毎年恒例の「このライトノベルがすごい」、今年も9月5日から投票開始しますが、それに向けて例年通り投票対象期間中に発表された新作ライトノベルのうち、自分が読んでオススメしたいと思った作品を紹介することにしました。
企画としては「青春小説編」と「ファンタジー編」「新文芸編」の３つにざっくりと分けて各30作品紹介予定です。今回はその「新文芸編」です。投票や新規開拓の参考になれば幸いです。
青春小説編/ファンタジー編はこちら↓
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
1.死霊魔術の容疑者 (GCノベルズ)
人買いに育てられた今となっては希少の民アスラの少女ルナが、大金を払って買った死霊魔術師カーンと共に過ごすようになっていくファンタジック・サスペンス。カーンの弟子となって魔術を習い修練を積み重ねる日々を送り、ある村の怪しげな屋敷に出入りするルナに声を掛けた、謎の死霊魔術師の行方を追う王国の騎士・コンラート。一方で彼女がラトやルシアナと出会い、外の世界を知ることで少しずつ変わってゆく中で起きた不器用なすれ違いからの悲劇。もう少し語り合うことがあれば、あるいはまた違う展開もあったのか…と思わずにはいられませんでしたが、そうするしかないと決意しても、それでも交わした約束を最後まで違えなかった二人の再会が鮮烈な印象に残る物語になっていました。
2.オルクセン王国史～野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか～ (サーガフォレスト)
故国を追われたダークエルフ氏族長ディネルースがオークの王グスタフに救われて、連合国家オルクセンで生きることを決意する異世界戦記。見た目とは裏腹に優しい性格で、エルフたちの国エルフィンドで迫害されていたダークエルフを種族ごと自国に引き入れ、オーク族を筆頭に多数の魔種族を擁する連合国家オルクセンで生きる場所を与えたグスタフ。彼女たちが目の当たりにする首都の反映っぷりや、技術的に進んだ農業や武具、鉄道や軍隊、兵站を突き詰めていくオルクセンのあり方はあまりにも異質で、それらを発案して展開し、長い年月をかけて定着させるところまで成し遂げたグスタフの存在感は際立っていましたけど、その理由も明らかにされた今後の展開が楽しみです。
3.魔法使いの引っ越し屋 (カドカワBOOKS)
坂石 遊作/いちかわ はる KADOKAWA 2023年12月08日頃
王国一の天才と謳われる魔法使いで、王都の片隅で小さな引っ越し屋を営む少女ソフィ。どんな荷物も難なく運ぶ彼女のもとに、特別な客からの依頼が次々と舞い込んでくる出会いと別れのファンタジー。こっそり隠居したいという老いた勇者。桜仙郷から引っ越そうとする神獣と、彼に育てられた少年アルの存在。そして老朽化した図書館からの引っ越しと、勇者からの再度依頼があった理由。困難な引っ越しを可能にする彼女の卓越した魔法使いとしての力だけでなく、彼女を育ててくれた人たちからしっかりと受け継いだ依頼主の思いを汲み取り、その憂いを何とか解決しようとする真摯な姿勢があって、ライバル視しながらも彼女を気にかける友人フランの存在もいい感じに効いていました。
4.輪転式ステレオプティコン - jailed in 2002 -
枯野 瑛/パルプピロシ KADOKAWA 2024年06月28日頃
地球人と異星人の間に発生したトラブルを解決する調停者・畦倉拓夢が、銀髪の来訪者メリノエと共に事件を解決する近未来バディアクション。2002年6月5日、東京と呼ばれていた都市の一部分が消滅した、因縁の地を調査することになった拓夢たち。あの時から止まったままの世界でループを繰り返す船室、そこで期せずして再会する拓夢がずっと忘れることがなかった夜空先輩、そして現地で協力してくれた同業者・柊豪十郎の存在。2002年6月5日、東京と呼ばれていた都市の一部分が消滅した、因縁の地を調査することになった拓夢たち。あの時から止まったままの世界でループを繰り返す船室、そこで期せずして再会する拓夢がずっと忘れることがなかった夜空先輩、そして現地で拓夢に協力してくれる同業者・柊豪十郎の存在。この現象を調べていくうちに、この状況を解決することの意味に気づいてしまう拓夢と、それを見守るメリノエの関係もなかなか印象的でしたけど、覚悟を決めたこの決着の先に何が待っているのか、この物語の続きが早く読みたいですね。
5.引きこもりVTuberは伝えたい (電撃の新文芸)
めぐすり/popman3580 KADOKAWA 2023年12月15日頃
引きこもりの少女・結家詠が、世界に叛逆を目論む暴走型駄メイドロボ真宵アリスとしてVTuberデビューし、下剋上を目指すVTuber小説。従姉でママでもあるねこ姉のツテでVTuber事務所と契約して、企業勢としてのデビュー配信から計算し尽くされた話芸で視聴者を魅了して鮮烈なデビューを果たしたアリス。その後も身内も上手くネタとして使いながら、テンポの良いトークで多彩な持ちネタを披露する予想の斜め上の連続に目を離せなくて、何より笑えない過去エピなのに、迫真の再生力で視聴者の感情を揺さぶって虜にしてみせた収益化記念生配信は圧巻でした。周囲も巻き込みながら旋風を巻き起こす彼女が、これから何をしでかしてくれるのか。今後の展開には期待感しかありません。
事情により急ぎまとまった金銭が必要になった、ある種の神秘を継承する家系に生まれた高校生・芦屋珠雄。道端で出会った謎の男の口車に乗せられ、うっかり高額の報酬と引き換えに謎の装置の処置を受けてしまう物語。意識の連続性を遮断する実験台にされ、肉体と人格と記憶を引き継いだ別の存在スワンプマンになってしまった沼雄(暫定)。装置の行方を追う少女・七尾と出会い真相を追う展開で、果たして自分は何者なのか、それを知らされた周囲はどう受け止めればいいのか、公的にスワンプマンはどう扱われるのか。両親も死別して数少ない知己である幼馴染たちの何とも複雑な反応や、同様にスワンプマンとされた人たちのあり方、権力や人の冷酷な一面も突きつけられて、そうでない可能性も残しながら自らの道を模索せざるをえなくなってゆくその姿が何とも鮮烈な印象を残す物語になっていました。
7.図書館の天才少女 ~本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!~ (カドカワBOOKS)
蒼井 美紗/緋原ヨウ KADOKAWA 2024年04月10日頃
本が大好きでひたすら本を読みふけり、ついに街中の本を全て読み尽くしてしまったマルティナ。まだ見ぬ王宮図書館の本を求めて官吏を目指すファンタジー。読んだ本の内容を一言一句忘れない記憶力を持ち、高難易度の試験を平民としては数年ぶりにしかも満点で突破したマルティナ。政務部に配属された彼女が特殊な記憶力を存分に発揮して、魔物の不自然に発生する問題の解決に関わっていく展開で、未知の本についワクワクする姿は微笑ましかったですが、様々な人と出会って最初はその能力に疑いを持たれても、それを具体的な問題解決に至るアプローチに繋げて信頼を勝ち得ていった彼女の姿が印象的で、これから仲間たちとどんな活躍を見せてくれるのか、今後の展開がとても楽しみです。
女性に発現しやすい異能力・天稟の発現により、女性優位となった男女逆転世界。男ながら天稟を持ち悪の組織【救世の契り】に属する大学生イブキが、正義の組織【循守の白天秤】に属するヒナタを密かに推すシークレット・イルミナティ。大好きな漫画の推しの幼馴染の兄で、対立組織のキャラになぜか転生してしまったイブキ。ヒナタを溺愛する相棒ルイにその正体がバレても、敵対する天真爛漫な彼女のために奔走するイブキに最初は戸惑い、彼に近い幼馴染クシナの存在を知りながら、ついには感極まって彼と秘密を共有してしまうヒナタもどこか振り切れちゃいましたかね（苦笑）発現した天稟によってそれぞれに違う天稟の代償も上手く絡めながら、複雑でカオスな関係がどこに向かうのか、今後の展開には期待感しかありません。
9.ふつおたはいりません! ~崖っぷち声優、ラジオで人生リスタート!~ (電撃の新文芸)
結城 十維/U35 KADOKAWA 2023年09月15日頃
現在レギュラーなしで通帳残高わずか、コンビニバイトが中心の崖っぷちアラサー声優・吉岡奏絵。そんな彼女が売れっ子生意気女子高校生声優・佐久間稀莉とラジオ番組を始める物語。デビュー当時は主役を演じたことがあるものの、すっかりオワコン声優と化していた奏絵に降って湧いた最後のチャンス。しかしやる気が感じられない稀莉に、何とかラジオを面白くしようと「よしおかん」となって果敢に彼女にチャレンジしていく展開で、調子が出てきた稀莉との軽妙なやりとりが面白くて、稀莉の秘めた想いもだんだん垣間見えてきて、楽しいからこそつい感極ちゃっただろうな…という衝撃のラストでしたけど、ここからどう盛り返すのか続刊に期待。
10.悪の令嬢と十二の瞳 ～最強従者たちと伝説の悪女、人生二度目の華麗なる無双録～ (オーバーラップノベルス)
駄犬/saino オーバーラップ 2024年07月25日頃
王太子から婚約破棄されて、服毒刑にて人生を終えた公爵令嬢セリーナ。何故か巻き戻り人生二度目の倫理観ぶっ飛びヒロインのやり直しファンタジー。前回の敗因は有能な部下がいなかったことだと反省したセリーナが、拠り所のない6人の癖のある孤児を引き取り、過酷な訓練を課して暗殺者に育て上げたり、恋敵となる聖女の手柄を奪って芽を摘むべく先手を打つものの、もたらされる彼女が思っていたのと何か微妙に違う結果がまた微笑ましかったですね。巻き戻りの真相とそこから結末に至るまでの一連の流れも、積み重ねてきたエピソードや伏線を巧みに使っていて上手かったですけど、何よりやり直したことによってもたらされた、もう一つの皮肉な結末がじわじわと効いていました。
11.やがて英雄になる最強主人公に転生したけど、僕には荷が重かったようです (ドラゴンノベルス)
坂石 遊作/輝竜 司 KADOKAWA 2024年03月05日頃
王道RPGの主人公ルークに転生したとあるゲームオタク。才能に恵まれ予習も完璧のはずなのに、必ずしも原作通りにはいかない英雄になる使命を負った少年の偽りの英雄譚。チュートリアルでいきなり幼馴染の本命ヒロインを守りきれない絶望を突きつけられたルークが、精霊のサラマンダーに見守られながら、本来の自分を隠して取り憑かれたように強くなろうとあがいて、ルークの冒険をなぞる過程で概ね原作通りに進行するものの、時折直面するいくつものイレギュラー。英雄たらんとするルークを演じ、過酷な努力により卓越した実力を身につけてゆく中で、実際に周囲からも英雄として期待されるようになっていくものの、一方で本来の彼の実像と乖離してゆくその孤独な戦いの行方が気になるところではあります…。
12.あなたの未来を許さない 上・下 (PASH!ブックス)
運動も勉強も人間関係も底辺で、幼馴染の長野恵梨香を心の支えに生きる女子高生・御堂小夜子。ある晩、二十七世紀からやってきた未来人キョウカに、大学教材として殺し合いの対戦者に選ばれたことを知らされるデスゲーム。深夜に突然監督者のキョウカと出会い、ろくな情報や対戦者に与えられるはずの特殊能力もないまま、殺し合いに放り込まれる小夜子。緒戦を切り抜けてからは、何とか戦わずに生き延びる道がないかを模索していたものの、唯一無二の存在もまたバカげたデスゲームに巻き込まれていると知ってしまい、優しい彼女を救うために、自分が対戦者を殺す覚悟を決める小夜子。ゲームに少なからず影響を及ぼしているキョウカ側の厳しい事情も明らかにされてゆく中、果たしてどんな結末が待っているのか、続きが気になる上巻でした。
運動も勉強も人間関係も優秀な女子高生、長野恵梨香。いつも一緒にいてくれて、助けてもらっていた幼馴染の御堂小夜子のために、ある夜を境に彼女を助ける覚悟を決める下巻。大切な幼馴染を救うため、迷わず対戦者を倒すようになってゆく小夜子。一方、彼女が無事生き延びてほしいと願っていた、引き分け続けていた優しい幼馴染が対戦者に初勝利した意味。キョウカを嫌い、ゲームを都合のいいように改竄する監督者ヴァイオレットたちの対戦者たちを退けながら、日常で遠慮しなくなった恵梨香と積み重ねるかけがえのない日々。それぞれが生き延びてついに邂逅してしまった二人の結末は切なくて、壮絶な落とし前もしっかりつけましたけど、相棒と共に最期まで生き抜いてみせたその姿が印象的な物語でした。
13.眠れる森の悪魔 1 転生少女×倫理欠落天才一族 (オーバーラップノベルスエフ)
王太子に婚約破棄され破滅する未来を夢で見る赤ちゃん奴隷シェリエル。前世を思い出した彼女が、「悪魔」と呼ばれる一族・ベリアルド侯爵家に引き取られるやり直しファンタジー。類稀な才能をもつ一方、共感力や罪悪感が欠落しており「悪魔」と呼ばれる一族相手に、未来の夢と前世の記憶を駆使して、少しずつ彼らとの距離を縮めていって家族関係の構築に試行錯誤するシェリエル。すっかり妹を溺愛するようになっていった兄ディディエとの関係や猫だと思っていたノアのことなど、今回は彼女を取り巻く周辺事情を掘り下げていった印象でしたけど、家族たちにすっかり愛される存在になっていった彼女が、夢でも実際の初対面でも印象が最悪だった王太子との婚約話を全力で断りにいく姿には思わず笑ってしまいました（苦笑）
14.滅亡国家のやり直し 今日から始める軍師生活1 (SQEXノベル)
ひろしたよだか/森沢晴行 スクウェア・エニックス 2024年04月06日頃
巨万の富と最高峰の武力を持ちながら滅んだ国ルデク。奇跡的に生き延びたものの失意の中で年を重ねていたロアが、祖国が滅びる2年前に戻り、歴史を変えるために立ち上がる戦記ファンタジー。祖国滅亡を阻止して仲間たちを守るため、自身の記憶と未来で得た経験を武器に軍師となって滅びの運命に立ち向かうロア。彼が同僚に話していたことが気になった第10騎士団の副団長レイズに見出されて、隣国が裏で糸を引いていた山賊討伐の真意を見抜き、壊滅するはずだった第6騎士団の窮地を救い、漂流していた南大陸の王女を歓待してその知遇を得る展開で、未来での放浪生活で得た知識と経験を活かしながら、効果的な手を打って実績を積み上げていくロアが、これからルデクの命運を変えていけるのか今後がとても楽しみな新シリーズですね。
15.骨骸の剣聖が死を遂げる ~呪われ聖者の学院無双~ (DREノベルス)
魔女の呪いにより不死者となってしまった聖騎士の青年アル。三百年後、その魔女の末裔の少女アストランティアと出会った彼が、全ての呪いを殲滅すべく彼女の騎士になることを誓う学院無双ファンタジー。十二の封印指定都市にいる形骸種を倒すため、アストランティアと一緒に聖者を育成する学院の入学試験でその実力を示したアル。学院内には様々な聖者コンビがいて、貴族と庶民の不和やアストランティアと姉の確執といった様々な因縁や、十二形骸について、現在に至るまでの背景も丁寧に描かれていて、女性や弱者には優しく、実力を周囲にも認められてゆくアルたちが、果たして目指す十二形骸討伐を果たせるのか。アルを慕うヒロインも増えてゆく中で気になる二人の関係も含めて、これからますます面白くなりそうです。
16.死ぬに死ねない中年狙撃魔術師 (ドラゴンノベルス)
かつて恋人を失い絶望していた凄腕の狙撃魔術師が、突如現れた異形の生命体ヤァータと取引し、一撃必殺の射撃スキルで強大な魔物を仕留め続けるファンタジー。取引して自分が死ぬまで世界を制御化下に置くことをヤァータに保留させたことで、不本意ながらも死ねなくなった「狙撃」と呼ばれるストイックな狙撃魔術師。雪魔神や黒竜が生み出した異形の魔物ブラック・プディングといった強大な魔物を、なし崩し的に弟子になった天才魔術師リラや仲間たちと協力しながら仕留めていく展開で、何より彼をサポートするヤァータのこの世界における異質っぷりが際立っていましたが、リラもまた本人は無自覚ながらも訳アリな様子で、そんな彼らのこれからの物語が楽しみです。
17.暗殺者は不死の魔女を殺したい （オーバーラップノベルスf）
不老不死の体を持ち、一人、森の奥で暮らしていた魔女ララニカ。そんな生活を数百年続けた彼女が、森で死にかけの少年を拾う純愛ファンタジー。捨てられて帰る場所も名も持たない少年に「ノクス」と名付け、生きるすべを教えていくララニカ。やがて自分を救ってくれたララニカに恋心を抱くものの、不死ゆえに取り合わない彼女に「俺がララニカを殺してみせるから、俺と結婚して」と告げるノクス。だいぶこじらせちゃったな感もありましたけど、数年後、死の匂いを纏う暗殺者になって帰ってきたノクスは、けれど変わらずどこまでも真っすぐで、彼女の心を少しずつ解きほぐして、不死を解く果実も見出して、孤独だったララニカを幸せにしてみせるとても素敵な物語でしたね。
18.英雄その後のセカンドライフ しかし子供に料理を振る舞うのは楽しいかもな
芝村 裕吏/しずま よしのり KADOKAWA 2024年04月25日頃
海軍提督として数々の難敵・強敵を打ち破った不世出の英雄シレンツィオ。母国アルバから貴族に叙され、その条件として隣国ルース王国の士官学校への留学を命じられるファンタジー。道中気まぐれに羽妖精を救い、手違いでエルフの幼年学校に入学することになったシレンツィオ。彼が羽妖精や学校で出会ったませた幼エルフたちとテンポの良い会話を繰り広げうちに懐かれながら、その料理の腕で周囲の胃袋を掴んでいく展開で、本人としては余生をのんびり過ごしているつもりでも、大物ゆえにうっかり騒動に巻き込まれるとやっかいな国際問題になるのは避けられなくて、それが巡り巡って彼を体よく追いやったはずの元老院に跳ね返ってくる皮肉な構図がなかなか効いていました（苦笑）
19.肥満令嬢は細くなり、後は傾国の美女（物理）として生きるのみ
八針来夏 TOブックス 2024年08月17日頃
容姿と王国最強の武勇で名を轟かせた醜女将軍ローズメイ。婚約者の王太子が騙されて謀略で命を散らしながら、神の気まぐれで絶世の美女として蘇るファンタジー。その圧倒的な力はそのままに絶世の美女として生まれ変わったローズメイ。その力で龍を殴り倒して生贄の少女を救い、圧倒的なカリスマでならず者や敵将の心さえも打ち、配下に志願する者も現れる傾国の美女(物理)として、出会った人から様々な反応を引き出す快活な彼女の存在感は圧巻でしたけど、民を虐げる貴族を懲らしめて、噂が噂を呼んで祖国の仇の帝国にも目をつけられてゆく彼女がこれからどんな活躍を見せてくれるのか、今後の展開が今からとても楽しみです。
十二歳までに〈神の恩恵〉が人々に与えられる世界。授かった珍しい恩恵を隠していた狩人のルカが、魔術使いと判明した弟リヒトの従者枠として一緒に魔術学校に行く学園ファンタジー。天才的頭脳に恵まれて新しい魔術具を次々と作り、入学前から天才ぶりを発揮する魔術使いの弟リヒト。一方、兄のルカもまた珍しい特殊能力を持つ弓の名手で、密かに王都の「白い狩人」として有名になっていく展開で、兄弟と様々な人々との出会いや、丁寧に構築された世界観もなかなか良かったですが、何よりも深い絆で結ばれた兄弟の仲の良さが際立っていて、微笑ましい一面も見せてくれる彼らがこれからどんな出来事に遭遇してどんな姿を見せてくれるのか、続巻がとても楽しみな物語になっていました。
21.カノンレディ～砲兵令嬢戦記～ (サーガフォレスト)
王国の武器商の跡取りとして生まれ育ったエリザベスが、実家から大砲を盗み出し、隣国の紛争地帯に乗り込み、軍人としての道を歩む事を決意する戦記ファンタジー。血の繋がらない義妹エレンもついてきて一緒に実戦で緒戦から戦果を挙げて、女伯に砲兵士官へと取り立てられたエリザベス。宣戦布告も後回しの帝国側の奇襲に後手に回らざるをえない状況で、仲間の連邦側も一枚岩でないために議会の動きも鈍く、その分苦しい戦いを強いられる展開でしたけど、戦場においても変わらないお嬢様然とした振る舞いが際立つ一方で、この戦いに臨む人々の生きざまやぶつかり合う様々な思いも描かれていて、依然として厳しい状況ではありますが、この姉妹がどんな戦いを見せてくれるのか続巻が楽しみです。
22.捕食者系魔法少女
人間を苗床に増殖する異界の怪物インクブスの出現によって絶滅の淵に立たされている人類。超常の存在から力を与えられたウィッチが蟲を操り、怪物を喰らう異端の魔法少女ダークファンタジー。能力もバラバラで単独では非力なことも多く、一歩間違えば時には蹂躙されてしまうウィッチ。そんな中、異端の魔法少女シルバーロータスとして、数多の蟲を操り次々とインクブスを屠って、それをパートナーであるファミリアの糧としていく女子高生の東蓮花。本人の力としてはさほどでもなく、大量の蟲を駆使する異端のスタイルがゆえにウィッチたちすらなかなか姿を見せず神出鬼没で、意外な一面も垣間見せる彼女が、狡猾なインクブスたち相手に駆け引きを繰り広げながら殲滅してゆくその姿はなかなか圧巻でした。
23.【相談スレ】ワイ悪の組織の科学者ポジ、首領が理不尽すぎてしんどい
西 基央/塩かずのこ KADOKAWA 2024年02月28日頃
日本を侵略する神霊結社デルンケム。その四大幹部の一人で神霊工学者ハカセが、正義の変身ヒロインの一人フィオナに恋をして、『にゃんJ』のスレ住人達に恋愛相談する物語。元デルンケム幹部が経営する喫茶店で、学校帰りのフィオナたちと遭遇するものの、恋愛経験がなく異性との会話の仕方が分からないハカセ。常日頃から首領の愚痴を聞いてくれているスレ住人達に相談しながら試行錯誤する中で、明らかになってゆく先代から引き継いだ首領と組織の複雑な事情や組織を離れはしたものの気にかけている元幹部たち、一方で頼れるお兄さんを慕い意識してゆくヒロインたちの想いがあって、あくまで首領を見守り組織の一員であり続ける覚悟のハカセと、正義の味方な彼女たちの行く末を見守りたくなりました。
24.王空騎士団と救国の少女１ 世界最速の飛翔能力者アイリス (アース・スターノベル)
守雨/ox アース・スターエンターテイメント 2023年09月15日頃
フェザーに乗って空を飛び、飛来する巨大鳥ダリオンから王国を守る国民の憧れの的・王空騎士団。自らも自由に空を飛んでみたいと夢見る少女アイリスに飛翔能力が開花するファンタジー。男性の1万人に1人、女性に至っては七百年も現れなかった飛翔能力者。しかしアイリスは突然能力が開花し、密かに歳下の従弟オリバーと訓練しているうちに、その突出した能力を気づかれて決まった王空騎士団への入団。才能が開花したばかりの女性なのに、実力者も認める突出した速さを持つ特異性から、妬まれるようなこともありましましたけど、彼女自身はどこまでも飛ぶのが楽しそうで、そんなアイリスがどんな活躍を見せてくれるのか今後の展開が楽しみですね。
25.紅の魔術師に全てを注ぎます。好き。〜聖女の力を軽く見積もられ婚約破棄されました。後悔しても知りません〜
日向雪 TOブックス 2024年02月01日頃
国の慣習に従い婚約した第二王子から婚約破棄された第二聖女ロレッタ。就活をすべく職安に向かった彼女がエース侯爵家ルークの侍女になる盟約ファンタジー。見る目のない周囲のせいで自己肯定感が低く、住み込み侍女となった終身雇用を目指すロレッタがさりげなく見せる魔術の凄まじさに目を剥くルーク。元々聖女推しで推し活をしたい王太子にもその力を絶賛されて、三人で深夜まで繰り広げる熱い魔術オタク談義には思わず笑ってしまいましたが、状況が読めない第二王子とはしっかり決着をつけて、ロレッタの実力が再評価されつつある一方で、建国時から続く雷と火と水の三魔術師を巡る因縁は何とも切なくて、今後の展開がどうなるのかいろいろと気になりますね。
26.悪役令嬢の継母に転生したので娘を幸せにします、力尽くで。 (ドラゴンノベルス)
牧野 麻也/春野 薫久 KADOKAWA 2024年07月05日頃
乙女ゲー世界への転生を確信した貴族令嬢セレーネが、再婚先の嫁ぎ先の侯爵家令嬢、義娘のアティこそ後の悪役令嬢だと気づき、それを回避するために奮闘するファンタジー。継母に虐げられ、誰からも愛されずに育って破滅した悪役令嬢アティ。けれど今は天使のように可愛過ぎる彼女を溺愛し、最初は周囲も厄介キャラだらけの状況でしたけど、今なら間に合うはずと家庭教師や子守頭ともやりあって理解をし合うようになったり、時には男装して訪問先に侵入したりと、アティのためにどうすればいいのか心を砕き、その危機を救うためには手段を選ばずに奔走するうちに、いつの間にかそんな姿を見ていた周囲からセレーネ自身も認められ、慕われるようになっていく素敵な物語になっていました。
雨糸雀/kodamazon KADOKAWA 2024年08月30日頃
強大な魔物相手に瀕死の傷を負いながら、奇跡的に撃破してみせた冒険者ウォルカ。パーティー全滅の運命は覆したものの仲間たちが病んでしまうファンタジー。土壇場で転生者の記憶と知識を取り戻し、全滅バットエンドを回避したものの片目と左足を失ってしまったウォルカ。それを回避できなかった師匠の魔術師リゼル、弟子の天才剣士ユリティア、女戦士アトリ、そして聖女候補アンゼたちがそれぞれの理由から負い目を感じずにはいられない展開で、それぞれの過去とウォルカへの想いを掘り下げていきながら、いくら寄り添おうと思ってもそれでも剣に生きるしかないウォルカの覚悟を突きつけられて、応援するしかなくなってゆく仲間たちがこれからどうするのか、今後の展開が楽しみです。
28.糸を紡ぐ転生者
七歳の祝福の儀の時に自分が転生者であることを自覚し、糸のスキルを授かったエディ。無名スキルゆえに幼馴染パーティーから追放された彼の成長冒険譚。冒険者ギルドにも登録を断られながら、自分を育ててくれたブラコンハーフエルフのメグ姉のすすめで商業ギルドに登録して、メグ姉と一緒に育ててくれたカトリーヌたちとの貴重な出会いを経て、自分のルーツを探る旅に出るエディ。試行錯誤する糸のスキルもいろいろ使い道があることが分かって、出自の謎を解き明かすきっかけとなったエンシェントウルフや、旅を共にすることになったモフモフ従魔との出会いもあって、紹介された人脈を有効活用して今後に繋がりそうな人たちとも出会い、着実に力をつけてきたエディの活躍が楽しみです。
29.侯爵令嬢の破滅実況 破滅を予言された悪役令嬢だけど、リスナーがいるので幸せです (ドラゴンノベルス)
緋色の雨/たらんぼマン KADOKAWA 2024年04月05日頃
乙女ゲームの悪役令嬢として破滅するカサンドラが、光る板と流れる未来の予言、生活が現代世界で24時間配信されていることに気づく異世界ファンタジー。リスナーのコメントが表示されるタブレットにより運命をネタバレされ、破滅を回避すべく元凶の王太子と距離を置いて、スパチャで現代の本を買って猛勉強するカサンドラ。その成果で領地のスラム街改革に取り組んだり破滅イベントを未然に潰しても、課題に向き合う姿勢から王太子に興味を持たれ、挙動不審の聖女にまで懐かれてしまう彼女は、リスナーや領民たちからもすっかり愛される存在になっていて、破滅ルートからは脱却できたようにも思いますが、そんなカサンドラがこれからどんな選択をしていくのか今後の展開が楽しみです。
30.フリードリヒの戦場 1 (オーバーラップノベルス)
エノキスルメ/岩本ゼロゴ オーバーラップ 2024年07月25日頃
隣国アレリア王国と紛争が続くエーデルシュタイン王国。幼い頃から非凡な聡明さを持て余していた孤児出身の青年フリードリヒが、自らが住む田舎の街の危機に立ち上がる戦記ファンタジー。出没した盗賊団制圧に向かった討伐隊が壊滅。絶望的状況で自らを英雄の隠し子であると偽り、巧みな話術で民衆を奮起させて見事盗賊団を撃退した結果、英雄マティアス本人にも認められて幼馴染ユーリカと一緒に王国軍騎士となったフリードリヒ。初陣となった隣国の若き智将ツェツィーリア率いる侵略で、陥った窮地を切り抜けてみせたアイデアが光りましたけど、一方で戦いが何をもたらすかに直面してしまった葛藤した彼が、覚悟を決めて乗り越えた今後の活躍が楽しみです。彼に寄り添い支えてきた幼馴染の騎士ユーリカの存在も効いていました。
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