる結末にはぐっと来るものがありました。

12.向日葵のある台所

向日葵のある台所

向日葵のある台所

 

シングルマザーで中学二年の娘・葵を育ててきた美術館に勤める学芸員・麻有子。極力関わらないようにしていた根深い遺恨がある母が倒れ、その母と突然同居することになってしまう物語。これまで散々母に甘えながらも、いざとなると妹の麻有子に押し付けようとする姉・鈴子。すれ違いばかりだった過去のわだかまりはあまりも重くて、そう簡単には解消できないよなあと感じましたが、それでも母に様々なことを思い起こさせる自分と娘の関係の積み重ねがあって、不器用なりにお互い少しずつ向き合えるようになってゆく結末には救われる思いがしました。

13.青少年のための小説入門

青少年のための小説入門 (単行本)

青少年のための小説入門 (単行本)

 

中学2年だった一真が万引きを強要された現場でヤンキーの登と出会い、幼い頃から自由に読み書きができなかった彼と共に小説家を目指す青春小説。文字を読むのには苦労する登が一真に小説の朗読をしてもらって、彼が頭の中に湧き出すストーリーを一真が小説にする日々。そして一真が出会った少女・かすみとのほのかな恋。二人で多くの印象的な作品を読みながらコンビで小説家を目指すべく試行錯誤を続ける二人が、作家になってから少しずつ歯車が狂ってゆく展開はもどかしくて、けれどそんな彼らのままならない青春にはぐっと来るものがありました。

14.歪んだ波紋

歪んだ波紋

歪んだ波紋

 

新聞、テレビ、週刊誌、ネットメディアの「誤報」をテーマに、それが生み出される過程や、直面したり振り回される人たちの複雑な想い、それらがもたらした結末が描かる連作短編集。意図せずとも誤報に繋がってしまう構図や、誤報によって人生が歪められたり不安に怯えるようになったり、誤報を弾劾する側の人間もまた一歩間違えばフェイクニュースを掴まされ、容易に糾弾される側に回ってしまう構図に今のマスメディアの難しさと怖さがあって、報じる側の姿勢が問われると同時に、受け取る側にもまた判断が難しい時代になりつつあると痛感しました。

15.雪には雪のなりたい白さがある (創元推理文庫)

公園を舞台にした五つの転機が綴られる連作短編集。港が見える丘公園でのおじいさんとの出会い、ムーミンをきっかけに出会った二人の別離とそれぞれの再出発、石神井公園を舞台にした憧れの人との再会、航空公園を舞台とした中学三年生の冬に別れた同級生の恋人を忘れられずにいた瑞希の決意と、文庫収録の彼の視点短編。いずれも自分が行ったことがある公園で、うまくいかない状況を抱えた登場人物たちが、そこでの出会いをきっかけに新たな一歩を踏み出す展開には心に響くものがある素敵な物語でした。最後の話の後どうなったのか気になりますね。

16.プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

 

有機素子コンピュータによる会話プログラムの共同研究者を失い何も手につかなくなった南雲助教と、列車に轢かれて亡くなった元恋人の会話を再現しようとする学部生の佐伯衣理奈。そんな前に進めない二人が巡り合う連作短編集。会話プログラムとのやりとりを交えつつ繰り広げられる、共同研究者、契約社員、元恋人、そして南雲と衣理奈のエピソード。概念自体はやや難解でしたが、理系らしい合理思考と割り切れない情念のせめぎ合いの中で変化してゆく不器用な人間模様はとても優しくて、そんな彼らが迎えた結末はなかなか心に響くものがありました。

17.雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

 

地元の名士の生まれながら、幽霊が見えることで周囲から孤立する澤村千尋の前に現れた赤いマフラーの幽霊少女。協力してくれたクラスメイトの岩木君やリンたちと共に、記憶を失っている彼女の過去を探し始める青春ミステリー。過去のトラウマから逡巡しながらも始まった身元捜索。それぞれ苦い過去が明らかになってゆく岩木とリン、そして本家の魔王的存在・従兄の義孝。その過程で少しずつ広がって変わってゆく周囲との関係と、いろいろ過去や事実が少しずつ繋がってゆく構成はとても上手くて、切ないけれどぐっと来るものがある素敵な物語でした。

18.永遠についての証明

永遠についての証明

永遠についての証明

 

特別推薦生として協和大学の数学科にやってきた瞭司と熊沢、そして佐那。眩いばかりの数学的才能で周囲の人生を変えていった瞭司の運命の出会いと失意、彼の遺した研究ノートから熊沢がその想いに再び向き合う物語。仲間と得た成果に希望を見出す瞭司と、突出した成果がそれぞれが別の道を選ぶきっかけとなってしまう皮肉。瞭司と仲間たちのすれ違いは残念でしたが、彼が遺した研究ノートに見出した可能性が、形は変わっても失われていなかったそれぞれの想いを再び繋げていって、それが新たな希望を紡いでゆく展開にはぐっと来るものがありました。

19.完璧主義男に迫られています (富士見L文庫)

完璧主義男に迫られています (富士見L文庫)

完璧主義男に迫られています (富士見L文庫)

 

イベント会社でバリバリ働く卯月陽菜に告白したのは、営業の堅物なイケメン完璧主義男・長谷川薫。キッパリ断った陽菜が、諦めない長谷川の誠実かつ隙のないアプローチに迫られてゆくラブコメディ。好きになったものの、理想からかけ離れている陽菜を自分好みの女性にしようとする長谷川。小言は多いけれどぞっこんで誠実な長谷川の積極性に、いろいろトラブルもフォローしてくて、きちんと向き合うようになってゆく陽菜の関係がいいですね。長谷川の独占欲も可愛くて、いつの間にか甘々なカップルになっていてごちそうさまという感じでした(苦笑)

20.次回作にご期待下さい (角川文庫)

次回作にご期待下さい (角川文庫)

次回作にご期待下さい (角川文庫)

 

仕事に追われる月刊漫画誌の若き編集長で苦労人の眞坂崇とトンデモ天才漫画編集者・蒔田が、漫画バカの編集者たちや漫画に命をかける漫画家たちとともに日常のお仕事に潜む謎を解き明かしてゆくお仕事小説。落とし物をきっかけに出会ったビルの夜間警備員・夏目の謎、打ち切りに悩む漫画家とのやりとりやヘッドハンティング、そして盗作疑惑の真相など、漫画雑誌はほんと大変な仕事なんだなと実感させる一方で、それでも登場人物たちが面白い漫画を作りたいという想いからぶつかり合うなかなか熱い作品でした。現在二巻まで刊行。

 

以上です。一般部門の方は選んでみたら思ったより単行本が多くなってしまいましたが、どれもオススメの一冊です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。

2018年下半期注目のオススメ新作一般文庫28選

ライトノベル恋愛・青春小説編」「ライトノベルファンタジー編」「ライト文芸編」に続く2018年下半期注目のオススメ新作企画第四弾は「一般文庫編」です。

一般文庫もベスト10とその他オススメ作品ということでレーベル別に28作品選んでいます。これから読む作品選びの参考になれば幸いです。 上半期版もありますのでこちらも併せてご参照下さい。

上半期版はこちら↓

 

 【2018年下半期注目のオススメ新作一般文庫ベスト10】

1.王とサーカス (創元推理文庫)

王とサーカス (創元推理文庫)

王とサーカス (創元推理文庫)

 

新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智が、編集者から海外旅行特集の協力を頼まれて事前調査のためネパールに向かい、そこで国王をはじめとする王族殺害事件が勃発し巻き込まれてゆく物語。今回は取材先のネパールで非常事態に巻き込まれる状況で、混乱のさなかで関係者の死体に直面する万智。わりとスケールの大きな話になるのかと思ったら、同時期に起きた死を取り上げるか否か、というジャーナリズムの本質を迷える彼女自身が問われる展開で、ほろ苦い真実に対して自分なりに真摯に向き合おうとする彼女らしい決断がとても印象に残った結末でした。

2.夏の王国で目覚めない (ハヤカワ文庫JA)

夏の王国で目覚めない (ハヤカワ文庫JA)

夏の王国で目覚めない (ハヤカワ文庫JA)

 

再婚の父に新しい母と弟。私だけが家族になりきれていない女子高生の美咲。そんな彼女が熱中する作家・三島加深のミステリツアーに招待され、家を出て三日間のツアーに飛び込むひと夏のクローズドサークル。「謎を解けば加深の未発表作を贈る」と誘われて集まり、不可解な消失や死体でお互い疑心暗鬼になってゆく参加者たち。解き明かされてゆく謎は未発表作に込められた真意にも繋がっていて、彼らと共に過ごしたとても印象的なひと夏の体験が、きちんと今の自分と向き合ってそれぞれの新しい一歩を踏み出す勇気へと繋がってゆく素敵な物語でした。

3.准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき (角川文庫)

准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき (角川文庫)

准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき (角川文庫)

 

幼い頃に遭遇した怪異によって人の嘘がわかる耳を持ち、それゆえに孤独になってしまった大学生・深町尚哉。そんな彼が怪異に目がないイケメン准教授・高槻と出会い、常識担当の助手として様々な事件に遭遇するミステリ。いないはずの隣の空き部屋から聞こえる奇妙な音の正体、ふと気がつくと周囲にいつも針が落ちている呪い、肝試しに出かけて神隠しに遭った少女。高槻を理解する周囲の人々もなかなか印象的で、孤独な尚哉を分け隔てなく受け入れてくれる彼らの優しさが染みますね。幼い頃に奇妙な体験をした二人の今後に期待したい新シリーズです。

4.君と放課後リスタート (文春文庫)

君と放課後リスタート (文春文庫)

君と放課後リスタート (文春文庫)

 

とある高校の「理想の三組」と呼ばれたクラスで、全員突然記憶喪失となる事態が発生。そんな状態で発生する謎に叉桜澄と九瀬永一の学級委員コンビが挑み解き明かしてゆく学園ミステリ。完全にリセットされた状態からスマホに残された情報などをもとに再構築されていく人間関係の機微があって、空気が読めない真っ直ぐな叉桜と彼女を危ういと感じつつも目が離せない九瀬の背景もまた複雑で、様々な人間模様を目の当たりにしてゆく二人の関係がどう変わってゆくか、そして未だ記憶喪失の原因も判明していなかったりで続刊が楽しみな新シリーズですね。

5.八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)

八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)

八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)

 

「最後のチャンス」と位置づけたピアノコンクール予選で落選した高校三年生の北沢鳴海。諦められない彼が時間を巻き戻すため、トリガーとなる音楽の神に愛された少女・神崎杏子と久しぶりに再会する青春小説。かつて才能の差を見せつけられたのに彼女にときめいてしまう鳴海が、そのたびに何度もやり直して距離を置いた過去と、再びピアノと彼女への想いに葛藤し続けたリピートの思わぬ結末。そして明かされてゆくもう一つの物語。託された真実を知った鳴海が大切な人のために、そして自らの想いや夢を取り戻すべく奔走するとても素敵な物語でした。

6.昨日の僕が僕を殺す (角川文庫)

昨日の僕が僕を殺す (角川文庫)

昨日の僕が僕を殺す (角川文庫)

 

両親を失い支えてくれた叔母も亡くして小樽で孤独な一人暮らしをする高校生・淡井ルカ。そんな彼の窮地をベーカリーで働く訳ありイケメン店長汐見と人懐っこい青年・榊に救われるホラーミステリ。助けてくれた汐見と榊たちの意外な正体を知り、それと周囲で起こる事件の関連に疑心暗鬼を募らせてゆく展開で、生い立ち故にいろいろ考え過ぎてしまう性格が事態を拗らせていくわけですが、それでも真実を知ろうと目をそらさず向き合うことで、自分を支えてくれている人たちの温かさを知る結末はなかなか良かったです。現在2巻まで刊行。

7.プリンセス刑事 (文春文庫)

プリンセス刑事 (文春文庫)

プリンセス刑事 (文春文庫)

 

女王が国を統べる日本というパラレルワールドを舞台に、王位継承権を持つキャリアとして着任した王女・日奈子が新人刑事とコンビを組んで「ヴァンパイア」の連続殺人事件に挑む警察小説。最初は一般人としての感覚や刑事としての経験に乏しい日奈子とコンビを組むことになって振り回されていた所轄の若手刑事・直斗が、彼女の事件解決に対する強い意志に感化されて協力するようになってゆく展開で、日奈子の強い信念と彼女を応援する多くの人に支えられながらの事件解決でしたけど、このコンビが活躍する物語の続きをまた読んでみたいと思いました。

8.「私が笑ったら、死にますから」と、水品さんは言ったんだ。 (ポプラ文庫ピュアフル)

クラスでも目立たず友達のいない男子高校生・駒田に、となりの席のクールな美少女・水品さんが提案した「15分で1万円のバイト」。苦しんだ過去を持つ二人が出会い、次第に立ち直っていく優しい青春小説。水品さんが提案した不思議なバイトを通じて知ってゆく彼女の特殊な事情と、少しずつ変わってゆく駒田と水品さんの不器用な距離感。過去を乗り越えるための悲壮な決意から無意識の悪意にさらされる水品さんに、自らも苦い過去があるからこそ寄り添える駒田の心意気がカッコよかったですね。そんな二人の今後を応援したくなる素敵な物語でした。

9.流鏑馬ガール! 青森県立一本杉高校、一射必中! (ポプラ文庫ピュアフル

流鏑馬がさかんな青森県十和田市に住む弓道部の舞衣子が、東京から転校してきた元・弓道で国体選手だった美鶴と出会い、かつて一度は諦めた流鏑馬に共に挑む青春小説。弓道部入部を断って流鏑馬に挑む美鶴と、最初は過去のトラウマに逡巡しつつも弓道部と掛け持ちで再び関わるようになってゆく舞衣子。真摯に取り組む美鶴に感化されて、複雑だった流鏑馬への想いが変わってゆく舞衣子は、ぶつかり合いながらもお互い刺激しあえる良いライバル関係で、そんな二人が葛藤を抱えながらも流鏑馬に向き合い挑んでいく展開にはぐっと来るものがありました。

10.アンドロイドの恋なんて、おとぎ話みたいってあなたは笑う? (ポプラ文庫ピュアフル)

義肢のリハビリ専門病院で事務スタッフとして働く、実はある研究機関から送り込まれたアンドロイドの佐藤真白。そんな彼女が事故で左腕を失い、義肢のリハビリのため病院へやってきていた青年・響に出会い処理しきれない感情が生まれてゆく物語。自分の中でうまく処理しきれない感情を持て余す真白と、ぎこちない彼女にしっかりと向き合ってくれる響。そんなアンドロイドには本来ないはずの「エラー」に心揺れる彼女が真実を知ってからの思わぬ展開は切なくて、いつかこんな日が来るんだろうかとつい思ってしまうピュアで甘酸っぱい恋の物語でした。

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11.四月一日(わたぬき)さんは代筆屋 (宝島社文庫)

四月一日(わたぬき)さんは代筆屋 (宝島社文庫)

四月一日(わたぬき)さんは代筆屋 (宝島社文庫)

 

『筆の都』と呼ばれるところにある代筆屋。四月一日(わたぬき)さんというふくよかで可愛らしい男性の元を訪れる様々な人たちの物語。結婚を前にわだかまりを残した両親への手紙や、すれ違ってしまった年上の幼馴染に対する変わらぬ想い、孫にあてた入学祝いの手紙や就職活動の履歴書など、それぞれのエピソードには意外な事情もあって、個別の話かと思ったら思わぬ形で繋がりも見えてきたりで、代筆するだけでなくさりげなく軌道修正しながら最善へと導いてゆく訳ありな四月一日さんの仕事ぶりと、後日談的なエピソードがとても素敵な物語でした。

12.科警研のホームズ (宝島社文庫 )

科警研のホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

科警研のホームズ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

それぞれ思うところがあって科学警察研究所・本郷分室にやってきた、北上・伊達・岡安の三人の研修生たち。科警研の仕事に興味を示さない室長・土屋に困惑しつつ、事件解決に挑む警察ミステリ。容疑者が黙秘を続ける理由、司法解剖でも特定できなかった死因、監視カメラに映った双生児、連続辻切り事件の犯人。三人の研修生がそれぞれ持ち味を生かして試行錯誤しながらアプローチしていくあたりには成長が感じられましたけど、それでもここぞという時に冴える土屋の視点は流石でしたね。研修期間が延長された彼らのその後の捜査も読んでみたいです。

13.推理は空から舞い降りる 浪速国際空港へようこそ (宝島社文庫)

優秀な管制官だった叔母の真紀子に憧れ、日夜奮闘する新米航空管制官の藤宮つばさ。同期の情報官・戸神大地とともに、空港で発生する様々なトラブルや謎を解決していくお仕事ミステリ。鳥が原因のエンジントラブルや、不定期に鳴り響く発信源不明の遭難信号、外国要人専用機の離陸失敗事故など、トラブルに巻き込まれるつばさを少し変わった同期の大地や職場の同僚・上司の協力で解決してゆく展開で、お仕事小説としてもなかなか興味深かったですが、探していた叔母の「管制官に一番必要なもの」を見出してゆく結末にもぐっと来るものがありました。

14.塩見﨑理人の謎解き定理 丸い三角について考える仕事をしています (宝島社文庫)

大学生の凜香が蔵書整理アルバイトをする研究室に所属している変人揃いの哲学科でも有名な若き准教授・塩見﨑。常識外れで機械音痴、知を愛する若き哲学者が言葉を疑い真理を読み解く哲学ミステリ。消えたレポートに芸ができなくなってしまった大学に住む猫、不可解な怪文書、凜香が喧嘩別れしていた友人との過去。哲学の命題を使って事件を解決してゆく塩見﨑には凜香や周囲も振り回され気味で、どこをどう見ても残念な変人の類なんですが、それでも彼が導き出してゆく解決にはどこか優しさが感じられて、もし続巻があるならまた読んでみたいです。

15.三度目の少女 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

三度目の少女 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

三度目の少女 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

 

原因不明のトラウマによって他者を否定できない大学生・関口藍が、ゼミの担当教授に前世の記憶を持つ中学一年生の伊藤杏寿を紹介され、彼女の記憶を巡る謎を追うミステリ。前世・前々世の記憶を持つ杏寿が、教授の紹介で藍と前世の木綿子の生家を訪れて直面した当主・昌一の毒殺事件。運命に導かれるように出会った彼らが疑問を解消しつつ真相に迫る展開は、昔殺された木綿子の事件の真相も追う関係上消去法寄りのアプローチになりましたが、意外な急展開によって過去から解き放たれて、事件を解き明かしてゆく杏寿らの推理はなかなか良かったです。

16.君の思い出が消えたとしても (宝島社文庫)

君の思い出が消えたとしても (宝島社文庫)

君の思い出が消えたとしても (宝島社文庫)

 

理解されづらい持病を抱え、仕事もうまく行かず自暴自棄になりかけていた遠藤が出会う思い出コーディネーターの月尾。彼女と過ごす一ヶ月間が描かれる物語。月尾から指摘されるあと一ヶ月の寿命と、思い出を寿命に変えられるという話。そんな遠藤が彼女と共に過去の思い出の悔いを解消していったり、楽しい日々を過ごしていゆくなかでの心境の変化。だからこそ分かりやすい存在に思わせて、意外と謎めいた部分も多い彼女の正体や、抱える秘密が焦点になってゆく展開でしたが、思わぬ真実にもあくまで可能性を信じた二人が迎えた結末は印象的でした。

17.外資のオキテ (角川文庫)

外資のオキテ (角川文庫)

外資のオキテ (角川文庫)

 

英語を使う仕事に憧れて一念発起して会社を辞め、語学留学を決行した貴美子。帰国後直面する現実と、悪戦苦闘の転職活動の末に何とか決まった米系企業で外資での一歩を歩み始めるリアルお仕事成長物語。帰国してみれば外資系企業では語学留学は留学と認められない現実。キャリアアップを目指し派遣社員として外資系企業で働き始めた貴美子が経験してゆく様々な仕事には充実感も翻弄されることもあって、外資系に対する周囲のイメージとのギャップもあったりで、外資系企業の勤務が長い著者の経験を活かしたリアルな描写がとても印象的な一冊でした。

18.グアムの探偵 (角川文庫)

グアムの探偵 (角川文庫)

グアムの探偵 (角川文庫)

 

探偵の権限は日本よりも遙かに大きいアメリカの準州グアムで、ゲンゾー、デニス、レイ日系人3世代探偵が起きる事件を解決してゆくミステリ。日本人観光客が遭遇した奇妙な誘拐劇、国際結婚した日本人女性とストーカー、引きこもり大尉の真意、グアムで開店した日本人父娘が遭遇する強盗事件、誘拐事件の真相の5篇が収録されていて、日本とはいろいろ違うグアムの慣習に対するそうなんだ…があってすんなりと物語に入っていたわけではないですが、そういう中で世界観を活かしつつ展開していく探偵劇はなかなか新鮮でした。現在2巻まで刊行。

19.川越仲人処のおむすびさん (角川文庫)

川越仲人処のおむすびさん (角川文庫)

川越仲人処のおむすびさん (角川文庫)

 

成婚率100%と噂される川越仲人処で働く桐野絲生。くせ者揃いの会員たちに日々翻弄される日々を送る彼女に神様見習いのもふもふ白うさぎ・ユイが託される物語。素直になれない野中や、お互い家を継がなければならない二人の葛藤、離島赴任予定の医者など、彼らの「運命の糸」が抱える問題を解決すべく時折ユイに振り回されながら奔走する絲生。そんな彼女が紡いだ会員たちの想いと、他人のために頑張るばかりだった鈍感な絲生もまた自分でもよく分かっていなかった想いをようやく自覚して、向き合うようになってゆく結末はなかなか良かったです。

20.ビストロ三軒亭の謎めく晩餐 (角川文庫)

ビストロ三軒亭の謎めく晩餐 (角川文庫)

ビストロ三軒亭の謎めく晩餐 (角川文庫)

 

セミプロの舞台役者だった神坂隆一が、姉・京子の紹介で来る人の望みを叶える魔法のような店『ビストロ三軒亭』でギャルソンとして働くことになるグルメミステリ。奇妙な客の荷物と残した料理の謎、仲違いを解決した七面鳥の栗詰め、チーズたっぷりな試食会にやってきた三人の大食い魔女の事情、シェフが作れないキッシュに隠された秘密。若きオーナーシェフ・伊勢が作る料理はとても美味しそうで、隆一をサポートしながら悩めるお客様に真摯に寄り添う個性豊かな先輩ギャルソンたちがいて、隆一の成長も最後の話のその後もまた読んでみたいですね。

21.明日、世界が消える前に (ポプラ文庫ピュアフル)

明日、世界が消える前に (ポプラ文庫ピュアフル し)

明日、世界が消える前に (ポプラ文庫ピュアフル し)

 

あの世とこの世の狭間で、時間内に相手を見つけ幸せにすることで生き返りを提示する「死整庁」。迷いこんできた人々に与えられる試練を描く物語。ついていないまま交通事故死したOL、文化祭準備中に事故に遭った女子高生、長く病床にある少女、クジラツアーでボートから落ちた女性、そして入社日に転落した新入社員。職員アガタとイルマの案内でそれぞれが戸惑いながらも向き合うようになってゆく展開はアガタとイルマの物語でもあって、生きる意味を見失いかけていた登場人物たちがが前向きになれる希望を得てゆく結末はなかなか良かったですね。

22.僕は僕の書いた小説を知らない (双葉文庫)

僕は僕の書いた小説を知らない (双葉文庫)

僕は僕の書いた小説を知らない (双葉文庫)

 

交通事故で一日ごとに記憶がリセットされ、新しいことを覚えられないという症状を抱えている小説家の岸本アキラ。そんな状況で不安と戦い葛藤しながら小説を書き進めるアキラの物語。毎朝自分が書いた引き継ぎを読みながら、試行錯誤して小説を書き続けるアキラとカフェで働く翼との出会い。サッパリした彼女とのやりとりが刺激になり書き上げていく小説に込められていった思い。まさかの急展開にはもどかしくなりましたけど、それでも諦めなかったアキラの挑戦と、失われていた間の出来事が次第に明らかになってゆく結末はとても良かったですね。

23.ウェイプスウィード ヨルの惑星 (ハヤカワ文庫 JA)

ミドリムシの変異体・エルグレナが生態環境を支配し、海面上昇により地表の大半を水に覆われた25世紀の地球。その調査に宇宙コロニーからやってきた研究者ケンガセンが、島嶼部で暮らす巫女ヨルと出逢う近未来SF。彼女と出会い数奇な運命に巻き込まれてゆくケンガセン。SF的な設定や立ち位置でガラリと変わる倫理観や考え方なども興味深かったですが、研究バカだった彼が価値観の違いに戸惑いながら交渉したり政治に振り回されたりしながら、人類が迎える新たな局面と、そんな中で育まれてきた二人の絆を感じる結末はなかなか良かったですね。

24.火曜新聞クラブ―泉杜毬見台の探偵― (ハヤカワ文庫JA)

火曜新聞クラブ―泉杜毬見台の探偵― (ハヤカワ文庫JA)

火曜新聞クラブ―泉杜毬見台の探偵― (ハヤカワ文庫JA)

 

新聞クラブを立ち上げた高1の植里礼菜と幡東美鳥。創刊1面トップに「2階建て駐輪場が着工する」を据えたものの計画が頓挫し、記事の差し替えを迫られる状況で、遭遇した殺人事件を銀髪の男子高生・御簾真冬とともに解決するミステリ。ミス・マープルを意識した舞台設定になっているようで、まず動機ありきの推理はもう少し人の動かし方に妥当性が欲しかった箇所がありましたけど、校内で起きた数学講師殺人事件に挑むミステリアスな探偵役・御簾真冬にはなかなか存在感があって、新聞クラブと御簾の探偵ミステリをまた読んでみたいと思いました。

25.九十九書店の地下には秘密のバーがある (ハルキ文庫)

九十九書店の地下には秘密のバーがある (ハルキ文庫)

九十九書店の地下には秘密のバーがある (ハルキ文庫)

 

仕事についていけず入社二年で会社を辞め、自信喪失していた長原佑。ある日訪れた九十九書店で、謎めいた女性店主トワコさんから書店の地下を改装した秘密のバーに誘われる物語。昼は小さな書店で仕事する話のメインは夜のバーを訪れる悩める人たちの問題解決。トワコさんに幼馴染のことだったり、男をペットとして飼う女性、不倫をする女性、そしてトワコさん自身のことなど、時にはやや無茶ぶりっぽい仕事を振られましたが、常連客と協力して向き合い選択してゆく中で過去を乗り越え、再び前に進むきっかけを得てゆく展開はなかなか良かったです。

26.帝国の女 (光文社文庫)

帝国の女 (光文社文庫 み 35-3)

帝国の女 (光文社文庫 み 35-3)

 

世間の認識とは裏腹に華やかさから程遠い、帝国テレビジョンで働く女たちの日々。好きな仕事だけれどままならないことばかりの五人の女性たちが描かれる連作短編集。過労寸前まで奮闘する宣伝部・松国、仕事以外はまるでダメなプロデューサー・脇坂、年下の夫との倦怠に沈む脚本家・大島、訳ありマネージャー・片倉、憧れの人と出会う日を夢見るテレビ誌記者・山浦。それぞれの仕事に取り組む真摯な姿と、一方でプライベートは思うようにいかない苦悩はとても印象的で、ページ数以上に濃密なストーリーと彼女たちの切なる叫びが心に響く物語でした。

27.ヒクイドリ 警視庁図書館 (幻冬舎文庫)

ヒクイドリ 警視庁図書館 (幻冬舎文庫)

ヒクイドリ 警視庁図書館 (幻冬舎文庫)

 

交番連続放火事件が発生し、犯人の目処は立たない状況で警察庁諜報機関アサヒに「犯人は警官でで暗躍するスパイ組織」との情報が届き、警察庁長官直轄の秘密警察「図書館」も動き出す警察小説。序盤はやや警察独特の隠語が多くて読みづらい部分もありましたが、暗躍するスパイを巡る男たちの暗闘と、それに女として利用され振り回される諏訪巡査という破滅に向けてまっしぐらな展開から、終わってみればそれまでの構図が劇的に変化していって全く違ったものが見えてくる結末に驚かされました。一部の他作品とも繋がる世界観で描かれた物語ですね。

28.休みの日〜その夢と、さよならの向こう側には〜 (スターツ出版文庫)

休みの日〜その夢と、さよならの向こう側には〜 (スターツ出版文庫)
 

高校時代の後輩・奏との失恋を引きずっていた大学生の滝本悠。ある日、印象的な出会いを果たした美大生の多岐川梓を通じて同じく美大生になっていた奏と偶然再会する青春小説。素直で不器用な多岐川梓のありように少しずつ惹かれてゆく繊細な距離感があって、一方で縁はあるのにどうにも巡り合わせの良くない奏との関係が切ない展開でしたけど、どんどん追い詰められて余裕がなくなると、かけがえのない存在でもすれ違いから上手くいかなくなることありますよね。だからこそ不器用な決着しか知らなかった彼らに希望が垣間見えた結末で良かったです。

 

以上です。残る「一般文芸編」も何とか年内に更新できるよう、まずまだ読んでない本を消化するところから頑張って読みたいと思います(苦笑)