読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

SFが読みたい!ラノベ・ライト文芸+ハヤカワ文庫26選

 なんか皆さんが面白いブログ記事作っていたので自分も便乗して作ってみました(ぇ


SFの範囲はもう議論するのも不毛なので、とりあえずそれっぽい作品を自分の読んだ作品の中から選びました。特に「WORLD END ECONOMiCA」は個人的に大好きな作品なんですが、なかなか推す機会がないのでこの機会に大プッシュしておきます(最近興味深い作品をいろいろ出しているハヤカワ文庫も)。こういうのってあ、これも良かったんだみたいなのが後から出てきて、人の記事見て悔しい思いしたりしますよね(ありがち)。興味を持った作品があったらぜひ手にとって見てください。

WORLD END ECONOMiCA (1) (電撃文庫)
 

 夢を叶えるため株式市場に活路を見出す月生まれ月育ちの家出少年ハルが、ふとしたきっかけから数学の天才少女ハガナと出会い、コンテスト優勝と周囲の人々の危機打開を目指す物語。夢のために孤高だったハルが彼女たちに出会い触発され、自分に自信を持てなかったハガナもハルへの協力をきっかけに変わっていく、そんな不器用な二人の距離感の変化。そんな存在に葛藤しながら、二人が夢やその思いを語れるようになるまでに近づいたからこそ、終盤の喪失感、そして絶望が切なかったです。一度は全て失ってしまったけれど、それを取り度戻すために立ち上がる展開にぐっとくる物語です。全3巻。

ストライクフォール (ガガガ文庫)

ストライクフォール (ガガガ文庫)

 

 代理戦争として発展した宇宙競技ストライクフォール。そんなストライクフォールに魅せられたひとり鷹森雄星が、ストライクシェルに身をつつみ広大な宇宙のフィールドに挑む物語。はるか先を行く若き天才な弟・英俊と雄星を見守る幼馴染・環という定まらない三角関係。雄星に変化をもたらしたアデーレとの出会い。アデーレや英俊との戦いの中からようやく力の片鱗を見出しつつあった雄星が思わぬ事態に遭遇し、あえて無謀な戦いに挑むことを決意する熱くスピード感溢れる展開はとても面白かったです。今後の困難をどう乗り越えてゆくのか期待のシリーズ。現在3巻まで刊行。

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

 

 連合王国より先に人類を宇宙へ到達させるべく、共和国の最高指導者はロケットで人間を軌道上に送り込む計画を発令。実験体として選ばれた吸血鬼の少女・イリナと監視係に任じられた候補生レフの物語。蔑まれる境遇から自由を得るため実験体として志願したイリナ。そんな彼女に最初は戸惑いながらも、共に過ごし訓練するうちに大切な存在として思うようになってゆくレフ。あくまで実験体としてか扱われない彼女の境遇には厳しいものがありましたが、乗り越えて見せた彼女たちの未来が明るいものであることを信じたくなる素敵な物語ですね。現在3巻まで刊行。

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

 

 ほぼ全ての人工衛星が落下した大流星群から三年。たった一人の犠牲者・天野河星乃を救うため、全てを諦めかけていた平野大地が希望を見出し運命に抗う物語。宇宙飛行士だった両親の夢を追いかけていた星乃。コスパ重視だった人生も彼女を失いやる気をなくしていた大地。希望を見出すものの思うようにうまく行かなくて、それでも大切なものを取り戻すという熱い決意を胸に、危機になりふり構わず奔走して、醒めていた大地自身もまた変わってゆく展開はテンポも良くて、変化したことがこれからどう影響していくのか、非常に楽しみな新シリーズですね。

君と僕との世界再変 (角川スニーカー文庫)

君と僕との世界再変 (角川スニーカー文庫)

 

 人の価値が数値化された2184年のディストピア的な世界。働かずとも衣食住が保障された「庭国」で私掠官として働く数値が0の少年・アオが、負傷していた謎の少女・モアと出会い日常が激変していく近未来SF。数値化された価値が全ての世界で特殊な立ち位置にいるアオと、庭国崩壊阻止のために20年後の未来からやってきたモア。二人が出会い共闘することで加速していく展開の中、始まってしまう庭国崩壊とその鍵を握るアオの秘密。自称恋人のレイを加えた三角関係もあったりで、ここからどうなるのか楽しみな続巻に期待の新シリーズですね。

インスタント・ビジョン 3分間の未来視宣告 (角川スニーカー文庫)

インスタント・ビジョン 3分間の未来視宣告 (角川スニーカー文庫)

 

 未来に3分間だけ自分の意識が飛ばされる奇病「夢現譜症候群」のパンデミックで大混乱に陥りがちな世界。殺人鬼になる未来視を見たレオが相棒の少女・ティアと出会う物語。未来視を知られているがゆえに難しい立場にあるレオと謎めいた立ち位置のティア。パンデミックを発生させる犯人を追う中で異能を用いた熱く勢いのあるバトルと、それぞれの立ち位置での正義が対立するシリアスな世界観はなかなか面白くて、そんな中で揺れる相棒・ティアとの信頼関係を再構築してゆく過程が著者さんの真骨頂なのかなと(苦笑)

 

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

 

 有機素子コンピュータによる会話プログラムの共同研究者を失い何も手につかなくなった南雲助教と、列車に轢かれて亡くなった元恋人の会話を再現しようとする学部生の佐伯衣理奈。そんな前に進めない二人が巡り合う連作短編集。会話プログラムとのやりとりを交えつつ繰り広げられる、共同研究者、契約社員、元恋人、そして南雲と衣理奈のエピソード。概念自体はやや難解でしたが、理系らしい合理思考と割り切れない情念のせめぎ合いの中で変化してゆく不器用な人間模様はとても優しくて、そんな彼らが迎えた結末はなかなか心に響くものがありました。

 並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て父親と暮らす少年・日高暦が、父の勤務する虚質科学研究所で佐藤栞という少女に出会う物語。親同士が離婚した研究者という共通点から、共に過ごすうちにほのかな恋心を育んできた暦と栞。全てを一変させるきっかけとなった親同士の再婚話と二人を襲った悲劇。諦めきれずに彼女を取り戻すために生きることを決意した暦の執念は凄まじいと感じましたが、そんな彼に寄り添うように支え続けた同僚の研究者・和音の献身ぶりにも思うところが多かったです。同時刊行のどちらを先に読むのかは悩ましいですね。

並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦が、地元の進学校で85番目の世界から移動してきたというクラスメイト・瀧川和音と出会う物語。入学時の因縁をきっかけに運命的な出会いを果たした、暦と和音の一見腐れ縁のようにも思える関係。同時刊行作品の出来事との関連性を織り交ぜつつ、並行世界が実在する世界ならではの問題に悩まされながらも、それを力を合わせて乗り越えてゆく二人はとても幸せだったんだろうなと思わせるものがありました。二つ読んで比べてみるといろいろ思うところが出てきてとても面白かったです。

裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)

裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)

 

 裏側で「くねくね」を目にして死にかけていた時、仁科鳥子と運命的な出会いを果たした女子大生の紙越空魚。危険と隣合わせで謎だらけの裏世界に二人で足を踏み入れる怪異探検サバイバル。研究とお金稼ぎを目的とする空魚と、姿を消した大切な人を探すために非日常へと足を踏み入れる鳥子。始まりと出会いはやや唐突にも思えましたが、成り行きから何となくコンビを組んだ感もあった二人に絆めいたものが生まれて、相手のために奔走する展開は悪くなかったですね。タイトルにあるようなピクニックとはとても言えない怖いテイストでしたが(苦笑)現在2巻まで刊行。

星を墜とすボクに降る、ましろの雨 (ハヤカワ文庫JA)
 

人造の眼球と巨砲トニトゥルスで、地球圏に迫る星々を軌道庭園から撃ち墜とす子どもたちの一人である霧原。寡黙な担当整備工の神条の傍らにいることに満足していた彼女が、自らの無慈悲な宿命に直面する小さな恋の物語。突然現れた神条の元妻を名乗るハヤトの存在、そして空前の規模の流星群が飛来する中でようやく不器用な想いを自覚し、自分がどうあるべきか戸惑ってしまう霧原。最期までスナイパーであるべきか、気付いてしまった想いに向き合うべきか、心揺れた先にあった衝撃の結末でしたけど、これもまたひとつの愛の形なのかもしれませんね。

地球人類は国籍の区別なく商連と呼ばれる異星の民の隷属階級に落ちた未来世界。閉塞した日本から抜け出すため、アキラは募兵官の調理師パプキンの誘いで商連の惑星機動歩兵―通称ヤキトリに志願する近未来SF。国籍も違う癖の強いメンバー四人と実験ユニットK-321に配属され、火星に向かうアキラ。その過程で嫌というほど思い知らされるヤキトリの過酷な待遇。どれだけ屈辱的な扱いを受けたり凹まされても反骨心を失わないアキラたちには凄いなと感心しきりでしたが、だからこそ見出した活路が変革の兆しになるか今後に期待のシリーズ。現在2巻まで刊行。

 機械知性により過保護過ぎるほど守られた宇宙世界。中央星域の商家を勘当されたお人好しな若旦那マルスが、辺境の宇宙港でかつての奉公人・祖父の食堂〈このみ屋〉を再開させようと頑張る少女コノミと再会する物語。宇宙グルメを期待して読むと、計算され過ぎた調整食や厳しい辺境の食糧事情に面食らいますが、どんどん厄介事に巻き込まれてゆく若旦那に、バイタリティあふれるコノミや若旦那の妹、異星人まで絡むカオスな展開には勢いがあって、あれ?と思うようなところも散見されますが、荒削りながらもなかなか面白いものを読めたと思いました。 現在2巻まで刊行。

最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)

最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)

 

 会いに来る新世代のアイドルを描いた「最後にして最初のアイドル」ガチャに取り憑かれたフレンズたちが宇宙創世の真理へ驀進する「エヴォリューションがーるず」異能の声優たちが銀河を大暴れする「暗黒声優」の三編が収録された作品集。何か凄いらしい…とは聞いてましたが、オタクの心を掴むキーワードのはずが全く別の何かに成り果てていて、一方でSFとしては壮大なスケールの物語だったりで、そんなギャップがこの本を読む前提としてあるために、その強烈なインパクトをどう評価すればいいのかちょっとよく分からなくなった一冊でした(苦笑)

 電撃文庫版の改版。鏡状門開発で世界が数時間で結ばれる鉄道網が実用化された時代。東京駅上空に浮かぶ幻の第11番ホームに勤務する少女TBの物語。11番ホームを訪れる人たちとTB、仲間の義経・AIを交えたやりとりを中心とした物語で構成されていますが、話の中で徐々に明らかになっていくTBの乗り越えた過去があり、その上で彼女の前向きな姿勢や行動を見ると、周囲の人がその人柄に感化されていくのも納得ですね。ベースとしては明るいテイストではないですけれど、最後は悪くない読後感のお話が多かったです。現在2巻まで刊行。

楽園追放―Expelled from Paradise― (ハヤカワ文庫JA)

楽園追放―Expelled from Paradise― (ハヤカワ文庫JA)

 

 水島精二監督、虚淵玄脚本による映画の公式ノベライズ版。映画未視聴。人類の多くがデータとなって電脳世界ディーヴァで暮らしている世界。保安要員アンジェラが地球に降り立ち、地上捜査員ディンゴとともにハッキングを仕掛けてきたフロンティアセッターの謎を追う物語。映画に準拠した構成とのことですが、ビジュアルで見たら映えそうな描写が多く映画版が見てみたくなりますね。クリスティアンがアンジェラとの良い比較対象となっていて、ページ数が少ない割に物語をうまくまとめていると思いましたが、もう少しボリュームあっても良かったかも?

捜査官アンジェラの助けで外宇宙に旅だったフロンティアセッターに対して、アンジェラ自身の複製体が下級市民の少年少女三人とともに追撃を命じられる公式続編小説。本人に成り代わることを目論みながら、徐々に保安局の判断に疑問を感じるようになっていくアンジェラの複製体。そしてジェネシスアーク号への移住を目論むユーリとライカ、ブラウンの三人の関係。持たざる彼女らが複雑な生々しい嫉妬や葛藤を抱えながらも助けるためにと奮闘し、それをアンジェラが助ける展開には盛り上がりましたね。スピンオフとしてなかなか楽しめた後日談でした。

 ミドリムシの変異体・エルグレナが生態環境を支配し、海面上昇により地表の大半を水に覆われた25世紀の地球。その調査に宇宙コロニーからやってきた研究者ケンガセンが、島嶼部で暮らす巫女ヨルと出逢う近未来SF。彼女と出会い数奇な運命に巻き込まれてゆくケンガセン。SF的な設定や立ち位置でガラリと変わる倫理観や考え方なども興味深かったですが、研究バカだった彼が価値観の違いに戸惑いながら交渉したり政治に振り回されたりしながら、人類が迎える新たな局面と、そんな中で育まれてきた二人の絆を感じる結末はなかなか良かったですね。

know (ハヤカワ文庫JA)

know (ハヤカワ文庫JA)

 

 電子葉の接続が義務付けられてるような高度情報化社会を舞台に、全ての情報を手に入れることができる少女知ルを恩師に託された連レルが、約束を果たすまでの四日間を共に過ごすお話。小説ではありますが「知っている」ということの定義が変わった世界で、では「知る」ということがどういうことか、文中で語られる考察はとても興味深く読めました。知ることを突き詰めていくと、最終的に死とは何かに行き着くというのはなるほどと思いましたが、最後の言葉から示唆されるように、この世界ではそれすらも乗り越えてしまったということなんでしょうね。

バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)

バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)

 

 製薬会社と大学が関与する臨床研究不正事件を追っていた東京地検特捜部検事正崎善が、捜査資料の中にあった謎の血痕や毛髪混じりの書面を発見し、相棒の事務官文緒とともにそれを探るうちに大型選挙の裏に潜む陰謀に巻き込まれていく物語。最初は奇異な事件こそあるものの、全体としては正崎が感じた違和感をきっかけにターゲットを絞り込んでいく、わりとオーソドックなストーリーだと思っていたのですが、後半の怒涛の急展開は予想の斜め上でしたね。一人の女により大きく動かされ、二転三転してゆく物語の行方はどうなるのか楽しみなシリーズですね。現在3巻まで刊行。

 幼いころに出会ったハーフの女の子ユーリヤ。僕をスプートニクと呼ぶ彼女と月を見上げて宇宙飛行士に憧れた夢。そんな二人の成長を描く物語。どんどん成長するスプートニクと生まれつき身体が弱い彼女とのすれ違い。遠く離れ夢に向けて突き進むユーリヤとの再会と、焦燥を覚えつつ遅ればせながら夢を追いかけることを決意したスプートニクの思い。彼女との距離がどんどん遠くなっていっても、お互いかけがえのない存在であることは変わりなくて、素直になれない彼女にきちんと向き合ったスプートニクの覚悟には本当にぐっと来るものがありました。

マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年 (集英社オレンジ文庫)

マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年 (集英社オレンジ文庫)

 

 人工海上都市『キヴィタス』のアンドロイド管理局に勤める若きエリート技師エルが、仕事からの帰り道で登録情報のない野良アンドロイドの少年・ワンと出会い不思議な共同生活を始める物語。アンドロイドが貴重な労働力になっている世界で、不器用だけれどアンドロイドには真摯に向き合うエルに、訳ありなアンドロイドのワンは何だかんだ言いながらも振り回されっぱなしで、エルの事情も明らかになってゆく中、二人の関係性がワンの過去を巡る騒動と絡めつつとてもいい感じに描かれていたと思いました。もし続巻あるようならまた読んでみたいですね。

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

 

 2025年の夏休み。双子の高校生・明日子と日々人は突然いとことの同居を父から告げられ、やって来た今日子が実は長い眠りから目覚めた三十年前の女子高生だったという物語。時代のギャップに戸惑いながら徐々に双子と打ち解けてゆく今日子の存在は、バラバラになっていた家族を繋ぐきっかけにもなって、過去との繋がりを感じるがゆえにもう取り戻せないことを痛感する彼女と、どうにもならない現実に直面した双子の対照的な選択、昔の想い人の回想がとても印象に残りました。懐かしい気持ちと切ない気持ちが入り混じる素敵なひと夏の物語ですね。

探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫nex)

探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫nex)

 

 密室で謎の死を遂げた人工知能研究者の父。その死に疑問を持った高校生の息子・輔が、探偵AI・相以とともに父を殺した真犯人を追う過程で、犯人AI・以相を奪い悪用するテロリスト集団「オクタコア」の陰謀を知るミステリ。対となる存在の探偵と犯人という双子AI。明らかになる人工知能による世界統治を目指すオタクコアの存在。分かりやすい解説を加えながら語られる発展途上の存在から深層学習で成長する人工知能たちを軸とする展開は、やや強引かなと感じられる部分もありましたがなかなか興味深くて楽しめました。

断片のアリス (新潮文庫nex)

断片のアリス (新潮文庫nex)

 

 雪と氷に閉ざされた現実世界から離れ、人々が生活のほとんどをVRシステム「ALiS」の中で過ごす近未来。傷つくことのない穏やかで平和な仮想空間で、突如椎葉羽留がVR内に閉じ込められる脱出サバイバル。「ピノッキオの冒険」をモチーフにしたログアウトもできない謎のVR世界で、謎めいた指示に従って危険を乗り越え狂気の館に集まった生き残りの五人。誰かが死ぬ度に次第に状況が明らかになってゆく構図で、生き残るためにお互いが疑心暗鬼になってゆく展開には緊張感があって、こういう世界観ならではの結末はなかなか興味深かったです。

 近未来的な世界で、続発する電脳ウイルスを使った事件に挑むサイバー警察ものといったお話。近未来らしい犯罪描写や数々の因縁もある一方で、人間関係に不器用なエリート隊長伊江村と、彼女に学生時代から惹かれながらアタックもできず、諦めることもできず、他の女に走って同期に「ブス製造機」とか言われる御崎の初々しい関係性がメインに据えられていた感。ライバルの篠木に最後おいしいところを持って行かれたのは残念でしたが、勇気を出した告白で始まってすらいなかった二人の不器用な関係が今後どう変わっていくのかも楽しみなシリーズです。全3巻。

 

今読んでる「忘られリメメント」もなかなか面白い近未来SFですが、これはまだ読み終わっていないのでまた機会を改めてということで。

忘られのリメメント (早川書房)

忘られのリメメント (早川書房)

 

 

 

「このライトノベルがすごい!2019」にこの作品を投票します!

今年も毎年恒例となっている「このライトノベルがすごい!2019」のアンケートが今週から始まりましたね。今回も対象期間に発売されたタイトルの中から、毎回5作品は少ないなあ…と悩みつつも何とかセレクトしました。各作品のコメントはまだ書けていないので、それ考えてから投票します(ぇ

今回の対象文庫シリーズをざっと眺めてみましたが、対象シリーズ694のうち自分が読めているのは226シリーズ、比率にして32.6%程度でした。発売月が被り過ぎて手を出せなかったタイトルも結構あったりするので、時々分散してくれればいいのにとか、もう少し読めればいいのになと感じることもありますが、これだけ点数が出ている状況を考えると予算・時間・場所といった現実的な制約もあるので、自分ができる範囲で読めているのかなとは思っています。

 

今回投票対象として選んだのは以下の5点です。好きなタイトルを上から選んでいくとまた違ったタイトルになるのかもしれませんが、こういったものは新作から選んでなんぼだと思っているので、該当期間中に刊行されて読んだ作品のうち、今後に期待したい新シリーズ・印象的なタイトル5作品を選びました。

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

 

 嘘がわかる特異体質を持つ遠藤正樹。そんな彼が気になる決して嘘をつかない川端小百合と常に振りまく学校のアイドル佐倉成美、死んだ共通の友人を巡る願いと嘘と恋が交錯する青春ミステリ。「彼女は殺された」という川端と「彼女を追い詰めたのは私」とうそぶく佐倉。ともに過ごす時間が増えてゆく中で正樹にだけ見せる彼女たちの素顔と、正樹と父親の関係。新事実が明らかになってゆくたびにガラリと変わってゆく構図。彼女たちがついた嘘は切なくも優しくて、真実に向き合ったからこそ見えたその想いとはっとするような結末はとても印象的でした。

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

 

 過去の苦い経験から「偽りの自分」を演じてしまう高校生・矢野四季が、印象的な出会いを果たした物静かな転校生・水瀬秋玻に惹かれ、彼女ともうひとりの人格・春珂を支えるようになってゆく不思議な恋物語。しっかりものの秋玻と対照的な危なっかしい印象の春珂。状況的に春珂をフォローすることが多い四季と二人を見つめる秋玻の繊細な距離感がまた絶妙で、大切な存在なのにすれ違ってしまうやるせなさだったり、ごまかさずにきちんと想いをぶつけてゆく彼らの青春がとても良かったですね。終盤は挿絵の使い方も効いていて続巻が今から楽しみです。

 古の魔王が再臨する絶望の未来を変えるため「アレンヘムの聖女」セシリアと婚約し、傭兵団「狂嗤の団」団長となる道を選んだカレル。聖女の加護を受け死の未来を回避する英雄として奮闘するファンタジー戦記。二年後の魔王再臨を限られた人しか知らない中で、代替わりした王国や戦争を仕掛けてきた自治領相手にどう立ち回るのか。腕が立って商才があり現実的な手段を積み重ねるカレルだけでなく、ヒロインのセシリアや仲間たち、王国の登場人物たちもまた魅力的なキャラが多くて、ここから物語がどう動くのか続巻がとても楽しみな新シリーズですね。

6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)

6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)

 

 人間関係に焦燥を募らせる優等生香衣。サッカー部のエースで香衣が気になる隆生。香衣に一目惚れした不良・龍輝。付かず離れずの距離で香衣の友人を演じるセリカ。それぞれの視点から綴られる出会いと別れの物語。中学時代一緒に勉強して同じ高校に合格したのに、いつの間にか距離ができてしまった香衣と隆生。その関係を起点に描かれてゆく読んでいる方がもどかしくなるような青春群像劇は、前作とはまたガラリと違う読みやすさと繊細さが感じられて、こういう作品も書けるのかとビックリしました。こういう王道の青春小説をまた読んでみたいです。

病床の国王に代わり摂政として弱小国家を背負うことになった若き王子ウェイン。文武に秀で臣下からの信頼も厚い彼が、絶望的な状況から密かに売国を志す弱小国家運営譚。状況を正しく認識して先を見通せるからこそ絶望を感じるウェイン。上手く終わらせるための手を打つのに、それがなぜか効果的な一手に繋がる皮肉な状況の変化や展開の連続でしたけど、ウェインが彼なりに最善へ真摯に取り組んだ結果だからこそ納得感がありました。補佐官のニニムに対する想いも気になる彼にいつか心境の変化はあるのか、どこまでやれるのか続巻が楽しみですね。

 

以上5点です。単行本も投票予定ですが、読んでいる冊数は文庫と比べるべくもないレベルなので今回省略しますが、一点だけ紹介しておきます。

インスタント・メサイアI (オーバーラップノベルス)

インスタント・メサイアI (オーバーラップノベルス)

 

 愛する家族や隣人を魔族に殺されたナイン。村が全滅する中で一人生き延びた彼が、十年の時を経て家族の仇であるはずの魔族の王に配下たることを跪いて乞い願い、密かに復讐の機会を伺うダークファンタジー。歪な笑顔で一部には危険視されながらも、因縁ある魔王クリステラやその妹、そして警戒する配下たちの関心を引きながら少しずつ籠絡し取り込んでいく展開は、一見卑屈で人として無害な存在と思わせつつ、実はかなり壊れていて狂気の愛に溢れるナインの存在感が光っていました。この先にあるのは愛か破滅か、続巻に期待したいシリーズですね。

 

ちなみにイラストレーターに関しては、今回イラストが作品に大きな影響を与えるだけの破壊力があったように感じた下の3点に入れました。

僕のカノジョ先生 (MF文庫J)

僕のカノジョ先生 (MF文庫J)

 
三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

 

 正直著者買いするような作品はともかく、どうしようかなと思うような作品を選んでいく過程で、第一印象のインパクトを決めるイラストの影響は大きいですね…。

 

 

今回の「このライトノベルがすごい!2019」の締切は9月24日(日)です。

皆さんも是非自分が凄いと思ったタイトルはこれだ!という作品を投票しましょう。

 

 

2018年8月に読んだ新作おすすめ本

 8月は月末に出たファミ通文庫スニーカー文庫ラノベ文庫あたりがなかなか熱かったですね。特にやはり青春もので輝く三田千恵さんの「彼女のL」、あまさきみりとさんの「君の忘れ方を教えて」、ファンタジーではファンタジア文庫の「ヒトよ、最弱なる牙を以て世界を灯す剣となれ」、「ゼロから始める魔法の書」(電撃文庫)と世界観を同じくするラノベ文庫「魔法使い黎明期」、幼馴染たちとの公園とのやりとりがじわじわ来る「公園で高校生達が遊ぶだけ」など興味深い作品が目白押しでした。

 

読みたいものが多すぎてラノベ以外は周回遅れが常態化しつつありますが、その中でもライト文芸では松山剛さんの「聞こえない君の歌声を、僕だけが知っている。」(メディアワークス文庫)、一般文庫では「八月のリピート」(宝島社文庫)、単行本では「夏空白花」「君に恋う」「君の話」の3点を挙げておきます。また「本のエンドロール」も印刷に関わる様々な人たちの熱い想いが描かれた一冊で、機会があったら是非読んでみてほしい一冊ですね。

 

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

 

 嘘がわかる特異体質を持つ遠藤正樹。そんな彼が気になる決して嘘をつかない川端小百合と常に振りまく学校のアイドル佐倉成美、死んだ共通の友人を巡る願いと嘘と恋が交錯する青春ミステリ。「彼女は殺された」という川端と「彼女を追い詰めたのは私」とうそぶく佐倉。ともに過ごす時間が増えてゆく中で正樹にだけ見せる彼女たちの素顔と、正樹と父親の関係。新事実が明らかになってゆくたびにガラリと変わってゆく構図。彼女たちがついた嘘は切なくも優しくて、真実に向き合ったからこそ見えたその想いとはっとするような結末はとても印象的でした。

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

 

 余命半年を宣告されて大学を中退し実家でニートと成り果てた松本修。昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れた修が、かつて突き放した因縁の幼馴染・桐山鞘音と再会する青春小説。人生に絶望して投げやりな日々を送る修の後悔と、シンガーソングライターとして不調に陥り戻ってきた鞘音の覚悟。トミさんを介して昔のような不器用な二人の交流が再開して、鞘音と最後の共演のために覚悟を決めて自らを追い込んでゆく修。その過程で取り戻してゆくお互いの大切な想いと、彼らの決意がもたらしたエピローグにはぐっと来るものがありました。

 人間が覇権を失い他種族の家畜や奴隷として虐げられる世界。ヒトが誇りをもって生きられる国を作るという大望を抱くジノが、公国の跡継ぎ候補ながら辺境で燻っていたヴァンパイアの姫ヘネシーと運命的な出会いを果たすファンタジー。被支配層のヒトながら貪欲な学習意欲もあって機知に富み、ヘネシーたちに自らの存在を認めさせたジノ。急速に信頼関係を深めながらも安直には変わらない二人の距離感があって、急展開からの唐突に訪れた難しい局面もギリギリで乗り切って、ここからどう広がってゆくのか今後が楽しみな新シリーズですね。

 五百年に及ぶ教会と魔女の対立と数年前に成立した和平。ウェニアス王国王立魔法学校に通う落ちこぼれの生徒セービルが、アルバス学長の命で黎明の魔女ロー・クリスタスや仲間とともに大陸南部に特別実習として向かうファンタジー。目的地への道中で何度も襲われる一方で、明らかになってゆく同行する仲間たちの事情。いかにもなゼロたちの登場には思わずニヤリとしてしまいましたが、訳ありなセービル、魔女ロー・クリスタスやホルト、クドーといったキャラたちもよく動いていて、ここからどんな物語が展開してゆくのか楽しみな新シリーズですね。 

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

 

 昔からの幼馴染、瀬川エリカと吾妻千里。そんな二人とその友人たちを中心とした公園でのやりとりや日常が描かれる青春小説。お隣さんな二人の家の近くの公園で繰り広げられる仲間とダベったり野球をしたり、走り回ったり少し喧嘩したりのありふれた日常。でもそんな中にも幼馴染の二人が積み重ねてきた様々なことや、傍から見たら何で付き合っていないの?とついちょっかいを出したくなる二人の確かな絆があって、それでいて相手の知らないことに遭遇すると思わず動揺してしまう関係が微笑ましくて、何かじわじわとこみ上げてくるものがありました。

わんでいりぴーと! (講談社ラノベ文庫)

わんでいりぴーと! (講談社ラノベ文庫)

 

 憧れの同級生小夜原さんに告白したものの「顔面がジャガイモみたいな人とは付き合えません」と振られた紙白九炉。しかし彼女とうまくやらないと同じ日を繰り返すループに巻き込まれる青春小説。秘密を抱えた面倒くさい残念美少女・小夜原さんと仲良くなってゆく日々に突如現れた、もう一人の繰り返す要因・繊月仄火の存在。違う意味で面倒な仄火にも振り回されるようになってからの急展開にはびっくりしましたが、大切なものを自覚した九炉の決意と何度失敗しても諦めずにチャレンジし続けてようやく引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。

銀色の月は夜を歌う (講談社ラノベ文庫)

銀色の月は夜を歌う (講談社ラノベ文庫)

 

 音楽性の違いによる脱退であっさりと廃部になった軽音部。朝比奈悠は駅前でストリートライブでかぐやと名乗る少女に突然ライブのサポートを頼まれ、そのパフォーマンスに魅了される青春バンドストーリー。惚れ込んだ悠のバンド結成申し入れを断ったかぐやの意外な正体と、彼女を諦めきれない悠がかぐやに掲げた一つの目標。ままならない限られた時間の中で強く惹かれ合いながら、最後まで信じて悔いなくやりきった二人の物語が描けていたからこそ、もうひとりのキーマンだった副会長をもう少し結末でうまく絡められると良かったかもしれないですね。

 

 動画サイト上に投稿され社会現象となった音声がないまま歌う「無声少女」。突然なぜか世界でただ一人、無声少女の歌声が聞こえるようになってしまった大学生・永瀬が彼女の歌詞をヒントに彼女を探そうとする物語。永瀬が歌詞を手がかりに調べてゆく無声少女の行方。たどり着いた先で巡り会った少女・サクヤ。二人で無音少女を調べ始めたことは彼らにとっても転機で、ようやく発見した無音少女の切なる願いと永瀬の決断には悲しくもなりましたが、それでも真っ直ぐに訴えかけてくる想いには揺さぶられて、エピローグにはぐっとくるものがありました。

法律は嘘とお金の味方です。 京都御所南、吾妻法律事務所の法廷日誌 (集英社オレンジ文庫)
 

 敏腕だがお金に汚い弁護士・吾妻正義の孫つぐみは、嘘をついている人の顔が歪んで見える特殊能力を持つ女子高生。幼馴染の検察官・汐見草司もたびたび巻き込んで持ち込まれる案件を解決してゆく物語。相続放棄を迫られた後妻、詐欺師扱いされた投資コンサルタントDQNネームを改名したい女子高生、隣人から引っ越しを迫られる犯罪者の息子といった何とも複雑な事件に正義もまた濃い存在で、ワケありの過去を抱えた登場人物たちそれぞれの物語、そして複雑にこじれていたつぐみと草司の今後も気になりますし、またこの続きを読めたらいいですね。

京都左京区がらくた日和 謎眠る古道具屋の凸凹探偵譚 (集英社オレンジ文庫)
 

 周囲にうまく馴染めない女子高生の雛子が、風変わりな近所の『古道具屋石川原』で名無しの女学生の日記を発見し、店主の郷さんと交流を持ってゆく物語。京都らしさに触れつつ、店主と一緒に戦中の女学生の日記、複数の持ち主が名乗り出たティディベア、かつてプレゼントした腕時計が売りに出された理由、幽霊が落とし物といった謎を解いてゆく雛子。いい話だけでなくほろ苦さも交じるエピソードでしたが、それでも何とかしたいという雛子の優しさが事態をいい方向に導いてゆく、なかなかいい物語だと思いました。続巻あるならまた読んでみたいです。 

華仙公主夜話 その麗人、後宮の闇を討つ (富士見L文庫)

華仙公主夜話 その麗人、後宮の闇を討つ (富士見L文庫)

 

 仙人の力を借りて建国した伝説を持つ基照国。先帝の落とし胤と噂の酒楼の女主・明花のもとに、滅亡寸前の国と幼い次期皇帝・紫旗を守るため次期宰相の李伯慶が訪ねてくる中華ファンタジー。紫旗を取り巻く不穏な状況とそれを打開するために動く伯慶、可愛い紫旗を助けたいという思いからその誘いに乗る明花。テンポの良いストーリーに紫旗のためという利害の一致で相棒となった腕力頼み公主とケチな伯慶が、言い争いながらも相手のことを認め合うようになってゆくサッパリした関係もなかなか良かったですね。続刊あるようならまた読んでみたいです。

暁花薬殿物語 (富士見L文庫)

暁花薬殿物語 (富士見L文庫)

 

 薬師を目指していたはずが代役で急遽入内することになってしまった暁下姫こと千古。大貴族出身4人の后候補が揃う宮廷でうまく抜け出すことばかり考えていた彼女が、帝と出会い少しずつ変わってゆく平安宮廷風ファンタジー。幼馴染や乳母たちと共に後宮入りすることになったお転婆で快活な千古が巻き起こす数々の騒動。宮廷内で味方もなく孤立する案外似た者同士だった帝との意外な出会い。そんな彼女が周囲に支えられつつらしさを発揮し、帝とも前向きに向き合うようになってゆく展開はなかなか良かったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。

長崎新地中華街の薬屋カフェ (小学館文庫キャラブン!)

長崎新地中華街の薬屋カフェ (小学館文庫キャラブン!)

 

 優秀な営業成績を認められ長崎の店舗へと配属されたドラッグストアで働く藤子。そんな彼女が仕事で遭遇する出来事や長崎新地中華街の「薬屋カフェ」で働く青年・ワンとの出会いが描かれるお仕事小説。真摯に働く藤子が直面する身近な店舗ならではのエピソードや人間関係の難しさ、薬屋カフェらしい美味しい食べ物や飲み物の話は興味深くて、全体としては恋愛小説というよりはやや仕事の方に比重が置かれた展開だったかなと感じましたけど、愛人さんの謎含めてわりと鈍感な藤子さんが遠回りしながらも心を通わせていく結末はなかなか良かったです。

 崖っぷち編プロ「三巴企画」の戸部社長と桐谷が弁当屋で見出した原之内菊子。その顔を見た者は自分語りが止まらなくなってしまう特殊能力を活かして、インタビューとして働くお仕事小説。引き出される本音ダダ漏れのインタビューに悪戦苦闘しながらも可能性を感じる桐谷と、自らも苦悩しながらそこに居場所を見出してゆく菊子。苦い過去を積み重ねてきた彼女が特殊能力によってもたらされた事態の重さに逃げ出して、それでもそんな彼女が必要だと追いかけてきた二人や周囲の人たちに認められ、乗り越えてゆく優しい結末はなかなか良かったですね。 

体育会系探偵部タイタン! (講談社タイガ)

体育会系探偵部タイタン! (講談社タイガ)

 

 中学最後の試合で惨敗して二度と野球はしないと誓った白石球人。高校入学後、自分の居場所を探す彼が体育会系探偵部(タイタン)の活動に巻き込まれてゆく青春ミステリ。学園内での連続盗難、校内新聞の連続模倣事件、ネットで暴露し続けるアカウントといった身の回りで立て続けに起こる事件。いかにも体育会系なタイタンの面々に振り回されながらも、宿敵・ブンタンとの勝負に挑むバカで熱い想いが感じられる展開は、こっそり陰から助けてくれる幼馴染な女の子との関係がいいアクセントになっていて、続きがあるならまた読んでみたいと思いました。

 

 

八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)

八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)

 

 「最後のチャンス」と位置づけたピアノコンクール予選で落選した高校三年生の北沢鳴海。諦められない彼が時間を巻き戻すため、トリガーとなる音楽の神に愛された少女・神崎杏子と久しぶりに再会する青春小説。かつて才能の差を見せつけられたのに彼女にときめいてしまう鳴海が、そのたびに何度もやり直して距離を置いた過去と、再びピアノと彼女への想いに葛藤し続けたリピートの思わぬ結末。そして明かされてゆくもう一つの物語。託された真実を知った鳴海が大切な人のために、そして自らの想いや夢を取り戻すべく奔走するとても素敵な物語でした。

ねじまき片想い (創元推理文庫)

ねじまき片想い (創元推理文庫)

 

 楚々として控えめな外見とは裏腹に、活躍浅草にある老舗おもちゃ会社で敏腕プランナーとして働く富田宝子。五年も想いを伝えられずにいる宝子が、仕事のできない取引先のデザイナー西島のために奮闘する恋の物語。知れば知るほど残念ぶりに磨きがかかる西島相手に、屋上に設置された貯水タンクを排除したり、盗まれたお宝テレカを取り戻そうとしたりと、奮闘するのに報われない諦めの悪い宝子。彼とようやく一緒に過ごしたらお互いダメになる関係という皮肉に、ようやく芽生えた自発的な意志が局面打開の転機に繋がってゆく結末は良かったですね。 

菓子屋横丁月光荘 歌う家 (ハルキ文庫 ほ 5-1)

菓子屋横丁月光荘 歌う家 (ハルキ文庫 ほ 5-1)

 

 幼い頃から家の声が聞こえる不思議な力を持つ大学院生・遠野守人が、縁あって川越は菓子屋横丁の一角に建つ築七十年の古民家で住み込み管理人をすることになり、様々な人や家と出会ってゆく物語。親や祖父母を喪った守人が、古民家に移り住んだことで出会う様々な縁や古い家たちの声。彼のことを気にかけてくれる木谷先生や後輩のべんてんちゃんたちに支えられながら、人の繋がりや彼らの想いにも触れて、少しずつ自らの過去とも向き合うようになってゆく展開はなかなか良かったです。ここから物語がどう広がってゆくのか期待の新シリーズですね。

 

夏空白花

夏空白花

 

 昨日までの正義が否定され誰もが呆然とした終戦。未来を担う若者のために、戦争で失われた「高校野球大会」を復活させなければいけないと奔走する人々が描かれる物語。戦後の混乱期、GHQ占領下で思うようにままならない状況の中の中で始まった高校野球大会復活の動き。何のために復活させようとするのか、中心となって奔走する神住の複雑な想いや周囲の人たちの様々な想いも綴りながら、容易でない状況でも諦めない彼の熱意から意外な縁も繋がっていって、思わぬところから活路を見出し繋げてゆくてゆく熱い展開にはぐっと来るものがありました。

風に恋う

風に恋う

 

かつての栄光は見る影もなくなってしまっていた名門高校吹奏楽部。そこへ黄金時代の部長だった不破瑛太郎がコーチとして戻ってきて、入部したばかりの一年生の基を部長に任命する青春小説。幼馴染の部長・玲於奈の誘いにも入部に乗り気でなかった基を変えた瑛太郎の存在。部長としてひとりの演奏者として苦悩しながらもひたむきな想いでのめり込んでいく基。複雑な想いが入り交じる部員それぞれの葛藤に、自身もまた悩みを抱える瑛太郎も迷いながらもしっかり向き合って、全国大会目指して一丸となってゆく展開にはぐっと来るものがありました。 

君の話

君の話

 

 記憶改変技術「義憶」が普及した世界。二十歳の夏、天谷千尋が一度も出会ったことのない、存在しないはずの幼馴染・夏凪灯火と再会し動き出す物語。何もない過去を消したかったはずが、植え付けられたたった一人の幼馴染の鮮明な記憶。あまりにも運命的な再会から突如目の前に現れた灯花の存在を疑いながらも、どうしようもなく惹かれてゆく千尋。そこにはもうひとつの物語があって、不器用でお互い遠回りせざるをえなかった二人がきちんと向き合って、儚く切ないけれど優しさが感じられる物語の結末に著者さんらしさがよく出ていると思いました。

未来職安

未来職安

 

 国民が99%の働かない消費者と、働く1%のエリート生産者に分類された平成よりちょっと先の未来。運悪く県庁勤めを退職しなければならなくなった目黒が、少し変わった大塚を所長とする職安に転職し、仕事を求めて訪れる様々な人々と出会う近未来小説。財源的な部分をどう解決するのかは気になりましたが、仕事が機械に置き換えられてゆく中であえて人がする仕事とは何か?確かにそんな状況になったら消費者と生産者との間の微妙な距離感とか、仕事に対する本末転倒的な発想とか、いかにも起こりそうな興味深いエピソードがなかなか良かったです。

猫町くんと猫と黒猫

猫町くんと猫と黒猫

 

 猫町夫妻に助けられた人間に化けられるという特技を持つ光太郎。猫ゆえの成長の早さで、二歳半ながら高校に通っている彼が密かに同級生の井浦さんに恋心を抱く青春小説。ちょっと変わった猫たちにも理解がある広島・尾道を舞台とした世界観で、転校生の化け猫たちに絡まれたりしながらも、困っている友人のために奔走したり、片想いの相手・井浦さんとの不器用な距離感や甘酸っぱいやりとりだったり、そんな悩み多き青春を精一杯生きる光太郎のありようと、そんな彼の想いにきちんと向き合って応えてくれる井浦さんの関係がなかなか良かったですね。

そいねドリーマー

そいねドリーマー

 

 不眠症により眠ることができない女子高生・帆影沙耶が出会ったどんな相手でも眠らせられる金春ひつじ。先輩の藍染蘭に適性を見出された沙耶が〈スリープウォーカー〉として人の精神に取り憑く睡獣と戦う添い寝ドリームSFノベル。4人の仲間と睡獣狩りすすめていたはずが、いつの間にか暗雲漂うようになってゆく展開は、夢の中では恋人なのに現実ではぎくしゃくしているひつじとの眠れない/眠らせてしまう二人の不器用な関係性がポイントになっていて、ふわっとした雰囲気の物語はまさにそれを描くために作られたということなんでしょうね(苦笑)

本のエンドロール

本のエンドロール

 

就職説明会で「印刷会社はメーカーです」といった営業・浦本、夢を「目の前にある仕事を手違いなく終わらせる」とした仲井戸。斜陽産業と言われる印刷業界を描いたお仕事小説。浦本と仲井戸という対照的な二人を軸に、登場人物たちと家族や出版社編集とのやりとり、それぞれの仕事ぶりや印刷工場でのトラブル、電子書籍なども絡めて描かれる印刷業界の今はなかなか厳しくて、それでもその状況の中で仕事に真摯に向き合い、自らが印刷業界がどうあるべきか、できることはないのかと模索し続ける彼ら熱い想いと奮闘ぶりには心に響くものがありました。

8月に読んだ本 #読書メーターより

8月は序盤仕事が忙しくて中旬はむしろいつも読めない夏休みがあったりで、なかなか冊数読めてなくて積読が溜まる苦しい状況でしたが、下旬頑張ってわりと読めたので結果的にはそれなりの冊数に。とはいえ内訳的には(いつも文字数制限的に載せていないですが)コミックが39冊もあるので、1日2冊ペースを守れなかったという意味ではそこそこな感じです。

 

上旬~中旬は続巻多めで、下旬は新作が多かったですが、一方で「天鏡のアルデラミン」「佐伯さんと、ひとつ屋根の下」など完結もあったりしました。新作も読みたい反面好きな作品は終わってほしくないという複雑な思いもありますね。追いかけているシリーズがどんどん増えているので、正直終わるシリーズもないと読書計画も早々に破綻しそうですが(苦笑)新作オススメは別途記事で紹介予定ということで。

 

8月の読書メーター
読んだ本の数:97
読んだページ数:24766
ナイス数:5600

わんでいりぴーと! (講談社ラノベ文庫)わんでいりぴーと! (講談社ラノベ文庫)感想
憧れの同級生小夜原さんに告白したものの「顔面がジャガイモみたいな人とは付き合えません」と振られた紙白九炉。しかし彼女とうまくやらないと同じ日を繰り返すループに巻き込まれる青春小説。秘密を抱えた面倒くさい残念美少女・小夜原さんと仲良くなってゆく日々に突如現れた、もう一人の繰り返す要因・繊月仄火の存在。違う意味で面倒な仄火にも振り回されるようになってからの急展開にはびっくりしましたが、大切なものを自覚した九炉の決意と何度失敗しても諦めずにチャレンジし続けてようやく引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:08月31日 著者:川田 戯曲
公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)感想
昔からの幼馴染、瀬川エリカと吾妻千里。そんな二人とその友人たちを中心とした公園でのやりとりや日常が描かれる青春小説。お隣さんな二人の家の近くの公園で繰り広げられる仲間とダベったり野球をしたり、走り回ったり少し喧嘩したりのありふれた日常。でもそんな中にも幼馴染の二人が積み重ねてきた様々なことや、傍から見たら何で付き合っていないの?とついちょっかいを出したくなる二人の確かな絆があって、それでいて相手の知らないことに遭遇すると思わず動揺してしまう関係が微笑ましくて、何かじわじわとこみ上げてくるものがありました。
読了日:08月31日 著者:園生 凪
銀色の月は夜を歌う (講談社ラノベ文庫)銀色の月は夜を歌う (講談社ラノベ文庫)感想
音楽性の違いによる脱退であっさりと廃部になった軽音部。朝比奈悠は駅前でストリートライブでかぐやと名乗る少女に突然ライブのサポートを頼まれ、そのパフォーマンスに魅了される青春バンドストーリー。惚れ込んだ悠のバンド結成申し入れを断ったかぐやの意外な正体と、彼女を諦めきれない悠がかぐやに掲げた一つの目標。ままならない限られた時間の中で強く惹かれ合いながら、最後まで信じて悔いなくやりきった二人の物語が描けていたからこそ、もうひとりのキーマンだった副会長をもう少し結末でうまく絡められると良かったかもしれないですね。
読了日:08月31日 著者:望月 唯一
魔法使い黎明期 劣等生と杖の魔女 (講談社ラノベ文庫)魔法使い黎明期 劣等生と杖の魔女 (講談社ラノベ文庫)感想
五百年に及ぶ教会と魔女の対立と数年前に成立した和平。ウェニアス王国王立魔法学校に通う落ちこぼれの生徒セービルが、アルバス学長の命で黎明の魔女ロー・クリスタスや仲間とともに大陸南部に特別実習として向かうファンタジー。目的地への道中で何度も襲われる一方で、明らかになってゆく同行する仲間たちの事情。いかにもなゼロたちの登場には思わずニヤリとしてしまいましたが、訳ありなセービル、魔女ロー・クリスタスやホルト、クドーといったキャラたちもよく動いていて、ここからどんな物語が展開してゆくのか楽しみな新シリーズですね。 
読了日:08月31日 著者:虎走 かける,しずま よしのり
最強魔法師の隠遁計画 7 (HJ文庫)最強魔法師の隠遁計画 7 (HJ文庫)感想
親善魔法大会終了後の後夜祭風パーティーで多くの人たちに声を掛けられるティスフィアやロキたち。一方バルメス軍を壊滅させ全てを食らった悪食討伐に対し、各国元首の決定を受けてアルスやレティたちはその討伐に向かう第七弾。アルスというキーマンを踏まえて娘の今後を考えたり、ロキの苦悩をフォローするフローゼの思惑がどこに向かうのかは気になるところ。強力な悪食を相手に苦戦しながらも特異な能力の一端を見せたアルスでしたけど、危機的状況を救った意外な顛末がここからどんな形で日常に変化をもたらすのか少しばかり気になりますね。 
読了日:08月31日 著者:イズシロ
精霊幻想記 11.始まりの奏鳴曲 (HJ文庫)精霊幻想記 11.始まりの奏鳴曲 (HJ文庫)感想
貴久の暴走に気づき、ギリギリのところで美春を救い出すことに成功したリオ。その決着をつける一方、リオは迷惑を掛けた実家の様子が気になるセリアを連れ、再びクレール伯爵領へと足を踏み入れる第十一弾。あれだけやっても全然反省していない貴久の今後があれですが、美春が一歩踏み出したことで他の女の子たち含めたリオとの関係が今後どうなるのか…とりあえずセリアのために動く中で結果的にセリア父に紹介もされたりで、現時点では恩師の域を出ないように見える彼女との今後の関係も、この道中を通して新たな方向性が見えてくるんでしょうか。
読了日:08月30日 著者:北山結莉
真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました2 (角川スニーカー文庫)真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました2 (角川スニーカー文庫)感想
魔王軍との戦線を離れ辺境の地で薬師としてリットとの幸せな新生活を営むレッド。二人が川辺デートを満喫する一方で勇者一行はますます混乱し、街にも魔の手が忍び寄る第二弾。やってみたら意外と忙しくなさげな薬屋家業でしたけど、不穏な気配に包まれてゆく街の状況を何とかすべく暗躍するレッドは大忙しで、思ったほどには二人で甘々スローライフというわけにはいかなかったですね(苦笑)お兄ちゃん離脱後の迷走でついに我慢の我慢の限界を迎えた勇者の暴走で、マイペースに生きてゆきたい二人の生活がどうなるのか…これは波乱不可避ですかね。
読了日:08月30日 著者:ざっぽん
キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)感想
余命半年を宣告されて大学を中退し実家でニートと成り果てた松本修。昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れた修が、かつて突き放した因縁の幼馴染・桐山鞘音と再会する青春小説。人生に絶望して投げやりな日々を送る修の後悔と、シンガーソングライターとして不調に陥り戻ってきた鞘音の覚悟。トミさんを介して昔のような不器用な二人の交流が再開して、鞘音と最後の共演のために覚悟を決めて自らを追い込んでゆく修。その過程で取り戻してゆくお互いの大切な想いと、彼らの決意がもたらしたエピローグにはぐっと来るものがありました。
読了日:08月30日 著者:あまさきみりと
火焔の凶器: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫nex)火焔の凶器: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫nex)感想
平安時代陰陽師蘆屋炎蔵の墓を調査した大学准教授が焼死による不審死。人体発火現象に様々な憶測が飛び交う中、天医会総合病院の女医・天久鷹央は真実を求め思わぬ事態に繋がってゆく新章第二弾。蘆屋炎蔵の墓を調査したことに端を発した呪いの噂と人体発火現象。偶然人体発火現象の現場に居合わせたことで、有力な容疑者として警察にマークされてしまう小鳥。手がかりが少ない中で追い詰められながらも真相に迫る展開には緊迫感があって、相変わらずチャンスに詰めが甘い小鳥先生が鷹央との絆は認めつつある辺りに微笑ましい気持ちになりました。
読了日:08月29日 著者:知念 実希人
茉莉花官吏伝 二 百年、玉霞を俟つ (ビーズログ文庫)茉莉花官吏伝 二 百年、玉霞を俟つ (ビーズログ文庫)感想
科挙試験を二番の好成績で合格し新米官吏となった茉莉花。赤奏国の皇帝・暁月が目的もわからぬまま突如来訪し、己の世話役を女性官吏にしろと言い出す第二弾。先輩女性官吏・玉霞と暁月の世話役となり、実質的に細々とした対応をこなしてゆく茉莉花。同僚や先輩女性官吏たちの官吏としてのありよう、そして皇后派と反皇后派・統一派と反統一派を巡る争いも垣間見えて、覚悟を決めて責任に向き合い、人のために奔走する茉莉花の成長と、そんな彼女と珀陽が交わした約束が印象的でした。大変なところを選ぶらしい地方転出でどうなるのか続巻にも期待。
読了日:08月29日 著者:石田 リンネ
佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 5 (ファミ通文庫)佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 5 (ファミ通文庫)感想
年末年始をお互いの家で過ごした弓月くんと佐伯さん。そんな二人の前に現れた紅瀬家の執事・加々良から「貴理華様を紅瀬の家に迎え入れたい」と告げられる第五弾。どこか二人を見守る感が出てきた宝龍さんとの距離感に微笑ましいものを感じつつ、佐伯さんの友人などもを絡めながら、ラブラブなんだかおっかなびっくりなんだかな二人のやりとりに今回もニヤニヤしました。意味深に出てきた祖父話は決める時はびしっと決める弓月くんの見せ場を作るための伏線でしたか(苦笑)もう続きを少し読みたい感もあった完結でしたけど次回作も期待しています。
読了日:08月28日 著者:九曜
彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)感想
嘘がわかる特異体質を持つ遠藤正樹。そんな彼が気になる決して嘘をつかない川端小百合と常に振りまく学校のアイドル佐倉成美、死んだ共通の友人を巡る願いと嘘と恋が交錯する青春ミステリ。「彼女は殺された」という川端と「彼女を追い詰めたのは私」とうそぶく佐倉。ともに過ごす時間が増えてゆく中で正樹にだけ見せる彼女たちの素顔と、正樹と父親の関係。新事実が明らかになってゆくたびにガラリと変わってゆく構図。彼女たちがついた嘘は切なくも優しくて、真実に向き合ったからこそ見えたその想いとはっとするような結末はとても印象的でした。
読了日:08月28日 著者:三田 千恵
茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず (ビーズログ文庫)茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず (ビーズログ文庫)感想
『物覚えがいい』という特技がある後宮の女官・茉莉花が、名家の子息のお見合い練習を引き受けたら相手はなんと皇帝・珀陽で、彼女の特技を知った縁から科挙に合格して官吏を目指すよう言われる中華ファンタジー。明らかに興味津々の皇帝に、そこまでの意気込みもなく戸惑い気味の茉莉花。そんな状況から太学に編集した彼女には様々な出会いや転機があって、覚悟を決めて危機を乗り切った彼女自身にも思いの変化があって。そんな茉莉花が官吏としてヒロインとしてこれから皇帝と今後どのような関係を築いていくのか、続巻が楽しみなシリーズですね。
読了日:08月28日 著者:石田 リンネ
招かれざる小夜啼鳥は死を呼ぶ花嫁 ガーランド王国秘話 (コバルト文庫)招かれざる小夜啼鳥は死を呼ぶ花嫁 ガーランド王国秘話 (コバルト文庫)感想
先王の遺児として寂れた古城で穏やかな幽閉生活を送っていたエレアノール。だがある時、第二王子ダリウスの妃候補として、急遽王宮に召されることになる物語。周囲と隔絶されていた彼女を見守ってきたダリウスと、そんな環境で育ったために客観的な自己評価ができないエレアノールが巻き込まれてゆく宮廷内の陰謀。客観的に見たらなもどかしい二人のすれ違いがちな関係はベタでしたけど、王室周辺を巡る過去の因縁も絡めた複雑な愛憎劇を絡めつつ、よくあるまるっとハッピーエンドではなくほろ苦さも残るような結末に終わったのは印象に残りました。
読了日:08月28日 著者:久賀 理世
夏空白花夏空白花感想
昨日までの正義が否定され誰もが呆然とした終戦。未来を担う若者のために、戦争で失われた「高校野球大会」を復活させなければいけないと奔走する人々が描かれる物語。戦後の混乱期、GHQ占領下で思うようにままならない状況の中の中で始まった高校野球大会復活の動き。何のために復活させようとするのか、中心となって奔走する神住の複雑な想いや周囲の人たちの様々な想いも綴りながら、容易でない状況でも諦めない彼の熱意から意外な縁も繋がっていって、思わぬところから活路を見出し繋げてゆくてゆく熱い展開にはぐっと来るものがありました。
読了日:08月27日 著者:須賀 しのぶ
そいねドリーマーそいねドリーマー感想
不眠症により眠ることができない女子高生・帆影沙耶が出会ったどんな相手でも眠らせられる金春ひつじ。先輩の藍染蘭に適性を見出された沙耶が〈スリープウォーカー〉として人の精神に取り憑く睡獣と戦う添い寝ドリームSFノベル。4人の仲間と睡獣狩りすすめていたはずが、いつの間にか暗雲漂うようになってゆく展開は、夢の中では恋人なのに現実ではぎくしゃくしているひつじとの眠れない/眠らせてしまう二人の不器用な関係性がポイントになっていて、ふわっとした雰囲気の物語はまさにそれを描くために作られたということなんでしょうね(苦笑)
読了日:08月26日 著者:宮澤 伊織
レッドスワンの奏鳴 赤羽高校サッカー部 (メディアワークス文庫)レッドスワンの奏鳴 赤羽高校サッカー部 (メディアワークス文庫)感想
冬の全国高校サッカー選手権への出場を22年振りに決めた赤羽高校サッカー部「レッドスワン」。初戦から選手権連覇中の最強校と当たる彼らの奮闘が描かれる第三弾。勝ち上がるためにやることを突き詰めていく世怜奈監督の戦い方は現実的で、選手層の厚さとか前線の弱さを考えると妥当だったとも思うけど、やっぱり客観的な実力からしたら必要以上にいろんな人を煽り過ぎな感は否めないですね(苦笑)優雅自身にいろいろ自らの想いが見えてきて、これから周囲の関係も少しずつ変わってゆくのかな?その後の物語、書き下ろしの続巻も期待しています。
読了日:08月26日 著者:綾崎 隼
聞こえない君の歌声を、僕だけが知っている。 (メディアワークス文庫)聞こえない君の歌声を、僕だけが知っている。 (メディアワークス文庫)感想
動画サイト上に投稿され社会現象となった音声がないまま歌う「無声少女」。突然なぜか世界でただ一人、無声少女の歌声が聞こえるようになってしまった大学生・永瀬が彼女の歌詞をヒントに彼女を探そうとする物語。永瀬が歌詞を手がかりに調べてゆく無声少女の行方。たどり着いた先で巡り会った少女・サクヤ。二人で無音少女を調べ始めたことは彼らにとっても転機で、ようやく発見した無音少女の切なる願いと永瀬の決断には悲しくもなりましたが、それでも真っ直ぐに訴えかけてくる想いには揺さぶられて、エピローグにはぐっとくるものがありました。
読了日:08月25日 著者:松山 剛
僕のカノジョ先生 (MF文庫J)僕のカノジョ先生 (MF文庫J)感想
過去のトラウマで先生たちに不信感を持つ高校生・彩木慎が、校内で一番人気の美人教師・藤城真香先生に呼び出され唐突に告白されたことからいろいろ巻き込まれてゆくドタバタラブコメディ。魅力的だけれど知れば知るほどポンコツぶりが露呈してゆく真香先生と、それをきっかけに生徒会長やアイドル、果ては妹や小学生にまで告白されてしまう慎。ところどころ作り込みの甘さも散見されましたが、それ以上にイラストを効果的に使って描かれたヒロインたちの破壊力が魅力の作品ですね(苦笑)続巻があるならもう少し登場人物たちの掘り下げを期待です。
読了日:08月24日 著者:鏡 遊
一華後宮料理帖 第七品 (角川ビーンズ文庫)一華後宮料理帖 第七品 (角川ビーンズ文庫)感想
皇帝・祥飛は鳳家当主・朱西と休戦を結び、束の間の平穏に安堵したものの、西沙国の使節には皇女アーシャの姿が。国交樹立に向けた駆け引きもあり、理美の皇后内定者としての立場が揺らぎだす第七弾。祥飛の想いや四夫人の支持はあっても皇帝の責務や政治という現実はあって、状況にたびたび翻弄されても祥飛のために動く理美と、自由を求め周囲を翻弄する皇女アーシャ。そこからの一騒動が今後の転機に繋がりそうな状況で、どんどん立ち位置が微妙になってゆく理美が不憫でしたけど、どうなるのが彼女にとって一番幸せなのか考えてしまいますね…。
読了日:08月24日 著者:三川 みり
貴方がわたしを好きになる自信はありませんが、わたしが貴方を好きになる自信はあります 3 (ダッシュエックス文庫)貴方がわたしを好きになる自信はありませんが、わたしが貴方を好きになる自信はあります 3 (ダッシュエックス文庫)感想
突如として誠一郎の前に姿を現した妹の三夜。一方、真は春香の秘密を暴き共同戦線を張ることに。春香を国外亡命させるため、真面目子ちゃんの協力も得て豪華客船に乗り込む第三弾。逃亡した三夜捜索の進展はないまま、真面目子ちゃんと接触し春香の国外亡命の道を探り準備を進める誠一郎。今回泉さんと真の関係、春香や真面目子ちゃんといった魅力的なヒロインたちの抱える事情が明らかになりましたが、何より神出鬼没の三夜が主導権を握る展開に誠一郎たちがどう立ち向かうのか。このページ数でこれだけ密度のある物語を書いてくるのは流石ですね。
読了日:08月24日 著者:鈴木 大輔
居酒屋ぼったくり 3 (アルファポリス文庫)居酒屋ぼったくり 3 (アルファポリス文庫)感想
美音と馨の姉妹で経営する居酒屋ぼったくり第三弾。お客さんの状態に寄り添うようなきめ細やかな料理だったり、飲み頃や状況に合わせて提供される日本酒だったり、いろいろお客さんの事情を考え過ぎかなのかなと感じるところもあったりする美音さんですけど、それはきちんとお客さん一人ひとりに向き合っている証でもあったりで、お客さんにとって居心地のいい場所なんだなというのはつくづく感じますね。レトルトの活用だったり、ウメさんの幼馴染との再会が印象的でしたが、そういう意味では要さんと美音さんの今後も気になるところではあります。
読了日:08月24日 著者:秋川 滝美
異世界迷宮の最深部を目指そう 11 (オーバーラップ文庫)異世界迷宮の最深部を目指そう 11 (オーバーラップ文庫)感想
迷宮から地上への脱出を果たしたカナミ、ライナー、ティティーの3人。1年が経過していてすっかり様変わりしていたフーズヤーズ、そしてカナミは最愛のひとラスティアラと再会を果たす第十一弾。カナミの思ってもみなかった行動とその斜め上をいくラスティアラの想い。以前とは別人のようにしっかりしていたスノウもカナミと再会したらすっかりあんなだし、物語的には盛り上がるはずのアイドとの決戦の舞台は整った感はありますが、これ、真の最終決戦はカナミを巡るヒロインたちの争いなんじゃ…(遠い目)とか思うのはたぶん私だけじゃないはず。
読了日:08月23日 著者:割内タリサ
猫町くんと猫と黒猫猫町くんと猫と黒猫感想
猫町夫妻に助けられた人間に化けられるという特技を持つ光太郎。猫ゆえの成長の早さで、二歳半ながら高校に通っている彼が密かに同級生の井浦さんに恋心を抱く青春小説。ちょっと変わった猫たちにも理解がある広島・尾道を舞台とした世界観で、転校生の化け猫たちに絡まれたりしながらも、困っている友人のために奔走したり、片想いの相手・井浦さんとの不器用な距離感や甘酸っぱいやりとりだったり、そんな悩み多き青春を精一杯生きる光太郎のありようと、そんな彼の想いにきちんと向き合って応えてくれる井浦さんの関係がなかなか良かったですね。
読了日:08月22日 著者:樒屋 京介
本のエンドロール本のエンドロール感想
就職説明会で「印刷会社はメーカーです」といった営業・浦本、夢を「目の前にある仕事を手違いなく終わらせる」とした仲井戸。斜陽産業と言われる印刷業界を描いたお仕事小説。浦本と仲井戸という対照的な二人を軸に、登場人物たちと家族や出版社編集とのやりとり、それぞれの仕事ぶりや印刷工場でのトラブル、電子書籍なども絡めて描かれる印刷業界の今はなかなか厳しくて、それでもその状況の中で仕事に真摯に向き合い、自らが印刷業界がどうあるべきか、できることはないのかと模索し続ける彼ら熱い想いと奮闘ぶりには心に響くものがありました。
読了日:08月22日 著者:安藤 祐介
長崎新地中華街の薬屋カフェ (小学館文庫キャラブン!)長崎新地中華街の薬屋カフェ (小学館文庫キャラブン!)感想
優秀な営業成績を認められ長崎の店舗へと配属されたドラッグストアで働く藤子。そんな彼女が仕事で遭遇する出来事や長崎新地中華街の「薬屋カフェ」で働く青年・ワンとの出会いが描かれるお仕事小説。真摯に働く藤子が直面する身近な店舗ならではのエピソードや人間関係の難しさ、薬屋カフェらしい美味しい食べ物や飲み物の話は興味深くて、全体としては恋愛小説というよりはやや仕事の方に比重が置かれた展開だったかなと感じましたけど、愛人さんの謎含めてわりと鈍感な藤子さんが遠回りしながらも心を通わせていく結末はなかなか良かったです。 
読了日:08月21日 著者:江本 マシメサ
小説の神様 あなたを読む物語(上) (講談社タイガ)小説の神様 あなたを読む物語(上) (講談社タイガ)感想
二人で書き上げたひとつの物語。その評価を目にしてしまい心揺れる一也と詩凪。それに後輩の秋乃の葛藤も語られてゆく第二弾。一度完結した物語の続編を書くべきなのか、違った立ち位置から迷う一也と詩凪。先輩作家・春日井が語るエピソードには実感がこもってるなあと思いましたが、大好きな本に関する様々なことやかつて裏切ってしまった友人に自分はどうあるべきか思い悩む秋乃もまた今回のキーパーソンで、人の心を動かす物語を信じたい彼らが直面する出版界の厳しい現実に向き合いどんな答えを出すのか、九月刊行の下巻が早く読みたいですね。
読了日:08月20日 著者:相沢 沙呼
ヒトよ、最弱なる牙を以て世界を灯す剣となれ グラファリア叙事詩 (ファンタジア文庫)ヒトよ、最弱なる牙を以て世界を灯す剣となれ グラファリア叙事詩 (ファンタジア文庫)感想
人間が覇権を失い他種族の家畜や奴隷として虐げられる世界。ヒトが誇りをもって生きられる国を作るという大望を抱くジノが、公国の跡継ぎ候補ながら辺境で燻っていたヴァンパイアの姫ヘネシーと運命的な出会いを果たすファンタジー。被支配層のヒトながら貪欲な学習意欲もあって機知に富み、ヘネシーたちに自らの存在を認めさせたジノ。急速に信頼関係を深めながらも安直には変わらない二人の距離感があって、急展開からの唐突に訪れた難しい局面もギリギリで乗り切って、ここからどう広がってゆくのか今後が楽しみな新シリーズですね。
読了日:08月20日 著者:上総 朋大
お助けキャラに彼女がいるわけないじゃないですか3 (ファンタジア文庫)お助けキャラに彼女がいるわけないじゃないですか3 (ファンタジア文庫)感想
庄川妹・真琴の恋を成就させるため夏休みの海旅行でもフォローする平地。一方で大胆な『特別』発言をした庄川と好乃もお約束の水着や浴衣姿で平地にアタックし始める第三弾。会話が噛み合っていないことに気づかぬまま迷走を重ねる展開は今回も健在で、しかし今回は魔光少女がドキドキすると怪人が出現するとかいう設定はラブコメ的にどうなんですか(苦笑)相変わらず鈍感で自己評価どん底な平地を、魔光少女二人の不器用な想いが少しずつ変えていって、自覚した想いにきちんと決着をつけた結末はなかなか良かったですね。次回作も期待しています。
読了日:08月20日 著者:はむばね
デート・ア・ライブ19 澪トゥルーエンド (ファンタジア文庫)デート・ア・ライブ19 澪トゥルーエンド (ファンタジア文庫)感想
最終決戦手前の日へと戻ることに成功した士道。祟宮澪によってこれまで積み上げてきたものを全て壊される最悪の結末を回避するため、令音にデートを申し込む第十九弾。精霊たちのサポートも受けながら崇宮澪と向き合おうとする士道。そしてそんな状況に介入してくるウェストコットとDEM社。精霊たちも戦う総力戦の状況で今回も狂三がいい感じにジョーカー役として効いていて、士道と澪の想いを絡めたウェストコットとの最終対決とその決着は流石でしたけど、そこからさらにもう一波乱を予感させる意外な結末に驚かされました。これは続巻も期待。
読了日:08月19日 著者:橘 公司
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦5 (ファンタジア文庫)キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦5 (ファンタジア文庫)感想
交換条件でシスベル護衛を引き受け皇庁を目指することになったイスカ。真意を知らないアリスリーゼは寄り添う二人を目撃して大いに心を乱され、一方王宮では女王ミラベアを狙った暗殺事件が起きる第五弾。帝国人を護衛に雇うとかいうあるのかないのかよくわからない大義名分を得てイスカべったりのシスベルと、突然の強力過ぎるライバル出現に自覚もないまま感情を爆発させるアリスのポンコツっぷりが凄いですね(苦笑)三派閥や帝国の思惑も絡む中でまさかの長女参戦もありそうで、振り回されるイスカ(と仲間たち)の受難はまだまだ続きそうです。
読了日:08月19日 著者:細音 啓
ジャナ研の憂鬱な事件簿 (4) (ガガガ文庫 さ 11-4)ジャナ研の憂鬱な事件簿 (4) (ガガガ文庫 さ 11-4)感想
互いに意識しつつも大きな進展はないジャナ研の啓介と真冬。次々と鮮やかな推理で事件を解決し多くの人を救ってゆく啓介に真冬がとある提案をする第四弾。盗まれた写真部の金魚、介護施設でとある老人の部屋が荒らされた理由、そして空き教室で後輩が見た幽霊の正体。啓介が次々と謎を解き明かし向き合ったことで救われた人たちがいて、彼に対する期待が高まっていったからこそ顕在化した真冬との意見の対立があって。そこに思わぬ誤解も重なったりで、ここから啓介が自分の想いにどう向き合うのか、どう行動を起こすのか次巻を早く読みたいですね。
読了日:08月18日 著者:酒井田 寛太郎
アサシンズプライド8 暗殺教師と幻月革命 (ファンタジア文庫)アサシンズプライド8 暗殺教師と幻月革命 (ファンタジア文庫)感想
王爵セルジュが突如としてランカンスロープとの融和という革命を宣言。ワーウルフ族が都市に公然と姿を現す一方で、メリダが革命を止めると記された予言書が見つかる第八弾。どんどん甘さマシマシになってゆく主従には苦笑いでしたが、今回は無血主義者というワーウルフ族がどんどん存在感を増す状況で、仲間とも分断された状態での主従二人の逃避行展開。王爵セルジュの思惑が依然として謎のまま、無血主義とワーウルフ族の本質に迫りながら、仲間たちの協力も得て聖王区に乗り込んでいく展開は珍しく分冊構成で、次巻に向けた期待が高まりますね。
読了日:08月18日 著者:天城ケイ
暁花薬殿物語 (富士見L文庫)暁花薬殿物語 (富士見L文庫)感想
薬師を目指していたはずが代役で急遽入内することになってしまった暁下姫こと千古。大貴族出身4人の后候補が揃う宮廷でうまく抜け出すことばかり考えていた彼女が、帝と出会い少しずつ変わってゆく平安宮廷風ファンタジー。幼馴染や乳母たちと共に後宮入りすることになったお転婆で快活な千古が巻き起こす数々の騒動。宮廷内で味方もなく孤立する案外似た者同士だった帝との意外な出会い。そんな彼女が周囲に支えられつつらしさを発揮し、帝とも前向きに向き合うようになってゆく展開はなかなか良かったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。
読了日:08月17日 著者:佐々木 禎子
華仙公主夜話 その麗人、後宮の闇を討つ (富士見L文庫)華仙公主夜話 その麗人、後宮の闇を討つ (富士見L文庫)感想
仙人の力を借りて建国した伝説を持つ基照国。先帝の落とし胤と噂の酒楼の女主・明花のもとに、滅亡寸前の国と幼い次期皇帝・紫旗を守るため次期宰相の李伯慶が訪ねてくる中華ファンタジー。紫旗を取り巻く不穏な状況とそれを打開するために動く伯慶、可愛い紫旗を助けたいという思いからその誘いに乗る明花。テンポの良いストーリーに紫旗のためという利害の一致で相棒となった腕力頼み公主とケチな伯慶が、言い争いながらも相手のことを認め合うようになってゆくサッパリした関係もなかなか良かったですね。続刊あるようならまた読んでみたいです。
読了日:08月16日 著者:喜咲冬子
未来職安未来職安感想
国民が99%の働かない消費者と、働く1%のエリート生産者に分類された平成よりちょっと先の未来。運悪く県庁勤めを退職しなければならなくなった目黒が、少し変わった大塚を所長とする職安に転職し、仕事を求めて訪れる様々な人々と出会う近未来小説。財源的な部分をどう解決するのかは気になりましたが、仕事が機械に置き換えられてゆく中であえて人がする仕事とは何か?確かにそんな状況になったら消費者と生産者との間の微妙な距離感とか、仕事に対する本末転倒的な発想とか、いかにも起こりそうな興味深いエピソードがなかなか良かったです。
読了日:08月15日 著者:柞刈 湯葉
君の話君の話感想
記憶改変技術「義憶」が普及した世界。二十歳の夏、天谷千尋が一度も出会ったことのない、存在しないはずの幼馴染・夏凪灯火と再会し動き出す物語。何もない過去を消したかったはずが、植え付けられたたった一人の幼馴染の鮮明な記憶。あまりにも運命的な再会から突如目の前に現れた灯花の存在を疑いながらも、どうしようもなく惹かれてゆく千尋。そこにはもうひとつの物語があって、不器用でお互い遠回りせざるをえなかった二人がきちんと向き合って、儚く切ないけれど優しさが感じられる物語の結末に著者さんらしさがよく出ていると思いました。 
読了日:08月14日 著者:三秋 縋
ぼんくら陰陽師の鬼嫁 四 (富士見L文庫)ぼんくら陰陽師の鬼嫁 四 (富士見L文庫)感想
出張祈祷に出かけた芹たち一行。帰りに急な天荒不良に遭ってオーベルジュに一泊することになり、その宿で降霊術を行う北御門元門人と自称霊能者に出会う第四弾。嫌みな姑・史緒佳との関係も徐々に改善しつつあると感じていた芹が出会った元姉弟子・薙子の存在。彼女の口から語られる北御門家の過去を聞いて、思わぬところに動揺し巻き込まれてしまうしまう芹。いやほんと実は契約旦那より義母の方が大好きなんじゃとかいう流れには苦笑いでしたが、北御門家の過去はこれから明らかになるんですかね。改めて皇臥との関係進展含めて続巻も楽しみです。
読了日:08月13日 著者:秋田 みやび
錆喰いビスコ2 血迫!超仙力ケルシンハ (電撃文庫)錆喰いビスコ2 血迫!超仙力ケルシンハ (電撃文庫)感想
錆喰い由来の特殊体質を治すべく、大宗教国家・島根を訪れたビスコたち。そんな一行の前に野望の不死僧正・ケルシンハが立ちはだかり、不意打ちでビスコが胃を盗まれてしまう第二弾。胃を盗まれても生きているビスコには苦笑いでしたが、本調子でないビスコに代わって相棒のミロが大活躍の二巻目でしたね。復活を目指す不死僧正・ケルシンハと出雲六塔の対立に、ビスコを兄と慕うアムリィの因縁も絡めて、強敵を相手に苦戦しながらも、ミロや駆けつけた仲間たちと力を合わせてぶちのめす熱い戦いは今回も痛快でなかなか良かったです。続巻も期待。 
読了日:08月13日 著者:瘤久保 慎司
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXIV (電撃文庫)ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXIV (電撃文庫)感想
ついに帝国本土へと侵攻を始めたキオカ軍。爆砲の圧倒的な威力に塹壕戦で対抗する帝国軍との最終決戦と、その後の結末が描かれる第十四弾。リアルタイムで把握し対応できるようになった戦場で、細部は部下の判断に委ね無理せず被害を最小限にして時を待つイクタと、全てを把握して判断を下すジャン。その戦いの決着はなるほどと思う展開でしたけど、そこからのそれぞれが良かれと思い本音をぶつけ合った末の結末は、彼のこれまでの想いを考えたらああするしかなかったんだろうと思いますし、それはそれで納得感がありました。完結お疲れ様でした。 
読了日:08月11日 著者:宇野 朴人
魔法科高校の劣等生(26) インベージョン編 (電撃文庫)魔法科高校の劣等生(26) インベージョン編 (電撃文庫)感想
スターズ本部基地で起きた叛乱により日本に逃げ込んだリーナは、達也と深雪の手引きにより四葉家が実質的に支配する『巳焼島』へ潜伏先を移し、再度水波を連れ出すため光宣が病院襲撃を開始する第二十六弾。スターズはそんな簡単に掌握されてしまうものなのかとも思う一方で、リーナの保護を巡って軍とは緊張感ある距離感になり、真由美や七草姉妹・十文字、ミキたち学校組や黒羽姉弟などにもそれぞれ見せ場があった光宣迎撃でしたけど、パラサイト絡みの2つのエピソードが繋がりだして次が本番ですかね。一線を超えてしまった光宣が気になります。
読了日:08月10日 著者:佐島 勤
我が驍勇にふるえよ天地8 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)我が驍勇にふるえよ天地8 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)感想
アドモフ統治の準備を着々と進めるレオナート。一方パリディーダ帝国へと出征中だった冷血皇子キルクスも動き出し、首都クラーケンの混乱が南方帝国ガビロンの侵略軍を招き入れてしまう第八弾。着々とアドモフの人材を招き入れて随分陣容が厚くなった一方で、それを無視できなくなった各陣営も動き出した転機。斜陽だったとはいえあまりにもあっけないクロード帝国の終焉でしたけど、三つ巴の戦いに収束していく中でキルクスとの関係にどう決着をつけるのかは気になるところ。印象的なエピソードを重ねた末にあった結末はちょっと切なかったです…。
読了日:08月10日 著者:あわむら 赤光菓子屋横丁月光荘 歌う家 (ハルキ文庫 ほ 5-1)菓子屋横丁月光荘 歌う家 (ハルキ文庫 ほ 5-1)感想
幼い頃から家の声が聞こえる不思議な力を持つ大学院生・遠野守人が、縁あって川越は菓子屋横丁の一角に建つ築七十年の古民家で住み込み管理人をすることになり、様々な人や家と出会ってゆく物語。親や祖父母を喪った守人が、古民家に移り住んだことで出会う様々な縁や古い家たちの声。彼のことを気にかけてくれる木谷先生や後輩のべんてんちゃんたちに支えられながら、人の繋がりや彼らの想いにも触れて、少しずつ自らの過去とも向き合うようになってゆく展開はなかなか良かったです。ここから物語がどう広がってゆくのか期待の新シリーズですね。 
読了日:08月09日 著者:ほしおさなえ
浅草鬼嫁日記 五 あやかし夫婦は眷属たちに愛を歌う。 (富士見L文庫)浅草鬼嫁日記 五 あやかし夫婦は眷属たちに愛を歌う。 (富士見L文庫)感想
浅草で暮らす真紀の周りに集いつつある前世の眷属たち。真紀が馨や彼らと事件を解決してゆく中で浅草を守る七福神に異変が起きる第五弾。うっかり男子に告白される真紀だったり、そんな彼女に心穏やかでいられない馨の揺るぎない関係や、叶先生の式神たちの不器用な優しさだったり、二人を暖かく見守る態勢にはついニヤニヤしてしまいますが、浅草を取り巻く不穏な状況やあやかしを脅かす狩人の存在、そして真紀の眷属を巡るエピソードはこれからも物語の鍵を握りそうですね。みんな幸せになれるといいなと思いつつ続巻を楽しみにしています。
読了日:08月09日 著者:友麻碧
りゅうおうのおしごと! 9 (GA文庫)りゅうおうのおしごと! 9 (GA文庫)感想
わずか十歳にしてタイトル挑戦を決めた夜叉神天衣が、史上最強の女性棋士にして師匠の姉弟子・空銀子に挑む第九弾。思わぬ形で幕を閉じた初対局、そしてかつて戦った女流棋士たちによって語られる銀子の突き抜けた強さ。天衣とはやや距離があるように見えた八一もきちんと師匠として見守ってきたんですね。家族や師匠との絆、女流棋士たちの熱い想いが垣間見えた今回、改めてその特異な立ち位置が浮き彫りになった銀子の孤高っぷりが半端ないですが、素直になれない彼女を八一は勘違いしてますよね…彼女を支えられるのは彼だけだと思うんですが。 
読了日:08月08日 著者:白鳥 士郎
風に恋う風に恋う感想
かつての栄光は見る影もなくなってしまっていた名門高校吹奏楽部。そこへ黄金時代の部長だった不破瑛太郎がコーチとして戻ってきて、入部したばかりの一年生の基を部長に任命する青春小説。幼馴染の部長・玲於奈の誘いにも入部に乗り気でなかった基を変えた瑛太郎の存在。部長としてひとりの演奏者として苦悩しながらもひたむきな想いでのめり込んでいく基。複雑な想いが入り交じる部員それぞれの葛藤に、自身もまた悩みを抱える瑛太郎も迷いながらもしっかり向き合って、全国大会目指して一丸となってゆく展開にはぐっと来るものがありました。 
読了日:08月08日 著者:額賀 澪
宮廷神官物語 三 (角川文庫)宮廷神官物語 三 (角川文庫)感想
夏休み、学友の笙玲らと街へ出た天青は、深刻な水不足に苦しむ庶民に胸を痛め、さらには誘拐されてしまう。一方、体調を崩した王に代わり藍晶王子が代理を務める中、鶏冠が窮地に陥る第三弾。現場を見て想像以上に苦しい貧民層の暮らしを知った天青と、次期王位を巡る争いに巻き込まれてゆく鶏冠。お互い出会ったことが人生の転機に繋がった天青と鶏冠でしたけど、共に過ごすうちにいつの間にやら相手がそばにいるのが当たり前になったというか、かけがえのない存在になりつつあるんですね。少しずつとはいえこれからも苦境は続きそうで続巻に期待。
読了日:08月07日 著者:榎田 ユウリ
華耀後宮の花嫁 時を越えたら、溺愛陛下!? (角川ビーンズ文庫)華耀後宮の花嫁 時を越えたら、溺愛陛下!? (角川ビーンズ文庫)感想
隣国の第三皇子、朔耀(10歳)に輿入れしたワケあり公主・翡翠。逃亡計画の途中で翡翠は朔耀と放火に巻き込まれ、何とか脱出してみれば外では十年が経過し、先に逃した朔耀と年齢が逆転していた中華ファンタジー。いつの間にか年上になり皇帝として再会した朔耀に抱く複雑な想い。共に過ごしていく中で徐々に変わってゆく翡翠の心境と、朔耀と国を取り巻く複雑な事情。序盤は展開が早かったですが、苦境に追い込まれ朔耀のために翡翠が奮闘する展開はなかなか良かったですね。ここから物語としてどう展開するのか、続巻あるなら読んでみたいです。
読了日:08月07日 著者:山崎里佳
法律は嘘とお金の味方です。 京都御所南、吾妻法律事務所の法廷日誌 (集英社オレンジ文庫)法律は嘘とお金の味方です。 京都御所南、吾妻法律事務所の法廷日誌 (集英社オレンジ文庫)感想
敏腕だがお金に汚い弁護士・吾妻正義の孫つぐみは、嘘をついている人の顔が歪んで見える特殊能力を持つ女子高生。幼馴染の検察官・汐見草司もたびたび巻き込んで持ち込まれる案件を解決してゆく物語。相続放棄を迫られた後妻、詐欺師扱いされた投資コンサルタントDQNネームを改名したい女子高生、隣人から引っ越しを迫られる犯罪者の息子といった何とも複雑な事件に正義もまた濃い存在で、ワケありの過去を抱えた登場人物たちそれぞれの物語、そして複雑にこじれていたつぐみと草司の今後も気になりますし、またこの続きを読めたらいいですね。
読了日:08月06日 著者:永瀬 さらさ
体育会系探偵部タイタン! (講談社タイガ)体育会系探偵部タイタン! (講談社タイガ)感想
中学最後の試合で惨敗して二度と野球はしないと誓った白石球人。高校入学後、自分の居場所を探す彼が体育会系探偵部(タイタン)の活動に巻き込まれてゆく青春ミステリ。学園内での連続盗難、校内新聞の連続模倣事件、ネットで暴露し続けるアカウントといった身の回りで立て続けに起こる事件。いかにも体育会系なタイタンの面々に振り回されながらも、宿敵・ブンタンとの勝負に挑むバカで熱い想いが感じられる展開は、こっそり陰から助けてくれる幼馴染な女の子との関係がいいアクセントになっていて、続きがあるならまた読んでみたいと思いました。
読了日:08月06日 著者:清水 晴木
算額タイムトンネル 2 (講談社タイガ)算額タイムトンネル 2 (講談社タイガ)感想
天才数学少女の波瑠と幕末の和算家・橘実信との算法対決により改変されてしまった歴史。代償として失われた親友・千明が持つ波瑠の記憶を取り戻すため再びタイムトンネルを繋ぐ術を探し求める第二弾。親友を救ってくれた波瑠へと繋がる唯一の手がかりを求め、普仏戦争時のフランスへ留学する実信。二人の想いが交錯して再会した彼らが直面する明暦の大火と算額における大切な存在。思っていたよりもずいぶんとダイナミックな展開になりましたが、二人の奮闘が大切なものを取り戻し、いろいろと繋がる形に収束してゆく結末はなかなか良かったです。 
読了日:08月05日 著者:向井 湘吾
八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)感想
「最後のチャンス」と位置づけたピアノコンクール予選で落選した高校三年生の北沢鳴海。諦められない彼が時間を巻き戻すため、トリガーとなる音楽の神に愛された少女・神崎杏子と久しぶりに再会する青春小説。かつて才能の差を見せつけられたのに彼女にときめいてしまう鳴海が、そのたびに何度もやり直して距離を置いた過去と、再びピアノと彼女への想いに葛藤し続けたリピートの思わぬ結末。そして明かされてゆくもう一つの物語。託された真実を知った鳴海が大切な人のために、そして自らの想いや夢を取り戻すべく奔走するとても素敵な物語でした。
読了日:08月04日 著者:喜多 南
活版印刷三日月堂 雲の日記帳 (ポプラ文庫)活版印刷三日月堂 雲の日記帳 (ポプラ文庫)感想
縁が繋がって活動の幅や場を広げてゆく川越の小さな活版印刷所「三日月堂」。仕事を続けてゆく中で弓子が見出した自らの想いと、「三日月堂の夢」が少しずつ形になってゆく第四弾。プラネタリウム「星空館」の木口木版で作られた星座早見盤、大学生のゼミで作った雑誌、活版印刷での本づくり。これまでの縁が繋がって可能性が広がってゆく活版印刷と、弓子自身の複雑な想いに対する葛藤。真摯な彼女の姿勢や想いは周囲の人やその心を揺さぶるものがありますね。これからの可能性を感じさせつつの完結は残念ですが、とても大好きな優しい物語でした。
読了日:08月03日 著者:ほしお さなえ
感情の問題地図 ~「で、どう整える?」ストレスだらけ、モヤモヤばかりの仕事の心理感情の問題地図 ~「で、どう整える?」ストレスだらけ、モヤモヤばかりの仕事の心理感想
ストレスだらけモヤモヤばかりの仕事環境で「怒り」「悲しみ」「落ち込み」「不安」といった感情と上手く向き合い、付き合ってゆくのか。最新の動向を踏まえつつ、そんな感情を解き明かして対処法を提示する一冊。どんな感情でも基本的な対処法はそう変わらなくて、まずはどうしてそんな感情がもたらされたのか原因を見極めて、落ち着いてきちんと向き合い理解すること、その上でどうすればそれが解消されるのか、緩和するのか建設的なアプローチで考えてゆくことを説いた一冊で、感情的な時こそ客観的に捉えるのことの大切さを改めて実感しました。
読了日:08月03日 著者:関屋 裕希
原之内菊子の憂鬱なインタビュー (小学館文庫キャラブン!)原之内菊子の憂鬱なインタビュー (小学館文庫キャラブン!)感想
崖っぷち編プロ「三巴企画」の戸部社長と桐谷が弁当屋で見出した原之内菊子。その顔を見た者は自分語りが止まらなくなってしまう特殊能力を活かして、インタビューとして働くお仕事小説。引き出される本音ダダ漏れのインタビューに悪戦苦闘しながらも可能性を感じる桐谷と、自らも苦悩しながらそこに居場所を見出してゆく菊子。苦い過去を積み重ねてきた彼女が特殊能力によってもたらされた事態の重さに逃げ出して、それでもそんな彼女が必要だと追いかけてきた二人や周囲の人たちに認められ、乗り越えてゆく優しい結末はなかなか良かったですね。 
読了日:08月03日 著者:大山 淳子
カラフル ――明日の君は、十二月のひまわり。 (講談社ラノベ文庫)カラフル ――明日の君は、十二月のひまわり。 (講談社ラノベ文庫)感想
一人暮らしをすることになった高一の夏、十一年ぶりにミコトの前に現れた幼稚園の頃に海外に引っ越した幼馴染・叶恋。短期留学で日本にやってきた彼女と同じ部屋で同棲する物語。コスプレだったりミコトとと一緒の学校に通ったり楽しい日々を送る彼女が隠す秘密と、そんな彼女の登場に危機感を抱くもうひとりの幼馴染・来夢。ストーリーとしては叶恋の抱える秘密にどう向き合うのかという分かりやすい構図で、方向性が見えているだけに展開にあまり意外性はなかったですが、一途な叶恋のために奮闘するミコトが迎えた結末はなかなか良かったですね。
読了日:08月02日 著者:椎月 アサミ
ねじまき片想い (創元推理文庫)ねじまき片想い (創元推理文庫)感想
楚々として控えめな外見とは裏腹に、活躍浅草にある老舗おもちゃ会社で敏腕プランナーとして働く富田宝子。五年も想いを伝えられずにいる宝子が、仕事のできない取引先のデザイナー西島のために奮闘する恋の物語。知れば知るほど残念ぶりに磨きがかかる西島相手に、屋上に設置された貯水タンクを排除したり、盗まれたお宝テレカを取り戻そうとしたりと、奮闘するのに報われない諦めの悪い宝子。彼とようやく一緒に過ごしたらお互いダメになる関係という皮肉に、ようやく芽生えた自発的な意志が局面打開の転機に繋がってゆく結末は良かったですね。 
読了日:08月01日 著者:柚木 麻子
京都左京区がらくた日和 謎眠る古道具屋の凸凹探偵譚 (集英社オレンジ文庫)京都左京区がらくた日和 謎眠る古道具屋の凸凹探偵譚 (集英社オレンジ文庫)感想
周囲にうまく馴染めない女子高生の雛子が、風変わりな近所の『古道具屋石川原』で名無しの女学生の日記を発見し、店主の郷さんと交流を持ってゆく物語。京都らしさに触れつつ、店主と一緒に戦中の女学生の日記、複数の持ち主が名乗り出たティディベア、かつてプレゼントした腕時計が売りに出された理由、幽霊が落とし物といった謎を解いてゆく雛子。いい話だけでなくほろ苦さも交じるエピソードでしたが、それでも何とかしたいという雛子の優しさが事態をいい方向に導いてゆく、なかなかいい物語だと思いました。続巻あるならまた読んでみたいです。
読了日:08月01日 著者:杉元 晶子

読書メーター

9月の購入検討&気になる本ほかピックアップ

 

というわけで多忙につき更新が遅くなりましたが、9月の購入検討&気になる本ほかピックアップです。9月は3月と並んで毎年刊行が多い時期ですが、新作も続刊も注目作品が目白押しです。追いかけているシリーズも集中していて、ここまでたくさんあると全部読むのは予算的にも物理的にも無理なので、できるだけたくさん読む方法を模索しつつ、悲しい話ですが諦める本を選ばないといけなくなりそうです。

 

続巻では「書店ガール」「東京すみっこごはん」「小説の神様」「ビブリア古書堂の事件手帖」「2.43 清陰高校男子バレー部」あたりなど人気シリーズがありますが、新作を選ぶのも悩ましいところですけど講談社ラノベ文庫の「ゼロから始める魔法の書」と世界観が同じらしき「魔法使い黎明期」含む新作3点、スニーカー文庫の「キミの忘れかたを教えて」ファンタジア文庫の「名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を」、移籍しての魔弾の新シリーズ「魔弾の王と凍漣の雪姫」を挙げておきます。もう刊行少し分散してくれればいいのに(苦笑)

銀色の月は夜を歌う (講談社ラノベ文庫)

銀色の月は夜を歌う (講談社ラノベ文庫)

 
公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

 
キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

 
名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を (ファンタジア文庫)

名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を (ファンタジア文庫)

 
魔弾の王と凍漣の雪姫 (ダッシュエックス文庫)

魔弾の王と凍漣の雪姫 (ダッシュエックス文庫)

 

 

講談社ラノベ文庫(8/31発売)
【新】劣等生と杖の魔女 虎走かける/いわさきたかし
【新】銀色の月は夜を歌う 望月唯一/うみのみず
【新】公園で高校生達が遊ぶだけ 園生凪/トコビ

HJ文庫(9/1発売)
最強魔法師の隠遁計画7 イズシロ/ミユキルリア
精霊幻想記 11.始まりの奏鳴曲 北山結莉/Riv
【新】嫌われ魔王が没落令嬢と恋に落ちて何が悪い! 猫又ぬこ/teffish

スニーカー文庫(9/1発売)
【新】キミの忘れかたを教えて あまさきみりと/フライ
真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました2 ざっぽん/やすも
【新】僕は君に爆弾を仕掛けたい。 高木敦史/遠坂あさぎ
【新】リオランド 01.最慧の騎士と二人の姫 岩井恭平/れい亜

ポプラ文庫ピュアフル(9/1発売)
「私が笑ったら、死にますから」と、水品さんは言ったんだ。 隙名こと
明日、世界が消える前に 霜月りつ

文春文庫(9/4発売)
京洛の森のアリス II 自分探しの羅針盤 望月麻衣

小学館文庫キャラブン!(9/6発売)
なぞとき遺跡発掘部 甕棺には誰がいますか? 日向夏/vient
さくら花店 毒物図鑑 夏の悪夢 宮野美嘉/上条衿

宝島社文庫(9/6発売)
【文】図書館ドラゴンは火を吹かない 東雲佑

電撃文庫(9/7発売)
はたらく魔王さま!19 和ヶ原聡司/029
【新】ゴスロリ卓球 蒼山サグ/マナカッコワライ
【新】七つの魔剣が支配する 宇野朴人/ミユキルリア
【新】黒の英雄と駆け出し少女騎士隊 上月司/山椒魚

ポプラ社単行本(9/7発売)
猫は笑ってくれない 向井康介

中央公論新社単行本(9/7発売)
愛なき世界 三浦しをん

PHP文芸文庫(9/9発売)
書店ガール7 旅立ち 碧野 圭

TOブックス単行本(9/10発売)
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第四部 「貴族院の自称図書委員 IV」 香月美夜/椎名優

 

祥伝社単行本(9/10発売)

ドアを開けたら 大崎梢


光文社文庫(9/11発売)
東京すみっこごはん4 (仮) 成田名璃子

創元推理文庫(9/12発売)
【文】図書館の殺人 青崎有吾

双葉文庫(9/13発売)
太秦荘ダイアリー 望月麻衣
僕は僕の書いた小説を知らない 喜友名トト

ハルキ文庫(9/14発売)
隠し味は殺意 ランチ刑事の事件簿 七尾与史

GA文庫(9/15発売)
【新】ちょろいんですが恋人にはなれませんか? 七条剛/TwinBox
天才王子の赤字国家再生術2 ~そうだ、売国しよう~ 鳥羽徹/ファルまろ
可愛い女の子に攻略されるのは好きですか?3 天乃聖樹/kakao
最弱無敗の神装機竜16 明月千里/春日歩
29とJK 5 ~消えない模様~ 裕時悠示/Yan-Yam

富士見L文庫(9/15発売)
星に願いを、君に祈りと傷を 清水晴木/shimano
縁結び神社の悪魔さま 森川秀樹/新井テル子
契約結婚ってありですか2 結婚式は誰のもの? 紅原香/さかもと侑

講談社タイガ(9/18発売)
小説の神様 あなたを読む物語 (下) 相沢沙呼/丹地陽子
ミウ ーskeleton in the closetー 乙野四方字

ガガガ文庫(9/19発売)
七星のスバル7 田尾典丈/ぶーた
月とライカと吸血姫4 牧野圭祐/かれい
やがて恋するヴィヴィ・レイン7 犬村小六/岩崎美奈子

ファンタジア文庫(9/20発売)
【新】名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を ミズノアユム/切符
グランクレスト戦記DO 英雄の系譜 水野良/深遊
ファイフステル・サーガ2 再臨の魔王と公国の動乱 師走トオル/有坂あこ
ロクでなし魔術講師と追想日誌3 羊太郎/三嶋くろね
デュシア・クロニクル 十二騎士団の反逆軍師 III 大黒尚人/ゆらん
放課後は、異世界喫茶でコーヒーを4 風見鶏/u介
始まりの魔法使い4 魔術の時代 石之宮カント/ファルまろ
豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい6 合田拍子/nauribon

集英社オレンジ文庫(9/20発売)
Bの戦場 5 さいたま新都心ブライダル課の変革 ゆきた志旗/伊東フミ
鍵屋のとなりの和菓子屋さん 2 つつじ和菓子本舗のこいこい 梨沙/ねぎしきょうこ
京都伏見は水神さまのいたはるところ 相川 真/白谷ゆう
とっておきのおやつ。 5つのおやつアンソロジー 青木祐子ほか/イシヤマアズサ

集英社文庫(9/20発売)
マダラ 死を呼ぶ悪魔のアプリ 喜多喜久

ダッシュエックス文庫(9/21発売)
【新】魔弾の王と凍漣の雪姫 川口士/美弥月いつか

新潮社単行本(9/21発売)
ひとつむぎの手 知念 実希人
友情だねって感動してよ 小嶋 陽太郎

角川文庫(9/22発売)
真実は間取り図の中に 半間建築社の欠陥ファイル 皆藤黒助
青春は探花を志す 金椛国春秋 篠原悠希
櫻子さんの足下には死体が埋まっている キムンカムイの花嫁 太田紫織/鉄雄
ビストロ三軒亭の謎めく晩餐 斎藤千輪

メディアワークス文庫(9/22発売)
ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子さんと不思議な客人たち~ 三上延
おとなりの晴明さん 第三集 ~陰陽師は夏の星を祝う~ 仲町六絵
レッドスワンの飛翔 赤羽高校サッカー綾崎隼/ワカマツカオリ
真夜中は旦にゃ様 二 ~モノノケ、千年の恋をする~ 帆高けい
農村ガール! 上野遊

MF文庫J(9/25発売)
【新】おまえ本当に俺のカノジョなの? 落合祐輔/ろうか
15歳でも俺の嫁!2 即日同棲から始まる電子書籍革命 庵田定夏/はまけん。
ぼくたちのリメイク5 ぼくたちに足りないもの 木緒なち/えれっと
【新】サブヒロインだって攻略されたい! ルートがなくても愛してくれますか 藍藤唯/萌木雄太
君死にたもう流星群2 松山剛/珈琲貴族
Re:ゼロから始める異世界生活17 長月達平/大塚真一郎

集英社単行本(9/26発売)
2.43 清陰高校男子バレー部 ~春高編~ 壁井ユカコ

新潮文庫nex(9/28発売)
任侠狸の飼い猫 額賀澪

ミステリ・フロンティア(9/28発売)
夏を取り戻す 岡崎 琢磨

ファミ通文庫(9/29発売)
覇剣の皇姫アルティーナ XIV むらさきゆきや/himesuz

2018年7月に読んだ新作おすすめ本

 というわけで7月に読んだ新作おすすめ本です。例によってラノベ以外は周回遅れが常態化していますが、今回29点を紹介します。注目としてはガガガ文庫「空飛ぶ卵の右舷砲」メディアワークス文庫の「逆転ホームランの数式」、光文社文庫「帝国の女」、似鳥鶏さんの「名探偵誕生」あたりですかね。今回単行本はわりといい感じのが多かったです。好みもあると思いますし、気になる本があったら是非手にとって読んでみて下さい。

空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)

空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)

 

 人造豊穣神の大崩壊で跋扈するようになった異形の怪物により人類が地上から追放された世界。小型ヘリ<静かなる女王号>を操り樹竜を狩るモズと相棒ヤブサメが、その腕を買われ旧都市新宿での大規模探索作戦に参加する近未来ファンタジー。豪快なモズと彼女に振り回されながちなヤブサメのコンビを中心に、立場の違う空団の面々と時にはいがみ合いながらも、強大な敵を相手にギリギリの戦いを繰り広げてゆく中で認め合うようになってゆく熱い展開に、その物語を締めくくる意外なオチもまた効いていました。続編あるようならまた読んでみたいですね。

 来るべき世界危機を救うため真なるアーサー王を決める「アーサー王継承戦」完璧チート高校生・真神凜太朗が、暇つぶしのためあえて最弱と呼ばれる残念少女・瑠奈に協力する現代異能ファンタジー。金のために聖剣を売り払ってしまったり、召喚した「騎士」ケイ卿にコスプレさせて利用する瑠奈。あざとい生徒会長選の票稼ぎやデートさせられたり彼女のわがままに振り回されつつも、垣間見えるその真っ直ぐな想いに王の資質を見出して、曲者ぞろいの強敵を相手に共に戦い絆を育んでいく王道展開は面白かったです。これは今後に期待の新シリーズですね。

 最前線での戦いについていけなくなり、仲間の賢者により勇者のパーティーから追い出されたレッド。心機一転、辺境の地で薬草屋を開業しようとした彼のもとに、突如かつての仲間だった王女・リットが転がり込む辺境スローライフ。元ツンデレで不器用だったリットとはお互いがいい感じに補い合える存在で、そんな二人が初々しくも甘い関係を築いていく展開はなかなか良かったです。しかし調整役を放逐した勇者パーティーは案の定破綻していて、兄成分必須な妹勇者の状況も考えると、再び彼が必要とされそうな今後の展開も気になるところではあります。

陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ…… (ファンタジア文庫)

陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ…… (ファンタジア文庫)

 

 特別進路相談部「特進部」に強引に加入させられた典型的陰キャラ九条静紀。学校一の陽キャラ春日陽奈が告白され、丁重に断った静紀が食い下がる彼女に根負けして陰キャ生活を教える青春小説。夢のために邁進する他の部員や図書館で交流を育んできた咲夜の背景に比べると、陽奈が好きになった理由がやや弱いと感じてしまいましたが、ぐいぐい攻めてくる懲りない陽奈に、いちいち違いを言及していたはずの静紀も徐々に感化され、お互いの立ち位置の違いを痛感しながらも、それを乗り越えて二人でバカップルと化してゆく展開はなかなか面白かったです。

隠れオタな彼女と、史上最高のラブコメをさがしませんか? (ファミ通文庫)

隠れオタな彼女と、史上最高のラブコメをさがしませんか? (ファミ通文庫)

 

 燻ったままの過去を解消するため『ゲーム制作部』を立ち上げた結城雪崇。そこに頭脳明晰な生徒会長・倉嶋千愛、綺麗なイラストを描くフェリス、感受性豊かな小説を書く遥が入部し一緒にノベルゲー制作に取り組む青春ラブコメ。才能豊かで魅力的なヒロインたちに振り回されつつ協力して制作を進めたり絆を深める展開で、ままならないお嬢様・千愛の家庭事情に巻き込まれてゆくストーリーはベタではありましたが、千愛のゲーム制作に賭ける思いと仲間たちが持てるものを駆使して彼女のために奔走する姿にはぐっと来るものがありました。続巻も期待。 

クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間 First Step (ファミ通文庫)

クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間 First Step (ファミ通文庫)

 

 無気力な日々を送るフリーター克樹が出会った、首から「拾ってください」と書かれた札を提げ佇む家出少女・麻友。犯罪を危惧した克樹が一週間限定で自宅アパートでの寝泊まりを許可する同棲ラブコメ。家出の経緯を語らない麻友と、面倒だと感じつつも同居をいつの間にか受け入れていく克樹。動き出してから関係が変わるまでの転げ落ちるような展開の早さには驚きましたが、むしろそこからの不器用な克樹の葛藤がポイントで、明らかになってゆく麻友の家庭事情を踏まえどうあるべきか、素直になれない二人の繊細な距離感が良かったです。続巻も期待。

インスタント・メサイアI (オーバーラップノベルス)

インスタント・メサイアI (オーバーラップノベルス)

 

 愛する家族や隣人を魔族に殺されたナイン。村が全滅する中で一人生き延びた彼が、十年の時を経て家族の仇であるはずの魔族の王に配下たることを跪いて乞い願い、密かに復讐の機会を伺うダークファンタジー。歪な笑顔で一部には危険視されながらも、因縁ある魔王クリステラやその妹、そして警戒する配下たちの関心を引きながら少しずつ籠絡し取り込んでいく展開は、一見卑屈で人として無害な存在と思わせつつ、実はかなり壊れていて狂気の愛に溢れるナインの存在感が光っていました。この先にあるのは愛か破滅か、続巻に期待したいシリーズですね。

 

 仕事にのめり込んで家族に愛想を尽かされた元エリート社員の八雲。野球少年の息子と元妻に再び認めてもらうため、野球経験なしの身から初戦敗退の秋上高校野球部の監督に就任し、転落の元エリートと弱小野球部が奇跡を起こす物語。最初は気持ちも分からず最悪だった部員たちとの出会い。そこから彼らと向き合いながら進めていった、データに基づく合理的な練習と意識改革。興味深い練習に八雲や部員たちの葛藤やそれぞれの想いもあったりで、八雲の息子もいる横道学院との練習試合で果たしたひとつの決着にはなかなかぐっと来るものがありました。 

放課後、君は優しい嘘をつく。 (メディアワークス文庫)

放課後、君は優しい嘘をつく。 (メディアワークス文庫)

 

 3年前の飛行機事故により両親を亡くし、足も不自由になったことで引きこもりになった少年・古賀春一。彼を連れ出すべくクラス委員を名乗る同級生の彩楓が通い、彼を支える二人と交流を深めてゆく青春小説。春一を引っ張り出すために週2日は古賀家を訪れ、ツルさん・藤野さんとも馴染んでお茶会をするようになった彩楓と彼女を拒む春一。それでも粘り強く通いながら春一の意識を少しずつ変えていった彼女が抱える秘密。春一が知った事故での真実は彼女との運命を感じさせて、きちんと向き合えた二人を祝福したくなる微笑ましくも素敵な物語でした。

 上京しながらも仕事に挫折して、生まれ育ってきた長崎へ戻ってきた結真。身も心もまだ疲れたままの彼女を心配した母が、『古か物にまつわる問題ば解決してくれる』骨董店・一古堂を紹介し、店主の司と出会う物語。叔母の形見・顔のないマリア観音の問題を解決してくれたことをきっかけに一古堂で働くようになった結真。長崎らしさを随所に描きつついろいろ事件に巻き込まれたりもしましたが、司と協力して解決したりもして、自分を認めてくれる仲間がいて、きちんと居場所があるというのはやはり大きいですよね。続巻あるならまた読んでみたいです。

折紙堂来客帖 折り紙の思ひ出、紐解きます。 (富士見L文庫)

折紙堂来客帖 折り紙の思ひ出、紐解きます。 (富士見L文庫)

 

 祖父と2人暮らしの高校生・漱也はあやかしの世との狭間「茜辺原」に迷い込んで青い瞳の少女・蒼生と出会い、彼女が店主としてあやかしと人の問題を解決する「折紙堂」で働き始める現代和風ファンタジー。先生が恩を感じる女性、入院していた少女に折紙を教えてくれた女性、おばあちゃんが持っていた鍵、そして迎えに来た漱也の母親の想い。お人好しな漱也が知人のために蒼生の力も借りて、折紙絡みの謎を解いていく展開はなかなか良かったですね。少しずつ漱也の過去も明らかになりましたが、蒼生はまだ謎も多くて続巻あるなら読んでみたいです。 

死神医師 (講談社タイガ)

死神医師 (講談社タイガ)

 

 一年前に恋人の成海麻里を謎の自殺で失い、死神に魂を売ってしまった「神の手」を持つ心臓外科医の桐尾。安楽死を秘密裏に扱う医師の存在が噂されて、警視庁捜査一課の刑事で麻里の妹・沙耶は「死神医師」の正体が桐尾ではないかと不審を抱きはじめる医療ミステリ。麻里の死の原因となった仕組まれた事件の関係者に近づき次々と追い詰めてゆく桐尾と、その過程で明らかになってゆく事件の真相とひとつの決着。物語の構図としては分かりやすかったですが、少しばかり展開が拙速でしたかね。黒幕がこれからどうするのか、ちょっと気になる結末でした。

猫河原家の人びと: 一家全員、名探偵 (新潮文庫nex)

猫河原家の人びと: 一家全員、名探偵 (新潮文庫nex)

 

 家族全員、殺人事件をめぐって夕食前に迷推理を披露する謎と事件好きの猫河原家。「推理せざる者、食うべからず」の家訓にげんなりで末っ子・友紀が事件を解決するミステリ。事件に遭遇すると嬉々として迷推理を始める両親兄弟たち。そんな家を出るべくバイトを始める友紀。けれど彼女がいつの間にか事件に巻き込まれるのは相変わらずで、まともな推理が出てくるのは家族の中で友紀だけとかなったら、それはもう逃れられないのも仕方ないですよね。嫌な家族だけど愛されてるのは分かるだけに、まあ大変だけど頑張ってねと思ってしまいました(苦笑)

死神憑きの浮世堂 (小学館文庫キャラブン!)

死神憑きの浮世堂 (小学館文庫キャラブン!)

 

 死神に殺された幼い弟を忘れられずにいる人形修理工房「浮世堂」を営む城戸利市。ある日、死神が顔見知りの少女を襲う現場に遭遇したことで、再び運命が動き出す物語。周囲が理不尽に死んだ弟の存在を忘れてゆく中でただ一人覚えていた利市。彼が運命に導かれたように大正時代に殺人を犯した華族のお嬢様や、死後に望まぬ形で生き返った死神の一族の少女との出会い。彼女たちが抱える過去も明らかになっていって、複雑な絡み合う状況にどう決着をつけるべきか、最後まで葛藤し続けた利市が迎えたいかにも彼らしい結末には救われるものがありました。

海と月の喫茶店 (小学館文庫キャラブン!)

海と月の喫茶店 (小学館文庫キャラブン!)

 

 祖母の死を機に田舎から街に引っ越して、父親と弟との三人暮らしを始めた女子高生の香月。しかし学校でも家でもうまく行かず居場所を見つけられない彼女が、偶然隣の席の男の子・立海がケーキ好きなことを知り、ケーキ作りを教えてもらう青春小説。不器用だけど周囲に頼りたくない。そんな頑固な香月が祖母のデザートに挑戦するも挫折する日々。上手くいかない状況続きで、手を差し伸べてくれる周囲を拒絶する彼女の頑なさにはやや頑固過ぎるかなあと苦笑いでしたけど、少しずつでも変わっていける兆しが見えてきた結末にはちょっとほっとしました。

 

帝国の女 (光文社文庫 み 35-3)

帝国の女 (光文社文庫 み 35-3)

 

 世間の認識とは裏腹に華やかさから程遠い、帝国テレビジョンで働く女たちの日々。好きな仕事だけれどままならないことばかりの五人の女性たちが描かれる連作短編集。過労寸前まで奮闘する宣伝部・松国、仕事以外はまるでダメなプロデューサー・脇坂、年下の夫との倦怠に沈む脚本家・大島、訳ありマネージャー・片倉、憧れの人と出会う日を夢見るテレビ誌記者・山浦。それぞれの仕事に取り組む真摯な姿と、一方でプライベートは思うようにいかない苦悩はとても印象的で、ページ数以上に濃密なストーリーと彼女たちの切なる叫びが心に響く物語でした。

 ミドリムシの変異体・エルグレナが生態環境を支配し、海面上昇により地表の大半を水に覆われた25世紀の地球。その調査に宇宙コロニーからやってきた研究者ケンガセンが、島嶼部で暮らす巫女ヨルと出逢う近未来SF。彼女と出会い数奇な運命に巻き込まれてゆくケンガセン。SF的な設定や立ち位置でガラリと変わる倫理観や考え方なども興味深かったですが、研究バカだった彼が価値観の違いに戸惑いながら交渉したり政治に振り回されたりしながら、人類が迎える新たな局面と、そんな中で育まれてきた二人の絆を感じる結末はなかなか良かったですね。

 優秀な管制官だった叔母の真紀子に憧れ、日夜奮闘する新米航空管制官の藤宮つばさ。同期の情報官・戸神大地とともに、空港で発生する様々なトラブルや謎を解決していくお仕事ミステリ。鳥が原因のエンジントラブルや、不定期に鳴り響く発信源不明の遭難信号、外国要人専用機の離陸失敗事故など、トラブルに巻き込まれるつばさを少し変わった同期の大地や職場の同僚・上司の協力で解決してゆく展開で、お仕事小説としてもなかなか興味深かったですが、探していた叔母の「管制官に一番必要なもの」を見出してゆく結末にもぐっと来るものがありました。

時間遡行で学生時代に戻った僕は、妻の恋を成就させたい (宝島社文庫)

時間遡行で学生時代に戻った僕は、妻の恋を成就させたい (宝島社文庫)

 

 複雑な事情で上手くいかなくなった妻から離婚を提示された綾人。放心状態で交通事故に遭った彼が、突然10年前の大学時代からやり直す機会を得る青春小説。妻・帆乃里の幸せを願う綾人が親友・駿稀との恋を成就させるべく奔走し、複雑な想いを知って協力する彼女の友人・美妃。不器用で真摯な綾人がやり直す過程で改めて気づいたことの積み重ねが、以前は思いもよらなかったもう一つの構図を徐々に浮かび上がらせていって、始まりからすれば何とも皮肉な結末でしたけど、やり直した末の結果として考えるとこれは必然だったのかもしれないですね。 

綺羅の皇女(1) (講談社文庫)

綺羅の皇女(1) (講談社文庫)

 

 真秀皇国の皇帝・凰輝の従姉ながら両親の愛を知らずに修道尼院で育った皇女・咲耶。密かに皇帝しか見るはずのない予知夢を見る彼女が、隣国に嫁ぐため渡海する和風ファンタジー。距離を感じる両親に複雑な立ち位置の境遇で決まった隣国への結婚。嫁いだ先でも複雑な境遇の中で予知夢として見る故国の危機。和風っぽいテイストの中でいくつかやや違和感を感じる部分もありましたが、何とか故国の危機を回避すべく奔走する想いは真摯で、複雑な立ち位置の理由が明らかになったことでこれからどう生きていくのか、読ませるものはあるだけに今後に期待。

 

名探偵誕生

名探偵誕生

 

 小学生の頃から様々な冒険をしていたみーくんに不穏の影が差した時、いつも助けてくれた名探偵のお姉ちゃん。そんな千歳お姉ちゃんとの初恋とみーくんの成長を描くミステリ青春小説。ずっとみーくんに寄り添い見守ってくれていた千歳お姉ちゃんへの想いは募ってゆくのに、なかなか姉妹のような関係から抜け出せないもどかしさについ共感してしまいましたが、次々と事件を解決してきた生粋の探偵である彼女を救うため、ほろ苦い複雑な想いを乗り越えて自ら立ち上がるみーくんがとても格好良かったです。どこでまた彼らのその後を読めるといいですね。

「はじめまして」を3000回

「はじめまして」を3000回

 

 プログラミングに没頭する高校生・北原恭介。夢に見た予知が外れると不幸が訪れるという人気者の同級生・佑那から告白をされ、そんな彼女に振り回されるようになってゆく青春小説。印象的な出会いから「私と付き合わないとずばり死んじゃう」と告げて、予知夢だという内容を恭介と二人で再現してゆく佑那。最初懐疑だった恭介の想いが徐々に変化する中で直面する急展開と、明かされてゆく彼女の秘密と覚悟は切なくて、彼女の想いを噛みしめるようなタイトルでしたが、諦めなかった恭介がもたらした一つの結末に著者さんらしさがよく出ていました。 

世界の終わりと始まりの不完全な処遇

世界の終わりと始まりの不完全な処遇

 

 九年前一度会ったきりの美しい少女を想い続ける大学生の花村遠野。大学にほど近い住宅街で吸血種の仕業とも噂される惨殺事件が発生し、サークル仲間と現場を訪れた遠野が記憶の中の美しい少女にそっくりな姉妹と出会う物語。運命的な再会を果たした少女と繋がりを持ち続けるため、警戒されない言葉や距離感を慎重に選びつつ事件解決に協力を持ちかける遠野。思わぬ方向に向かう事件にもブレない彼には感心しましたが、迎えた皮肉な結末は…本人的に結果オーライとはいえなかなか重いものを背負いましたね。そんな彼らの今後をまた読んでみたいです。

タイトルはそこにある (ミステリ・フロンティア)

タイトルはそこにある (ミステリ・フロンティア)

 

 「演劇を扱った中編。登場人物は三、四人程度」「回想、場面変更、一行アキ一切なしのワンシチュエーション・ミステリ。登場人物は三人で」「会話文のみで書かれた作品」「三人の女性たちによる独白リレー」など編集者の繰り出す無茶ぶりに著者が苦しみながら書き上げた連作短編集。わりと難しい設定で果たしてどうなのかと思いましたけど、それでもシチュエーションの遵守だけで終わらずに、きちんとそれぞれに捻りが効いた工夫が盛り込まれていてなかなか楽しめました。巻末のあとがきにあった楽しそうな編集者と挑んだ作者の本音も良かったです。

星空の16進数

星空の16進数

 

 高校を中退しウェブデザイナーとして働く17歳の藍葉。ある日、謝罪の100万円を渡すよう依頼された私立探偵・みどりが現れ、心当たりが6歳の頃の誘拐事件しかない藍葉がみどりに当時の誘拐犯・朱里の捜索を依頼する青春ミステリ。仕事で燻っていた状況からの転機に直面する藍葉、そしてみどりが追う朱里の行方とその過去。みどりにはみどりの事情があって、過去を追う過程で明らかになる事件の真相には複雑な気持ちでしたが、一方でもたらされた変化は今の藍葉に繋がっていて、色を通じて語られる繊細な藍葉の心境の変化がとても印象的でした。

鵜頭川村事件

鵜頭川村事件

 

 一九七九年夏。亡き妻・節子の田舎である鵜頭川村へ、三年ぶりに墓参りにやってきた岩森明と娘の愛子。突如、山間の村は豪雨に見舞われ閉じ込められる中で一人の若者の死体が発見され、閉塞した状況で蓄積していた鬱屈が狂気に繋がってゆく物語。村の有力者・矢萩家への鬱屈した想いと、外部と遮断された状況でうやむやにされた犯人探し。大人たちに不信を隠せない若者たちに対する扇動が暴走に繋がってゆくまでの描写には、追い詰められた人の危うさが生々しく描かれていて、ギリギリの状況で何とか娘を守ろうと奔走する岩森がとても印象的でした。

17×63 鷹代航は覚えている

17×63 鷹代航は覚えている

 

 反目しあっているごく平凡な高校生・鷹代航と、運悪く会社をリストラされた祖父の章吾。ある夜、自転車置き場で倒れている章吾を偶然航が発見し、大きな衝撃を受けた航と章吾の身体が入れ替わってしまう物語。俗に言う入れ替わりモノで、おせっかいな気質で航の身体でぐいぐい行く章吾の言動がついつい気になってしまう、祖父の身体でままならない航。世代のギャップに戸惑いつつ学校絡みの謎解きや犯人探しに挑んでいく展開で、ままならないドタバタぶりや痛い本音に直面したり、そんな経験を経た二人のその後がとてもいい感じに思えた物語でした。

愛と勇気を、分けてくれないか

愛と勇気を、分けてくれないか

 

 80年代後半、広島市民球場やデビューしたばかりのユニコーンが確かに息づいていたあの日。親が転勤族で広島にやってきた転校生・桃郎が美少女・小麦に一目惚れし、その憧れの人・由木野と出会う青春小説。地元愛に溢れる小麦に振り回されるようになってゆく桃郎が直面する、ままならならない片想いや、愛する街に対する熱くて複雑な想い、そして突然の暗転と思ってもみなかった終焉。今とはまた違う当時の雰囲気がよく出ていて、そんな切ない思い出が紆余曲折を経て今に繋がっているその結末には、いろいろ思い出したり感じるところがありました。

司書のお仕事―お探しの本は何ですか? (ライブラリーぶっくす)

司書のお仕事―お探しの本は何ですか? (ライブラリーぶっくす)

 

 味岡市立図書館に新人司書として採用された稲嶺双葉を主人公に、蔵書目録の作成や本の受け入れ作業、イベント企画と言った司書の仕事とその成長を描くお仕事小説。認定司書さんを監修に正職員と委託職員との関係や、ネット全盛時代の変わりつつあるレファンレンスだったり、イベントの企画立案や高校の学校図書館との現実的な連携だったり、今の司書さんの仕事が昔と比べてどのように変わってきているのか、またどんなことに意識を向けているのか、主人公の立ち位置をうまく使って分かりやすく小説仕立てで説明してくれていると感じた一冊でした。 

 

7月に読んだ本 #読書メーターより

7月は忙しいなりにそれなりに読書時間を確保できて、冊数もそこそこ読めました。今月読んだもののうちシリーズものでは次巻で完結の「やがて恋するヴィヴィ・レイン」や、「リア充にもオタクにもなれない俺の青春」の2巻目、「おいしいベランダ。」「ゆきうさぎのお品書き」「ケーキ王子の名推理」あたりの続巻も良かったですね。容量の問題で今回もコミックを除いたリストになりますが、新作については別途オススメで。

 

7月の読書メーター
読んだ本の数:97冊
読んだページ数:25768
ナイス数:5299

長崎・眼鏡橋の骨董店 店主は古き物たちの声を聞く (集英社オレンジ文庫)長崎・眼鏡橋の骨董店 店主は古き物たちの声を聞く (集英社オレンジ文庫)感想
上京しながらも仕事に挫折して、生まれ育ってきた長崎へ戻ってきた結真。身も心もまだ疲れたままの彼女を心配した母が、『古か物にまつわる問題ば解決してくれる』骨董店・一古堂を紹介し、店主の司と出会う物語。叔母の形見・顔のないマリア観音の問題を解決してくれたことをきっかけに一古堂で働くようになった結真。長崎らしさを随所に描きつついろいろ事件に巻き込まれたりもしましたが、司と協力して解決したりもして、自分を認めてくれる仲間がいて、きちんと居場所があるというのはやはり大きいですよね。続巻あるならまた読んでみたいです。
読了日:07月31日 著者:日高 砂羽
あんたなんかと付き合えるわけないじゃん! ムリ! ムリ! 大好き!  3 (HJ文庫)あんたなんかと付き合えるわけないじゃん! ムリ! ムリ! 大好き! 3 (HJ文庫)感想
自分の意志を貫き通そうとした結果、改めて周りの人たちの優しさや、小春を傷つけていた事実に気がついた悟郎。立ちはだかる現実に苦悩する悟郎に対し小春が提案をする第三弾。覚悟を決めた二人が小春の言葉をきっかけに一緒にやりたいことを精一杯満喫していく日々。そんな彼らのことを受け入れていろいろ協力したり助けれてくれた仲間たち。そんな優しさに支えられながら、お互いのために最善を尽くそうと一途に想い合う二人の結末は何とも切なくて、かなり遠回りこそしましたがきちんと向き合うまでの重みがひしひしと伝わってきた物語でした。 
読了日:07月31日 著者:内堀優一
魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 6 (HJ文庫)魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 6 (HJ文庫)感想
フォルの強くなりたいという願いで一時的に成長ができる魔術を使用したザガンたち。しかし儀式の暴走でフォルは大きくザガンが小さくなってしまい、 オリアスの助言で大陸種族長老会議に出席する第六弾。小さくなったサガンを愛でるネフィの満更でもない感には苦笑いでしたが、セルフィや黒花の出自や繋がりも明らかになって、今後のポイントになりそうな夜の一族の一人アルシエラの意味深な話もあったりで、子供姿で難局に直面したサガンでしたけど、今は一緒に立ち向かってくれる仲間がいるんですよね。次のデートに燃える二人の今後にも期待。 
読了日:07月30日 著者:手島史詞
星空の16進数星空の16進数感想
高校を中退しウェブデザイナーとして働く17歳の藍葉。ある日、謝罪の100万円を渡すよう依頼された私立探偵・みどりが現れ、心当たりが6歳の頃の誘拐事件しかない藍葉がみどりに当時の誘拐犯・朱里の捜索を依頼する青春ミステリ。仕事で燻っていた状況からの転機に直面する藍葉、そしてみどりが追う朱里の行方とその過去。みどりにはみどりの事情があって、過去を追う過程で明らかになる事件の真相には複雑な気持ちでしたが、一方でもたらされた変化は今の藍葉に繋がっていて、色を通じて語られる繊細な藍葉の心境の変化がとても印象的でした。
読了日:07月30日 著者:逸木 裕
後宮天后物語 ~新たな妃にご用心!?~ (ビーズログ文庫)後宮天后物語 ~新たな妃にご用心!?~ (ビーズログ文庫)感想
帝位を簒奪した志紅の目的を探るべく、後宮脱出計画中の雛花に突如告げられた同衾宣言。志紅が新たに迎える四妃の中の一人に、魔物が擬態していることを知らされる第二弾。ようやく平均年齢が下がった後宮のドタバタぶりに苦笑いしつつ、志紅は相変わらず秘密主義で雛花も自身を大切にしないし、二人とも拗らせ過ぎててあれでしたが、今回でようやく志紅も雛花も一歩前進できたんですかね…とはいえ二人を取り巻く状況は依然として厳しいままで、難局を打開するにはお互いの協力が不可欠でしょうけど、こんなちぐはぐで大丈夫なんでしょうか(苦笑)
読了日:07月29日 著者:夕鷺 かのう
ラノベのデザインラノベのデザイン感想
70作品以上のライトノベルライト文芸作品の事例を掲載し、出版社・レーベルの垣根を越えたライトノベルのカバーデザインを紹介した一冊。作品を「Cute」「POP」「Stylish」「Natural」「Mysterious」に大別し、実際に携わったデザイナーによるアンケートをもとにイラストを活かしてどんなイメージでデザインしたのか、ポイントを押さえたコンセプトの解説はとてもわかりやすくて良かったです。ラノベはイラストに目が向きがちですが、普段あまり意識することのないデザイナーの仕事がとても興味深く読めますね。
読了日:07月29日 著者: 
後宮香妃物語 偽りの花嫁と秘めたる心 (角川ビーンズ文庫)後宮香妃物語 偽りの花嫁と秘めたる心 (角川ビーンズ文庫)感想
湖蘭国にしかない秘宝香の材料入手のため、かの国を訪れる神瑞国皇太子・煌翔に同行した凛莉。しかし彼女の作る香に執着する湖蘭国の皇帝・亜廉が皇太子・聖雷の妻になることを提案する第二弾。鉱山に関する条約締結もあり難しい状況に置かれる中で攫われ、結婚を強要されそうになる凛莉。初恋の人を巡って真相を伝えない煌翔も遠慮してしまう凛莉ももどかしくて、我嵐は我嵐で自らの抱える想いに苦しんでいて、執着する亜廉を香を使って見事翻意させたところは良かったですけど、帰国したら後宮は混乱した挙げ句…次巻は波乱不可避ですね、これ…。
読了日:07月28日 著者:伊藤 たつき
【Amazon.co.jp限定】とりかえ花嫁の冥婚 偽りの公主(特典: オリジナルショートストーリー データ配信) (講談社X文庫)【Amazon.co.jp限定】とりかえ花嫁の冥婚 偽りの公主(特典: オリジナルショートストーリー データ配信) (講談社X文庫)感想
商家の娘・汪黎禾は弟が作った借金を返すため、藩王武州王の息子と「冥婚」することに。その道中に意に反して小間使いの橙莉と入れ替わり、襲われた先で皇太子・隆翔に助けられ行方不明だった妹公主と間違われてしまう中華ファンタジー。男嫌いの気の強い黎禾と女性が信用できない隆翔の二人が、始めて出会えた信じられる人としていい関係を築きつつも、公主でないことを隠していることに葛藤する展開で、反乱に巻き込まれた混乱の中でヒロインたちが見せた強い意志がとても印象的でした。もうひとりのヒロイン・橙莉の物語にも期待しています。 
読了日:07月28日 著者:貴嶋 啓,すがはら 竜
ケーキ王子の名推理3ケーキ王子の名推理3感想
沖縄への修学旅行。ケーキ大好き女子高生・未羽はビーチで関西の高校生パティシエ大広と知り合い、その積極的なお誘いに押されデートを約束。どこか不機嫌な颯人からはコンクールのアシスタントを依頼される第三弾。相変わらずケーキバカな二人ですけど、二回目の未羽家訪問にテンション上がる家族たちとか、いろんな意味での強力なライバル出現とか、これまで積み上げてきたものがきっかけを得てまさかの展開に繋がっていって、コンクールでの勝負もぐっと来るものがありましたね。今回はキュンキュンを存分に堪能させてもらいました。続巻も期待。
読了日:07月27日 著者:七月 隆文
廻る学園と、先輩と僕 Simple Life2 (ファミ通文庫)廻る学園と、先輩と僕 Simple Life2 (ファミ通文庫)感想
那智の停学明け。晴れて恋人同士になった片瀬先輩と放課後デートしたり、屋上で過ごすようになるなか、三年生の風紀委員・飛鳥井明日香から千秋に興味があると告げられる第二弾。晴れて両想いになったのに周囲には公言できなくて、むしろそんな状況で無自覚に女の子たちとの絡みが増えてゆく素直な那智には戦慄しますが、そんな彼にやきもきしたり妄想したりぐいぐい攻めたり、学園一の美少女がポンコツな一面を晒してゆく展開についニヤニヤしてしまいました。一夜とか円先輩もそうですけど、ほんといろんな人に愛されてますね那智は。続巻も期待。
読了日:07月27日 著者:九曜
クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間 First Step (ファミ通文庫)クーデレすぎる未来の嫁の面倒な7日間 First Step (ファミ通文庫)感想
無気力な日々を送るフリーター克樹が出会った、首から「拾ってください」と書かれた札を提げ佇む家出少女・麻友。犯罪を危惧した克樹が一週間限定で自宅アパートでの寝泊まりを許可する同棲ラブコメ。家出の経緯を語らない麻友と、面倒だと感じつつも同居をいつの間にか受け入れていく克樹。動き出してから関係が変わるまでの転げ落ちるような展開の早さには驚きましたが、むしろそこからの不器用な克樹の葛藤がポイントで、明らかになってゆく麻友の家庭事情を踏まえどうあるべきか、素直になれない二人の繊細な距離感が良かったです。続巻も期待。
読了日:07月26日 著者:桐刻
隠れオタな彼女と、史上最高のラブコメをさがしませんか? (ファミ通文庫)隠れオタな彼女と、史上最高のラブコメをさがしませんか? (ファミ通文庫)感想
燻ったままの過去を解消するため『ゲーム制作部』を立ち上げた結城雪崇。そこに頭脳明晰な生徒会長・倉嶋千愛、綺麗なイラストを描くフェリス、感受性豊かな小説を書く遥が入部し一緒にノベルゲー制作に取り組む青春ラブコメ。才能豊かで魅力的なヒロインたちに振り回されつつ協力して制作を進めたり絆を深める展開で、ままならないお嬢様・千愛の家庭事情に巻き込まれてゆくストーリーはベタではありましたが、千愛のゲーム制作に賭ける思いと仲間たちが持てるものを駆使して彼女のために奔走する姿にはぐっと来るものがありました。続巻も期待。 
読了日:07月26日 著者:朱月十話
小説 雲のむこう、約束の場所 (角川文庫)小説 雲のむこう、約束の場所 (角川文庫)感想
共産国家群ユニオンがエゾを支配下に置くもうひとつの戦後世界。津軽半島に住む中3の藤沢浩紀と白川拓也は対岸の塔に憧れ一緒に飛行機を作るようになり、サユリと出会う青春小説。二人の関係にいつの間にか入り込んできたサユリの突然の転校。喪失感を抱えたまま東京の高校に進学する浩紀と、外部研究員として参加し塔の研究に関わる拓也。すれ違ってからお互い複雑な想いを隠せない二人が、道を違えても忘れなかったサユリを救うために、再び協力して奔走する展開にはぐっと来ましたが、だからこそそんな彼らが迎えた結末は少しばかり意外でした。
読了日:07月26日 著者:加納 新太
逆転ホームランの数式 転落の元エリートと弱小野球部が起こす奇跡 (メディアワークス文庫)逆転ホームランの数式 転落の元エリートと弱小野球部が起こす奇跡 (メディアワークス文庫)感想
仕事にのめり込んで家族に愛想を尽かされた元エリート社員の八雲。野球少年の息子と元妻に再び認めてもらうため、野球経験なしの身から初戦敗退の秋上高校野球部の監督に就任し、転落の元エリートと弱小野球部が奇跡を起こす物語。最初は気持ちも分からず最悪だった部員たちとの出会い。そこから彼らと向き合いながら進めていった、データに基づく合理的な練習と意識改革。興味深い練習に八雲や部員たちの葛藤やそれぞれの想いもあったりで、八雲の息子もいる横道学院との練習試合で果たしたひとつの決着にはなかなかぐっと来るものがありました。 
読了日:07月26日 著者:つるみ 犬丸
放課後、君は優しい嘘をつく。 (メディアワークス文庫)放課後、君は優しい嘘をつく。 (メディアワークス文庫)感想
3年前の飛行機事故により両親を亡くし、足も不自由になったことで引きこもりになった少年・古賀春一。彼を連れ出すべくクラス委員を名乗る同級生の彩楓が通い、彼を支える二人と交流を深めてゆく青春小説。春一を引っ張り出すために週2日は古賀家を訪れ、ツルさん・藤野さんとも馴染んでお茶会をするようになった彩楓と彼女を拒む春一。それでも粘り強く通いながら春一の意識を少しずつ変えていった彼女が抱える秘密。春一が知った事故での真実は彼女との運命を感じさせて、きちんと向き合えた二人を祝福したくなる微笑ましくも素敵な物語でした。
読了日:07月25日 著者:雨野 マサキ
レッドスワンの星冠 赤羽高校サッカー部 (メディアワークス文庫)レッドスワンの星冠 赤羽高校サッカー部 (メディアワークス文庫)感想
冬の全国選手権への出場が叶えばチームは存続、予選で敗退すれば廃部となることが決まった赤羽高校サッカー部。二強相手に存続を賭けた準決勝・決勝に挑む第二弾。世怜奈から準決勝・偕成学園戦の采配を任された優雅と運命の決勝・美波高戦。後のない状態で任せる監督も凄いですが、大胆な采配を見せた優雅に対して決勝は弱者が相手を研究し尽くして奇策で勝った印象ですかね。それにしても復活なるか気になる優雅がモテモテ過ぎてあれですが、次へ繋がるエピローグで突然挿入される楓のエピソード(苦笑)葉月もらしい話でブレないなと思いました。
読了日:07月25日 著者:綾崎 隼
スーパーカブ3 (角川スニーカー文庫)スーパーカブ3 (角川スニーカー文庫)感想
高校3年生に進級した小熊たち。椎の妹も入学する一方で進路を意識しないといけなくなった小熊が、進学を機にカブのある生活を続けるべきかどうか、選択を迫られる第三弾。新たな友人もできる中で礼子と挑むカブでの富士山登山。進学先の大学寮でバイクが禁止という現実と、迷う小熊の心を折りに来るかのような故障の数々。でも生活に根ざしてしまったもの、当たり前にあるものはそうそう変えられないですよね(苦笑)いやほんと今どき珍しいJKたちだなとも思いましたけど、世界も広がり着実に成長してゆく小熊たちの青春はなかなか良かったです。
読了日:07月24日 著者:トネ・コーケン
猫河原家の人びと: 一家全員、名探偵 (新潮文庫 あ 80-4)猫河原家の人びと: 一家全員、名探偵 (新潮文庫 あ 80-4)感想
家族全員、殺人事件をめぐって夕食前に迷推理を披露する謎と事件好きの猫河原家。「推理せざる者、食うべからず」の家訓にげんなりで末っ子・友紀が事件を解決するミステリ。事件に遭遇すると嬉々として迷推理を始める両親兄弟たち。そんな家を出るべくバイトを始める友紀。けれど彼女がいつの間にか事件に巻き込まれるのは相変わらずで、まともな推理が出てくるのは家族の中で友紀だけとかなったら、それはもう逃れられないのも仕方ないですよね。嫌な家族だけど愛されてるのは分かるだけに、まあ大変だけど頑張ってねと思ってしまいました(苦笑)
読了日:07月24日 著者:青柳 碧人
世界は恋に落ちている (角川ビーンズ文庫)世界は恋に落ちている (角川ビーンズ文庫)感想
吹奏楽部の仲間でクラスメイトの要に片想い中の岬。告白なんてできずに親友のつぼみがよき相談相手。けれどつぼみも要への想いに気づき複雑な関係になってゆく青春小説。男の子が苦手で唯一仲のいい要が気になる岬と、人気者だけれど恋を自覚したことがなかったつぼみ、男女ともにモテるけれどどこか掴みどころのない要。同じ部活の仲良し三人組に生じた勇気を出せない臆病さと恋と友情に複雑に揺れる想い、それでもどんどん強くなってゆく想いを真っ直ぐにぶつけていく甘酸っぱい王道展開で、三人が迎える結末もまたぐっと来るものがありました。 
読了日:07月23日 著者:香坂茉里
なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?4 神罰の獣 (MF文庫J)なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?4 神罰の獣 (MF文庫J)感想
六元鏡光との共闘で切除器官を撃破して、世界輪廻を招いた元凶は幻獣族のラースイーエに絞られ、ジャンヌたちは連合軍で幻獣族の支配するシュルツ連邦への進出を決意する第四弾。カイたちが関わったことで多種族との連携も出てきて、最後に幻獣族ラースイーエとの対決という形になったのかと思いきや、ラースイーエによって語る世界の秘密と新展開がもたらされたことで、3人のシドと預言神の存在も絡めてこの世界の構図もまた大きく変わりそうですね。それぞれ持ち味が違うヒロインたちとカイの絡みもいいアクセントになっていて続巻に期待です。 
読了日:07月23日 著者:細音 啓
綺羅の皇女(1) (講談社文庫)綺羅の皇女(1) (講談社文庫)感想
真秀皇国の皇帝・凰輝の従姉ながら両親の愛を知らずに修道尼院で育った皇女・咲耶。密かに皇帝しか見るはずのない予知夢を見る彼女が、隣国に嫁ぐため渡海する和風ファンタジー。距離を感じる両親に複雑な立ち位置の境遇で決まった隣国への結婚。嫁いだ先でも複雑な境遇の中で予知夢として見る故国の危機。和風っぽいテイストの中でいくつかやや違和感を感じる部分もありましたが、何とか故国の危機を回避すべく奔走する想いは真摯で、複雑な立ち位置の理由が明らかになったことでこれからどう生きていくのか、読ませるものはあるだけに今後に期待。
読了日:07月22日 著者:宮乃崎 桜子
「はじめまして」を3000回「はじめまして」を3000回感想
プログラミングに没頭する高校生・北原恭介。夢に見た予知が外れると不幸が訪れるという人気者の同級生・佑那から告白をされ、そんな彼女に振り回されるようになってゆく青春小説。印象的な出会いから「私と付き合わないとずばり死んじゃう」と告げて、予知夢だという内容を恭介と二人で再現してゆく佑那。最初懐疑だった恭介の想いが徐々に変化する中で直面する急展開と、明かされてゆく彼女の秘密と覚悟は切なくて、彼女の想いを噛みしめるようなタイトルでしたが、諦めなかった恭介がもたらした一つの結末に著者さんらしさがよく出ていました。 
読了日:07月21日 著者:喜多 喜久
陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ…… (ファンタジア文庫)陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ…… (ファンタジア文庫)感想
特別進路相談部「特進部」に強引に加入させられた典型的陰キャラ九条静紀。学校一の陽キャラ春日陽奈が告白され、丁重に断った静紀が食い下がる彼女に根負けして陰キャ生活を教える青春小説。夢のために邁進する他の部員や図書館で交流を育んできた咲夜の背景に比べると、陽奈が好きになった理由がやや弱いと感じてしまいましたが、ぐいぐい攻めてくる懲りない陽奈に、いちいち違いを言及していたはずの静紀も徐々に感化され、お互いの立ち位置の違いを痛感しながらも、それを乗り越えて二人でバカップルと化してゆく展開はなかなか面白かったです。
読了日:07月21日 著者:佐倉 唄
ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン (ファンタジア文庫)ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン (ファンタジア文庫)感想
来るべき世界危機を救うため真なるアーサー王を決める「アーサー王継承戦」完璧チート高校生・真神凜太朗が、暇つぶしのためあえて最弱と呼ばれる残念少女・瑠奈に協力する現代異能ファンタジー。金のために聖剣を売り払ってしまったり、召喚した「騎士」ケイ卿にコスプレさせて利用する瑠奈。あざとい生徒会長選の票稼ぎやデートさせられたり彼女のわがままに振り回されつつも、垣間見えるその真っ直ぐな想いに王の資質を見出して、曲者ぞろいの強敵を相手に共に戦い絆を育んでいく王道展開は面白かったです。これは今後に期待の新シリーズですね。
読了日:07月20日 著者:羊太郎
ロクでなし魔術講師と禁忌教典12 (ファンタジア文庫)ロクでなし魔術講師と禁忌教典12 (ファンタジア文庫)感想
学院の前学期休み。セリカの強引な誘いによって白猫たちも連れて極寒のスノリア地方へ旅行することになったグレン。銀竜祭へ参加する彼らの前にセリカの過去と因縁が立ちはだかる第十二弾。最初はイヴ再登場に危機感を募らせるルミアたちでしたけど、いろんな意味でインパクトが強過ぎて他のヒロインたちを圧倒するセリカのラスボス的存在感は脅威ですよね…特に白猫はもっと自覚持って頑張れw 物語の核心に絡んでいそうなセリカの過去もそうですが、それを踏まえて物語がこれからどんな方向に向かうのか、少しばかり気になったエピソードでした。
読了日:07月20日 著者:羊太郎
折紙堂来客帖 折り紙の思ひ出、紐解きます。 (富士見L文庫)折紙堂来客帖 折り紙の思ひ出、紐解きます。 (富士見L文庫)感想
祖父と2人暮らしの高校生・漱也はあやかしの世との狭間「茜辺原」に迷い込んで青い瞳の少女・蒼生と出会い、彼女が店主としてあやかしと人の問題を解決する「折紙堂」で働き始める現代和風ファンタジー。先生が恩を感じる女性、入院していた少女に折紙を教えてくれた女性、おばあちゃんが持っていた鍵、そして迎えに来た漱也の母親の想い。お人好しな漱也が知人のために蒼生の力も借りて、折紙絡みの謎を解いていく展開はなかなか良かったですね。少しずつ漱也の過去も明らかになりましたが、蒼生はまだ謎も多くて続巻あるなら読んでみたいです。 
読了日:07月19日 著者:路生 よる
ふたえ (祥伝社文庫)ふたえ (祥伝社文庫)感想
超問題児の転校生・手代木麗華と修学旅行の班を結成することになった、友達のいないドン臭い「ノロ子」とにかく地味な「ジミー」将棋命の「劣化版」影の薄い「美白」不気味な「タロットオタク」の五人。彼らの一生忘れられない修学旅行を描く青春ミステリ。ぼっちだった彼らの大切なもの、譲れないもの。修学旅行をきっかけに動き出すそれぞれの視点で語られるエピソードには少しばかり違和感もあって、積み重ねられてゆく複雑な想いは登場人物たちの印象を少しずつ変えていって、そんな顛末の先にあった何ともほろ苦い結末は強く印象に残りました。
読了日:07月19日 著者:白河三兎
鵜頭川村事件鵜頭川村事件感想
一九七九年夏。亡き妻・節子の田舎である鵜頭川村へ、三年ぶりに墓参りにやってきた岩森明と娘の愛子。突如、山間の村は豪雨に見舞われ閉じ込められる中で一人の若者の死体が発見され、閉塞した状況で蓄積していた鬱屈が狂気に繋がってゆく物語。村の有力者・矢萩家への鬱屈した想いと、外部と遮断された状況でうやむやにされた犯人探し。大人たちに不信を隠せない若者たちに対する扇動が暴走に繋がってゆくまでの描写には、追い詰められた人の危うさが生々しく描かれていて、ギリギリの状況で何とか娘を守ろうと奔走する岩森がとても印象的でした。
読了日:07月18日 著者:櫛木 理宇
空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫 き)空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫 き)感想
人造豊穣神の大崩壊で跋扈するようになった異形の怪物により人類が地上から追放された世界。小型ヘリ<静かなる女王号>を操り樹竜を狩るモズと相棒ヤブサメが、その腕を買われ旧都市新宿での大規模探索作戦に参加する近未来ファンタジー。豪快なモズと彼女に振り回されながちなヤブサメのコンビを中心に、立場の違う空団の面々と時にはいがみ合いながらも、強大な敵を相手にギリギリの戦いを繰り広げてゆく中で認め合うようになってゆく熱い展開に、その物語を締めくくる意外なオチもまた効いていました。続編あるようならまた読んでみたいですね。
読了日:07月18日 著者:喜多川 信
妹さえいればいい。 10 (10) (ガガガ文庫 (10))妹さえいればいい。 10 (10) (ガガガ文庫 (10))感想
ついに伊月たちの知るところとなった千尋の抱える大きな秘密。徐々に受け入れられてゆく日々の一方で、満喫していたように見えた伊月に大きな試練が訪れる第十弾。明かされてゆく二人が家族になった経緯と、千尋が秘密を抱えていた事情。これは大混乱必至と思っていたのに意外とそうでもなくアニメも好評で、蚕と一緒に台湾からサイン会に招待されたりと、伊月の充実した日々が描かれていて少し拍子抜けしましたが、もちろんそのまま終わるわけがなくて、思ってもみなかった変化の予兆と深刻な状況に愕然としました。これはどうなるのか続巻に期待。
読了日:07月17日 著者:平坂 読
やがて恋するヴィヴィ・レイン 6 (6) (ガガガ文庫)やがて恋するヴィヴィ・レイン 6 (6) (ガガガ文庫)感想
ミズキと共に落下したジュデッカで皇帝ヒルガルダと出会うルカ。一方、戦艦バルバロッサに乗り合わせたファニアは尋ねびとに巡り会い、魔女から星の意志を伝え聞き運命が動き始める第六弾。インパクト抜群のヒルガルダから語られる三界の真実。強く想い合うルカとファニアたちが引き寄せる運命の転機。素敵な格好に恥ずかしがったり、やられっぱなしのままでは終わらせないファニア△でしたが、それぞれの天命を悟って再び動き出す四人の物語は次巻最終巻に向けていよいよ盛り上がって来ましたね。ここまで積み上げてきた集大成、期待してます。
読了日:07月17日 著者:犬村 小六
ウェイプスウィード ヨルの惑星 (ハヤカワ文庫 JA セ 2-3)ウェイプスウィード ヨルの惑星 (ハヤカワ文庫 JA セ 2-3)感想
ミドリムシの変異体・エルグレナが生態環境を支配し、海面上昇により地表の大半を水に覆われた25世紀の地球。その調査に宇宙コロニーからやってきた研究者ケンガセンが、島嶼部で暮らす巫女ヨルと出逢う近未来SF。彼女と出会い数奇な運命に巻き込まれてゆくケンガセン。SF的な設定や立ち位置でガラリと変わる倫理観や考え方なども興味深かったですが、研究バカだった彼が価値観の違いに戸惑いながら交渉したり政治に振り回されたりしながら、人類が迎える新たな局面と、そんな中で育まれてきた二人の絆を感じる結末はなかなか良かったですね。
読了日:07月17日 著者:瀬尾 つかさ
真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました (角川スニーカー文庫)真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました (角川スニーカー文庫)感想
最前線での戦いについていけなくなり、仲間の賢者により勇者のパーティーから追い出されたレッド。心機一転、辺境の地で薬草屋を開業しようとした彼のもとに、突如かつての仲間だった王女・リットが転がり込む辺境スローライフ。元ツンデレで不器用だったリットとはお互いがいい感じに補い合える存在で、そんな二人が初々しくも甘い関係を築いていく展開はなかなか良かったです。しかし調整役を放逐した勇者パーティーは案の定破綻していて、兄成分必須な妹勇者の状況も考えると、再び彼が必要とされそうな今後の展開も気になるところではあります。
読了日:07月16日 著者:ざっぽん
中古でも恋がしたい! 12 (GA文庫)中古でも恋がしたい! 12 (GA文庫)感想
3年生に進級した清一たち。そこにかつて清一にトラウマを与えた新入生の結城麻奈が現れ、デジタルゲーム研究会への入部をかけて、古都子と謎の『エロゲ勝負』に挑む第十二弾。清一の理想をめざし、三年間エロゲ道に邁進した麻奈という強力な新キャラ。清一の思わぬ心境の変化によって発生した各ヒロインたちとのデートイベント。彼女たちそれぞれの魅力が引き出された今回でしたけど、エピローグはさすがに予想もしなかった意味深な状況で、しかも次巻で最終巻ですか。真相も気になりますが、清一がどんな結論を出すのか楽しみにしたいと思います。
読了日:07月16日 著者:田尾 典丈
おもてなし時空ホテル: ~桜井千鶴のお客様相談ノート~ (新潮文庫 ほ 21-24)おもてなし時空ホテル: ~桜井千鶴のお客様相談ノート~ (新潮文庫 ほ 21-24)感想
北日本のとある場所でひっそりと営業する「時間旅行者」しか宿泊させない時空ホテル『はなぞのホテル』。面接に来るはずだった友人の代わりになぜか働くことになったチヅが、お騒がせな時間旅行者たちに振り回されてゆく物語。ひ孫のために覚悟を決めた老婆や春日局、父親との関係に頑なな男と作家の覚悟、明の皇帝・朱元璋と仙人の因縁など、ホテルを訪れる時間旅行者たちの騒動に加えて従業員たちのエピソードも絡めた展開で、そのどこかのんびりとしたドタバタ劇は著者さんらしいですね。お見合い相手のその後があるならまた読んでみたいです。 
読了日:07月16日 著者:堀川 アサコ
レッドスワンの絶命 赤羽高校サッカー部 (メディアワークス文庫)レッドスワンの絶命 赤羽高校サッカー部 (メディアワークス文庫)感想
廃部寸前にまで追い込まれたかつての新潟屈指の名門・赤羽高校サッカー部『レッドスワン』。監督も退任してどん底状態にあるチームに新指揮官として舞原世怜奈が就任し、チームを根本から変えてゆく青春サッカー小説。旧弊ばかりが目立っていたチームに、あの手この手を使って新しい風を吹き込んでゆく世怜奈。とはいえ順風満帆でなかったどころか、波乱続きで因縁めいた対決も続く中、チームの基盤づくりを何とか乗り切ってみせた顛末はなかなか面白かったです。かつてのエースだった優雅がこれからどうするのか、その辺も続刊に期待ということで。
読了日:07月14日 著者:綾崎 隼
Re:ゼロから始める異世界生活Ex3 剣鬼恋譚 (MF文庫J)Re:ゼロから始める異世界生活Ex3 剣鬼恋譚 (MF文庫J)感想
剣聖テレシアに勝ち様々な苦難を乗り越え、ついに結ばれたヴィルヘルム。けれどそのための無茶は様々な試練をもたらし、新たなる災禍にも巻き込まれる剣鬼恋歌の甘くほろ苦い後日談。確かに劇的なプロポーズでしたけど。軍から脱走して二年間行方知れずの挙げ句な所業と思えばまあいろいろ出てきますよね。しかも諦めの悪いテレシア父が大人げない(苦笑)とはいえ愛するテレシアのために苦難すら何とかしてしまうのがヴィルヘルムだし、テレシア父もダメなだけの人ではない一面が垣間見えて、不穏の予兆は感じるけれどとてもいいエピソードでした。
読了日:07月14日 著者:長月 達平
おいしいベランダ。 マンション5階のお引っ越しディナー (富士見L文庫)おいしいベランダ。 マンション5階のお引っ越しディナー (富士見L文庫)感想
葉二と出会って2度目の秋。まもり達のマンションに大規模修繕が行われることになってベランダ菜園が危機に。さらにまもりに部屋を貸してくれていた従姉の涼子さんが突然帰国する第五弾。建石さんの菜園イベントを手伝ったりな二人が突然直面するベランダ菜園危機、何か隠し事を抱えるようになった北斗、そして涼子さんの帰国の理由。何ともいろんな意味でお騒がせな涼子さんでしたけど、まさかの急展開からそうなるの?と心配してたら、そんなオチかよ…と突っ込みたくなりましたが、最後の葉二さんにちょっとニヤニヤしちゃいました。続巻も期待。
読了日:07月13日 著者:竹岡 葉月
死神医師 (講談社タイガ)死神医師 (講談社タイガ)感想
一年前に恋人の成海麻里を謎の自殺で失い、死神に魂を売ってしまった「神の手」を持つ心臓外科医の桐尾。安楽死を秘密裏に扱う医師の存在が噂されて、警視庁捜査一課の刑事で麻里の妹・沙耶は「死神医師」の正体が桐尾ではないかと不審を抱きはじめる医療ミステリ。麻里の死の原因となった仕組まれた事件の関係者に近づき次々と追い詰めてゆく桐尾と、その過程で明らかになってゆく事件の真相とひとつの決着。物語の構図としては分かりやすかったですが、少しばかり展開が拙速でしたかね。黒幕がこれからどうするのか、ちょっと気になる結末でした。
読了日:07月13日 著者:七尾 与史
司書のお仕事―お探しの本は何ですか? (ライブラリーぶっくす)司書のお仕事―お探しの本は何ですか? (ライブラリーぶっくす)感想
味岡市立図書館に新人司書として採用された稲嶺双葉を主人公に、蔵書目録の作成や本の受け入れ作業、イベント企画と言った司書の仕事とその成長を描くお仕事小説。認定司書さんを監修に正職員と委託職員との関係や、ネット全盛時代の変わりつつあるレファンレンスだったり、イベントの企画立案や高校の学校図書館との現実的な連携だったり、今の司書さんの仕事が昔と比べてどのように変わってきているのか、またどんなことに意識を向けているのか、主人公の立ち位置をうまく使って分かりやすく小説仕立てで説明してくれていると感じた一冊でした。 
読了日:07月12日 著者:大橋崇行
帝国の女 (光文社文庫 み 35-3)帝国の女 (光文社文庫 み 35-3)感想
世間の認識とは裏腹に華やかさから程遠い、帝国テレビジョンで働く女たちの日々。好きな仕事だけれどままならないことばかりの五人の女性たちが描かれる連作短編集。過労寸前まで奮闘する宣伝部・松国、仕事以外はまるでダメなプロデューサー・脇坂、年下の夫との倦怠に沈む脚本家・大島、訳ありマネージャー・片倉、憧れの人と出会う日を夢見るテレビ誌記者・山浦。それぞれの仕事に取り組む真摯な姿と、一方でプライベートは思うようにいかない苦悩はとても印象的で、ページ数以上に濃密なストーリーと彼女たちの切なる叫びが心に響く物語でした。
読了日:07月12日 著者:宮木 あや子
見習い鑑定士の決意と旅立ち-京都寺町三条のホームズ(10) (双葉文庫)見習い鑑定士の決意と旅立ち-京都寺町三条のホームズ(10) (双葉文庫)感想
大学二年の五月。二十歳の誕生日の記念に清貴と二人で九州へ超豪華寝台列車の旅に行くことになった葵。しかしそこに大麻事件に関わっていた雨宮史郎が目の前に現れる第十弾。きちんと葵のご両親に伝えて旅行に行くあたりが清貴らしいですが、旅行中もたびたび起こる事件やトラブルに少なからず心揺さぶられることも多かった葵の不安を、しっかり払拭してみせる清貴が男前でしたね。周囲も呆れるやや早すぎる感もあった決意表明も、それだけ本気だという思いの現れということで(苦笑)気になる香織のその後も含めて、続巻の展開に期待しています。 
読了日:07月11日 著者:望月 麻衣
インスタント・メサイアI (オーバーラップノベルス)インスタント・メサイアI (オーバーラップノベルス)感想
愛する家族や隣人を魔族に殺されたナイン。村が全滅する中で一人生き延びた彼が、十年の時を経て家族の仇であるはずの魔族の王に配下たることを跪いて乞い願い、密かに復讐の機会を伺うダークファンタジー。歪な笑顔で一部には危険視されながらも、因縁ある魔王クリステラやその妹、そして警戒する配下たちの関心を引きながら少しずつ籠絡し取り込んでいく展開は、一見卑屈で人として無害な存在と思わせつつ、実はかなり壊れていて狂気の愛に溢れるナインの存在感が光っていました。この先にあるのは愛か破滅か、続巻に期待したいシリーズですね。
読了日:07月11日 著者:田山翔太