【Kindle50%オフ】早川書房 最大50%OFF 早川書房 秋の大感謝セール! (11/7まで)
今回はKindleやBookWlkerなどで「早川書房 最大50%OFF 早川書房 秋の大感謝セール!」が開催されるのを受けて、比較的最近に刊行された対象作品からおすすめ30作品セレクトしました。気になる作品があったらこの機会に読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」が、人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める回顧録。約100年前、身体が永遠に老化しなくなる融合手術を受けることを父親から提案された主人が綴る、ひらがなメインの文体で語られる物語で、理不尽な扱いをする父や兄、二人の姉たち、そしてパートナーとなっていった新との関係が描かれていて、主人公とその周囲の人々を中心に描かれていた作中ではやや感情に乏しい存在として描かれていたように思えた主人公でしたけど、時を経て人類がいろいろと調整された未来においては、それでもむしろ感情豊かな珍しい存在に見えてしまう構図の変化にはじわじわと来るものがありました。
2.三体 (ハヤカワ文庫SF)
物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人女性科学者・葉文潔。彼女がスカウトされた軍事基地では人類の運命を左右するプロジェクトが進行するSF小説。数十年後、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられるたナノテク素材の研究者・汪淼。なぜそのような怪現象が起きているのか。父を殺されたその後の葉文潔が描かれていて、VRゲーム『三体』が示唆するものは意味深で、明らかになってゆくその真相がまた壮大なスケールの物語になっていましたけど、それでいて要所で事態を動かしていくポイントが人間らしい生々しい感情だったりするのがなかなか印象的でした。
3.ザリガニの鳴くところ (ハヤカワ文庫NV)
ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。
遠い未来、人類を含む天の川銀河の知的生命体による文明群は《水-炭素生物連合》(アライアンス)を結び、人工知性の文明ネットワーク《知能流》(ストリーム)に対抗していた。あるとき、《連合》の調査団は銀河の辺境の恒星系を調査する。この系は明らかに高い技術力を持つ文明によって改造されていた。しかし系内をいくら探してもこの恒星系を作り上げた知的生命体は発見できなかった。調査員の一員のイーサーは、彼らが知的文明ではなくもっと別の何かなのではないかと考え、《知能流》に加入して独自に調査を続ける……宇宙に存在する知性の本質を問う宇宙ハードSFを大幅加筆した完全版。
5.氷の致死量 (ハヤカワ文庫JA)
私立中学に赴任した教師の鹿原十和子。14年前に殺された教師と似ていたことから、彼女と殺人鬼・八木沼の運命が交錯するシリアルキラー・サスペンス。自分と共通点があったのではないかと感じて、14年前に学院で殺害された事件の被害者で、教師でもあった戸川更紗に興味を持つようになってゆく十和子。“ママ”を解体し、その臓物に抱かれて、更紗に未だ異常な執着を持ち続ける八木沼に、親子や夫婦、セクシャルな問題など様々なことが複雑に絡んでいて、導かれるように運命の糸が繋がってゆく展開で、視点が変わるとまた違ったものが見えてくる中、執着とボタンの掛け違いから起きた悲劇とその結末がなかなか印象的な物語でした。
6.スター・シェイカー (ハヤカワ文庫JA)
人類がテレポート能力に目覚めた近未来。不慮の事故がトラウマとなり能力を失った赤川勇虎が、違法テレポートによる麻薬密売組織から逃亡した少女ナクサと運命的な出会いを果たす物語。ふとしたきっかけから出会った特殊なテレポーターであるナクサにうっかり関わってしまったことで、否応なしに彼女の逃亡生活に巻き込まれてゆく勇虎。失われた地に住むロードピープルたちの助けを借りて、様々な人と出会い、敵の襲撃に対応しながら目的地である組織の拠点に向かう展開でしたけど、そこで明らかになってゆく壮大な計画があって、苦悩しながらも勇虎が立ち向かってゆく熱い展開は、文章がやや難解で粗削りながらもスケールの大きさを感じさせてくれる物語になっていました。
7.サーキット・スイッチャー (ハヤカワ文庫JA)
人の手を一切介さない完全自動運転車が急速に普及した2029年の日本。自動運転アルゴリズムを開発する企業の代表・坂本義晴が、仕事場の自動運転車内で襲われ拘束されてしまう近未来小説。「ムカッラフ」を名乗る謎の人物に突如拘束され、「坂本は殺人犯である」と宣言し尋問を始めた犯人からとある死亡事故が起きたロジックの説明と開示を要求された坂本。襲撃犯の様子が動画配信で中継される中、首都高封鎖が要求されて封鎖しなければ車内に仕掛けられた爆弾が爆発する緊迫感溢れる展開で技術的なネタも多くて完全自動運転の倫理観を改めて問われる中、エンジニアと組んだ刑事が意外なルートからのアプローチでその真相に迫ってゆくストーリーはテンポもよくてなかなか面白かったです。
8.AI法廷の弁護士 (ハヤカワ文庫JA)
複雑化する訴訟社会にあって、AI裁判官が導入された日本。あくまで機械として冷徹に分析する不敗弁護士・機島雄弁とこの国の正義をめぐるAI法廷が描かれる連作ミステリ。省コスト化・高速化により訴訟件数は爆増、法曹界は困惑とともにバブルなAI法廷を受け入れ始めた状況で、AIの穴をついて勝訴するハッカー弁護士の顔も持つ悪徳漢・機島が助手の軒下と組んで挑む、被告人を裏切りながら勝訴した殺人事件、脳波義足事故を巡る真相、不正データ使用リーク事件の再審請求、陥れられた軒下とマスターキー裁判。苦い過去の事件の真相やAI裁判官の疑惑も追う展開はやや強引な拡大解釈もありましたけど、アクの強いキャラたちがダイナミックな方法で盤面をひっくり返してゆく展開は痛快でなかなか面白かったですね。
9.ポケミス読者よ信ずるなかれ (ハヤカワ・ミステリ)
嵐により陸の孤島となった会員制クラブ。そこに居合わせた私立探偵。密室殺人。古今東西のミステリからの引用……。すべては本格ミステリの舞台として完璧かと思われた。しかし――。読者を待ち受けるものは困惑か狂喜か。これはミステリなのか、それとも……
西暦2096年。囮捜査で捕まった犯罪集団アサヒナ・ファミリーの朝比奈伊右衛郎が、巨大複合企業ハニュウ・コーポレーションCEOの羽生氷蜜により、羽生芸夢学園に強制入学させられる近未来サイバーパンクアクション。彼の持つポテンシャルに惚れ込んだ氷蜜の提案する更生プログラムとして、電装化体験型遊戯ジャケットプレイの特殊訓練を受けることになった伊右衛郎。魅力的な氷蜜たちと送る学園生活に少しずつ心境が変わりつつある彼が、ファミリーを率いて学園を襲撃した父レインボウや兄弟たちと対峙する展開で、強大な力を持つレインボウ相手に厳しい戦いを強いられる中で、暴かれてゆく水蜜の秘密に直面することになった伊右衛郎が、父を乗り越える戦いに挑む熱い展開はなかなか良かったですし、彼らが迎える結末もまた印象的な物語になっていました。
11.通り過ぎゆく者
1980年。ルイジアナ州の沖に小型飛行機が沈んだ。サルベージダイバーのボビー・ウェスタンは、海中の機内で9名の死者を確認する。だがブラックボックスがなくなっており、彼は10人目の乗客がいたのではないかと推測する。この奇妙な一件の後、彼の周囲を怪しい男たちがうろつきはじめる。徐々に居場所を失った彼は、追われるように各地を転々とする。テネシー州の故郷の家、メキシコ湾の海辺の小屋、雪に閉ざされた古い農家――原爆の開発チームにいた父の影を振り払えないまま、そして亡き妹への思いを胸底に秘め、苦悶しながら。喪失と絶望を描き切ったアメリカ文学の巨匠、最後の二部作。妹の物語を綴る長篇『ステラ・マリス』と対をなす傑作。
12.ステラ・マリス
1972年秋。20歳のアリシア・ウェスタンは、自ら望んで精神科病棟へ入院する。医師に問われ、彼女は語る。異常な聡明さのため白眼視された子供時代。数学との出会い。物理と哲学。狂人の境界線。常に惹かれる死というものについて。そして家族――原爆の開発チームにいた物理学者の父、早世した母、慈しんでくれた祖母について。唯一話したくないのは、今この場所に彼女が行き着いた理由である、兄ボビーのこと。静かな対話から孤高の魂の痛みと渇望が浮かび上がる、巨匠の遺作となる二部作完結篇。『通り過ぎゆく者』の裏面を描いた異色の対話篇。
技術革新と不平等の1000年史 下
posted with ヨメレバ
ダロン・アセモグル/サイモン・ジョンソン/鬼澤 忍/塩原 通緒 早川書房 2023年12月20日頃
生産性を高める新しい機械や生産方法は新たな雇用を生み、私たちの賃金と生活水準を上昇させる――これが経済の理屈だが、現実の歴史はしばしばそれに反している。中世ヨーロッパにおける農法の改良は飛躍的な増産を実現したが、当時の人口の大半を占める農民にはほとんどなんの利益ももたらさなかった。船舶設計の進歩による大洋横断貿易で巨万の富を手にする者がいた一方で、数百万人もの奴隷がアフリカから輸出されていた。産業革命にともなう工場制度の導入で労働時間は延びたにもかかわらず、労働者の収入は約100年間上がらなかった。なぜこのようなことが起きるのか? 圧倒的な考究により、「進歩」こそが社会的不平等を増大させるという、人類史のパラドックスを解明する。
14.細胞―生命と医療の本質を探る― 上・下
15.ソクラテスからSNS 「言論の自由」全史
「細胞」という概念や細胞生理学の知識は、医療や科学、生物学を大きく変えてきたのみならず、社会のあり方、ひいては「生命とは何か?」という私たちの価値観そのものを揺さぶってきた。コレラ、天然痘、エイズ、COVID-19といった感染症と免疫細胞との絶え間ない戦い。たゆまず働く血液や筋肉、神経などの細胞の驚くほど精妙な仕組み。そして分裂し生殖する細胞の神秘と、それを自らの手で操作しようとする人々の飽くなき欲望――文字通り「ニューヒューマン」を誕生させうる段階に入ったと著者が語るように、これからの人類に向けたビジョンを圧倒的スケールで描き出す。
言論の自由を万人に保障する、古代ギリシアの「パレーシア」のような平等主義と、「自由」が「放縦」に陥ることのないよう、言論の自由を限られた者のみに認めようとする、古代ローマの「リベルタス」のようなエリート主義。両者の相克は、啓蒙主義や市民革命などの歴史のうねりの中でどのような運命をたどってきたのか? 宗教やイデオロギーの対立において歴史上頻繁に見られる、言論の自由を擁護してきた者が権力を握ったとたんに抑圧する側に回る「ミルトンの呪い」は、なぜ昔も今も人間を呪縛しつづけるのか?虚偽情報やヘイトスピーチがインターネット空間に蔓延する現代にあってなお、言論の自由を「第一の自由」として守るべき理由はどこにあるのか? 「言論の自由」が対峙してきた数々の試練と、その真の輝きを描き出す渾身の力作。
1425年、明の皇太子・朱瞻基は遷都を図る皇帝に命じられ、首都の北京から南京へと遣わされる。だが、長江を下り南京へと到着したその時、朱瞻基の船は爆破され、彼の命が狙われていることが判明する。朝廷に恨みを持つ、反逆者の仕業なのか? さらに皇帝が危篤との報が届き朱瞻基は窮地で出会った、切れ者の捕吏・呉定縁、才気に満ちた下級役人・于謙、秘密を抱えた女医・蘇荊渓らと南京脱出と北京帰還を目指す。敵が事を決するまで十五日。幾千里にも亘る決死行が、今始まる。歴史サスペンス×冒険小説の超大作!
惑星パラダイス-1軌道上のすべての宇宙船で、感染する狂気が猛威を振るっていた。どれだけ食べても「肉」が欲しくて止まらない飢餓感、存在しない寄生体に侵入されたという嫌悪感。AIも同じ妄想にとりつかれ、船内は死に蝕まれている。狂気の原因は人間にもAIにも感染する「病原体」バジリスク。その衝撃の正体とは? サシャたちは狂気の闇から逃れることができるのか!? 実力派作家によるノンストップ・ホラーSF。
正体不明の異星種族ケンタウルス人の戦闘メカが、人類の惑星を侵略し始めた。そんななか、惑星セーフハーバーの若者レヴは、些細な交通違反により25年の強制労働か3年の戦闘任務の選択を迫られることに。彼は海兵隊に志願するが、その死亡率は78パーセント! レヴは過酷な訓練とさまざまな身体拡張を受け、ボディアーマーを装備して戦場へ向かうが……。現代版『宇宙の戦士』と人気の傑作ミリタリSF。
ラジオから聞こえる懐かしい声が、若いドイツ兵と盲目の少女の心をつなぐ。ピュリツァー賞受賞作。孤児院で幼い日を過ごし、ナチスドイツの技術兵となった少年。パリの博物館に勤める父のもとで育った、目の見えない少女。戦時下のフランス、サン・マロでの、二人の短い邂逅。そして彼らの運命を動かす伝説のダイヤモンド――。時代に翻弄される人々の苦闘を、彼らを包む自然の荘厳さとともに、温かな筆致で繊細に描く感動巨篇。
誰が検察官を殺したのか。そしてその死の意味とは。地下鉄の駅で爆弾騒ぎを起こした男のスーツケースから、元検察官・江陽の遺体が発見された。男は著名な弁護士・張超で、教え子だった江陽の殺害を自供するが、初公判で突然自供を覆す。警察は再捜査を進めるなかで、死んだ江陽が過去の溺死事件を追っていたことを知るが……。傑作社会派ミステリ。
21.歌われなかった海賊へ
1944年ナチ体制下のドイツ。父を処刑され居場所をなくした少年ヴェルナーが、エーデルヴァイス海賊団を名乗るエルフリーデとレオンハルトに出会う歴史青春小説。愛国心を煽って自由を奪う体制に反抗し、ヒトラー・ユーゲントにたびたび戦いを挑む少年少女たち海賊団。そんな彼らが市内に敷設されたレールに不審を抱き、その線路の先で非人道的な「究極の悪」が行われているのを目撃してしまう展開で、統制を強めてゆく体制に対する同調圧力が強まっていく中で、それに迎合する者、立ち向かう者、そして見て見ぬふりをする者たちと様々な姿があって、そんな彼らの生き様を読みながら、自分がこういう不条理を突きつけられたら、果たしてどうするだろうか…とつい考えずにはいられませんでした。
22.さやかに星はきらめき
人類が地球を脱し数百年が経過した未来。月に住む編集者キャサリンが人類全てへの贈り物となる本を作るため、宇宙に伝わるクリスマスの民話を集める連作短編集。話を集める過程で聞いた遠い星の開拓民の小さな女の子を愛した犬と猫、トリビトたちが特別な思い入れを持つ劇場船、人が住めなくなった地球にいる付喪神、山間の図書館に訪れた異星人の話。そういった話を集めて作られた本と幽霊船のエピソード。いつかこういう時代が来ることもあるのかなと思いながら読んでいましたが、猫がネコビトに、犬がイヌビトなどに進化している方向性がなかなか楽しくて、舞台設定が変わっても著者さんらしい雰囲気がよく出ていて良かったです。
23.冷蔵庫のように孤独に
護師の美咲が偶然見かけた写真の中で被写体として映っていた緑色の冷蔵庫。それをきっかけにかつて遭遇した不思議な出来事を思い出してゆくミステリ。14歳の時、ピアノが嫌になっていた美咲を救った、老齢の父と住みピアノを教えてくれた由貴奈先生の存在。彼女のおかげでピアノを好きになることができた美咲が由貴奈先生に教わった、発想記号を理解する時は空き地に捨てられた冷蔵庫を思い浮かべればいい、という不思議な言葉の意味。思わぬ形で再会した緑色の冷蔵庫の存在をきっかけに繋がってゆく、当時は気付かなかった様々な出来事が明らかになってゆくストーリーになっていて、短いながらも今に繋がる過去の出来事が鮮烈な印象を残す物語になっていました。
24.超新星紀元
1999年末、超新星爆発によって発生した放射線バーストが地球に降り注ぎ、人類に壊滅的な被害をもたらす。一年後に十三歳以上の大人すべてが死にいたることが判明したのだ。"超新星紀元"の地球は子どもたちに託された……! 『三体』劉慈欣の長篇デビュー作
25.白亜紀往事
恐竜と蟻が、現代人類社会と変わらぬ高度な文明を築き、地球を支配していたもう一つの白亜紀。恐竜は柔軟な思考力、蟻は精確な技術力で補完し合い共存していた。だが、二つの文明は深刻な対立に陥り……。種の存亡をかけた戦いを描く、劉慈欣入門に最適な中篇
26.機工審査官テオ・アルベールと永久機関の夢 (ハヤカワ文庫JA)
夢の動力、永久機関をめぐり発明詐欺が横行する18世紀。処刑された父の汚名を雪ぐため、機工審査官テオが真の永久機関を追究する物語。司教が永久機関の開発者には莫大な褒賞金を与えるとぶち上げたことから、褒賞金目当てに横行する永久機関をうたう詐欺。そのひとつひとつをあたり、永久機関だと主張するものを調べて矛盾を突いていくストーリーで、話数が多いこともあって登場人物が多い分、その把握が難しかった感もありましたが、親が火刑に処せられた背景はだいたい予想していた通りだったものの、クライマックスはなかなかいい感じで、当時の時代背景や技術の歴史に関する描写にはなかなか見るべきものがありましたし、三兄弟や友人キャラもなかなか良かったです。
27.グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船 (ハヤカワ文庫JA)
幼い頃にグラーフ・ツェッペリン号を見た不可解な記憶を持つ、それぞれ並行世界の2021年を生きる夏紀と登志夫。そんな二人の世界が繋がるSF青春小説。月と火星開発が進みながらもインターネットが実用化されたばかりの夏紀の世界。一方、宇宙開発は発展途上だが量子コンピュータの開発・運用が実現している登志夫の世界。それぞれの視点としてそれぞれ進んでいた二つの世界の物語。それがだんだん絡んでくるまでがやや長かった感もありましたが、そんな中で育まれてゆく確かな二人の絆を感じる一方で、意外な答えが提示されたその結末でしたけど、かけがえのない思い出を噛み締めながらも、思いのほかあっけらかんとしていたのが印象に残る物語でした。
28.ピュア (ハヤカワ文庫JA)
29.ウは宇宙ヤバイのウ!〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)
30.AIとSF (ハヤカワ文庫JA)
地上に棲む男たちを文字通り食べることが必要とされる変わり果てた世界で葛藤する女の子を描いた表題作ほか、性と人間のありように鋭く切り込む全六篇の短編集。常識が激変してしまった未来で、それでも大切な存在のために生きようとした少女の葛藤、幼馴染の性的な変身をめぐって揺れ動く複雑な思い、身近な友人が別の何かに転換した時にどう振る舞うべきなのか、未曾有の実験により12人の胎児の母となった研究者、ピュアの別視点から描かれた物語、サイボーグ化した少女娼婦と病弱な令嬢のコンタクトなど、最初はジェンダー的なテーマの短編集なのかなと思っていましたが、そんな枠には収まらないスケールで価値観を揺さぶってくる強烈なインパクトある一冊になっていました。
下校途中、いきなり巨大隕石が地球に直撃して全人類滅亡に直面した高校生・久遠空々梨。再び迫る隕石、襲い来る異星人の艦隊に直面して人類が大ピンチに陥る宇宙がヤバイ大活劇。目を覚ますとそこは隕石衝突の三日前で混乱する空々梨に、彼女は星間諜報組織〈偵察局〉のエージェントだったが、世界線混淆機の起動により記憶を失い日本の女子高生になってしまったことを告げる従姉妹の非数値无香。たくさんの登場人物たちを絡めてパロディやオマージュを詰め込んだ展開はほんのり百合を感じさせつつも何ともカオスで、勢いで読ませて駆け抜けた感もありましたが、これはこれでなかなか楽しめました。
人類文明を劇的に変えようとしているAI技術。22名の作家が激動の最前線で体感するAIと人類の未来を描いた書き下ろしアンソロジー第三弾。AIの進化に晒された2025年大阪万博までの顛末、チャットボットの孤独、AIカウンセラーの献身からシンギュラリティまで、さすがに22作品もあると同じテーマで書いても人によってだいぶ方向性は違う印象でしたし、好みも分かれそうな気がしましたけど、野崎まどさんは相変わらずぶっ飛んでるな…と思いつつ、長谷敏司さん、揚羽はなさん、人間六度さんあたりのお話が個人的には良かったですね。
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