2022年の読了冊数は読書メーターによると最終的に1177冊でした。
読んだ本:1177冊
読んだページ:362,999ページ
12月の読了冊数は読書メーターによると最終的に97冊でした。
読んだ本:101冊
読んだページ:31,611ページ
こちらでは12月のおすすめとしてライト文芸5点、文庫12点、文芸単行本5点の計22点を紹介します。今月はやや控えめな点数ですが、どれも面白かったです。
気になる本があったらぜひ読んでみて下さい。ライトノベル編はこちら↓
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
言霊使いはガールズトークがしたい (集英社オレンジ文庫)
言霊使いはガールズトークがしたい
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白洲 梓/おと 集英社 2022年11月18日
「言霊使い」言葉で人の心を操る異能一族の末裔である宇内一葉。幼い頃より俗世から隔てて育てられ、友達も彼氏もいたことのない人生を送る彼女が、期限付き高校生活を始める青春小説。外界への興味と憧れが尽きない彼女が、言霊の力を不用意に行使しない、お目付け役を傍に置くこと、卒業後は家業を継ぐこと等…幾重もの約束と引き換えに手に入れた高校生活。典型的コミュ障状態だった一葉に初めてできた友人のニコや黒崎さん、神宮寺先輩や百瀬先輩たちとのやりとりは微笑ましくて、けれど散見される違和感の正体が思わぬ過去とともに明らかにされて、その見えていたことの意味もガラリと変わっていきますね…えええ?ってなりました(苦笑)お目付け役で婚約者の葛城先生との関係も気になるところで、面白くて続巻が早く読みたくなる期待の新シリーズです。
極悪女帝の後宮 (小学館文庫キャラブン!)
宮野美嘉/篁 ふみ 小学館 2022年11月04日
いくつもの敵国を打ち倒し、内政でも邪魔者を容赦なく切り捨て大陸に君臨する斎帝国の極悪女帝・李紅蘭。一向に誰とも結ばれる気がなさそうな紅蘭を案じて重臣たちが婿を用意する中華風ファンタジー。紅蘭女官を誘惑する不遜で魔性の婿、属国・脩の第五王子王龍淵。獣と飼い主のような関係から始まった紅蘭と龍淵の関係。それでいて不思議な絆めいたものが生まれてゆく、ワケアリで反抗心旺盛な歳上の夫が密かに抱いていたその目的。今回は例の蟲師の姉を主人公に据えたストーリーで、明らかになってゆく複雑に因縁が絡み合う業の深い過去を乗り越えた二人はこれからどうなるのか、忠実な護衛の郭義も絡めながら描かれるその後に期待の新シリーズです。
獣姫の最後の恋 (富士見L文庫)
旋 めぐる/さくらもち KADOKAWA 2022年12月13日頃
悲惨な歴史を経て一族を守る力を手にした代わりに、代償として子を産むと死ぬ伽羅族の当主。新当主レイラがある日、森で諜報活動をする他国の青年ソウに一目で恋に落ちるファンタジー。今までそこまで惹かれる相手もおらず、宿命に実感もなかったレイラが突然落ちた運命の恋。他国で仕える身ゆえ共にあることはできないというソウ、己の過酷な運命を知りつつ彼の子を身籠るレイラ。けれど子供が産まれるまで一緒に危機に立ち向かってくれたソウとの間には育まれた確かな絆があって、けれどレイラを思うがゆえの彼が提示した宿命から逃れる仮説は、彼女にとってみればなかなか過酷な選択で、果たしてそれにどう向き合ったのか、相反した複雑な願いを抱いてしまうその結末がなかなか印象的な物語でした。
後宮の禁書事情(ことのは文庫)
忍丸/七原しえ マイクロマガジン社 2022年11月21日頃
大蒼国の超難関・科挙を突破してようやくなれた官吏に夢を抱く劉幽求。そんな彼があやかしの相手をする部署・祝部に配属される中華風ファンタジー。怪力乱神禁止令によって怪異の存在しないこの国で、出世の道を閉ざされたと絶望した幽求の前に現れる少女・凛麗。彼女やその兄二人とともに挑む怪奇な腫瘍や、流血するクスノキと兄妹の悲哀、寵姫が魂だけで城を抜け出しているという噂の真相。それぞれの事件に意外な繋がりが見えてくる中で、凛麗が抱える特殊な事情も明らかになってゆく展開は、なかなかテンポが良くストーリーのメリハリも効いていて楽しかったです。続巻あるならまた読んでみたいです。
殺し屋ダディ (集英社オレンジ文庫)
栗原 ちひろ/西本 ろう 集英社 2022年10月20日
殺し屋組織のボスが急逝し、遺された「死者のリスト」争奪戦が勃発。忠実な部下だった朝比と哮は、唯一ありかを知るボスの息子・三也に接近し、疑似家族として暮らしながら懐柔しようとする子育てコメディ。実はこれまで大変仲が悪かった二人が、今まで誰が誰の暗殺を依頼したのかが記された「死者のリスト」のありかを聞き出すべく、それぞれ三也にアプローチする展開でしたけど、どちらも若くして殺し屋業界に身を置いていたために、普通の生活というものがどういうものか全く分からなくて、空回りしてしまう様子が微笑ましかったですね。何だかんだで三人で絆を育んでゆくその結末はなかなか良かったです。
後宮の毒華 (角川文庫)
太田 紫織 KADOKAWA 2022年12月22日頃
唐・玄宗皇帝の時代。楊貴妃ひとりを愛し他の妃を顧みない後宮の妃・高翠麗が失踪したことを知り、身代わりとして女装して後宮に入ったその弟・高玉蘭が毒妃ドゥドゥに出会う中華ミステリ。時の権力者で縁者でもある高力士の要請で身代わりを渋々受諾した玉蘭。妃修行に励むため入った離宮で、側近の女官に毒が盛られたことで出会う古今東西の毒に通じる毒妃ドゥドゥ。要所で存在感を見せる彼女と毒を盛られた犬、ライチに入っていた毒といった次々と起きる事件を解決してゆく展開で、状況からすると姉の帰還はなかなか遠そうな気がしましたけど、これから玉蘭にどんな運命が待っているのか今後に期待のシリーズです。
バイオスフィア不動産 (ハヤカワ文庫JA)
バイオスフィア不動産
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周藤 蓮 早川書房 2022年11月16日頃
住民に恒久的な生活と幸福を約束するバイオスフィアⅢ型建築。それを管理する後香不動産の社員として働くアレイとユキオは、独自に奇妙な発達を遂げた家々の問題に向き合ってゆく近未来小説。新時代住居の浸透により類の在り方が大きく様変わりした未来。引きこもる個々の住居からのクレームで直面する、査問神殿で見つかった鎮痛剤、自給自足を標榜するコロニー、大人になれない大人たち、左右対称の隣人トラブル。現代の感覚からすると当事者たちの異常性を感じずにはいられませんが、一方で置かれた状況から考えると納得してしまう部分もあって、そんな矛盾する問題に向き合って答えを見出してゆく中で、少しずつ変わってゆくコンビの距離感が効いていてなかなか面白かったです。
ライオンのおやつ (ポプラ文庫)
小川 糸 ポプラ社 2022年10月06日
若くして余命を告げられた雫。瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか本当にしたかったことを考える物語。幼い頃に両親を亡くし、叔父に育てられて成長した雫。少しずつ入居者が旅立ってゆくホスピスで、毎週日曜日に入居者がリクエストできる「おやつの時間」。自らもいつか旅立つ日まで残された日々をいかに過ごすのか。誘われて一緒にドライブに行ったり、しばらく会っていなかった父たちと会ったり、それでも今できることを精一杯楽しんで、最後まで生き抜いてみせたそのありようがなかなか印象的で心に残る物語になっていました。
ぼくもだよ。 神楽坂の奇跡の木曜日 (ハルキ文庫)
ぼくもだよ。 神楽坂の奇跡の木曜日
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平岡 陽明 角川春樹事務所 2022年12月15日頃
「人は食べたものと、読んだものでできている」盲目の書評家のよう子と、路地裏でひとり古書店を営む本間。それぞれが見つけた本が繋ぐ奇跡の物語。神楽坂に盲導犬と住み、出版社の担当・希子と隔週木曜日の打ち合わせが楽しみなよう子。神楽坂の路地裏で古書店を経営し、五歳になる息子のふうちゃんと週に一度会えるのが楽しみなバツイチの本間。点字や本を巡るそれぞれの事情も興味深かったですが、よう子の書いた小説をきっかけに物語の構図がガラリと変わっていって、奇跡のように繋がってゆく過去と未来への期待感がとても印象的な物語でした。
葬式組曲 (文春文庫)
20代の女性社長・北条紫苑が率いる「北条葬儀社」。彼らが引き受ける謎に充ちた葬儀の果てに、意外な結末が待ち受ける衝撃の連作短編ミステリ。妙な関西弁を喋る餡子、寡黙で職人肌の高屋敷、生真面目すぎる新入社員の新実…そんな癖の強い社員たちが執り行う不可解な遺言を残した父親、火葬を頑なに拒否する遺族、霊安室から忽然と消えた息子といった奇妙な葬儀の数々。遺族からは最終的に感謝される葬儀のエピソードは良かったですけど、その背景にはまさかの驚愕の事態が隠されていて、それまでの印象がガラリと変わってしまう結末にはびっくりさせられました。
まち(祥伝社文庫)
両親を亡くし、尾瀬の荷運び・歩荷を営む祖父に育てられた江藤瞬一。高校卒業後の進路を相談した結果、祖父に東京に出るよう諭されて上京する物語。そこから四年後、荒川沿いのアパートに暮らし、隣人と助け合い、バイト仲間と苦楽を共にする日々を送っていた瞬一。ありきたりで大きな山や谷もない日々はわりと平凡なようにも思いますけど、派手さはなくとも地に足をつけて視界に入ることにしっかりと向き合うその姿がなかなか印象的で、唯一の親族である祖父がいなくなってしまう故郷はどうなるのかとか、いろいろと考えさせてくれる物語でしたね。
珠玉 (双葉文庫)
没後も語り継がれる美しい歌姫だった祖母リズがコンプレックスの歩。運営するファッションブランドが経営困難な状況に陥り困っていたところ、モデルの穣司と出会う物語。祖母が持っていた真珠を語り手にして紡がれてゆく、自らの弱さに目を背けてきた人々が一歩ずつ成長する姿を丁寧に描いたストーリーで、意識するあまり祖母と似ても似つかない容姿や、他人の美貌に辟易して自信や自分らしさを見失っていた歩でしたけど、視点や意識を変えればまた違うこともいろいろ見えてくるんですよね。変わるきっかけとしては穣司の存在も大きかったですが、終盤の母親の存在やその言葉もいい感じに効いていました。
いつかこの失恋を、幸せにかえるために (角川文庫)
いつかこの失恋を、幸せにかえるために
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中村 航 KADOKAWA 2022年11月22日頃
就活がうまくいかず、社会人の恋人・亮平とも予定が合わなくて会えない日々が続く就活生のなつき。彼の出張に合わせた北海道旅行での思わぬ失恋と、そこから始まる少し不思議なひとなつの物語。彼と待ち合わせた幸福駅でなつきを待っていた全然幸福じゃない出来事。ひょんなことから始まったとても絵になっていた彼女の悲しい心からの叫びを撮影してバズらせた小学生ユーチューバー・遥希、その父親と三人で一緒に巡る失恋旅行。彼女に届くたくさんの共感や悩みコメントがあって、二人の過去の思い出も一緒に巡った楽しい旅は少しだけ自分らしさを思い出させてくれて、少しずつ前を向く元気を取り戻してゆく彼女の姿がとても心に響く物語でした。
ふたり、この夜と息をして (ポプラ文庫)
ふたり、この夜と息をして
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北原 一 ポプラ社 2022年12月06日
顔の痣を隠すため、祖母から教えてもらった化粧をしてひっそりと暮らす男子高校生・夕作まこと。彼がバイトの新聞配達の帰りに、公園でタバコを吸うクラスメイトの女子生徒・槙野と出会う青春小説。何やらワケありのような槙野と、お互いの事情に踏み込まないまま少しずつ話す機会が増えてゆく夕作。槙野を通じて広がってゆく交友関係と、偶然知ってしまった彼女が抱えている苦悩。臆病だった夕作の背中を押して、その世界を変えてくれた槙野もまた誰にも言えなかった孤独を抱えていて、自分を助けてくれた彼女のために、勇気を出して向き合おうとする夕作の不器用な優しさがなかなか良かったです。
スクロール (講談社文庫)
橋爪 駿輝 講談社 2022年12月15日
ある日突然家にやってきた女子高生との日々など、希望に満ち溢れたかのように思えた大学時代を経て、何者にもなれない社会人になった若者たちの現実を描く連作短編集。隣に住む元彼の「音」だけでも聞きたいと突如現れた女子高生ハル。就職活動が上手くいかず彼女ともすれ違う大学生の草太、プロポーズにピンとこなくてつまらない日々を送るモガ、就職したテレビ局で希望部署にいけずに燻っていたユウスケと菜穂の出会いと別れ。案外狭い世界の中で繋がっていましたが、こんなはずじゃなかったと思いながらも、けれどそこからどうにも抜け出せない、変わろうとしない彼らの諦観が印象に残る物語でした。
横浜・山手図書館の書籍修復師は謎を読む (宝島社文庫)
横浜の山手図書館でのアルバイトが決まった本好きの大学生・藤本読也。異国情緒あふれるその図書館で、変わり者の修復師が本と人の心にまつわる謎を解き明かしてゆく物語。図書の修復を手がける修復棟へ行くよう命じられ、書籍修復師の波々壁の助手として書籍の修復を手伝いながら、「物語に囚われている人間を救い出す」仕事を手伝う読也。「黒衣聖母」とシスター、「青い石とメダル」とフードの男の正体、亡くなった館長や波々壁自身が囚われていた物語など、お仕事小説やミステリというよりは、ややファンタジーめいたストーリーでしたけど物語に絡めて描かれるその結末を興味深く読めました。
二人の嘘 (幻冬舎文庫)
一雫 ライオン 幻冬舎 2022年11月10日
最高裁判事への道も見えてきたエリート女性判事・片陵礼子。そんな彼女がかつて懲役刑に処した元服役囚が近頃、裁判所の前に佇んでいることを知るミステリ。学生時代から優秀で経歴には微塵の汚点もなかった礼子。違和感を覚えた彼女が調べ始めたことでたどり着く過去の事件の真相。裁判官になりそこねたプライドの高い夫や義母との関係、礼子の扱いで忖度する上司といった人間関係に鬱屈を抱える礼子が、再審へと動いていたのは果たして何のためだったのか…中盤までの真摯に取り組もうとする彼女の姿勢が印象的だからこそ、感情の赴くままに動いたがゆえの結末は何とも後味の悪さがあって、純愛とはなにかいろいろと考えてしまいました。
母に連れられて来た古びた団地の片隅で出会った結珠と果遠。着るもの食べるもの、住む世界も何もかもが違うのに、お互いに惹かれ合う二人の四半世紀の物語。週に一回だけ古びた団地で育んだ二人の交流。高校時代の束の間の再会と突然の別れ。そして社会人になってからの偶然で運命的な再会。初手から強烈に惹かれ合う二人の縁みたいなものがあって、出会ってしまったらもうお互い意識せずにはいられなかったり、それぞれが抱える親子関係に対する葛藤を拗らせていて、それでも大人になっても大切なものはいつまでも変わらない不器用な二人のありようがとても印象的な物語でした。
2020年初頭、マスクをして生活することを誰も想像できなかった。現役医師として新型コロナを目の当たりにしてきた著者が描くコロナ禍の医療現場のリアル。シングルマザーで大学病院勤務医の椎名梓、結婚目前の彼氏と同棲中の女性看護師・硲瑠璃子、70代の開業医・長峰邦昭という三人の医療従事者の視点からそれぞれ描かれるストーリーで、現場で戦っていた人々にも葛藤やそれぞれの生活があって、特に最初は周囲の無理解に苦しんだこともあったでしょうし、甘く見てあんなことをしなければ…というような出来事にも直面することがあったと思いますが、そういう中でも向き合い続けた医療従事者の方々の尽力にはリスペクトしかないです。
青山 美智子 ポプラ社 2022年11月09日頃
それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』。それを聴くつまずいてばかりの日常を送る人々の変化を描いてゆく連作短編集。長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。著者さんらしい登場人物の思いが繋がってゆく短編集で、手くいかない時だからこそ、ふとしたことから気づく優しさが、そして変わってゆく世界がとても心に染みる素敵な物語でした。
彩坂 美月 講談社 2022年11月09日頃
思い出をひとつだけ「再上映」してくれる不思議な存在、映人。彼と出会って思い出を追体験することで、大切な思いに気づいてゆく連作短編集。自分勝手に生きて死んだ父の思い出、結婚を後悔する妻が思い出すかつての恋人、自分が一番輝いていたはずの高校の文化祭、ある犯罪をきっかけに繋がった想い、そして映人のニセモノ騒動。過去を変えられない、体験した出来事を他言できない過去の追体験の中で、けれどその中でそれぞれが見出してゆく大切な思いがあって、それぞれがずっと心残りだった過去と向き合うことで、それが未来へと繋がってゆくとても素敵な物語でした。
ぼくらは、まだ少し期待している
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木地雅映子 中央公論新社 2022年10月07日頃
札幌の進学校に通う高校3年生・土橋輝明。彼に相談を持ちかけてきた優等生同士で腐れ縁の秦野あさひが、翌日に突然失踪したことを知る物語。異母弟で料理研究部では彼女の後輩でもある吉川航とともに彼女の行方を追い始める輝明。その手がかりを求めて東京や沖縄に向かう中、彼女を含めた子どもたちの複雑な境遇や親との破綻している関係が浮き彫りになりましたが、ずっと探していた彼女に今の自分に何が出来るのかという葛藤があって、そんな彼が出したシンプルで真っ直ぐな答えと、それがもたらした冒頭に繋がるその結末はなかなか良かったです。