【Kindle50%ポイント還元】講談社 フィクション本50%ポイント還元キャンペーン (10/13まで)
今回はKindleで講談社のノンフィクションが50%ポイント還元キャンペーン中ということで、対象商品の中からおすすめを30作品セレクトしました。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
1.殺し屋の営業術
営業成績第1位、契約成立のためには手段を選ばない凄腕営業マン鳥井。彼がアポイント先で刺殺体を発見してしまい、殺し屋相手に交渉を始めるジェットコースターミステリ。「ビジネス」として家主の殺害を請け負っていた「殺し屋」の仕事の目撃者となってしまい、口封じとして消される運命から逃れるため、研ぎ澄まされた営業トークで殺し屋を丸め込み、まさかの殺人請負会社に入社した烏井が、2週間で2億円という営業ノルマを課されて始まる文字通り命がけの営業。単なる話術だけでなく、心理戦や情報収集も駆使して場の空気を掌握していく烏井の営業トークは圧巻で、ライバル企業との駆け引きをしたり、仲間とも連携しながら、ギリギリの綱渡りを飄々と乗り越えてみせたその実力は圧巻でした。
2.カフネ
誰からも愛されていた弟・春彦の急死の報に直面して悲嘆に暮れる野宮薫子。彼が密かに遺していた遺言書の執行人に指名され、弟の元恋人・小野寺せつなと再会する物語。理由も分からないまま夫・公親に別れを告げられ、荒んだ生活を送っていた薫子が直面するさらなる悲劇。責任感の強い彼女がせつなに会ったことをきっかけに、彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うようになり、様々な人々と出会う過程で知ることになってゆく春彦を取り巻く背景。一方でせつなの作る美味しい料理や薫子の掃除が多くの人々の心を癒やしていって、カフネの活動を通じて薫子の心境やせつなとの関係も変わる中、時にはぶつかり合いながらも、不器用な人たちの思いに真摯に寄り添うとても優しい物語でした。
3.小説
我々はなぜ小説を読むのか。五歳で読んだ『走れメロス』をきっかけに、読書にのめり込んでいった内海集司が、小説の魅力を共有することができる生涯の友・外崎真と出会う物語。最初は父親が喜ぶ姿を見るために背伸びして読んでいた読書。彼にとって孤独なものだった読書が、十二歳の時にふとしたきっかけから外崎と運命の出会いを果たし、小説家が住んでいるモジャ屋敷に一緒に潜り込んで、好きなだけ読書する日々を送っていた集司。けれど外崎の類稀なる文才に気づいてしまい、何者にもなれない自分に葛藤する一方、自分が好きな本を読むだけで生きていくことも難しくて、彼の切なる問い掛けにはなかなか来るものがありましたけど、その熱量のある密度の濃い物語とその結末には凄いものを読んだ感しかなかったです…。
4.星を編む
あれからどうなったのかとても気になっていた、『汝、星のごとく』で語りきれなかった不器用な登場人物たちのエピソードを丁寧に描いた三つの愛の物語。櫂と暁海を支えた教師・北原の過去と、彼に病院で話しかけられた教え子の菜々が抱えていた問題。漫画原作者で作家となった櫂を担当した編集者二階堂と植木の二人が、時間を掛けてでも最後まで諦めずに繋いだ大切なもの。北原先生と暁海の関係の変化、そして周囲の人々のその後が描かれたエピソード。北原先生の過去エピや諦めずに奔走し続けた二人の熱い編集者たち、遠回りしながらも時間を掛けていい感じの夫婦になっていった二人の関係が丁寧に描かれていて、いろいろあったけれど良かったなと思えるその結末が読めてとても嬉しかったです。
5.法廷占拠 爆弾2
東京地方裁判所、104号法廷。史上最悪の爆弾魔スズキタゴサクの裁判中、突如銃を持ったテロリストが乱入し、法廷を瞬く間に占拠するノンストップ・ミステリ第2弾。スズギタゴサクに親を殺された遺族という立場を利用して忍び込み、まんまと爆弾と拳銃で法廷内の人々を人質にしてみせた犯人。ライブ配信をさせながらいまいち真意が見えない要求をしてくる犯人との駆け引きにはなかなか緊迫感がありましたけど、先の状況が読めない臨機応変の対応を迫られる中で、前回同様対極的な立場から状況に対処する類家とスズキタゴサクは、今回もその異質な存在っぷりが際立っていましたね。これからも2人の対決が続きそうな雰囲気の中で、犯人の真の目的を暴いてみせたその結末がなかなか効いていました。
犯人たちが仕掛けた巧妙なトリックに対するのは、全てを見通す城塚翡翠。犯人視点で描かれる倒叙ミステリのシリーズ第3弾。嵐の山荘で死体を懸命に隠そうとする若き犯罪者。そして翡翠をアリバイ証人に仕立て上げようとする写真家の復讐。そもそもどうしてこうも犯罪者と遭遇してしまうのかという部分には苦笑いしかないのですが、ツッコミ役の相棒・真ちゃんをいいように振り回しながら、無防備なあざとすぎるキャラと、こを見ているのかという驚きのアプローチで犯人と対峙するお馴染みの展開で、今回はなかなか手ごわい相手でしたけど、事件解決の先にあるはっとさせるような意外な結末がなかなか鮮烈な印象として残りました。
7.死んだ山田と教室
夏休みが終わる直前、飲酒運転の⾞に轢かれて死んた⼭⽥。勉強が出来て⾯⽩くて、誰にでも優しい2年E組の⼈気者だった彼の魂が教室のスピーカーに憑依する青春小説。悲しみに沈む学期初⽇に、担任の花浦が席替えを提案したタイミングでスピーカーから聞こえてきた⼭⽥の声。声だけになった周囲をよく見ている人気者の山田とクラスの仲間達の不思議な日々は、一方で文化祭で学校外のバンド活動や中学時代など、山田の知られざる一面も明らかになっていって、どこかのタイミングで成仏すると思っていた山田が、仲間たちが進級しても、卒業してもなかなか成仏できない孤独には来るものがありましたけど、そんな彼に最後まで寄り添い続けた和久津と迎える結末が印象的な物語になっていました。
8.普天を我が手に
大正15年の年の瀬、12月25日の午前1時過ぎ、陸軍省軍務局の少佐・竹田耕三のもとに、待ちに待った男子が誕生した。志郎と名付けられた子供は、その後、親である耕三と共に満州事変の調査の密命のため、不穏な空気の立ち込める中国大陸へ渡る。大正天皇が崩御し、昭和天皇が即位した激動の瞬間に生まれた子供たちは、時代やそれぞれの親の影響を受けながら、政治、裏社会、婦人活動、興業と全く異なる世界で成長をし、数奇な出会いと別れを繰り返すなどしながら、戦争の時代から終戦を経て、高度経済成長期の昭和日本を精いっぱい生きていく。
今日も今日とて容疑者にされる青年・隠館厄介。その悲鳴のような依頼を受けて駆け付ける忘却探偵・掟上今日子だったが、どうやらいつもと様子が違うようでーー。病いに襲われる忘却探偵は謎を解き厄介を救うことができるのか?彼女の記憶は「一日」限り。タイムリミットミステリー!
10.アフターブルー
【第19回小説現代長編新人賞受賞作】
納棺師、遺品整理士、生花装飾技能士といった葬儀関係のプロ集団、株式会社C・F・C。毎日のように遺体が運ばれてくる二課で働く5人の納棺師たちを描いたグリーフ・ストーリー。入学式を明日に控え線路に正座していた少年、ゴミ屋敷で餓死した男性、幼い我が子を残して事故に遭った母親、飛び降りる瞬間を動画配信していた少女など、二課の納棺師たちがその手で失われた生前の面影を何とか復元しようとする姿を描いていくストーリーで、その過酷な仕事ぶりを描きながら、一方で大切な人が突然この世を去ったことを消化しきれない、遺された人々の様々な想いに真摯に寄り添いながら、納棺師たち自身もまた周囲に刺激を受けて、それぞれが抱える複雑な背景に向き合い、前に進もうとする姿が印象的でした。
11.みんなで決めた真実
裁判の生中継番組が一大エンターテイメントとなり、名探偵が活躍するようになった社会。空気で決まるフェイクな真実をロジックで切り裂くモキュメンタル・ミステリ。一世を風靡していたテレビ放送の裁判生中継に出演した名探偵が、一瞬で事件のトリックを暴いて有罪が確定する推理。しかし法学部生の主人公と一緒に裁判中継を観ていたかつて凄腕の探偵だったじいちゃんが、これはおかしい、その推理は間違っていると法廷でかつての弟子と推理対決する展開で、空気感や雰囲気といったものに流れが左右されがちな状況が生み出されて、有力な発言者がそういえば果たしてそれは正しいことなのか。それでもおかしいものにおかしいと言える、論理で真実を導き出すじいちゃんの姿はカッコ良かったですね。
12.名探偵再び
かつて数々の難事件を解決に導いた学園の名探偵・時夜遊。伝説となった大伯母のお陰で、私立雷辺女学園に入学することができた時夜翔のもとに、学園内で起きた事件解決の依頼が次々と舞い込む学園ミステリ。30年前、学園の悪を裏で操っていた理事長Mと対決し、ともに雷辺の滝に落ちてなく亡くなった大伯母・遊。探偵の娘として生まれたこともあり、凡人なのに大伯母のような活躍を期待され、窮地に陥った彼女が雷辺の滝で幽霊と出会い、師匠と崇めて助言を得ながらもたらされた事件を解決していく展開で、自分の無力を正しく認識して師匠に頼る翔の開き直りっぷりはむしろ清々しく、テンポよく読ませる物語の構図としてはある程度予想できましたけど、そう思わせておいて最後に待っていた意外な結末にはものの見事に驚かされました。
13.音のない理髪店
作家デビュー後、次の作品を書けずに前に進めなかった五森つばめ。彼女が聾者だった祖父の半生を描くことを決意して、関係者への取材を勧めていく中で時を超えて思いが繋がっていく物語。日本で最初のろう理容師だったとされるつばめの祖父・正一。聾者にとって今よりもはるかに偏見も多く、厳しかった時代になぜ信念を持って生きることができたのか。疎遠になっていた父や伯母、そしてどこか苦手意識を抱いていた祖母に再会して向き合い、つばめの祖父に関する取材を進める中で、音のない世界を知り、過酷な環境を生きた祖父と周囲の人々の姿が浮き彫りになりましたけど、取材した人々が抱えてきた秘密にもひとつひとつ解きほぐすようにしっかりと向き合って、三代にわたる希望を繋いでゆく姿がとても印象的な物語でした。
14.フェイク・マッスル
【第70回江戸川乱歩賞受賞作】
たった3ヵ月でボディービル大会の上位入賞を果たした人気アイドル大峰颯太。新人記者・松村健太郎がこの疑惑の潜入取材を命じられるミステリ。ドーピングを指摘する声が上がり、炎上するものの大峰は疑惑を完全否定。一方で彼のジムに入会して実際にベテランの助力を得ながら、自身も大峰の大峰のパーソナルトレーニングを受講できるまでに成長し、あの手この手で真相に迫る松村。新事実が発覚するたびに状況も二転三転していく展開で、潜入取材を続けるうちに松村の仕事に対する姿勢もだんだんと変わっていって、テンポよく進むストーリーは緊迫感もあって面白かったですし、たどり着いたその結末には彼の確かな成長を感じました。
15.書店怪談
「お客さんに言われたんですよ。盛り塩した方がいいよ。ここ、なんかいるからって」小説家・岡崎隼人は最新作『だから殺し屋は小説を書けない。』を出版したことをきっかけに、書店員とよく話すようになった。ある日、地元・岡山市の新刊書店を訪れると、店長が盛り塩をしているのを目撃する。数週間後、岡崎は別の書店でサイン会を開くことになったが、そこでも奇妙な体験談が寄せられていることに気づく。新作が思うように書けず焦っていた岡崎は、担当編集の菱川と話し合い、書店にまつわる怪談を集め、モキュメンタリー調に書き直したホラー小説にすることを思いつく。怪談は続々と集まり、順調に執筆は進んでいたが、寄せられた怪談には共通点があることに気づく。岡崎と菱川は、その共通点を探るため、さらなるネタ探しに乗り出すが、次第に恐ろしい真実に近づいていく。
16.宝島 (講談社文庫)
しのびこんだ米軍基地で突然の銃撃。混乱の中、故郷(シマ)いちばんの英雄が消えた。英雄の帰還を待ち望みながら沖縄(ふるさと)を取り戻すため立ち上がる、グスク、ヤマコ、レイ。長じて警官となり、教師となり、テロリストとなった幼馴染たちは、米軍統治下の時代のうねりに抗い、したたかに生き抜こうとする。
17.イクサガミ (講談社文庫)
金か、命か、誇りか。刀を握る理由は、何だ。明治11年。深夜の京都、天龍寺。「武技ニ優レタル者」に「金十万円ヲ得ル機会」を与えるとの怪文書によって、腕に覚えがある292人が集められた。告げられたのは、〈こどく〉という名の「遊び」の開始と、七つの奇妙な掟。点数を集めながら、東海道を辿って東京を目指せという。各自に配られた木札は、1枚につき1点を意味する。点数を稼ぐ手段は、ただ一つ――。「奪い合うのです! その手段は問いません!」剣客・嵯峨愁二郎は、命懸けの戦いに巻き込まれた12歳の少女・双葉を守りながら道を進むも、強敵たちが立ちはだかる――。
18.汝、星のごとく (講談社文庫)
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海と、島に転校してきた櫂。ともに心に孤独と欠落を抱えた2人が惹かれ合い、すれ違い、そして成長してゆく物語。夫に逃げられた母を放っておけない暁海と、漫画家になる夢を持ちながら、自由奔放な母の恋愛に振り回されてきた櫂。急速に惹かれ合ってゆく2人が、、けれどままならない状況に陥ってしまい、不器用すぎて少しずつすれ違う展開にはもどかしくなりましたけど、彼らを見守り続けて寄り添ってくれた北原先生の存在も大きくて、いつまでもずっと心に残り続けた鮮烈な想いに殉じるその一途な姿は、傍から見たら歪に見えても、たとえ他の人に何と言われようとも、かけがえのないとても美しいものに思えました。
19.爆弾 (講談社文庫)
些細な傷害事件で野方署に連行されたとぼけた見た目の中年男スズキタゴサク。たかが酔っ払いと見くびる警察に対して、男は十時に秋葉原で爆発があると予言するノンストップミステリ。取調室に捕らわれた冴えない男の予言直後に秋葉原の廃ビルが爆発。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。爆破は三度続くと今後の展開を示唆してみせたこの胡散臭い中年男は果たして爆弾魔なのか。ただの霊感だと嘯くタゴサクと対話を試みて情報を引き出そうとする、警視庁特殊犯係の類家と男の駆け引きや、鍵を握る過去の事件との繋がり、状況が二転三転して構図もガラリと変わる中で浮かび上がってゆく意外な真相があって、道化のような男に振り回され、恐怖や不安を突きつけられた登場人物たちの生々しい感情が印象的な物語になっていました。
20.パラソルでパラシュート (講談社文庫)
29歳になり「退職まであと1年」のタイムリミットを迎えた、大阪の一流企業の受付として働く柳生美雨。その記念すべき誕生日に売れないお笑い芸人と出会い、人生が変わり始める物語。雨の日の誕生日に出会った、どこか掴みどころのない矢沢亨とその相方の弓彦、そして仲間の芸人たちとの交流を通して少しずつ変わっていく変わってゆく美雨の日々。明確に定義づけできないことではあっても、そんな積み重ねを得たことににかけがえのない大切な想いを抱き始めていたからこそ、亨の芸人としてのルーツとも言える存在との突然の再会に、誰もが心揺さぶらずにはいられませんでしたけど、そこから目をそらさずに向き合って、それぞれの転機を乗り越えてゆく姿がとても印象的な物語でした。
21.スモールワールズ (講談社文庫)
周囲には理解されづらい何とも複雑な思いを抱えている不器用な主人公たち。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作短編集。夫婦円満を装う主婦と家庭に恵まれない少年、出戻ってきた姉と再び暮らす高校生の弟、初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族、人知れず手紙を交わし続ける訳あり男女の関係、向き合うことができなかった父と子、大切なことを言えないまま別れた先輩と後輩、そしてもうひとつの物語を加えたそれぞれがゆるく繋がる世界の中で繰り広げられてゆく、目の前の現実に向き合って受け入れて、そっと寄り添うようになってゆく優しい物語はとても良かったですね。
22.medium 霊媒探偵城塚翡翠/invert 城塚翡翠倒叙集 (講談社文庫)
推理作家として難事件を解決してきた香月史郎が出会った、霊媒として死者の言葉を伝える城塚翡翠。そんな彼女の霊視と論理の力を組み合わせて殺人事件に立ち向かうミステリ。殺された香月の後輩、招待された別荘で殺された先輩作家、女子高生連続の犯人を警察に協力する二人が翡翠の霊視と香月の論理で何とか解決してゆく展開で、けれど最後の連続殺人犯との対峙は、これまで積み重ねて来たものの何が虚で実だったのか分からなくなる急展開に繋がって、その何とも鮮烈で皮肉に満ちていた決着をいろいろと想起させるエピローグが際立たせていました。
綿密な犯罪計画により実行された殺人事件。アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される……はずだった。だが、犯人たちのもとに、死者の声を聴く美女・城塚翡翠が現れる第二弾。ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン。さりげない風を装い現れて、いつの間にか距離を縮めて、乗り切ったと思ったら思ってもみなかった部分から覆していく鮮やかな推理劇。でもこんな感じだったかな…と積み重なってゆく違和感が、最後の最後で反転するその理由が、前回とはまた違う意味で鮮烈な印象を残しました。
23.十戒 (講談社文庫)
父と共に伯父が所有していた枝内島を訪れた浪人中の里英。島の視察を終えた翌朝に同行していた不動産会社社員が殺されてしまい、残された人々が犯人から十戒を課されるクローズドサークルミステリ。島内にリゾート施設を開業するため集まった9人の関係者たち。そこから「殺人犯を見つけてはならない、守られなかった場合、島内の爆弾の起爆装置が作動し全員の命が失われる」という戒律を課され、島内の爆弾に怯えながら指定された3日間を過ごす中で次々と起きる殺人。限定された状況で犯人はいかに計画的に犯行を重ねていったのか。振り返ってみると確かに首を傾げた箇所がいくつかあって、2人を中心に進めてきたストーリー構成や、用意周到に完遂させた犯行が、最終的にひとつに繋がっていったその結末はお見事でした。
24.方舟 (講談社文庫)
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れ、偶然出会った三人家族と地下建築の中で夜を越すことになった柊一。その地下建築が水没の危機に陥った矢先に殺人事件が起きるミステリ。地震が発生して扉が塞がれてしまい、水没までのタイムリミットまでおよそ一週間。そんな中で行われた殺人事件の犯人を一人犠牲にすれば脱出できる。犯人探しが始まった中で発生する連続殺人事件。極限状態で犠牲を厭わない発想が極端ではあっても、ストーリーとしてはわりとオーソドックスなクローズドサークルなのかなと思いながら読んでいましたが、ディテールにこだわった推理はなかなか鮮やかで、しかもそれだけでは終わらない何とも皮肉な結末が衝撃的なミステリでした。
25.掬えば手には (講談社文庫)
平均的な身長体重。勉強も運動もすべてが普通。何の取り柄もないぼくはある日、人の心を読める力に気がついた。おかげで口の悪い店長の下でも難なくアルバイトを続けているけれど、新人の常盤さんだけは心を開いてくれなくて……。他者の心に寄り添うひたむきな姿をだれもが応援したくなる、究極に優しい物語。
26.おいしいごはんが食べられますように (講談社文庫)
「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」真面目で損する押尾は、か弱くて守られる存在の同僚・芦川が苦手。食に全く興味を持てない二谷は、芦川が職場で振る舞う手作りお菓子を無理やり頬張る。押尾は二谷に、芦川へ「いじわる」しようと持ちかけるが……。どこにでもある職場の微妙な人間関係を、「食べること」を通してえぐり出す芥川賞受賞作!
27.線は、僕を描く (講談社文庫)
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生・青山霜介。アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会い、初めての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく青春小説。湖山に気に入られてその場で内弟子にされた霜介と、反発して翌年の「湖山賞」での勝負を宣言する湖山の孫・千瑛。初心者ながらも水墨画にのめり込んでいく霜介に、彼と関わるうちに千瑛もお互いに刺激を受けて変わっていって、才能だけでも技術だけでもない水墨画の世界で、その本質に向き合い続けた二人が迎える結末には新たな未来が垣間見えました。面白かったです。
28.青く滲んだ月の行方/茜さす日に嘘を隠して (講談社文庫)
なりたい自分と現実のギャップにもがく大人未満の4人。ゆるく繋がる若者たちの真実を描いた5つの連作短編集。恋人の咲良に別れを告げられても感情が動かないことに動揺する隼人、友達の俊也が人生を狂わせた女と未だに繋がりがあることに苛立つ大地、喫煙所で出会った綾香と一緒に海沿いの故郷へ帰省する留年3回目の和弘、クラスメイトのAが自殺して自らの無自覚な残酷さに気づいてしまい思い悩むB。就職して2年半後に学園祭に顔を出して、大学時代の悩みや葛藤が過去のものと気づいた隼人と大地の失踪があって、周囲と比べたり、何者にもなれない自分を自覚して、それぞれのやり方で向き合うようになっていく姿が印象的でした。
誰かに言えるわけがない何ともあやふやで危うい関係。誰かに理解してほしい葛藤をひとりで抱える女性を描く、ゆるく繋がる5つの連作短編集。就活が上手くいかずSNSで恋人の浮気場面らしき写真を偶然見つけてしまう皐月。寂しさを埋めるために人と会いたくなる愛衣。自分の経験を切り売りして曲を作るシンガーソングライターのふみ。大切な友達に言えない秘密を抱えながら過ごす智子。そしてサークル仲間から卒業旅行の誘いの連絡。もう一つの物語とリンクさせながら描かれる舞台裏では、実は全然違うことを考えていたことも判明しましたけど、彼女たちが誰にも言えずに抱えていた複雑な思いにもきちんと救いがあって良かったです。
29.数学の女王 道警 沢村依理子 (講談社文庫)
札幌に新設されたばかりの北日本科学大学で起きた爆破事件。道警本部の警務部に異動となった博士号を持つ異色のノンキャリ警察官・沢村依理子が事件に挑む警察ミステリ。思惑が透けて見える特命捜査の命に複雑な思いを抱きながら、突然班長を任されて公安との駆け引きの中で進めていく爆発事件の捜査。一体誰がどんな理由でこんな事件を引き起こしたのか。爆弾魔を調べてゆく中で思わぬところから繋がってゆく因縁や、そこから浮き彫りになってゆくその背景を思うと、時代が変わってもそう簡単には変わらない厳しい現実を考えずにはいられませんでしたが、いくら才能があっても人間関係の構築が上手くないと、どうしても不遇な境遇に陥りがちな状況というのはなかなか難しいですね…。
30.霊獣紀 (講談社文庫)
篠原 悠希 講談社 2021年11月16日
中国・五胡十六国時代。戦乱の世で人界に囚われた霊獣・一角麒と出会い、奴隷から盗賊に身を転じたベイラの冒険と戦いを壮大なスケールで描いた中華ファンタジー。匈奴の少数部族・羯族の小胡部を統率する小帥の息子として生まれたベイラが、一角と出会ったことで転機を迎えて、一度は奴隷に落とされたりする中で、どうすればいいのかを常に見極めながら、徐々に取り立てられ立身してゆく展開は何が起こるのか分からないこの時代の雰囲気を感じますね。なかなか元気そうな妻も迎えてこれからどんな展開になってゆくのか続巻に期待。

