今回は10月富士見ファンタジア文庫・GCN文庫の感想まとめです。内訳は富士見ファンタジア文庫の新作3点、続巻7点、GCN文庫の新作1点の計11点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
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魔王を斃した後の帰り道で (富士見ファンタジア文庫)
勇者と五人の仲間たちにより斃された魔王。王都に還り、報奨金を受け取って英雄と讃えられるはずの彼らが、王都までの帰り道でお互いの身の上話をする中で、次々と衝撃の真実が明かされてゆくエンディングファンタジー。魔王を倒した直後に王都への凱旋を拒否してパーティから離脱した弓手ジャレッドの悲嘆。それをきっかけに仲間たちが帰りの道中にそれぞれの因縁の場所に立ち寄ることを提案して、その中で明らかにされていく僧侶グレアムの想い、魔術師ラウニの事情、聖騎士レオナの約束、そして斥候兵ボニータの秘密。仲間たちを何も知らなかったことを突きつけられ、けれどかけがえのない仲間たちの想いを知って、思ってもみなかい展開には何とも言えない気持ちにもなりましたけど、最後にかけがえのないものを取り戻した勇者の結末には救われる思いでした。
はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。 (富士見ファンタジア文庫)
幼馴染・茜の命と引き換えに世界が救われてから一年。倒したはずの仇敵が再び現れ、茜が後継者に指名した絶望で引きこもる高橋嗣道が兵器スターゲイザーで戦う物語。科学者・山田麒麟に事情を告げられ、スターゲイザーを操るために必要な主人公化力を上げるために、ベタな学園モノのような計画に半ば無理矢理付き合わされる嗣道。茜を死なせてしまった後悔を抱える蛍、茜の隣に並び立てなかった蓮、茜に託された土門、そして山田麒麟が忘れていなかった過去と、茜を死なせた後悔しかなかった嗣道が、かつての仲間たちが抱えていた想いに触れ、時にはそれぞれのやり方で意思を継ごうとする彼らと衝突しながら、それも力に変えて仇敵に立ち向かう最後まで諦めない熱い展開はなかなか良かったです。
お隣の美人エルフの距離感が近すぎる件 ~私とイイコトしませんか?~ (富士見ファンタジア文庫)
お隣の美人エルフの距離感が近すぎる件 〜私とイイコトしませんか?〜(1)
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福山 陽士/昌未 KADOKAWA 2024年10月19日
高校入学を機に一人暮らしを始めた渡良瀬亮駕が、隣に住むゲーオタで酒好きで好奇心旺盛な、亜精霊たちにお世話されるダメニート・森江ルフに懐かれるほのぼの日常生活。どう見てもエルフなのになぜ周囲が疑問を抱かないのか首を傾げながらも、おかずのお裾分けをもらったり、ゲームに誘われたり、なぜか女子会にも招待される亮駕。同じアパートに住む天然同級生水瀬や彼女に異様な執着を見せる友人の早崎、ルフのお世話係をする双子コンビ・ティトリー&ネロリーなど、 個性的なキャラたちとの賑やかな日々が描かれる中で、ルフの過去も明らかになっていきましたけど、危機的状況に力を合わせて乗り越えたルフの思いも良かったですし、のんびりとしたかけがえのない日々をまた読んでみたいと思いました。
ラスボス討伐後に始める二周目冒険者ライフ2 (富士見ファンタジア文庫)
朱月十話/ファルまろ KADOKAWA 2024年10月19日
はじまりの街で美少女パーティと仲間になり、二周目の冒険を始めたマイト。王都に巣喰う吸血鬼をめぐる依頼が、かつての仲間をも巻き込み混迷を極めていく第2弾。王都近くの塔に居座る吸血鬼に起きた異変。旧友との再会でかつての仲間の窮地と王都の状況を知ってその解決に向かうマイトたち。リスティやプラチナの背景の掘り下げと同時に、危惧される後宮への潜入任務もある展開では、マイトの転生前の繋がりが活きていて、覚醒した新たな能力も破格でしたね。現メンバーと確かな絆が育まれる一方、かつての知己も彼を気に掛けていて、旧パーティーメンバーの今後やレベル帯制限の謎、女神姉妹の複雑な関係などいろいろ気になることもありますが、仲間たちも着実に成長していて今後の展開が楽しみです。
魔王2099 4.終極防衛都市・ワシントン (富士見ファンタジア文庫)
統合暦2149年。新生魔王軍の侵攻で滅びゆく人類最後の要塞都市『ワシントン市』から、魔王ベルトールを討伐するために最強の機械人形マトイが過去へと旅立つ第4弾。消息を絶った旧家臣の手掛かりを追うため、凄腕の探偵・茶畑絵美の元を訪れたベルトール。結果として絵美の右腕として探偵になった魔王が、狂気に満ちた連続殺人犯、かつての配下を名乗る少年、そして未来から襲来した少女をめぐる事件に巻き込まれていくなかなかカオスな展開になっていて、カワイイを自称して、未来と結びつかない今のベルトールに魅入られ、感化されていくマトイもなかなかいいキャラで、それだけに明らかになってゆくやりきれない真相と今回の結末には、切なさを感じずにはいられませんでした。
週に一度クラスメイトを買う話5 ~ふたりの秘密は一つ屋根の下~ (富士見ファンタジア文庫)
週に一度クラスメイトを買う話5 〜ふたりの秘密は一つ屋根の下〜
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羽田 宇佐/U35 KADOKAWA 2024年10月19日
進学した大学こそ違うものの、仙台の提案でルームメイトになった宮城。春になって形を変えて距離感を変えた2人の関係が、より難しいものになってゆく第5弾。前より距離が近づいたはずなのに、5000円という大義名分がなくなったことで、逆に触れ合う理由を見失ってしまう2人。大学生活を構築しながら、何とか宮城にアプローチする方法を模索する仙台に対して、大学生活や家庭教師のバイトなど、自分の知らない彼女が増えていくことを面白くないと感じる宮城。ハリネズミのようで踏み込みづらいのに、趣味も合わなくて一緒に出かけても楽しくないとか言う宮城の面倒くささには苦笑いでしたけど、それでも今回仙台が勇気を持って距離を詰めたことで、宮城ももう少し素直になれればいいんですが…。
双星の天剣使い6 (富士見ファンタジア文庫)
故郷の敬陽を奪還したものの、アダイによって攫われた白玲。張隻影は軍師の瑠璃や皇妹の美雨に支えられて白玲奪還に動き出す第6弾。小手先の策を弄する栄の鼠をものともせず一蹴して、その都を陥落寸前まで追い込んだアダイ率いる玄軍。売られた喧嘩に残された力をかき集めて、全力で買った隻影が殴り込んでの決戦という今回の構図で、隻影に並び立つのは誰かを巡って火花を散らす白玲とアダイのライバル関係には苦笑いでしたけど、隻影とアダイの前世の因縁に決着をつける激突は不可避で、崩壊する流れ自体はどうしようもなかったですけど、これまでの流れを考えれば物語としての落とし所は意外にも微笑ましくて、個人的にこれはこれで良かったと思える結末でした。
じつは義妹でした。8 ~最近できた義理の弟の距離感がやたら近いわけ~ (富士見ファンタジア文庫)
じつは義妹でした。8 〜最近できた義理の弟の距離感がやたら近いわけ〜
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白井 ムク/千種 みのり KADOKAWA 2024年10月19日
芸能活動にかこつけて、涼太の修学旅行に抜け目なく同行していた晶。そこで2人が知り合った女の子・涼花との繋がりで涼太の実の母・夏子に再会する第7弾。元母と思わぬ再会を果たしたことで、薄々そうではないかと思っていたことを事実として認識してしまう涼太、そして明かされていく涼花の病状。頼れる建さんも倒れてしまい、兄として自分が取るべき選択に悩む涼太という構図でしたが、そんな状況に上田兄妹や月森、西山たちが涼太のために立ち上がって、事実が明らかになっても変わらない家族としての揺るぎない絆が彼を支えて、苦しいときも一緒にいてくれる晶の存在に救われながら、ふっきれて自分の気持ちにも素直に向き合えるようになっていったその結末はなかなか良かったですね。
ロクでなし魔術講師と追想日誌11 (富士見ファンタジア文庫)
ドラゴンマガジンに収録されていた4作品に、書き下ろしでグレンの最後の授業を加えた短編集第11弾。バレンタインを巡るチョコをもらえないモテない男子生徒たちの蜂起と結末。グレンが三人娘+マリアと向かったサキュバス退治の顛末。煽り続けて直接対決を挑まれた怪盗Qに、その無能っぷりを露呈させた魔導探偵ロザリーの強運。隣国への潜入捜査で偽装夫婦役となったグレンとセラの甘いエピソード。そして卒業間近の生徒たちにグレンが課した最終試験。今回もグレンと相変わらず三人娘たちとのテンポのよいやりとりが楽しかったですけど、そんな中でイヴのツンデレっぷりもいい感じに効いていて、この物語の楽しさがつまっていました。
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦16 (富士見ファンタジア文庫)
永きに渡り対立していた帝国と皇庁。災厄と魔女イリーティアという共通の敵を前に、手を組んで共闘することを決意する第16弾。天帝ユンメルンゲンと女王ミラべアの対話を経て共同戦線を張り、それぞれ精鋭を連れて星の中核を目指すために星の深淵に侵入。奇しくも部下たちと外れた天帝と女王の邂逅と情報共有があって、帝国側と皇庁側それぞれの場所で試行錯誤しながら、襲いかかってくる禍々しい怨念を相手に戦い、様々な手がかりを得る過程にもそれぞれの個性がよく出ていましたね。イリーティアとヨハイムの共犯者めいた関係も印象的で、思惑に導かれるように合流した彼らの前に現れた存在が今後の展開にどう絡んでくるかも気になるところではあります。
フェアリー・バレット-機巧乙女と偽獣兵士- (GCN文庫)
フェアリー・バレット -機巧乙女と偽獣兵士ー
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三嶋与夢/itaco マイクロマガジン社 2024年10月19日頃
異界から「偽獣」が侵攻してくる近未来。鋼鉄のドレスで戦う女性に頼り切りな現状で、対偽獣人型兵器のテストパイロット一二三蓮が『第三学園』に入学する学園ファンタジー。通常兵器が効かず戦乙女が活躍して男は力不足という状況で、対偽獣人型兵器のテストパイロットとして女生徒だけの『第三学園』に入学。エースに目をつけられる一方、彼のことを助けてくれる女生徒も現れるものの、戦うには程遠い状況から抜け出せないまま、様々な思惑から実戦投入されてしまう展開で、蓮を実験体としてしか見ていない計画主任の思惑も垣間見えてしまい、二転三転する状況で何を信じればいいのか分からなくなる中、それでも苦境を乗り越えて戦い抜き、仲間として認められてゆくその結末はなかなか良かったです。