読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2017年上半期注目のオススメ新作一般文庫24選

というわけで 2017年上半期注目のオススメ新作第四弾ということで一般文庫編です。一般文庫もそれなりの数読んでいますが、最近キャラ文芸とライト文庫の境界が曖昧になってきていて、また青春小説も増えてきています。とりあえずそれなりに点数もあるので、便宜上一般文庫レーベルから出ているもの一般文庫として区分しました。今回は上半期に読んだ中から新作を24点選んでいます。

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

 
君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

 

 勉強合宿の夜に困っていた同級生の北岡恵麻を助けた地味で冴えない飯島靖貴。それをきっかけに密かな交流が生まれてゆく地味系眼鏡男子と人気者ギャルのすれ違いラブストーリー。入学直後の出来事で恵麻に苦手意識を持っていた靖貴と、助けてくれた靖貴が気になってゆく恵麻。学校では知らんぷりだけれど予備校帰りのわずかな時間で育まれてゆく二人の交流。少しずつ想いが積み重なってゆくのに、繊細で不器用な二人が距離を詰め切れないうちに起きる様々なすれ違いと、ギリギリで繋がってゆく巡り合わせの妙とても切ない物語です。全2巻。

長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)

長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)

 

 長崎の女子大学に入学した東京出身の日高乙女。バイトで不採用続きの乙女がオランダ坂の外れに不思議な洋館カフェを見つけ、そこで不機嫌顔のオーナーと一緒にバイトとして働くようになる物語。東京っぽさがないとある作家の熱烈大ファンな天然の乙女と、本業が不明で雨降る夜にしか開店しない無愛想で謎めいたカフェ・オーナーの向井。長崎の美味しいものがたくさん紹介されつつ、それと少しずつ増えてゆくお客さんとのエピソードや積み重なってゆく向井への想いがとてもいい感じに組み合わさって、不器用な二人を見守りたくなる素敵な物語でした。

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

 

 自分の目の前で幼馴染・歩巳が暴漢に襲われ姿を消した事件をきっかけに、棋士を諦めたかつての天才少年棋士・香丞。高校で美貌の女流棋士として再会した彼女が再び何者かに襲われ、その事件の真相を追う将棋ミステリ。コンピューター将棋が棋士に勝つのが当たり前になった近未来が舞台。謎解きのアプローチにいくつか後出し設定もあったのは少し気になりましたが、棋士を目指すもう一人の幼馴染・桂花も交えた三角関係の機微や、コンピューター将棋の考察も絡めながらたどり着いた結末の意味にはなるほどと納得してしまいました。面白かったです。

僕は小説が書けない (角川文庫)

僕は小説が書けない (角川文庫)

 

 不幸体質や家族関係に悩む高校1年生の光太郎。先輩・七瀬の強引な勧誘で廃部寸前の文芸部に入部した彼が、部の存続をかけて部誌に小説を書くことになる青春小説。物語を書けなくなっていた光太郎が出会った七瀬先輩の容赦ない批評。プレッシャーが掛かる部誌作成という状況で、振り回すOBふたりの存在と自覚してゆく七瀬先輩への想い。知りたくもない現実を突きつけられてきた光太郎が、それでも苦悩を乗り越えてきちんと向き合ったからこそ見えた光明があって、相変わらず不器用な彼のこれからを予感させるエピローグがとても素敵な物語でした。

少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)

少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)

 

 二浪で中堅私大に入学するも目標を見失っていた十倉和成20歳。そんな彼のボロ下宿の天袋をセーラー服姿の少女・さちが住処としていることが判明し、庇護しようとしたことから物語も動き出す青春小説。十倉が動き出すきっかけとなったさちの出現。停滞の原因となった高校時代の親友・才条の謎の死。やや時代がかった言い回しが多かった停滞の前半はテンポが悪かったですが、そこから親友の死の謎を追い、志を受け継いで映画にのめり込んでいく怒涛の展開は読ませるものがありました。ファンタジーじみた結末も最後で救われてなかなか良かったです。

 カネなし男なし才能なしで崖っぷちな29歳のタロット占い師・柏木美月。ある日ずば抜けた推理力を持つ美少女・愛莉を助けたことをきっかけに、占いユニット「ミス・マーシュ」を結成し人々の悩みに秘められた謎に挑むミステリ。お人好しで困った人を放っておけないお節介な美月と、人と関わるのが苦手だけれど数々の謎を解いてみせるツンデレな愛莉。訪れる人々の謎を解きながら、テンポのいい二人の凸凹コンビぶりや遠慮していた距離感もだんだんいい感じになっていく過程が良かったですね。まだまだ続きも期待できそうですし続巻に期待します。

知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)

知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)

 

 勤務先で先輩の失敗を押しつけられて辞め、叔父が住んでた家に籠もっていた陽向。彼の元に届けられた叔父のテープを原稿起こししてもらうため、音谷反訳事務所の久呼と出会うお仕事小説。訳ありで個人宛てテープは起こさない信条の久呼に反訳のやり方を教えてもらううちに、テープの真意や反訳の奥深さを知って彼女に師事しその仕事を手伝うようになってゆく陽向。意気込みが空回りすることもありましたけど、自身も抱えているものがある久呼とは足りないところをお互い補い合えるいいコンビになりつつあって、続巻あるならまた読んでみたいです。

憧れの作家は人間じゃありませんでした (角川文庫)

憧れの作家は人間じゃありませんでした (角川文庫)

 

 【第2回角川文庫キャラクター小説大賞大賞受賞作】
紆余曲折の末に憧れの作家・御崎禅の担当となった文芸編集者2年目の瀬名あさひ。実は吸血鬼で人外の存在が起こした事件について警察に協力している御崎に原稿を書いてもらうため事件解決にも奮闘する物語。映画好きで意気投合した作家・御崎の意外な正体。最初は困惑するものの映画好きで意気投合しファンでもある御崎の事情を知ることになって、原稿を書いてもらうためにと奮闘するあさひの行動力が物語を引っ張っていた印象。読みやすい語り口でいい感じに物語を引き締めていた刑事の夏樹にも好感。もし続巻あるようならまた読んでみたいですね。

弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま (角川文庫)
 

 恋人に二股をかけられ傷心状態のまま北海道・札幌市へ転勤したOL千春。仕事帰りの彼女が路地裏にひっそり佇む『くま弁』を発見し、「魔法のお弁当」の作り手・ユウと出会う物語。悩みを抱えた一人のお客様のためだけに作るユウの裏メニュー。それによって救われてゆく常連客たち。北海道ならではの食材やお客さんの思い出のメニューに寄り添うユウが作り出すひとつだけのお弁当がとても美味しそうで、ユウ自身もまた自らのありようを見定めてゆく暖かな気持ちになれる物語でした。千春とユウの距離感も変化の兆しがあって続刊に期待したいですね。

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)

 

 ポツダム宣言を受諾せず東西に分断された日本。七十数年後、高校の屋上で出会った不思議な少女・沙希からアルバイトに誘われた彰人が、彼女の壮大なテロ計画に巻き込まれてゆく物語。両親も亡くなって目的もなく死に魅入られていた彰人。彼に協力を求めた沙希が、思惑ある権力者たちをも巻き込んで邁進する真の目的。緊張が高まってゆく状況で大人たちの間を動き回り、ギリギリの駆け引きが続きながらも切り抜ける覚悟を見せた沙希と、彼女と一緒に最後まで走り抜けた彰人が最後に迎えた結末はとても素敵なものだったと思いました。面白かったです。

プラットホームの彼女 (光文社文庫)

プラットホームの彼女 (光文社文庫)

 

 転校前に親友と喧嘩してしまった少年、地味な高校生の意外な一面に心穏やかでいられない少女、事故で娘を失った傷心の母親など、様々な想いを抱える人が駅で出会う一人の少女の連作短編集。逡巡して踏み出せない決心や消化しきれない悔恨を抱える人たちの前に現れ、その背中を押したりわだかまりを解消するきっかけを与えて大切なことを思い出させてくれる少女。物語を重ねてゆくうちにその素性や背景も徐々に明らかになっていって、途中で想像していたものとは少し異なるやや意外な結末を迎えましたけど、切ないながらも心温まる素敵な物語でした。

春や春 (光文社文庫)

春や春 (光文社文庫)

 

 句雑誌で昔知っていた男の子の名前を発見し、俳句の価値を主張して国語教師と対立した茜。友人の東子にそんな顛末を話すうち俳句甲子園出場を目指すことになってゆく青春小説。個性的な初心者の新入生三人も加えつつ立ち上げた俳句同好会。顧問などの協力を得ながら俳句の基本に取り組んだり、抽象的な俳句を数値化する俳句甲子園の独特なルールに向き合ったり気になる人間関係も織り交ぜつつ、豊かな言葉を駆使しながらチームとして戦う展開はなかなか新鮮でした。有望な新入生も入学するということは続巻出るということですよね?期待してます。

 

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

 ある日病院で一冊の文庫本「共病文庫」を拾った高校生の僕が、それを密かに綴っていた膵臓の病気により余命がいくばくもないクラスメイト・山内桜良と出会う物語。ぼっちな僕相手にずけずけと距離を縮めてくる彼女。困惑しつつも彼女と共に過ごす時間がどんどん増えていき、その影響を受けて変わっていく僕。何とも形容し難い二人の繊細な関係と距離感のとても甘酸っぱい恋愛未満な感じが良かったです。何をもって報われたとするのか難しい結末でしたが、二人にとって出会って共に過ごした濃密な時間は、素敵なものだったんだなと改めて思えました。

嘘が見える僕は、素直な君に恋をした (双葉文庫)

嘘が見える僕は、素直な君に恋をした (双葉文庫)

 

 好きになった人の嘘が分かってしまう高校生の藤倉聖。幼い頃から大切に想う人たちの嘘に苦しめられ、距離を置くようになっていた聖が明るく素直な転校生・二葉晴夏と出会う青春小説。誰かを好きになることを渇望しつつも臆病になっていた聖。捨て猫をきっかけに知り合い、お互いの飼い猫を話題に距離を縮めてゆく晴夏。すれ違いを乗り越えてお互いが大切な存在だと自覚するがゆえの嘘がとても切なくて、どうにもならないもどかしさも感じてしまいましたが、明示されなかった結末にかけがえのない時間を共有した二人のその後を想像したくなりました。

屋上のウインドノーツ (文春文庫)

屋上のウインドノーツ (文春文庫)

 

 中学まで人生に何も期待せずに生きてきた志音。そんな彼女が屋上で吹奏楽部部長・大志と出会い、人と共に演奏する喜びを知ってゆく青春小説。人気者の幼馴染から逃げるように別の高校を受験した志音が屋上で出会った先輩とドラム。そして不器用な志音を見守ってくれる仲間たち。登場人物たちそれぞれが立場は違えど抱えている葛藤があって、頑張ったからといって必ずしも目指しているものに手が届くわけではないあたりがわりとほろ苦かったりもしますが、それを踏み越えてチャレンジしたり、関係を再構築してゆく姿がとても爽やかな物語です。

 スクールカースト保健室登校…学校生活に息苦しさを感じる女子中学生たちの揺れ動く心を綴った連作短編集。短編の主人公は自分の居場所を見いだせない女の子たち。時が経てば分かることも、今見えている世界だけではなかなか分からないんですよね。誰もが不安を抱えていて閉塞感のある世界は些細なきっかけで変わる。周囲のストレートな悪意に葛藤しながらも向き合い変わっていこうとする少女たちを描いた物語は、雨上がりのようなこれから良くなる期待を予感させる読後感でした。スカートの長さとカーストを対比させてみせる視点もまた秀逸です。

君が描く空 - 帝都芸大剣道部 (中公文庫)

君が描く空 - 帝都芸大剣道部 (中公文庫)

 

 東京藝術大剣道部に事情があって三年生になってから入部してきた唯。それを指導することになった主将の壮介と、剣道部員たちが織りなす青春群像劇。複雑な家庭の事情を抱えながらも、画廊への契約条件として提示された初段を取ることを承諾した唯。割り切った唯の言動に戸惑い心配する一方で、憧れの部員・綾佳への想いにも揺れる壮介。そろそろ進路を意識せざるをえない部員たちが突きつけられる才能とそれに向き合う覚悟はシビアで、各々が直面する状況もまたほろ苦かったですが、それでも変わらない想いが垣間見える結末はとても心に響きました。

(P[こ]4-6)あざみ野高校女子送球部! (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[こ]4-6)あざみ野高校女子送球部! (ポプラ文庫ピュアフル)

 

 中学時代バスケ部での苦い経験から、もう二度とチーム競技はやらないと心に誓っていた端野凛。つい本気で臨んだ体力測定の記録からハンドボール部顧問成瀬にスカウトされる青春スポーツ小説。典型的なストイックアスリートの凛と凄まじいポテンシャルを持ちながら運動素人の智里。どんなにやられても凹まない絶望しない凛には苦笑いでしたが、好対照な二人を軸として、勝つために自らを追い込んでゆくハンドボール部のメンバーたちそれぞれの想いや葛藤も熱くて、スポーツ小説としてなかなか読み応えがありました。続編あるなら是非読みたいですね。

あした世界が、 (小学館文庫)

あした世界が、 (小学館文庫)

 

 楽会社に勤める吉山朗美と、社長に契約解除され怒り狂う同級生のスーパースター・絹川空哉。十年前の高校時代にタイムスリップした朗美が当時の心残りをやり直す物語。極度のあがり症を抱える冴えない女子高生だった朗美。空哉と蓮に急接近していく一方で、すれ違い続けていた父との関係。無難に生きるしかなかった高校時代の人間関係も十年後の自分には大したことには思えなくて、だからといってままならないこともたくさんあって。それでも逃げずに困難に向き合った朗美の決断が、当時も今も変えてゆく結末は清々しい読後感で面白かったです。

京都西陣なごみ植物店 (PHP文芸文庫)

京都西陣なごみ植物店 (PHP文芸文庫)

 

 ある母娘から質問を受けて戸惑う京都府立植物園の新米職員の神苗健。そんな彼を救った「植物探偵」を名乗るなごみ植物店の店員・実菜と植物にまつわる様々な謎を解いてゆく連作ミステリ。著者さんらしい情緒ある京都の風物詩を絡めつつ、植物絡みの謎に挑む探究心旺盛でちょっと変わった実菜と、彼女から探偵助手に任命された神苗の二人はお互いを補い合うなかなかいいコンビっぷりで、彼らの奔走ですれ違いかけた人の想いが繋がったり、周囲も温かく見守る二人の距離感も今後が気になったりで、続編を期待したい作品ですね。

 様々な事情で集まってきたはみ出し者のメンバーたちが、ど田舎のスーパーなどで働きながら、一緒にクラブチームの野球で社会人全国制覇を目指す物語。かつての過去の栄光だったり、自分の夢と家族との間の葛藤だったり、なかなかうまく行かずに拗らせてしまっている想いにどう向き合って、難しい環境の中でも好きなことをやり抜くのか。社会人野球を扱ったという点でも興味深く、分かりやすくプロを目指すことだけが野球をやる理由ではなくて、不器用にぶつかり合いながらチームとして一つにまとまってゆく彼らの奮闘は心に響くものがありました。

すしそばてんぷら (ハルキ文庫)

すしそばてんぷら (ハルキ文庫)

 

 早朝のテレビ番組でお天気お姉さんをしている寿々が、事務所の発案で江戸まちめぐりのブログを開設することになり「江戸の味」を求めて歩き回る物語。小学生時代を過ごした下町で祖母とのんびりふたり暮らしをしている寿々。長く付き合ってきた人に婚約を破棄されたりでどこか元気のなかった彼女が、ブログ開設を機に新しい仕事が増えたり、iPadを駆使して検索するおばあちゃんや幼馴染と美味しい江戸の味に挑戦したりと、優しく人情味のある展開はとても良かったです。あまり進展しなさそうな幼馴染との関係含めて続編に期待ですね。

 企業の容易には解決できない表沙汰にできない危機的なセキュリティ問題。解決を依頼された82歳のセキュリティ・コンサルタント吹鳴寺籐子が、社内のネットワークを走査する連作ミステリ。個人情報漏洩や企業内情報漏洩、偽ウィルスソフト詐欺やCOBOLレガシーシステムといった昨今よくあるトラブルをテーマに、犯罪者たちのセキュリティの意外な穴を突いてくる手法や、それを合法非合法な手段で追い詰めてゆく籐子の攻防は意外な展開で面白かったです。まあ確かに企業は問題起きたからといって何でも公表してるわけではないですよね(遠い目)

 

 以上です。一連の更新はいったんこれで一区切りになります。

読んでみたい本を探すのに参考になれば幸いです。

 これまでの更新分はこちら↓

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2017年上半期注目のオススメ新作ライト文芸26+1選

少し間が空いてしまいましたが、2017年上半期注目のおすすめシリーズ第三弾ということで「ライト文芸編」です。ライト文芸も最近は刊行点数が増えていて、読むものを少しセレクトしないといけなくなってきています。今回新作のみの紹介なので続巻のシリーズものは特に取り上げていませんが、各レーベルともらしい作品や看板シリーズも育ってきていて、それぞれ路線というか特徴がいろいろ出て行きているのかなと感じますね。というわけで読んだ中からセレクトした26作品と、昨年12月刊行で1月に読んだ1点の計27作品を紹介したいと思います。 

 

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞<大賞>】
大切な姉の死からどこかなげやりに生きていた岡田卓也が、友人に頼まれ「発光病」で入院したままのクラスメイト・渡良瀬まみずと出会ったことで止まっていた二人の時間が再び動き始める物語。余命を宣告されたまみずに死ぬまでにしたいことがあると知らされ、それに協力することを約束した卓也。無茶振りされても奮闘する卓也がなかなか自覚できない自らの想いや、気持ちを伝えることに躊躇するまみずの距離感がもどかしかったですが、遠回りこそしたものの相手に真摯に向き合い大切に思う気持ちを伝え合った、切なくも心の琴線に触れる物語でした。

明治あやかし新聞 怠惰な記者の裏稼業 (メディアワークス文庫)
 

【第23回電撃小説大賞<銀賞>】
明治初期を舞台に書かれた記事が原因で友人が奉公先を追い出されたと新聞社に乗り込んできた少女・香澄が、妖怪にまつわる記事ばかり書く記者・久馬と友人・艶煙と共に人助けをするあやかし謎解き譚。新聞社に乗り込んだ香澄が知る記事が書かれた本当の事情。手伝いをするようになった香澄の心境の変化。普段はぐうたらな久馬がまっすぐなゆえに危なっかしいところもある香澄をきちんと助けたり、だんだんお互いを知ることで少しずつ変わってゆく二人の距離感がなかなか良かったですね。気になるコンビでしたし続きがあるならまた読んでみたいです。

キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)

キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞>】
留年の危機に瀕するダメ学生・奈緒崎が教授から救済措置として提示された難題は「休学中の嗄井戸を大学に連れ戻せ」。引きこもりの嗄井戸と奈緒崎が謎を解決する連作短編ミステリ。映画鑑賞に没頭して家から出ない嗄井戸が安楽椅子探偵よろしく事件を見通してみせる役割で、腐れ縁で彼の家を訪れるようになった奈緒崎が動くコンビ。二人を中心とする物語は一方で彼ら二人の不器用な友情の物語でもあり、キッパリサッパリなヒロイン・束ちゃんもいい感じに効いてテンポも良く、なかなか面白かったと思います。続編あるならまた読んでみたいですね。

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>】
突然見知らぬ女性に三つの質問を問いかけられた雪の日。誰も好いたことがない掛橋啓太が問いかけた大野千草と夫婦になり、平穏な彼女との生活の中で過ぎ去った過去の日々を追憶させてゆく物語。お互いの過去を知らないまま三つの質問という契約によって夫婦になった二人。引きこもりの兄と共依存関係にあった母との辛い過去。徐々に惹かれ合っているのを自覚するがゆえに、じわじわと重くのしかかってゆく三つ目の質問。それぞれが抱える壮絶な過去も二人でなら乗り越えられると思えただけに、淡々と綴られたその不器用な結末には衝撃を受けました。

僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)

僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)

 

 一週間後にピアノコンクールを控えた少年・中瀬と、告白の返事を待たせている少女・山田。ある日、同じ一日をループしていることに気づいた二人が、運命の出会いを果たす物語。納得したら次の日に進めていたのに、出会ったことで二人が納得する条件に変わったループ。適当な言動が多いように見えた山田の悩める心情と、堅物に思えた中瀬のコンクールに賭ける想い。困難に直面する自分のために奔走する相手への想いが少しずつ変わっていって、忘れていた過去も繋がって、乗り越えた二人が紆余曲折の末に迎えた結末はとても素敵なものに思えました。

奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)

奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)

 

 奈良町のくすば菓子店の息子・楠葉シノブは奈良ではもう最後の由緒正しい陰陽師。猫又の墨香や幼馴染のゆかりに見守られながら、周囲で起こる不思議を解きほぐしてゆくあやかしファンタジー。祭りの夜を待つ青衣の女人、ご機嫌ななめな女神、走る大黒様などなど、ご先祖様にも助けられつつ解決に導いてゆくシノブ。最後の陰陽師ではあっても、そんな彼を理解して助けてくれる猫又の墨香や幼馴染のゆかり、友人の道安もいたりで、そんな雰囲気がとても素敵な物語でした。ゆかりとの関係もとてもいい感じでしたけど彼らの物語をまた読んでみたいです。

 突然の婚約破棄に昇進取り消し。順風満帆からまさかの人生のどん底に陥った大手通信会社営業・八乙女累が一念発起して書いた小説で小説新人賞を受賞し兼業作家デビューを果たすお仕事小説。ヤケを起こし迷走した果てに原点回帰して挑戦した小説新人賞。厳しいダメ出しをする鬼編集と組むことになり、仕事の方も大変なことばかりで厳しいと思いましたが、きちんと見据えて頑張ってみれば見えることもあるし助けてくれる人もいるんですよね。どうにか兼業作家のスタートラインに立てた今回、周囲との人間関係も気になりますし続巻を読んでみたいです。

 きちんとゲラを読んで理解し、本の表情を生み出すのが装幀家の役割だと信じる本河わらべが、出版社の合併で本の内容には目を通さない主義の巻島と組むことになり、ことあるごとに衝突しながらも本の装幀を作り上げていく物語。最初はゲラを読む読まないだけでなく、本に似合う装幀を作りたいと思うわらべと、多少強引でも売上に繋がるような装幀を意識する巻島が毎回衝突して苦笑いでしたけど、試行錯誤していく過程で徐々に連携も取れるようになったり、二人がそんな装幀を意識するきっかけに思わぬ顛末が待っていたりとなかなか楽しく読めました。7月に2巻目刊行予定。

時をめぐる少女 (メディアワークス文庫)

時をめぐる少女 (メディアワークス文庫)

 

 未来や過去の自分に逢えるらしい並木道の奥にある小さな広場。九歳の葉子が恋人と婚約したばかりの将来の自分自身と出会う物語。離婚して一人葉子を育てる母親との衝突、繰り返す転校と親友との出会い、上手くいかない就活と大切な人との出会い、そして不安が押し寄せる結婚。自分の選択に自信を持てないがゆえに何かあるたびにこれでいいのか深く悩む葉子でしたけど、そこで一歩を踏み出すことでかけがえのない出会いがあって、それらが巡り巡って最初に背中を押してくれた未来の自分に繋がってゆく穏やかな結末は、とても素敵なものに思えました。

 高二の夏に心臓の病が原因で亡くなった彼女・透子のことを未だ引きずっていた成吾。四年ぶりに地元に帰った成吾が再び手にした交換日記の空白に新たな返事が綴られてゆく物語。彼女が亡くなって以来、初めて訪れた彼女の実家で手にした交換日記に起こった不思議な出来事。語られる彼らの出会いと、交換日記を通じて交わされる時を超えた透子とのやりとり。未来を知っているからこそ何とか変えたい成吾と、その時を後悔しないように精一杯生きたい透子の交流はもどかしく切なかったですが、精一杯真摯に向き合った二人のやりとりは心に響きました。

命の後で咲いた花 (メディアワークス文庫)
 

 教師にならなければならない理由を胸に、晴れて第一志望の教育学部に入学した貧乏学生の榛名なずな。そんな彼女が寡黙で突き放すような年上の同級生・羽宮の優しさに触れ惹かれてゆく物語。不器用なアプローチしかできないなずなと、何かを抱えていそうでなずなを容易に近づかせない羽宮。国語教師になった彼女とたまにしか会えない羽宮の、とても一途で絶望的なのにそこに幸せを見出す切ない恋。読み終わってみるとなるほどなあと唸らされる絶妙な構成で、繊細に積み重ねられてゆく羽宮と彼女の距離感がとても好みでした。後日談も良かったです。

ハッピー・レボリューション (メディアワークス文庫)

ハッピー・レボリューション (メディアワークス文庫)

 

 ゆるい部署に馴れきってしまい、気づけば20代最後の日を目前に焦りだした流され体質のOL夢子。空回り続きだった彼女がふとしたきっかけから一念発起して奮闘する物語。これまで共に受験や就活を乗り切ってきた脳内軍曹と自己変革に挑むも、うまくいかないことだらけで夢子に突き刺さる厳しい現実。前作の二人も甘々な恋人同士として登場したりで、ストーリーとしても分かりやすいベタな展開でしたけど、彼女を助けてくれる周囲の人たちにいい意味で感化され、彼女の頑張りによって周囲も変わってゆく好循環は読んでいて気持ちいい読後感でした。

契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)

契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)

 

 椿屋敷で若くして隠居暮らしの柊一と契約結婚した香澄。町の相談役・柊一の元に近所から相談が持ち込まれるわけありな人々の物語。築六十年の椿屋敷という珍しい視点から綴られる穏やかで物事がよく見えるのになぜか人の機微には少し疎い柊一と、よく働き一緒に過ごすうちに柊一のことが気になってゆく可愛い香澄の関係。二人の穏やかな日常が周囲の関与により詮索しないはずの過去に触れ少しずつ変わってゆく展開は、二人が本当の夫婦に近づいてゆく過程をいろいろと楽しめそうですね。周りのキャラも魅力的でこれは続巻に期待大の新シリーズです。

エプロン男子 今晩、出張シェフがうかがいます (集英社オレンジ文庫)

エプロン男子 今晩、出張シェフがうかがいます (集英社オレンジ文庫)

 

 激務の仕事はうまくいかず、恋人にもフラれたデザイナーの夏芽。心身ともにボロボロの彼女がイケメンシェフが自宅に来て料理を作ってくれる「エデン」を紹介される物語。やって来た海斗の作る食事と優しさに触れ立ち直るきっかけを得た夏芽が、次々と出会うメンバーたち。エデンを立ち上げた相馬と参加する男たちが抱える事情と料理に賭ける想い。それぞれのやり方で求められた人たちのために真摯に向き合う彼らの料理には癒されそうで、でも接触禁止で恋愛禁止な契約という縛りがなかなか興味深かったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

 

 父の死により莫大な遺産を相続した女子高生の一華。遺産を狙って親族たちが彼女を事故に見せかけ殺害しようとするのに対抗して、一華が唯一信頼する使用人の橋田がある探偵を雇う物語。遺産目当てとは言えここまで露骨に命を狙いに来る親族たちも相当アレですが、それ以上に事件が起こる前にトリックを看破して犯罪を止めて「トリック返し」までしてしまう究極の探偵とか新しいですね(苦笑)依頼人にそれと気づかれぬまま、邂逅する前に探偵がいろいろ動いて終わっていた上巻でしたけど、下巻ではどう驚かせてくれるのかこれは期待が高まりますね。7月に下巻刊行予定。

 山中にある屋敷の座敷牢で出会った少女ツナ。怖い話を聞かせることを条件に週一回会うことを許されたミミズクが十年目に転機を迎える物語。育ての親や友人にもツナのことを隠し続けてきたミミズクこと瑞樹。かつて投稿した怪談記事が縁で多津音一と出会ったことにより徐々に明かされてゆくツナを巡るからくり。丁寧で繊細なことばによって恐怖が描かれる一方で、瑞樹がきちんと向き合ったことで明らかになった真実は思わぬ奇跡にも繋がっていて、どうにか折り合いをつけて迎えたその結末はなかなか素敵な読後感でした。

緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)

緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)

 

 自分を出せない性格に悩む学級委員長・由宇と「誰も仲良くしないでください」と衝撃的な挨拶をした転校生・緋紗子さんの出会い。偶然、緋紗子さんの身体の重大な秘密を知ったことで二人の関係が変わってゆく青春小説。学級委員長を押し付けられ両親が離婚の危機、幼馴染への恋心も封印していた由宇。秘密を抱えるがゆえに孤高を貫いていた緋紗子さんとの不器用な交流は微笑ましくて、だからこそままならないすれ違いがもどかしくもなりましたが、二人の出会いと育んだ友情がそれぞれにもたらした確実な変化の兆しがとても素敵な物語でした。

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

 

 危篤に陥ったおじいちゃんが肌身離さず持っていた写真の謎。雨女の五雨がその謎を解くために、雨の日にだけ登校する不思議な雨月先輩に相談を持ちかける雨の物語。おじいちゃんの写真や七夕の催涙雨といった雨に関する謎を、どこか複雑な気持ちで雨月先輩の下に持ち込む五雨。雨に関する無駄に詳しい知識を活かして優しい解決に導いてゆく雨月先輩の謎は深まるばかりで、五雨がその謎を追うことでたどり着いた真相は切なくもありましたが、それでも相変わらずなように見えて何かが変わったようにも思える二人の今後をまた読んでみたいと思いました。

僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)

僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)

 

 気になる架能風香から誤字脱字だらけの恋文に散々なダメ出しを食らった深海楓が、彼女にふさわしい男になるべく小説家を志すボーイ・ミーツ・ガールミステリ。普段からヘルメットを着用し敬愛するカフカになれと告げる風香と、女好きだった過去を封印する偽装天然な楓。カフカの作品になぞらえた身近な謎を二人で解決するうちに少しずつ変化する距離感と、彼女を本当に好きになっていく楓の想い、彼に対して秘密を抱える風香の逡巡といった心情描写がなかなか良かったです。このレーベルらしい一風変わった、けれどとても自分好みな青春小説でした。

 大学の学食で働きながら、幼馴染・朝生くんと同じマンションに住んでご飯を作る契約をしている楓。体重を除けば完璧な朝生くんとのダイエットを巡る攻防と、身の回りで起こる謎を解くドタバタミステリ。痩せさせるべく日々工夫しながらご飯を作るのになかなか成果が出ない楓とたくさんご飯を食べたい朝生の探り合うような駆け引き、一方で身の回りで起こる謎に対して(デブだけど)無駄に多才な朝生が大活躍するギャップがなかなか面白かったです。そんな二人の何とも形容し難い関係も今後が気になったりで、続巻を是非期待したい新シリーズですね。

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

 

 浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳が、加入した奇人変人揃いの漫画サークルで運命的な出会いを果たした新入生・天原と再会する青春小説。将来もマンガに関わっていきたいと考える卓巳が出会った漫画家を目指す訳ありな先輩たち。彼らが作り出す濃い空間にどんどん溶け込んでゆく天原と卓巳。触発されてマンガを書き始めたり天原と二人で出かけたり、いい雰囲気になりかけたのに全てがぶち壊される急展開にはぐいぐい読ませるものがあって、追いかけたはずなのになぜか追い込まれた卓巳が本音をぶちまける熱い展開はとても面白かったです。

カカノムモノ (新潮文庫nex)

カカノムモノ (新潮文庫nex)

 

 悪夢を見続けるOL、穢れを内に抱える大学生、兄夫婦の子供を預かる花屋。「カカノムモノ」謎の美貌の青年・浪崎碧が、時に人を追い詰めてまで心の闇を暴き解決してゆく物語。昏い想いが育つことで生み出される大禍津日神と、一族の事情から人として生きてゆくためにそれを食らわねばならない碧の宿命。訳ありそうなカメラマン・桐島とともに闇を抱えた人を探し出して穢れを払うシリアスな過程には、ごくありふれたままらない日常の積み重ねがあって、宿業を抱えた碧を取り巻く事情がどのように変わってゆくのか続刊に期待したい新シリーズですね。

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

 

 美術館の館長として香瀬町に引っ越してきたカリスマ学芸員・佐久間とその娘のかえで。18年前の事件と町民に残るわだかまりを絵画を通じて佐久間が解いてゆく絵画ミステリー。真相を示唆する絵画を佐久間が解釈して周囲の人々に強く残る過去のわだかまりの誤解を解き、それが18年前の事件の真相ともリンクして全てが繋がってゆく展開。癒やしとなる佐久間とかえで親子のほのぼのとしたやりとりや、救いを見いだせる各エピソードの余韻がとても良かったからこそ、思い出してゆく過去のほのかな想いの結末には少しばかり切ない気持ちになりました。

シマイチ古道具商: 春夏冬(あきない)人情ものがたり (新潮文庫nex)

シマイチ古道具商: 春夏冬(あきない)人情ものがたり (新潮文庫nex)

 

 生活を立て直すため大阪・堺市にある夫の実家「島市古道具商」へ引越し、義父と同居をすることになった透子一家。古い町家で紡がれるモノと想いの人情物語。両親を早くに亡くして社会経験にも乏しく、家族を取り巻く現状がこのままでいいのか思い悩む透子。お店を通じて義父やお客と一緒に古道具や人間関係に関わるようになったり、子供たちや夫ともなかなか上手くいかない状況になりかけたりな彼女は色々と大変でしたけど、多くの人に見守られていたことに気付いた彼女が、本当に大切なもののために周囲と協力して奔走する姿は強く心に響きました。

100回泣いても変わらないので恋することにした。 (新潮文庫nex)
 

 孤独な人間にしか見えないミニサイズな明治時代の名士・伝之丞に取り憑かれた地方の新人学芸員・手島沙良が、彼とともに身近に起きる騒動を解決してゆく物語。伝之丞と出会ってから生き別れていた母親との再会やイケメンとの運命の出会い、友人と職場の同僚の恋愛や河童の復活、殺人事件で探偵役を任されたりと、次々と騒動に巻き込まれてゆく沙良。地道に頑張っているわりには報われず、自分の気持ちにもなかなか素直になれなかった沙良でしたけど、遠回りしながらもたどり着いた結末が、彼女の幸せな未来に繋がっていると信じたくなる物語でした。

おまえのすべてが燃え上がる (新潮文庫nex)

おまえのすべてが燃え上がる (新潮文庫nex)

 

 愛人生活がバレてスポーツジムのアルバイトの給料では生活費すら賄えず、貢がれたブランド品を売って何とか暮らす信濃の元に、弟が元恋人を連れて訪ねてくる物語。冒頭から包丁を持った愛人の妻に殺されかけててギョッとしましたが、どん底信濃の生活っぷりや、同じようにどん底で過去に二度も絶交した因縁の相手・醍醐との気まずい再会、意味不明の意気投合から自己嫌悪する流れはうわあと思いつつもぐいぐい読ませますね。相変わらず波乱万丈な二人にそんなに簡単には変わらないよなと思いつつもその悪くないと思える結末には救いを感じました。

 

ちなみに下記は昨年の作品ですが、今年に入ってから読んだなかなかおもしろかった作品ということで特別に紹介したいと思います。

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

 

 物心ついた頃からブスで、結婚式に憧れ自分は無理でもそれを演出する人になろうと、ウェディングプランナーになった北條香澄。そんな彼女が絶世のブスと絶賛されやり手で絶世の美男子・久世課長に求婚される物語。これでもかと香澄のブスっぷりを真正面から突きつけられる展開は少なからずグサグサ突き刺さりましたが、さらに突き抜けている久世課長の存在感(苦笑)そういう決断しちゃうのかーとは少し思いましたが、お仕事小説としても面白かったですし、仕事に真摯に向き合う香澄の姿勢やその人柄が愛されているのが伺えて悪くない読後感でした。現在2巻まで刊行。

 

こうして眺めるとKADOKAWA刊行が多いですが、そもそもの刊行点数が多いので仕方ないですね(苦笑)残るは一般文庫編ですが、こちらも近いうちに更新したいと思います。ではまた。

 

これまでの更新分は↓

yocchi.hatenablog.com

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好きなライトノベルを投票しよう!! - 2017年上期投票します。

突如いろいろ忙しくなって、予定していた17年上半期注目のオススメ新作ライト文芸編・一般文庫編がまだアップできていなかったりしますが、とりあえず告知があったのでこのラノ17年上期の投票を先にエントリ作っておこうと思います。

好きラノ - 2017年上期に発売されたライトノベルリスト

ちなみに今回対象とされた1196点のうち読んでいたのは193冊です。多いのか少ないのか分かりませんが、だいたい6冊に1冊程度読んでいた計算になりますね。少女小説ライト文芸なども含まれていますが、今回は新作から10点選びました。

86―エイティシックス― (電撃文庫)

86―エイティシックス― (電撃文庫)

 

 帝国の無人兵器レギオンによる侵略を受け、有色人種を差別し戦わせてしのいでいた共和国。そんな若者たちを率いる少年・シンと、後方から彼らの指揮を執るハンドラーとなった少女・レーナが出会う物語。人権を認められない有人の無人機として戦い続ける「エイティシックス」の若者たち。現状に疑問を持つもののその過酷さを本当の意味では分かっていなかったレーナ。次々と仲間が死んでゆく厳しい状況で彼らに突きつけられる指令には絶望的な気持ちになりましたが、因縁にもきちんと決着を付け迎えた意外な結末はとても良かったですね。現在2巻まで刊行。
【17上期ラノベ投票/9784048926669】

 いなり寿司しか食べられない呪いを祓うため神々の住む島・白結木島を訪れた高校生春秋。そんな彼が神様との縁を切ることで怪異を祓う花人の後継者の少女・空と出会い、怪異解決に挑む沖縄青春ファンタジー。天真爛漫でどこまでもフリーダムだけれど島想いな空たちに翻弄されながら、徐々に変わってゆく春秋の心境。師匠を亡くし未熟を自覚しつつも、事情を知って春秋のために呪いを解こうとする空の決意。のびやかな舞台で繰り広げられる物語の結末はちょっぴり切なくて、けれどそれを乗り越える爽快な読後感は著者さんらしい魅力に溢れていました。
【17上期ラノベ投票/9784041056776】

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

 

 期待もない新学年のホームルーム。高校生・細野亮の前に愛してやまない物語の中にいた「トキコ」そのままの少女・柊時子が現れる出会うはずがなかった読者と主人公の物語。見れば見るほどそのままの時子との出会い。一緒に過ごしてゆくうちに想いが少しずつ積もってゆく一方で、自分の中で湧き上がってくる違和感。主人公の周辺を切り取ったようなクローズな世界観で、あまりにも不器用な二人の距離感にもどかしくもなりましたが、物語をきっかけに知り合った二人が物語で心を通わせて、これからの二人の世界の広がりを予感させる素敵な物語でした。
【17上期ラノベ投票/9784048926034】

豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい (ファンタジア文庫)

豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい (ファンタジア文庫)

 

 大人気アニメの嫌われ豚公爵に転生した主人公が、身分を秘した亡国の王女で今は自分の従者・シャーロットに告白するため、熟知するバットエンドを回避するべく奮闘する物語。才能に溢れて将来を嘱望された存在だったはずの豚公爵が、それを投げ捨ててしまった密かな理由。どこか悪徳令嬢ものっぽい雰囲気がある展開でしたが、落ちぶれていた豚公爵の決意とひたむきな想いは素直に応援したいと思えましたし、その評価を覆す奮闘ぶりはとても良かったですね。途中からやや物語に置いて行かれた感もあったメインヒロインでしたけど、今後の活躍に期待。3巻が8月に発売予定
【17上期ラノベ投票/9784040722283】

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

 

 かつての栄光を失い虚栄と退廃に堕ちた東ローマ帝国。国の危機を憂う生真面目な騎士ベリスが、型破りな書記官プロックスと運命的な出会いを果たす戦記ファンタジー。ブロックスとの邂逅によって窮地を脱し、次期皇帝と目されるユスティンの元で頭角を現してゆくベリス。シリアスな展開続きでも脇を固めるキャラたちがよく動いて、その力が高く評価されることになったベリスとブロックスが、一方で皇妃となったテオドラと相容れない確執もあったりで面白かったです。それがいろいろな形で影響しそうな複雑な関係も絡めた今後の展開に期待大ですね。
【17上期ラノベ投票/9784041056837】

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

 

 高校二年生の春、ひとり暮らしを始めるはずだった弓月恭嗣が、不動産屋の手違いでひとつ年下の帰国子女・佐伯貴理華と同居するはめになってしまう物語。無防備な距離感で接してきて家の中と外とでは印象が違う佐伯さんと、苦い過去を持つがゆえに家の外では一定の距離を置こうとささやかな抵抗を続ける弓月くん。表情豊かでキャラとしてもよく動いている佐伯さんとの同居生活が弓月くんを少しずつ変えていって、その変化がクールな弓月くんの元カノ宝龍さんや周囲の友人たちにもまた影響を及ぼしてゆく展開はとても良かったです。現在2巻まで刊行。
【17上期ラノベ投票/9784047344990】

リンドウにさよならを (ファミ通文庫)

リンドウにさよならを (ファミ通文庫)

 

 想いを寄せていた少女・襟仁遥人と共に屋上から落下し死んでしまったらしい神田幸久。二年後地縛霊として目覚めた彼はクラスでいじめに遭う穂積美咲に存在を気づかれ彼女と友達になる青春小説。自分の存在に気づいてくれた少女・美咲の優しい一面を知って現状を変えようとアドバイスをし、美咲が勇気を持って踏み出した一歩から少しずつつ変わってゆくその境遇。繊細な描写を積み重ねて作り上げられた伏線を回収してゆくことで意外な事実も明らかになっていって、爽やかで納得感のある結末まで組み上げたその構成力は今後に期待の作家さんですね。
【17上期ラノベ投票/9784047344969】

漂海のレクキール (ガガガ文庫)

漂海のレクキール (ガガガ文庫)

 

 万能の源エルが消失し陸地のほとんどが水没した世界。唯一の陸地リエスを治める聖王家を追われた少女サリューと、陸地を追われた人々の船団国家にも属さない船乗り・カーシュが出会う物語。サリューを救い依頼を手伝うことになった船長・カーシュたち。共に過ごすうちに絆が育まれ、彼女の抱える秘密を知ったことで彼らも巻き込まれてゆく王道展開でしたが、諦めずに船団国家相手の駆け引きで協力を引き出し、救出に向かう彼らの戦いはなかなか痛快でした。すっきりとした結末でしたけど、新天地に向かう旅の続編があるならまた読んでみたいですね。
【17上期ラノベ投票/9784094516807】

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

 

 人々が陸地のほとんどを失い、いくつかの巨大な船に都市国家を作ってわずかな資源を争う世界。船国を行き来して荷物を運ぶスワローの少年・シエルが、無人島に流れ着いた謎の少女・ステラと巡り合うボーイミーツガール。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせないシエル。理由を明かさないまま自分を荷物として運んで欲しいと依頼するステラ。その飛行は息苦しかった彼らにとって新鮮だけれど危険の連続でもあって、たびたび衝突しすれ違った彼らが力を合わせて乗り越えようと挑んだそのとても爽やかな結末は、次回作も期待したくなるものがありました。
【17上期ラノベ投票/9784063815788】

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

 

 ある朝、同級生の雨宮翼が列車へ飛び込み自殺を図るのに関与してしまった永瀬。その自殺が忘れられない彼が友人の深井から過去に戻れるカプセルを手渡され、やり直すために過去へ遡る物語。最初は彼女に関わらないと決意したはずなのに、逆に雨宮に関わる機会が増えてしまう永瀬。そんな彼に改めて突きつけられる「蝶は羽ばたかない」という事実。それでも当事者の変えようとする意志によって変わることもあって、多くの人にとってはさほど変わらない、けれど確実に変わったその結末に、一抹のほろ苦さを感じながらもどこか救われる思いがしました。
【17上期ラノベ投票/9784063815962】

 

以上です。上半期注目のオススメ新作ライト文芸編・一般文庫編は時間見つけて近いうちに更新しようと思いますのでしばしお待ち下さい。

2017年6月に読んだ新作おすすめ本

 今月のオススメ新作は23点。ラノベはあまり新作読んでないですけど、望月唯一さんの講談社ラノベ文庫「双子喫茶と悪魔の料理書」はなかなか良かったですね。ライト文芸では新潮文庫nexの「モノクロの君に恋をする」が個人的に新しい発見でした。メディアワークス文庫の「奈良町ひとり陰陽師」「僕らが明日に踏み出す方法」もなかなか良かったですし、講談社タイガ「緋紗子さんには、9つの秘密がある」も静かですけど素敵な友情の物語で、青春小説がいろいろ充実してきているのはいい傾向だなと感じるところです。

双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)

双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)

 

 幼馴染の葉月に告白できないまま、彼女やその双子の妹・水希と彼女たちの実家の喫茶店でバイトしている篝。ある日、水希が持ち出した古本から出てきた妖精キキに願いを勘違いされ、葉月ではなく水希の方と縁を結ばれてしまう物語。篝と水希が付き合っていると周囲に認識されている世界。最初は状況を解消しようと焦る篝でしたけど、水希が支えたからこそ乗り越えられた過去があって、弱音を吐けない彼女のために奔走する一面もあったりで、積み重ねによって少しずつ変化してゆく距離感や繊細な描写がとても良かったです。これは続巻も期待ですね。

君に謝りたくて俺は (講談社ラノベ文庫)
 

 高校入学した今井健人が、小学校の頃素直になれずにいじめてしまった苦い過去を持つ相手で記憶障害を持つ明日葉待夢にまさかの再会を果たす物語。いじめていた健人を覚えておらず、周囲から浮きがちな待夢を助けるうちに惹かれ合ってゆく二人。だからこそ過去を隠していることに苦悩する健人。ふとしたきっかけで気づいた過去には動揺もありましたけど、一方で彼女をたくさん救ってきた今があって、「過去は変えられないけど未来を変えられる」と待夢の記憶障害の原因を突き止め、二人で乗り越えようと奔走する姿が心に響くとても素敵な物語でした。

ありえない青と、終わらない春 (講談社ラノベ文庫)

ありえない青と、終わらない春 (講談社ラノベ文庫)

 

 選択しなかった運命を選択するために未来から戻ってきたという少女・前田きららと出会った石崎海。戸惑いながらも真っ直ぐな彼女に惹かれてゆく物語。令嬢としてすでに敷かれているレールを歩むだけのきららの人生。イケメンで優秀な婚約者の存在。一緒にいるうちに想いを自覚してゆく一方で、突きつけられる容易には叶わない現実。二人の想いに焦点を当てるシンプルな構図にしたことで、その分周囲の人物描写があっさりとしていた感はありましたが、逡巡を乗り越えて未来を一緒に切り開いた二人のこれからを応援したくなる爽やかな青春小説でした。

アカシックリコード (Novel 0)

アカシックリコード (Novel 0)

 

 本好きの高校生・片倉彰文が突如友人の甲斐浩太郎と共に小説投稿サイトの中へ召喚され、物語を救うため記憶ごと失われた大切な存在を取り戻すため戦うビブリオン現代ファンタジー。管理する物語が紙魚に蝕まれつつある「悪魔の書」。それを阻止するため創造者として悪魔と契約し、作中の人物や仲間とともに戦う中で失われていた記憶を取り戻す彰文。囚われた幼馴染を取り戻す決断は、すれ違ってしまった彼女と想いを再び通わせるための戦いでもあって、読みやすくとてもいい感じにまとまっていましたけど、他のエピソードも是非読んでみたいですね。

伯爵家の悪妻 (アイリスNEO)

伯爵家の悪妻 (アイリスNEO)

 

 強気な公爵令嬢ヘルミーナに持ちこまれた婚姻話の相手は、社交界一の遊び人と噂の伯爵家子息エーリヒ。勘違いから始まる迫力系美女妻と人誑しな夫の甘くない新婚生活。結婚にあたって無理難題を突きつけたら、喜々として受け入れるエーリヒ。徐々に明らかになってゆく誤解の真相に戸惑いを覚えるヘルミーナでしたけど、それでもついやり過ぎてしまうじゃじゃ馬の彼女みたいな存在は、エーリヒくらい出来た人じゃないと釣り合わないですね(苦笑)様々な周囲の妨害を乗り越えつつ、何だかんだでお似合いになってゆく二人の関係が素敵な物語でした。

 

奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)

奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)

 

 奈良町のくすば菓子店の息子・楠葉シノブは奈良ではもう最後の由緒正しい陰陽師。猫又の墨香や幼馴染のゆかりに見守られながら、周囲で起こる不思議を解きほぐしてゆくあやかしファンタジー。祭りの夜を待つ青衣の女人、ご機嫌ななめな女神、走る大黒様などなど、ご先祖様にも助けられつつ解決に導いてゆくシノブ。最後の陰陽師ではあっても、そんな彼を理解して助けてくれる猫又の墨香や幼馴染のゆかり、友人の道安もいたりで、そんな雰囲気がとても素敵な物語でした。ゆかりとの関係もとてもいい感じでしたけど彼らの物語をまた読んでみたいです。

僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)

僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)

 

 一週間後にピアノコンクールを控えた少年・中瀬と、告白の返事を待たせている少女・山田。ある日、同じ一日をループしていることに気づいた二人が、運命の出会いを果たす物語。納得したら次の日に進めていたのに、出会ったことで二人が納得する条件に変わったループ。適当な言動が多いように見えた山田の悩める心情と、堅物に思えた中瀬のコンクールに賭ける想い。困難に直面する自分のために奔走する相手への想いが少しずつ変わっていって、忘れていた過去も繋がって、乗り越えた二人が紆余曲折の末に迎えた結末はとても素敵なものに思えました。

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

 

 浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳が、加入した奇人変人揃いの漫画サークルで運命的な出会いを果たした新入生・天原と再会する青春小説。将来もマンガに関わっていきたいと考える卓巳が出会った漫画家を目指す訳ありな先輩たち。彼らが作り出す濃い空間にどんどん溶け込んでゆく天原と卓巳。触発されてマンガを書き始めたり天原と二人で出かけたり、いい雰囲気になりかけたのに全てがぶち壊される急展開にはぐいぐい読ませるものがあって、追いかけたはずなのになぜか追い込まれた卓巳が本音をぶちまける熱い展開はとても面白かったです。

100回泣いても変わらないので恋することにした。 (新潮文庫nex)
 

 孤独な人間にしか見えないミニサイズな明治時代の名士・伝之丞に取り憑かれた地方の新人学芸員・手島沙良が、彼とともに身近に起きる騒動を解決してゆく物語。伝之丞と出会ってから生き別れていた母親との再会やイケメンとの運命の出会い、友人と職場の同僚の恋愛や河童の復活、殺人事件で探偵役を任されたりと、次々と騒動に巻き込まれてゆく沙良。地道に頑張っているわりには報われず、自分の気持ちにもなかなか素直になれなかった沙良でしたけど、遠回りしながらもたどり着いた結末が、彼女の幸せな未来に繋がっていると信じたくなる物語でした。

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

 

 自分の目の前で幼馴染・歩巳が暴漢に襲われ姿を消した事件をきっかけに、棋士を諦めたかつての天才少年棋士・香丞。高校で美貌の女流棋士として再会した彼女が再び何者かに襲われ、その事件の真相を追う将棋ミステリ。コンピューター将棋が棋士に勝つのが当たり前になった近未来が舞台。謎解きのアプローチにいくつか後出し設定もあったのは少し気になりましたが、棋士を目指すもう一人の幼馴染・桂花も交えた三角関係の機微や、コンピューター将棋の考察も絡めながらたどり着いた結末の意味にはなるほどと納得してしまいました。面白かったです。

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

 

 父の死により莫大な遺産を相続した女子高生の一華。遺産を狙って親族たちが彼女を事故に見せかけ殺害しようとするのに対抗して、一華が唯一信頼する使用人の橋田がある探偵を雇う物語。遺産目当てとは言えここまで露骨に命を狙いに来る親族たちも相当アレですが、それ以上に事件が起こる前にトリックを看破して犯罪を止めて「トリック返し」までしてしまう究極の探偵とか新しいですね(苦笑)依頼人にそれと気づかれぬまま、邂逅する前に探偵がいろいろ動いて終わっていた上巻でしたけど、下巻ではどう驚かせてくれるのかこれは期待が高まりますね。

緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)

緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)

 

 自分を出せない性格に悩む学級委員長・由宇と「誰も仲良くしないでください」と衝撃的な挨拶をした転校生・緋紗子さんの出会い。偶然、緋紗子さんの身体の重大な秘密を知ったことで二人の関係が変わってゆく青春小説。学級委員長を押し付けられ両親が離婚の危機、幼馴染への恋心も封印していた由宇。秘密を抱えるがゆえに孤高を貫いていた緋紗子さんとの不器用な交流は微笑ましくて、だからこそままならないすれ違いがもどかしくもなりましたが、二人の出会いと育んだ友情がそれぞれにもたらした確実な変化の兆しは、とても素敵なものに思えました。

春や春 (光文社文庫)

春や春 (光文社文庫)

 

 俳句雑誌で昔知っていた男の子の名前を発見し、俳句の価値を主張して国語教師と対立した茜。友人の東子にそんな顛末を話すうち俳句甲子園出場を目指すことになってゆく青春小説。個性的な初心者の新入生三人も加えつつ立ち上げた俳句同好会。顧問などの協力を得ながら俳句の基本に取り組んだり、抽象的な俳句を数値化する俳句甲子園の独特なルールに向き合ったり気になる人間関係も織り交ぜつつ、豊かな言葉を駆使しながらチームとして戦う展開はなかなか新鮮でした。有望な新入生も入学するということは続巻出るということですよね?期待してます。

僕は小説が書けない (角川文庫)

僕は小説が書けない (角川文庫)

 

 不幸体質や家族関係に悩む高校1年生の光太郎。先輩・七瀬の強引な勧誘で廃部寸前の文芸部に入部した彼が、部の存続をかけて部誌に小説を書くことになる青春小説。物語を書けなくなっていた光太郎が出会った七瀬先輩の容赦ない批評。プレッシャーが掛かる部誌作成という状況で、振り回すOBふたりの存在と自覚してゆく七瀬先輩への想い。知りたくもない現実を突きつけられてきた光太郎が、それでも苦悩を乗り越えてきちんと向き合ったからこそ見えた光明があって、相変わらず不器用な彼のこれからを予感させるエピローグがとても素敵な物語でした。

弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま (角川文庫)
 

 恋人に二股をかけられ傷心状態のまま北海道・札幌市へ転勤したOL千春。仕事帰りの彼女が路地裏にひっそり佇む『くま弁』を発見し、「魔法のお弁当」の作り手・ユウと出会う物語。悩みを抱えた一人のお客様のためだけに作るユウの裏メニュー。それによって救われてゆく常連客たち。北海道ならではの食材やお客さんの思い出のメニューに寄り添うユウが作り出すひとつだけのお弁当がとても美味しそうで、ユウ自身もまた自らのありようを見定めてゆく暖かな気持ちになれる物語でした。千春とユウの距離感も変化の兆しがあって続刊に期待したいですね。

知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)

知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)

 

 勤務先で先輩の失敗を押しつけられて辞め、叔父が住んでた家に籠もっていた陽向。彼の元に届けられた叔父のテープを原稿起こししてもらうため、音谷反訳事務所の久呼と出会うお仕事小説。訳ありで個人宛てテープは起こさない信条の久呼に反訳のやり方を教えてもらううちに、テープの真意や反訳の奥深さを知って彼女に師事しその仕事を手伝うようになってゆく陽向。意気込みが空回りすることもありましたけど、自身も抱えているものがある久呼とは足りないところをお互い補い合えるいいコンビになりつつあって、続巻あるならまた読んでみたいです。

白球ガールズ (角川文庫)

白球ガールズ (角川文庫)

 

 甲子園を夢見て努力してきたのに女子は出られないことを知らされた青山由佳。硬式への思いが断ち切れなかった彼女が女子硬式野球部のある花ヶ丘学園高校へ転校し、チームづくりに奔走する青春小説。早々に理事長代理と対立し「春の一勝」が部の存続条件となってしまった、ゼロから立ち上げるチームづくり。幼馴染でライバルだった石田との再会。もう少し掘り下げられそうなエピソードはもったいないなとも感じましたが、一方でそれはまさに野球に賭ける由佳の視点でもあって、これまでの積み重ねが繋がってゆく結末はなかなか悪くない読後感でした。

サブマリンによろしく (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

サブマリンによろしく (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 28年前に八百長疑惑で自殺した伝説のサブマリン投手K・M。行方不明だった1500奪三振の記念ボールが発見されたのをきっかけに再評価する動きが起き、野球嫌いの駆け出しの作家が謎に迫っていくミステリ。誤審、乱闘、転向、落球、そして八百長疑惑…彼にまつわるエピソードの謎を追うために取材した関係者を通じて浮き彫りになってゆくK・Mの人柄と明らかになってゆく真実。文章が若干冗長で誰が誰なのかがイマイチ分かりづらい点もあって読むのに難儀しましたが、悪くない結末が積み重ねられてゆくその読後感は悪くなかったと思いました。

リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 保険調査会社の江崎に回ってくる不審死。そんな彼の意中の人でiPS細胞研究者・友永久理子が、容疑者の思考に寄り添うことで事件を解決するリケジョ探偵ミステリ。研究最優先でそれ以外は後回しの熱血科学者・久理子。そんな彼女のスタンスに理解を示しつつ、行き詰まる調査の真相解決に協力してもらう江崎。理系らしい知識を活かして解決していく展開は、連作短編という形式もあってテンポが良くて読みやすかったです。二人の関係が転機を迎えて急展開しましたけど、こういうきっかけでもないと進まないとも思えたので結果オーライですね(苦笑)

屋上のウインドノーツ (文春文庫)

屋上のウインドノーツ (文春文庫)

 

 中学まで人生に何も期待せずに生きてきた志音。そんな彼女が屋上で吹奏楽部部長・大志と出会い、人と共に演奏する喜びを知ってゆく青春小説。人気者の幼馴染から逃げるように別の高校を受験した志音が屋上で出会った先輩とドラム。そして不器用な志音を見守ってくれる仲間たち。登場人物たちそれぞれが立場は違えど抱えている葛藤があって、頑張ったからといって必ずしも目指しているものに手が届くわけではないあたりがわりとほろ苦かったりもしますが、それを踏み越えてチャレンジしたり、関係を再構築してゆく姿はとても素敵なものに思えました。

嘘が見える僕は、素直な君に恋をした (双葉文庫)

嘘が見える僕は、素直な君に恋をした (双葉文庫)

 

 好きになった人の嘘が分かってしまう高校生の藤倉聖。幼い頃から大切に想う人たちの嘘に苦しめられ、距離を置くようになっていた聖が明るく素直な転校生・二葉晴夏と出会う青春小説。誰かを好きになることを渇望しつつも臆病になっていた聖。捨て猫をきっかけに知り合い、お互いの飼い猫を話題に距離を縮めてゆく晴夏。すれ違いを乗り越えてお互いが大切な存在だと自覚するがゆえの嘘がとても切なくて、どうにもならないもどかしさも感じてしまいましたが、明示されなかった結末にかけがえのない時間を共有した二人のその後を想像したくなりました。

プラットホームの彼女 (光文社文庫)

プラットホームの彼女 (光文社文庫)

 

 転校前に親友と喧嘩してしまった少年、地味な高校生の意外な一面に心穏やかでいられない少女、事故で娘を失った傷心の母親など、様々な想いを抱える人が駅で出会う一人の少女の連作短編集。逡巡して踏み出せない決心や消化しきれない悔恨を抱える人たちの前に現れ、その背中を押したりわだかまりを解消するきっかけを与えて大切なことを思い出させてくれる少女。物語を重ねてゆくうちにその素性や背景も徐々に明らかになっていって、途中で想像していたものとは少し異なるやや意外な結末を迎えましたけど、切ないながらも心温まる素敵な物語でした。

青の王

青の王

 

 王が魔族を使役して国を護る砂漠に咲く水の都ナルマーン。泥棒の疑いをかけられた少年ハルーンが、命からがら辿り着いた塔で閉じ込められていた名前も知らない少女と出会うファンタジー。ファラと名付けた少女を助け出したことから始まる助けてくれたアバンザたちを交えての逃避行。そこで明らかになってゆく青の王とナルマーンの因縁とファラの生い立ち。あるべき形を取り戻すまでが描かれていましたが、とても読みやすく1冊で終わってしまうのがもったいないくらいの世界観で面白かったです。赤の王やほかの王たちの物語も読んでみたいですね。

6月に読んだ本 #読書メーターより

ついに6月は100冊の大台に乗ってしまいました…とかいいつつも、コミックが40冊という内訳なのでわりと平常運転的状況だったりします。今回も文字数の関係で掲載は書籍のみですが、続巻も新作も面白い本が多かったですね。これくらい充実しているのであれば言うことなしです。新作オススメは改めてということで。

 

6月の読書メーター
読んだ本の数:100
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双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)
双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)感想
幼馴染の葉月に告白できないまま、彼女やその双子の妹・水希と彼女たちの実家の喫茶店でバイトしている篝。ある日、水希が持ち出した古本から出てきた妖精キキに願いを勘違いされ、葉月ではなく水希の方と縁を結ばれてしまう物語。篝と水希が付き合っていると周囲に認識されている世界。最初は状況を解消しようと焦る篝でしたけど、水希が支えたからこそ乗り越えられた過去があって、弱音を吐けない彼女のために奔走する一面もあったりで、積み重ねによって少しずつ変化してゆく距離感や繊細な描写がとても良かったです。これは続巻も期待ですね。 
読了日:06月30日 著者:望月 唯一
君に謝りたくて俺は (講談社ラノベ文庫)君に謝りたくて俺は (講談社ラノベ文庫)感想
高校入学した今井健人が、小学校の頃素直になれずにいじめてしまった苦い過去を持つ相手で記憶障害を持つ明日葉待夢にまさかの再会を果たす物語。いじめていた健人を覚えておらず、周囲から浮きがちな待夢を助けるうちに惹かれ合ってゆく二人。だからこそ過去を隠していることに苦悩する健人。ふとしたきっかけで気づいた過去には動揺もありましたけど、一方で彼女をたくさん救ってきた今があって、「過去は変えられないけど未来を変えられる」と待夢の記憶障害の原因を突き止め、二人で乗り越えようと奔走する姿が心に響くとても素敵な物語でした。
読了日:06月30日 著者:わかつきひかる
<Infinit Dendorogram>ーインフィニット・デンドログラム-4.フランクリンのゲーム (HJ文庫)<Infinit Dendorogram>ーインフィニット・デンドログラム-4.フランクリンのゲーム (HJ文庫)感想
ギデオンで行われた超級激突。その決着の瞬間に現れた【大教授】フランクリンがアルター王国をも揺るがすゲームの開始を宣言。王国の危機的な状況を打開すべくレイたちが動き出す第四弾。状況を見定めての周到に用意された罠によって窮地に陥った王国。自由に動ける強者が少ない中で動き出したレイ、マリー、ルークたち。マリーやルーク、ユーゴーたちの背景もいろいろ語られましたが、特異な人材集まり過ぎですね(苦笑)それぞれの意地がぶつかる展開と、絶体絶命の中でも諦めずに光明を見出すレイたちの奮闘は今回も面白かったです。続巻も期待。
読了日:06月30日 著者:海道左近
百錬の覇王と聖約の戦乙女13 (HJ文庫)百錬の覇王と聖約の戦乙女13 (HJ文庫)感想
敵将ファグラヴェールの《戦を告げる角笛》を正面から打ち破り、ついに《鋼》討伐軍の戦線を崩壊させた勇斗。潰走中とはいえ大軍の討伐軍が立ち直る前に容赦なき追撃戦を始める第十三弾。窮地こそ脱したものの、戦力差を考えれば予断を許さない状況だからこそ下した決断。ここで諦めなかったことがその後の流れを定めましたね。戦後処理とか策略への冷静な対応とか、自分を慕うヒロインたちへの向き合い方とか、何かすっかり勇斗が風格漂わせてる感もありましたが、ある程度定まったところであのお人と最終決戦ですか。はたしてどうなりますかねー。
読了日:06月29日 著者:鷹山誠一
高校図書館デイズ: 生徒と司書の本をめぐる語らい (ちくまプリマー新書)高校図書館デイズ: 生徒と司書の本をめぐる語らい (ちくまプリマー新書)感想
札幌南高校の図書館を訪れた13人の生徒たちが、司書の先生に問わず語りしたものをまとめた一冊。何というか読んでいてだいぶ恵まれた図書館だったんだなーということや、こういう環境にいるといろいろ広がりも出てくるのよねとか、周囲に本のことが語れる人がいるといい刺激になりますよね。10代のうちにこんな環境と巡り合えると良いんですけど、なかなか難しいというか。当時地元の公共図書館には通っていたけれど、高校の図書館には思い出もなく、周囲に本のことを語れる友人も特にいなかった身としてはちょっと羨ましくなりました(苦笑) 
読了日:06月29日 著者:成田 康子
モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)感想
浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳が、加入した奇人変人揃いの漫画サークルで運命的な出会いを果たした新入生・天原と再会する青春小説。将来もマンガに関わっていきたいと考える卓巳が出会った漫画家を目指す訳ありな先輩たち。彼らが作り出す濃い空間にどんどん溶け込んでゆく天原と卓巳。触発されてマンガを書き始めたり天原と二人で出かけたり、いい雰囲気になりかけたのに全てがぶち壊される急展開にはぐいぐい読ませるものがあって、追いかけたはずなのになぜか追い込まれた卓巳が本音をぶちまける熱い展開はとても面白かったです。 
読了日:06月28日 著者:坂上 秋成
異世界食堂 4 (ヒーロー文庫)異世界食堂 4 (ヒーロー文庫)感想
創業五十年、異世界食堂としては開店三十年。『洋食のねこや』創業エピソードも収録された第四弾。相変わらず毎回美味しそうな描写だらけでお腹が空く物語ですが、どんどん増えてゆく登場人物同士の横の繋がりもいろいろ出てきたりで、誰が誰なのかどんな繋がりがあったのか絵付きで人物紹介とか相関図が欲しくなってきました(苦笑)食べる人のことをいろいろ考えて作る店主だけでなく、異世界人のこだわりにもまた凄まじいものがありますが、何より異世界の元勇者であった祖母・ヨミと先代の関わり合いがいろいろとじんわり来るものがありました。
読了日:06月28日 著者:犬塚 惇平
100回泣いても変わらないので恋することにした。100回泣いても変わらないので恋することにした。感想
孤独な人間にしか見えないミニサイズな明治時代の名士・伝之丞に取り憑かれた地方の新人学芸員・手島沙良が、彼とともに身近に起きる騒動を解決してゆく物語。伝之丞と出会ってから生き別れていた母親との再会やイケメンとの運命の出会い、友人と職場の同僚の恋愛や河童の復活、殺人事件で探偵役を任されたりと、次々と騒動に巻き込まれてゆく沙良。地道に頑張っているわりには報われず、自分の気持ちにもなかなか素直になれなかった沙良でしたけど、遠回りしながらもたどり着いた結末が、彼女の幸せな未来に繋がっていると信じたくなる物語でした。
読了日:06月28日 著者:堀川 アサコ
ブライディ家の押しかけ花婿 (コバルト文庫)ブライディ家の押しかけ花婿 (コバルト文庫)感想
伯爵令嬢でありながら社交界にも出ず、魔法石の研究に没頭するマリー・ブライディ17歳。そんな彼女に酔っぱらった父が結婚相手として国の王子デューイを連れてきて、マリーに求婚する物語。苦い過去から容易には男性を信用できないマリーと、焦らずそんな彼女に寄り添うデューイ。彼とのやりとりを重ねて少しずつ変わってゆく二人の距離感や、それでも恥ずかしくてなかなか素直になれないマリーがとても良かったですね。以前の作品とも繋がりがあったりで、こういう世界観や不器用な関係は大好きなので、これからも広がってゆくことを期待します。
読了日:06月27日 著者:白川 紺子
プラットホームの彼女 (光文社文庫)プラットホームの彼女 (光文社文庫)感想
転校前に親友と喧嘩してしまった少年、地味な高校生の意外な一面に心穏やかでいられない少女、事故で娘を失った傷心の母親など、様々な想いを抱える人が駅で出会う一人の少女の連作短編集。逡巡して踏み出せない決心や消化しきれない悔恨を抱える人たちの前に現れ、その背中を押したりわだかまりを解消するきっかけを与えて大切なことを思い出させてくれる少女。物語を重ねてゆくうちにその素性や背景も徐々に明らかになっていって、途中で想像していたものとは少し異なるやや意外な結末を迎えましたけど、切ないながらも心温まる素敵な物語でした。
読了日:06月27日 著者:水沢 秋生
学校司書という仕事学校司書という仕事感想
学校司書ができること、図書館サービスの意味などを具体例を引きながら紹介し、学校司書という仕事の重要性をガイドした一冊。学校図書館法の改正や配置状況、戦後から近年に至るまでの学校司書を巡る状況の変化や問題を踏まえつつ、今求められることを先人の取り組みを交えながら考察されていて、単独での仕事も多い学校司書に求められる資質として、まずコミュニケーション能力や好奇心、失敗を恐れないといったことなどが挙げらる点に、学校側や公共図書館などとの連携が重要になってきている学校図書館のありようが集約されていると思いました。
読了日:06月26日 著者:高橋 恵美子
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女IV」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部「領主の養女IV」感想
神殿の工房では新しい印刷機もついに完成。紙の作り方を教えたり新素材の研究をするためイルクナーへ向かう一方、現領主の姉が来訪したことで、エーレンフェストには不穏な空気が流れ始める第十一弾。プランタン商会が設立されてベンノがギルベルタ商会から独立したり、紙の本作成のために新素材の研究したりと、いろいろ先を見据えて布石が打たれていった回でしたけど、ゲオルギーネ登場からの不穏な気配が今後どうなるのか心配というか。新衣装で見違えたブリギッテを守ってみせたダームエルの求婚がいい感じにまとまるよう頑張って欲しいですね。
読了日:06月26日 著者:香月美夜
僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)感想
一週間後にピアノコンクールを控えた少年・中瀬と、告白の返事を待たせている少女・山田。ある日、同じ一日をループしていることに気づいた二人が、運命の出会いを果たす物語。納得したら次の日に進めていたのに、出会ったことで二人が納得する条件に変わったループ。適当な言動が多いように見えた山田の悩める心情と、堅物に思えた中瀬のコンクールに賭ける想い。困難に直面する自分のために奔走する相手への想いが少しずつ変わっていって、忘れていた過去も繋がって、乗り越えた二人が紆余曲折の末に迎えた結末はとても素敵なものに思えました。 
読了日:06月25日 著者:岬 鷺宮
奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)感想
奈良町のくすば菓子店の息子・楠葉シノブは奈良ではもう最後の由緒正しい陰陽師。猫又の墨香や幼馴染のゆかりに見守られながら、周囲で起こる不思議を解きほぐしてゆくあやかしファンタジー。祭りの夜を待つ青衣の女人、ご機嫌ななめな女神、走る大黒様などなど、ご先祖様にも助けられつつ解決に導いてゆくシノブ。最後の陰陽師ではあっても、そんな彼を理解して助けてくれる猫又の墨香や幼馴染のゆかり、友人の道安もいたりで、そんな雰囲気がとても素敵な物語でした。ゆかりとの関係もとてもいい感じでしたけど彼らの物語をまた読んでみたいです。
読了日:06月24日 著者:仲町 六絵
ドイツ三〇〇諸侯 一千年の興亡ドイツ三〇〇諸侯 一千年の興亡感想
かつて300もの領邦に分かれて権力争いを繰り広げていたドイツ諸侯。中世からハプスブルクヒトラー登場まで、破天荒で支離滅裂な諸侯たちが跳梁跋扈した激動の時代を解説した一冊。選帝侯などの有力諸侯各家から豆粒諸侯まで、歴史に名を残す人物たちの複雑で愛憎にまみれたエピソードの数々がテンポよく描かれていて、とても読み応えがありました。結果から見てしまうといろいろ残念な人物やエピソードも多かったですが、これだけ周辺国との関係や国の運営に深く関わっていた宗教なども複雑に絡む状況は、想像以上に大変だったんでしょうね。 
読了日:06月24日 著者:菊池 良生
青の王青の王感想
王が魔族を使役して国を護る砂漠に咲く水の都ナルマーン。泥棒の疑いをかけられた少年ハルーンが、命からがら辿り着いた塔で閉じ込められていた名前も知らない少女と出会うファンタジー。ファラと名付けた少女を助け出したことから始まる助けてくれたアバンザたちを交えての逃避行。そこで明らかになってゆく青の王とナルマーンの因縁とファラの生い立ち。あるべき形を取り戻すまでが描かれていましたが、とても読みやすく1冊で終わってしまうのがもったいないくらいの世界観で面白かったです。赤の王やほかの王たちの物語も読んでみたいですね。 
読了日:06月23日 著者:廣嶋 玲子
猫のいる喫茶店の名言探偵 (PHP文芸文庫)猫のいる喫茶店の名言探偵 (PHP文芸文庫)感想
弁護士事務所に就職できずマチベンとなった平凡な新米弁護士のノリ。名言大好きの変わり者な弟・律とともに持ち込まれた謎や人々の悩みを解決する連作ミステリ。お金に繋がるような仕事がなかなか舞い込んでこない状況で、弟のずば抜けた洞察力にも助けられつつ、嫁姑問題の愚痴や落書きの犯人探し、立ち退き交渉や遺産相続といった持ち込まれる謎に向き合う日々。事件解決の道筋を見つけるのは弟でも、それもまた人のために奔走する兄無くしては成立しないもので、多くの人に支えられて弟や幼馴染の咲たちに慕われるのも分かるような気がしました。
読了日:06月23日 著者:北國 浩二
本の未来を探す旅 ソウル本の未来を探す旅 ソウル感想
独立系書店や出版社といった多様なあり方で現場から牽引する若い世代のインタビューを中心に、隣国・韓国の出版状況をレポートした1冊。教科書と参考書が売上の6割を占める日本より市場が小さい韓国。再販制を撤廃して大手書店やネット書店が大きく値引きした結果一度は地域書店が崩壊、規制の方向に再び舵が切られたことで価格差もなくなり、中小書店でも勝負できる土壌ができた歴史は興味深かったですね。考え方の違いや始める敷居の低さもあるとは思いますが、自由な発想で比較的若い世代が積極的にチャレンジしている姿はなかなか新鮮でした。
読了日:06月22日 著者:内沼晋太郎,綾女欣伸
現実主義勇者の王国再建記IV (オーバーラップ文庫)現実主義勇者の王国再建記IV (オーバーラップ文庫)感想
アミドニア公国との戦争を終えた暫定国王ソーマに届いた敵対国だったはずの公国全土からの併合要請。併合を認めた彼への献上品のなかに公国の妹姫ロロアが潜む第四弾。ソーマの思惑を出し抜いて見せた抜け目ない公国の妹姫ロロアからの突然の求婚。ロロアもなかなか面白い人材でしたけど、領土も拡大する中で着々と進む人材登用や改革の合間にある婚約者たちとの少しだけ甘いやりとりがとても良かったですね。ようやくいろいろな覚悟も決まって区切りのついた今巻で第一部完結とのことですが、まだ続けられそうとのことで第二部もとても楽しみです。
読了日:06月22日 著者:どぜう丸
後宮香妃物語 龍の皇太子とめぐる恋 (角川ビーンズ文庫)後宮香妃物語 龍の皇太子とめぐる恋 (角川ビーンズ文庫)感想
香を作る香士が貴ばれる神瑞国。調香の腕を買われた下町に住む凛莉が、亡き父の汚名をそそぐため太子・煌翔の後宮に入り伝説の秘宝香調合を目指す物語。香士として秘宝香の調合に失敗し、事故死したとされる父の死後生活に苦労した凛莉と母。彼女に調合を教え生活を支えた木蓮の推挙で後宮に入る凛莉。人に優しく正義感も強い一方、うっかりな言動も多い凛莉はトラブルに巻き込まれがちな一面もありましたが、彼女の失われた記憶には意外な縁や陰謀にも繋がっていて、すれ違ったいくつかの想いがどのような結末を迎えるのか続巻に期待したいですね。
読了日:06月21日 著者:伊藤 たつき
アサシンズプライド6 暗殺教師と夜界航路 (ファンタジア文庫)アサシンズプライド6 暗殺教師と夜界航路 (ファンタジア文庫)感想
夜界からの襲撃を防ぐ装置に予期せぬ異常が発生してフランドールに未曾有の危機が迫り、解決のため公爵家当主たちが集結。メリダたち四人娘にクーファやロゼも帯同して飛空艇で海へ向かう第六弾。序盤はクーファに水着姿でアプローチする可憐な四人娘にロゼまで参戦するドタバタぶりに苦笑いでしたが、城を占拠する死の女王の妄執に振り回されつつ、裏で公爵家や革新派のことを探る展開は各々(いろんな意味で)きちんと見せ場があって、暗躍する敵の正体が明らかになったことで次に繋がりそうですね。気になる伏線も出てきたりで続刊も楽しみです。
読了日:06月21日 著者:天城ケイ
冴えない彼女の育てかた Girls Side3 (ファンタジア文庫)冴えない彼女の育てかた Girls Side3 (ファンタジア文庫)感想
誰もが求めていなかった“転”のイベント。停滞するサークル副代表、加藤恵の前に美智留たちが現れ、そして倫也と同じように恵もまた大きな決断をすることになる十二巻の裏話第三弾。身も蓋もないぶっちゃけ話をバンドメンバーと交わしていた美智留が、今回はやたらぐいぐい攻めるなーと思ったら脚本あったんですね(苦笑)女性陣によるメインヒロイン攻略で繰り広げられた繊細な心理描写と容赦ない突っ込みは、ぐっとくるものがある一方でちょっぴり切なくもあって。それでもゲスい波島兄と相変わらず諦めが悪い詩羽先輩には苦笑いで安心しました。
読了日:06月20日 著者:丸戸 史明
弱キャラ友崎くん Lv.4 (ガガガ文庫)弱キャラ友崎くん Lv.4 (ガガガ文庫)感想
日南と少しだけ関係性を変えながら一緒に人生攻略を続けている2学期。球技大会で出された新たな課題「やる気のない紺野エリカにやる気を出させること」から思わぬ事態に発展してゆく第四弾。試行錯誤しながら日南と関係を再構築しつつ最初の課題を乗り越えた友崎が直面した事件と、その結末がもたらした思わぬ波紋。これまで構築してきた繋がりをうまく活かしつつ、自身の変化が周囲にも影響を与えていく友崎の成長を改めて感じましたが、日南でも苦戦する歪んでしまった空気をどうやって解決するのか、ゲーマー友崎らしい解決方法に期待ですね。 
読了日:06月20日 著者:屋久 ユウキ
猫と透さん、拾いました ―彼らはソファで謎を解く― (メディアワークス文庫)猫と透さん、拾いました ―彼らはソファで謎を解く― (メディアワークス文庫)感想
恋人と別れ、仕事も失い、失意のどん底にいた美哉。痛みを紛らわそうと飲みに行き、酔った帰りに白猫アガサと青年・透をうっかり拾ってしまい、奇妙な同居生活を始める物語。わがままに思っていた妹や幸せに見えていた友人、始めたバイトの店長に言及する女の人や元カレといった様々な人の悩みに遭遇し、それを心理学の知識も用いて安楽椅子探偵よろしく解決してゆく透。行き詰っていろいろ考えてしまいがちな美哉をフォローする透の想いはどこまでも優しくて、でもそんな彼と猫の事情は謎めいたままで、続刊あるならその辺りも読めるといいですね。
読了日:06月19日 著者:安東 あや
図書館は逃走中図書館は逃走中感想
家にも学校にも居場所がない12歳の少年ボビー。そんな彼が移動図書館で働くヴァンとその娘ローザと出会い、それぞれが行き詰った日常を飛び出すべく移動図書館のトラックに乗って町を離れ、未知の土地を駆けめぐる物語。ただ一人の親友まで遠くに行ってしまったボビーと、移動図書館廃止が決まって途方に暮れるヴァンとその娘ローザ。最初は3人で始まった移動図書館をドラゴンに見立てた逃避行。女王さま、お姫さま、原始人と犬を仲間にした冒険の結末はわりとほろ苦くて、けれどまだこれが終わりではないことに少しだけ救いを感じる物語でした。
読了日:06月19日 著者:デイヴィッド ホワイトハウス,David Whitehouse
僕は小説が書けない (角川文庫)僕は小説が書けない (角川文庫)感想
不幸体質や家族関係に悩む高校1年生の光太郎。先輩・七瀬の強引な勧誘で廃部寸前の文芸部に入部した彼が、部の存続をかけて部誌に小説を書くことになる青春小説。物語を書けなくなっていた光太郎が出会った七瀬先輩の容赦ない批評。プレッシャーが掛かる部誌作成という状況で、振り回すOBふたりの存在と自覚してゆく七瀬先輩への想い。知りたくもない現実を突きつけられてきた光太郎が、それでも苦悩を乗り越えてきちんと向き合ったからこそ見えた光明があって、相変わらず不器用な彼のこれからを予感させるエピローグがとても素敵な物語でした。
読了日:06月18日 著者:中村 航,中田 永一
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? (角川文庫)打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? (角川文庫)感想
夏の花火大会の日、友人と灯台に登り花火を横から見る約束していた中学生・典道が、密かに想いを寄せる同級生なずなから突然かけおちを提案され、失敗した同じ日をやり直すことを願う繰り返す夏休みの1日の物語。密かに想っていた親の再婚で転校することを厭うなずなの事情。過去の失敗を取り戻せる方法を知り、何とかできないかやり直すうちに少しずつなずなと心を通わせてゆく典道。奇跡を期待したくなるそれまでの流れを考えると、提示される現実は切なくほろ苦いと感じましたが、映像化されたらより良さが活きてくる作品かもしれないですね。
読了日:06月17日 著者:大根 仁
白球ガールズ (角川文庫)白球ガールズ (角川文庫)感想
甲子園を夢見て努力してきたのに女子は出られないことを知らされた青山由佳。硬式への思いが断ち切れなかった彼女が女子硬式野球部のある花ヶ丘学園高校へ転校し、チームづくりに奔走する青春小説。早々に理事長代理と対立し「春の一勝」が部の存続条件となってしまった、ゼロから立ち上げるチームづくり。幼馴染でライバルだった石田との再会。もう少し掘り下げられそうなエピソードはもったいないなとも感じましたが、一方でそれはまさに野球に賭ける由佳の視点でもあって、これまでの積み重ねが繋がってゆく結末はなかなか悪くない読後感でした。
読了日:06月17日 著者:赤澤 竜也
重版未定 2重版未定 2感想
売れない本ばかり出していた編集者の主人公が、ついに本気を出す赤裸々出版業界漫画の続編。これまで特にこだわりもなく作っていた主人公が、一念発起してこれを売りたいと思って臨んだ本づくりのまさかの結末。売れ残った在庫の裁断話とか印税の話とかいかにもありそうな話で、期待感があったのにいつの間にか災い転じて福となすみたいな顛末になってましたけど、これを結果オーライとしていいのか当初の想いからするとどこか切なさは否めないというか。でも登場人物たちの叫びが読んでてじわじわ来るのは相変わらずで、また続巻を期待しています。
読了日:06月16日 著者:川崎 昌平
巫女華伝 恋の舞とまほろばの君 (角川ビーンズ文庫)巫女華伝 恋の舞とまほろばの君 (角川ビーンズ文庫)感想
幼い頃に母親を病気で亡くし、神を信じられずに薬学に励んでいた巫女瑠璃。大倭王朝から視察で国を訪れた皇子・紫苑が突然彼女に一目惚れだと求婚する和風ファンタジー。微妙な距離感の中央と国造という背景に、求婚してきた紫音の真意を掴みかねている瑠璃。彼女視点から見える紫音との関係を中心に描かれていて、他の登場人物や舞台のディテール描写はあっさりめでしたけど、今後説明が加えられていくんでしょうか。一見軽そうに見えた紫音の心情描写や王道展開は悪くなかったかなと思いました。続刊決まっているようなので出たら読みたいです。 
読了日:06月16日 著者:岐川 新
宝石吐きのおんなのこ(6)~旅立ちを告げる手紙~ (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)宝石吐きのおんなのこ(6)~旅立ちを告げる手紙~ (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)感想
宝石商会長クルーロルから宝石学校の体験入学に招待され、一人でこの体験学校に参加することを決めたクリュー。一方、ソアランは気になることに対して私設秘書に調査を依頼する第六弾。旅立ったクーはだいたい予想通りでしたけど、スプートニクの意外な様子には思わずにんまり、そしてここぞとばかりに行動するユキさんはとてもらしかったですね(苦笑)しかし鈍いソアランの発想がまたアレでしたけど、ここで絡んできた私設秘書さんの素性を想像するに、これまた一騒動あるんでしょうか。二人が出会った頃のエピソードも良かったです。続巻も期待。
読了日:06月15日 著者:なみあと
アカシックリコード (Novel 0)アカシックリコード (Novel 0)感想
本好きの高校生・片倉彰文が突如友人の甲斐浩太郎と共に小説投稿サイトの中へ召喚され、物語を救うため記憶ごと失われた大切な存在を取り戻すため戦うビブリオン現代ファンタジー。管理する物語が紙魚に蝕まれつつある「悪魔の書」。それを阻止するため創造者として悪魔と契約し、作中の人物や仲間とともに戦う中で失われていた記憶を取り戻す彰文。囚われた幼馴染を取り戻す決断は、すれ違ってしまった彼女と想いを再び通わせるための戦いでもあって、読みやすくとてもいい感じにまとまっていましたけど、他のエピソードも是非読んでみたいですね。
読了日:06月15日 著者:水野 良
中古でも恋がしたい! 10 (GA文庫)中古でも恋がしたい! 10 (GA文庫)感想
波乱だらけの修学旅行奈良編。今度は優佳と清一が二人でお忍びデートに出かけることになり、さらに清一と古都子は仲直りを兼ねて二度目の別行動に出かける第六弾。わりと大胆に猛アタックしていた優佳の心情には泣かされましたけど、教師陣とのやりとりや修学旅行を通じての様々な経験もあってか、あれだけ頑なだった清一のありようも明確な答えこそ見いだせていないもののだいぶ変わってきましたね。女性陣もそれぞれ頑張る姿がとてもいいですし、決断にはもう少し時間が必要なのかもしれないですが、納得の行く結末が読めるといいなと思えました。
読了日:06月14日 著者:田尾 典丈
紅霞後宮物語 第六幕 (富士見L文庫)紅霞後宮物語 第六幕 (富士見L文庫)感想
流産したことに対する想いですれ違ったままの二人。小玉に名誉を与えたいと思う反面、戦場という死地へ送ることに躊躇いを覚えはじめた文林が、小玉ではなく班将軍を康の対応に選ぶ第六弾。もやもやしたものを抱えたまま決まった対応人事と再燃する立太子問題。小玉を信奉する後宮女性陣の動向には苦笑いでしたが、思うところをぶつけ合えて覚悟を決めてしまった小玉と、彼女に複雑な想いを隠しきれない文林の関係は、信頼関係はともかくもう少し情みたいなものを通わせるところが見たいですね。この危機を乗り越えて変わってくるといいんですが…。
読了日:06月14日 著者:雪村花菜
おいしいベランダ。 3月の桜を待つテーブル (富士見L文庫)おいしいベランダ。 3月の桜を待つテーブル (富士見L文庫)感想
付き合って初めての12月。イベント盛りだくさんのシーズンがやってきたと思ったら、招かれざるお客さんが次々現れ、年末には過保護な母まで来襲。不意打ちの訪問から葉二とのお付き合いがバレる第三弾。まもり弟と遭遇して餌付けしたり、まもり従姉の意外エピソードを明かす一方で、元カノに散々な言われようだったりもした葉二さんでしたけど、親バレでお付き合いの危機には自ら率先して奔走しちゃうあたり、まもりとの関係を大切にしてるんだなとニンマリしちゃいました。なんだかんだで少しずつ距離を縮める二人の今後がこれからも楽しみです。
読了日:06月14日 著者:竹岡 葉月
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア9 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア9 (GA文庫)感想
アマゾネス狩りの事件を収束させたのも束の間、王国軍迎撃に乗り出すロキ・ファミリア。語られる『人形姫』と謳われていた頃のアイズ、竜信仰の村に辿り着いた彼女もまた在りし日の情景を追想する第九弾。ロキ・ファミリアに入ったばかりの危うさを抱えていたアイズと、母親代わりだったリヴェリアたちとのエピソード。竜信仰の村で明らかになったアイズが依然として抱えている黒い炎。彼女があれから成長したと思えるからこそ問題の根は深いと感じましたが、英雄たらんと飛躍的に成長し続ける彼がいつか彼女の絶望を払拭してくれると信じています。
読了日:06月13日 著者:大森 藤ノ
後宮樂華伝 血染めの花嫁は妙なる謎を奏でる (コバルト文庫)後宮樂華伝 血染めの花嫁は妙なる謎を奏でる (コバルト文庫)感想
三年前、紫の衣をひるがえして舞う後宮の宮妓・幽彩媚に一目惚れをした帝の従弟で武人の高元炯。辛い過去から結婚するつもりのない彩媚が、蛮族の制圧の褒美として皇帝から彩媚を下賜される第六弾。心のなかで想うことしかできなかった恋愛に奥手な元炯の僥倖。ベタ惚れだけれど頑な彩媚に対して無理に距離を縮めようとせず、大切に想う気持ちが少しずつ彩媚にも届いてゆく変化が良かったですね。今回もいろいろありましたが少しずついい感じに話がまとまるようシリーズとして風向きが変わりつつあるのかな。主人公たちには幸せになって欲しいです。
読了日:06月13日 著者:はるおか りの
サブマリンによろしく (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)サブマリンによろしく (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
28年前に八百長疑惑で自殺した伝説のサブマリン投手K・M。行方不明だった1500奪三振の記念ボールが発見されたのをきっかけに再評価する動きが起き、野球嫌いの駆け出しの作家が謎に迫っていくミステリ。誤審、乱闘、転向、落球、そして八百長疑惑…彼にまつわるエピソードの謎を追うために取材した関係者を通じて浮き彫りになってゆくK・Mの人柄と明らかになってゆく真実。文章が若干冗長で誰が誰なのかがイマイチ分かりづらい点もあって読むのに難儀しましたが、悪くない結末が積み重ねられてゆくその読後感は悪くなかったと思いました。
読了日:06月12日 著者:大津 光央
幸腹な百貨店 デパ地下おにぎり騒動幸腹な百貨店 デパ地下おにぎり騒動感想
祭り効果もあって一度は予算を達成したものの以前低迷が続く堀内百貨店。事業部長の伝治はデパ地下テコ入れのため大人気のおにぎり屋を出店させようとする第二弾。盛り返したなと思ったら反動で以前より落ちるとかなかなか厳しい状況でしたけど、商店街とのいろいろな難しい距離感とか、これまで入っていたテナントや人間関係まで絡んできて、テコ入れするのもなかなか大変ですね。なかなかこう上手くはいかないでしょうけど、地方の難しい状況も力を合わせて変えていけるといいですね。おかず屋はるみたいなお店が近くにあったら行ってみたいです。
読了日:06月12日 著者:秋川 滝美
屋上のウインドノーツ (文春文庫)屋上のウインドノーツ (文春文庫)感想
中学まで人生に何も期待せずに生きてきた志音。そんな彼女が屋上で吹奏楽部部長・大志と出会い、人と共に演奏する喜びを知ってゆく青春小説。人気者の幼馴染から逃げるように別の高校を受験した志音が屋上で出会った先輩とドラム。そして不器用な志音を見守ってくれる仲間たち。登場人物たちそれぞれが立場は違えど抱えている葛藤があって、頑張ったからといって必ずしも目指しているものに手が届くわけではないあたりがわりとほろ苦かったりもしますが、それを踏み越えてチャレンジしたり、関係を再構築してゆく姿はとても素敵なものに思えました。
読了日:06月10日 著者:額賀 澪
ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.14 (電撃文庫)ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.14 (電撃文庫)感想
ついに家の全権を掌握する母にアコの存在が知られてしまい「今度連れてきなさいな」と言われてしまったルシアン。なんとかアコをまともな彼女に偽装するためにネトゲ部で特訓を始める第十四弾。初登場ルシアンの母親もいやこれ社会人として働いてるの?とかつい思ってしまうコミュ障ぶりでしたが、そんな彼女と言動がアレなアコの邂逅とか斜め上過ぎて、メンバーの本音が透けて見えた特訓の過程、作品らしい再チャレンジの末に迎えた結末も面白かったです。次回は修学旅行編らしいですがマスターは一体どうするんでしょうかね(苦笑)期待してます。
読了日:06月10日 著者:聴猫 芝居
ストライク・ザ・ブラッド17 折れた聖槍 (電撃文庫)ストライク・ザ・ブラッド17 折れた聖槍 (電撃文庫)感想
何とか無事進級し珍しく平穏な日々を過ごしていた暁古城。しかし未確認の魔獣が突如現れ、太史局の妃崎霧葉が仲間の敵討ちに燃える香菅谷雫梨に共闘を持ちかける一方、雪菜と瓜二つの容姿を持つ謎の少女が現れる第十七弾。今回は絃神島を巡る状況や古城に関わったヒロインたちも再登場して、現状の立ち位置が明らかになっていきましたが、雪菜はやはり突出した存在だと思わされる一方で、あれはドン引かれても仕方ない(苦笑)神出鬼没だった零菜もいい感じに存在感があって良かったですね。次回はラ・フォリア再登場となりそうで続巻が楽しみです。
読了日:06月10日 著者:三雲 岳斗
エロマンガ先生(9) 紗霧の新婚生活 (電撃文庫)エロマンガ先生(9) 紗霧の新婚生活 (電撃文庫)感想
お互いの過去を打ち明け合い、ようやく心を通じ合わせたマサムネと紗霧。それを明かされてゆく周囲の反応や先輩作家草薙に起きた事件、叔母の京香に紗霧との新たな関係を報告する第八弾。二人の今更な初々しいやりとりには何とも苦笑いでしたけど、エルフとムラマサはともかく身も蓋もない神楽坂さん...そして智恵もまあ仕方ないですね。そんな展開の後だから余計にどうしようもなくアレな感じがした獅童の開花と草薙の誤爆事件w でも複雑な想いをずっと抱えていた京香と一緒にそれを乗り越えることができて良かったです。続巻も期待してます。
読了日:06月09日 著者:伏見 つかさ
魔法科高校の劣等生(22) 動乱の序章編〈下〉 (電撃文庫)魔法科高校の劣等生(22) 動乱の序章編〈下〉 (電撃文庫)感想
深雪を守るため後継者たちを集めた会議での提案を突っぱねた達也。真夜は達也の判断を支持するも十文字家と十山家への警鐘を鳴らし、国防陸軍所属の遠山つかさが暗躍する第二十二弾。深雪優先を貫いて迎合しない達也に懸念を抱いた遠山つかさが、脅威と感じて達也の排除に動いた今回でしたけど、いろいろな意味で突出した達也の優先順位がどこまでもブレない分、周囲の状況によっては厳しい立場に追い込まれかねない懸念が顕在化したのかなと。その結末や予告を見てもまだまだ苦難は続きそうですし、それをどうやって乗り越えてゆくのか期待ですね。
読了日:06月09日 著者:佐島 勤
空棺の烏 八咫烏シリーズ 4 (文春文庫)空棺の烏 八咫烏シリーズ 4 (文春文庫)感想
「山内」のエリート武官を養成する全寮制の学校「勁草院」に入学した雪哉。若宮派と巻き返しを図る兄宮派との間で激化する対立の中で次々と起こる事件に雪哉は立ち向かう第四弾。両派閥の対立が激化してゆく中で、飄々としながらも何度か騒動に関わるたびにその過程で存在感を確実に増してゆく雪哉がいいですね。その隠された意図が明らかになってからの構図がガラリと変わってゆく鮮やかさは相変わらずで、さらに急展開と意外な事実、今後へと繋がっていて面白かったです。外伝の切ないエピソードも良かったですし、続刊をまた楽しみにしています。
読了日:06月08日 著者:阿部 智里
リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
保険調査会社の江崎に回ってくる不審死。そんな彼の意中の人でiPS細胞研究者・友永久理子が、容疑者の思考に寄り添うことで事件を解決するリケジョ探偵ミステリ。研究最優先でそれ以外は後回しの熱血科学者・久理子。そんな彼女のスタンスに理解を示しつつ、行き詰まる調査の真相解決に協力してもらう江崎。理系らしい知識を活かして解決していく展開は、連作短編という形式もあってテンポが良くて読みやすかったです。二人の関係が転機を迎えて急展開しましたけど、こういうきっかけでもないと進まないとも思えたので結果オーライですね(苦笑)
読了日:06月08日 著者:喜多 喜久
春や春 (光文社文庫)春や春 (光文社文庫)感想
俳句雑誌で昔知っていた男の子の名前を発見し、俳句の価値を主張して国語教師と対立した茜。友人の東子にそんな顛末を話すうち俳句甲子園出場を目指すことになってゆく青春小説。個性的な初心者の新入生三人も加えつつ立ち上げた俳句同好会。顧問などの協力を得ながら俳句の基本に取り組んだり、抽象的な俳句を数値化する俳句甲子園の独特なルールに向き合ったり気になる人間関係も織り交ぜつつ、豊かな言葉を駆使しながらチームとして戦う展開はなかなか新鮮でした。有望な新入生も入学するということは続巻出るということですよね?期待してます。
読了日:06月07日 著者:森谷 明子
知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)感想
勤務先で先輩の失敗を押しつけられて辞め、叔父が住んでた家に籠もっていた陽向。彼の元に届けられた叔父のテープを原稿起こししてもらうため、音谷反訳事務所の久呼と出会うお仕事小説。訳ありで個人宛てテープは起こさない信条の久呼に反訳のやり方を教えてもらううちに、テープの真意や反訳の奥深さを知って彼女に師事しその仕事を手伝うようになってゆく陽向。意気込みが空回りすることもありましたけど、自身も抱えているものがある久呼とは足りないところをお互い補い合えるいいコンビになりつつあって、続巻あるならまた読んでみたいです。 
読了日:06月07日 著者:石井 颯良
緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)感想
自分を出せない性格に悩む学級委員長・由宇と「誰も仲良くしないでください」と衝撃的な挨拶をした転校生・緋紗子さんの出会い。偶然、緋紗子さんの身体の重大な秘密を知ったことで二人の関係が変わってゆく青春小説。学級委員長を押し付けられ両親が離婚の危機、幼馴染への恋心も封印していた由宇。秘密を抱えるがゆえに孤高を貫いていた緋紗子さんとの不器用な交流は微笑ましくて、だからこそままならないすれ違いがもどかしくもなりましたが、二人の出会いと育んだ友情がそれぞれにもたらした確実な変化の兆しは、とても素敵なものに思えました。
読了日:06月06日 著者:清水 晴木
探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)感想
父の死により莫大な遺産を相続した女子高生の一華。遺産を狙って親族たちが彼女を事故に見せかけ殺害しようとするのに対抗して、一華が唯一信頼する使用人の橋田がある探偵を雇う物語。遺産目当てとは言えここまで露骨に命を狙いに来る親族たちも相当アレですが、それ以上に事件が起こる前にトリックを看破して犯罪を止めて「トリック返し」までしてしまう究極の探偵とか新しいですね(苦笑)依頼人にそれと気づかれぬまま、邂逅する前に探偵がいろいろ動いて終わっていた上巻でしたけど、下巻ではどう驚かせてくれるのかこれは期待が高まりますね。
読了日:06月06日 著者:井上 真偽
弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま (角川文庫)弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま (角川文庫)感想
恋人に二股をかけられ傷心状態のまま北海道・札幌市へ転勤したOL千春。仕事帰りの彼女が路地裏にひっそり佇む『くま弁』を発見し、「魔法のお弁当」の作り手・ユウと出会う物語。悩みを抱えた一人のお客様のためだけに作るユウの裏メニュー。それによって救われてゆく常連客たち。北海道ならではの食材やお客さんの思い出のメニューに寄り添うユウが作り出すひとつだけのお弁当がとても美味しそうで、ユウ自身もまた自らのありようを見定めてゆく暖かな気持ちになれる物語でした。千春とユウの距離感も変化の兆しがあって続刊に期待したいですね。
読了日:06月06日 著者:喜多 みどり
遺跡発掘師は笑わない 元寇船の眠る海 (角川文庫)遺跡発掘師は笑わない 元寇船の眠る海 (角川文庫)感想
蒙古襲来の際に沈んだ元寇船の調査を目的に、長崎県鷹島にある海底遺跡の発掘チームに派遣された無量。沈船から美しい黄金の短剣が発見されたことから、再び事件に巻き込まれてゆく第六弾。今回は水中考古学ということで無量も潜水にチャレンジ。高麗の忠烈王ゆかりとされる剣と地元・松浦党の過去を巡る因縁に巻き込まれつつ、謎の人物だったJKと密かに邂逅したり、まさかの無量父登場もあったりで後編が気になりますね。萌絵の出番があまりないと何か物足りない感もありましたけど、終わってみればいつも通りな展開になっていて安心しました(ぇ
読了日:06月05日 著者:桑原 水菜
ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト (角川ビーンズ文庫)ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンチェルト (角川ビーンズ文庫)感想
養護院出身の伯爵令嬢にして新人バイオリニストのミレア。気が進まない婚約話に困っていた彼女が、宮廷楽団指揮者で公爵令息アルベルトから嘘の婚約を提案される物語。彼女の出生の秘密と将来を導いてくれた聖夜の天使の存在。彼と再会を夢見るお転婆娘だったミレアが、共犯者となって秘密を共有するアルベルトと共に過ごすうち少しずつ変わってゆく心境。いい感じに効いていた周囲のキャラたちも絡めつつ、お互いの実家も巻き込んだ騒動に奮闘しながらも、なかなか素直になれない二人の距離感がとても良かったです。7月に続刊出るようなので期待。
読了日:06月05日 著者:永瀬 さらさ
京都の甘味処は神様専用です (双葉文庫)京都の甘味処は神様専用です (双葉文庫)感想
両親が亡くなり、姉のいる京都に引っ越してきた高校生・天野瑞樹。あやかしの引き起こした事件に巻き込まれて、賠償金を支払うため神様がお客様の甘味処『甘露堂』でバイトをすることになる物語。お店で働く人達に与えられる神の恩恵と瑞樹の周囲で起こる神様や「ナリソコナイ」を絡めたいくつかのエピソード。姉が重度のシスコンだったり、腐女子が主人公たちの組み合わせに萌えたりなんてこともありますが、困った人を放っておけない瑞樹とお店の高校生オーナー・冬夜のコンビはなかなかいい組み合わせで、とても読みやすく悪くない読後感でした。
読了日:06月04日 著者:桑野 和明
幸腹な百貨店幸腹な百貨店感想
かつて店長をしていた堀内百貨店に事業部長として再び関わることとなった高橋伝治。閉店危機にある百貨店再生のため奔走する物語。最初は部下のやる気のなさを嘆き、昔はこうじゃなかったになりかけましたが、祭りを盛り上げようとする商店街の人たちとの出会いや、若者との繋ぎ役になってくれるかつての部下の存在もあって、偏見を持っていた見る目も変わっていったり、意外な一面を知って若い人を信じて任せたり、再構築された人との繋がりが好循環を産んでゆく取り組みはなかなかいいなと思いました。美味しいこだわりも健在で続巻も楽しみです。
読了日:06月04日 著者:秋川 滝美
ありえない青と、終わらない春 (講談社ラノベ文庫)ありえない青と、終わらない春 (講談社ラノベ文庫)感想
選択しなかった運命を選択するために未来から戻ってきたという少女・前田きららと出会った石崎海。戸惑いながらも真っ直ぐな彼女に惹かれてゆく物語。令嬢としてすでに敷かれているレールを歩むだけのきららの人生。イケメンで優秀な婚約者の存在。一緒にいるうちに想いを自覚してゆく一方で、突きつけられる容易には叶わない現実。二人の想いに焦点を当てるシンプルな構図にしたことで、その分周囲の人物描写があっさりとしていた感はありましたが、逡巡を乗り越えて未来を一緒に切り開いた二人のこれからを応援したくなる爽やかな青春小説でした。
読了日:06月02日 著者:清水 苺
暇人同盟 友達いらない同盟2 (講談社ラノベ文庫)暇人同盟 友達いらない同盟2 (講談社ラノベ文庫)感想
暇を持て余す夏休み。スベテの助言から同盟を組む澄田や城ヶ崎と集まって遊ぶことになる第二弾。集まってまず普通の友達同士が何をして遊ぶのか話し合うあたりみんなアレで、いろいろ試しても三人らしい結果になるのには苦笑い。城ヶ崎が変な男に付きまとわれて、それを助けようとする大輔が気になる澄田も微笑ましいですが、大輔も計算高いのか正直過ぎるのか、でもそんな感じが彼らしいですね。勘違いから始まる想いだったり意外なところから判明した過去の縁だったり、甘酸っぱい予感を感じさせる結末は良かったです。次回作も期待しています。 
読了日:06月02日 著者:園生 凪
女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)感想
自分の目の前で幼馴染・歩巳が暴漢に襲われ姿を消した事件をきっかけに、棋士を諦めたかつての天才少年棋士・香丞。高校で美貌の女流棋士として再会した彼女が再び何者かに襲われ、その事件の真相を追う将棋ミステリ。コンピューター将棋が棋士に勝つのが当たり前になった近未来が舞台。謎解きのアプローチにいくつか後出し設定もあったのは少し気になりましたが、棋士を目指すもう一人の幼馴染・桂花も交えた三角関係の機微や、コンピューター将棋の考察も絡めながらたどり着いた結末の意味にはなるほどと納得してしまいました。面白かったです。 
読了日:06月02日 著者:はまだ 語録
伯爵家の悪妻 (アイリスNEO)伯爵家の悪妻 (アイリスNEO)感想
強気な公爵令嬢ヘルミーナに持ちこまれた婚姻話の相手は、社交界一の遊び人と噂の伯爵家子息エーリヒ。勘違いから始まる迫力系美女妻と人誑しな夫の甘くない新婚生活。結婚にあたって無理難題を突きつけたら、喜々として受け入れるエーリヒ。徐々に明らかになってゆく誤解の真相に戸惑いを覚えるヘルミーナでしたけど、それでもついやり過ぎてしまうじゃじゃ馬の彼女みたいな存在は、エーリヒくらい出来た人じゃないと釣り合わないですね(苦笑)様々な周囲の妨害を乗り越えつつ、何だかんだでお似合いになってゆく二人の関係が素敵な物語でした。 
読了日:06月01日 著者:江本 マシメサ
嘘が見える僕は、素直な君に恋をした (双葉文庫)嘘が見える僕は、素直な君に恋をした (双葉文庫)感想
好きになった人の嘘が分かってしまう高校生の藤倉聖。幼い頃から大切に想う人たちの嘘に苦しめられ、距離を置くようになっていた聖が明るく素直な転校生・二葉晴夏と出会う青春小説。誰かを好きになることを渇望しつつも臆病になっていた聖。捨て猫をきっかけに知り合い、お互いの飼い猫を話題に距離を縮めてゆく晴夏。すれ違いを乗り越えてお互いが大切な存在だと自覚するがゆえの嘘がとても切なくて、どうにもならないもどかしさも感じてしまいましたが、明示されなかった結末にかけがえのない時間を共有した二人のその後を想像したくなりました。
読了日:06月01日 著者:桜井 美奈

読書メーター

7月の購入検討&気になる本ほかピックアップ

7月は判明しているだけでも候補が本当に多くて、さすがにここからセレクトしていくことになると思います。ちなみに今回から注目の新刊紹介を冒頭に置くことにして、ラノベの新作には【新作】、文庫化と分かっているものは【文庫化】と表記するようにしました。

 

 【今月の注目作品5点】

君に謝りたくて俺は (講談社ラノベ文庫)
 
双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)

双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)

 
君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

 

 

ラノベ文庫(6/30発売)
【新作】君に謝りたくて俺は わかつきひかる/羽鳥ぴよこ
【新作】双子喫茶と悪魔の料理書 望月唯一/necomi


コバルト文庫(6/30発売)
花嫁が囚われる童話 桜桃の花嫁の契約書 長尾彩子/宵マチ

HJ文庫(7/1発売)
<Infinite Dendrogram>―インフィニット・デンドログラム― 4.フランクリンのゲーム 海道左近/タイキ
百錬の覇王と聖約の戦乙女13 鷹山誠一/ゆきさん

スニーカー文庫(7/1発売)
縛りプレイ英雄記2 剣が振れない聖騎士さま 語部マサユキ/ぎうにう

ビーンズ文庫(7/1発売)
一華後宮料理帖 第四品 三川みり/凪かすみ
ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき恋人セレナーデ 永瀬さらさ/緒花
巫女華伝 恋し君と永遠の契り 岐川新/雲屋ゆきお

X文庫ホワイトハート(7/3発売)
砂の城 風の姫 中村ふみ/六七質

 

ハヤカワ文庫JA(7/5発売)
【新作】正解するマド 乙野四方字


宝島社文庫(7/6発売)
君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 筏田かつら

電撃文庫(7/7発売)
86―エイティシックス― Ep.2 ラン・スルー・ザ・バトルフロント~ 〈上〉 安里アサト/しらび メカデザイン:I-IV
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン XI 宇野朴人/竜徹
オリンポスの郵便ポスト2 ハロー・メッセンジャー 藻野多摩夫/いぬまち
【新作】叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 杉原智則/魔太郎
【新作】レンタルJK犬見さん。 三河ごーすと/ユメのオワリ
【文庫化】青の聖騎士伝説 LEGEND OF THE BLUE PALADIN 深沢美潮/米田仁士

PHP文芸文庫(7/8発売)
書店ガール 6 遅れて来た客 碧野 圭

SKYHIGH文庫(7/10発売)
【新作】図書館は、いつも静かに騒がしい 端島凛/しわすだ

光文社文庫(7/11発売)
【文庫化】避雷針の夏 櫛木理宇

双葉文庫(7/12発売)
【新作】僕の呪われた恋は君に届かない 麻沢 奏

幻冬舎文庫(7/13発売)
鳥居の向こうは、知らない世界でした。2 群青の花と、異界の迷い子 友麻 碧

GA文庫(7/15発売)
りゅうおうのおしごと!白鳥士郎/しらび

富士見L文庫(7/15発売)
【新作】エディター! 編集ガールの取材手帖 上倉えり/煙楽
【新作】もう一度、日曜日の君へ 羽根川牧人/とろっち
【新作】六道先生の原稿は順調に遅れています 峰守ひろかず/榊空也
【新作】時をかける社畜 灰音憲二/はしゃ

光文社単行本(7/18発売)
月夜に溺れる 長沢樹
南風吹く 森谷明子

ガガガ文庫(7/19発売)
【新作】世界の終わりに問う賛歌 白樺みひゃえる/須田彩加
[第11回小学館ライトノベル大賞<審査員特別賞>]
【新作】ひきこもり姫を歌わせたいっ! 水坂不適合/有坂あこ
[第11回小学館ライトノベル大賞<ガガガ賞>]
【新作】平浦ファミリズム 遍柳一/さかもと侑
[第11回小学館ライトノベル大賞<ガガガ大賞>]

講談社タイガ(7/19発売)
探偵が早すぎる (下) 井上真偽/uki
今からあなたを脅迫します 透明な殺人者 藤石波矢
【新作】永劫回帰ステルス 九十九号室にワトスンはいるのか? 若木未生

 

講談社単行本(7/19発売)

病弱探偵 謎は彼女の特効薬 岡崎琢磨


中央公論新社単行本(7/19発売)
潮風エスケープ 額賀澪

ファンタジア文庫(7/20発売)
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦2 細音啓/猫鍋蒼
ゲーマーズ!8 星ノ守心春と逆転バックアタック 葵せきな/仙人掌
空戦魔導士候補生の教官13 諸星悠/甘味みきひろ
空戦魔導士候補生の教官14 諸星悠/甘味みきひろ

オレンジ文庫(7/20発売)
夏は終わらない 雲は湧き、光あふれて 須賀しのぶ/河原和音
ゆきうさぎのお品書き 親子のための鯛茶漬け 小湊悠貴/イシヤマアズサ
カスミとオボロ 春宵に鬼は妖しく微笑む 丸木文華/THORES 柴本

創元推理文庫(7/20発売)
【文庫化】風ヶ丘五十円玉祭りの謎 青崎有吾
【文庫化】エクソダス症候群 宮内悠介

中公文庫(7/21発売)
【文庫化】天盆 王城夕紀

KADOKAWA単行本 (7/21発売)
少女は夜を綴らない 逸木 裕

HJ NOVELS(7/22発売)
ウォルテニア戦記VII 保利亮太/bob

MF文庫J(7/25発売)
14歳とイラストレーター3 むらさきゆきや 企画:溝口ケージ/溝口ケージ
【新作】なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか? 運命の剣 細音啓/neco
ぼくたちのリメイク2 十年前に戻って本気になれるものを見つけよう! 木緒なち/えれっと
魔弾の王と戦姫17 川口士/片桐雛太


オーバーラップ文庫(7/25発売)
灰と幻想のグリムガル level.11 十文字青/白井鋭利
神話伝説の英雄の異世界譚8 奉/ミユキルリア
異世界魔法は遅れてる! (8) 樋辻臥命/猫鍋蒼
ダッシュエックス文庫(7/25発売)
クロニクル・レギオン7 過去と未来と 丈月城/BUNBUN

角川文庫(7/25発売)
遺跡発掘師は笑わない7 桑原水菜
鹿の王3 上橋菜穂子
鹿の王4 上橋菜穂子
恋を積分すると愛 中村航
【文庫化】きみのために青く光る 似鳥鶏

恋を積分すると愛」は「トリガール!」スピンオフ小説を2編収録とのこと。


メディアワークス文庫(7/25発売)
装幀室のおしごと。2 ~本の表情つくりませんか?~ 範乃秋晴

メディアワークス単行本(7/25発売)
お隣さんは小さな魔法使い 有間カオル/西島大介

新潮文庫(7/28発売)

夏の祈りは 須賀しのぶ


東京創元社単行本(7/28発売)
悪女の品格 辻堂ゆめ

ファミ通文庫(7/29発売)
【新作】二周目の僕は君と恋をする 瑞智士記/和遥キナ
【新作】僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している 手島史詞/烏羽雨

2017年上半期注目のオススメ新作ライトノベルファンタジー13+2選

 とりあえず前回のエントリーに引き続き第二弾、ライトノベルファンタジー編です。今回は13点に刊行自体は昨年だったのですが、年が明けてから読んだらとても良かった2点を特別にプラスした15点を紹介します。最近は自分好みのボーイミーツガール的な要素も絡めたファンタジーもたくさん出てきていて、続巻が楽しみなシリーズもあります。これからもこういう作品がたくさん出てきてくれるといいですね。

 

86―エイティシックス― (電撃文庫)

86―エイティシックス― (電撃文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞<大賞>】
帝国の無人兵器レギオンによる侵略を受け、有色人種を差別し戦わせてしのいでいた共和国。そんな若者たちを率いる少年・シンと、後方から彼らの指揮を執るハンドラーとなった少女・レーナが出会う物語。人権を認められない有人の無人機として戦い続ける「エイティシックス」の若者たち。現状に疑問を持つもののその過酷さを本当の意味では分かっていなかったレーナ。次々と仲間が死んでゆく厳しい状況で彼らに突きつけられる指令には絶望的な気持ちになりましたが、因縁にもきちんと決着を付け迎えた意外な結末はとても良かったですね。7月に2巻目刊行予定。

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞<金賞>】
十八世紀末ロンドン。うっかり大金を得た賭博師ラザルスが仕方なく購入させられたのは、喉を焼かれて声を失った奴隷の少女・リーラ。不器用な二人が戸惑いながらも心通わせてゆく物語。師の教え通り勝たない賭博師としてこれまで生きてきたラザルスの失敗。放り出すわけにもいかず感情に乏しいリーラを教育しながら一緒に生活するようになる日々。徐々に打ち解けてゆく二人の拙い関係の変化が繊細な積み重ねで描写されていて、強奪されたリーラを奪還するため冷静に計算して最後まで完遂してみせたラザルスのありようがとても見事で心に響きました。8月に2巻目刊行予定。

漂海のレクキール (ガガガ文庫)

漂海のレクキール (ガガガ文庫)

 

 万能の源エルが消失し陸地のほとんどが水没した世界。唯一の陸地リエスを治める聖王家を追われた少女サリューと、陸地を追われた人々の船団国家にも属さない船乗り・カーシュが出会う物語。サリューを救い依頼を手伝うことになった船長・カーシュたち。共に過ごすうちに絆が育まれ、彼女の抱える秘密を知ったことで彼らも巻き込まれてゆく王道展開でしたが、諦めずに船団国家相手の駆け引きで協力を引き出し、救出に向かう彼らの戦いはなかなか痛快でした。すっきりとした結末でしたけど、新天地に向かう旅の続編があるならまた読んでみたいですね。

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

 

 【第6回講談社ラノベ文庫新人賞<佳作>】
人々が陸地のほとんどを失い、いくつかの巨大な船に都市国家を作ってわずかな資源を争う世界。船国を行き来して荷物を運ぶスワローの少年・シエルが、無人島に流れ着いた謎の少女・ステラと巡り合うボーイミーツガール。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせないシエル。理由を明かさないまま自分を荷物として運んで欲しいと依頼するステラ。その飛行は息苦しかった彼らにとって新鮮だけれど危険の連続でもあって、たびたび衝突しすれ違った彼らが力を合わせて乗り越えようと挑んだそのとても爽やかな結末はとても良かったです。

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

 

 かつての栄光を失い虚栄と退廃に堕ちた東ローマ帝国。国の危機を憂う生真面目な騎士ベリスが、型破りな書記官プロックスと運命的な出会いを果たす戦記ファンタジー。ブロックスとの邂逅によって窮地を脱し、次期皇帝と目されるユスティンの元で頭角を現してゆくベリス。シリアスな展開続きでも脇を固めるキャラたちがよく動いて、その力が高く評価されることになったベリスとブロックスが、一方で皇妃となったテオドラと相容れない確執もあったりで面白かったです。それがいろいろな形で影響しそうな複雑な関係も絡めた今後の展開に期待大ですね。

オリンポスの郵便ポスト (電撃文庫)

オリンポスの郵便ポスト (電撃文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>】
度重なる災害と内乱が続いた火星で長距離郵便配達員として働く少女・エリスが、改造人類・クロを神様がどこへでも誰にでも届けてくれるというオリンポスの郵便ポストまで届ける仕事を依頼される物語。入植時代からの生き残りのクロと、両親を探して郵便配達員を続ける少女の二人による長い旅路。その過程で多くの人に出会い、いくつもの困難に遭遇することで絆が育まれてゆき、それぞれが秘密を抱え意外な縁もあった二人が想いを通わせてゆく物語は、その真実に近づいてゆくたびに切ない気持ちにもなりましたがとても良かったですね。7月に2巻目刊行予定。

豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい (ファンタジア文庫)

豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい (ファンタジア文庫)

 

 【第1回カクヨムWeb小説コンテスト<特別賞>】
大人気アニメの嫌われ豚公爵に転生した主人公が、身分を秘した亡国の王女で今は自分の従者・シャーロットに告白するため、熟知するバットエンドを回避するべく奮闘する物語。才能に溢れて将来を嘱望された存在だったはずの豚公爵が、それを投げ捨ててしまった密かな理由。どこか悪徳令嬢ものっぽい雰囲気がある展開でしたが、落ちぶれていた豚公爵の決意とひたむきな想いは素直に応援したいと思えましたし、その評価を覆す奮闘ぶりはとても良かったですね。途中からやや物語に置いて行かれた感もあったメインヒロインでしたけど、今後の活躍に期待。現在2巻まで刊行。

 永く続く帝国と魔女の国ネビュリス皇庁の戦場で帝国の最高戦力となった剣士イスカ、と皇庁最強とうたわれる氷の魔女姫アリスリーゼが出会う物語。戦場で戦うべき強敵として出会う二人の運命の出会いというわりとよくあるテーマで、待ち合わせもしてないのに中立都市で遭遇し過ぎな感はありましたけど、ベタな甘いラブロマンスを重ねつつ、宿敵の二人が一時的に共闘する展開はとても自分好みでした。両陣営とも首脳陣がアレなので二人の関係が今後どういう方向に向かうのか気になりますね。最後は上手くまとまると信じてますよ?7月に2巻目が刊行予定。

 不器用で口が悪く魔術師として人々に恐れられるザガン。そんなサガンが亡き魔王の闇オークションで白い奴隷エルフの少女ネフィに一目惚れして全財産をつぎ込み購入。不器用な二人の共同生活が始まる物語。コミュ障でどう接していいか分からずたびたび言葉選びを間違えるサガンと、最初は怯えながらも彼の不器用な優しさを知り徐々に心を開いて行くネフィ。これまで孤独な境遇を過ごしてきた二人が、戸惑いながらも危機的状況を乗り越えて絆を育んでいく物語は、わりとシンプルな構図でベタな展開ではありましたがなかなか良かったです。現在2巻目まで刊行。

縛りプレイ英雄記 奇跡の起きない聖女様 (角川スニーカー文庫)

縛りプレイ英雄記 奇跡の起きない聖女様 (角川スニーカー文庫)

 

 凶悪すぎる見た目の高校生・仁王院陣が、回復魔法の失われた異世界に転移し、回復魔法が使えない聖女と出会って先行き不安な旅をする物語。異世界に来てトラウマのある道具を召喚できるようになった陣と、お人好しで今の状況に責任を感じている聖女・マリー。見た目で誤解されがちですが、誤解されることを恐れずにマリーを気遣い、他人のために奔走する陣を彼女はきちんと見ていて、わりといいコンビな二人でしたね。召喚契約も結んで仲間も増えそうなドタバタの道中がこれからどのようなものになるのか、続巻が楽しみな新シリーズです。7月に2巻目が刊行予定。

アカシックリコード (Novel 0)

アカシックリコード (Novel 0)

 

 本好きの高校生・片倉彰文が突如友人の甲斐浩太郎と共に小説投稿サイトの中へ召喚され、物語を救うため記憶ごと失われた大切な存在を取り戻すため戦うビブリオン現代ファンタジー。管理する物語が紙魚に蝕まれつつある「悪魔の書」。それを阻止するため創造者として悪魔と契約し、作中の人物や仲間とともに戦う中で失われていた記憶を取り戻す彰文。囚われた幼馴染を取り戻す決断は、すれ違ってしまった彼女と想いを再び通わせるための戦いでもあって、読みやすくとてもいい感じにまとまっていましたけど、他のエピソードも是非読んでみたいですね。

 烙印の子として奴隷のように育った少年ヴィスとかつて世界を救った伝説の勇者グレン。そんな二人が魔族に奪われたヴィスの恩人を取り戻す旅に出るファンタジー。幼い頃からの虐待で様々なものが欠落したヴィスと彼に目をかけるグレン。そして彼に唯一の正義を教え聖女に選ばれた恩人に起きた事件。魔法使いの少女ニーニらと出会ってからのズレた噛み合わない会話が印象的でしたが、魔王復活を目指す魔族や皇国などの思惑が交錯する展開で、様々な出会いと別れを経て少しずつ変わり始めたヴィスの旅が今後どのようなものになるのか続巻が楽しみです。

まるで人だな、ルーシー (角川スニーカー文庫)

まるで人だな、ルーシー (角川スニーカー文庫)

 

 【第21回秋スニーカー大賞<優秀賞>】
エキセントリックボックスに宿る少女・スクランブルの人身御供となった御剣乃音が願いを叶える代償は人の感情。人間らしさを失いつつも力を行使し人を救う乃音が、正反対の人身御供・氷室に出会う物語。壊れてゆく自覚から抱える矛盾に悩む乃音と、代償に感情を得てどんどん人間に近づいてゆくスクランブル。大切だったものを次々と切り捨ててしまう乃音の選択には絶望的な気分になりましたが、だからこそ彼が育んできたものをきっかけに、どうにか悪くないとも思えるところに落ち着いた結末には救われる思いでした。現在2巻目まで刊行。

 

※以下2点は昨年発売ですが紹介し損なっていた良作なので特別に紹介。

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

 

 連合王国より先に人類を宇宙へ到達させるべく、共和国の最高指導者はロケットで人間を軌道上に送り込む計画を発令。実験体として選ばれた吸血鬼の少女・イリナと監視係に任じられた候補生レフの物語。蔑まれる境遇から自由を得るため実験体として志願したイリナ。そんな彼女に最初は戸惑いながらも、共に過ごし訓練するうちに大切な存在として思うようになってゆくレフ。あくまで実験体としてか扱われない彼女の境遇には厳しいものがありましたが、乗り越えて見せた彼女たちの未来が明るいものであることを信じたくなる素敵な物語でした。現在2巻まで刊行。

西暦二〇三〇年、突如上空に現れた正体不明の飛行物体「衛精」の無差別攻撃で人類が空を奪われた世界。低空飛行に特化させた飛行艇ULFを駆る運び屋タクロウと銀髪犬耳少女チェルシーの物語。チームを組まない訳ありげな青年タクロウと駄犬扱いの相棒チェルシー。彼らに託した想いのため危険と最速の限界を乗り越えようとする二人の物語は、明らかになってゆく彼らの過去や事情によってガラリと印象も変わりますが、メリハリの効いた展開やギリギリを攻め続ける飛行描写、二人を中心とする人間模様がとても良くてぜひ続刊を期待したい作品ですね。

 

以上です。【ライト文芸編】【一般文庫編】は未消化の新刊があるので、月末更新になると思います。よろしくお願いします。

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