読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2017年7月に読んだ新作おすすめ本

7月は続刊ものがわりと多くて、好きな続巻読んで幸せな気分にもなれたのですが、その消化に忙しくて読んだ新作はわりと少なめでした。そういうわけであまり多くはないのですが、その中から今回は11+2冊を紹介したいと思います。

 

【7月読んだ本のイチオシ】

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

 

危篤に陥ったおじいちゃんが肌身離さず持っていた写真の謎。雨女の五雨がその謎を解くために、雨の日にだけ登校する不思議な雨月先輩に相談を持ちかける雨の物語。おじいちゃんの写真や七夕の催涙雨といった雨に関する謎を、どこか複雑な気持ちで雨月先輩の下に持ち込む五雨。雨に関する無駄に詳しい知識を活かして優しい解決に導いてゆく雨月先輩の謎は深まるばかりで、五雨がその謎を追うことでたどり着いた真相は切なくもありましたが、それでも相変わらずなように見えて何かが変わったようにも思える二人の今後をまた読んでみたいと思いました。

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 (電撃文庫)

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 (電撃文庫)

 

 邪神カを降臨させたランドール王国の野望を挫いた六人の英雄の一人・ギュネイ。平凡なその後の人生を選ぼうとしていた彼が、ふとしたきっかけから王国の現状を探るうちに、窮状を見捨てられず巻き込まれてゆく物語。戦勝国による身勝手な戦後処理で荒廃する国土と苦しむ民衆の姿に疑念を覚えてゆくギュネイ。苦悩しながらも巻き込まれ続けて救世主に登りつめてゆく彼と、したたかな王女ミネルバや彼を監視するディドー、初恋の王女といったヒロインをうまく絡めて物語を盛り上げてほしいですね。思わぬ方向へ向かう今後が楽しみな新シリーズです。

 -----

 

ちなみに読んだら評価が真っ二つに割れそうな「桜色のレプリカ」は、ラブコメというよりSF要素ある話が好きな人の方が楽しめるのかなと感じました。個人的にはありでしたし、わりと楽しめそうな人もいそうな気がしますが、何を期待して読むのかというのはわりと重要なことなので、1巻まるごと試し読みはその辺も考慮しての試みだったと思いますが、どんな層に向けてパッケージングやプロモーションでどうするのが正解だったのか、その難しさをいろいろ考えさせる2冊でした。

桜色のレプリカ 1 (HJ文庫)

桜色のレプリカ 1 (HJ文庫)

 

 「学校」の文学教師を務めている六方カザネが、ある日理事長の二階堂イツキに呼び出されて奇妙な依頼を受ける物語。同じ教師を務める彼女・メグミがいて、淫乱ピンクの三十刈アイラ、アニメ的お約束好きの四十田ユキ、委員長タイプの五十嵐ヒビキや、無口で小説好きの百合原ハルカといった女生徒たちに振り回される日々。けれどそれも緊急時には全く別の一面があって、急展開の中で明かされてゆく事実はこの物語そのものの意味合いもガラリと変えてしまいましたけど、そこからさらに驚愕の事実を突きつけられるカザネという構図には驚かされました

桜色のレプリカ 2 (HJ文庫)

桜色のレプリカ 2 (HJ文庫)

 

 理事長の理不尽な依頼に嫌気が差しつつあったカザネ。そんな彼に意外なヒロインが校内の桜の木の下で衝撃の告白を突きつけ、ハートのど真ん中を射抜く第二弾。彼女とのやりとりの中で戸惑いながら少しずつ変わってゆくカザネの心境の変化と、すっかり変容してしまった関係を諦めきれない彼女・メグミの存在。一見ベタなはずなのに皮肉にしか思えない構図が、事態が深刻化してゆく状況の中でああいう展開に繋がるとは思いませんでしたね(苦笑)ガチバトルでの決着と学校からの卒業というある意味ラブコメらしい結末はなかなか深いものがありました。

 

------------

 高三の夏に突如消失した片想いの相手・茉莉。辛い現実を受け止められないまま二十歳の誕生日を迎えた崇希が、消失を回避すべく二人が出会った二年前の春からやり直すタイムリープ青春小説。近くで眺めるだけだった過去を反省し、積極的に茉莉と距離を縮め真相に近づこうとする崇希。幸せな日々に時折訪れる不安な兆候の一方で、明らかになってゆく意外な過去。不安に揺れる二人の初々しい距離感はもどかしくて、容易には覆らない未来に難しさも感じましたけど、再会して絆を育んでいった今の二人ならきっとそれを乗り越えてくれると信じたいですね。

スクールジャック=ガンスモーク (ガガガ文庫)

スクールジャック=ガンスモーク (ガガガ文庫)

 

 戦勝国・葦原皇国に創設された新兵器・機巧外骨格のパイロット育成学校。そこで戦時中の遺恨からテロが発生し、運命的な因果に絡め取られた二人の手に人質たちの命運が託される物語。戦時中の虐殺という事実無根の糾弾から貶められ爆発した元情報部。かつて情報部に助けられたヤンキー風のウブなヒロイン・連理と、整備士として学園を訪れた元情報部の凛児が力を合わせその阻止に動く展開は、いくつもの悲しい因縁にAIやロボットも絡めたギリギリの緊張感があって、何よりその結末が自分好みでとてもいいですね。もっと早く読めば良かったです。

世界の終わりに問う賛歌 (ガガガ文庫)

世界の終わりに問う賛歌 (ガガガ文庫)

 

 科学技術が発達しながら魔力を抽出する発魔炉により依然として魔力の恩恵を享受する世界。マフィアの特殊交渉人ブルクハルトが、魔力枯渇危機を背景とした魔導師から直接抽出する次世代型発魔炉開発で少女ヘレナと出会う物語。肉体的苦痛で莫大な魔力を生み出すヘレナが志願したプロジェクト。つい利他的になりがちな彼女の身を案じ、拷問しか取り柄がないのに穏便な方法に活路を見出そうとするブルクハルト。それだけに急展開からの絶望感が半端なかったですが、それでも諦めずに最後まで戦い抜いてみせた二人が迎えた結末には救われる思いでした。

そして黄昏の終末世界<トワイライト> 1 (オーバーラップ文庫)

そして黄昏の終末世界<トワイライト> 1 (オーバーラップ文庫)

 

 予言された終末に抗うため人知れず「刻の黄昏」と魔人「ペイガン」と戦ってきた世界。密かに復讐のために生きる高校生・東雲冬夜が、終末と戦う同級生の少女・如月御姫と出会う物語。厨二全開な世界観でしたけど、主人公に突出した力があってもそれを発揮しきれるわけでもないバトルは緊張感があって、一方で基本的にキリッとした人を寄せ付けないイメージなのに、冬夜の前ではなぜかポンコツな一面も見せてしまう御姫とのやりとりはなかなか楽しかったです。深刻な秘密を抱えることになった彼女と密かな共犯関係になった二人の今後が楽しみですね。

 

 担当作家と騒動を起こした老舗中小出版社の文芸編集・滝川詠見が、年単位で原稿が上がらない謎のベテラン作家・六道先生の担当を引き継ぐ不思議×出版お仕事物語。連絡手段がなく会いに行くしかない六道先生の元に日参する詠見が知る六道先生の意外な姿と正体。なかなか原稿が上がらない理由と複雑な想いを抱えつつも原稿を書いてきた先生の姿を知って、戸惑いつつもきちんと向き合う詠見のブレない編集者の矜持と相手を思いやる優しさが、あえて安直に流れない間柄として描かれたことで心に響くものがありました。続編あるならまた読みたいですね。

黄泉がえりの町で、君と (角川ホラー文庫)

黄泉がえりの町で、君と (角川ホラー文庫)

 

 寂れてゆく一方の田舎町。父が死んで受け継いだ葬儀社で死者が甦る事件が続き、若社長遼一が風評被害を振り払うため調査を始める青春ホラー。高校時代の親友の自殺を引きずったまま、父の死により望まぬ形で葬儀社を継いだ遼一。霊が見える秘密を抱え、そんな兄を厭うようになっていた佐紀が出会った少年・颯太。最初何事にも腰が引けていた遼一が黄泉がえりを巡る町の過去や自らの想いに向き合い、佐紀もまた颯太との出会いかららしさを取り戻してゆくことで、様々な停滞が打破されて動き出す予感と爽やかな読後感に繋がってゆく素敵な物語でした。

(P[わ]2-1)文学少年と書を喰う少女 (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[わ]2-1)文学少年と書を喰う少女 (ポプラ文庫ピュアフル)

 

 明・正徳帝の時代。泰山にあった禄命簿『玉策』が持ち出され不思議な力を持つ少女となり、本と物語が何より好きな少年・呉承恩とともに過ごす彼女がその力目当てで様々な人々に狙われる中華ファンタジー。博覧強記な書痴の少年・呉承恩と出会った本を食べる生意気な少女・玉策。実在した登場人物も織り交ぜつつ描かれる二人が運命的な出会いを果たして、共に笑い時には喧嘩もして絆を育んでいったその短かくも濃密な冒険の日々はとても印象的で、常坤や白華といった脇役もよく効いていて良かったと思いました。またこういう物語を読んでみたいです。

 

 【追記】続きが気になる終わり方だった1巻目でしたが、続巻も出て無事完結したようなので、この機会に合わせて読むといいかなと思う2冊ということでついでに紹介。

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

 

 勉強合宿の夜に困っていた同級生の北岡恵麻を助けた地味で冴えない飯島靖貴。それをきっかけに密かな交流が生まれてゆく地味系眼鏡男子と人気者ギャルのすれ違いラブストーリー。入学直後の出来事で恵麻に苦手意識を持っていた靖貴と、助けてくれた靖貴が気になってゆく恵麻。学校では知らんぷりだけれど予備校帰りのわずかな時間で育まれてゆく二人の交流。少しずつ想いが積み重なってゆくのに、繊細で不器用な二人が距離を詰め切れないうちに起きる様々なすれ違いがとても切なかったです。気になるところで終わってしまったので早めの続巻を期待。

君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

 

 徐々に距離を縮めていたのに、恵麻が友達に放った苦し紛れの陰口を耳にしてしまった靖貴。意図的に距離を置くようになり、すれ違ったままの二人がそれぞれの大学受験を迎える第二弾。自信を持てない靖貴が裏切られたと感じた時の反動で頑なになってゆく様子や、後から気づいてどうにかしようとするものの上手く行かない恵麻の絶望感に焦れったくなる展開でしたが、だからこそギリギリでの巡り合わせの妙には救われる思いでした。これから大変だなあとも感じましたけど、その後の二人を見ていたらきっと大丈夫ですね(苦笑)次回作も期待しています。

 

7月に読んだ本 #読書メーターより

7月はコミックと恒例の夏イチ文庫カウントを除くと56冊読了。暑さで体調がいまいちな日が続いていて、1日2冊ペースが崩れ続けていますが、書籍の方はそこそこおもしろい本が続いて満足度も高かったのかなと。休日が多くなると読めるペースもガクッと落ちるので、中旬に夏休みがある来月は読む冊数減りそうですね~。まあ終わってみたらそれなりに読んでるかもしれませんが(苦笑)

 

7月の読書メーター
読んだ本の数:103
読んだページ数:25240
ナイス数:6379


夏は終わらない 雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)
夏は終わらない 雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)感想
エース月谷と主将笛吹のもと確実に実力をつけていった弱小野球部の三ツ木高校。そんな中で捕手の鈴江が調子を崩してゆく一方、ライバル東明学園の木暮も思わぬ乱調でエースナンバー剥奪の危機に陥る第三弾。月谷たち三ツ木高校を中心に最後の夏に向けての一年を追った今回は、チームとして成長したがゆえにぶつかる壁とそれぞれの挫折や葛藤が描かれていて、周囲の助けを得ながらそれを乗り越えてぶつかってゆく展開がとても良かったですね。一区切りついてそれぞれの進路で野球への距離感も変わりそうですけど、彼らのその後も読んでみたいですね。
読了日:07月31日 著者:須賀 しのぶ
ゆきうさぎのお品書き 親子のための鯛茶漬け (集英社オレンジ文庫)ゆきうさぎのお品書き 親子のための鯛茶漬け (集英社オレンジ文庫)感想
碧の友人・玲沙の母親の再婚相手の関する相談だったり、蓮やミケにそれぞれ訪れる人生の決断、そして変わってゆく状況の中でついに変化の兆しが訪れる第四弾。美味しそうな描写は相変わらずで、ゆきうさぎに関わる人たちがそれぞれ転機を迎えてゆく中、ようやくそこにたどり着いたか感がありましたが、知らない人には若女将と何度も間違えられるくらい身近になっていて、自分好みに肥え太らせようとしているとか傍らから見たらバレバレなのに、脅かす存在が現れるまで自覚ないとかさすがにちょっと鈍すぎですよね(苦笑)これは次巻が楽しみですよ。
読了日:07月31日 著者:小湊 悠貴
最強魔法師の隠遁計画 3 (HJ文庫)最強魔法師の隠遁計画 3 (HJ文庫)感想
アリスの過去に関わる狂気の科学者・グドマが自ら作り出した傀儡ドールズたちを使い学園を襲撃。アリスにとって姉のような存在・メリッサの出現でアリスが攫われ、アルスたちが救出に向かう第三弾。優しさからメリッサの存在に振り回されるアリス。彼女たちと関わってきたアルスやロキにも心境の変化があって、それがアリスの過去を乗り越える後押しとなりましたかね。ヒロインが増えてもなかなかそういう雰囲気にならなかったアルスに意外な形から参戦宣言があって、その流れが今後も増えそうな予感も。続巻ではもう少しその辺も動き欲しいですね。
読了日:07月30日 著者:イズシロ
この素晴らしい世界に祝福を!12 女騎士のララバイ (角川スニーカー文庫)この素晴らしい世界に祝福を!12 女騎士のララバイ (角川スニーカー文庫)感想
一同が騒然としたダクネスをママと呼ぶ謎の少女の出現。一方、ダクネスは貴族の仕事に精を出すべく高額所得冒険者への税金取り立てを開始する第十二弾。毎回思わせぶりにカズマを困惑させているだけのめぐみんが今回提示した仲間以上恋人未満なる関係もあれですが、今回は半強制的にカズマと一緒にいる関係が構築されて開き直ったダクネスが大奮闘でしたね。告白されたカズマの対応がクズマさんじゃなくて驚かされましたが、あれこれ言いながら諦めが悪いダクネスの言動もあって結局グダグダに(苦笑)でもそんな感じがまたこの物語らしいですね。 
読了日:07月29日 著者:暁 なつめ
桜色のレプリカ 2 (HJ文庫)桜色のレプリカ 2 (HJ文庫)感想
理事長の理不尽な依頼に嫌気が差しつつあったカザネ。そんな彼に意外なヒロインが校内の桜の木の下で衝撃の告白を突きつけ、ハートのど真ん中を射抜く第二弾。彼女とのやりとりの中で戸惑いながら少しずつ変わってゆくカザネの心境の変化と、すっかり変容してしまった関係を諦めきれない彼女・メグミの存在。一見ベタなはずなのに皮肉にしか思えない構図が、事態が深刻化してゆく状況の中でああいう展開に繋がるとは思いませんでしたね(苦笑)ガチバトルでの決着と学校からの卒業というある意味ラブコメらしい結末はなかなか深いものがありました。
読了日:07月29日 著者:翅田大介
桜色のレプリカ 1 (HJ文庫)桜色のレプリカ 1 (HJ文庫)感想
「学校」の文学教師を務めている六方カザネが、ある日理事長の二階堂イツキに呼び出されて奇妙な依頼を受ける物語。同じ教師を務める彼女・メグミがいて、淫乱ピンクの三十刈アイラ、アニメ的お約束好きの四十田ユキ、委員長タイプの五十嵐ヒビキや、無口で小説好きの百合原ハルカといった女生徒たちに振り回される日々。けれどそれも緊急時には全く別の一面があって、急展開の中で明かされてゆく事実はこの物語そのものの意味合いもガラリと変えてしまいましたけど、そこからさらに驚愕の事実を突きつけられるカザネという構図には驚かされました。
読了日:07月28日 著者:翅田大介
そして黄昏の終末世界<トワイライト> 1 (オーバーラップ文庫)そして黄昏の終末世界<トワイライト> 1 (オーバーラップ文庫)感想
予言された終末に抗うため人知れず「刻の黄昏」と魔人「ペイガン」と戦ってきた世界。密かに復讐のために生きる高校生・東雲冬夜が、終末と戦う同級生の少女・如月御姫と出会う物語。厨二全開な世界観でしたけど、主人公に突出した力があってもそれを発揮しきれるわけでもないバトルは緊張感があって、一方で基本的にキリッとした人を寄せ付けないイメージなのに、冬夜の前ではなぜかポンコツな一面も見せてしまう御姫とのやりとりはなかなか楽しかったです。深刻な秘密を抱えることになった彼女と密かな共犯関係になった二人の今後が楽しみですね。
読了日:07月28日 著者:樋辻臥命
二周目の僕は君と恋をする (ファミ通文庫)二周目の僕は君と恋をする (ファミ通文庫)感想
高三の夏に突如消失した片想いの相手・茉莉。辛い現実を受け止められないまま二十歳の誕生日を迎えた崇希が、消失を回避すべく二人が出会った二年前の春からやり直すタイムリープ青春小説。近くで眺めるだけだった過去を反省し、積極的に茉莉と距離を縮め真相に近づこうとする崇希。幸せな日々に時折訪れる不安な兆候の一方で、明らかになってゆく意外な過去。不安に揺れる二人の初々しい距離感はもどかしくて、容易には覆らない未来に難しさも感じましたけど、再会して絆を育んでいった今の二人ならきっとそれを乗り越えてくれると信じたいですね。
読了日:07月27日 著者:瑞智士記
黄泉がえりの町で、君と (角川ホラー文庫)黄泉がえりの町で、君と (角川ホラー文庫)感想
寂れてゆく一方の田舎町。父が死んで受け継いだ葬儀社で死者が甦る事件が続き、若社長遼一が風評被害を振り払うため調査を始める青春ホラー。高校時代の親友の自殺を引きずったまま、父の死により望まぬ形で葬儀社を継いだ遼一。霊が見える秘密を抱え、そんな兄を厭うようになっていた佐紀が出会った少年・颯太。最初何事にも腰が引けていた遼一が黄泉がえりを巡る町の過去や自らの想いに向き合い、佐紀もまた颯太との出会いかららしさを取り戻してゆくことで、様々な停滞が打破されて動き出す予感と爽やかな読後感に繋がってゆく素敵な物語でした。
読了日:07月27日 著者:雪富 千晶紀
(P[わ]2-1)文学少年と書を喰う少女 (ポプラ文庫ピュアフル)(P[わ]2-1)文学少年と書を喰う少女 (ポプラ文庫ピュアフル)感想
明・正徳帝の時代。泰山にあった禄命簿『玉策』が持ち出され不思議な力を持つ少女となり、本と物語が何より好きな少年・呉承恩とともに過ごす彼女がその力目当てで様々な人々に狙われる中華ファンタジー。博覧強記な書痴の少年・呉承恩と出会った本を食べる生意気な少女・玉策。実在した登場人物も織り交ぜつつ描かれる二人が運命的な出会いを果たして、共に笑い時には喧嘩もして絆を育んでいったその短かくも濃密な冒険の日々はとても印象的で、常坤や白華といった脇役もよく効いていて良かったと思いました。またこういう物語を読んでみたいです。
読了日:07月26日 著者:渡辺 仙州
装幀室のおしごと。2 ~本の表情つくりませんか?~ (メディアワークス文庫)装幀室のおしごと。2 ~本の表情つくりませんか?~ (メディアワークス文庫)感想
幼い日、演奏で自分を救ってくれた恩人に直接お礼が言いたい盲目のヴァイオリニスト、人気小説家の装画を描く新人イラストレーター発掘コンペの審査員に、本好きの装幀家・わらべと売上至上主義で巻島のコンビが挑む第二弾。前回いろいろ衝突したり意外な事実が判明したのが良かったのか、わらべの猪突猛進ぶりは相変わらずでしたけど(苦笑)、彼を尊重するようになったり、巻島がうまく彼女の意図を汲み取っていい感じにまとめたりコンビがいい方向に作用してきましたね。今回の装幀絡みの話も興味深くて、続巻あるようならまた読んでみたいです。
読了日:07月26日 著者:範乃 秋晴
クロニクル・レギオン 7 (ダッシュエックス文庫)クロニクル・レギオン 7 (ダッシュエックス文庫)感想
女皇照姫と平将門の反乱を乗り切り皇都を押さえた覇者となった征継と志緒理。衛青や大英帝国とも協力して陣営を整えた彼らがついにカエサルとの決戦を迎える第七弾。強敵カエサルを相手にする方策と、そんな状況でも繰り広げられる征継を巡る女性陣の駆け引き。カエサルがここで繰り出した切り札がなかなか面白かったですけど、オチがなるほどなと思った結末。何より注目していた征継を巡る女の争いの決着は、初音も頑張っていいポジション取ったけれど、したたかな志緒理と立夏が一枚上手でしたかね(苦笑)いい感じに楽しめましたし次回作も期待。
読了日:07月25日 著者:丈月 城
たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語2 (GA文庫)たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語2 (GA文庫)感想
ようやく士官候補生となり、魔術大会に向け特訓に励むロイド。しかし彼がゴミ拾いと騙されうっかり伝説の聖剣を抜いていたことで思わぬ展開を迎える第二弾。一般的基準から見たら規格外のロイドの力、勘違いが続いて思わぬ展開に向かうところは相変わらずで、女傭兵のリホの過去と因縁も絡んで始まる魔術大会。彼女の意外な一面が垣間見えてつつ、セレンヤンデレっぷりも冴え渡っていましたが、独特のテンポで進む展開はじわじわと来る感じですね。新キャラも仲間に加わって、大筋としては物語もひとつの方向に向かっているのかな。続巻に期待。 
読了日:07月24日 著者:サトウとシオ
たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語 (GA文庫)たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語 (GA文庫)感想
秘境の村で育ち王都で軍人になることを夢見るロイド。村で一番弱い男と言われる彼だけれど、育った村は実はラストダンジョン手前の人外魔境で、無自覚なギャップで騒動に繋がってゆくファンタジー。村人たちの基準がそもそもおかしいんですが、周囲もそんな感じだと基準も狂ってきますよね…無自覚なハイスペックぶりが勘違いを引き起こしつつ、ヤンデレセレンや溺愛する村長など周囲のキャラもよく動いていて、ベタな展開ながらきちんと見せ場もあってなかなか楽しめました。まだ自覚もなく真相も知らないロイドがどう活躍するのか、今後も期待。
読了日:07月24日 著者:サトウとシオ
神話伝説の英雄の異世界譚 8 (オーバーラップ文庫)神話伝説の英雄の異世界譚 8 (オーバーラップ文庫)感想
ローザ達に支えられ、権勢に綻びを見せ始めたグランツ帝国で地歩を固めつつあるリズ。彼女が身を投じたシュタイセン共和国の新たな指導者を巡る争いに、黒辰王としてバウム小国に身を置く比呂もまた関わってゆく第八弾。彼の生存を知ってぶん殴っての決別から二年。今回は美しく成長したリズが、裏で暗躍する南方貴族の難しい対応を迫られつつ関わった隣国の内紛でしたけど、それに呼応するかのようなヒロの気の利いた暗躍ぶりを読んでいると、二人のどうにもならないもどかしさが切ないですね。いつかまた二人が並び立つ日が早く来て欲しいです。 
読了日:07月23日 著者:
ぼくたちのリメイク2 十年前に戻って本気になれるものを見つけよう! (MF文庫J)ぼくたちのリメイク2 十年前に戻って本気になれるものを見つけよう! (MF文庫J)感想
新生チームきたやま・改の上映会で役者のナナコが足を引っ張ったと言われ、加納先生や英子に役者への志を問われ心を閉ざしてしまうナナコ。一方で学園祭も始まる第二弾。誰もが本気で取り組んでいるがゆえに、浮き彫りになったナナコの向き合えていない現状。それでも日々奔走する恭也を知るからこそ、その言葉に説得力があるんですよね。学園祭のメイド喫茶での一幕や素晴らしいライブに至るまでの繊細なやりとりの積み重ねが青春していてとても良かったですが、だからこそ迎えた結末が切なかったです。次巻もいろいろありそうで今から楽しみです。
読了日:07月22日 著者:木緒 なち
14歳とイラストレーター3 (MF文庫J)14歳とイラストレーター3 (MF文庫J)感想
大手レーベルから依頼を受けた悠斗だったが、突然姉・彩華がその仕事を自分がやると宣言。その真意も分からないまま悠斗と彩華が対決することになった一方で、周囲の人間関係も少しずつ変化してゆく第三弾。傍若無人なブラコン姉来襲!という回に見せかけて、実は人間関係とか仕事まわりのこととか、絵を描く以外のことは悠斗はほんとに無頓着なんだなということが次第に明らかになって、絵師としては天性のものを持っていても、人間関係はこれからも苦労しそうだなと確信しました(苦笑)とりあえず目の前の爆弾処理をどう乗り切るのか次巻に期待。
読了日:07月22日 著者:むらさき ゆきや
灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た (オーバーラップ文庫)灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た (オーバーラップ文庫)感想
メリィの死という現実から必死に目をそむけようとするハルヒロに謎の男・ジェシーが囁いた「方法ならある。一つだけ」という言葉。一方、フォルガンを脱退したランタが世話役だったタカサギの追跡から必死に逃亡を続ける第十一弾。これまでもいくつもの死に直面して受け入れてきたのに、到底そんな気持ちになれないところでのジェシーの提案。儀式自体もアレでしたが、彼女自身も説明できない一面を持ったようになった影響が今後出てくるんでしょうか。多くの心情が語られたランタの今後も気になりますが、予告された次巻のほんわか冒険物語も期待。
読了日:07月21日 著者:十文字青
魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>17 (MF文庫J)魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>17 (MF文庫J)感想
それぞれ軍を率いて相対したエレンとフィグネリアの直接対決。一方ティグルはガヌロンと決着をつけるべく、単身で王都を抜け出して荒野を行く第十六弾。展開が大きく動き出したり意外な過去と繋がりが見えてきたり、いくつかのこれまでの因縁に決着がついたりと物語として終盤に向かっているのを改めて実感しますが、ティグルがついにひとつの決心をした一方で、決着の代償によってアドバンテージだったはずが危機的状況に陥った最後の場面からどういう結末に繋げてゆくのか、あと一巻で終わるのは寂しいですが最終巻を楽しみに待ちたいと思います。
読了日:07月21日 著者:川口 士
空戦魔導士候補生の教官14 (ファンタジア文庫)空戦魔導士候補生の教官14 (ファンタジア文庫)感想
仲間たちの絆を深めた初期メンバー三人による寮の合宿、ユリーが書いて大流行した小説とサイン会を巡る騒動、レクティによるペットコンテスト参加、微熱により別人のように頭脳明晰となってしまったミソラ、リコの恐ろしい母親来襲、書き下ろしの本編アフターが描かれた連作短編集の最終巻。サイン会騒動での意外な行動や、みんなに惜しまれたミソラの別人ぶり、猫被りしたリコの代わりに次々と犠牲になってゆく小隊の面々などなかなか面白かったです。著者さんは彼女エンドで考えてたようで個人的にはちょっと意外でした。次回作も期待しています。
読了日:07月21日 著者:諸星 悠
空戦魔導士候補生の教官13 (ファンタジア文庫)空戦魔導士候補生の教官13 (ファンタジア文庫)感想
最終決戦を迎えて魔甲蟲の王・ゼスの圧倒的なチカラに苦戦するカナタ。人類の未来を護るため全てを捨てる覚悟を決める彼のもとに、未熟な彼女たちや仲間たちも集う第十三弾。ゲートを潰すための総力戦といくつかの最終手段。崩力の使い手とそれぞれ対決するE601小隊の面々。そしてゼスと戦い続けるカタナの元に駆けつける彼女たち。裏切り者と呼ばれた彼がこれほど多くの仲間に支えられて戦った最終決戦の結果、皆の記憶から一度は消えてしまった消えたカナタでしたけど、そこからまた新たに始まる予感を感じさせる結末はなかなか良かったです。
読了日:07月21日 著者:諸星 悠
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦2 (ファンタジア文庫)キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦2 (ファンタジア文庫)感想
帝国とネビュリス皇庁が争う戦場で運命的な出会いを果たし、再会を願うもののすれ違ってしまうイスカとアリス。そんな状況でこの永き戦争の元凶である星脈噴出泉が発見されて、それを巡る任務にそれぞれが参戦する第二弾。敵同士なのに会いたくて、けれどベタなすれ違い続きでなかなか会えないもどかしいお約束展開には苦笑いでしたが、今回で両陣営ともにそれぞれ抱える事情の一端が明らかになり、イスカとアリスが対峙した強敵の新キャラたちを中心にいくつもの因縁や明かせない秘密が生まれて、それが今後の展開でどう活きてくるか楽しみですね。
読了日:07月20日 著者:細音 啓
ゲーマーズ!8 星ノ守心春と逆転バックアタック (ファンタジア文庫)ゲーマーズ!8 星ノ守心春と逆転バックアタック (ファンタジア文庫)感想
修学旅行で決断し、新たな関係へ踏み出そうとした花憐と上原。その余波でギクシャクし思うように関係の再構築が進まない中、心春がついに動き出してクリスマスも近づく第六弾。いったん関係が解消されてぎこちなくなったけれど、かといって本質的なところでは変わらない揺るぎない想い。これだけだったらそれぞれ復縁も時間の問題とも思えた状況でしたけど、要所要所でいろいろ手を打ってきた心春や、比較対象としての亜玖璃の存在が次の局面へと流れを作ってゆくキーマンとして効いてました。ここから関係がどう変わってゆくのか次巻が楽しみです。
読了日:07月20日 著者:葵 せきな
少年たちは花火を横から見たかった (角川文庫)少年たちは花火を横から見たかった (角川文庫)感想
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の原作者による映像化されなかった幻のエピソードを復刻して再構成し、劇場アニメ版にあわせて書き下ろされたもうひとつの小説版。こちらは典道となずなの印象的な邂逅のエピソードが前振りとしてしっかり描かれていて、物語の導入部分という点ではこちらの方がスッキリしていて完成度は高かったですね。結末が少しばかりぼんやりとしていた感もありますが、若さゆえに突然の別れにうまく向き合えないもどかしさがよく出ていると思いました。創作秘話となっているやや長めのあとがきにも注目です。 
読了日:07月20日 著者:岩井 俊二
砂の城 風の姫 (講談社X文庫)砂の城 風の姫 (講談社X文庫)感想
弟に国を譲った徐国の元王太子・飛牙が代々女王が治める燕国へ向かい、そこで偶然お忍び外出中の名跡姫・甜湘と出会い、いきなり「胤」候補にされてしまう第二弾。どうやら四国漫遊記めいた展開になってきましたが、代々女王が「胤」と呼ばれる子を産ませるための制度上の夫に娘を産ませて跡を継がせる燕で、閉塞感のある現状を打破したい王女・甜湘と出会った今回もなかなか面白かったです。でもまさかあんな決断するとは思わなかったですよ(苦笑)いやほんとみんないろいろあるけど、うまくいって幸せになれるといいですねえ。続巻も楽しみです。
読了日:07月19日 著者:中村 ふみ,六七質
世界の終わりに問う賛歌 (ガガガ文庫)世界の終わりに問う賛歌 (ガガガ文庫)感想
科学技術が発達しながら魔力を抽出する発魔炉により依然として魔力の恩恵を享受する世界。マフィアの特殊交渉人ブルクハルトが、魔力枯渇危機を背景とした魔導師から直接抽出する次世代型発魔炉開発で少女ヘレナと出会う物語。肉体的苦痛で莫大な魔力を生み出すヘレナが志願したプロジェクト。つい利他的になりがちな彼女の身を案じ、拷問しか取り柄がないのに穏便な方法に活路を見出そうとするブルクハルト。それだけに急展開からの絶望感が半端なかったですが、それでも諦めずに最後まで戦い抜いてみせた二人が迎えた結末には救われる思いでした。
読了日:07月19日 著者:白樺 みひゃえる
スクールジャック=ガンスモーク (ガガガ文庫)スクールジャック=ガンスモーク (ガガガ文庫)感想
戦勝国・葦原皇国に創設された新兵器・機巧外骨格のパイロット育成学校。そこで戦時中の遺恨からテロが発生し、運命的な因果に絡め取られた二人の手に人質たちの命運が託される物語。戦時中の虐殺という事実無根の糾弾から貶められ爆発した元情報部。かつて情報部に助けられたヤンキー風のウブなヒロイン・連理と、整備士として学園を訪れた元情報部の凛児が力を合わせその阻止に動く展開は、いくつもの悲しい因縁にAIやロボットも絡めたギリギリの緊張感があって、何よりその結末が自分好みでとてもいいですね。もっと早く読めば良かったです。 
読了日:07月19日 著者:坂下 谺
青の聖騎士伝説 LEGEND OF THE BLUE PALADIN (電撃文庫)青の聖騎士伝説 LEGEND OF THE BLUE PALADIN (電撃文庫)感想
フォーチュン・クエストシリーズに出てくる戦士クレイ・S・アンダーソンの曾祖父で、勇者デュアン・サークとも共に戦った「伝説の青の聖騎士」クレイ・ジュダ・アンダーソンの冒険譚を描いた物語の文庫化+α。クレイ・ジュダが伝説の名剣シドを手に入れた切ないエピソードや、彼の終生の友・ランドとの出会い、彼の若き日の恋の思い出や美しいエルフ・ロスマリノとの冒険のエピソードなど、昔読んだシリーズのことも少し思い出したり、いろいろ確認したりしながら懐かしい思いで読みました。これ続巻も出る予定あるんですよね。期待していますよ。
読了日:07月18日 著者:深沢 美潮
正解するマド (ハヤカワ文庫JA)正解するマド (ハヤカワ文庫JA)感想
リスペクトする野崎まどが脚本を手がけたTVアニメ『正解するカド』のノベライズを依頼された著者が、いつまで経っても一文字も書けず、思い悩むあまり精神を病んでゆくスピンアウトノベライズ。読んでみたら思わぬスピンオフ展開というか、著者さんが描いたもう一つの「正解するカド」だったりして青天の霹靂でしたが、著者さんの野崎まど愛だったり、これまでや近況(?)も何となく把握できたり、もちろん展開自体も意外と楽しめたりでこれはこれでアリでしたね。それでいて気がついたら続編としても繋がってるし(苦笑)とても面白かったです。
読了日:07月18日 著者:乙野四方字
化学探偵Mr.キュリー6 (中公文庫)化学探偵Mr.キュリー6 (中公文庫)感想
アメリカから四宮大学に留学生としてやって来た飛び級の天才少女・エリー。彼女の挑む全合成に絡んで明らかになってゆく大学内のきな臭い事情に、例によって舞が奔走し沖野が巻き込まれる第六弾。エリーが化学に興味を持つきっかけとなったエピソード。以前同じ全合成を挑んだ学生の不自然な退学。サポート役として彼女のために奔走する舞。大学や研究室の負の側面が明らかになっていきましたが、沖野も自覚する変化は決して悪いことばかりでもなくて、舞もまた窮地にこれまで助けた人たちが次々と協力を申し出てくれる展開には胸が熱くなりました。
読了日:07月16日 著者:喜多 喜久
六道先生の原稿は順調に遅れています (富士見L文庫)六道先生の原稿は順調に遅れています (富士見L文庫)感想
担当作家と騒動を起こした老舗中小出版社の文芸編集・滝川詠見が、年単位で原稿が上がらない謎のベテラン作家・六道先生の担当を引き継ぐ不思議×出版お仕事物語。連絡手段がなく会いに行くしかない六道先生の元に日参する詠見が知る六道先生の意外な姿と正体。なかなか原稿が上がらない理由と複雑な想いを抱えつつも原稿を書いてきた先生の姿を知って、戸惑いつつもきちんと向き合う詠見のブレない編集者の矜持と相手を思いやる優しさが、あえて安直に流れない間柄として描かれたことで心に響くものがありました。続編あるならまた読みたいですね。
読了日:07月15日 著者:峰守 ひろかず
シャーロック・ホームズ対伊藤博文 (講談社文庫)シャーロック・ホームズ対伊藤博文 (講談社文庫)感想
少年だったホームズと英国に密入国した伊藤博文の出会い。ライヘンバッハの滝でモリアーティ教授と死んだとされたホームズが日本に密入国し、伊藤博文大津事件を巡る謎に挑むミステリ。最初はさすがに無茶苦茶な組み合わせだろうと思いましたが、読んでみると意外に現実の隙間を埋める形で違和感なく整合させていて、大津事件の真相に迫ると同時に、裏で進行していたロシアの陰謀を阻止すべく二人が時にはぶつかりながらも解決に奔走する展開は面白く読めました。モリアーティ教授との顛末やマイクロフトの関係としてもなかなか興味深かったです。
読了日:07月14日 著者:松岡 圭祐
りゅうおうのおしごと! 6 (GA文庫)りゅうおうのおしごと! 6 (GA文庫)感想
竜王防衛を果たして史上最年少で九段に昇り、二人の弟子も女流棋士になった八一。新年を迎えてJS研との初詣、弟子の棋士室デビューとイベントが続く中、銀子は奨励会三段になるための大一番を迎える第六弾。今回八一はロリコン疑惑が深まり、他の女性陣ともハプニング続きで何とも締まらない感じでしたが、一方でただひとつの願いのため異次元な将棋星人たち相手に孤独で絶望的な戦いに挑む銀子の切ない想いも明らかになっていって、鈍くて残念な竜王がそれにいつか気づく日が来るんでしょうか(遠い目)その想い報われるといいんだけどなあ…。 
読了日:07月13日 著者:白鳥 士郎
ラノベのプロ!2 初週実売1100部の打ち切り作家 (ファンタジア文庫)ラノベのプロ!2 初週実売1100部の打ち切り作家 (ファンタジア文庫)感想
長年の秘めたる思いが募って幼馴染の結麻にいきなりプロポーズしてしまった神陽太。一方業界の不条理さに直面した後輩・小太郎を救うべく特訓を始める第二弾。プロポーズ後にお互いを意識しまくりで、ことあるごとに悶える陽太とユマの反応が甘過ぎて、お似合いな二人を見守る周囲の意見が一致してたのには苦笑い。一方で面白い面白くない以前に、読んでもらえないと何も始まらない厳しい現実と、それに直面した作家がどうすべきかという問題はほんと難しいですね。幼馴染ものとしてはキレイにまとまった結末で、これで完結なのかな?次回作も期待。
読了日:07月13日 著者:望 公太
鳥居の向こうは、知らない世界でした。2 群青の花と、異界の迷い子 (幻冬舎文庫)鳥居の向こうは、知らない世界でした。2 群青の花と、異界の迷い子 (幻冬舎文庫)感想
異界に迷い込んだ女子大生の千歳は薬師・零の弟子として働く日々。そんなある日、姉を探して鳥居を越えて来たという腹違いの弟・優に再会する第二弾。明らかになってゆく異国や千国と周辺国を巡る諸事情や本格化する王宮の後継者争い。千歳に対して悔いを抱えていた優が零の預かりとなって、姉弟で共に過ごすことになったつかの間の日々。いろいろありましたけど、自分の居場所を得て活き活きとしている元気な姿を優に見せることができて良かったですね。気になることも出てきましたが、物語としてもこなれてきて今後の展開に期待したくなりました。
読了日:07月12日 著者:友麻 碧
ラノベのプロ! 年収2500万円のアニメ化ラノベ作家 (ファンタジア文庫)ラノベのプロ! 年収2500万円のアニメ化ラノベ作家 (ファンタジア文庫)感想
アニメが爆死した意識高い系ラノベ作家・神陽太。後輩作家のJKとJCの才能に焦らされつつ、税金対策として雇ったラノベ知識ゼロの女子大生幼馴染・希月結麻との日常が描かれる物語。少しばかり意識が高く言動が痛い主人公を中心に描かれるラノベ作家ものとしてみると特に目新しさはなかったですけど、一人暮らしの主人公の衣食住を掌握する世話焼き系幼馴染ものと見るとなかなか面白かったですね。そうなんだろうなあと思いつつも、転機をきっかけに明らかになってゆく想いのまま告げた決定的な一言。続巻でどういう展開になるのか楽しみです。 
読了日:07月12日 著者:望 公太
真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥 (ポプラ文庫)真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥 (ポプラ文庫)感想
希実の母・律子の死から五年の月日が経ち、常連客である斑目やソフィアやこだま、美作親子や多賀田たち、そして希実や暮林や弘基の周辺も様々な変化が訪れる最終巻。常連客それぞれもいろいろな変化があって、それぞれ前に進んでるんだなあということを感じさせる一方で、あれからの希実の紆余曲折はやっぱりなとも思いましたけど、それでも意外な嬉しい展開もあってとても良かったです。必ずしも上手く行くことばかりではないけれど、そんな人たちのことを思いやる人がいる温かさを感じられるところにこの物語らしさがよく出ていて良かったですね。
読了日:07月12日 著者:大沼 紀子
Re:ゼロから始める異世界生活13 (MF文庫J)Re:ゼロから始める異世界生活13 (MF文庫J)感想
打ちのめされたスバルを取り囲んだ大罪の名を冠する魔女たち。どん底に突き落とされたスバルに友人からの最後の希望が差し伸べられる第十三弾。過去の記憶を失ったままだったエミリアが迎える転機と、事情を明かしたロズワールに賭けを提案するスバル。意外な力を秘めていたオットーの助力も得て森から出る事を頑なに阻み続けるガーフィールに挑む展開でしたけど、ここを力を合わせて乗り越えたことは大きな転機に繋がりそうですね。最近はやや停滞していた感もありましたけど、エミリアがここから成長した証を見せられるか今後に期待ということで。
読了日:07月11日 著者:長月 達平
書店ガール 6  遅れて来た客 (PHP文芸文庫)書店ガール 6 遅れて来た客 (PHP文芸文庫)感想
彩加が取手の駅中書店店長になってから一年半。仕事が軌道に乗り始めたと感じていたところでの閉店。一方『鋼と銀の雨が降る』のアニメ化が決定するものの担当の伸光はトラブルに振り回される第六弾。書店が取次傘下になるとか最近よく聞く話ですが、それによる方針転換で閉店というのはなかなか厳しい。アニメ化の話もいろいろ複雑でしたが、そういった時にどうやって折り合いをつけていくのか。思い入れがあるものを人に任せられるのか。登場人物それぞれにとってもいろいろ転機に繋がりそうなお話でしたけど、いろいろ考えさせられる内容でした。
読了日:07月10日 著者:碧野 圭
([お]7-8)真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者 (ポプラ文庫)([お]7-8)真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者 (ポプラ文庫)感想
希実の母・律子とついに再会する一方で、希実たちの前に現れた美和子の幼馴染という榊の存在。さらには希実の父とされる樹や、律子と美和子の過去も明らかになってゆく第五弾。入院していた律子はその過去が明らかになればなるほど、ただ逃げ回っていただけの母親というイメージから少しずつ変わっていって、けれど過去は明らかになっていってもそんな律子に素直になれないままだった希実が何とも切ないというか。父親を巡る騒動も含めてこれはこれで一区切りついたということなんですかね。最終巻がどんな結末を迎えるのか早いうちに読みたいです。
読了日:07月10日 著者:大沼 紀子
錬金術師は終わらぬ夢をみる ~ゆがみの王国のセラフィーヌ~ (コバルト文庫)錬金術師は終わらぬ夢をみる ~ゆがみの王国のセラフィーヌ~ (コバルト文庫)感想
十八世紀頃のフランスを舞台に過去の記憶を失ってしまったセラフィーヌが、自分が何者なのか分からぬまま美貌の錬金術師・カリオストロ伯爵と助手のアレクサンドルの手伝いを始める物語。彼女が繰り返して見るヴェルサイユ宮殿、雪山での逃亡、R女子修道院の夢。手伝ううち明らかになってゆくセラフィーヌの錬金術師的な才覚。物語としてはこれからかな?という印象で、なぜ記憶をなくしたのかセラフィーヌの過去から今までの過程が鍵を握りそうですが、現時点ではやや消化不良な部分が多かったですかね。続刊あればまた印象も変わるんでしょうか。
読了日:07月09日 著者:一原 みう
叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 (電撃文庫)叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 (電撃文庫)感想
邪神カを降臨させたランドール王国の野望を挫いた六人の英雄の一人・ギュネイ。平凡なその後の人生を選ぼうとしていた彼が、ふとしたきっかけから王国の現状を探るうちに、窮状を見捨てられず巻き込まれてゆく物語。戦勝国による身勝手な戦後処理で荒廃する国土と苦しむ民衆の姿に疑念を覚えてゆくギュネイ。苦悩しながらも巻き込まれ続けて救世主に登りつめてゆく彼と、したたかな王女ミネルバや彼を監視するディドー、初恋の王女といったヒロインをうまく絡めて物語を盛り上げてほしいですね。思わぬ方向へ向かう今後が楽しみな新シリーズです。 
読了日:07月08日 著者:杉原 智則
86―エイティシックス―Ep.2 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈上〉 (電撃文庫)86―エイティシックス―Ep.2 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈上〉 (電撃文庫)感想
共和国の指揮官・レーナとの別れの後、隣国ギアーデ連邦へとたどり着き保護されたシンたち。再び戦うことを選んだ彼らが幼き少女・フレデリカと出会い、激戦に身を投じてゆく第二弾・ギアーデ連邦編前編。休息を与えられ新たな選択肢を提示されたシンたち。そんな彼らが出会った新たな仲間・フレデリカ。戦場しか選べない、戦うことしかできない彼らの存在は連邦にあっても異質で、だからこそ地獄のような戦いを続ける彼らとレギオンとの決着と、彼らの心にある彼女の存在と再会に救いがあることを期待せずにはいられないですね。後編にも期待です。
読了日:07月07日 著者:安里 アサト
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXII (電撃文庫)ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXII (電撃文庫)感想
帝国、キオカ、ラ・サイア・アルデラミンによって開かれた三国会談。アナライ博士の指摘で会談は思わぬ方向へ向かい、激しく火花を散らす宿敵同士のイクタとジャンが力を合わせて試練に挑む第十二弾。アナライ博士の指摘の結果提示された神の試練。乗り越えた先で明かされた思わぬ真実。イクタとジャンのやりとりが楽しくて、明かされてゆくキャクレイの企図には慄然としましたが、何よりこの世界の根幹の部分が明かされて、今に至るまでの流れにはさすがに驚かされました。提示された決着で終わりも見えてきましたが、ここからの展開が楽しみです。
読了日:07月07日 著者:宇野 朴人
鹿の王 2 (角川文庫)鹿の王 2 (角川文庫)感想
王族たちが謎の黒狼たちに襲われ、噛みつかれて罹る疫病・黒狼熱が征服民には致命的でも、先住民・アカファの民は罹ら謎という噂が流れる第二弾。ヴァンは不思議な体験をして招待された谺主の元を訪れ、一方でホッサルはオタワル聖領の深学院へ向かうことになり、その過程で徐々に明らかになってゆく様々な過去の因縁や黒狼熱の謎。その目的や物語としてどこまで広がってゆくのか、まだ分からないことも多いですが、現時点でまだ向き合っていない運命の二人が、どのように邂逅して物語にどんな流れをもたらすのか、今後の展開がとても楽しみですね。
読了日:07月07日 著者:上橋 菜穂子
君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)感想
徐々に距離を縮めていたのに、恵麻が友達に放った苦し紛れの陰口を耳にしてしまった靖貴。意図的に距離を置くようになり、すれ違ったままの二人がそれぞれの大学受験を迎える第二弾。自信を持てない靖貴が裏切られたと感じた時の反動で頑なになってゆく様子や、後から気づいてどうにかしようとするものの上手く行かない恵麻の絶望感に焦れったくなる展開でしたが、だからこそギリギリでの巡り合わせの妙には救われる思いでした。これから大変だなあとも感じましたけど、その後の二人を見ていたらきっと大丈夫ですね(苦笑)次回作も期待しています。
読了日:07月06日 著者:筏田 かつら
鹿の王 1 (角川文庫)鹿の王 1 (角川文庫)感想
東乎瑠帝国相手に戦い奴隷に落とされ岩塩鉱に囚われていた独角の戦士・ヴァン。岩塩鉱を襲った不気味な犬の群れがもたらした謎の病を生き延びたヴァンが、幼子ユナとともに逃亡を図る物語。当面の落ち着き先を見つけたヴァンと、医術師ホッサルの従者マコウカンの二つの視点から語られる物語は、これから繋がって一つの物語になってゆくんですかね。サエがあっさり行方不明になったり、まだ謎も多かったりで物語がどんな方向に向かってゆくのか明確には見えてきませんが、作り込まれた壮大な設定に今後の展開に向けた期待感が高まる1巻目でした。 
読了日:07月06日 著者:上橋 菜穂子
横濱エトランゼ横濱エトランゼ感想
進路も決まり、横浜のタウン誌「ハマペコ」編集部でアルバイト中の高校生・千紗。編集長が倒れ編集長代理として奔走する初恋の相手・善正と一緒に遭遇する不思議な謎を解いてゆく連作短編集。善正たちの助けも借りつつ、今はない元町の百段階段や山手にある洋館など、出会った人たちの忘れられない思い出がたくさんつまった謎を過去のわだかまりと一緒に丁寧に解き明かしてゆく展開はなかなか良かったです。強力なライバルも現れて心揺れていた千紗の初恋の行方がどうなったのかは気になりましたが、横浜の情緒溢れる描写がとても素敵な物語でした。
読了日:07月05日 著者:大崎 梢
後宮に月は満ちる 金椛国春秋 (角川文庫)後宮に月は満ちる 金椛国春秋 (角川文庫)感想
宦官・玄月に正体を疑われつつも、使える存在になったことで命拾いした遊圭。皇太后の娘で引きこもりのぽっちゃり姫・麗華の心身の健康のため、明々と共に公主の部屋付きを命じられる第二弾。後宮から抜け出すために請け負った潜入捜査。声や身体つきなどがだんだん男らしくなっていくことに焦りを覚える遊圭。疑心暗鬼の中、刻々と変化する難しい判断を迫られる状況を、危ない橋を渡りながら何とか乗り切りましたけど、この結末は青天の霹靂でしたね(苦笑)簡単には抜け出せなくなってこれからどうするのか、これはこれで面白くなってきました。 
読了日:07月04日 著者:篠原 悠希
筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 ~鎌倉の花は、秘密を抱く (宝島社文庫)筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 ~鎌倉の花は、秘密を抱く (宝島社文庫)感想
筆跡鑑定も行う毒舌家で変人の書道家・東雲清一郎。第三弾は見事な書店ポップに込められた想い、松岡先輩に託された御朱印帳の意味、少年が見せたくなかったメモなど、清一郎の過去にも触れつつ、いつものように危なっかしい美咲に振り回されるだけでなく、時には彼女にも頼りながら事件を解決する清一郎や、チャラい松岡先輩の意外に一途な過去が印象的でした。清一郎も変わりつつあるみたいですけど、最後のあれはきちんと伝えようよ(苦笑)縮まりそうで縮まらない二人の距離感も近いうちに変化は訪れるんですかね。謎の書家も気になるところ。 
読了日:07月04日 著者:谷 春慶
Bの戦場 2 さいたま新都心ブライダル課の機略 (集英社オレンジ文庫)Bの戦場 2 さいたま新都心ブライダル課の機略 (集英社オレンジ文庫)感想
元CAの年上後輩・財前さん登場。斜め上の求婚をして困っていた意識の高いB専上司・久世課長も苦悩のあまり態度が急変する第二弾。新キャラ・財前さんに加えて香澄の幼馴染も登場していろいろありましたけど、仕事もできてイケメンなのに、斜め上な言動で香澄を振り回す久世課長が相変わらず突き抜けていて、その意味不明な態度だったりヤキモチ焼きな行動見てると、もう少し配慮できてたら...と思っちゃいますね(苦笑)次巻はどうなるのかな?と思うような展開でしたが、最後の新キャラがどう絡んでくるのか気になります。これは楽しみです。
読了日:07月03日 著者:ゆきた 志旗
下鴨アンティーク 暁の恋 (集英社オレンジ文庫)下鴨アンティーク 暁の恋 (集英社オレンジ文庫)感想
慧に告白してから関係がぎくしゃくしてしまっている鹿乃。周囲も二人の関係を気にする中、椿柄の振袖に関する相談が持ちかけられ、慧に鹿乃が振られたと聞いた春野も動き出す第六弾。慧と健気な鹿乃のもどかしい距離感にはもやもやしたものを感じてしまいましたが、本音で向き合ったらああなるのも必然の結末で、収まるべきところに収まったというかようやく一安心というか。それを見届けた良鷹もうまく言い表せない真帆との関係に何か変化があってもいいかなと思うんですけど、ここまで腐れ縁続いてると何かきっかけないと難しそうですね(苦笑) 
読了日:07月03日 著者:白川 紺子
御社のデータが流出しています: 吹鳴寺籐子のセキュリティチェック (ハヤカワ文庫JA)御社のデータが流出しています: 吹鳴寺籐子のセキュリティチェック (ハヤカワ文庫JA)感想
企業の容易には解決できない表沙汰にできない危機的なセキュリティ問題。解決を依頼された82歳のセキュリティ・コンサルタント吹鳴寺籐子が、社内のネットワークを走査する連作ミステリ。個人情報漏洩や企業内情報漏洩、偽ウィルスソフト詐欺やCOBOLレガシーシステムといった昨今よくあるトラブルをテーマに、犯罪者たちのセキュリティの意外な穴を突いてくる手法や、それを合法非合法な手段で追い詰めてゆく籐子の攻防は意外な展開で面白かったです。まあ確かに企業は問題起きたからといって何でも公表してるわけではないですよね(遠い目)
読了日:07月02日 著者:一田 和樹
やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)感想
危篤に陥ったおじいちゃんが肌身離さず持っていた写真の謎。雨女の五雨がその謎を解くために、雨の日にだけ登校する不思議な雨月先輩に相談を持ちかける雨の物語。おじいちゃんの写真や七夕の催涙雨といった雨に関する謎を、どこか複雑な気持ちで雨月先輩の下に持ち込む五雨。雨に関する無駄に詳しい知識を活かして優しい解決に導いてゆく雨月先輩の謎は深まるばかりで、五雨がその謎を追うことでたどり着いた真相は切なくもありましたが、それでも相変わらずなように見えて何かが変わったようにも思える二人の今後をまた読んでみたいと思いました。
読了日:07月01日 著者:皆藤 黒助
縛りプレイ英雄記2 剣が振れない聖騎士さま (角川スニーカー文庫)縛りプレイ英雄記2 剣が振れない聖騎士さま (角川スニーカー文庫)感想
はぐれていたマリーの護衛騎士イリスが合流して当然のように誤解される陣。そんな状況でメデューサによる石化事件の解決に挑む第二弾。実力はありそうなのに、力を発揮しきれていないポンコツ女騎士のイリス。イリスをかばい石化してしまったマリーと見えてきた事件の意外な真相。この世界に染まっていないからこそ見えることがあって、冷静に相手のためを思ってアドバイスしてやれる陣はほんといいやつですよね。今回登場したイリスもヒトミもなかなかいいキャラでしたけど、この調子で仲間も従魔も増えていくんですかね(苦笑)続刊も楽しみです。
読了日:07月01日 著者:語部 マサユキ

読書メーター

8月の購入検討&気になる本ほかピックアップ

 最近はすっかりアップするタイミングが遅れ気味になっていますが、8月の購入検討&気になる本ほかピックアップです。8月は例年谷間というかあまり目玉商品が出てこない月でもありますが、それでも読みたい本を探していくとそれなりの点数になるのはいつもどおりですね(苦笑)

 

 個人的な注目としては1巻まるごと試し読みなどHJ文庫側もかなり力を入れていることがうかがえる、ヒロイン捜索型学園ラブコメ(1巻目ではそんな雰囲気も吹き飛んでましたがw)「桜色のレプリカ1・2」と、ファミ通文庫嬉野秋彦さんの新刊「赫光の護法枢機卿」、講談社タイガで久しぶりの新刊を出す杉井ひかりさんの「蓮見律子の推理交響曲」と友井羊さんの「魔法使いの願いごと」を挙げておきましょう。

桜色のレプリカ 1 (HJ文庫)

桜色のレプリカ 1 (HJ文庫)

 
桜色のレプリカ 2 (HJ文庫)

桜色のレプリカ 2 (HJ文庫)

 
魔法使いの願いごと (講談社タイガ)

魔法使いの願いごと (講談社タイガ)

 
赫光の護法枢機卿 (ファミ通文庫)

赫光の護法枢機卿 (ファミ通文庫)

 

 

角川スニーカー文庫(8/1発売)
この素晴らしい世界に祝福を!12 女騎士のララバイ 暁なつめ/三嶋くろね

HJ文庫(8/1発売)
桜色のレプリカ1 翅田大介/町村こもり
桜色のレプリカ2 翅田大介/町村こもり
最強魔法師の隠遁計画3 イズシロ/ミユキルリア

講談社ラノベ文庫(8/2発売)
異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術8 むらさきゆきや/鶴崎貴大
あのねこのまちあのねこのまち 紫野一歩/旅空
ビューティフル・ソウル 坂上秋成/ニリツ

ポプラ社単行本(8/3発売)
ぼくらはその日まで 小嶋陽太郎

宝島社文庫(8/4発売)
京都伏見のあやかし甘味帖 おねだり狐との町家暮らし 柏てん/細居美恵子

実業之日本社文庫(8/4発売)
歯科女探偵 七尾与史

双葉文庫(8/7発売)
ババチャリの神様 皆藤黒助

小学館文庫(8/8発売)
二度めの夏、二度と会えない君 赤城大空

講談社文庫(8/8発売)
八月十五日に吹く風 松岡圭祐

ハヤカワ文庫JA(8/8発売)
ヤキトリ1 ──一銭五厘の軌道降下 カルロ・ゼン/so-bin

ハルキ文庫(8/9発売)
金曜日の本屋さん 秋とポタージュ 名取佐和子

電撃文庫(8/10発売)
魔法科高校の劣等生 (23) 孤立編 佐島勤/石田可奈
ゼロから始める魔法の書 X ―ゼロの傭兵〈下〉― 虎走かける/しずまよしのり
俺を好きなのはお前だけかよ (6) 駱駝/ブリキ
賭博師は祈らない (2) 周藤蓮/ニリツ
なれる!SE16 ~2年目でわかる?SE入門~ 夏海公司/Ixy
青の聖騎士伝説 II LAMENTATION OF THE EVIL SORCERER 深沢美潮/米田仁士

GA文庫(8/12発売)
我が驍勇にふるえよ天地5 ~アレクシス帝国興隆記~ あわむら赤光/卵の黄身
レーゼンシア帝国繁栄紀2 ~人形姫に微笑みを~ 七条剛/ゆきさん

富士見L文庫(8/12発売)
エール!! 栄冠は君に輝く 石原ひな子/ユホ
ひきこもり作家と同居します。 谷崎泉/高野苺
消えていく君の言葉を探してる。 霧友正規/カスヤナガト

ガガガ文庫(8/18発売)
筺底のエルピス5 ―迷い子たちの一歩― オキシタケヒコ/toi8

光文社単行本(8/18発売)
100億人のヨリコさん 似鳥鶏

富士見ファンタジア文庫(8/19発売)
豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい3 合田拍子/nauribon
ロクでなし魔術講師と禁忌教典9 羊太郎/三嶋くろね
デート・ア・ライブ17 狂三ラグナロク 橘公司/つなこ

講談社タイガ(8/21発売)
蓮見律子の推理交響曲 比翼のバルカローレ 杉井光
魔法使いの願いごと 友井羊
今からあなたを脅迫します 透明な殺人者 藤石波矢/スカイエマ

集英社オレンジ文庫(8/22発売)
宝石商リチャード氏の謎鑑定 祝福のペリドット 辻村七子/雪広うたこ

HJノベルス(8/23発売)
うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。6 CHIROLU/景

オーバーラップ文庫(8/25発売)
異世界魔法は遅れてる! (8) 樋辻臥命/猫鍋蒼
楽しみにしてるシリーズなんですけど、またイラスト変更なんですかね…

角川文庫(8/25発売)
櫻子さんの足下には死体が埋まっている ジュリエットの告白 太田紫織/鉄雄
セーラー服とシャーロキエンヌ 穴井戸栄子の華麗なる事件簿 古野まほろ/九条キヨ
ベイビー、グッドモーニング 河野裕

メディアワークス文庫(8/25発売)
神様の御用人浅葉なつ
キネマ探偵カレイドミステリー ~再演奇縁のアンコール~ 斜線堂有紀

創元推理文庫(8/25発売)
花野に眠る 秋葉図書館の四季 森谷明子

宝島社文庫(8/26発売)
響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 前編 武田綾乃

新潮文庫nex(8/29発売)
階段島シリーズ5 (仮) 河野裕/越島はぐ
勿忘草 特殊犯対策官室防犯二係 (仮) 古野まほろ
ヴァチカン図書館の奇譚コレクション (仮) 篠原美季
オークブリッジ邸の笑わない貴婦人3 (仮) 太田紫織/toi8

ファミ通文庫(8/30発売)
赫光の護法枢機卿 嬉野秋彦/新堂アラタ
キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った 比嘉智康/はっとりみつる
詩葉さんは別ノ詩を詠みはじめる 樫田レオ/サイトー

講談社単行本(8/30発売)
今日も君は、約束の旅に出る 瀬那和章

GCノベルズ(8/30発売)
エノク第二部隊の遠征ごはん1 江本マシメサ/赤井てら

東京創元社ミステリフロンティア(8/31発売)
滑らかな虹〈上〉 十市
滑らかな虹〈下〉 十市
宝石鳥 鴇澤亜妃子
第二回創元ファンタジイ新人賞受賞作

2017年上半期注目のオススメ新作一般文庫24選

というわけで 2017年上半期注目のオススメ新作第四弾ということで一般文庫編です。一般文庫もそれなりの数読んでいますが、最近キャラ文芸とライト文庫の境界が曖昧になってきていて、また青春小説も増えてきています。とりあえずそれなりに点数もあるので、便宜上一般文庫レーベルから出ているもの一般文庫として区分しました。今回は上半期に読んだ中から新作を24点選んでいます。

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

 
君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

 

 勉強合宿の夜に困っていた同級生の北岡恵麻を助けた地味で冴えない飯島靖貴。それをきっかけに密かな交流が生まれてゆく地味系眼鏡男子と人気者ギャルのすれ違いラブストーリー。入学直後の出来事で恵麻に苦手意識を持っていた靖貴と、助けてくれた靖貴が気になってゆく恵麻。学校では知らんぷりだけれど予備校帰りのわずかな時間で育まれてゆく二人の交流。少しずつ想いが積み重なってゆくのに、繊細で不器用な二人が距離を詰め切れないうちに起きる様々なすれ違いと、ギリギリで繋がってゆく巡り合わせの妙とても切ない物語です。全2巻。

長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)

長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)

 

 長崎の女子大学に入学した東京出身の日高乙女。バイトで不採用続きの乙女がオランダ坂の外れに不思議な洋館カフェを見つけ、そこで不機嫌顔のオーナーと一緒にバイトとして働くようになる物語。東京っぽさがないとある作家の熱烈大ファンな天然の乙女と、本業が不明で雨降る夜にしか開店しない無愛想で謎めいたカフェ・オーナーの向井。長崎の美味しいものがたくさん紹介されつつ、それと少しずつ増えてゆくお客さんとのエピソードや積み重なってゆく向井への想いがとてもいい感じに組み合わさって、不器用な二人を見守りたくなる素敵な物語でした。

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

 

 自分の目の前で幼馴染・歩巳が暴漢に襲われ姿を消した事件をきっかけに、棋士を諦めたかつての天才少年棋士・香丞。高校で美貌の女流棋士として再会した彼女が再び何者かに襲われ、その事件の真相を追う将棋ミステリ。コンピューター将棋が棋士に勝つのが当たり前になった近未来が舞台。謎解きのアプローチにいくつか後出し設定もあったのは少し気になりましたが、棋士を目指すもう一人の幼馴染・桂花も交えた三角関係の機微や、コンピューター将棋の考察も絡めながらたどり着いた結末の意味にはなるほどと納得してしまいました。面白かったです。

僕は小説が書けない (角川文庫)

僕は小説が書けない (角川文庫)

 

 不幸体質や家族関係に悩む高校1年生の光太郎。先輩・七瀬の強引な勧誘で廃部寸前の文芸部に入部した彼が、部の存続をかけて部誌に小説を書くことになる青春小説。物語を書けなくなっていた光太郎が出会った七瀬先輩の容赦ない批評。プレッシャーが掛かる部誌作成という状況で、振り回すOBふたりの存在と自覚してゆく七瀬先輩への想い。知りたくもない現実を突きつけられてきた光太郎が、それでも苦悩を乗り越えてきちんと向き合ったからこそ見えた光明があって、相変わらず不器用な彼のこれからを予感させるエピローグがとても素敵な物語でした。

少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)

少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (角川文庫)

 

 二浪で中堅私大に入学するも目標を見失っていた十倉和成20歳。そんな彼のボロ下宿の天袋をセーラー服姿の少女・さちが住処としていることが判明し、庇護しようとしたことから物語も動き出す青春小説。十倉が動き出すきっかけとなったさちの出現。停滞の原因となった高校時代の親友・才条の謎の死。やや時代がかった言い回しが多かった停滞の前半はテンポが悪かったですが、そこから親友の死の謎を追い、志を受け継いで映画にのめり込んでいく怒涛の展開は読ませるものがありました。ファンタジーじみた結末も最後で救われてなかなか良かったです。

 カネなし男なし才能なしで崖っぷちな29歳のタロット占い師・柏木美月。ある日ずば抜けた推理力を持つ美少女・愛莉を助けたことをきっかけに、占いユニット「ミス・マーシュ」を結成し人々の悩みに秘められた謎に挑むミステリ。お人好しで困った人を放っておけないお節介な美月と、人と関わるのが苦手だけれど数々の謎を解いてみせるツンデレな愛莉。訪れる人々の謎を解きながら、テンポのいい二人の凸凹コンビぶりや遠慮していた距離感もだんだんいい感じになっていく過程が良かったですね。まだまだ続きも期待できそうですし続巻に期待します。

知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)

知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)

 

 勤務先で先輩の失敗を押しつけられて辞め、叔父が住んでた家に籠もっていた陽向。彼の元に届けられた叔父のテープを原稿起こししてもらうため、音谷反訳事務所の久呼と出会うお仕事小説。訳ありで個人宛てテープは起こさない信条の久呼に反訳のやり方を教えてもらううちに、テープの真意や反訳の奥深さを知って彼女に師事しその仕事を手伝うようになってゆく陽向。意気込みが空回りすることもありましたけど、自身も抱えているものがある久呼とは足りないところをお互い補い合えるいいコンビになりつつあって、続巻あるならまた読んでみたいです。

憧れの作家は人間じゃありませんでした (角川文庫)

憧れの作家は人間じゃありませんでした (角川文庫)

 

 【第2回角川文庫キャラクター小説大賞大賞受賞作】
紆余曲折の末に憧れの作家・御崎禅の担当となった文芸編集者2年目の瀬名あさひ。実は吸血鬼で人外の存在が起こした事件について警察に協力している御崎に原稿を書いてもらうため事件解決にも奮闘する物語。映画好きで意気投合した作家・御崎の意外な正体。最初は困惑するものの映画好きで意気投合しファンでもある御崎の事情を知ることになって、原稿を書いてもらうためにと奮闘するあさひの行動力が物語を引っ張っていた印象。読みやすい語り口でいい感じに物語を引き締めていた刑事の夏樹にも好感。もし続巻あるようならまた読んでみたいですね。

弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま (角川文庫)
 

 恋人に二股をかけられ傷心状態のまま北海道・札幌市へ転勤したOL千春。仕事帰りの彼女が路地裏にひっそり佇む『くま弁』を発見し、「魔法のお弁当」の作り手・ユウと出会う物語。悩みを抱えた一人のお客様のためだけに作るユウの裏メニュー。それによって救われてゆく常連客たち。北海道ならではの食材やお客さんの思い出のメニューに寄り添うユウが作り出すひとつだけのお弁当がとても美味しそうで、ユウ自身もまた自らのありようを見定めてゆく暖かな気持ちになれる物語でした。千春とユウの距離感も変化の兆しがあって続刊に期待したいですね。

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)

 

 ポツダム宣言を受諾せず東西に分断された日本。七十数年後、高校の屋上で出会った不思議な少女・沙希からアルバイトに誘われた彰人が、彼女の壮大なテロ計画に巻き込まれてゆく物語。両親も亡くなって目的もなく死に魅入られていた彰人。彼に協力を求めた沙希が、思惑ある権力者たちをも巻き込んで邁進する真の目的。緊張が高まってゆく状況で大人たちの間を動き回り、ギリギリの駆け引きが続きながらも切り抜ける覚悟を見せた沙希と、彼女と一緒に最後まで走り抜けた彰人が最後に迎えた結末はとても素敵なものだったと思いました。面白かったです。

プラットホームの彼女 (光文社文庫)

プラットホームの彼女 (光文社文庫)

 

 転校前に親友と喧嘩してしまった少年、地味な高校生の意外な一面に心穏やかでいられない少女、事故で娘を失った傷心の母親など、様々な想いを抱える人が駅で出会う一人の少女の連作短編集。逡巡して踏み出せない決心や消化しきれない悔恨を抱える人たちの前に現れ、その背中を押したりわだかまりを解消するきっかけを与えて大切なことを思い出させてくれる少女。物語を重ねてゆくうちにその素性や背景も徐々に明らかになっていって、途中で想像していたものとは少し異なるやや意外な結末を迎えましたけど、切ないながらも心温まる素敵な物語でした。

春や春 (光文社文庫)

春や春 (光文社文庫)

 

 句雑誌で昔知っていた男の子の名前を発見し、俳句の価値を主張して国語教師と対立した茜。友人の東子にそんな顛末を話すうち俳句甲子園出場を目指すことになってゆく青春小説。個性的な初心者の新入生三人も加えつつ立ち上げた俳句同好会。顧問などの協力を得ながら俳句の基本に取り組んだり、抽象的な俳句を数値化する俳句甲子園の独特なルールに向き合ったり気になる人間関係も織り交ぜつつ、豊かな言葉を駆使しながらチームとして戦う展開はなかなか新鮮でした。有望な新入生も入学するということは続巻出るということですよね?期待してます。

 

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

 ある日病院で一冊の文庫本「共病文庫」を拾った高校生の僕が、それを密かに綴っていた膵臓の病気により余命がいくばくもないクラスメイト・山内桜良と出会う物語。ぼっちな僕相手にずけずけと距離を縮めてくる彼女。困惑しつつも彼女と共に過ごす時間がどんどん増えていき、その影響を受けて変わっていく僕。何とも形容し難い二人の繊細な関係と距離感のとても甘酸っぱい恋愛未満な感じが良かったです。何をもって報われたとするのか難しい結末でしたが、二人にとって出会って共に過ごした濃密な時間は、素敵なものだったんだなと改めて思えました。

嘘が見える僕は、素直な君に恋をした (双葉文庫)

嘘が見える僕は、素直な君に恋をした (双葉文庫)

 

 好きになった人の嘘が分かってしまう高校生の藤倉聖。幼い頃から大切に想う人たちの嘘に苦しめられ、距離を置くようになっていた聖が明るく素直な転校生・二葉晴夏と出会う青春小説。誰かを好きになることを渇望しつつも臆病になっていた聖。捨て猫をきっかけに知り合い、お互いの飼い猫を話題に距離を縮めてゆく晴夏。すれ違いを乗り越えてお互いが大切な存在だと自覚するがゆえの嘘がとても切なくて、どうにもならないもどかしさも感じてしまいましたが、明示されなかった結末にかけがえのない時間を共有した二人のその後を想像したくなりました。

屋上のウインドノーツ (文春文庫)

屋上のウインドノーツ (文春文庫)

 

 中学まで人生に何も期待せずに生きてきた志音。そんな彼女が屋上で吹奏楽部部長・大志と出会い、人と共に演奏する喜びを知ってゆく青春小説。人気者の幼馴染から逃げるように別の高校を受験した志音が屋上で出会った先輩とドラム。そして不器用な志音を見守ってくれる仲間たち。登場人物たちそれぞれが立場は違えど抱えている葛藤があって、頑張ったからといって必ずしも目指しているものに手が届くわけではないあたりがわりとほろ苦かったりもしますが、それを踏み越えてチャレンジしたり、関係を再構築してゆく姿がとても爽やかな物語です。

 スクールカースト保健室登校…学校生活に息苦しさを感じる女子中学生たちの揺れ動く心を綴った連作短編集。短編の主人公は自分の居場所を見いだせない女の子たち。時が経てば分かることも、今見えている世界だけではなかなか分からないんですよね。誰もが不安を抱えていて閉塞感のある世界は些細なきっかけで変わる。周囲のストレートな悪意に葛藤しながらも向き合い変わっていこうとする少女たちを描いた物語は、雨上がりのようなこれから良くなる期待を予感させる読後感でした。スカートの長さとカーストを対比させてみせる視点もまた秀逸です。

君が描く空 - 帝都芸大剣道部 (中公文庫)

君が描く空 - 帝都芸大剣道部 (中公文庫)

 

 東京藝術大剣道部に事情があって三年生になってから入部してきた唯。それを指導することになった主将の壮介と、剣道部員たちが織りなす青春群像劇。複雑な家庭の事情を抱えながらも、画廊への契約条件として提示された初段を取ることを承諾した唯。割り切った唯の言動に戸惑い心配する一方で、憧れの部員・綾佳への想いにも揺れる壮介。そろそろ進路を意識せざるをえない部員たちが突きつけられる才能とそれに向き合う覚悟はシビアで、各々が直面する状況もまたほろ苦かったですが、それでも変わらない想いが垣間見える結末はとても心に響きました。

(P[こ]4-6)あざみ野高校女子送球部! (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[こ]4-6)あざみ野高校女子送球部! (ポプラ文庫ピュアフル)

 

 中学時代バスケ部での苦い経験から、もう二度とチーム競技はやらないと心に誓っていた端野凛。つい本気で臨んだ体力測定の記録からハンドボール部顧問成瀬にスカウトされる青春スポーツ小説。典型的なストイックアスリートの凛と凄まじいポテンシャルを持ちながら運動素人の智里。どんなにやられても凹まない絶望しない凛には苦笑いでしたが、好対照な二人を軸として、勝つために自らを追い込んでゆくハンドボール部のメンバーたちそれぞれの想いや葛藤も熱くて、スポーツ小説としてなかなか読み応えがありました。続編あるなら是非読みたいですね。

あした世界が、 (小学館文庫)

あした世界が、 (小学館文庫)

 

 楽会社に勤める吉山朗美と、社長に契約解除され怒り狂う同級生のスーパースター・絹川空哉。十年前の高校時代にタイムスリップした朗美が当時の心残りをやり直す物語。極度のあがり症を抱える冴えない女子高生だった朗美。空哉と蓮に急接近していく一方で、すれ違い続けていた父との関係。無難に生きるしかなかった高校時代の人間関係も十年後の自分には大したことには思えなくて、だからといってままならないこともたくさんあって。それでも逃げずに困難に向き合った朗美の決断が、当時も今も変えてゆく結末は清々しい読後感で面白かったです。

京都西陣なごみ植物店 (PHP文芸文庫)

京都西陣なごみ植物店 (PHP文芸文庫)

 

 ある母娘から質問を受けて戸惑う京都府立植物園の新米職員の神苗健。そんな彼を救った「植物探偵」を名乗るなごみ植物店の店員・実菜と植物にまつわる様々な謎を解いてゆく連作ミステリ。著者さんらしい情緒ある京都の風物詩を絡めつつ、植物絡みの謎に挑む探究心旺盛でちょっと変わった実菜と、彼女から探偵助手に任命された神苗の二人はお互いを補い合うなかなかいいコンビっぷりで、彼らの奔走ですれ違いかけた人の想いが繋がったり、周囲も温かく見守る二人の距離感も今後が気になったりで、続編を期待したい作品ですね。

 様々な事情で集まってきたはみ出し者のメンバーたちが、ど田舎のスーパーなどで働きながら、一緒にクラブチームの野球で社会人全国制覇を目指す物語。かつての過去の栄光だったり、自分の夢と家族との間の葛藤だったり、なかなかうまく行かずに拗らせてしまっている想いにどう向き合って、難しい環境の中でも好きなことをやり抜くのか。社会人野球を扱ったという点でも興味深く、分かりやすくプロを目指すことだけが野球をやる理由ではなくて、不器用にぶつかり合いながらチームとして一つにまとまってゆく彼らの奮闘は心に響くものがありました。

すしそばてんぷら (ハルキ文庫)

すしそばてんぷら (ハルキ文庫)

 

 早朝のテレビ番組でお天気お姉さんをしている寿々が、事務所の発案で江戸まちめぐりのブログを開設することになり「江戸の味」を求めて歩き回る物語。小学生時代を過ごした下町で祖母とのんびりふたり暮らしをしている寿々。長く付き合ってきた人に婚約を破棄されたりでどこか元気のなかった彼女が、ブログ開設を機に新しい仕事が増えたり、iPadを駆使して検索するおばあちゃんや幼馴染と美味しい江戸の味に挑戦したりと、優しく人情味のある展開はとても良かったです。あまり進展しなさそうな幼馴染との関係含めて続編に期待ですね。

 企業の容易には解決できない表沙汰にできない危機的なセキュリティ問題。解決を依頼された82歳のセキュリティ・コンサルタント吹鳴寺籐子が、社内のネットワークを走査する連作ミステリ。個人情報漏洩や企業内情報漏洩、偽ウィルスソフト詐欺やCOBOLレガシーシステムといった昨今よくあるトラブルをテーマに、犯罪者たちのセキュリティの意外な穴を突いてくる手法や、それを合法非合法な手段で追い詰めてゆく籐子の攻防は意外な展開で面白かったです。まあ確かに企業は問題起きたからといって何でも公表してるわけではないですよね(遠い目)

 

 以上です。一連の更新はいったんこれで一区切りになります。

読んでみたい本を探すのに参考になれば幸いです。

 これまでの更新分はこちら↓

 ------------

 

2017年上半期注目のオススメ新作ライト文芸26+1選

少し間が空いてしまいましたが、2017年上半期注目のおすすめシリーズ第三弾ということで「ライト文芸編」です。ライト文芸も最近は刊行点数が増えていて、読むものを少しセレクトしないといけなくなってきています。今回新作のみの紹介なので続巻のシリーズものは特に取り上げていませんが、各レーベルともらしい作品や看板シリーズも育ってきていて、それぞれ路線というか特徴がいろいろ出て行きているのかなと感じますね。というわけで読んだ中からセレクトした26作品と、昨年12月刊行で1月に読んだ1点の計27作品を紹介したいと思います。 

 

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞<大賞>】
大切な姉の死からどこかなげやりに生きていた岡田卓也が、友人に頼まれ「発光病」で入院したままのクラスメイト・渡良瀬まみずと出会ったことで止まっていた二人の時間が再び動き始める物語。余命を宣告されたまみずに死ぬまでにしたいことがあると知らされ、それに協力することを約束した卓也。無茶振りされても奮闘する卓也がなかなか自覚できない自らの想いや、気持ちを伝えることに躊躇するまみずの距離感がもどかしかったですが、遠回りこそしたものの相手に真摯に向き合い大切に思う気持ちを伝え合った、切なくも心の琴線に触れる物語でした。

明治あやかし新聞 怠惰な記者の裏稼業 (メディアワークス文庫)
 

【第23回電撃小説大賞<銀賞>】
明治初期を舞台に書かれた記事が原因で友人が奉公先を追い出されたと新聞社に乗り込んできた少女・香澄が、妖怪にまつわる記事ばかり書く記者・久馬と友人・艶煙と共に人助けをするあやかし謎解き譚。新聞社に乗り込んだ香澄が知る記事が書かれた本当の事情。手伝いをするようになった香澄の心境の変化。普段はぐうたらな久馬がまっすぐなゆえに危なっかしいところもある香澄をきちんと助けたり、だんだんお互いを知ることで少しずつ変わってゆく二人の距離感がなかなか良かったですね。気になるコンビでしたし続きがあるならまた読んでみたいです。

キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)

キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞>】
留年の危機に瀕するダメ学生・奈緒崎が教授から救済措置として提示された難題は「休学中の嗄井戸を大学に連れ戻せ」。引きこもりの嗄井戸と奈緒崎が謎を解決する連作短編ミステリ。映画鑑賞に没頭して家から出ない嗄井戸が安楽椅子探偵よろしく事件を見通してみせる役割で、腐れ縁で彼の家を訪れるようになった奈緒崎が動くコンビ。二人を中心とする物語は一方で彼ら二人の不器用な友情の物語でもあり、キッパリサッパリなヒロイン・束ちゃんもいい感じに効いてテンポも良く、なかなか面白かったと思います。続編あるならまた読んでみたいですね。

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

 

 【第23回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>】
突然見知らぬ女性に三つの質問を問いかけられた雪の日。誰も好いたことがない掛橋啓太が問いかけた大野千草と夫婦になり、平穏な彼女との生活の中で過ぎ去った過去の日々を追憶させてゆく物語。お互いの過去を知らないまま三つの質問という契約によって夫婦になった二人。引きこもりの兄と共依存関係にあった母との辛い過去。徐々に惹かれ合っているのを自覚するがゆえに、じわじわと重くのしかかってゆく三つ目の質問。それぞれが抱える壮絶な過去も二人でなら乗り越えられると思えただけに、淡々と綴られたその不器用な結末には衝撃を受けました。

僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)

僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)

 

 一週間後にピアノコンクールを控えた少年・中瀬と、告白の返事を待たせている少女・山田。ある日、同じ一日をループしていることに気づいた二人が、運命の出会いを果たす物語。納得したら次の日に進めていたのに、出会ったことで二人が納得する条件に変わったループ。適当な言動が多いように見えた山田の悩める心情と、堅物に思えた中瀬のコンクールに賭ける想い。困難に直面する自分のために奔走する相手への想いが少しずつ変わっていって、忘れていた過去も繋がって、乗り越えた二人が紆余曲折の末に迎えた結末はとても素敵なものに思えました。

奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)

奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)

 

 奈良町のくすば菓子店の息子・楠葉シノブは奈良ではもう最後の由緒正しい陰陽師。猫又の墨香や幼馴染のゆかりに見守られながら、周囲で起こる不思議を解きほぐしてゆくあやかしファンタジー。祭りの夜を待つ青衣の女人、ご機嫌ななめな女神、走る大黒様などなど、ご先祖様にも助けられつつ解決に導いてゆくシノブ。最後の陰陽師ではあっても、そんな彼を理解して助けてくれる猫又の墨香や幼馴染のゆかり、友人の道安もいたりで、そんな雰囲気がとても素敵な物語でした。ゆかりとの関係もとてもいい感じでしたけど彼らの物語をまた読んでみたいです。

 突然の婚約破棄に昇進取り消し。順風満帆からまさかの人生のどん底に陥った大手通信会社営業・八乙女累が一念発起して書いた小説で小説新人賞を受賞し兼業作家デビューを果たすお仕事小説。ヤケを起こし迷走した果てに原点回帰して挑戦した小説新人賞。厳しいダメ出しをする鬼編集と組むことになり、仕事の方も大変なことばかりで厳しいと思いましたが、きちんと見据えて頑張ってみれば見えることもあるし助けてくれる人もいるんですよね。どうにか兼業作家のスタートラインに立てた今回、周囲との人間関係も気になりますし続巻を読んでみたいです。

 きちんとゲラを読んで理解し、本の表情を生み出すのが装幀家の役割だと信じる本河わらべが、出版社の合併で本の内容には目を通さない主義の巻島と組むことになり、ことあるごとに衝突しながらも本の装幀を作り上げていく物語。最初はゲラを読む読まないだけでなく、本に似合う装幀を作りたいと思うわらべと、多少強引でも売上に繋がるような装幀を意識する巻島が毎回衝突して苦笑いでしたけど、試行錯誤していく過程で徐々に連携も取れるようになったり、二人がそんな装幀を意識するきっかけに思わぬ顛末が待っていたりとなかなか楽しく読めました。7月に2巻目刊行予定。

時をめぐる少女 (メディアワークス文庫)

時をめぐる少女 (メディアワークス文庫)

 

 未来や過去の自分に逢えるらしい並木道の奥にある小さな広場。九歳の葉子が恋人と婚約したばかりの将来の自分自身と出会う物語。離婚して一人葉子を育てる母親との衝突、繰り返す転校と親友との出会い、上手くいかない就活と大切な人との出会い、そして不安が押し寄せる結婚。自分の選択に自信を持てないがゆえに何かあるたびにこれでいいのか深く悩む葉子でしたけど、そこで一歩を踏み出すことでかけがえのない出会いがあって、それらが巡り巡って最初に背中を押してくれた未来の自分に繋がってゆく穏やかな結末は、とても素敵なものに思えました。

 高二の夏に心臓の病が原因で亡くなった彼女・透子のことを未だ引きずっていた成吾。四年ぶりに地元に帰った成吾が再び手にした交換日記の空白に新たな返事が綴られてゆく物語。彼女が亡くなって以来、初めて訪れた彼女の実家で手にした交換日記に起こった不思議な出来事。語られる彼らの出会いと、交換日記を通じて交わされる時を超えた透子とのやりとり。未来を知っているからこそ何とか変えたい成吾と、その時を後悔しないように精一杯生きたい透子の交流はもどかしく切なかったですが、精一杯真摯に向き合った二人のやりとりは心に響きました。

命の後で咲いた花 (メディアワークス文庫)
 

 教師にならなければならない理由を胸に、晴れて第一志望の教育学部に入学した貧乏学生の榛名なずな。そんな彼女が寡黙で突き放すような年上の同級生・羽宮の優しさに触れ惹かれてゆく物語。不器用なアプローチしかできないなずなと、何かを抱えていそうでなずなを容易に近づかせない羽宮。国語教師になった彼女とたまにしか会えない羽宮の、とても一途で絶望的なのにそこに幸せを見出す切ない恋。読み終わってみるとなるほどなあと唸らされる絶妙な構成で、繊細に積み重ねられてゆく羽宮と彼女の距離感がとても好みでした。後日談も良かったです。

ハッピー・レボリューション (メディアワークス文庫)

ハッピー・レボリューション (メディアワークス文庫)

 

 ゆるい部署に馴れきってしまい、気づけば20代最後の日を目前に焦りだした流され体質のOL夢子。空回り続きだった彼女がふとしたきっかけから一念発起して奮闘する物語。これまで共に受験や就活を乗り切ってきた脳内軍曹と自己変革に挑むも、うまくいかないことだらけで夢子に突き刺さる厳しい現実。前作の二人も甘々な恋人同士として登場したりで、ストーリーとしても分かりやすいベタな展開でしたけど、彼女を助けてくれる周囲の人たちにいい意味で感化され、彼女の頑張りによって周囲も変わってゆく好循環は読んでいて気持ちいい読後感でした。

契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)

契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)

 

 椿屋敷で若くして隠居暮らしの柊一と契約結婚した香澄。町の相談役・柊一の元に近所から相談が持ち込まれるわけありな人々の物語。築六十年の椿屋敷という珍しい視点から綴られる穏やかで物事がよく見えるのになぜか人の機微には少し疎い柊一と、よく働き一緒に過ごすうちに柊一のことが気になってゆく可愛い香澄の関係。二人の穏やかな日常が周囲の関与により詮索しないはずの過去に触れ少しずつ変わってゆく展開は、二人が本当の夫婦に近づいてゆく過程をいろいろと楽しめそうですね。周りのキャラも魅力的でこれは続巻に期待大の新シリーズです。

エプロン男子 今晩、出張シェフがうかがいます (集英社オレンジ文庫)

エプロン男子 今晩、出張シェフがうかがいます (集英社オレンジ文庫)

 

 激務の仕事はうまくいかず、恋人にもフラれたデザイナーの夏芽。心身ともにボロボロの彼女がイケメンシェフが自宅に来て料理を作ってくれる「エデン」を紹介される物語。やって来た海斗の作る食事と優しさに触れ立ち直るきっかけを得た夏芽が、次々と出会うメンバーたち。エデンを立ち上げた相馬と参加する男たちが抱える事情と料理に賭ける想い。それぞれのやり方で求められた人たちのために真摯に向き合う彼らの料理には癒されそうで、でも接触禁止で恋愛禁止な契約という縛りがなかなか興味深かったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

 

 父の死により莫大な遺産を相続した女子高生の一華。遺産を狙って親族たちが彼女を事故に見せかけ殺害しようとするのに対抗して、一華が唯一信頼する使用人の橋田がある探偵を雇う物語。遺産目当てとは言えここまで露骨に命を狙いに来る親族たちも相当アレですが、それ以上に事件が起こる前にトリックを看破して犯罪を止めて「トリック返し」までしてしまう究極の探偵とか新しいですね(苦笑)依頼人にそれと気づかれぬまま、邂逅する前に探偵がいろいろ動いて終わっていた上巻でしたけど、下巻ではどう驚かせてくれるのかこれは期待が高まりますね。7月に下巻刊行予定。

 山中にある屋敷の座敷牢で出会った少女ツナ。怖い話を聞かせることを条件に週一回会うことを許されたミミズクが十年目に転機を迎える物語。育ての親や友人にもツナのことを隠し続けてきたミミズクこと瑞樹。かつて投稿した怪談記事が縁で多津音一と出会ったことにより徐々に明かされてゆくツナを巡るからくり。丁寧で繊細なことばによって恐怖が描かれる一方で、瑞樹がきちんと向き合ったことで明らかになった真実は思わぬ奇跡にも繋がっていて、どうにか折り合いをつけて迎えたその結末はなかなか素敵な読後感でした。

緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)

緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)

 

 自分を出せない性格に悩む学級委員長・由宇と「誰も仲良くしないでください」と衝撃的な挨拶をした転校生・緋紗子さんの出会い。偶然、緋紗子さんの身体の重大な秘密を知ったことで二人の関係が変わってゆく青春小説。学級委員長を押し付けられ両親が離婚の危機、幼馴染への恋心も封印していた由宇。秘密を抱えるがゆえに孤高を貫いていた緋紗子さんとの不器用な交流は微笑ましくて、だからこそままならないすれ違いがもどかしくもなりましたが、二人の出会いと育んだ友情がそれぞれにもたらした確実な変化の兆しがとても素敵な物語でした。

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女 (講談社タイガ)

 

 危篤に陥ったおじいちゃんが肌身離さず持っていた写真の謎。雨女の五雨がその謎を解くために、雨の日にだけ登校する不思議な雨月先輩に相談を持ちかける雨の物語。おじいちゃんの写真や七夕の催涙雨といった雨に関する謎を、どこか複雑な気持ちで雨月先輩の下に持ち込む五雨。雨に関する無駄に詳しい知識を活かして優しい解決に導いてゆく雨月先輩の謎は深まるばかりで、五雨がその謎を追うことでたどり着いた真相は切なくもありましたが、それでも相変わらずなように見えて何かが変わったようにも思える二人の今後をまた読んでみたいと思いました。

僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)

僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)

 

 気になる架能風香から誤字脱字だらけの恋文に散々なダメ出しを食らった深海楓が、彼女にふさわしい男になるべく小説家を志すボーイ・ミーツ・ガールミステリ。普段からヘルメットを着用し敬愛するカフカになれと告げる風香と、女好きだった過去を封印する偽装天然な楓。カフカの作品になぞらえた身近な謎を二人で解決するうちに少しずつ変化する距離感と、彼女を本当に好きになっていく楓の想い、彼に対して秘密を抱える風香の逡巡といった心情描写がなかなか良かったです。このレーベルらしい一風変わった、けれどとても自分好みな青春小説でした。

 大学の学食で働きながら、幼馴染・朝生くんと同じマンションに住んでご飯を作る契約をしている楓。体重を除けば完璧な朝生くんとのダイエットを巡る攻防と、身の回りで起こる謎を解くドタバタミステリ。痩せさせるべく日々工夫しながらご飯を作るのになかなか成果が出ない楓とたくさんご飯を食べたい朝生の探り合うような駆け引き、一方で身の回りで起こる謎に対して(デブだけど)無駄に多才な朝生が大活躍するギャップがなかなか面白かったです。そんな二人の何とも形容し難い関係も今後が気になったりで、続巻を是非期待したい新シリーズですね。

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

 

 浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳が、加入した奇人変人揃いの漫画サークルで運命的な出会いを果たした新入生・天原と再会する青春小説。将来もマンガに関わっていきたいと考える卓巳が出会った漫画家を目指す訳ありな先輩たち。彼らが作り出す濃い空間にどんどん溶け込んでゆく天原と卓巳。触発されてマンガを書き始めたり天原と二人で出かけたり、いい雰囲気になりかけたのに全てがぶち壊される急展開にはぐいぐい読ませるものがあって、追いかけたはずなのになぜか追い込まれた卓巳が本音をぶちまける熱い展開はとても面白かったです。

カカノムモノ (新潮文庫nex)

カカノムモノ (新潮文庫nex)

 

 悪夢を見続けるOL、穢れを内に抱える大学生、兄夫婦の子供を預かる花屋。「カカノムモノ」謎の美貌の青年・浪崎碧が、時に人を追い詰めてまで心の闇を暴き解決してゆく物語。昏い想いが育つことで生み出される大禍津日神と、一族の事情から人として生きてゆくためにそれを食らわねばならない碧の宿命。訳ありそうなカメラマン・桐島とともに闇を抱えた人を探し出して穢れを払うシリアスな過程には、ごくありふれたままらない日常の積み重ねがあって、宿業を抱えた碧を取り巻く事情がどのように変わってゆくのか続刊に期待したい新シリーズですね。

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

かぜまち美術館の謎便り (新潮文庫nex)

 

 美術館の館長として香瀬町に引っ越してきたカリスマ学芸員・佐久間とその娘のかえで。18年前の事件と町民に残るわだかまりを絵画を通じて佐久間が解いてゆく絵画ミステリー。真相を示唆する絵画を佐久間が解釈して周囲の人々に強く残る過去のわだかまりの誤解を解き、それが18年前の事件の真相ともリンクして全てが繋がってゆく展開。癒やしとなる佐久間とかえで親子のほのぼのとしたやりとりや、救いを見いだせる各エピソードの余韻がとても良かったからこそ、思い出してゆく過去のほのかな想いの結末には少しばかり切ない気持ちになりました。

シマイチ古道具商: 春夏冬(あきない)人情ものがたり (新潮文庫nex)

シマイチ古道具商: 春夏冬(あきない)人情ものがたり (新潮文庫nex)

 

 生活を立て直すため大阪・堺市にある夫の実家「島市古道具商」へ引越し、義父と同居をすることになった透子一家。古い町家で紡がれるモノと想いの人情物語。両親を早くに亡くして社会経験にも乏しく、家族を取り巻く現状がこのままでいいのか思い悩む透子。お店を通じて義父やお客と一緒に古道具や人間関係に関わるようになったり、子供たちや夫ともなかなか上手くいかない状況になりかけたりな彼女は色々と大変でしたけど、多くの人に見守られていたことに気付いた彼女が、本当に大切なもののために周囲と協力して奔走する姿は強く心に響きました。

100回泣いても変わらないので恋することにした。 (新潮文庫nex)
 

 孤独な人間にしか見えないミニサイズな明治時代の名士・伝之丞に取り憑かれた地方の新人学芸員・手島沙良が、彼とともに身近に起きる騒動を解決してゆく物語。伝之丞と出会ってから生き別れていた母親との再会やイケメンとの運命の出会い、友人と職場の同僚の恋愛や河童の復活、殺人事件で探偵役を任されたりと、次々と騒動に巻き込まれてゆく沙良。地道に頑張っているわりには報われず、自分の気持ちにもなかなか素直になれなかった沙良でしたけど、遠回りしながらもたどり着いた結末が、彼女の幸せな未来に繋がっていると信じたくなる物語でした。

おまえのすべてが燃え上がる (新潮文庫nex)

おまえのすべてが燃え上がる (新潮文庫nex)

 

 愛人生活がバレてスポーツジムのアルバイトの給料では生活費すら賄えず、貢がれたブランド品を売って何とか暮らす信濃の元に、弟が元恋人を連れて訪ねてくる物語。冒頭から包丁を持った愛人の妻に殺されかけててギョッとしましたが、どん底信濃の生活っぷりや、同じようにどん底で過去に二度も絶交した因縁の相手・醍醐との気まずい再会、意味不明の意気投合から自己嫌悪する流れはうわあと思いつつもぐいぐい読ませますね。相変わらず波乱万丈な二人にそんなに簡単には変わらないよなと思いつつもその悪くないと思える結末には救いを感じました。

 

ちなみに下記は昨年の作品ですが、今年に入ってから読んだなかなかおもしろかった作品ということで特別に紹介したいと思います。

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

 

 物心ついた頃からブスで、結婚式に憧れ自分は無理でもそれを演出する人になろうと、ウェディングプランナーになった北條香澄。そんな彼女が絶世のブスと絶賛されやり手で絶世の美男子・久世課長に求婚される物語。これでもかと香澄のブスっぷりを真正面から突きつけられる展開は少なからずグサグサ突き刺さりましたが、さらに突き抜けている久世課長の存在感(苦笑)そういう決断しちゃうのかーとは少し思いましたが、お仕事小説としても面白かったですし、仕事に真摯に向き合う香澄の姿勢やその人柄が愛されているのが伺えて悪くない読後感でした。現在2巻まで刊行。

 

こうして眺めるとKADOKAWA刊行が多いですが、そもそもの刊行点数が多いので仕方ないですね(苦笑)残るは一般文庫編ですが、こちらも近いうちに更新したいと思います。ではまた。

 

これまでの更新分は↓

yocchi.hatenablog.com

--------------------

好きなライトノベルを投票しよう!! - 2017年上期投票します。

突如いろいろ忙しくなって、予定していた17年上半期注目のオススメ新作ライト文芸編・一般文庫編がまだアップできていなかったりしますが、とりあえず告知があったのでこのラノ17年上期の投票を先にエントリ作っておこうと思います。

好きラノ - 2017年上期に発売されたライトノベルリスト

ちなみに今回対象とされた1196点のうち読んでいたのは193冊です。多いのか少ないのか分かりませんが、だいたい6冊に1冊程度読んでいた計算になりますね。少女小説ライト文芸なども含まれていますが、今回は新作から10点選びました。

86―エイティシックス― (電撃文庫)

86―エイティシックス― (電撃文庫)

 

 帝国の無人兵器レギオンによる侵略を受け、有色人種を差別し戦わせてしのいでいた共和国。そんな若者たちを率いる少年・シンと、後方から彼らの指揮を執るハンドラーとなった少女・レーナが出会う物語。人権を認められない有人の無人機として戦い続ける「エイティシックス」の若者たち。現状に疑問を持つもののその過酷さを本当の意味では分かっていなかったレーナ。次々と仲間が死んでゆく厳しい状況で彼らに突きつけられる指令には絶望的な気持ちになりましたが、因縁にもきちんと決着を付け迎えた意外な結末はとても良かったですね。現在2巻まで刊行。
【17上期ラノベ投票/9784048926669】

 いなり寿司しか食べられない呪いを祓うため神々の住む島・白結木島を訪れた高校生春秋。そんな彼が神様との縁を切ることで怪異を祓う花人の後継者の少女・空と出会い、怪異解決に挑む沖縄青春ファンタジー。天真爛漫でどこまでもフリーダムだけれど島想いな空たちに翻弄されながら、徐々に変わってゆく春秋の心境。師匠を亡くし未熟を自覚しつつも、事情を知って春秋のために呪いを解こうとする空の決意。のびやかな舞台で繰り広げられる物語の結末はちょっぴり切なくて、けれどそれを乗り越える爽快な読後感は著者さんらしい魅力に溢れていました。
【17上期ラノベ投票/9784041056776】

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)

 

 期待もない新学年のホームルーム。高校生・細野亮の前に愛してやまない物語の中にいた「トキコ」そのままの少女・柊時子が現れる出会うはずがなかった読者と主人公の物語。見れば見るほどそのままの時子との出会い。一緒に過ごしてゆくうちに想いが少しずつ積もってゆく一方で、自分の中で湧き上がってくる違和感。主人公の周辺を切り取ったようなクローズな世界観で、あまりにも不器用な二人の距離感にもどかしくもなりましたが、物語をきっかけに知り合った二人が物語で心を通わせて、これからの二人の世界の広がりを予感させる素敵な物語でした。
【17上期ラノベ投票/9784048926034】

豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい (ファンタジア文庫)

豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい (ファンタジア文庫)

 

 大人気アニメの嫌われ豚公爵に転生した主人公が、身分を秘した亡国の王女で今は自分の従者・シャーロットに告白するため、熟知するバットエンドを回避するべく奮闘する物語。才能に溢れて将来を嘱望された存在だったはずの豚公爵が、それを投げ捨ててしまった密かな理由。どこか悪徳令嬢ものっぽい雰囲気がある展開でしたが、落ちぶれていた豚公爵の決意とひたむきな想いは素直に応援したいと思えましたし、その評価を覆す奮闘ぶりはとても良かったですね。途中からやや物語に置いて行かれた感もあったメインヒロインでしたけど、今後の活躍に期待。3巻が8月に発売予定
【17上期ラノベ投票/9784040722283】

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

 

 かつての栄光を失い虚栄と退廃に堕ちた東ローマ帝国。国の危機を憂う生真面目な騎士ベリスが、型破りな書記官プロックスと運命的な出会いを果たす戦記ファンタジー。ブロックスとの邂逅によって窮地を脱し、次期皇帝と目されるユスティンの元で頭角を現してゆくベリス。シリアスな展開続きでも脇を固めるキャラたちがよく動いて、その力が高く評価されることになったベリスとブロックスが、一方で皇妃となったテオドラと相容れない確執もあったりで面白かったです。それがいろいろな形で影響しそうな複雑な関係も絡めた今後の展開に期待大ですね。
【17上期ラノベ投票/9784041056837】

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

 

 高校二年生の春、ひとり暮らしを始めるはずだった弓月恭嗣が、不動産屋の手違いでひとつ年下の帰国子女・佐伯貴理華と同居するはめになってしまう物語。無防備な距離感で接してきて家の中と外とでは印象が違う佐伯さんと、苦い過去を持つがゆえに家の外では一定の距離を置こうとささやかな抵抗を続ける弓月くん。表情豊かでキャラとしてもよく動いている佐伯さんとの同居生活が弓月くんを少しずつ変えていって、その変化がクールな弓月くんの元カノ宝龍さんや周囲の友人たちにもまた影響を及ぼしてゆく展開はとても良かったです。現在2巻まで刊行。
【17上期ラノベ投票/9784047344990】

リンドウにさよならを (ファミ通文庫)

リンドウにさよならを (ファミ通文庫)

 

 想いを寄せていた少女・襟仁遥人と共に屋上から落下し死んでしまったらしい神田幸久。二年後地縛霊として目覚めた彼はクラスでいじめに遭う穂積美咲に存在を気づかれ彼女と友達になる青春小説。自分の存在に気づいてくれた少女・美咲の優しい一面を知って現状を変えようとアドバイスをし、美咲が勇気を持って踏み出した一歩から少しずつつ変わってゆくその境遇。繊細な描写を積み重ねて作り上げられた伏線を回収してゆくことで意外な事実も明らかになっていって、爽やかで納得感のある結末まで組み上げたその構成力は今後に期待の作家さんですね。
【17上期ラノベ投票/9784047344969】

漂海のレクキール (ガガガ文庫)

漂海のレクキール (ガガガ文庫)

 

 万能の源エルが消失し陸地のほとんどが水没した世界。唯一の陸地リエスを治める聖王家を追われた少女サリューと、陸地を追われた人々の船団国家にも属さない船乗り・カーシュが出会う物語。サリューを救い依頼を手伝うことになった船長・カーシュたち。共に過ごすうちに絆が育まれ、彼女の抱える秘密を知ったことで彼らも巻き込まれてゆく王道展開でしたが、諦めずに船団国家相手の駆け引きで協力を引き出し、救出に向かう彼らの戦いはなかなか痛快でした。すっきりとした結末でしたけど、新天地に向かう旅の続編があるならまた読んでみたいですね。
【17上期ラノベ投票/9784094516807】

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

 

 人々が陸地のほとんどを失い、いくつかの巨大な船に都市国家を作ってわずかな資源を争う世界。船国を行き来して荷物を運ぶスワローの少年・シエルが、無人島に流れ着いた謎の少女・ステラと巡り合うボーイミーツガール。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせないシエル。理由を明かさないまま自分を荷物として運んで欲しいと依頼するステラ。その飛行は息苦しかった彼らにとって新鮮だけれど危険の連続でもあって、たびたび衝突しすれ違った彼らが力を合わせて乗り越えようと挑んだそのとても爽やかな結末は、次回作も期待したくなるものがありました。
【17上期ラノベ投票/9784063815788】

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

 

 ある朝、同級生の雨宮翼が列車へ飛び込み自殺を図るのに関与してしまった永瀬。その自殺が忘れられない彼が友人の深井から過去に戻れるカプセルを手渡され、やり直すために過去へ遡る物語。最初は彼女に関わらないと決意したはずなのに、逆に雨宮に関わる機会が増えてしまう永瀬。そんな彼に改めて突きつけられる「蝶は羽ばたかない」という事実。それでも当事者の変えようとする意志によって変わることもあって、多くの人にとってはさほど変わらない、けれど確実に変わったその結末に、一抹のほろ苦さを感じながらもどこか救われる思いがしました。
【17上期ラノベ投票/9784063815962】

 

以上です。上半期注目のオススメ新作ライト文芸編・一般文庫編は時間見つけて近いうちに更新しようと思いますのでしばしお待ち下さい。

2017年6月に読んだ新作おすすめ本

 今月のオススメ新作は23点。ラノベはあまり新作読んでないですけど、望月唯一さんの講談社ラノベ文庫「双子喫茶と悪魔の料理書」はなかなか良かったですね。ライト文芸では新潮文庫nexの「モノクロの君に恋をする」が個人的に新しい発見でした。メディアワークス文庫の「奈良町ひとり陰陽師」「僕らが明日に踏み出す方法」もなかなか良かったですし、講談社タイガ「緋紗子さんには、9つの秘密がある」も静かですけど素敵な友情の物語で、青春小説がいろいろ充実してきているのはいい傾向だなと感じるところです。

双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)

双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)

 

 幼馴染の葉月に告白できないまま、彼女やその双子の妹・水希と彼女たちの実家の喫茶店でバイトしている篝。ある日、水希が持ち出した古本から出てきた妖精キキに願いを勘違いされ、葉月ではなく水希の方と縁を結ばれてしまう物語。篝と水希が付き合っていると周囲に認識されている世界。最初は状況を解消しようと焦る篝でしたけど、水希が支えたからこそ乗り越えられた過去があって、弱音を吐けない彼女のために奔走する一面もあったりで、積み重ねによって少しずつ変化してゆく距離感や繊細な描写がとても良かったです。これは続巻も期待ですね。

君に謝りたくて俺は (講談社ラノベ文庫)
 

 高校入学した今井健人が、小学校の頃素直になれずにいじめてしまった苦い過去を持つ相手で記憶障害を持つ明日葉待夢にまさかの再会を果たす物語。いじめていた健人を覚えておらず、周囲から浮きがちな待夢を助けるうちに惹かれ合ってゆく二人。だからこそ過去を隠していることに苦悩する健人。ふとしたきっかけで気づいた過去には動揺もありましたけど、一方で彼女をたくさん救ってきた今があって、「過去は変えられないけど未来を変えられる」と待夢の記憶障害の原因を突き止め、二人で乗り越えようと奔走する姿が心に響くとても素敵な物語でした。

ありえない青と、終わらない春 (講談社ラノベ文庫)

ありえない青と、終わらない春 (講談社ラノベ文庫)

 

 選択しなかった運命を選択するために未来から戻ってきたという少女・前田きららと出会った石崎海。戸惑いながらも真っ直ぐな彼女に惹かれてゆく物語。令嬢としてすでに敷かれているレールを歩むだけのきららの人生。イケメンで優秀な婚約者の存在。一緒にいるうちに想いを自覚してゆく一方で、突きつけられる容易には叶わない現実。二人の想いに焦点を当てるシンプルな構図にしたことで、その分周囲の人物描写があっさりとしていた感はありましたが、逡巡を乗り越えて未来を一緒に切り開いた二人のこれからを応援したくなる爽やかな青春小説でした。

アカシックリコード (Novel 0)

アカシックリコード (Novel 0)

 

 本好きの高校生・片倉彰文が突如友人の甲斐浩太郎と共に小説投稿サイトの中へ召喚され、物語を救うため記憶ごと失われた大切な存在を取り戻すため戦うビブリオン現代ファンタジー。管理する物語が紙魚に蝕まれつつある「悪魔の書」。それを阻止するため創造者として悪魔と契約し、作中の人物や仲間とともに戦う中で失われていた記憶を取り戻す彰文。囚われた幼馴染を取り戻す決断は、すれ違ってしまった彼女と想いを再び通わせるための戦いでもあって、読みやすくとてもいい感じにまとまっていましたけど、他のエピソードも是非読んでみたいですね。

伯爵家の悪妻 (アイリスNEO)

伯爵家の悪妻 (アイリスNEO)

 

 強気な公爵令嬢ヘルミーナに持ちこまれた婚姻話の相手は、社交界一の遊び人と噂の伯爵家子息エーリヒ。勘違いから始まる迫力系美女妻と人誑しな夫の甘くない新婚生活。結婚にあたって無理難題を突きつけたら、喜々として受け入れるエーリヒ。徐々に明らかになってゆく誤解の真相に戸惑いを覚えるヘルミーナでしたけど、それでもついやり過ぎてしまうじゃじゃ馬の彼女みたいな存在は、エーリヒくらい出来た人じゃないと釣り合わないですね(苦笑)様々な周囲の妨害を乗り越えつつ、何だかんだでお似合いになってゆく二人の関係が素敵な物語でした。

 

奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)

奈良町ひとり陰陽師 (メディアワークス文庫)

 

 奈良町のくすば菓子店の息子・楠葉シノブは奈良ではもう最後の由緒正しい陰陽師。猫又の墨香や幼馴染のゆかりに見守られながら、周囲で起こる不思議を解きほぐしてゆくあやかしファンタジー。祭りの夜を待つ青衣の女人、ご機嫌ななめな女神、走る大黒様などなど、ご先祖様にも助けられつつ解決に導いてゆくシノブ。最後の陰陽師ではあっても、そんな彼を理解して助けてくれる猫又の墨香や幼馴染のゆかり、友人の道安もいたりで、そんな雰囲気がとても素敵な物語でした。ゆかりとの関係もとてもいい感じでしたけど彼らの物語をまた読んでみたいです。

僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)

僕らが明日に踏み出す方法 (メディアワークス文庫)

 

 一週間後にピアノコンクールを控えた少年・中瀬と、告白の返事を待たせている少女・山田。ある日、同じ一日をループしていることに気づいた二人が、運命の出会いを果たす物語。納得したら次の日に進めていたのに、出会ったことで二人が納得する条件に変わったループ。適当な言動が多いように見えた山田の悩める心情と、堅物に思えた中瀬のコンクールに賭ける想い。困難に直面する自分のために奔走する相手への想いが少しずつ変わっていって、忘れていた過去も繋がって、乗り越えた二人が紆余曲折の末に迎えた結末はとても素敵なものに思えました。

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

 

 浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳が、加入した奇人変人揃いの漫画サークルで運命的な出会いを果たした新入生・天原と再会する青春小説。将来もマンガに関わっていきたいと考える卓巳が出会った漫画家を目指す訳ありな先輩たち。彼らが作り出す濃い空間にどんどん溶け込んでゆく天原と卓巳。触発されてマンガを書き始めたり天原と二人で出かけたり、いい雰囲気になりかけたのに全てがぶち壊される急展開にはぐいぐい読ませるものがあって、追いかけたはずなのになぜか追い込まれた卓巳が本音をぶちまける熱い展開はとても面白かったです。

100回泣いても変わらないので恋することにした。 (新潮文庫nex)
 

 孤独な人間にしか見えないミニサイズな明治時代の名士・伝之丞に取り憑かれた地方の新人学芸員・手島沙良が、彼とともに身近に起きる騒動を解決してゆく物語。伝之丞と出会ってから生き別れていた母親との再会やイケメンとの運命の出会い、友人と職場の同僚の恋愛や河童の復活、殺人事件で探偵役を任されたりと、次々と騒動に巻き込まれてゆく沙良。地道に頑張っているわりには報われず、自分の気持ちにもなかなか素直になれなかった沙良でしたけど、遠回りしながらもたどり着いた結末が、彼女の幸せな未来に繋がっていると信じたくなる物語でした。

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

 

 自分の目の前で幼馴染・歩巳が暴漢に襲われ姿を消した事件をきっかけに、棋士を諦めたかつての天才少年棋士・香丞。高校で美貌の女流棋士として再会した彼女が再び何者かに襲われ、その事件の真相を追う将棋ミステリ。コンピューター将棋が棋士に勝つのが当たり前になった近未来が舞台。謎解きのアプローチにいくつか後出し設定もあったのは少し気になりましたが、棋士を目指すもう一人の幼馴染・桂花も交えた三角関係の機微や、コンピューター将棋の考察も絡めながらたどり着いた結末の意味にはなるほどと納得してしまいました。面白かったです。

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

 

 父の死により莫大な遺産を相続した女子高生の一華。遺産を狙って親族たちが彼女を事故に見せかけ殺害しようとするのに対抗して、一華が唯一信頼する使用人の橋田がある探偵を雇う物語。遺産目当てとは言えここまで露骨に命を狙いに来る親族たちも相当アレですが、それ以上に事件が起こる前にトリックを看破して犯罪を止めて「トリック返し」までしてしまう究極の探偵とか新しいですね(苦笑)依頼人にそれと気づかれぬまま、邂逅する前に探偵がいろいろ動いて終わっていた上巻でしたけど、下巻ではどう驚かせてくれるのかこれは期待が高まりますね。

緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)

緋紗子さんには、9つの秘密がある (講談社タイガ)

 

 自分を出せない性格に悩む学級委員長・由宇と「誰も仲良くしないでください」と衝撃的な挨拶をした転校生・緋紗子さんの出会い。偶然、緋紗子さんの身体の重大な秘密を知ったことで二人の関係が変わってゆく青春小説。学級委員長を押し付けられ両親が離婚の危機、幼馴染への恋心も封印していた由宇。秘密を抱えるがゆえに孤高を貫いていた緋紗子さんとの不器用な交流は微笑ましくて、だからこそままならないすれ違いがもどかしくもなりましたが、二人の出会いと育んだ友情がそれぞれにもたらした確実な変化の兆しは、とても素敵なものに思えました。

春や春 (光文社文庫)

春や春 (光文社文庫)

 

 俳句雑誌で昔知っていた男の子の名前を発見し、俳句の価値を主張して国語教師と対立した茜。友人の東子にそんな顛末を話すうち俳句甲子園出場を目指すことになってゆく青春小説。個性的な初心者の新入生三人も加えつつ立ち上げた俳句同好会。顧問などの協力を得ながら俳句の基本に取り組んだり、抽象的な俳句を数値化する俳句甲子園の独特なルールに向き合ったり気になる人間関係も織り交ぜつつ、豊かな言葉を駆使しながらチームとして戦う展開はなかなか新鮮でした。有望な新入生も入学するということは続巻出るということですよね?期待してます。

僕は小説が書けない (角川文庫)

僕は小説が書けない (角川文庫)

 

 不幸体質や家族関係に悩む高校1年生の光太郎。先輩・七瀬の強引な勧誘で廃部寸前の文芸部に入部した彼が、部の存続をかけて部誌に小説を書くことになる青春小説。物語を書けなくなっていた光太郎が出会った七瀬先輩の容赦ない批評。プレッシャーが掛かる部誌作成という状況で、振り回すOBふたりの存在と自覚してゆく七瀬先輩への想い。知りたくもない現実を突きつけられてきた光太郎が、それでも苦悩を乗り越えてきちんと向き合ったからこそ見えた光明があって、相変わらず不器用な彼のこれからを予感させるエピローグがとても素敵な物語でした。

弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま (角川文庫)
 

 恋人に二股をかけられ傷心状態のまま北海道・札幌市へ転勤したOL千春。仕事帰りの彼女が路地裏にひっそり佇む『くま弁』を発見し、「魔法のお弁当」の作り手・ユウと出会う物語。悩みを抱えた一人のお客様のためだけに作るユウの裏メニュー。それによって救われてゆく常連客たち。北海道ならではの食材やお客さんの思い出のメニューに寄り添うユウが作り出すひとつだけのお弁当がとても美味しそうで、ユウ自身もまた自らのありようを見定めてゆく暖かな気持ちになれる物語でした。千春とユウの距離感も変化の兆しがあって続刊に期待したいですね。

知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)

知らない記憶を聴かせてあげる。 (角川文庫)

 

 勤務先で先輩の失敗を押しつけられて辞め、叔父が住んでた家に籠もっていた陽向。彼の元に届けられた叔父のテープを原稿起こししてもらうため、音谷反訳事務所の久呼と出会うお仕事小説。訳ありで個人宛てテープは起こさない信条の久呼に反訳のやり方を教えてもらううちに、テープの真意や反訳の奥深さを知って彼女に師事しその仕事を手伝うようになってゆく陽向。意気込みが空回りすることもありましたけど、自身も抱えているものがある久呼とは足りないところをお互い補い合えるいいコンビになりつつあって、続巻あるならまた読んでみたいです。

白球ガールズ (角川文庫)

白球ガールズ (角川文庫)

 

 甲子園を夢見て努力してきたのに女子は出られないことを知らされた青山由佳。硬式への思いが断ち切れなかった彼女が女子硬式野球部のある花ヶ丘学園高校へ転校し、チームづくりに奔走する青春小説。早々に理事長代理と対立し「春の一勝」が部の存続条件となってしまった、ゼロから立ち上げるチームづくり。幼馴染でライバルだった石田との再会。もう少し掘り下げられそうなエピソードはもったいないなとも感じましたが、一方でそれはまさに野球に賭ける由佳の視点でもあって、これまでの積み重ねが繋がってゆく結末はなかなか悪くない読後感でした。

サブマリンによろしく (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

サブマリンによろしく (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 28年前に八百長疑惑で自殺した伝説のサブマリン投手K・M。行方不明だった1500奪三振の記念ボールが発見されたのをきっかけに再評価する動きが起き、野球嫌いの駆け出しの作家が謎に迫っていくミステリ。誤審、乱闘、転向、落球、そして八百長疑惑…彼にまつわるエピソードの謎を追うために取材した関係者を通じて浮き彫りになってゆくK・Mの人柄と明らかになってゆく真実。文章が若干冗長で誰が誰なのかがイマイチ分かりづらい点もあって読むのに難儀しましたが、悪くない結末が積み重ねられてゆくその読後感は悪くなかったと思いました。

リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 保険調査会社の江崎に回ってくる不審死。そんな彼の意中の人でiPS細胞研究者・友永久理子が、容疑者の思考に寄り添うことで事件を解決するリケジョ探偵ミステリ。研究最優先でそれ以外は後回しの熱血科学者・久理子。そんな彼女のスタンスに理解を示しつつ、行き詰まる調査の真相解決に協力してもらう江崎。理系らしい知識を活かして解決していく展開は、連作短編という形式もあってテンポが良くて読みやすかったです。二人の関係が転機を迎えて急展開しましたけど、こういうきっかけでもないと進まないとも思えたので結果オーライですね(苦笑)

屋上のウインドノーツ (文春文庫)

屋上のウインドノーツ (文春文庫)

 

 中学まで人生に何も期待せずに生きてきた志音。そんな彼女が屋上で吹奏楽部部長・大志と出会い、人と共に演奏する喜びを知ってゆく青春小説。人気者の幼馴染から逃げるように別の高校を受験した志音が屋上で出会った先輩とドラム。そして不器用な志音を見守ってくれる仲間たち。登場人物たちそれぞれが立場は違えど抱えている葛藤があって、頑張ったからといって必ずしも目指しているものに手が届くわけではないあたりがわりとほろ苦かったりもしますが、それを踏み越えてチャレンジしたり、関係を再構築してゆく姿はとても素敵なものに思えました。

嘘が見える僕は、素直な君に恋をした (双葉文庫)

嘘が見える僕は、素直な君に恋をした (双葉文庫)

 

 好きになった人の嘘が分かってしまう高校生の藤倉聖。幼い頃から大切に想う人たちの嘘に苦しめられ、距離を置くようになっていた聖が明るく素直な転校生・二葉晴夏と出会う青春小説。誰かを好きになることを渇望しつつも臆病になっていた聖。捨て猫をきっかけに知り合い、お互いの飼い猫を話題に距離を縮めてゆく晴夏。すれ違いを乗り越えてお互いが大切な存在だと自覚するがゆえの嘘がとても切なくて、どうにもならないもどかしさも感じてしまいましたが、明示されなかった結末にかけがえのない時間を共有した二人のその後を想像したくなりました。

プラットホームの彼女 (光文社文庫)

プラットホームの彼女 (光文社文庫)

 

 転校前に親友と喧嘩してしまった少年、地味な高校生の意外な一面に心穏やかでいられない少女、事故で娘を失った傷心の母親など、様々な想いを抱える人が駅で出会う一人の少女の連作短編集。逡巡して踏み出せない決心や消化しきれない悔恨を抱える人たちの前に現れ、その背中を押したりわだかまりを解消するきっかけを与えて大切なことを思い出させてくれる少女。物語を重ねてゆくうちにその素性や背景も徐々に明らかになっていって、途中で想像していたものとは少し異なるやや意外な結末を迎えましたけど、切ないながらも心温まる素敵な物語でした。

青の王

青の王

 

 王が魔族を使役して国を護る砂漠に咲く水の都ナルマーン。泥棒の疑いをかけられた少年ハルーンが、命からがら辿り着いた塔で閉じ込められていた名前も知らない少女と出会うファンタジー。ファラと名付けた少女を助け出したことから始まる助けてくれたアバンザたちを交えての逃避行。そこで明らかになってゆく青の王とナルマーンの因縁とファラの生い立ち。あるべき形を取り戻すまでが描かれていましたが、とても読みやすく1冊で終わってしまうのがもったいないくらいの世界観で面白かったです。赤の王やほかの王たちの物語も読んでみたいですね。