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読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

「好きなライトノベルを投票しよう!! - 2016年下期」に投票します。+α

今回も「好きなライトノベルを投票しよう!! - 2016年下期」に投票したいと思います今回はわりと対象商品が広くてどんな作品がランクインするのか楽しみですね。

 

今回投票アイテムを選定するにあたって、先日以下のエントリを作りましたが、

 

これと被っても面白くないので、ここで選んだアイテム以外からセレクトすることにしました。これはこれで自分が読んで面白かったので、オススメしたいと思えるものです。

 

エントリーとしては10作品を選びましたが、いい機会なので+11冊分紹介しちゃいます(単にいろいろオススメしたいだけですw)。一応今回のエントリー対象作品の中から選んだので、もし気になるような作品があったら是非手にとって読んでみてください。

 

【以下投票アイテム】

 亡くなった義妹の願いを胸に、どん底から這い上がってヴィヴィ・レインを探す旅に出た少年・ルカが戦いの中で3人の少女と運命の出会いを果たす恋と会戦の物語。再会した幼馴染の天才操縦士・ミズキ、王国軍を急襲した義妹と瓜二つの人造人間・アステル、そして二人きりの逃避行でルカに惹かれ、敗色濃厚な形勢をひっくり返したのを目の当たりにした斜陽の王国の王女・フィニア。それぞれ抱えるものがあり、強い因縁を匂わせながらも袂を分かった彼らが今後どんな物語を紡いでゆくのか。どうなるのか目が離せない、今後に期待大の新シリーズですね。17年1月に2巻刊行予定。

【16下期ラノベ投票/9784094516340】

我が驍勇にふるえよ天地 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)

我が驍勇にふるえよ天地 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)

 

 防衛戦の最中に味方の裏切りに遭い、師とも仰ぐ叔母と故郷とも言える領地を失ってしまった吸血皇子・レオナートが、仲間を集め再び立ち上がるファンタジー戦記。貴族たちが権力争いに明け暮れて内憂外患を抱える斜陽の帝国、その中で失ったものを取り戻すために地道に準備していたレオナートと仲間たちがついに迎えた転機。レオナートと彼を支えるシェーラを始めとする群像劇ならではの登場人物たちはそれぞれ存在感があって、今回の因縁にきっちりと決着を付け、裏で暗躍する存在も明らかにしてゆく展開は良かったです。今後の展開が楽しみのシリーズです。現在3巻まで刊行。

【16下期ラノベ投票/9784797387391】

 イベントでコスプレイヤー乃木乃ノ香(14歳)と知り合い、ファンだった彼女に家に手伝いに来てもらうようになったプロ絵師・京橋悠斗と、曲者揃いの仲間たちとのドタバタな日常。作中では絵師さんの描くことは楽しくても大変なことも多いその生活や、なるほどなと思うリアルな事情などもいろいろ語られていて、懇意にする個性的な濃い仲間との繋がりや彼らのために奔走する姿にはいいやつだなあと思いましたけど、そんなつもりはなくても14歳との日常は傍から見たら通報待ったなしですね(苦笑)話としてもなかなか面白くなりそうで続巻に期待。

【16下期ラノベ投票/9784040687537】

ディエゴの巨神 (電撃文庫)

ディエゴの巨神 (電撃文庫)

 

 新大陸発見に沸き立つ変革の時代。密かに陰陽術の研究に励む海洋国家スピネイア王国の青年ディエゴが、腐れ縁の友人アルバロと共に新大陸遠征軍の船に乗り込む物語。遠征軍を撃退する森を守る巨神の存在と欺かれた原住民たちの不信、そしてディエゴの悔恨と彼を取り巻く複雑な因縁。理想を持つがゆえに現実に思い至らない面もあったディエゴでしたけど、レラやローゼンといった原住民たちと交流するうちに自分のなすべきことを見出してゆく展開は、新大陸と旧大陸の間で新たに時代を切り開こうとする熱い想いがぶつかりあってとても面白かったです。

【16下期ラノベ投票/9784048924894】

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

 

 超大国アルキランに突如侵攻されたイアンマッド王国。和議と引き替えに人質として赴くことになった国王の長男王子ルスタットと、残されて次々と危機に見舞われる弟王子レオームの二人の王子の物語。神話的な超越した力と、人が技術を覚え始めた端境期の世界観で、周囲で引き起こされる危機的状況に否応もなく巻き込まれてゆく弟レオームと、アルキランの先進的技術に触れつつ伝説の存在となってゆく兄ルスタットの数奇な運命はとても興味深いですが、それぞれの道を歩み始めた二人がどのような形で再会することになるのか今後がとても楽しみですね。17年2月に2巻が刊行予定。

【16下期ラノベ投票/9784048923941】

少年時代の突然の相棒喪失で、幼馴染の渚にも呆れられ、悪友の卓と不毛な日々を送る楠田幸斗。そんな彼のもとに突然その佐原剣が再び転校してきて、バッテリーを組むために野球部に加入しようと奮闘する物語。怠惰な日々を送っていても、もう会えないと思っていた相手に「お前とバッテリーを組みたいから戻ってきた」とか言われたり、小さい頃の仲間たちが再集結とかそりゃ燃えますよね(でも身体はついていかないみたいなw)ベタだけど今後に期待したくなる泥臭くとても熱い展開でした。ツンデレでチョロインな幼馴染との今後もとても楽しみです。

【16下期ラノベ投票/9784048922487】

友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)

友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)

 

 妙なこだわりで高校で友達ができない新藤大輔に、存在感のないクラスメイト澄田が持ちかけてきた困ったときに助け合う「友達いらない同盟」そんな同盟から始まる二人の物語。それぞれが複雑な家庭事情を抱えてはいるけれど、一見同じようでいてまるで対照的な新藤と澄田。グループから浮いた城ヶ崎も加わって三人で楽しそうに見えたのに、なぜか澄田が距離を置くようになってゆく危機的状況でしたが、本音で引き留めようとする新藤の提案はかなり無茶苦茶でしたね(苦笑)このレーベルでたまに出てくる不思議な魅力のある物語でした。

【16下期ラノベ投票/9784063815719】

インスタント・ビジョン 3分間の未来視宣告 (角川スニーカー文庫)

インスタント・ビジョン 3分間の未来視宣告 (角川スニーカー文庫)

 

 未来に3分間だけ自分の意識が飛ばされる奇病「夢現譜症候群」のパンデミックで大混乱に陥りがちな世界。殺人鬼になる未来視を見たレオが相棒の少女・ティアと出会う物語。未来視を知られているがゆえに難しい立場にあるレオと謎めいた立ち位置のティア。パンデミックを発生させる犯人を追う中で異能を用いた熱く勢いのあるバトルと、それぞれの立ち位置での正義が対立するシリアスな世界観はなかなか面白くて、そんな中で揺れる相棒・ティアとの信頼関係を再構築してゆく過程が著者さんの真骨頂なのかなと(苦笑)続巻期待したい新シリーズですね。

【16下期ラノベ投票/9784041051306】

いま、n回目のカノジョ (ファンタジア文庫)

いま、n回目のカノジョ (ファンタジア文庫)

 

 幼馴染の刻坂詩音が巻き起こすループにたびたび巻き込まれる毎原和人。無自覚に唐突に繰り返される日常を諦めて受容していた和人たちの前に、同じくループを自覚する転校生の美少女・神崎が現れるループ系青春小説。ループを引き起こすのに認めない天然な詩音と、いろいろツッコみつつも幼馴染のために奔走する和人、一見クールビューティなのに実は口下手で不器用な神崎のやりとりがじわじわくる感じで、繰り返されるドタバタで楽しい日常を許容しつつあった彼らに起きるひとつの転機と真相はきれいにまとまりましたが、続巻に期待したい作品です。

【16下期ラノベ投票/9784040721675】

幼馴染の自動販売機にプロポーズした経緯について。 (カドカワBOOKS)

幼馴染の自動販売機にプロポーズした経緯について。 (カドカワBOOKS)

 

 田舎町のおんぼろな自動販売機に取り憑いた着物姿の「自動販売機の精」。幼い頃に彼女と最悪の出会いをした神主の息子が、やがて彼女への想いを自覚する恋の物語。少年にしか姿が見えない、世間知らずだけれどとても優しい彼女と共に過ごすうちに、惹かれてゆくことを自覚し密かに苦悩したり迷走する少年。彼女が宿るおんぼろ自動販売機が危機的状況を迎えるまで随分遠回りしたなあとも思いましたが、それでも真摯に想う彼女を助けるため家業まで巻き込むなりふり構わない彼の奔走に、神様も粋な計らいをしてくれた素敵な物語でした。

【16下期ラノベ投票/9784040720159】

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以下、投票対象からは外れてしまいますが、オススメとして紹介。

 育ての親ルイジアが遺したボロ宿で借金取りに追われるラザロ。そんな彼のもとに北の王国随一の竜砲騎士だったルイジアの姪マデリーンが現れ、一緒に宿の再建を目指すことになる物語。見た目は金髪碧眼の美女で真摯な性格も、世間知らずで何をやらせてもポンコツなマドリーン。そんな彼女に振り回される日々に、借金取りや彼女を連れ帰ろうとする竜砲騎士見習いレティシア、さらにはルイジアと密約を結んでいた大海賊まで現れてドラバタ具合が加速してゆく展開はとても面白かったです。彼女の魅力で人が集まる(目標だけは壮大な)宿屋の今後に期待。

獅子皇と異端の戦巫女 (ファミ通文庫)

獅子皇と異端の戦巫女 (ファミ通文庫)

 

 「災禍の翠蛇」復活の兆候がある中、対抗できる力を持った凪姫たちが消息を絶ったことが明らかになり、彼女たちを率いる獅子皇・ウィズが唯一残る凪姫・メロフィーユと共に凪姫たちを探す旅に出る物語。消息を絶ったことが明らかになった五人の凪姫。彼らが旅先で出会った異世界から強制召喚された魔王・デミシア、災禍の翠蛇復活のためには手段を選ばない黎明衆の存在。メロフィーユにはヒロインたちの軸になる存在感がありますが、戦友の凪姫たちもまた様々な事情を抱えていそうですし、面白くなりそうな雰囲気は十分感じられたので続巻に期待。

白き姫騎士と黒の戦略家 (講談社ラノベ文庫)

白き姫騎士と黒の戦略家 (講談社ラノベ文庫)

 

 王太子レオンハルトを支え王国を発展させていく未来を夢想していた若き騎士ジーク。隣国の侵攻で王太子を喪った彼が、犬猿の仲である妹姫リーゼロッテとともに仇敵の勇者王ベルトランに立ち向かうファンタジー戦姫。規格外のベルトランの力に敗北した王国軍の殿を引き受けたジークとそこに押しかけたリーゼロッテ。大軍相手に寡兵で向かうため手段を厭わずにベルトラン打倒を狙うジークと、あくまで騎士道を重んじる彼女が対立しながらも同じ目的を果たすために力を合わせて打倒を目指してゆく展開はなかなか面白かったです。

 別居中の妻を事故で亡くし、高校生の一人娘・美嘉との関係は冷えきったままの不動産屋社長・幸一郎。そんな時3人の思い出の動物園が閉園危機にあると知り、美嘉の笑顔を取り戻すため何の知識もないまま動物園再建を決意する物語。最初は家族のためだったはずが、いつの間にか仕事一辺倒の状況にすれ違ってしまった関係。一縷の望みを託し動物園再建へ奔走してしまう幸一郎は本当に不器用だと思いましたが、その苦難にも諦めず立ち向かう姿に周囲も協力してくれて、どうにか修復に向けた一歩を踏み出せたことにとても温かい気持ちになれました。 

 京都・姉小路通沿いにある仕出し&弁当屋「ちどり亭」。店主の花柚さんと彼女に料理を教わるバイトの大学生・彗が、お弁当を作りながら周囲の人たちと交流してゆく物語。家付き娘で毎週お見合いをして人脈を広げている残念な花柚さんと、同級生に密かに恋する彗の二人で読んでいるだけでも美味しそうな料理を作りながら、お弁当を作る手助けをしたり、一緒に花柚さんの師匠を看取ったり、そして花柚さんの元婚約者との切ない関係だったり、不器用でなかなか素直になれない人たちの一途でくすぐったい気分になる優しい思いに満ちた素敵な物語でした。

青の数学 (新潮文庫nex)

青の数学 (新潮文庫nex)

 

 数学オリンピックを制した女子高生・京香凜と、雪の日に偶然出会った高校生の栢山。「数学って、何?」と問いかける彼女に意識され、それに触発されるように栢山もまた数学にのめり込んでゆく青春小説。若き数学者が集うネット上の決闘空間「E2」。そこで他校のライバルたちと出会い競う中で、香凜に対する答えを探す栢山。立ち位置が違う友人たちや考え方が異なるライバルたちと対比させながら、理由も分からないままひたむきに数学に向き合い続ける栢山の姿はとてもまっすぐで、それもまた青春のひとつの形なのかなと思えますね。現在2巻まで刊行。 

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

 

 イラストの仕事だけでは食べていけず、夢破れて生きるために親に内緒で地元タウン誌を発行する会社の事務員として採用された夏実。その個性的な面々が集うブラック企業ぶりを描くお仕事小説。周囲の同僚がだらしない人たちで振り回されたり、仕事をスムーズに動かすために始発で行って仕事とか考えるあたりが、すでにもう重症だなと思わなくもないですけど、それはそれとして社会人として仕事をしっかりこなす夏実だからこそ周囲から信頼されるのも納得ですね。大変なことに巻き込まれましたが、林さんとの今後が気になるので続刊に期待したいです。

きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

 

 物をバラバラにすることに対して人並み以上の情熱を持つ異質な少女・天使玲夏と、彼女の幼馴染で何よりも平穏を望む少年・結城友紀が総合パズル研究同好会へと入部し、同好会のメンバーと“アドレス”と呼ばれる犯人による、バラバラ連続殺人事件の謎を追う物語。独特な行動基準で動く彼女をきちんと理解してフォローしている友紀は、口ではいろいろ言ってもお互いにかけがえのない存在なんだろうなと(苦笑)一見サイコさんな玲夏も友人には優しくて、ささやかな目標を手帳に書いてる一面は可愛いかったです。続編あるならまた読んでみたいですね。

 交通事故に遭い入院していた大学生の明良。退院の日に身に覚えのない彼の彼女だと自己紹介する女の子・一夏に出会う、二人のひと夏の物語。自分は覚えていなくても周囲は明良の彼女と認識している状況。積極的な彼女と共に過ごすうちに徐々に惹かれてゆく明良と、一緒に見上げた星空を取り戻すためさらに踏み込んでゆく一夏。思い出せそうで思い出せなかった真実はとても悲しい出来事でしたけど、不思議な縁と予感によって止まっていた時間も再び動き出し、これまで支えてくれた想いにもようやく気づくことが出来た切ないながらも素敵な物語でした。

イマジナリ・フレンド (ハヤカワ文庫JA)

イマジナリ・フレンド (ハヤカワ文庫JA)

 

 リアルではぼっちでも空想の友達「イマジナリ・フレンド」の美少女・ノンノンと楽しい日々を過ごす大学生やまじ。現状に小さな不安を感じた彼女が、似たような人々が集まるカンパニーへと彼を誘う物語。カンパニーで二人が知ったイマジナリ・フレンドとの様々なありようと、大人になると別れを迎える空想の友達との関係。大学では相変わらずキモい行動で周囲から浮きがちなやまじにも、その関係を大切にしてくれる人たちができて、絶対に失いたくない関係を取り戻そうと奔走した結末には、これもまたひとつのありようだと思える納得感がありました。

悪辣執事のなげやり人生 (レジーナブックス)

悪辣執事のなげやり人生 (レジーナブックス)

 

 不運もありいったん工場勤務まで落ちぶれた田舎の貴族令嬢・アルベルタ。そんな彼女が過去の縁から家人も使用人も訳ありだらけで問題も多い伯爵家の女執事に採用される物語。いろいろ素直に向き合えない事情を抱えていた伯爵家の人びとでしたけど、良くも悪くも率直で真っ直ぐに切り込んでくるアルベルタの行動に感化されて少しずつ変わってゆく展開がいいですね。その中で明らかになってゆく過去の縁がまたとてもいい感じに繋がっていって、彼女の鈍感ぶりには苦笑いでしたけどもっと早く読めば良かったと思える面白さでした。1月刊行の続巻も楽しみですね。

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以上です。Twitterからなども気軽に投票できるようなので、是非みなさんも投票してみてください。

 

好きなライトノベルを投票しよう!! - 2016年下期

投票受付期間: 1月14日(土) 24:00まで
投票対象: 2016年7月から12月に刊行されたライトノベル (主な投票対象一覧)

2016年に読んだオススメ本20冊

 もう四日目ですがあけましておめでとうございます。というわけで遅ればせながら2016年全体のオススメ本です。ほんとはシリーズもの含めてじっくり選ぼうかとも思ったんですが、年末に右手首骨折やら咳喘息気味になったりとかいう不測の事態や、新作だけで20冊以上になってしまったりなどということもあって、そのままえいやとまとめました(たぶん京更新できなかったらしばらく更新できなそうなのでw)。読んでるのもライトノベルとそれ以外がだいたい半々なのでラノベ10冊・ライト文芸一般文芸10冊のセレクトです。年始からいろいろバタバタしていますが、取り急ぎ今年もよろしくお願いします。

 

 【ライトノベル編】

俺を好きなのはお前だけかよ (電撃文庫)
 

 気になるコスモス先輩と幼馴染ひまわりがジョーロをデートに誘った目的は親友への橋渡し。そんな彼を好きなのは地味女パンジーだけというドタバタラブコメ。物語が進むと構図がどんどんややこしくなりますが各々の行動には理由があり、最初打算的に見えていたジョーロが常に周囲の友人のために行動していて、登場人物たちが利己的な理由で変節していく中でも最後までブレず、またそれを知るヒロインがいることに物語の真骨頂があるのかなと思いました。4巻が17年1月に刊行予定。

ゴブリンスレイヤー (GA文庫)

ゴブリンスレイヤー (GA文庫)

 

 ゴブリン討伐だけで銀等級まで上り詰めた稀有な存在・ゴブリンスレイヤー。そんな彼が冒険者として初めての依頼でピンチだった女神官を助けるところから始まる物語。冒頭から情け容赦のない展開が待っていて面食らいますが、視点を変えるとゴブリン相手の戦い方も奥が深く、えげつない方法も厭わずにゴブリンの習性や倒し方をひたすら極め、世界を救うことには興味がない変わり者のゴブリンスレイヤーが、直面した危機的状況で身近な人を失うことを繰り返さないために、仲間に助けを求めて立ち上がる展開はなかなか来るものがあって面白かったです。17年1月に4巻刊行予定。

近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係 (ファミ通文庫)

近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係 (ファミ通文庫)

 

母と二人で暮らす家で、同い年の遠い親戚の女の子和泉里奈と同居することになった高校生の坂本健一。彼女の出現によって様々な変化がもたらされてゆく物語。兄にコンプレックスを抱き他人との距離に悩む健一と、控えめながら女子校育ちで無防備な里奈。近過ぎるのにどこか遠い彼女を意識し友人たちに知られたくないと感じる健一に気づき、心穏やかではいられない幼馴染・由梨子。最近希少のオーソドックスな構成ながらも飽きさせない著者らしい繊細な心理描写がウリですね。全2巻。

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

 

 日本屈指のゲーマーながらリアルでは弱キャラの友崎が、同じくらいゲームを極めリアルでもパーフェクトヒロインの日南葵に炊きつけられ、クソゲーと断じるリアルで自己変革を目指す物語。ゲームに対する同じ想いを抱く葵の言葉を信じ、失敗しながらもチャレンジを諦めない友崎。そんな彼のフォローに奔走する葵が、凄まじいまでの努力家であることを何度も垣間見たこともきっと大きかったんですよね。魅力的なヒロインたちを絡めたテンポよく進む物語には続巻をまた読みたくなる期待感があります。17年1月に3巻刊行予定。

その10文字を、僕は忘れない (ダッシュエックス文庫)

その10文字を、僕は忘れない (ダッシュエックス文庫)

 

 無気力で学校をサボりがちな高校生・島崎蒼が雨よけに寄った公園で、理由があって声が出ない同級生・宮崎菫と出会い、スケッチブックで会話をする彼女と交流を深めてゆく青春小説。菫と出会ったことで変わってゆく蒼と、彼と密かに公園で出会いを重ねてゆくことで本来の明るさを取り戻し、蒼やその親友二人と楽しい日々を過ごすようになった菫に訪れた重要な転機。些細なことからすれ違ってゆく二人の姿はとても辛かったですが、それでも大切な存在だと改めて痛感し、きちんと想いを交わし合った二人の今後を応援したくなるとても素敵な物語でした。

キミもまた、偽恋だとしても。1〈上〉 (オーバーラップ文庫)

キミもまた、偽恋だとしても。1〈上〉 (オーバーラップ文庫)

 

 田舎町の岩下学園に越境入学した村上政樹に、地元旧家の娘で見合いを嫌い偽装恋人を提案してきた薫子。引き受けたら思わぬ繋がりが判明し婚約にまで発展してしまう物語。さすがに結婚までは意識できないものの見合いはしたくない薫子と、美少女の薫子と恋人になりたい政樹の利害が一致してとりあえず三年間偽装恋人として付き合うことになった二人。真っ直ぐに想いを伝えた政樹に好印象を抱く薫子のチョロインぶりや、お互いオタクや腐女子であることを隠す悩ましいドタバタぶりがいろいろ微笑ましくて、ベタですが二人の今後がとても楽しみなシリーズですね。現在2巻目まで刊行。

アサシンズプライド 暗殺教師と無能才女 (ファンタジア文庫)

アサシンズプライド 暗殺教師と無能才女 (ファンタジア文庫)

 

 マナという能力を持つ貴族が人類を守る責務を負う世界。公爵家の生まれながらマナを持たない少女・メリダの元に、依頼を受けた暗殺者のクーファが家庭教師として派遣される物語。努力家なのにマナを発現させる見込みに乏しいメリダを見て、家庭教師を続けるか暗殺するか決断を迫られたクーファの意外な行動から動き出す物語は、テンポの良いストーリー展開にキャラもよく動いてとても面白かったです。素直で努力家なメリダと、一見クールなのに彼女のために奔走せずにいられない訳あり家庭教師クーファの今後がどうなるのか注目のシリーズです。現在4巻まで刊行。

いつかの空、君との魔法 (角川スニーカー文庫)

いつかの空、君との魔法 (角川スニーカー文庫)

 

 上空を覆うダスト層雲によって空の青さを知らず、人々の生命活動に精霊が不可欠な世界。ダスト層雲を払い精霊を呼び寄せるヘクセを務める高所恐怖症のカリムと幼馴染の少女・揺月の物語。幼い頃のカリムの危機を救い代償を負った揺月に負い目を感じて、長らくすれ違ったままの二人。街を危機に陥れる規模の精霊不足という危機に共に挑む中で描かれる精霊と戯れるグラオベーゼンの幻想的な描写や、随分遠回りこそしたものの自分の気持ちにきちんと向き合って、失われかけた絆を取り戻してゆく空飛ぶヘクセたちの繊細な距離感がとても素晴らしいですね。現在2巻まで刊行。

尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視る (ダッシュエックス文庫)

尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視る (ダッシュエックス文庫)

 

 とある事情から廃墟と化したデパートの屋上遊園地に向かった久佐薙卓馬が、そこで古びた傷だらけのカメラで写真を撮り続ける同級生の少女・尾木花詩希と出逢う物語。「観覧車の花子さん」に逢わねばならない理由がある卓馬と、自身の失ってしまった彩りを取り戻すため写真を撮り続ける詩希。ぎこちない交流を続けるうちに少しずつ変わってゆく詩希がとても可愛くて、悪意に巻き込まれてお互いを大切に想う気持ちが空回りした二人でしたけど、真相に近づいてゆく中で大切な人にきちんと想いが伝わった結末は本当に良かったです。

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

 

 見た目も成績も地味なのに「なんか援交だかをやっているらしい」という噂によって、クラス全員に避けられている中萱梓。愛称アズ。いきなり始まるアズの思考だだ漏れな地の文のみっちり感には面食らいましたが、最初は友人の自称・魔法少女サワメグや窮地を助けてくれた穂高先輩たちとぼっち少女の青春ものと思って読んでいたら、え?そっちなの?とどんどん思わぬ方向に向かってゆく展開は奇想天外で、なのにしっかりと青春もしていて、何かじわじわと来る独特な世界観を持つ突き抜けた物語でした。イラストも素晴らしかったですし前日譚にも期待。

 

ライト文芸・一般文芸編】

浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 (富士見L文庫)

浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 (富士見L文庫)

 

 浅草に住み地元グルメをこよなく愛する訳あり女子高生・茨木真紀。人間なのに日々あやかし関連の厄介ごとに首を突っ込み、前世で夫だった天酒馨たちを振り回すほのぼのあやかしラブコメディ。前世が茨木童子だった真紀と前世で夫の酒天童子だった馨。生まれ変わって幸運にもまた巡り会えた二人が繰り出す以心伝心の夫婦漫才と、巻き込まれるあやかし絡みの騒動で構成されるストーリーで、姐さん気質の心優しい真紀と何だかんだ言いながら彼女のために奔走する馨が安心安定の夫婦っぷりでした(まだ夫婦じゃないけどw)続刊期待の新シリーズですね。

 長らく空き家だった川越の片隅に佇む印刷所・三日月堂。そこにかつて亡くなった店主の孫娘・弓子が住むことになり、昔ながらの活版印刷で人との繋がりを解きほぐしてゆく物語。近しい人との関係に迷いを抱える登場人物たちが、身近な人の繋がりから知る営業を再開した三日月堂の存在。物静かで真摯な弓子さんと一緒に印刷するものを考えてゆくうちに、悩みにもきちんと向き合えるようになってゆく展開は、失われた活版印刷の良さを思い出させてくれるだけでなく、作られた印刷物も悩める人の想いに寄り添っていて、とても素敵な物語だと思いました。2月に続刊刊行予定とのこと。

 

※最後に切なくなりたい人は『僕が』から、穏やかになりたい人は『君を』から読んで下さい。

 並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦が、地元の進学校で85番目の世界から移動してきたというクラスメイト・瀧川和音と出会う物語。入学時の因縁をきっかけに運命的な出会いを果たした、暦と和音の一見腐れ縁のようにも思える関係。同時刊行作品の出来事との関連性を織り交ぜつつ、並行世界が実在する世界ならではの問題に悩まされながらも、それを力を合わせて乗り越えてゆく二人はとても幸せだったんだろうなと思わせるものがありました。二つ読んで比べてみるといろいろ思うところが出てきてとても面白かったです。

 並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦が、地元の進学校で85番目の世界から移動してきたというクラスメイト・瀧川和音と出会う物語。入学時の因縁をきっかけに運命的な出会いを果たした、暦と和音の一見腐れ縁のようにも思える関係。同時刊行作品の出来事との関連性を織り交ぜつつ、並行世界が実在する世界ならではの問題に悩まされながらも、それを力を合わせて乗り越えてゆく二人はとても幸せだったんだろうなと思わせるものがありました。二つ読んで比べてみるといろいろ思うところが出てきてとても面白かったです。

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

 

 黒豚の悪神伝説が言い伝えられている宇嘉見島。その古臭い慣習も閉鎖的な環境も大嫌いな中学生ヨナのクラスに、東京から美少女・波多野清子が転校してくるひと夏の異世界譚。清子の美声を聞いて彼女を主演に『オズの魔法使い』の映画を取りたいとアプローチするヨナ。そんな彼だけでなくクラスの皆からも距離を置く清子が隠す秘密。ヨナたちのお陰で本来の姿を見せるようになった清子はとてもいい子で、だからこそ明かされた真相には切ない気持ちにもなりましたけど、彼女が笑って過ごせるようになった結末にはとても心温かい気持ちになりました。 

 ダメダメな一人暮らし生活を送る大学生の栗坂まもりが、ふとしたきっかけからベランダで植物を育てては食すお隣のイケメン園芸男子・亜潟葉二の真の姿を知り、一緒に育てるようになる物語。一人暮らしにありがちなトラブルに巻き込まれて葉ニに救われるまもり。育てたものを一緒に食べることで育まれてゆく二人の交流と、そんな葉二に変わるきっかけを与えた千鶴との再会。不安を抱えながらも自分の思いに正直になって、不器用なりに決意したまもりの奮闘ぶりや、変わってゆく葉ニのまもりを呼ぶ名前や二人の繊細な距離感がなかなかいいですね。現在2巻まで刊行。

風見夜子の死体見聞 (富士見L文庫)

風見夜子の死体見聞 (富士見L文庫)

 

 事故や事件の現場に必ず居合わせることで「死神」とあだ名される女子高生・風見夜子。数年来絶縁状態だった夜子に死ぬところを救われた幼馴染の凪野陽太が、過剰な人助けに巻き込まれてゆく青春ミステリ。死ぬ予定の死体が見えてしまう力を持ち「あなた死ぬわよ」と強引にでも回避しようとする夜子。傍若無人な彼女に恩に着せられ脅され人助けを手伝うようになる凪野とのテンポの良い応酬が楽しくてじわじわ来ますね(苦笑)素直じゃない不器用な彼女の理解者が少しずつ増えてゆく一方で宿敵の存在も明らかになり、是非続編を期待したい作品ですね。

トオチカ (角川文庫)

トオチカ (角川文庫)

 

 親友と2人で鎌倉の小さなアクセサリー店「トオチカ」を営む里葎子。手痛い恋愛を乗り越えていたと思っていた彼女がバイヤーの千正と出会い、心揺さぶられてゆく不器用な大人の恋の物語。会えば行動の一つ一つが気になって苛立つ里葎子と、なぜかそんな彼女の地雷を踏みまくる千正。優しくされたり雑貨の趣味が似ていても素直になれず、距離感が分からなくなったり言葉の選択を間違えてしまう不器用な関係が、とあるきっかけから戸惑いながらもいい感じにまとまっていって安心しました。巻末の短編もいい感じに幸せ感を補足していて良かったですね。

霊感検定 (講談社文庫)

霊感検定 (講談社文庫)

 

 「記憶屋」(角川ホラー文庫)の織守きょうやさんによるシリーズ。バイト帰りに同級生の羽鳥空と印象的な出会いを果たした転校生の修司。彼女と再会した図書室で風変わりな司書・馬渡の心霊現象研究会の活動に巻き込まれてゆく青春ホラー。霊の想いに寄り添うちょっと変わった女の子・空と彼女を見守る幼馴染・晴臣。彼ににらまれながらも空とのやりとりを貴重に思う修司。仲間と解決する霊絡みのトラブルは切なかったり重かったりもしましたが、それ以上に彼らの優しい想いがつまった甘酸っぱい青春している雰囲気をたっぷりと味わえました。登場人物も魅力的でページの割にはとても読みやすいです。現在2巻まで刊行。

虹を待つ彼女

虹を待つ彼女

 

 優秀で予想できてしまう限界に虚しさを覚えていた研究者・工藤が、死者を人工知能化するプロジェクトに参加して、衝撃的な自殺でカルト的な人気のゲームクリエイター・水科晴を知る物語。過去の事件や水科晴のことを調べてゆくうちに、彼女に共鳴し惹かれてゆく工藤。重要なキーパーソン「雨」の存在と調査中止を警告する謎の脅迫。我が身が危険に晒されながらも諦めず、晴を人工知能で再現することに妄執する工藤の姿には鬼気迫るものがありましたが、真相を知った彼のほろ苦くも粋な決断は少なからず心に響くものがありました。

 

 参考までにジャンル別のまとめ

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

2016年12月に読んだ新作おすすめ本

既存シリーズも新作も気になる本目白押しで、選んで読むのが大変だった記憶しかない12月でしたが、思わぬトラブルに見舞われながらも何とかそこそこ読めました。2016年読了分最後の新作オススメは18点です。気になる本があったらぜひ手に取ってみてください。

 

友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)

友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)

 

 妙なこだわりで高校で友達ができない新藤大輔に、存在感のないクラスメイト澄田が持ちかけてきた困ったときに助け合う「友達いらない同盟」そんな同盟から始まる二人の物語。それぞれが複雑な家庭事情を抱えてはいるけれど、一見同じようでいてまるで対照的な新藤と澄田。グループから浮いた城ヶ崎も加わって三人で楽しそうに見えたのに、なぜか澄田が距離を置くようになってゆく危機的状況でしたが、本音で引き留めようとする新藤の提案はかなり無茶苦茶でしたね(苦笑)このレーベルでたまに出てくる不思議な魅力のある物語で次回作も期待ですね。

いま、n回目のカノジョ (ファンタジア文庫)

いま、n回目のカノジョ (ファンタジア文庫)

 

 幼馴染の刻坂詩音が巻き起こすループにたびたび巻き込まれる毎原和人。無自覚に唐突に繰り返される日常を諦めて受容していた和人たちの前に、同じくループを自覚する転校生の美少女・神崎が現れるループ系青春小説。ループを引き起こすのに認めない天然な詩音と、いろいろツッコみつつも幼馴染のために奔走する和人、一見クールビューティなのに実は口下手で不器用な神崎のやりとりがじわじわくる感じで、繰り返されるドタバタで楽しい日常を許容しつつあった彼らに起きるひとつの転機と真相はきれいにまとまりましたが、続巻がとても楽しみですね。

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

 

 見た目も成績も地味なのに「なんか援交だかをやっているらしい」という噂によって、クラス全員に避けられている中萱梓。愛称アズ。いきなり始まるアズの思考だだ漏れな地の文のみっちり感には面食らいましたが、最初は友人の自称・魔法少女サワメグや窮地を助けてくれた穂高先輩たちとぼっち少女の青春ものと思って読んでいたら、え?そっちなの?とどんどん思わぬ方向に向かってゆく展開は奇想天外で、なのにしっかりと青春もしていて、何かじわじわと来る独特な世界観を持つ突き抜けた物語でした。イラストも素晴らしかったですし前日譚にも期待。

わたしの魔術コンサルタント (電撃文庫)

わたしの魔術コンサルタント (電撃文庫)

 

 かつて師を救えず己の魔術を失った過去を持つ魔術士・黒瀬秀春の元に現れた、秀春を父親だと勘違いするかつての師の娘・朝倉ヒナコ。そんな二人が織り成す魔術と居場所の物語。魔術を失いながらも魔術をつかう人に希望を見出そうとする秀春が出会う、才能に恵まれた悩める少女たち。ヒナコとの共同生活や、タイプの違う魅力的な少女たちと主人公との師弟関係やドタバタぶりも楽しくて、過去の複雑な因縁を絡めつつ少女たちのために奔走する展開はなかなか良かったです。ここからの物語を期待できそうな結末でしたし、続巻出ることを期待しています。

 平凡に暮らす奇術師見習いのシオンが、暗殺公によって家族の記憶を改竄されて亡き者とされ、唯一生き残る方法として暗殺公の娘エヴァレットと共に盾として謎の教育機関に入学させられるファンタジー。王女が自ら先頭に立って暗殺者と戦う大暗殺時代に、暗殺技術を巧みに操る令嬢たちのみの学園。そこに男装の令嬢と偽ってエヴァレットと共に入学したシオンが、境遇に戸惑いながらもきちんと向き合い、エヴァレットたちと絆を築いていったり、令嬢たちのために奔走する姿はなかなか良かったですね。彼自身にも何か秘密がありそうで続巻に期待ですね。

白き姫騎士と黒の戦略家 (講談社ラノベ文庫)

白き姫騎士と黒の戦略家 (講談社ラノベ文庫)

 

 王太子レオンハルトを支え王国を発展させていく未来を夢想していた若き騎士ジーク。隣国の侵攻で王太子を喪った彼が、犬猿の仲である妹姫リーゼロッテとともに仇敵の勇者王ベルトランに立ち向かうファンタジー戦姫。規格外のベルトランの力に敗北した王国軍の殿を引き受けたジークとそこに押しかけたリーゼロッテ。大軍相手に寡兵で向かうため手段を厭わずにベルトラン打倒を狙うジークと、あくまで騎士道を重んじる彼女が対立しながらも同じ目的を果たすために力を合わせて打倒を目指してゆく展開はなかなか面白かったです。次回作にも期待ですね。

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

 

 黒豚の悪神伝説が言い伝えられている宇嘉見島。その古臭い慣習も閉鎖的な環境も大嫌いな中学生ヨナのクラスに、東京から美少女・波多野清子が転校してくるひと夏の異世界譚。清子の美声を聞いて彼女を主演に『オズの魔法使い』の映画を取りたいとアプローチするヨナ。そんな彼だけでなくクラスの皆からも距離を置く清子が隠す秘密。ヨナたちのお陰で本来の姿を見せるようになった清子はとてもいい子で、だからこそ明かされた真相には切ない気持ちにもなりましたけど、彼女が笑って過ごせるようになった結末にはとても心温かい気持ちになりました。

あしたはれたら死のう (文春文庫)

あしたはれたら死のう (文春文庫)

 

 自殺未遂の結果、数年分の記憶と感情の一部を失ってしまった女子高生遠子。しかしなぜ死んでしまった同級生の志信と一緒に自殺を図ったのか、理由が分からずその原因を探るべく動き出す青春小説。以前とは明らかに変わった遠子の言動に戸惑う周囲の人たち。SNSに残されていた手がかりをもとに追う志信との関係や自殺の理由。志信と出会ってからの変化や彼のことを知ってゆくと、自殺を図った真相に切ないものを感じてしまいましたが、閉塞感のあった状況にも目をそらさずに真摯に向き合うようになった今の遠子のこれからを応援したくなりました。

タイムカプセル浪漫紀行 (メディアワークス文庫)

タイムカプセル浪漫紀行 (メディアワークス文庫)

 

 考古学者である父の遺跡捏造事件で同じ考古学者となる夢に希望が持てなくなった大学生の英一。そんな失意の日々を過ごす彼の前に10年前に亡くなった幼馴染の少女・明日香が現れる物語。昔果たせなかった明日香との約束。昔埋めたタイムカプセル探しを提案する明日香と共に向かう以前住んでいた街と、そこで出会うかつての友人や恩師たち。明るく天真爛漫だった明日香のやりたかったこと、望んでいた未来には切ない気持ちにもなりましたが、自分を見失いかけていた英一の背中を押してくれた彼女の想いが大きな転機に繋がってゆく素敵な物語でした。

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

 

 「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説き死神と呼ばれる医者・桐子。奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない副医院長・福原と対象的な二人が挑む戦いが描かれる医療ドラマ。直面する「死」に対してどう向き合うのか。残された時間を生還の望みが薄い延命治療のために戦うか、後悔なく生きるために使うのかというそれぞれの選択。それは正解のないとても難しい問いですが、それでも患者だけでなく医師や家族たちもそれぞれ精一杯何とかしたいと残り時間に向き合う姿が真摯に描かれていて、切ない物語でしたけどとても心に響きました。

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

 

 イラストの仕事だけでは食べていけず、夢破れて生きるために親に内緒で地元タウン誌を発行する会社の事務員として採用された夏実。その個性的な面々が集うブラック企業ぶりを描くお仕事小説。周囲の同僚がだらしない人たちで振り回されたり、仕事をスムーズに動かすために始発で行って仕事とか考えるあたりが、すでにもう重症だなと思わなくもないですけど、それはそれとして社会人として仕事をしっかりこなす夏実だからこそ周囲から信頼されるのも納得ですね。大変なことに巻き込まれましたが、林さんとの今後が気になるので続刊に期待したいです。

 経営難で廃業の噂が絶えない崖っぷちなホテルに就職したおっちょこちょいの新入社員・落合千代子。毎回渦中に巻き込まれる事件を先輩の教育係二宮と一緒に解決するお仕事ミステリ。うっかりでアバウトな性格もあって、次々と訳ありな客の事情に巻き込まれてゆく千代子と振り回される二宮。残念な発想しか出てこない上司のダメっぷりには苦笑いでしたが、何だかんだで事件を上手くまとまめていって「美人すぎるベルガール」と呼ばれ、ホテルの集客にまで貢献してしまうから分からないですね。少しひねった謎と悪くない読後感で読みやすいお話でした。

僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)

僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)

 

 人と話すことが大の苦手で毎週水曜日に原因不明の熱に悩まされている高校生の翼。病院の帰り道に偶然立ち寄った奇妙なペットショップで不思議な猫と出会い、家で飼うことになる物語。彼だけには別のものに見える不思議な猫・モナミとの出会いが転機となって、自身のわだかまりを解消しいろいろなものへの見る目が変わっていったり、お店でのバイトで同じようなお客と関わって一緒にその不安を解消したりで、その世界が少しずつ広がってゆくことを実感する物語は、とても読みやすくて良かったなと思える読後感でした。続刊を読んでみたい作品ですね。

209号室には知らない子供がいる

209号室には知らない子供がいる

 

 リバーサイドに建つ瀟洒なマンションサンクレール。209号室に住む葵という名の美少年によって、一見「ちゃんとして」見える女たちが静かに歪み壊れていくホラーミステリ。ふとした隙に家庭に入り込む葵によって、歪められてゆく家族とそれによって追い詰められてゆく妻たち。マンションで立て続けに起こる怪事件と、少しずつ明らかになってゆく謎めいた209号室の事情。少しずつ壊れてゆく関係の描写がとても生々しくて、一区切りついたかに見せかけてゾクリとさせる部分を最後に垣間見せる怖さに、著者さんらしさがよく出ていると思いました。

文藝モンスター (河出文庫)

文藝モンスター (河出文庫)

 

 文学賞受賞仲間で年に一度岡山の旅館で行われる打ち上げに参加した新人作家・笹野。地元で信仰を集める「消し神様」に願いを祈った人気作家たちが、その通りに発生した殺人事件の真相に挑むミステリ。作品へのスタンスや編集者との関係もそれぞれ違う、個性的で濃い人気作家たち。作家間でのぶっちゃけた会話や、インタビュー記事で語られるその思いは生々しくて、実感のこもった話だなあと思いながら興味深く読んでいましたけど、どこに向かうのかと思っていた顛末は何かすんなりまとまって、途中はグロいと思ったのになぜか悪くない読後感でした。

救ってみろと放課後は言う

救ってみろと放課後は言う

 

 遺書を書いて自殺すると決めたのに、以前相談した聞き屋・神山に遺書と練炭の入った鞄を盗まれた日登志。そんな彼がいいように使ってくる岸塚に呼び出され、ビルから落下した神山の状況を調べるよう命令される青春ミステリ。希望のない日々を送っているように見える日登志と、たまたま宇都宮に帰ってきて神山から遺書を手渡された友人・瑠梨。二人の視点から交互に語られてゆく物語は、新事実が明らかになるたびにその様相を変えていって、終わってみれば最初抱いた印象とは全く異なる物語となっていて驚きました。読後感も悪くなくて次回作に期待。

真夜中の本屋戦争 (ホワイトブックス)

真夜中の本屋戦争 (ホワイトブックス)

 

 エキナカ書店でバイトを始めた大学生の渡鍋渉が、閉店後の店内で平台争奪戦を行う本たちのゴーストに遭遇し、美人書店員の竹河紫野とともにそれに対処する物語。これまで一人で織田信長やホームズのような姿を模したフィギュアたちの場所取り合戦に振り回されてきた紫野。ほのかな想いを抱く彼女を助けつつ、フェア企画、夏の百冊や読書週間、クリスマスと何かあるたびに繰り広げられる騒動に巻き込まれる展開は、なかなか微笑ましい雰囲気でした。書店ものとして期待して読むとやや浅いですが、そういうものとして楽しめばなかなか面白かったです。

石黒くんに春は来ない

石黒くんに春は来ない

 

 典型的なスクールカーストが形成されたクラスで起こった、スキー教室における石黒君の遭難事件。平穏なようでいて歪な日常を取り戻した生徒たちに突然、意識不明の重体だった石黒君からメッセージが届く学園サスペンス。気ままに君臨するグループに事なかれの主義の教師、それによって生じる不登校や少しずつ溜まってゆく不満。それを巧みに扇動するものが現れることでガラリと様相が変わる狭い社会における群集心理の怖さが生々しかったです。途中から傍観者だった主人公恵美でしたけど、一度作られてしまった流れをどうにかするのは難しいですね。

12月に読んだ本 #読書メーターより

12月の年末にもなって右手首を骨折(といってもヒビが入った感じの延長線上みたいなものですが)するというマヌケなことをしたお陰で、年末と今後のスケジュールがかなり狂うことになりました。読書するのには思ったほどは支障ないですが、重いもの持てなかったり運転できなかったりとそれ以外は少なからず影響出そうなので、しばらくはやりくりを考えながらの日々になりそうです。

 

12月の読書メーター

読んだ本の数:71冊

読んだページ数:19455ページ

ナイス数:5370


夜伽の国の月光姫3

夜伽の国の月光姫3感想『竜の巫女』になって調子に乗ったセレネ(中身はおっさん)は、エルフの里に姉姫アルエと移住して結婚するという壮大な夢を抱く。しかし欲望のままに行動していたつもりが、周囲の勘違いからさらに大活躍してしまう第三弾。相変わらず自分の欲望のままに行動しているだけなのに、周囲が無駄に深読みしたり都合の良いように解釈して大活躍になってしまう展開は相変わらずでしたけど、挙句の果てにまさかの暴挙が結果的に大嫌いな王子の窮地を助けてしまうことになるとは(苦笑)しぶといなとも思いましたけど、どんな形で再登場するのか楽しみです。読了日:12月31日 著者:青野海鳥
209号室には知らない子供がいる209号室には知らない子供がいる感想リバーサイドに建つ瀟洒なマンションサンクレール。209号室に住む葵という名の美少年によって、一見「ちゃんとして」見える女たちが静かに歪み壊れていくホラーミステリ。ふとした隙に家庭に入り込む葵によって、歪められてゆく家族とそれによって追い詰められてゆく妻たち。マンションで立て続けに起こる怪事件と、少しずつ明らかになってゆく謎めいた209号室の事情。少しずつ壊れてゆく関係の描写がとても生々しくて、一区切りついたかに見せかけてゾクリとさせる部分を最後に垣間見せる怖さに、著者さんらしさがよく出ていると思いました。読了日:12月30日 著者:櫛木 理宇
<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  2.不死の獣たち (HJ文庫)<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 2.不死の獣たち (HJ文庫)感想決闘都市ギデオンへと辿り着き能力向上に努めていたレイが、最近子供を攫う非道な山賊団がはびこっていることを知り、知り合ったプレイヤー・ユーゴーたちと子どもの救出と討伐に向かう第二弾。子どもを救う依頼を受けて向かう山賊討伐と、皇国所属のユーゴーが秘める計画とその力。なかなか苦しい戦いの連続を乗り越えたメネシスとの絆も熱かったですけど、ユーゴーともまた違う形で再会しそうですし、伏線がいろいろあったような。またお兄ちゃんの半端ないエピソードが出てきましたが、レイ自身もいろいろ注目されているようで次巻も楽しみです。読了日:12月30日 著者:海道左近
さよなら、サイキック 2.愛と解放の地図 (角川スニーカー文庫)さよなら、サイキック 2.愛と解放の地図 (角川スニーカー文庫)感想ロンドが中等部に編入して始まった二学期。朱音儀チヅルという新メンバーを迎えた能力者サークルが、元能力者の少女・蒔田ヒルガオの告白によって再び揺れ動く第二弾。彼らが出会った超能力者・朱音儀チヅルと、彼女が引き合わせたヒルガオの言葉。ストレートに想いを告げてきた軍乃と、再び後継者に選ばれるべく頑張るロンドとの間で揺れ動くログの悩ましい日常は青春していて、ロンドとの関係や失われない超能力に悩んでいたログがそれを乗り越えてきちんと自分の気持ちに向き合った結末はなかなかステキな読後感でした。次回作も期待しています。読了日:12月29日 著者:清野 静
おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)感想見た目も成績も地味なのに「なんか援交だかをやっているらしい」という噂によって、クラス全員に避けられている中萱梓。愛称アズ。いきなり始まるアズの思考だだ漏れな地の文のみっちり感には面食らいましたが、最初は友人の自称・魔法少女サワメグや窮地を助けてくれた穂高先輩たちとぼっち少女の青春ものと思って読んでいたら、え?そっちなの?とどんどん思わぬ方向に向かってゆく展開は奇想天外で、なのにしっかりと青春もしていて、何かじわじわと来る独特な世界観を持つ突き抜けた物語でした。イラストも素晴らしかったですし前日譚にも期待。読了日:12月29日 著者:大澤 めぐみ
町田くんの世界 2 (マーガレットコミックス)町田くんの世界 2 (マーガレットコミックス)感想町田くんのお母さん6人目の子どもとか冒頭からビックリしましたが、町田くんがお父さん役してるというか、それでいて悩める叔母さんや妹の友達とか見知らぬ同級生とか、さらには再会した初恋の先生にもきちんと気にかけていて、凄いなあというかそりゃ勘違いしちゃうよなあというか(苦笑)猪原さんもこんな人相手だとなかなか大変だけど頑張って欲しいと思いました。読了日:12月28日 著者:安藤 ゆき
リア充になれない俺は革命家の同志になりました2 (講談社ラノベ文庫)リア充になれない俺は革命家の同志になりました2 (講談社ラノベ文庫)感想生徒会突入を予告して諭されるなど相変わらず過激な黒羽瑞穂と、彼女の制御(監視)役の白根与一。彼らが中禅寺らトップカーストの騒動に巻き込まれてゆく第二弾。過激に煽る一方で白根の言動がいちいち気になる黒羽と、そんな彼女が暴走しないように配慮する白根の関係。それでいて実際の計画や実行ではよく見えている白根が主導するから面白いですよね。複雑なトップカーストとも違う二人の行動観はいろいろこじらせていて、二人の関係も前途多難だなあとも思いましたけど、何だかんだでいいコンビな二人だと思いました。次回作も期待しています。読了日:12月28日 著者:仙波 ユウスケ
戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉6 (HJ文庫)戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉6 (HJ文庫)感想聖女を讃える聖誕祭を年末に控え、新しいお菓子作りと「聖女」「悪魔」の仮装をすることになったスヴェンとルート。士官学校に編入したヒルダ、「魔導師」ダイアンの秘密に迫る第六弾。ゲーニッツの反乱後それぞれの動向が描かれた今回、相変わらずいい感じなスヴェンとルートたちの関係だけでなく、周囲に心配されまくりのヒルダにできた友人?、実は意外な過去を抱えていたダイアンなど、これまでに比べると比較的のんびりとした雰囲気を楽しめました。でも過去の因縁がほのめかされる結末からまたひと騒動ありそうですね。続刊も期待しています。読了日:12月28日 著者:SOW
私の少年(2) (アクションコミックス(月刊アクション))私の少年(2) (アクションコミックス(月刊アクション))感想真修のどうにも不安定な家族環境が気になるものの、どこまで踏み込んでいいのか、どこまでできるのか思い悩む聡子。恋愛とも言えないどうにも難しい距離感が繊細な描写で描かれていて、それをまたいやらしい感じに揺さぶってくる椎川の行動が不気味ですねえ…。雲行きは怪しいですが二人の今後が気になります。読了日:12月27日 著者:高野 ひと深
精霊幻想記 6.逢魔の前奏曲 (HJ文庫)精霊幻想記 6.逢魔の前奏曲 (HJ文庫)感想望まぬ政略結婚から無事にセリアを救出したリオは大都市アマンドへ。一方リーゼロッテは勇者・坂田らと予期せぬトラブルに巻き込まれる第六弾。セリアを無事救出して一息ついたこともあって、彼女に明かされる精霊術やリオの秘密。精霊の里で修行する美春たちのエピソードもあって、ほのぼのとした展開は微笑ましい気持ちで読めましたが、たまたまリーゼロッテたちが襲われているところに遭遇して救ったことが、思わぬ形でリオの仇敵との因縁や意外な再会にも繋がっていきそうですね。ヒロインたちもとても魅力的に描かれていて、次巻が楽しみです。読了日:12月27日 著者:北山結莉
いつかの空、君との魔法II (角川スニーカー文庫)いつかの空、君との魔法II (角川スニーカー文庫)感想青空のヘクセとして街を救い十年ぶりに仲直りしたカリムと揺月。通じ合うふたりを見つめるレイシャの心は揺れ、しかし意外な展開からカリムとデートすることになる第二弾。想いを自覚していてふとしたやりとりからもカリムの思いが透けて辛いのに、揺月の代役でカリムと二人で飛ぶことになってしまうレイシャ。すっかり自信を喪失していた彼女が飛び出した揺月と一緒に飛ぶうちに自分らしさを取り戻し、その想いにも素直になってゆく展開はグラオベーゼンの幻想的な描写もあってとても美しかったです。変わってゆく三人の関係も今後が楽しみですね。読了日:12月27日 著者:藤宮カズキ
この素晴らしい世界に祝福を!スピンオフ 続・この素晴らしい世界に爆焔を! 我ら、めぐみん盗賊団 (角川スニーカー文庫)この素晴らしい世界に祝福を!スピンオフ 続・この素晴らしい世界に爆焔を! 我ら、めぐみん盗賊団 (角川スニーカー文庫)感想エリス感謝祭で出会った銀髪盗賊団に憧れ彼らを(勝手に)お手伝いするべく、めぐみんがぼっちのゆんゆんや世間知らずの王女アイリス、アクシズ教プリーストのセシリーらを集めて盗賊団を結成する外伝第二弾。いつもどおりどこかだまされやすいゆんゆんとか、いやそれおかしいからが結構あるアイリスたちのトボけたやりとりがとても楽しく、ツイてるはずなのになぜか彼女たちに振り回されるクリスには苦笑いでしたけど、カズマたちもいい感じに絡んできて相変わらずの安定感でした。カズマ相手にぐいぐい攻めるようになっためぐみんの今後にも期待。読了日:12月27日 著者:暁 なつめ
ガイコツ書店員 本田さん 2 (ジーンピクシブシリーズ)ガイコツ書店員 本田さん 2 (ジーンピクシブシリーズ)感想外国人のゲイカップルや刑務所からのご来店、フェアや有害図書、取次さんに解き明かしてもらう謎の事件など、相変わらずな怒涛の日々が描かれる第二弾。未知の体験に戸惑いつつも対応したりとか、どこで荷物が消えたのかとか、今回も濃すぎるメンツたちと書店あるあるが読んでて楽しかったです。また続巻に期待してます。読了日:12月26日 著者:本田
近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係2 (ファミ通文庫)近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係2 (ファミ通文庫)感想幼い頃より共に過ごしてきた由梨子から異性としての気持ちを突きつけられた健一。しかしともに暮らし始めてわずか二カ月の里奈への感情も混じり合い、自分の気持ちが分からなくなって心揺れる第二弾。答えを待つことを選択した由梨子を意識するようになってゆく一方で、里奈とのふとした出来事にもドキドキする健一。周囲も状況も変化していく中で、積み重ねられてゆく三人の繊細な描写がとても印象的で、遠回りしながらもあるべきところに落ち着いた結末には、三人が出会えて良かったと思える心地よい読後感がありました。関連作も期待しています。読了日:12月26日 著者:久遠 侑
最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)感想「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説き死神と呼ばれる医者・桐子。奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない副医院長・福原と対象的な二人が挑む戦いが描かれる医療ドラマ。直面する「死」に対してどう向き合うのか。残された時間を生還の望みが薄い延命治療のために戦うか、後悔なく生きるために使うのかというそれぞれの選択。それは正解のないとても難しい問いですが、それでも患者だけでなく医師や家族たちもそれぞれ精一杯何とかしたいと残り時間に向き合う姿が真摯に描かれていて、切ない物語でしたけどとても心に響きました。読了日:12月26日 著者:二宮敦人
新米ベルガールの事件録 チェックインは謎のにおい (幻冬舎文庫)新米ベルガールの事件録 チェックインは謎のにおい (幻冬舎文庫)感想経営難で廃業の噂が絶えない崖っぷちなホテルに就職したおっちょこちょいの新入社員・落合千代子。毎回渦中に巻き込まれる事件を先輩の教育係二宮と一緒に解決するお仕事ミステリ。うっかりでアバウトな性格もあって、次々と訳ありな客の事情に巻き込まれてゆく千代子と振り回される二宮。残念な発想しか出てこない上司のダメっぷりには苦笑いでしたが、何だかんだで事件を上手くまとまめていって「美人すぎるベルガール」と呼ばれ、ホテルの集客にまで貢献してしまうから分からないですね。少しひねった謎と悪くない読後感で読みやすいお話でした。読了日:12月25日 著者:岡崎 琢磨
町田くんの世界 1 (マーガレットコミックス)町田くんの世界 1 (マーガレットコミックス)感想物静かでメガネ。外見とは裏腹に成績は中の下。アナログ人間で不器用。運動神経は見た目どおりの得意なことが何もないけれど人が大好きな町田くんの日常が描かれる物語。読んでいると随分不器用で遠回りな日々を送っているなあと思いましたが、それでもいろいろなことをよく見ていて誰かのために一生懸命な町田くんに、周囲の人たちもいつの間にか心動かされているんですね。じわじわくる感じがとてもクセになりそうで続巻が楽しみです。 読了日:12月25日 著者:安藤 ゆき
ヲタクに恋は難しい (3)ヲタクに恋は難しい (3)感想隠れ腐女子成海とゲーヲタ宏嵩の幼馴染二人と花&樺倉先輩の恋模様が描かれる第二弾。自然体でお互い言わなくても以心伝心な二人の距離感がいいなあと思ってたんですけど、宏嵩からすると「普通」のカップルにも憧れるものなんですね。先輩カップルたちもいい感じに絡んでいて、4人で繰り広げるドタバタ劇がとても楽しいです。非ヲタの弟・尚哉の気になる今後も続巻に期待。読了日:12月25日 著者:ふじた
カブキブ! 5 (角川文庫)カブキブ! 5 (角川文庫)感想カブキ部初めての夏合宿でクロ部長が文化祭に向けた新演目「毛抜」を提案。登場人物の多さから期待される一年生3人がそれぞれの弱点克服を目指す第五弾。一年生たちはそれぞれ抱えているもの、思うところがあって、いろいろありましたけどそれぞれの思いを尊重しながら克服していきたいと試行錯誤するクロの願いは、指導に当たった先輩方や同級生、1年生たちにもきちんと伝わったみたいですね。演劇部との関係やどうするのか気になる渡子、いいところに現れた蛯原とか気になる要素はいくつかありますけど、芳先輩のお姫様など続巻が楽しみですね。読了日:12月24日 著者:榎田 ユウリ
結婚しても恋してる 2 (ジーンピクシブシリーズ)結婚しても恋してる 2 (ジーンピクシブシリーズ)感想結婚した後も奥さんに恋し続けるしんごとツンデレな奥さん・はる、そして3人の子どもの物語第二弾。相変わらずブラック企業っぽい休日出勤だらけのしんごの愛に対する奥さんと子供3人の反応がクールというかシビアというか、若干一方通行気味な感もなくはないですけど、まあわりとそんなもんですよね(遠い目 でもたまにある分かり合えた感じがとてもいいと思いました。読了日:12月24日 著者:白虎
タイムカプセル浪漫紀行 (メディアワークス文庫)タイムカプセル浪漫紀行 (メディアワークス文庫)感想考古学者である父の遺跡捏造事件で同じ考古学者となる夢に希望が持てなくなった大学生の英一。そんな失意の日々を過ごす彼の前に10年前に亡くなった幼馴染の少女・明日香が現れる物語。昔果たせなかった明日香との約束。昔埋めたタイムカプセル探しを提案する明日香と共に向かう以前住んでいた街と、そこで出会うかつての友人や恩師たち。明るく天真爛漫だった明日香のやりたかったこと、望んでいた未来には切ない気持ちにもなりましたが、自分を見失いかけていた英一の背中を押してくれた彼女の想いが大きな転機に繋がってゆく素敵な物語でした。読了日:12月23日 著者:松山 剛
暗殺候補生 蒼き薔薇のエヴァレット (ダッシュエックス文庫)暗殺候補生 蒼き薔薇のエヴァレット (ダッシュエックス文庫)感想平凡に暮らす奇術師見習いのシオンが、暗殺公によって家族の記憶を改竄されて亡き者とされ、唯一生き残る方法として暗殺公の娘エヴァレットと共に盾として謎の教育機関に入学させられるファンタジー。王女が自ら先頭に立って暗殺者と戦う大暗殺時代に、暗殺技術を巧みに操る令嬢たちのみの学園。そこに男装の令嬢と偽ってエヴァレットと共に入学したシオンが、境遇に戸惑いながらもきちんと向き合い、エヴァレットたちと絆を築いていったり、令嬢たちのために奔走する姿はなかなか良かったですね。彼自身にも何か秘密がありそうで続巻に期待ですね。読了日:12月22日 著者:市川 珠輝
黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)感想黒豚の悪神伝説が言い伝えられている宇嘉見島。その古臭い慣習も閉鎖的な環境も大嫌いな中学生ヨナのクラスに、東京から美少女・波多野清子が転校してくるひと夏の異世界譚。清子の美声を聞いて彼女を主演に『オズの魔法使い』の映画を取りたいとアプローチするヨナ。そんな彼だけでなくクラスの皆からも距離を置く清子が隠す秘密。ヨナたちのお陰で本来の姿を見せるようになった清子はとてもいい子で、だからこそ明かされた真相には切ない気持ちにもなりましたけど、彼女が笑って過ごせるようになった結末にはとても心温かい気持ちになりました。 読了日:12月22日 著者:カミツキレイニー
Re:ゼロから始める異世界生活11 (MF文庫J)Re:ゼロから始める異世界生活11 (MF文庫J)感想『腸狩り』のエルザによって再び命を落とし死に戻ることになったスバル。分からないことも多いまま二度目に挑む聖域で、以前の記憶と全く違う展開を辿ることになってしまう第十一弾。ちょっとしたことをきっかけにガラリと展開が変わっていってしまった二周目。オットーの意外な頑張りもあって何とか軌道修正したものの、実は別の困難も近くにあったという状況はなかなか厳しかったですね。とはいえ自身の能力を知って何とか気持ちも切り替えられたと思いますし、貴重なヒントを得たスバルが再び苦境を乗り越えることができるのか、次巻に期待です。読了日:12月22日 著者:長月 達平
セブンキャストのひきこもり魔術王3 (ファンタジア文庫)セブンキャストのひきこもり魔術王3 (ファンタジア文庫)感想終わりつつある魔術文化祭の裏で対決するブランとアンジェの常識外れの師弟対決。さらに魔術王の命を狙う謎の転校生・イアンが現れ「七詠唱」を奪われてしまう第三弾。ブランの術式をさらに進化させた化身「四魔王」を作り出したアンジェ。「四魔王」「七詠唱」をまとめて奪った強敵イアン相手に総力戦で挑むブランたち。副会長の意外な真意も垣間見えましたが、それぞれが想いを紡いでゆく厳しい戦いの顛末は真摯な思いから来るもので、これまで謎だった正体も意外な形で明らかになってゆく結末の余韻はとても自分好みでした。次巻も期待してます。読了日:12月21日 著者:岬 かつみ
いま、n回目のカノジョ (ファンタジア文庫)いま、n回目のカノジョ (ファンタジア文庫)感想幼馴染の刻坂詩音が巻き起こすループにたびたび巻き込まれる毎原和人。無自覚に唐突に繰り返される日常を諦めて受容していた和人たちの前に、同じくループを自覚する転校生の美少女・神崎が現れるループ系青春小説。ループを引き起こすのに認めない天然な詩音と、いろいろツッコみつつも幼馴染のために奔走する和人、一見クールビューティなのに実は口下手で不器用な神崎のやりとりがじわじわくる感じで、繰り返されるドタバタで楽しい日常を許容しつつあった彼らに起きるひとつの転機と真相はきれいにまとまりましたが、続巻がとても楽しみですね。読了日:12月21日 著者:小林 がる
異世界魔法は遅れてる! 7 (オーバーラップ文庫)異世界魔法は遅れてる! 7 (オーバーラップ文庫)感想幼馴染・朽葉初美を襲う普遍の使徒との邂逅を果たした水明はネルフェリア帝国にて黎二と合流、中二病じみたイオ・クザミの存在に頭を悩ませることに。そこに魔族による帝国への襲撃が起こる第七巻。再会した仲間たちと近況報告をしている最中に起こった魔族の帝国襲撃。参戦しようとする水明たちに難色を示す帝国十二優傑。様々な意味で危険なイオ・クザミには苦笑いでしたけど、今回はそれぞれにとって転機があり、また思わぬ形で因縁の再会もあったりと物語がまた動きそうな予感。挿絵また変わったりいろいろあるようですけど、早めの続刊を期待。読了日:12月20日 著者:樋辻臥命
デート・ア・ライブ アンコール6 (ファンタジア文庫)デート・ア・ライブ アンコール6 (ファンタジア文庫)感想新年を迎えた五河士道と精霊たちが繰り広げる日常が綴られる短編集第六弾。精霊たちとのトラップだらけの自家製すごろく対決や、高難易度のギャルゲー攻略、精霊たちとアニメのアフレコ初挑戦や、ネットゲームでの悪質PK撃退といった精霊たちとの楽しい日々がたくさんあって、精霊たちがそれぞれらしさ全開でイキイキと動く展開はとても楽しかったです。今回はいつも通り突っ走る美九や折り紙たちだけでなく、二亜や七罪もいい感じに存在感がありましたし、あれから変わった六喰のその後の様子も伺えて良かったですね。本編も短編集も今後に期待。読了日:12月20日 著者:橘 公司
妹さえいればいい。 6 (ガガガ文庫)妹さえいればいい。 6 (ガガガ文庫)感想まさかの告白から新たな流れができて、アニメ化に奮闘する伊月や編集の仕事を頑張る京に影響を受けて動き始める那由多。プリケツ先生にも転機が訪れる第六弾。告白自体はあっさり収束してしまいましたけど、そこでまた関係が再構築されていったり、今回はそれぞれが思うところがあったり誰かの姿に触発されて変化のきっかけがいくつも生まれましたね。天才が本気だすと凡人とはレベル違うんだなあとか(苦笑)、新人賞のコメントには苦笑いでしたが、なるべくしてなった結末にタイトルをどう回収するのか気になってきました。次巻にも期待してます。読了日:12月20日 著者:平坂 読
折れた聖剣と帝冠の剣姫(4) (一迅社文庫)折れた聖剣と帝冠の剣姫(4) (一迅社文庫)感想アルトとの同盟は決裂、再び独力で国作りを進めることになったルシードとファル。徐々に勢力を増すアスティリアに懸念をいだいたルシードの祖国カーヴェルが、忠臣ライサンダーに託し派兵を決定する第四弾。妻を人質に取ってライサンダーを従わせ、密かに派兵するアンバート。ライサンダーの奥さんはなかなか面白い人でしたけど、脆弱な戦力しかない絶対絶命の危機を、ギリギリの綱渡りながらも荒業も使って何とか乗り切りましたね。いい感じにまとまっての第一部完には満足でしたけど、諸事情あるようで続巻は他から出るんですかね。待ってますよ。読了日:12月19日 著者:川口 士
私の少年(1) (アクションコミックス(月刊アクション))私の少年(1) (アクションコミックス(月刊アクション))感想代わり映えのない日々を送るスポーツメーカーに勤める30歳、多和田聡子は夜の公園で12歳の美しい少年・早見真修と出会う物語。元恋人から残酷な仕打ちを受けた聡子と、家族や友人の無関心に淡々とする真修。そんな二人が出会ったことで今後どんな関係になってゆくのか、何とも気になる距離感で続刊が気になります。それにしても真修の環境は学校も家もなかなか根が深そうで、大丈夫かなあと心配になっちゃいました。 読了日:12月19日 著者:高野 ひと深
アルバート家の令嬢は没落をご所望です 3 (角川ビーンズ文庫)アルバート家の令嬢は没落をご所望です 3 (角川ビーンズ文庫)感想残念お嬢様メアリが従者アディとゴールインしてハッピーエンドかと思ったら刊行された後日談SSH集+渡り鳥屋編の第三弾。いやなんというかそれぞれの後日談を確認できて良かったというか、何だかんだ言いながらみんなメアリのこと好きすぎとか、渡り鳥屋ネタはここまで引っ張ったかとか、いろいろ言及したいことはあるんですが、とりあえず苦笑いするような勢いのあるネタと時折混ぜてくる甘い展開が最後まで楽しかったです。メアリとアディの仲も着実に進展していて、他のキャラもそれぞれ幸せになれそうでなかなか楽しめました。次回作も期待。読了日:12月19日 著者:さき
一華後宮料理帖 第二品 (角川ビーンズ文庫)一華後宮料理帖 第二品 (角川ビーンズ文庫)感想四人の妃嬪が新皇帝の寵愛を争う儀式・明来告知。理美と食学博士・朱西が、儀式を前に妃嬪達の心を落ち着かせるよう、後宮で料理番の任務を命じられ、儀式で使う大切な宝珠が何者かによって盗まれてしまう第二弾。それぞれに秘めた事情を抱える四夫人たち。宝珠が盗まれたことによって窮地に陥ってしまう理美と朱西。理美の行動が周囲にも影響を与えていい感じに面白くなってきましたけど、無自覚なまま理美を意識し始めている皇帝と、徐々にお互いを意識するようになってきている理美と朱西の関係がどうなるのか気になるところですね。続巻に期待。読了日:12月18日 著者:三川 みり
マージナル・オペレーション改 01 (星海社FICTIONS)マージナル・オペレーション改 01 (星海社FICTIONS)感想ミャンマー奥地で、三〇〇〇人の少年兵たちとともに中国人民解放軍との戦いを続けるアラタ。彼のもとに人民解放軍の女将軍・新的(ニタ)から北朝鮮の体制支援を依頼される新章。子供たちのことをわりと真摯に考えているアラタなのに、相変わらずな周囲と著しくかけ離れている自己評価の低さと、びっくりするくらい機微に疎くてジブリールやホリーたちには残念な反応しかできないのは相当重症なのでは(苦笑)それにしてもここでシベリアが関わってきてパウローが出てくるとか、今後の流れ的にどうなってゆくのか気になるところですね。続巻に期待。読了日:12月17日 著者:芝村 裕吏,しずま よしのり
理系が恋に落ちたので証明してみた。(1) (メテオCOMICS)理系が恋に落ちたので証明してみた。(1) (メテオCOMICS)感想研究に情熱をそそぐ理系女子と理系男子がもし恋に落ちたら?真剣に恋の定義から始まり実験データで証明しようとまでしてしまう実験理系ラブコメディ。証明するために壁ドンとか顎クイで心拍数計測しだしたりといちいちそこまでするのか感満載で、しかも幼少の頃運命的に出会っていた昔の自分に密かに嫉妬したりとか、後輩ちゃんじゃないけどもう結婚すればレベルのバカップルぶりが素晴らしかったです。続巻も楽しみ。読了日:12月17日 著者:山本アリフレッド
救ってみろと放課後は言う救ってみろと放課後は言う感想遺書を書いて自殺すると決めたのに、以前相談した聞き屋・神山に遺書と練炭の入った鞄を盗まれた日登志。そんな彼がいいように使ってくる岸塚に呼び出され、ビルから落下した神山の状況を調べるよう命令される青春ミステリ。希望のない日々を送っているように見える日登志と、たまたま宇都宮に帰ってきて神山から遺書を手渡された友人・瑠梨。二人の視点から交互に語られてゆく物語は、新事実が明らかになるたびにその様相を変えていって、終わってみれば最初抱いた印象とは全く異なる物語となっていて驚きました。読後感も悪くなくて次回作に期待。読了日:12月16日 著者:藤石 波矢
霊感検定 心霊アイドルの憂鬱 (講談社文庫)霊感検定 心霊アイドルの憂鬱 (講談社文庫)感想買った新車に途中乗車する女性の幽霊や、度重なる奇怪な出来事と原因不明の体調不良に悩まされる女子高生アイドル星原こずえの相談に、心霊現象研究会のメンバーが挑む癒し系青春ホラー第二弾。今回も安定のホラー展開ですがそれだけでは終わらなくて、晴臣が見守る空という盤石の幼馴染関係がある中での彼女のために奮闘する修司という構図、そんな彼の頑張りを空がきちんと見ていてあげているのがまたいいんですよね。今回登場したこずえがとてもいい子でレギュラー化して欲しい。講談社BOXの方では2巻までのようですけど是非続編を期待です。読了日:12月16日 著者:織守 きょうや
水鏡推理5 ニュークリアフュージョン (講談社文庫)水鏡推理5 ニュークリアフュージョン (講談社文庫)感想研究不正を追及するより専門的な部署へ異動した一般職・水鏡瑞希。上司の女性キャリア官僚と組んで核融合研究の検証に取り組むも、その周囲で不可思議な現象が続発する第五弾。高度な演算処理で研究の実現可能性を提示するSOTAの存在。その回答をもとに予算請求がなされる核融合研究と、謎の女性から不妊バクテリアの存在を告げられる瑞希。今回も高度な処理の盲点を突くトリックがありましたけど、用意周到なシンカーたちを相手にそこからさらに踏み込んでゆく展開には、これまで以上の読み応えと瑞希の成長を感じました。次巻にも期待ですね。読了日:12月15日 著者:松岡 圭祐
椿町ロンリープラネット 5 (マーガレットコミックス)椿町ロンリープラネット 5 (マーガレットコミックス)感想恋心を隠そうとするあまり別の先生が好き、ということになってしまったふみ。暁はそれ以降不機嫌でふたりの関係がぎくしゃくする中、悟郎もふみにアプローチする第五弾。悟郎とか傍から見たら何でそんななの?と思うのも分かるようなもどかしい二人でしたけど、先生もこうなってみて思うところはあったようで転機に繋がりそうですねー。関係がどう変わってゆくのか次巻が楽しみです。読了日:12月15日 著者:やまもり 三香
新緑のサスペンス-京都寺町三条のホームズ(6) (双葉文庫)新緑のサスペンス-京都寺町三条のホームズ(6) (双葉文庫)感想ついにお互いの気持ちを伝え付き合いだした清貴と葵。そんな2人の元に京都の鑑定士や収集家の家から仏教関係の美術品が盗難される報せが入り、知り合いの探偵・小松から行方不明の娘探しを依頼される第六弾。気持ちを隠さなくて良くなった清貴が葵を好き過ぎる展開は微笑ましかったですが、盗難事件や娘さんの行方不明、大麻所持といった事件がひとつに繋がり、そしてひとつの家族が修復するきっかけにもなってゆく展開は今回もとても良かったです。今後も何かありそうな事件の顛末でしたけど、過去にもきっちりと決着をつけた二人の関係にも期待。読了日:12月14日 著者:望月 麻衣
思い、思われ、ふり、ふられ 4 (マーガレットコミックス)思い、思われ、ふり、ふられ 4 (マーガレットコミックス)感想自分の気持ちが抑えられなくなった理央の朱里へのキス。それによってまた周囲の関係もぎくしゃくしてしまう第四巻。朱里のこれまでの努力を台無しにしてしまう理央の行為でしたけど、ショックを受けながらも由奈が今回は頑張りましたね。理央もこれまで知らなかったことに気づいて、ほろ苦くも落ち着くべきところに落ち着いた感もありますが、これが今後の転機に繋がっていくといいですね。読了日:12月14日 著者:咲坂 伊緒
中古でも恋がしたい! 8 (GA文庫)中古でも恋がしたい! 8 (GA文庫)感想アコやキョーヤとの決着もついて、まさかの両親不在で思わぬ展開に。さらには期末テストでも厳しい状況に置かれて、古都子の姉・徳子や桐子もちょっかいを出してくる第八弾。意外と家庭的な古都子との関係は外堀が着実に埋まっていってドキドキしたりもするのに、清一が頑なになり過ぎなのでは?と思わなくもなかったり(苦笑)傍から見るとリア充っぽい雰囲気も漂ってきていますが、徳子さんより桐子さんの方が今後また何かありそうですね。小さな積み重ねで少しずつ前進している感はあるものの、相変わらずもどかしい二人にはそろそろ進展を期待。読了日:12月14日 著者:田尾 典丈
我が驍勇にふるえよ天地3 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)我が驍勇にふるえよ天地3 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)感想クロード帝国各地で勃発した未曽有の大叛乱を征伐した功により、広大なるディンクウッド州を下賜されたレオナート。力を蓄えるべく施策を進める彼らに対し、春を待たずしてアドモフ帝国軍が来襲する第三弾。反乱を起こした難しい土地を与えられての統治開始でしたが、その点はぬかりなく事前に準備してましたね(苦笑)でも予期せぬ敵襲に対してなかなか思うようにいかなかない状況は、時代の変わり目も感じたりで興味深かったですし、対峙するアドモフ側も目的のためには手段を選ばない強敵が立ち塞がることになりそうで、続巻がとても楽しみです。読了日:12月13日 著者:あわむら 赤光
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア7 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア7 (GA文庫)感想メレンで手がかりを得たロキ・ファミリアが迷宮街『ダイダロス通り』調査を開始。闇派閥の残党を追い詰めるアイズ達に、罠を仕掛けた赤き髪の怪人たちが襲いかかる外伝第七弾。待ち構えて罠を仕掛けられ、精神的支柱の団長まで斬られた上に分断されてしまうロキ・ファミリア。いつになく絶望感漂う苦しい戦いの連続でしたけど、普段陰ながら主要メンバーを支える第二級冒険者たちの強い気持ちやアイズの風の導き、レフィーヤの奮闘によって局面が覆されてゆく展開は今回も熱かったですね。決着はつかなかったですけどどこかでリベンジを期待です。 読了日:12月13日 著者:大森 藤ノ
泣くなブタカン!: 池谷美咲の演劇部日誌 (新潮文庫nex)泣くなブタカン!: 池谷美咲の演劇部日誌 (新潮文庫nex)感想入院していたナナコも復学し新入生も入った新生演劇部。しかし思わぬ衝突から演劇部分裂危機が訪れる第三弾。二年生として復帰して脚本に意欲を見せるナナコと、方向性の違いから生まる不穏な空気。受験生という立場と部活との兼ね合いから揺れる三年生の難しさもあって、相変わらずトラブル続きの演劇部周辺に振り回される美咲でしたけど、きちんと問題に向き合ってそれぞれがきちんと自分なりに進むべき道を考えてゆく結末は良かったです。それにしても早乙女先輩はいいこと言うけど、きちんと大学合格できるのかちょっと心配になりました(苦笑)読了日:12月13日 著者:青柳 碧人
この世で最後のデートをきみと (JUMP jBOOKS)この世で最後のデートをきみと (JUMP jBOOKS)感想死を望む人のためのデートクラブ「あずらえる」でバイトし、デートして自殺する人を見送る日々を送っていた女子高生麻耶。そんな彼女が同じく血塗られた宿命を持つ青年宮垣と出会う物語。醒めた想いで淡々と自殺を望む人に対応する麻耶の歪んだ生活。そんな彼女の窮地を救い「あずらえる」に加入することになった宮垣の報われない歪んだ想い。愛されることを望みながら得ることが叶わず歪んでいった二人の邂逅は、停滞して一歩を踏み出せずにいたお互いの背中を押す転機にも繋がっていって、それもまた一つの運命の出会いだったのかなと思えました。読了日:12月12日 著者:坊木 椎哉
きみといたい、朽ち果てるまで ~絶望の街イタギリにてきみといたい、朽ち果てるまで ~絶望の街イタギリにて感想世界から見捨てられた人々が集まる混沌の街・イタギリ。そこで生まれ育ち明日の見えない生活を続ける少年・晴史が、道端でスケッチをする儚げな少女・シズクに淡い想いを抱く物語。ふとしたきっかけから言葉を交わし、共に過ごす時間を持つ日々を楽しみに思うようになってゆく二人。イタギリで続く殺人事件の真相と、目をそらしたいのに明らかになってしまう真実。惹かれている相手に嫌な部分は見せたくないと願う二人にとってはあまりにも過酷な結末でしたけど、それでも最後まで寄り添いたいと願う二人の気持ちは純粋で美しいものだと思えました。読了日:12月12日 著者:坊木 椎哉
わたしの魔術コンサルタント (電撃文庫)わたしの魔術コンサルタント (電撃文庫)感想かつて師を救えず己の魔術を失った過去を持つ魔術士・黒瀬秀春の元に現れた、秀春を父親だと勘違いするかつての師の娘・朝倉ヒナコ。そんな二人が織り成す魔術と居場所の物語。魔術を失いながらも魔術をつかう人に希望を見出そうとする秀春が出会う、才能に恵まれた悩める少女たち。ヒナコとの共同生活や、タイプの違う魅力的な少女たちと主人公との師弟関係やドタバタぶりも楽しくて、過去の複雑な因縁を絡めつつ少女たちのために奔走する展開はなかなか良かったです。ここからの物語を期待できそうな結末でしたし、続巻出ることを期待しています。読了日:12月12日 著者:羽場 楽人
ゼロから始める魔法の書VIII -禁書館の司書- (電撃文庫)ゼロから始める魔法の書VIII -禁書館の司書- (電撃文庫)感想泥闇の魔女の目論見を阻止するために北へ向かうゼロ達と教会騎士団。悪魔に脅かされる道中で隊長ジェマの従卒が傭兵の過去を知る男であることが判明しする第六弾。悪魔の脅威から救う道を提示するゼロと、それに従うジェマに不満を抱く老兵・副隊長の一派。それがこじれ隊長とともに悪魔が待ち受ける禁書館に向かうゼロたち。最悪の形で過去の因縁まで暴露される思わしくない状況でしたけど、それを機転でいい感じにまとめてしまったゼロは流石ですね。ラストでまた意外な事実が明らかになって、ここからどういう展開になるのか次巻が楽しみです。 読了日:12月11日 著者:虎走 かける
ストライク・ザ・ブラッド16 陽炎の聖騎士 (電撃文庫)ストライク・ザ・ブラッド16 陽炎の聖騎士 (電撃文庫)感想瀕死の姿で極東の「魔族特区」恩莱島の浜辺に流れ着いた暁古城。記憶喪失の彼を迎えに来た修女騎士の香菅谷雫梨は古城の正体が「第四真祖」であり、自分はその監視者だと告げる第十六弾。新展開でも新ヒロイン現れたり同じように監視者付くのかとか思いながら読みんでましたが、そこに颯爽と(?)現れる雪菜の正妻感は相変わらずでした(苦笑)そこから明かされる恩莱島の正体と絃神島の現状はなかなか興味深くて、新ヒロイン雫梨や最後に出てきた存在もなかなかインパクトがあって、今後の展開が楽しみになりそうな第二部開幕でした。続巻も期待。読了日:12月10日 著者:三雲 岳斗
愚者のエンドロール (角川文庫)愚者のエンドロール (角川文庫)感想千代反田えるが先輩入須冬実からクラスの自主制作映画の試写会に誘われて古典部の面々で見に行くことになり、そこで途中で終わってしまった映画の事件の真相を探ることを依頼される第二弾。紹介されるクラスの面々が密室について推理を披露してゆく中で、改めてその結末の真相解明を依頼される奉太郎。いったんはこれしかないとしたその謎解きも実は完璧なものではないほろ苦さもあったりで、今回は女帝と言われる入須先輩の思惑が色濃く反映された結末でしたけど、どこか自己評価の低い奉太郎が周囲に期待されているものの一端が伺えるお話でした。読了日:12月09日 著者:米澤 穂信
氷菓 (角川文庫)氷菓 (角川文庫)感想「何事にも積極的に関わらない」がモットーの折木奉太郎が、姉の要請で古典部に入部し、そこで千代反田えると出会い里志や摩耶花も入部する物語。以前読んだのは思い出せないくらい結構前ですが、久しぶりに読むとなかなか懐かしいというかわりと新鮮な気分で読めますね。改めて読んでみた実感として時代を感じる部分もあったり、奉太郎のやる気が文章のテンポに繋がっている気がしたり、積み上げてゆく伏線と謎解きがこんな感じだったなあと感慨深いものがあって、確か以前読んだ時に表題が最後に解き明かされておおっと思ったのを思い出しました。読了日:12月09日 著者:米澤 穂信
八雲さんは餌づけがしたい。(2) (ヤングガンガンコミックス)八雲さんは餌づけがしたい。(2) (ヤングガンガンコミックス)感想隣部屋に住む高校球児を密かに餌づけすることに生きがいを見出す未亡人八雲さん。初体験となる野球観戦に行ったり、八雲さんが風邪を引いて大和が看病したりする第二弾。ほんとよく食う大和のためにいろいろ考える八雲のいきいきとした表情がいいですね。天然で無防備な八雲さんは高校球児には時々刺激強すぎるけど、女教師コスまでするとは思いませんでした(苦笑)二人の距離感が今後どうなってゆくのか気になりますね。その辺も次巻に期待。読了日:12月08日 著者:里見U
異世界居酒屋「のぶ」二杯目 (宝島社文庫)異世界居酒屋「のぶ」二杯目 (宝島社文庫)感想古都で「のぶ」が受け入れられて迎えた秋、にわかに街の人々の間で不穏な魔女の噂が広まり始め、大司教まで古都に来訪する第二弾。相変わらず料理の描写はとても美味しそうで、登場人物も増えていった分だけ横の繋がりや旧知の人物との再会といった居酒屋のぶを訪れる人達の人間関係も広がっていって、そういった縁が新たな転機に繋がったり、のぶの危機を救ったりもするから面白いです。自分が目指す方向性に試行錯誤するタイショーですが、しのぶや従業員たちと一緒にこれからも頑張って欲しいところですね。また続巻に期待しています。読了日:12月08日 著者:蝉川 夏哉
文藝モンスター (河出文庫)文藝モンスター (河出文庫)感想文学賞受賞仲間で年に一度岡山の旅館で行われる打ち上げに参加した新人作家・笹野。地元で信仰を集める「消し神様」に願いを祈った人気作家たちが、その通りに発生した殺人事件の真相に挑むミステリ。作品へのスタンスや編集者との関係もそれぞれ違う、個性的で濃い人気作家たち。作家間でのぶっちゃけた会話や、インタビュー記事で語られるその思いは生々しくて、実感のこもった話だなあと思いながら興味深く読んでいましたけど、どこに向かうのかと思っていた顛末は何かすんなりまとまって、途中はグロいと思ったのになぜか悪くない読後感でした。読了日:12月08日 著者:二宮 敦人
恋と呼ぶには気持ち悪い(2)恋と呼ぶには気持ち悪い(2)感想前巻はイケメンエリートサラリーマンとその妹の友達というギャグめいたすれ違いがおかしかった感じでしたけど、一花が気になる同級生の登場によって二人の関係にも少し転機となりましたかね。傷つけたと思って気にする一花にも、頭良いのに不器用で真摯な亮の想いがようやく少しは伝わってきたのかなと。それにしてもそのイケメンぶりにお母さんもあっさり陥落とか、益田とのエピソードもとてもいい感じで今後どうなるか楽しみです。読了日:12月07日 著者:もぐす
宝石商リチャード氏の謎鑑定 (集英社オレンジ文庫)宝石商リチャード氏の謎鑑定 (集英社オレンジ文庫)感想結婚三十年記念指輪のための宝石を探す夫婦を巡るお話や、相続に絡むオークションに出された翡翠の話、正義が好意を寄せている谷本がお見合いをする第三弾。リチャードの実家絡みの複雑な背景や苦い過去などが少し明らかになった今回でしたけど、彼のことを大切に想う気持ちは分かるけど正義はストレートに好意を伝え過ぎですね(それでいて天然なのがたちが悪いw)谷本さんの意外な結婚観も明らかになって、ギリギリの状況で彼なりに頑張ったけど肝心なところで詰めが甘い(苦笑)背中を押したリチャードでしたけど今後どうなるか…気になります。読了日:12月07日 著者:辻村 七子
僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)感想人と話すことが大の苦手で毎週水曜日に原因不明の熱に悩まされている高校生の翼。病院の帰り道に偶然立ち寄った奇妙なペットショップで不思議な猫と出会い、家で飼うことになる物語。彼だけには別のものに見える不思議な猫・モナミとの出会いが転機となって、自身のわだかまりを解消しいろいろなものへの見る目が変わっていったり、お店でのバイトで同じようなお客と関わって一緒にその不安を解消したりで、その世界が少しずつ広がってゆくことを実感する物語は、とても読みやすくて良かったなと思える読後感でした。続刊を読んでみたい作品ですね。読了日:12月06日 著者:櫛木 理宇
ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)感想イラストの仕事だけでは食べていけず、夢破れて生きるために親に内緒で地元タウン誌を発行する会社の事務員として採用された夏実。その個性的な面々が集うブラック企業ぶりを描くお仕事小説。周囲の同僚がだらしない人たちで振り回されたり、仕事をスムーズに動かすために始発で行って仕事とか考えるあたりが、すでにもう重症だなと思わなくもないですけど、それはそれとして社会人として仕事をしっかりこなす夏実だからこそ周囲から信頼されるのも納得ですね。大変なことに巻き込まれましたが、林さんとの今後が気になるので続刊に期待したいです。読了日:12月06日 著者:要 はる
緋凰仙華 いつわり仙女は拘束中 (一迅社文庫アイリス)緋凰仙華 いつわり仙女は拘束中 (一迅社文庫アイリス)感想最凶最悪の仙女・女禍の娘・小鈴は、仙人の郷にやってきた青年文官の亮孔に母親と間違われたまま無理やり契約の印を刻まれ、皇位継承権を持つ香蘭公主のために、離宮で働くことになってしまう物語。母親ほどの力はないのに引っ込み思案で誤解されたままの小鈴。常に暗殺の危機にさらされている公主。誤解こそようやく解けたものの権力争いに巻き込まれてゆく小鈴が、亮孔の危機に奮闘するあたりにその成長を感じましたが、いかんせん公主にインパクトがありすぎておいしいところを持って行かれましたね(苦笑)なかなか悪くない結末ではありました。読了日:12月05日 著者:日向 夏
続・ボクの妻と結婚してください。 (講談社文庫)続・ボクの妻と結婚してください。 (講談社文庫)感想生前に積んだ善行「天国マイレージ」のおかげで、天国に行けるはずの修治が、陽一郎を笑わせるために1周間だけの転校生として全てのマイルを使ってこの世に戻る物語。前作もかなりぶっ飛んだお話でしたけど、今回は息子の友人として1週間だけ転校生として舞い戻るこれまた斜め上の展開。正直小学生の中に修治が交じる違和感もなくはなかったですけど、それでも保護者に辞めることを迫られる教師を救うべくクラスメイトと協力する姿もまた修治らしくて、何より束の間とはいえ息子や奥さんと再び過ごす時間を作れて良かったなとしみじみ思えました。読了日:12月05日 著者:樋口 卓治
真夜中の本屋戦争 (ホワイトブックス)真夜中の本屋戦争 (ホワイトブックス)感想エキナカ書店でバイトを始めた大学生の渡鍋渉が、閉店後の店内で平台争奪戦を行う本たちのゴーストに遭遇し、美人書店員の竹河紫野とともにそれに対処する物語。これまで一人で織田信長やホームズのような姿を模したフィギュアたちの場所取り合戦に振り回されてきた紫野。ほのかな想いを抱く彼女を助けつつ、フェア企画、夏の百冊や読書週間、クリスマスと何かあるたびに繰り広げられる騒動に巻き込まれる展開は、なかなか微笑ましい雰囲気でした。書店ものとして期待して読むとやや浅いですが、そういうものとして楽しめばなかなか面白かったです。読了日:12月04日 著者:藤春都
石黒くんに春は来ない石黒くんに春は来ない感想典型的なスクールカーストが形成されたクラスで起こった、スキー教室における石黒君の遭難事件。平穏なようでいて歪な日常を取り戻した生徒たちに突然、意識不明の重体だった石黒君からメッセージが届く学園サスペンス。気ままに君臨するグループに事なかれの主義の教師、それによって生じる不登校や少しずつ溜まってゆく不満。それを巧みに扇動するものが現れることでガラリと様相が変わる狭い社会における群集心理の怖さが生々しかったです。途中から傍観者だった主人公恵美でしたけど、一度作られてしまった流れをどうにかするのは難しいですね。読了日:12月04日 著者:武田綾乃
子どもを本好きにする10の秘訣子どもを本好きにする10の秘訣感想タイトルで気になって、とりあえず手に取ってみた一冊。本好きになるということはどういうことか、親が疑問に思うようなことや気になるようなことを解説しつつ、子どもが本に興味を持つにはどうすればいいのか、驚くようなことは書いていなかったですけれど、心構えとして読むにはいい一冊だと思いました。本書には子供向けに目的別やテーマ別のブックリストなどが計291冊分付いていてとても参考になります。小学生以上向けだとは思うのでうちの娘にはまだ早いかなと感じましたけど、娘がもう少し大きくなったらまた参考にしたいと思いました。 読了日:12月03日 著者:高濱正伸,平沼純
友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)感想妙なこだわりで高校で友達ができない新藤大輔に、存在感のないクラスメイト澄田が持ちかけてきた困ったときに助け合う「友達いらない同盟」そんな同盟から始まる二人の物語。それぞれが複雑な家庭事情を抱えてはいるけれど、一見同じようでいてまるで対照的な新藤と澄田。グループから浮いた城ヶ崎も加わって三人で楽しそうに見えたのに、なぜか澄田が距離を置くようになってゆく危機的状況でしたが、本音で引き留めようとする新藤の提案はかなり無茶苦茶でしたね(苦笑)このレーベルでたまに出てくる不思議な魅力のある物語で次回作も期待ですね。読了日:12月03日 著者:園生 凪
白き姫騎士と黒の戦略家 (講談社ラノベ文庫)白き姫騎士と黒の戦略家 (講談社ラノベ文庫)感想王太子レオンハルトを支え王国を発展させていく未来を夢想していた若き騎士ジーク。隣国の侵攻で王太子を喪った彼が、犬猿の仲である妹姫リーゼロッテとともに仇敵の勇者王ベルトランに立ち向かうファンタジー戦姫。規格外のベルトランの力に敗北した王国軍の殿を引き受けたジークとそこに押しかけたリーゼロッテ。大軍相手に寡兵で向かうため手段を厭わずにベルトラン打倒を狙うジークと、あくまで騎士道を重んじる彼女が対立しながらも同じ目的を果たすために力を合わせて打倒を目指してゆく展開はなかなか面白かったです。次回作にも期待ですね。読了日:12月02日 著者:高橋 右手
終わりのセラフ7 一瀬グレン、16歳の破滅 (講談社ラノベ文庫)終わりのセラフ7 一瀬グレン、16歳の破滅 (講談社ラノベ文庫)感想世界が滅亡するその直前。一瀬グレンとその仲間たちは真昼の誘いに乗り帝ノ鬼を裏切ることを決める。しかしその瞬間から帝ノ鬼の軍勢が襲いかかってくる第七弾。世界が滅亡する直前に勃発した内乱。真昼に会うべく帝ノ鬼の猛攻から逃げ続ける展開でしたけど、様々な事実が明らかになってゆく中で、一人かなり先行していたように思えていた真昼の覚悟やその立場が明らかになって、その叶えたかったささやかな願いを知ってちょっと泣きそうになってしまいました。コミックの流れともいろいろ繋がって前日譚でどこまで描かれるのか、次巻も楽しみです。読了日:12月02日 著者:鏡 貴也
あしたはれたら死のう (文春文庫)あしたはれたら死のう (文春文庫)感想自殺未遂の結果、数年分の記憶と感情の一部を失ってしまった女子高生遠子。しかしなぜ死んでしまった同級生の志信と一緒に自殺を図ったのか、理由が分からずその原因を探るべく動き出す青春小説。以前とは明らかに変わった遠子の言動に戸惑う周囲の人たち。SNSに残されていた手がかりをもとに追う志信との関係や自殺の理由。志信と出会ってからの変化や彼のことを知ってゆくと、自殺を図った真相に切ないものを感じてしまいましたが、閉塞感のあった状況にも目をそらさずに真摯に向き合うようになった今の遠子のこれからを応援したくなりました。読了日:12月02日 著者:太田 紫織
異世界詐欺師のなんちゃって経営術3 (角川スニーカー文庫)異世界詐欺師のなんちゃって経営術3 (角川スニーカー文庫)感想新ウェイトレスのマグダも加わりついにリニューアルオープンしたひだまり亭。しかしジネットが怪我をしてマグダも重症という非常事態に店の救世主として元気娘ロレッタを雇う第三弾。以前ヤシロがやったことによって露頭に迷う家族が出てきたら、ジネットさんが放っておけないですよね。それでも転んでもただでは起きなかったり、ロレッタや弟妹たちが生きていくために厳しいことを言いつつきちっと守ってやるあたりがとてもヤシロらしいというか(苦笑)今回もいい人感溢れる登場人物たちがよく動いていて、意外な正体も明らかになった続巻に期待。読了日:12月01日 著者:宮地 拓海
滅びゆく世界を救うために必要な俺以外の主人公の数を求めよ (角川スニーカー文庫)滅びゆく世界を救うために必要な俺以外の主人公の数を求めよ (角川スニーカー文庫)感想現代と異世界を行き来する能力を得た辻道尽が、同じく転生していた魔法少女・リルネや女奴隷のスターシアと救世の旅に出る物語。自らが得たチート能力をうまく使いながら、不器用でお人好しなリルネを守ろうと奔走する尽の真っ直ぐな想いや、彼らが買った女奴隷のスターシアを含めた三人の関係性はなかなか良かったですが、この作品が物語としてそもそもどこに向かうのか、この巻からだけでは目指す方向性があまり見えてこなかった印象。今後の展開にうまくメリハリが出てくれば、十分面白くなりそうなポテンシャルはあると思うので続巻に期待です。読了日:12月01日 著者:みかみてれん
終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#03 (角川スニーカー文庫)終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#03 (角川スニーカー文庫)感想事件から10日が経っても妖精についてはまだ極秘事項のままで、ラキシュはいまだ目覚めずリンゴはもういない。そんな状況にフェオドールが世界に敵対する最初で最後の戦いに動き出す第三弾。ずっと目覚めないラキシュやリンゴに思いを馳せるフェオドールの決意と、誰もが思ってもみなかった突然の覚醒。動き出したフェオドールの前に立ちはだかるティアットの複雑な想い。ここに来て舞台と人が揃った感はありましたけど、ここから悲劇でなく良かったなとかやりきったと思えるような結末に繋げられるといいですけどね。そんな続巻を期待したいです。読了日:12月01日 著者:枯野 瑛

1月の購入検討&気になるラノベほかピックアップ

今回はわりとギリギリになってしまいましたが、来月の購入検討&気になる本です。

 

12月はなんでこんなにあるんだろうと思うくらい気になる候補がありましたが、1月は年末年始進行で12月末にいろいろ食い込んでいたりで、現時点ではいつもに比べると大分少なめです。まあ実際には見落としも結構ありますし、追加で買っていたりもするので、最終的にはそれなりの数になるとは思いますが(苦笑)

 

電撃文庫(1/10発売)
エロマンガ先生 (8) 和泉マサムネの休日 伏見つかさ/かんざきひろ
なれる!SE15 疾風怒濤?社内競合 夏海公司/Ixy
俺を好きなのはお前だけかよ (4) 駱駝/ブリキ
勇者のセガレ 和ヶ原聡司/29

宝島社文庫(1/11発売)
神の値段 一色さゆり

GA文庫(1/14発売)
ゴブリンスレイヤー4 蝸牛くも/神奈月
落第騎士の英雄譚11 海空りく/をん

富士見L文庫(1/14発売)
鎌倉おやつ処の死に神3 谷崎泉/宝井理人
君に叶わぬ恋をしている 道具小路/loundraw
僕が恋したカフカな彼女 森晶麿/カズアキ

ノベルゼロ(1/15発売)
ワールドエネミー 細音啓/ふゆの春秋
境界探偵モンストルム2 十文字青/晩杯あきら

ガガガ文庫(1/18発売)
弱キャラ友崎くん Lv.3 屋久ユウキ/フライ
ハナシマさん2 天宮伊佐/ヤマウチシズ
やがて恋するヴィヴィ・レイン2 犬村小六/岩崎美奈子

講談社タイガ(1/18発売)
臨床真実士ユイカの論理 ABX殺人事件 古野まほろ

ファンタジア文庫(1/20発売)
追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ 田辺屋敷/美和野らぐ
第29回ファンタジア大賞<金賞+審査員特別賞>]

オレンジ文庫(1/20発売)
鍵屋甘味処改5 梨沙/ねぎしきょうこ
ゆきうさぎのお品書き 12月の雪見おでん 小湊悠貴/イシヤマアズサ

集英社文庫(1/20発売)
屋上で縁結び 岡篠名桜
嘘つき女さくらちゃんの告白 青木祐子

創元推理文庫(1/21発売)
花魁さんと書道ガール(2) 瀬那和章

MF文庫J(1/25発売)
英雄なき世界にラスボスたちを 柳実冬貴/をん
世界の終わりの世界録9 絶望の始祖 細音啓/ふゆの春秋
魔弾の王と戦姫16 川口士/片桐雛太

オーバーラップ文庫(1/25発売)
現実主義勇者の王国再建記 III どぜう丸/冬ゆき
フレイム王国興亡記6 疎陀陽/ニリツ

メディアワークス文庫(1/25発売)
命の後で咲いた花 綾崎隼
ひとり旅の神様 五十嵐雄策
八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。 天沢夏月
おんみょう紅茶屋らぷさん ~式神のいるお店で、おかわりをどうぞ~ 古野まほろ

角川文庫(1/25発売)
わが家は祇園の拝み屋さん4 椿の花が落ちるころ 望月麻衣
惑星カロン 初野晴

ダッシュエックス文庫(1/25発売)
逆転召喚3 ~裏設定まで知り尽くした異世界に学校ごと召喚されて~ 三河ごーすと/シロタカ

ファミ通文庫(1/30発売)
リンドウにさよならを 三田千恵/DANGMILL
[第18回えんため大賞ファミ通文庫部門<優秀賞>]

 

今年は残りの新刊読んで最終まとめを年内に上げる予定です。

ではまた。

 

【年末企画その4】独断と偏見で選ぶ16年刊行の一般文庫・単行本

というわけで最後の第四弾・一般文庫・単行本編です。

これまでエントリはこちら。


今年は一般文庫・ 単行本なども面白い作品がたくさんありました。ハヤカワ文庫や文春文庫・集英社文庫や幻冬舎文庫双葉文庫などでもライト文芸寄り・あるいは青春小説が刊行されるようになっていたり、よくよく気をつけてみるといろいろ作品を発掘できます。今回はその辺りの作品群を中心に紹介していきたいと思いますので、もし興味があったら是非読んでみて下さい。

 

まずはハヤカワ文庫で同時刊行になった2点から。

※最後に切なくなりたい人は『僕が』から、穏やかになりたい人は『君を』から読んで下さい。

 並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦が、地元の進学校で85番目の世界から移動してきたというクラスメイト・瀧川和音と出会う物語。入学時の因縁をきっかけに運命的な出会いを果たした、暦と和音の一見腐れ縁のようにも思える関係。同時刊行作品の出来事との関連性を織り交ぜつつ、並行世界が実在する世界ならではの問題に悩まされながらも、それを力を合わせて乗り越えてゆく二人はとても幸せだったんだろうなと思わせるものがありました。二つ読んで比べてみるといろいろ思うところが出てきてとても面白かったです。

 並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦が、地元の進学校で85番目の世界から移動してきたというクラスメイト・瀧川和音と出会う物語。入学時の因縁をきっかけに運命的な出会いを果たした、暦と和音の一見腐れ縁のようにも思える関係。同時刊行作品の出来事との関連性を織り交ぜつつ、並行世界が実在する世界ならではの問題に悩まされながらも、それを力を合わせて乗り越えてゆく二人はとても幸せだったんだろうなと思わせるものがありました。二つ読んで比べてみるといろいろ思うところが出てきてとても面白かったです。

 

イマジナリ・フレンド (ハヤカワ文庫JA)

イマジナリ・フレンド (ハヤカワ文庫JA)

 

 リアルではぼっちでも空想の友達「イマジナリ・フレンド」の美少女・ノンノンと楽しい日々を過ごす大学生やまじ。現状に小さな不安を感じた彼女が、似たような人々が集まるカンパニーへと彼を誘う物語。カンパニーで二人が知ったイマジナリ・フレンドとの様々なありようと、大人になると別れを迎える空想の友達との関係。大学では相変わらずキモい行動で周囲から浮きがちなやまじにも、その関係を大切にしてくれる人たちができて、絶対に失いたくない関係を取り戻そうと奔走した結末には、これもまたひとつのありようだと思える納得感がありました。

ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)

ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)

 

 暴力を振るう義父と受け入れるだけの母、いいことのない毎日が続き絶望する中学生ノノ。しかし突如白い霧に包まれた街から人々は消え、逃げ出した先で白衣の少女・加連と出会うガール・ミーツ・ガール。義父から逃げ出したノノと、現象に関わりながらとある目的のために組織から逃げ出してきた飛び級の天才少女・加連。偶然から出会った不器用な二人でしたけど、近づく終末を前にきちんと心残りを解決したい加連と行動を共にするうちに深まる絆と、お互いのためにという想いが感じられる切なく優しい物語でした。

血と霧1 常闇の王子 (ハヤカワ文庫JA)

血と霧1 常闇の王子 (ハヤカワ文庫JA)

 

 血の価値を決める階級制度に支配された巻き貝状の都市国家ライコス。その最下層にある唯一の酒場『霧笛』で探索業を営むロイスのもとに、少年ルークの捜索依頼が持ち込まれる物語。いかにもいわくありげなルークの素性と依頼者たち。自身も複雑な過去を抱え、何だかんだ言いながらもルークのために奔走するロイス。下層特有のハードボイルドっぽい雰囲気ながらロイスを取り巻く人間関係はわりとウエットで、明らかになってゆく複雑な背後関係が面倒と分かっていても関わってゆくロイスの不器用さがとても好みでした。全2巻。

あしたはれたら死のう (文春文庫)

あしたはれたら死のう (文春文庫)

 

 「櫻子さんの足下には死体が埋まっている (角川文庫)」の太田紫織さんによる青春小説。自殺未遂の結果、数年分の記憶と感情の一部を失ってしまった女子高生遠子。しかしなぜ死んでしまった同級生の志信と一緒に自殺を図ったのか、理由が分からずその原因を探るべく動き出す青春小説。以前とは明らかに変わった遠子の言動に戸惑う周囲の人たち。SNSに残されていた手がかりをもとに追う志信との関係や自殺の理由。志信と出会ってからの変化や彼のことを知ってゆくと、自殺を図った真相に切ないものを感じてしまいましたが、閉塞感のあった状況にも目をそらさずに真摯に向き合うようになった今の遠子のこれからを応援したくなりました。

天使は奇跡を希う (文春文庫)
 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)」 の七月隆文さんによる青春小説 今治の高校に通う良史のクラスに転校してきた本物の天使・優花。彼女の正体を知った良史が再び天国に帰れるよう協力することになり、幼馴染の成美と健吾も加わって絆を深めていく物語。一緒に行動してゆく過程で天使に良史が惹かれてゆくお話なのかと思いながら読んでいましたが、中盤で物語が反転したことで明らかになっていく一つの嘘と、知られざる悲壮な決意が秘められたもう一つのストーリー。再び辿ってゆく行動の一つ一つが持っていた意味に切なくなりましたが、それを最後の最後で悲劇で終わらせなかった仲間の絆には救われる思いでした。

 人知れず秘密を抱える成績優秀で家族思いの高校生・瑛人。密かに埋めていたくまのぬいぐるみを掘り出しにいった瑛人が、土の中に埋まった謎の女性を発見する物語。彼が拾ってきたアイスをあっさり受け入れてゆく家族にも驚きましたが、どこか歪んでいる状況がそのままであるはずもなくて、二転三転して何もかも一度はぶち壊されてゆく、勢いある怒涛の展開には著者さんらしさがありました。悩めるアイスもようやく吹っ切れて、瑛人も自分がどうしたかったのか気づけて良かったですけど、一人で拗らせてしまうとどうしていいか分からなくなりますね。

トオチカ (角川文庫)

トオチカ (角川文庫)

 

 親友と2人で鎌倉の小さなアクセサリー店「トオチカ」を営む里葎子。手痛い恋愛を乗り越えていたと思っていた彼女がバイヤーの千正と出会い、心揺さぶられてゆく不器用な大人の恋の物語。会えば行動の一つ一つが気になって苛立つ里葎子と、なぜかそんな彼女の地雷を踏みまくる千正。優しくされたり雑貨の趣味が似ていても素直になれず、距離感が分からなくなったり言葉の選択を間違えてしまう不器用な関係が、とあるきっかけから戸惑いながらもいい感じにまとまっていって安心しました。巻末の短編もいい感じに幸せ感を補足していて良かったですね。

ここは神楽坂西洋館 (角川文庫)

ここは神楽坂西洋館 (角川文庫)

 

 結婚直前に婚約者に浮気された小寺泉が、何もかも放り出して下宿先の「神楽坂西洋館」で大家の青年・藤江陽介や他の個性的な住人たちとともに住むことになる物語。傷つき疲れ果てた泉が下宿先に受け入れられて、住人や関係者たちとのやりとりや遭遇する出来事に関わってゆくうちに癒やされて、今の自分を見つめ直して新たな一歩を踏み出したり、西洋館の危機に大家の陽介を助けるために他の住人たちと共に奔走するようになったり、ちょっとした幸せを大切にできる生活がとてもいいなと思いました。二人の関係も気になりますね。現在2巻まで刊行。

コハルノートへおかえり (角川文庫)

コハルノートへおかえり (角川文庫)

 

 ある土砂降りの日、親友の紗綾との喧嘩した女子高生・小梅をハーブとアロマのお店「コハルノート」の店長・澄礼に救われ、そこで働くようになる物語。猪突猛進な性格にコンプレックスを抱え、親友の紗綾と仲違いしてしまった小梅と、そんな二人の仲直りに助力してくれた澄礼。周囲に助けてもらってばかりいると感じている小梅の行動力が、結果的にいろいろと周囲に好影響を与えているのに、自分に自信を持ちきれないがゆえに、小梅を大切に思う紗綾や澄礼たちの気持ちに気づいていないあたりが微笑ましいかったです。全2巻。

 引っ込み思案でいつもひとりぼっちな樫乃木美術大学の1年生長原あざみが、疑われていた状況を救ってくれた研究生の梶谷七唯と出会ったことでその世界が変わってゆく物語。よく分からないサークル「カジヤ部」に所属することになり、梶谷と共に謎を解きながら増えてゆく仲間たち。ミステリ要素はやや薄味ですが、人との出会いが卑屈だったあざみのありようを変えてゆき、ついには窮地に陥った梶谷を救うために奔走するまでに成長する過程はなかなかで、あざみの過去の伏線も分かりやすかったですがきちんと回収していて好感です。現在2巻まで刊行。

 幼馴染ながら今は微妙な関係の写真部・有我遼平と占い女子・鉢町あかね。たびたび事件に遭遇する遼平を、推理を伝える謎の「壁越し探偵」となって救う青春ミステリー。あかねが密かに営む占い師の依頼者と事件がリンクしていたりで、距離を置きながらも意識する遼平を正体を明かさないままたびたび救う展開。凄まじい洞察力を発揮するのに、不器用過ぎて遼平に気づいてもらえないこじれ具合が切なかったですが、それでも二人のすれ違いのきっかけとなった過去の事件と今がようやく繋がって、これからの変化を期待させるラストはとても良かったです。

吹部! (角川文庫)

吹部! (角川文庫)

 

 三年も早期引退してしまい、幽霊部員も多い崩壊寸前の弱小吹奏楽部にやってきた正体不明の顧問・ミタセン。その奇人変人っぷりに振り回されながら、全国コンクールで金賞!を目標に奮闘する青春小説。あの手この手で部員を集めて指導していく変人顧問・ミタセンに、いきなり部長に指名されてしまった沙耶、西大寺ら集められた吹部のメンバーたち。ミタセンのキャラには首を傾げる部分もありましたが、それぞれ抱えている事情や様々な経験を乗り越えて成長しながら、コンクールに向けてひとつにまとまってゆく展開にはさわやかな読後感がありました。

わが家は祇園の拝み屋さん (角川文庫)

わが家は祇園の拝み屋さん (角川文庫)

 

 「京都寺町三条のホームズ」(双葉文庫)シリーズも好調な望月麻衣さんの新シリーズ。とある理由から中学の終わりから不登校になってしまっていた16歳の小春が、京都に住む祖母・吉乃の誘いで祇園和雑貨店「さくら庵」で住み込みの手伝いをすることになる物語。和菓子職人の叔父・宗次朗やはとこの澪人、不思議な依頼を受ける吉乃ら優しい人々と過ごす日々。様々な人との出会いがあったり依頼を一緒に手伝ったりして過ごすうちに、自ら立ち直るきっかけを掴むことができて良かったなあと思えました。著者さんらしい京都周辺の描写も多く、のんびりとした優しい物語の雰囲気はとても好みです。17年1月に4巻刊行予定。

マツリカ・マジョルカ (角川文庫)

マツリカ・マジョルカ (角川文庫)

 

冴えない高校生柴山が雑居ビルで一日中望遠鏡で観察している謎の女子高生マツリカと出会い、徐々に変わっていく物語。マツリカの理不尽な無茶ぶりに振り回されながらも、クールでミステリアスな彼女が気になって仕方ない柴山は、交流を通じて快活な同級生小西さんと絡むようになったり、目を背けていた辛い事実に向きあうようになったり、彼女が不器用なだけで一種のリハビリだったんですよね。柴山は上手く話せないのに太腿注視し過ぎとか、妙にリアルな太腿描写もあったりしますが、安楽椅子探偵的な謎解きもあったりで独特な世界観が魅力です。続巻は「マツリカ・マハリタ」。

つめたい転校生 (角川文庫)

つめたい転校生 (角川文庫)

 

 気になる彼の正体は殺し屋?倉庫から突然消えた転校生、自分の身の回りで起きる不審死など、人でないものとの切ない出会いを描く連作短編集。ミステリ要素も交えつつ、人でないものとの出会いや交流、別れが読みやすいテンポの良い文章で描かれていて、どうしても重くなりがちなテーマで意外な視点を提供したり、ほっこりするようなテイストで描かれた作品もあったのはわりと新鮮でした。ハッキリとした結末を提示するばかりでなく、読者の想像に任せるようなスタンスもまた味わいのある読後感に繋がっていて、これはこれでなかなか良かったですね。

山内くんの呪禁の夏。 (角川ホラー文庫)

山内くんの呪禁の夏。 (角川ホラー文庫)

 

 生まれもっての災難体質を持つ小学六年生の山内くん。彼の住むアパートが火事で焼け父の実家に戻ったことで、昔彼にお守りをくれた不思議な子・紺と再会する物語。紺によってこの世ならぬものが見える目にされてしまった山内くん。久しぶりに訪れた父の実家がある田舎の特殊な雰囲気と、未解決なままの連続神隠し事件。そして紺や仲間たちと一緒に次々奇妙な事件に遭遇する中で、徐々に明らかになる山内くんを取り巻く因縁。彼らの友情なのか淡い恋心なのかまだ判別がつかない想いは、その因縁とも複雑に絡んでいきそうで楽しみですね。現在2巻まで刊行。

僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)

僕とモナミと、春に会う (幻冬舎文庫)

 

 「ホーンテッド・キャンパス」(角川ホラー文庫)シリーズでおなじみの櫛木理宇さんの新シリーズ。人と話すことが大の苦手で毎週水曜日に原因不明の熱に悩まされている高校生の翼。病院の帰り道に偶然立ち寄った奇妙なペットショップで不思議な猫と出会い、家で飼うことになる物語。彼だけには別のものに見える不思議な猫・モナミとの出会いが転機となって、自身のわだかまりを解消しいろいろなものへの見る目が変わっていったり、お店でのバイトで同じようなお客と関わって一緒にその不安を解消したりで、その世界が少しずつ広がってゆくことを実感する物語は、とても読みやすくて良かったなと思える読後感でした。続刊を読んでみたい作品ですね。

 「かくりよの宿飯」「浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。」 (富士見L文庫)シリーズの友麻碧の新シリーズ。複雑な家庭事情のために孤独な生活を送る女子大生・千歳。彼女が二十歳の誕生日に神社の鳥居を越え「千国」という異界に迷い込み、仙人薬師・零に拾われ彼の弟子として働くことになる物語。日本人が初代国王となって建国したどこか日本に似たところがある国「千国」。優しい人たちにも恵まれて新天地で生きてゆくことを決心した千歳が、王国の後継者争いに巻き込まれながらも自分らしさを取り戻し見出してゆく物語は、いかにも著者さんらしい美味しいご飯描写もあったりで、既存作とうまく差別化してシリーズ化してもらえたら嬉しいなと思いました。

霊感検定 (講談社文庫)

霊感検定 (講談社文庫)

 

 「記憶屋」(角川ホラー文庫)の織守きょうやさんによるシリーズ。バイト帰りに同級生の羽鳥空と印象的な出会いを果たした転校生の修司。彼女と再会した図書室で風変わりな司書・馬渡の心霊現象研究会の活動に巻き込まれてゆく青春ホラー。霊の想いに寄り添うちょっと変わった女の子・空と彼女を見守る幼馴染・晴臣。彼ににらまれながらも空とのやりとりを貴重に思う修司。仲間と解決する霊絡みのトラブルは切なかったり重かったりもしましたが、それ以上に彼らの優しい想いがつまった甘酸っぱい青春している雰囲気をたっぷりと味わえました。登場人物も魅力的でページの割にはとても読みやすいです。現在2巻まで刊行。

 長らく空き家だった川越の片隅に佇む印刷所・三日月堂。そこにかつて亡くなった店主の孫娘・弓子が住むことになり、昔ながらの活版印刷で人との繋がりを解きほぐしてゆく物語。近しい人との関係に迷いを抱える登場人物たちが、身近な人の繋がりから知る営業を再開した三日月堂の存在。物静かで真摯な弓子さんと一緒に印刷するものを考えてゆくうちに、悩みにもきちんと向き合えるようになってゆく展開は、失われた活版印刷の良さを思い出させてくれるだけでなく、作られた印刷物も悩める人の想いに寄り添っていて、とても素敵な物語だと思いました。

神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん (双葉文庫)

神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん (双葉文庫)

 

 亡き祖父に譲られたアンティークショップを継ぐために、仕事を辞めて東京から神戸に移り住んだ高橋寛人が、お店を間借りしている修理職人の後野茉莉と出会う物語。何でもパソコンで調べる古い物に全く興味のない寛人と、物に宿る想いを大切にしてどんなものでも修理してしまう茉莉。そんな一見噛み合わなそうな二人が、抱えていた過去に決着をつけたり、亡き祖父・万の縁から多くの人たちと知り合ったりしながら、大切な居場所で過ごす家族のような存在として、共に過ごす時間や大切な想いを共有するようになってゆく物語はなかなか良かったですね。現在2巻まで刊行。

あの日の花火を君ともう一度 (双葉文庫)

あの日の花火を君ともう一度 (双葉文庫)

 

 中3の夏休み。幼馴染の林田律紀と付き合い始めた大柴美緒が、書いていた日記に自分の筆跡で律紀の親友・高梨桐哉と付き合っているという見覚えのない記述を見つける物語。2人で花火を見た夜、交通事故に遭って帰らぬ人となった律紀。悲しみ暮れる美緒を隣で励まし続けた桐哉。そして新たな関係が育まれてゆく中で唐突に気付くあの日記の真実。今ある幸せと抱えていた後悔に葛藤する美緒が下した決断は尊いものでしたけど、その代償として突きつけられた彼女の大きな喪失感を誰も知らないというほろ苦い結末が、とても切なくて印象的な物語でした。

 「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫)」の友井羊による新作。「吃音」を抱える高校生菓奈が、密かに好意を寄せるスイーツ男子の真雪や「保健室の眠り姫」悠姫子と知り合い、スイーツ絡みの事件を解決する連作ミステリ。お喋りは苦手で自信はなくても難事件をひらめきで解決してゆく菓奈。時々加減が分からなくなる彼女にとってうまくフォローしてくれる真雪や悠姫子、事件を通じて理解を深めてゆく友人たちの存在はかけがえのないもので、彼女たちの繊細な心理描写や美味しそうなお菓子の数々を読むと続巻に期待したくなりますね。おまけ話で後輩からはそう見えるんだなーと少しだけ意外な気持ちになりました。

道然寺さんの双子探偵 (朝日文庫)

道然寺さんの双子探偵 (朝日文庫)

 

珈琲店タレーランの事件簿 (宝島社文庫)」の岡崎琢磨による新作。福岡県の道然寺に住む性格が正反対な中学生の双子。副住職・窪山一海にもたらされる檀家さん絡みの数々の謎に、双子がそれぞれの論理で事件の謎をに挑む物語。悪意で物事を考えるレンと性善説で物事を考えるラン。軒下に捨てられ道然寺で育てられた双子の二人が、消えた香典や飴屋の娘の憂鬱、水子供養や夢に出てきた女性など、正反対のアプローチから挑む二人の謎解きはなかなか面白かったです。住職や遠縁でお手伝いのみずきさんもなかなかいい味を出していて、彼女や双子にいじられっぱなしの一海視点から語られる物語、シリーズ化を期待します。

 「薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)」の日向夏さんによる新作。古都にある玉繭神社の分社で布を織りつつ、大学の非常勤講師として機織りを教える絹子。そんな彼女が教え子たちとの交流から事件に巻き込まれゆく謎解き噺。田舎の辺鄙な村から出てきて社務所を管理する大家や美味しい料理を作ってくれるクロやシロと住んでいる、特殊体質でやたらと食いしん坊な絹子。彼女の周囲で連鎖的に発生するホラーめいた事件や、徐々に明らかになってゆく田舎での彼女の過去には強いインパクトがあって、複雑な因縁を背景に抱えている大家と絹子の関係も今後が気になるところですね。続編あるようならまた読んでみたいです。

日曜は憧れの国 (創元推理文庫)

日曜は憧れの国 (創元推理文庫)

 

 内気な千鶴、明るく子供っぽい桃、ちゃっかりして現金な真紀、堅物な優等生公子の四人が四谷のカルチャーセンターの講座で出会い、そこで遭遇する様々な事件の謎に挑む青春ミステリ。ひょんなことから一緒に講座を受けることになった性格も学校もばらばらな四人がそれぞれ主人公役となって連作短編を構成する形式。現状に悩みを抱えていて、他の子に複雑な感情を抱いたり長所も短所もある多感で繊細な女の子たちが、講座を通じた交流や謎解きで協力や衝突しながら、それがきちんと向き合ったり成長に繋がってゆく展開はとても良かったと思いました。

放課後スプリング・トレイン (創元推理文庫)

放課後スプリング・トレイン (創元推理文庫)

 

 福岡市内の高校に通う吉野が、親友・朝名の年上の彼氏を紹介された時に同席していた大学院生・飛木と知り合い、二人で周囲の不思議な出来事を解決してゆく青春ミステリ。主人公や親友の朝名は等身大の高校生らしい視点で考えるタイプで、彼女たちの周囲で起こる人が死なない謎解きが中心。探偵役飛木との距離感含めて人物の掘り下げはこれからで、落ち着いた雰囲気のストーリー展開はしっかりしていましたが、昨今の流行りを期待して読むとやや好みが分かれそうな印象ですね。最後に意外な謎解きもあったりで、続きが出るならまた読んでみたいです。

虹を待つ彼女

虹を待つ彼女

 

 優秀で予想できてしまう限界に虚しさを覚えていた研究者・工藤が、死者を人工知能化するプロジェクトに参加して、衝撃的な自殺でカルト的な人気のゲームクリエイター・水科晴を知る物語。過去の事件や水科晴のことを調べてゆくうちに、彼女に共鳴し惹かれてゆく工藤。重要なキーパーソン「雨」の存在と調査中止を警告する謎の脅迫。我が身が危険に晒されながらも諦めず、晴を人工知能で再現することに妄執する工藤の姿には鬼気迫るものがありましたが、真相を知った彼のほろ苦くも粋な決断は少なからず心に響くものがありました。

FEED

FEED

 

 家出したふたりの少女が出会ったのは最底辺のシェアハウス。お互い親友と感じていた綾希と眞美が、些細な行き違いから歩む道が分岐してしまう物語。生まれや育ちは違えども、家出して行き場のない存在としてたまたま同室になった二人。確かに綾希の方が考えて慎重に行動してはいましたが、転落してゆく眞美と転機が訪れた綾希の明暗を分けたのは、出会いや巡り合わせといった運の要素も大きかったですね。残酷なまでに差がついた二人の対比描写は辛いものがありましたが、立場を違えても親友としての絆は忘れなかった二人に微かな救いを感じました。

石黒くんに春は来ない

石黒くんに春は来ない

 

 典型的なスクールカーストが形成されたクラスで起こった、スキー教室における石黒君の遭難事件。平穏なようでいて歪な日常を取り戻した生徒たちに突然、意識不明の重体だった石黒君からメッセージが届く学園サスペンス。気ままに君臨するグループに事なかれの主義の教師、それによって生じる不登校や少しずつ溜まってゆく不満。それを巧みに扇動するものが現れることでガラリと様相が変わる狭い社会における群集心理の怖さが生々しかったです。途中から傍観者だった主人公恵美でしたけど、一度作られてしまった流れをどうにかするのは難しいですね。

 人前には一切姿を見せない前衛芸術家・川田無名。唯一繋がりがあったギャラリー経営者永井唯子が殺され、アシスタントの佐和子が犯人や無明の居場所、最後に残された作品の謎を探るべく動き出す物語。唯子の突然の死によってその後始末に奔走する佐和子、事件後も見つからないまま生死すら不明の無名、彼が1959年に描いた作品が今売りに出される意味。殺人事件自体の真相は陳腐でしたが、新しい事実が判明する度にガラリと変わってゆく登場人物たちの印象、作中で語られる芸術家のありようや作品に対する考え方はとても面白かったと思いました。

こちら文学少女になります

こちら文学少女になります

 

 文芸担当を希望する入社一年目のマンガを読まないザ・文学少女山田友梨が配属されたのはなんと青年漫画誌。そんな彼女の言動が次々と大きな騒動を呼び起こすお仕事小説。大物作家を激怒させて長寿連載がまさかの終了、童貞が主人公のエッチ漫画の人気は急降下、雑誌を牽引する大ヒット作の作家とはなかなか会えない状況。山田も最初は口ばかり達者で杓子定規な上に、少しばかり配慮が足りない面もありましたが、見方を変えればこれまで分からなかった様々な事情も見えてきたりで、悪戦苦闘しながら乗り越えて成長してゆく姿はなかなか良かったです。

ふたりの文化祭

ふたりの文化祭

 

 「わたしの恋人 (角川文庫)」「ぼくの嘘 (角川文庫)」の関連作品。スポーツ万能でイケメンの九條潤と、同じクラスで彼の小さい頃を知っていて今は少し苦手な図書委員・八王寺あや。文化祭を間近に控えて接点ができていく二人の視点で語られる物語。自覚があって周囲の視線を意識した行動が多い潤、本を読むこと自分の居場所に敏感なあやという文化祭の準備で接点ができるたびに苦手意識を持つ性格も考え方も違う二人が、自分の気持ちに素直に向き合ってみたら何か共感があるのは面白いですね。前作の流れからするとそうなるだろうなあと思った結末でしたが、潤とあやが今後どうなってゆくのかまた読んでみたいです。

よっつ屋根の下

よっつ屋根の下

 

 勤め先の大病院の不祥事隠蔽を批判し、犬吠の地方病院に飛ばされた父。それに半ば反抗心でついて行った息子とついていかなかった母・そして娘。それぞれの心情が綴られてゆくひとつの家族の物語。不安を抱えながら引っ越した息子から始まり、明らかになってゆく家族それぞれの想い。最初は冷たいと感じた母にも複雑な過去があったりで、読み進めてゆくうちにそれぞれの印象も大分違う印象に上書きされていきますね。あるべき姿に落ち着いてゆく結末には少し寂しい気持ちもありましたが、これはこれで絆を感じる家族のひとつの形なのだと思えました。

木もれ日を縫う

木もれ日を縫う

 

 田舎の生活を厭い東京に出てきてから故郷とは疎遠だったOLの小峰紬。そんな彼女の前に突然一年半前に失踪していた母親を名乗る女性が現れ戸惑いを覚える物語。顔も似ていて過去も知っているのにどうしても母とは思えない紬。母を連れてきた民俗学者柳川や疎遠だった二人の姉たちとのやりとりが地方出身者にはザクザク刺さる内容でしたが(苦笑)、深い思いを抱えつつも山姥になったと語る母の働きかけによって、三姉妹が過去のわだかまりや今の困難な状況を乗り越えて前に進むきっかけを得てゆく、感じるところの多かった優しく切ない物語でした。

小説家の姉と

小説家の姉と

 

 大学在学中に突如作家デビューした5歳年上の姉・美笑。一人暮らしを始めた彼女から「一緒に住んでほしい」と頼まれた大学生の弟・朗人が同居の真意について考え始める家族と友情の物語。堅実でしっかりとした考え方をする姉、冷静で一歩引いた見方をする弟・朗人とその彼女・清香、朗人の幼馴染・千葉。ふとしたきっかけから始まった四人ののんびりとした日常。転機から明らかになってゆく同居の真相にはなるほどなあと思いましたが、気の置けない四人の距離感や実家との関係に繊細な気遣いが感じられる、最後まで心地よく読めた素敵な物語でした。

 

以上、これでこれまで予定していた四本全てアップできました。ただ2016年スタートという前提でエントリーを作ったため、ライト文芸などは各レーベルを牽引している主力シリーズはあまり紹介できなかたので、機会があったら追加でその辺もまた紹介していきたいと思います。

 

ではまた。

【年末企画その3】独断と偏見で選ぶ16年にスタートしたオススメライト文芸

 

というわけで勢いで更新している感もありますが、立て続けの年末企画第三弾ライト文芸編です(過去の更新分は以下2つ)

最近はライト文芸もレーベルが増え過ぎて何でもかんでも読めるという感じではなくなりつつありますが、それでも今年も面白い本がたくさん出ていました。残念ながら全ては紹介しきれませんが、紹介した中に興味ありそうな本があったら是非読んでみてください。

小説の神様 (講談社タイガ)

小説の神様 (講談社タイガ)

 

  作家としてデビューするも酷評されて書く自信を失っていた高校生・一也が人気作家の転校生・小余綾詩凪と出会い、彼女との小説合作を提案される青春小説。重い病気の妹のためにと思いながら、厳しい評価にネガティブになりがちな一也と、小説の力を信じていて彼に辛辣な詩凪。書く楽しさを思い出してゆく一也に突きつけられた残酷な現実はとても苦しかったですが、そんな彼が完璧に見えていた詩凪の苦しみに気づき、再び向きあおうと決意する姿は応援したくなります。作品を書くことに対するとても繊細で、強い想いを感じられる素晴らしい作品した。

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

 

 子供の頃から相撲漬けの生活を送ってきた文季が、両親の交通事故死で引き取られた先は相撲好きのカエルの神様が崇められている村で、知恵と知識を見込まれ外来種との相撲勝負を手助けすることになる物語。村を治める一族の娘・真夏と出会い、思いとは裏腹に相撲や村の事情にがっつり関わってゆく文季の洞察力や覚悟には年相応に思えないものもありましたけど、一方でそんな彼の自分に向けられる評価や想いには鈍感だったりするギャップや、相撲勝負にも意外な背景があったことに納得したりで、爽やかな読後感を堪能できる素晴らしい青春小説でした。

カタナなでしこ (講談社タイガ)

カタナなでしこ (講談社タイガ)

 

 女子高生の千鶴が駆りだされた祖父の形見分けの蔵整理で、夢に見た一振りの刀身だけの日本刀と出会い、同級生たちと無くなった「刀の拵え」作りに挑戦する物語。4人の女子高生がそれぞれクオーターな外見で日本人であることだったり、しっくりしない家族関係や将来のこと、地味であることなどの悩みを抱えながらも、挑戦を通じて様々な人と出会ったり経験を重ねて、これまで気づいていなかったことに気づいたり、自分らしさを見出したり、複雑な想いを乗り越えて試行錯誤する姿はとても心に響きました。読みやすく読後感も爽やかな青春小説でした。

七日目は夏への扉 (講談社タイガ)

七日目は夏への扉 (講談社タイガ)

 

 妙にリアルな死亡事故現場を夢だと思っていた朱音の元にもたらされた、学生時代の恋人・森野の訃報。その死の真相を探るうちに一週間の時系列がどんどん崩れてゆく物語。朱音が何かに直面するたび意識が途切れ、気づくと曜日が前後する一週間。欠けたピースが次第に埋まってゆく展開で突きつけられる理不尽な呪い。一見サバサバしている朱音は、一方で大切な人たちのためならいくらでも頑張れる人で、繰り返さないために強引に運命を変えてしまうパワーには苦笑い。それで全てが解決するわけではないですが、生きているって大事なことなんですよね。

 言葉の真偽・虚実を瞬時に判別できてしまう本多唯花。大学で心理学を学ぶ彼女のもとに旧家の跡取り息子、文渡英佐から依頼が持ち込まれる物語。特異な障害に起因する唯花の卓越した「嘘」を見抜く論理的鑑定とそれをサポートする晴彦。閉じられた文渡村で起こった殺人事件と文渡一族の複雑な関係。謎解きのアプローチはやや難解な感がありましたが、ストーリー自体はわりとあっさりめで、研究分野以外はあまり興味なさ気な唯花が意外な部分に反応したり、意外な方向に収束してゆく展開は面白かったです。17年1月に2巻目が刊行予定。

 新米新聞記者の英田紺が旧家の蔵で見つかった呪いの箱を始末してほしいという依頼を受け、呪いの解明のため神楽坂の箱屋敷に住む箱娘・うららを訪れる物語。大正という世の中が少しずつ変わりつつある時代を舞台に、自らの経験もあって窮屈な生き方をせねばならない女性たちのために奮闘する紺と、自らもワケありの縛られた境遇にありながらも紺を助ける謎の多い箱娘・うららの関係や、登場した女性たちもまた矜持を持って生きる姿が印象的でした。まだうららの境遇含めて謎も多いですし、姿を変えて奮闘する紺の行く末も気になるので続刊に期待。 

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

 

 2025年の夏休み。双子の高校生・明日子と日々人は突然いとことの同居を父から告げられ、やって来た今日子が実は長い眠りから目覚めた三十年前の女子高生だったという物語。時代のギャップに戸惑いながら徐々に双子と打ち解けてゆく今日子の存在は、バラバラになっていた家族を繋ぐきっかけにもなって、過去との繋がりを感じるがゆえにもう取り戻せないことを痛感する彼女と、どうにもならない現実に直面した双子の対照的な選択、昔の想い人の回想がとても印象に残りました。懐かしい気持ちと切ない気持ちが入り混じる素敵なひと夏の物語ですね。

入社以来経理一筋、きっちりとした仕事ぶりで評価される森若沙名子27歳。過剰なものも足りないものもないことを理想とする生活を送る彼女が、社内外で次々と起こる経理絡みの問題に巻き込まれてゆく物語。特に噂好きでもなく、社内の複雑な人間関係からどこか一歩引いた位置にいる彼女。怖いと誤解されてしまうこともあるけれど、やや不器用なだけできちんと相手を気遣える優しさを持っていて、幸せになりたくないわけじゃないんですよね。実はみんなに慕われていて、そんな彼女がいいと言ってくれる同僚の存在に気づく結末はとても良かったです。

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

 

 イラストの仕事だけでは食べていけず、夢破れて生きるために親に内緒で地元タウン誌を発行する会社の事務員として採用された夏実。その個性的な面々が集うブラック企業ぶりを描くお仕事小説。周囲の同僚がだらしない人たちで振り回されたり、仕事をスムーズに動かすために始発で行って仕事とか考えるあたりが、すでにもう重症だなと思わなくもないですけど、それはそれとして社会人として仕事をしっかりこなす夏実だからこそ周囲から信頼されるのも納得ですね。大変なことに巻き込まれましたが、林さんとの今後が気になるので続刊に期待したいです。

マスカレード・オン・アイス (集英社オレンジ文庫)

マスカレード・オン・アイス (集英社オレンジ文庫)

 

 若手フィギュアスケーターとして将来を嘱望されながらも行き詰まっていた女子高生・白井愛が、ふとしたきっかけからかつて約束をした友人・ユーリに会いに行く物語。経済的な事情にも直面してスケートを続けることすら難しくなりつつある中、狭い世界から飛び出して初めて分かったこと、これまで知り得なかったユーリの複雑な事情。多くの出会いやユーリとの再会によってスケートへの想いを再確認し、多くの刺激を受け自分の良さに気づき、自信を取り戻していく展開はとても良かったです。

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

 

 小料理屋「ゆきうさぎ」を営む大樹が亡き祖母がなぜか教えてくれなかった豚の角煮を研究し、碧も亡き母と「ゆきうさぎ」の意外な繋がりを知る第二弾。お店で作られる料理がおいしそうなのは相変わらずですが、今回も大樹の祖母の豚の角煮のレシピ話や、碧の母が密かに「ゆきうさぎ」に来たことを隠していた理由といった優しいエピソードがあったり、過去のゆきうさぎを知る人も再び常連となって、武蔵の他にも虎次郎のような猫の登場や、神社のマサさんが戻ってきたりとますます賑やかになってきましたね。緩やかな日常を描く物語です。現在2巻まで刊行。

バスケの神様 揉めない部活のはじめ方 (集英社オレンジ文庫)

バスケの神様 揉めない部活のはじめ方 (集英社オレンジ文庫)

 

 中学のバスケ部で一生懸命だったがゆえに空回りし、孤立した苦い過去を持つ郁。バスケは続けないつもりで知り合いのいない高校に進学した彼が、中学時代の彼を知るバスケ部の部長に勧誘される物語。これまでなかった期待に戸惑いながらも、少しずつバスケ部に居場所を見出してゆく郁。因縁を抱えた以前の仲間との対戦があったり、バスケが大好きで熱血だと思っていた部長がバスケ部を立ち上げた理由が思わぬものだったりで、周囲を信じ切れずに心が揺れるものの、それを乗り越えて一丸となってゆく展開はベタながら清々しい青春小説だと思いました。

ひっぱたけ!  ~茨城県立利根南高校ソフトテニス部~ (集英社オレンジ文庫)

ひっぱたけ! ~茨城県立利根南高校ソフトテニス部~ (集英社オレンジ文庫)

 

 部活漬けだったソフトテニスの強豪中学から、テニス部がない利根南高に進学した夏希と花綾。彼女たちが密かに存在する部員二人だけの女子ソフトテニス部と巡り合う青春小説。事情あってテニスを辞めた二人が、二人だけの部活を続けてきた先輩たちの想いを知り、新たなアプローチから再びテニスに向き合うようになってゆく物語で、よくあるテニスにガチで取り組むような展開ではなかったですが、人間関係の機微が丁寧に描かれていたり、ソフトテニス独特の制約も描かれていて意外と新鮮な気持ちで楽しめました。続巻あるならまた読んでみたいですね。

カスミとオボロ 大正百鬼夜行物語 (集英社オレンジ文庫)

カスミとオボロ 大正百鬼夜行物語 (集英社オレンジ文庫)

 

 大正時代。退屈な日常にうんざりしていた坂之上伯爵家の令嬢・香澄が、代々祀ってきた悪路王に朧という名を与えて主従関係を結んでしまい、二人で集に起こるあやかしがらみの事件を解決する物語。いいところの令嬢なはずの香澄がなかなかいい性格をしていて、そんな彼女と極悪な鬼であるはずの朧が主従関係を組むと、わりとまともに見えてしまう不思議(苦笑)確かに華族の人々を舞台にするといかにも作中の如く魑魅魍魎がうようよしてそうな感じではあります。香澄と朧の二人の関係にも複雑な因縁あるようで、雰囲気も好きですしシリーズ化に期待。

浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 (富士見L文庫)

浅草鬼嫁日記 あやかし夫婦は今世こそ幸せになりたい。 (富士見L文庫)

 

 浅草に住み地元グルメをこよなく愛する訳あり女子高生・茨木真紀。人間なのに日々あやかし関連の厄介ごとに首を突っ込み、前世で夫だった天酒馨たちを振り回すほのぼのあやかしラブコメディ。前世が茨木童子だった真紀と前世で夫の酒天童子だった馨。生まれ変わって幸運にもまた巡り会えた二人が繰り出す以心伝心の夫婦漫才と、巻き込まれるあやかし絡みの騒動で構成されるストーリーで、姐さん気質の心優しい真紀と何だかんだ言いながら彼女のために奔走する馨が安心安定の夫婦っぷりでした(まだ夫婦じゃないけどw)続刊期待の新シリーズですね。

 ダメダメな一人暮らし生活を送る大学生の栗坂まもりが、ふとしたきっかけからベランダで植物を育てては食すお隣のイケメン園芸男子・亜潟葉二の真の姿を知り、一緒に育てるようになる物語。一人暮らしにありがちなトラブルに巻き込まれて葉ニに救われるまもり。育てたものを一緒に食べることで育まれてゆく二人の交流と、そんな葉二に変わるきっかけを与えた千鶴との再会。不安を抱えながらも自分の思いに正直になって、不器用なりに決意したまもりの奮闘ぶりや、変わってゆく葉ニのまもりを呼ぶ名前や二人の繊細な距離感がなかなかいいですね。現在2巻まで刊行。

きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

 

 物をバラバラにすることに対して人並み以上の情熱を持つ異質な少女・天使玲夏と、彼女の幼馴染で何よりも平穏を望む少年・結城友紀が総合パズル研究同好会へと入部し、同好会のメンバーと“アドレス”と呼ばれる犯人による、バラバラ連続殺人事件の謎を追う物語。独特な行動基準で動く彼女をきちんと理解してフォローしている友紀は、口ではいろいろ言ってもお互いにかけがえのない存在なんだろうなと(苦笑)一見サイコさんな玲夏も友人には優しくて、ささやかな目標を手帳に書いてる一面は可愛いかったです。続編あるならまた読んでみたいですね。

風見夜子の死体見聞 (富士見L文庫)

風見夜子の死体見聞 (富士見L文庫)

 

 事故や事件の現場に必ず居合わせることで「死神」とあだ名される女子高生・風見夜子。数年来絶縁状態だった夜子に死ぬところを救われた幼馴染の凪野陽太が、過剰な人助けに巻き込まれてゆく青春ミステリ。死ぬ予定の死体が見えてしまう力を持ち「あなた死ぬわよ」と強引にでも回避しようとする夜子。傍若無人な彼女に恩に着せられ脅され人助けを手伝うようになる凪野とのテンポの良い応酬が楽しくてじわじわ来ますね(苦笑)素直じゃない不器用な彼女の理解者が少しずつ増えてゆく一方で宿敵の存在も明らかになり、是非続編を期待したい作品ですね。

 問題を抱える実家から抜け出し大学で一人暮らしを始めた成島拓海が、懇親会で出会った同級生橋本秋帆によって競技ダンス部に勧誘される物語。高身長の秋帆に釣り合う存在として190cmの大柄なポテンシャルを見込まれ、とりあえず夏までと嫌々ながら始めた拓海。物語はそんな彼が多くの人との出会いや秋帆のことを知ってゆくうちに競技ダンスの楽しさに目覚めてゆく王道展開で、パートナーと向き合う大切さだけでなく、チーム競技でもある競技ダンスの面白さがひしひしと伝わってくる爽やかな青春小説でした。是非続刊出ることを期待しています。

鎌倉おやつ処の死に神 (富士見L文庫)

鎌倉おやつ処の死に神 (富士見L文庫)

 

 鎌倉の『おやつ処みなと』を舞台に、妹・和花の仕事を手伝う売れない小説家・柚琉が、死に神犀川さんと共に亡き祖父を訪ねてくる依頼人に対応する物語。絶品アイスの作り手で辛党なちょっと変わった犀川さんは見た目含めてとてもインパクトがありましたが、和花や腐れ縁の深町にも自らが抱える秘密を明かしていない柚琉は、一方で犀川さんですら気づくことにも鈍感な上にいろいろこじらせていたりで、いろいろ苦労していそうな深町につい同情してしまいました(苦笑)まだ謎がありそうな物語の行く末も気になりますね。現在2巻まで刊行。

青の数学 (新潮文庫nex)

青の数学 (新潮文庫nex)

 

数学オリンピックを制した女子高生・京香凜と、雪の日に偶然出会った高校生の栢山。「数学って、何?」と問いかける彼女に意識され、それに触発されるように栢山もまた数学にのめり込んでゆく青春小説。若き数学者が集うネット上の決闘空間「E2」。そこで他校のライバルたちと出会い競う中で、香凜に対する答えを探す栢山。立ち位置が違う友人たちや考え方が異なるライバルたちと対比させながら、理由も分からないままひたむきに数学に向き合い続ける栢山の姿はとてもまっすぐで、それもまた青春のひとつの形なのかなと思えますね。現在2巻まで刊行。

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

 

 大学受験を間近に控えた三年生の濱田清澄が、全校集会で一年生の蔵本玻璃がいじめに遭っているのを目撃して割って入り、強烈な出会いを果たす物語。密かにヒーローに憧れ、余裕が無いはずなのに玻璃のためについつい奔走してしまう清澄。自分を救ってくれた清澄に好意を持ちながらも、どこか不穏な兆候を感じさせる玻璃。このままでは終わらない雰囲気が収束してゆく中での終盤怒涛の急展開に著者さんらしさがよく出ていましたが、波乱万丈なりにそこそこ幸せだったのかなと感じる二人のその後が描かれたエピローグは、決して悪くない読後感でした。

ハルコナ (新潮文庫nex)

ハルコナ (新潮文庫nex)

 

 数十キロにわたり花粉を消滅させるかわりに、自分の身体には猛毒な特異体質の少女・ハルコ。5年前隣の家に引っ越してきてからずっと彼女をサポートする遠夜が、クラスメートとともに事件に巻き込まれてゆく物語。防護スーツを着て介助なしには外出もできないハルコ。そんな彼女とずっと共にいることだけを願う遠夜が巻き込まれてゆく特異体質に対する抗議行動。おかしいと感じながらもヒートアップする構図に不安を煽られましたが、覚悟を決めた遠夜のほろ苦い決断が、本当に大切なものだけは見事守り切ったことにどこか救われた気分になりました。

向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)

向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)

 

 ストーカー対策員原向日葵19歳。実は元ストーカーの過去を持つ彼女が、接近禁止を言い渡された元恋人を殺人現場で見かけてしまい、再び運命が動き出すほろ苦青春ミステリー。容疑者とされた彼の無実を何とか証明したいと思うものの、すれ違いの結果として接近禁止になった過去から行動を制限されている向日葵。頭では理解していても強い想いに揺れる彼女の複雑な葛藤が痛いほど伝わってきて、その自らの思考に向き合うことが事件解決の伏線に繋がってゆく皮肉な結末でしたけど、前に進むことを決意した彼女の幸せを願わずにはいられませんでした。

 進学で金沢から京都へ引っ越してきた双子の兄妹・直史とまどかが、あやかしと人間との間を取り持つ神・ククリ姫と出会い、あやかしを語って命を与える「語り手」になるよう依頼される物語。幼い頃にあった出会いと約束。物語を綴る直史と美味しいものに目がなくて絵心もあるまどか。二人が訪れてくるあやかしたちのことを知り、その想いを汲んで綴られてゆく物語はとても優しくて、お礼としてあやかしたちと食べるおばんざいはみんな美味しそうで、うさぎになってしまうククリ姫も可愛かったです(苦笑)とても素敵なお話だったので是非続編を期待。

 京都・姉小路通沿いにある仕出し&弁当屋「ちどり亭」。店主の花柚さんと彼女に料理を教わるバイトの大学生・彗が、お弁当を作りながら周囲の人たちと交流してゆく物語。家付き娘で毎週お見合いをして人脈を広げている残念な花柚さんと、同級生に密かに恋する彗の二人で読んでいるだけでも美味しそうな料理を作りながら、お弁当を作る手助けをしたり、一緒に花柚さんの師匠を看取ったり、そして花柚さんの元婚約者との切ない関係だったり、不器用でなかなか素直になれない人たちの一途でくすぐったい気分になる優しい思いに満ちた素敵な物語でした。

別居中の妻を事故で亡くし、高校生の一人娘・美嘉との関係は冷えきったままの不動産屋社長・幸一郎。そんな時3人の思い出の動物園が閉園危機にあると知り、美嘉の笑顔を取り戻すため何の知識もないまま動物園再建を決意する物語。最初は家族のためだったはずが、いつの間にか仕事一辺倒の状況にすれ違ってしまった関係。一縷の望みを託し動物園再建へ奔走してしまう幸一郎は本当に不器用だと思いましたが、その苦難にも諦めず立ち向かう姿に周囲も協力してくれて、どうにか修復に向けた一歩を踏み出せたことにとても温かい気持ちになれました。 

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

 

 突然見知らぬ男に不登校の女子高生・佐薙ひじりの面倒を見るよう依頼された、失業中の青年・高坂賢吾。リハビリと称して一緒に過ごす時間を作るようになる二人が意外な事実を突きつけられる物語。母の死をきっかけに極度な潔癖症となり生きることに絶望している高坂と、寄生虫に興味を持つ視線恐怖症でヘッドフォンを手放せないひじり。共に時間を過ごす中で孤独で不器用な二人が惹かれ合ってゆく想いを、こういう形でしか証明できないというのは切ないですね。二人が最後まで寄り添える可能性を信じて、その幸せを願わずにはいられませんでした。 

 高校1年生の望月譲はいつの間にか自分が入学式の日に戻っていることに気がつく。同じ境遇の生徒会長から学校の一定人数がループしていることを知らされた譲が、図書室で出会った少女・桜庭のことを気になり始める物語。出ていく方法は、ループの中で誰かと恋人になること。読書家の譲に書いている小説の感想を聞きにきた桜庭と、ループに加わってきた片想いの相手・三瀬。二人の間で揺れて自分の想いがどこにあるのか分からなくなり戸惑う譲でしたけど、臆病で不器用なだけの彼女の想いにきちんと気づいてあげられて良かったです。次回作にも期待。

 交通事故に遭い入院していた大学生の明良。退院の日に身に覚えのない彼の彼女だと自己紹介する女の子・一夏に出会う、二人のひと夏の物語。自分は覚えていなくても周囲は明良の彼女と認識している状況。積極的な彼女と共に過ごすうちに徐々に惹かれてゆく明良と、一緒に見上げた星空を取り戻すためさらに踏み込んでゆく一夏。思い出せそうで思い出せなかった真実はとても悲しい出来事でしたけど、不思議な縁と予感によって止まっていた時間も再び動き出し、これまで支えてくれた想いにもようやく気づくことが出来た切ないながらも素敵な物語でした。

 三年にわたる幸せな交際を経て結婚した宗一と瞳。しかし入籍当日に宗一は不幸な事故で死んでしまい、瞳を見守るだけの幽霊のような存在となってしまう物語。自らは彼女を幸せにすることができなくなり、瞳が再び幸せ掴むことをひたすら願う宗一。とはいえ瞳が他の男の人と幸せになっても、一人で生きていくことを選んでも複雑な気持ちになってしまうに違いない状況で、亡き宗一を変わらずに想い続けると決意する瞳の想いもまた切なくて、だからこそ瞳を見守り続けてきた宗一が、彼女のために決断して行動する展開にはついホロリとしてしまいました。

 十年前、離ればなれになるなんて想像もしていなかった時に交わした将来の約束。躓いている登場人物たちがタイムカプセルをきっかけに昔の想いを思い出してゆく連作短編集。十年後掘り起こすはずが、なぜか連絡網のリレーのような形で順繰りに送られる小学校時代のタイムカプセル。それを受け取ったことで彼らが忘れていたり気づいていなかった自らの想いを自覚し、その遭遇した転機や再会が関わった人たちを確実に変えてゆく。そんな登場人物たちの前を向いて変わってゆこうとする足跡が爽やかな読後感に繋がっていると思いました。

 新潟の酒蔵で親と衝突し、東京に出てきたものの行き倒れになりかけていた冴蔵が、恵比寿の片隅で「四季-Shiki-」を営む楓さんに救われ二人で日本酒BARを再開する物語。その出会いは日本酒に詳しい夫が亡くなってから実質的に料理屋状態だった楓にとっても、衝突し家を出てきた冴蔵にとっても転機で、二人が力を合わせて訪れる人達ときちんと向き合って信頼関係を育んでいったことで、それぞれが抱えていたものを乗り越える支えとなる展開はとても良かったです。二人の距離感の変化にも注目です。全2巻。

小さなピアノの調律事務所に就職した幹太が、天才調律師・時子と二人でピアノと音に隠された謎を解き明かしてゆく物語。ピアニストの道を断念し、調律師としても師に遠く及ばないと常にストイックな時子と、経験不足ながらも人懐っこさと優れた耳の良さを持つ幹太が、調律だけでなく依頼人の悩みも共に解決してゆくストーリーで、ピアノや依頼人に真摯に向き合う姿勢や、仕事を通じて成長したり、コンビとして信頼関係を築いてゆく展開はとても良かったですね。いい感じにまとまりましたけど、二人の関係が今後どうなるのかちょっと気になりました。

 同窓会をきっかけに始まった、家のしがらみを乗り越えられず別れてしまった二人が過去と夢とこれからを綴ってゆく往復書簡。別れてから八年が経過して知り合ってから干支一周して三十歳になっても変わらぬ想い。家の仕事を継いだ和颯と家を飛び出しながら夢破れた瀬奈のやりとり。と深く考えずに読んでいてそう思っていたのですが、再びの同窓会であれ?となって、見事に騙されていたことに気づきました(苦笑)それぞれの想いがうまい具合にすれ違いに終わらなくてとても良かったです。

 凶悪な目つきから社内で「殺し屋」と恐れられる龍生。憧れの女性・千紗からお礼のつもりで渡された義理チョコに手違いがあり、舞い上がった龍生が交際を申し込んでしまう勘違いから始まる恋の物語。バレンタインすら残業で余裕のない千紗は、最初とんでもない噂ばかり飛び交う龍生にビビりまくりでしたけど、どこかズレていても素朴で優しい龍生のことを知ってゆくうちにいつのまにか大切な存在になり世界も変わってゆく、そんな不器用な二人の恋が甘くもどかしくて読んでいてニンマリしてしまいました。素敵なハッピーエンドで次回作も楽しみです。

 ふとしたきっかけからコンビニ店員のアルバイトになっていた修司が、同僚からヒーロー製作所でのアルバイトを持ちかけられる物語。いつまでも頭を離れない「なーんの面白味もない人生やったなあ」という病床にある祖父の言葉。些細なきっかけから全てを失ってしまったまさかの転落人生。そんな修司がヒーローが最高の仕事ができるように支える仕事を通じて様々な人と出会いその様々な人生を知り、彼らの言葉に勇気づけられてゆく中で、自らもまた再び前を向いて歩けるようになるきっかけを得る読んでいてとても励まされる物語でした。

ミュース 翡翠の竜使い (メディアワークス文庫)
 

 竜と絆を結ぶ竜使いの故郷・翡翠の里が一夜にして滅びた。ただ一人生き残った少女ミュースは、里を滅ぼした者たちへの復讐を誓い、黒竜のシャグランの封印を解き放って旅に出るファンタジー。里の王であった父や姉を殺した仇としてユージーンを追うミュースと、彼によって解き放たれ美しい青年の姿で現れたシャグラン、長らく彼を封印していた白蛇による旅。姉の婚約者との対決では辛い現実に動揺しましたが、それを乗り越えて見事打ち勝ってみせた彼女には応援したくなるものがありますね。なかなか業の深い因縁を抱えている物語ですが今後に期待。

 

セレクトしてみたら思ったよりも多くなってしまいましたが以上です。残るは「その他一般文庫・単行本編」を更新予定です。よろしくお願いします。