今回は1月角川スニーカー文庫・講談社ラノベ文庫・HJ文庫・12月ヒーロー文庫・KADOKAWA新文芸の新刊感想まとめです。内訳は角川スニーカー文庫の新作2点、続巻2点、講談社ラノベ文庫の新作1点、HJ文庫の続巻2点、ヒーロー文庫の続巻1点、KADOKAWA新文芸の続巻1点の計9点の紹介になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
ただの後方腕組転生者、うっかり勇者に拍手を送ったら黒幕扱いされる。 (角川スニーカー文庫)
森空亭/sinsora KADOKAWA 2025年12月27日
勇者を陰ながら応援していた転生者エモ・スギル。勇者が魔王を討った時、感謝の拍手を送った彼が、胡散くささから黒幕と誤解されてしまう勘違い系ファンタジー。特別な力もない平凡な転生者なのに、思わせぶりな口調から誤解されてしまい、勇者パーティーから黒幕認定されて国から指名手配されるストーリーで、微妙に噛み合ってない会話で誰でも受け入れるスギルの懐の深さから、仮面の魔将や神霊を使役するオルトリンデ、初代勇者に封印された魔神カーラ、伝説の情報屋やネクロマンサーたちと意気投合して、期せずして謎の組織・勇者オーダーが出来上がっていく展開には苦笑いでしたけど、思い込みから因縁を拗らせていく勇者パーティーはちょっと悲惨でしたね…。
エロゲの鬱エンドからヒロイン達を救済したら (角川スニーカー文庫)
HaLu_/雨 KADOKAWA 2025年12月27日
エロゲの寝取り悪役・井伏零央に転生した主人公が、悲惨な鬱エンドで不幸になってしまうヒロインたちを救済していくハーレムラブコメ。ゲームの主人公・宮野楓と結ばれなかったヒロインは、それぞれ悲惨な結末を迎えることになる鬼畜な仕様のゲーム世界で、零央が前世で得たゲーム知識と悪役ならでは暴力を武器に、フラグを事前に察知してヒロインたちを救っていくストーリーで、本来の主人公が残念な性格だったせいか、それだけでは終わらずに自分を慕って子犬のように懐いてくる後輩や、自分だけには甘い真面目な生徒会長の先輩、趣味を共有するようになった隠れ美少女オタク女子たちの想いに向き合っていく展開は、迎えるはずだった鬱エンドがじわじわ来るものだった分、余計に微笑ましく感じました。
人生逆転3 浮気され、えん罪を着せられた俺が、学園一の美少女に懐かれる (角川スニーカー文庫)
D/ひげ猫 KADOKAWA 2025年12月27日
英治を陥れた近藤の悪事が徐々に明るみになり、金と権力をちらつかせてもみ消しを図ろうとする市議である近藤の父に、教師の高柳や校長も毅然と立ち向かう第3弾。学校の中ではいじめに関わった者たちの追及が粛々と進み始める中、英治を支えてくれる人たちの存在は心強くて、幼馴染の美雪は自分のしたことに絶望して近藤は逮捕、恫喝した近藤の父も炎上。一方で英治が愛に勧められて投稿したウェブサイトの小説が瞬く間にランキングを駆け上がり、ついには出版社からもコンタクトが来る展開で、抜け目なく手を引いていた裏で英治へのいじめの筋書きを描いた黒幕も、思わぬ形でしっぺ返しを食らっていましたが、救われるべきがしっかりと報われて、お互い辛い立場だった愛との大切に思い支え合う関係には確かな希望を感じました。
なぜかS級美女達の話題に俺があがる件5 (角川スニーカー文庫)
脇岡こなつ/magako KADOKAWA 2025年12月27日
沙羅も結奈も晴也のことが好き。自分を含めた《S級美女》の3人が恋のライバルだと知ってしまい凜が激しく動揺する第5弾。夏休みのお泊まり会最終日。親友2人のために自分の恋を諦めようと決意しながら、水族館で晴也と2人きりの時間を過ごすうちに、胸の高鳴りを抑えきれず想いを告げてしまう凜。しかし凜の予想外の告白が晴也の中学生時代の「苦い記憶」を呼び起こしてしまう展開で、悲しいすれ違いを起こした凛と晴也、そんな2人を心配する沙羅と結奈という構図になりましたけど、晴也の中学時代の苦い過去も掘り下げながら、晴也の過去を知る妹や繋ぎ役となった当時を知る風宮の存在もあって、ヒロインたちもまたお互いの本音に向き合って乗り越えた彼女たちとのこれからの恋模様が楽しみです。
油断できない彼女 (講談社ラノベ文庫)
【第9回講談社ラノベ文庫新人賞佳作】
学内でも目立つ美少女・天崎胡桃に突然告白された内田蒼太。戸惑いながらも受け入れた蒼太が、胡桃の思わぬ本性を知っていく青春ラブコメ。なぜ接点もない平凡な自分にと疑問に感じながら、可愛い彼女との生活に浮かれた日を過ごす蒼太。しかし休日のデート中に楽しく会話していると、蒼太の一挙手一投足全てに注目し、小さな変化も見逃さない胡桃によって蒼太のスマホに謎のアプリがDLされ、実は思っていた以上に執着されていることに気づいていく展開で、胡桃の姉妹と出会って事情を知り現状に危機感を抱いた蒼太が、友人の力も借りながら少しずつでも変えていこうとする悪戦苦闘があって、諦めずに粘り強く向き合い続けた変化の兆しと、それでも垣間見える相変わらずな一面のギャップがなかなか効いている物語でした。
冷徹皇子の帝国奪還計画2 (HJ文庫)
戦争に勝利して新領地クレイヴェルを手に入れたヘンリック。しかし前領主の悪質な妨害に前途多難な状況で、前領主のスパイと名乗る少女シルカが文官として志願してくる第2弾。いわれなき悪評をばら撒かれ内政が乱れ、脆弱な流通網と相まって経済の根幹が崩れている状況で、ヘンリックの現代知識とシャロンの活躍もあって少しずつ内政は軌道に乗りつつある状況で、採用に応募してきたかつて前領主と民衆側の取次役を担っていたシルカ。彼女の卓越した手腕や高いポテンシャル、応募してきた背景も浮き彫りになって、彼女を信じて支持するシャロンの姿が印象的でしたけど、住民たちの評価も確実に変わりつつある中、シルカを救うためにあえて火中の栗を拾った決断が、今後に向けた大きなターニングポイントになりそうですね。
最強魔法師の隠遁計画 20 (HJ文庫)
ルサールカで過ごす休暇も束の間、シングル6位の才媛・ヒスピダが惨殺された上、魔法テロ事件が発生。アルスが犯人の濡れ衣を着せられる第20弾。テロに使われた魔法から自分を陥れる罠だと察して、やむなくロキとともに内地を離脱して外界のとある潜伏地に向かうアルス。目撃情報もあり、国際指名手配されたアルスの無実を信じるシセルニアとベリックが、彼の窮地を救うべく各国元首らとの各国間の様々な思惑が交錯する大論戦に臨む展開で、背景を知る人が見ればマッチポンプにしか思えない茶番劇に乗る国家元首たちには苦笑いでしたけど、一方で逃避行を続けるアルスとロキの絆が深まっていく様子はなかなか良かったですし、ここからどういう決着を迎えるのか続巻に期待。
ナイツ&マジック 12 (ヒーロー文庫)
魔王軍が現れ、巨大魔獣による危機に陥った状況から、決戦騎で魔獣を押し戻して事態は収束したエル。激動の展開を乗り越えたその後の様子が描かれる第12弾。いろいろな意味で大活躍だったキッドの話を聞いて、立ち上がったエレオノーラの覚悟。激動の展開からの回復が描かれる一方で、戦果の報告に赴いたエルたちと長らく病弱で療養中だった第一王子ウーゼルの邂逅。そしてマガツイカルガニシキに起きた異変と王都襲撃。エルと周囲のらしい日常回が描かれていると思いながら読んでいましたが、そこから思ってもみなかった急展開が待っていて、イカルガ・シロガネなんてものが生まれて新型との対決、パーヴェルツィークや狂剣も入り乱れてのカオスな熱い戦いはこの物語らしさをたっぷりと堪能できました。
まさきたま/daichi/クレタ KADOKAWA 2025年12月27日頃
レミ率いる労働者議会の勝利に終わったサバトの内戦。オースティンとの停戦協定を締結したレミが語る理想にトウリは危機感を覚える第6弾。サバト領内は一時的な平穏を取り戻したものの、セドルやアーニャを連れてオースティン領へ帰還するトウリ。ヴェルディやケイルら旧友たちと再会を果たしフラメール軍との戦いに従軍する中で、ロドリーの実の妹リナリーと出会う展開で、復讐のみを糧に生きていた彼女と少しずつ交流して受け止めていく流れは良かったですけど、だからこそその結末はあまりにもやるせなくて、勝てると油断した時が危ういとか、巡り巡ってそういう形になったか…とか、窮地で覚醒した彼女がもたらした戦果には言葉もなかったですが、未来に至るまでに果たして何が起こるのか恐ろしくなりました…。

