今回は5月電撃文庫・TOブックス単行本の新刊感想まとめです。内訳は電撃文庫の新作が4点、シリーズ続巻が5点、TOブックス単行本のシリーズ続巻1点の計10点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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バケモノのきみに告ぐ、 (電撃文庫)
【第30回電撃小説大賞<銀賞>受賞作】
治安悪化や公的施設破壊の嫌疑により拘束された少年ノーマン。彼を友人と呼ぶ研究員ジムに尋問されて、異能者アンロウである4人の少女と立ち向かった事件の想い出を語ってゆく物語。感情を力に換える異能者アンロウと共に事件に挑んだノーマンの口から語られてゆく、<涙花>のシズクと挑んだ女社長の殺人事件、<魔犬>のエルティールと挑んだ連続惨殺事件、<宝石>のロンズデーと挑んだ街を賑わせた怪盗事件、<妖精>クラレスと挑んだ最新式直通特急のトレインジャック事件。語り合ううちに一連の事件と背景が繋がる展開で、彼女たちのエピソードをもう少しじっくり掘り下げても良かったような気もしましたが、大切なものを守るためにはためらわないノーマンと彼女たちの物語をまた読んでみたいと思いました。
他校の氷姫を助けたら、お友達から始める事になりました (電撃文庫)
他校の氷姫を助けたら、お友達から始める事になりました(1)
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皐月 陽龍/みすみ KADOKAWA 2024年05月10日
いつも同じ電車に乗っている他校の美少女で、他人を寄せ付けない氷姫こと東雲凪。そんな彼女が痴漢から救ってくれた海以蒼太に徐々に懐いていく青春ラブコメ。電車に乗る時に傍にいて欲しいというお願いを断れず、一緒に電車に乗るようになって徐々に交流が増えていく2人。想いを試された軽いジャブで想いを自覚した彼女が、カウンターで渾身の右ストレートをぶちかましてみせたり、海以に素直に甘えるようになっていくその変貌っぷりは圧巻で、だからこそそこからの思ってもみなかった急転直下の展開にはハラハラさせられましたけど、それでも彼女を幸せにするために最後まで諦めずにぶつかって、懸命に向き合って大切なものを取り戻してみせたその結末はなかなか良かったですね。
孤独な深窓の令嬢はギャルの夢を見るか (電撃文庫)
とある事件からクラスで浮いていた高校生・赤沢公親。そんな彼がある夜、ばっちりキメているギャル姿のクラスメイト野添瑞希とコンビニで遭遇する青春小説。幼馴染のVTuber配信に出たら超神回で人生変わった (電撃文庫)普段の深窓の令嬢然とした、周囲が求めている姿とは違うことを気にする瑞希を、公親が気にせず肯定してくれたことから始まった2人の秘密な関係。コンビニで瑞希と過ごす穏やかなひと時が、お互い掛け替えのないものになっていくからこそ、彼への誤解を何とかしたいと思うようになってゆく瑞希。過去の事件から彼を意識していてわりとぐいぐい来る瑞希に対して、向けられる想いにどこか鈍い公親という構図でしたけど、瑞希だけでなく公親もまた彼女がいるからこそ少しずつ変わろうとしてゆくその結末はなかなか良かったですね。
幼馴染のVTuber配信に出たら超神回で人生変わった (電撃文庫)
幼馴染のVTuber配信に出たら超神回で人生変わった(1)
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道野 クローバー/たぴおか KADOKAWA 2024年05月10日
大学にも進学せずフリーターを続けていた宮坂類。ひょんなことから、疎遠になっていた幼馴染の彩花に誘われ、彼女がVTuberとして活動する配信に出演したことで人生が変わってゆくVTuber小説。よくわからないまま彩花と一緒にした配信が超神回認定で大バズリしてしまい、成り行きでスカウトされて自身もVTuberデビューを果たした類。早速彩花に加えて同期のリリィやFPSが得意な来夢、安藤&もちの教師学生コンビやカレン・ロビンのオーフェン組など、個性的な配信者たちとのコラボ配信も好評でにわかに注目を集めていく様子に困惑する姿には思わず笑いましたが、そこに自分のことを認めてくれるかけがえのない居場所を見出してゆく一方で、配信をきっかけに再び交流が始まった彩花との変わってゆく関係もなかなか良かったですね。
組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い2 (電撃文庫)
かつて敵対する異能力者の組織に属し、反目し合う目的のために抗争を繰り広げていた《羽根狩り》犀川狼士と《白魔》柳良律花。イチャ甘夫婦の青春と初恋の記憶に迫る第2弾。組織も解散してお互い大学生になった宿敵同士が、まさかの合コン相手として前の席に座っている現実。最初は宿敵同士いがみ合い喧嘩もして、どちらがが強いかの幼稚なマウンティングバトルを始めてしまう、でも結局息ぴったりで居心地も良くて、いろいろあっても一緒にいたくなる似た者同士な2人。彼女と共にあり続けるために、突きつけられたハードルがどんなに高くても、諦めずにぶつかって振り向かせた狼士の覚悟がとても素敵でしたし、いろいろあっても年月を経ても変わらない、大学時代の友人たちの絆もなかなか良かったです。
放課後、ファミレスで、クラスのあの子と。2 (電撃文庫)
放課後にファミレスで、他愛もない話をする《ファミレス同盟》を結んだ紅太と加瀬宮小白。一緒に遊ぶ予定を立て楽しみなはずの夏休みが、予定外の小白の家出と共に始まる第2弾。母親と衝突して衝動的に家出した小白を受け止めて、自らも家を出て一緒に2人きりの逃避行を始めた紅太。海に温泉にファミレスと、夏を予定通り楽しい思い出で埋めたい2人の前に現れた、小白の姉でシンガーソングライターの黒音。容赦なく現実を突きつける一方で、妹を溺愛する一面を見せる黒音の複雑な想いが描かれる中、紅太に支えられながら姉や母親と向き合った小白は今回頑張っていたと思いましたけど、だからこそ今度は紅太が家族にしっかりと向き合えるのか、義妹もいろいろ溜め込んでそうなだけに今後の展開が気になるところです。
凡人転生の努力無双2 (電撃文庫)
凡人転生の努力無双2 〜赤ちゃんの頃から努力してたらいつのまにか日本の未来を背負ってました〜
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シクラメン/夕薙 KADOKAWA 2024年05月10日
何百もの祓魔師を葬ってきた強大な魔をわずか五歳にして祓ったイツキ。ついに迎えた小学校の入学式でイギリスからやって来た勝ち気な少女ニーナと出会う第2弾。母親から魔法を教えてもらえないニーナと魔法を教えあう約束を交わして、彼女から独自の進化を遂げた英国式の妖精魔法を学ぶイツキ。新ヒロイン・ニーナとの関係も構築していきながら2人が学校で強力なモンスターと遭遇する展開で、知能も高い相手との駆け引きはなかなか難しい戦いでしたけど、今回学んだ遺宝や妖精魔法を駆使して新しい戦い方も見出したり、成長し続けるだけでなくそのあり方が周囲にも少なからず影響を与えるようになってきたイツキのこれからが楽しみです。別の小学校に行った幼馴染アヤの再登場にも期待しています。
ほうかごがかり3 (電撃文庫)
大事な仲間を立て続けに失い、悲しみと絶望感に覆われたほうかごがかり。啓が示した明確な意思をきっかけに、太郎さんは隠された事実を明らかにする 第3弾。太郎さんによって明かされる七人目のかかりの存在。前年からかかりでありながらも、ずっと役割を逃れている人物と出会うことで明かされる回避方法と、啓に引き継がれる惺の想い。自分が死を軽く考えていたことに気付かされ、かかりを終わらせるために覚悟を決めた啓が直面する厳しい展開があって、絶望的な状況に追い込まれていく中で最後に救った意外な存在がまた効いていましたし、様々な出来事を経験した彼が次世代をサポートする存在になっていくその姿がなかなか印象的でした。
ツンデレ魔女を殺せ、と女神は言った。3 (電撃文庫)
『聖法競技会』での女神の策略により地下牢獄に囚われてしまったステラ。死刑必至の魔女裁判が迫るなか、彼らの前に《救世女》と呼ばれるどこか見覚えのある少女が現れる第3弾。1巻時点からその存在が語られていて、ここに来て登場したオタクの幼稚園以来の幼馴染・華具夜満月。女神に召喚されて『神の力』を纏った彼女が、竹刀を片手にステラに引導を渡す救世女役を担う構図は、性格の悪さがにじみ出ている女神の悪辣っぷりもここに極まれりという感じでしたけど、オタクにとって元祖ツンデレ幼馴染とも言うべき相手だからこそ、彼女をよく知るオタクがステラにヤキモチを焼かされながら満月の心を揺さぶって、仲間たちの助けも得ながら活路を見出していく展開はなかなか良かったですね。
日向雪/鳴鹿 TOブックス 2024年05月10日頃
無事にエース家の侍女になり、心機一転主人を守れる格好いい戦闘メイドを目指す元聖女のロレッタ。しかしなぜか主人のルーシュ&王太子シリルと共に魔法省官吏に扮して、とある孤児院を訪ねることになる第2弾。気がつくと相変わらず様々な妄想を繰り広げているロゼッタと、呆れがちなルーシュ&微笑ましく見守るシリルのやりとりには苦笑いでしたけど、彼女の知らぬ間に、紅の魔術師のルーシュ&王太子シリルの手によって着々と進められる聖女等級審査の不正を暴く下準備。そして裁きの鐘が鳴り響く時、ついに真実が次々と白日の下に晒されてゆく展開で、第一聖女たちは自業自得でしたけど、大きな波乱を投げかけた事件の余波は想像以上に大きくて、ロレッタがこれからどうなってしまうのか今後が気になるところですね…。