BOOK☆WALKERで22年12月20日までに配信されたKADOKAWA作品60,000点以上がコイン50%還元!(1/23まで)ということで対象商品の中からおすすめ作品を30作品セレクトしてみました。
今回はそれの角川文庫と、先日の富士見L文庫で選択肢になかった作品を30作品セレクトしています。どれも機会があったらおすすめしたいと思っていた作品ばかりなので、気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。メディアワークス文庫については別途セール企画があるようなので別にもうひとつ企画を作る予定です。
※下記紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
1.わたしの幸せな結婚 (富士見L文庫)
顎木 あくみ/月岡 月穂 KADOKAWA 2019年01月15日頃
名家に生まれたものの実母を早くに亡くし、継母と義母妹に虐げられて育った美世。そんな彼女が名門だけれど冷酷無慈悲と噂の若き軍人・清霞への嫁入りを命じられる物語。義妹のように異能も発現せず、使用人のように扱われていた美世に訪れた転機。我儘放題のお嬢様に辟易していた清霞と、自信なさげだった美世が少しずつ心を通わせてゆく積み重ねがとても良かったですね。因縁ある彼女の実家とはとりあえず決着が付きましたけど、彼女の生い立ちにまつわる謎もまだ残っていて二人のその後も見てみたいですね。
2.メイデーア転生物語 (富士見L文庫)
友麻碧/雨壱 絵穹 KADOKAWA 2019年10月15日頃
幼馴染に片想いしていた前世を時々夢に見る辺境貴族の令嬢マキア。運命的な出会いを果たした少年トールと魔法を学ぶ楽しい日々を過ごしていた彼女が、引き離されたトールと再会するために奮闘する転生ファンタジー。トールが救世主の守護者に選ばれ引き離されてしまう二人。トールと再会するため王都で最高峰の魔法学校を目指すマキア。学校では個性的な仲間もできて、選ばれていた救世主がまた前世でいろいろと因縁のあった存在で、抗いがたい運命に翻弄されるマキアとトールが大切な絆を守っていけるのか、続巻がとても楽しみな新シリーズですね。
3.准教授・高槻彰良の推察 (角川文庫)
澤村 御影 KADOKAWA 2018年11月22日頃
幼い頃に遭遇した怪異によって人の嘘がわかる耳を持ち、それゆえに孤独になってしまった大学生・深町尚哉。そんな彼が怪異に目がないイケメン准教授・高槻と出会い、常識担当の助手として様々な事件に遭遇するミステリ。いないはずの隣の空き部屋から聞こえる奇妙な音の正体、ふと気がつくと周囲にいつも針が落ちている呪い、肝試しに出かけて神隠しに遭った少女。高槻を理解する周囲の人々もなかなか印象的で、孤独な尚哉を分け隔てなく受け入れてくれる彼らの優しさが染みますね。幼い頃に奇妙な体験をした二人の今後に期待したいシリーズです。
4.暁花薬殿物語(富士見L文庫)
薬師を目指していたはずが代役で急遽入内することになってしまった暁下姫こと千古。大貴族出身4人の后候補が揃う宮廷でうまく抜け出すことばかり考えていた彼女が、帝と出会い少しずつ変わってゆく平安宮廷風ファンタジー。幼馴染や乳母たちと共に後宮入りすることになったお転婆で快活な千古が巻き起こす数々の騒動。宮廷内で味方もなく孤立する9.案外似た者同士だった帝との意外な出会い。そんな彼女が周囲に支えられつつらしさを発揮し、帝とも前向きに向き合うようになってゆく展開はなかなか良かったです。
5.龍に恋う(富士見L文庫)
道草 家守/ゆきさめ KADOKAWA 2020年07月15日頃
珠は寒空の帝都で不思議な髪色の男に救われる。これが運命の転換点だった。寒空の帝都に放り出された珠。彼女の窮地を救ったのは、不思議な髪色をした男・銀市だった。口入れ屋の旦那である銀市の厚意で、珠は住み込みで働くことに。感謝する珠だが""""人ならざる者""""がみえて贄とされた過去により、上手く感情を表せない。一方の銀市も複雑な境遇のようで……だからこそ珠を思いやってくれる。恩に報いるため健気に勤める珠は、店でも信頼を得て平穏を知る。しかし、帝都で続く少女の失踪事件に否応なく巻き込まれ――。秘密を抱える珠と銀市が、お互いの居場所を見つけるまでの浪漫綺譚。
6.お電話かわりました名探偵です(角川文庫)
佐藤 青南 KADOKAWA 2020年12月24日
Z県警本部の通信指令室。異様に奇妙な電話を引き寄せてしまうイケボイスの早乙女廉を、隣席の万里眼こと君野いぶきが助け、電話の情報のみで事件を解決に導いていく警察ミステリ。早乙女が次々と引き当てるイエが盗まれた、大根が食べられた、マンションに幽霊がいる、家の壁に落書きがされている、女の人が刺されたといった不審な通報を、電話で話しているだけで真相に辿り着いてしまういぶきの洞察力が凄まじいですが、彼女の指名で隣の席にいるのにたびたび甘酸っぱい距離感を台無しにする鈍感な早乙女のヘタレっぷりがもどかしいですね(苦笑)
7.榮国物語 春華とりかえ抄 (富士見L文庫)
一石月下/ノクシ KADOKAWA 2017年09月15日頃
榮の貧乏官僚の家に生まれた双子、金勘定にシビアな姉・春蘭と刺繍を得意とする立派な淑女に育った弟の春雷。誤った噂は皇帝の耳にも届き春蘭の後宮入りと春雷も科挙受験が決まり、追い詰められた二人が入れ替わることを決意する中華ファンタジー。双子を利用しようとする野心家・天海宝が出世を目論む理由。妃嬪を避けるため双子が近づいた公主が知ってしまった陰謀。春蘭と口が悪い海宝の毎度いがみ合う関係からの変化や、そんな彼の意外な一面と窮地に双子たちも協力しての大逆転劇はなかなか面白かったです。
8.後宮の検屍女官 (角川文庫)
大光帝国の後宮が大騒ぎになった「死王」騒動。皇后の命を受け、騒動の沈静化に乗り出した美貌の宦官・延明が、幽鬼騒ぎにも動じずに居眠りしてばかりの侍女・桃花と事件解決に乗り出す中華後宮検屍ミステリ。謀殺されたと噂される妃嬪の棺の中で見つかった赤子の遺体、宦官殺害の冤罪、自害したとされる侍女の死因、一連の事件の真相。ものぐさで野心もないぐうたら侍女なのに検屍となると覚醒する桃花、どこか嘘くさく腹黒い延明のコンビが事件を解決する展開でしたけど、ああみえて意外と仲間思いだったりする桃花の意外な一面が効いていました。
9.聖女ヴィクトリアの考察 アウレスタ神殿物語 (角川文庫)
春間 タツキ KADOKAWA 2021年08月24日
平和を司るアウレスタ神殿の聖女のひとりで霊が視える少女ヴィクトリア。その能力を疑われ追放を言い渡された彼女が、辺境の騎士アドラスに依頼され、出生の謎を解き明かす謎解きファンタジー。アドラスと共に彼の故郷へ向かい、出生の秘密を調べ始めるヴィクトリア。彼女が巻き込まれてゆく思惑が絡み合う帝位継承争い。真実はどこにあるのか、陥れられた窮地をいかに乗り越えるのか。腹を括った彼女の優れた観察力・洞察力で事態を打開して、思ってもみなかった真実へと導いてゆく展開はなかなか面白くて、また続きを読んでみたいシリーズです。
10.王妃さまのご衣裳係(角川文庫)
結城 かおる KADOKAWA 2021年08月24日
涼国の没落貴族の娘で、女官として後宮に入り家門再興に燃える鄭鈴玉。しかし反抗的・落ちこぼれの烙印を押されてしまった彼女が、地味で権勢もない王妃の女官となる中華風ファンタジー。ある一冊の小説と友人たちとの出会いにより次第に服飾の才能を開花させたことで、鈴玉もまた陰謀渦巻く後宮の争いに巻き込まれてゆく展開でしたけど、最初は危なっかしい生意気な女官という印象だった彼女が、大切な人たちのために気概を見せるようになってゆく成長があって、自分にとって本当に大切なものを見出してゆくその姿にはぐっと来るものがありました。
11.小説 すずめの戸締まり (角川文庫)
九州の静かな港町で叔母と暮らす17歳の少女、岩戸鈴芽。ある日の登校中、美しい青年・宗像草太とすれ違った鈴芽は、「扉を探してる」という彼を追って山中の廃墟へと辿りつく映画ノベライズ。崩壊から取り残されたように、ぽつんとたたずむ古ぼけた白い扉。何かに引き寄せられるようにその扉に手を伸ばす鈴芽。日本各地で災いが訪れてしまう扉が開き始めて、様々な曲を絡めながらその扉を閉めるために全国を奔走する鈴芽と草太という構図で、一緒に行動しながら成長する鈴芽と育まれてゆく絆があって、最後まで諦めずに見事大切なものを取り戻してみせた結末にはぐっと来るものがありましたね。
12.青くて痛くて脆い(角川文庫)
大学1年の春に秋好寿乃に出会い、二人で秘密結社「モアイ」を結成した楓。将来の夢を語り合った秋好はいなくなり、すっかり変わってしまったモアイを取り戻すべく楓が動き出す青春小説。周囲から浮いていて誰よりも純粋だった秋吉と、彼女の理想と情熱に感化されつつ徐々にすれ違うようになった楓。明らかになってゆく楓のモアイへの複雑な思いと不穏な構図、そしてやりきれない結末には流石に頭を抱えたくなりました。どこかで軌道修正できなかったのかいろいろ考えてしまいましたが、こういう自己陶酔的な青臭さや痛さもまた青春なんですよね…。
13.#推しが幸せならOKです (富士見L文庫)
常世 かくり/猪狩 そよ子 KADOKAWA 2022年10月15日頃
国民的ガールズグループ『coc9tail』年内解散を発表。そのトップアイドルである黛息吹と、彼女の激推しぶりをファンも認める全力オタクで超絶美形の人気俳優・柊美聖の推し活ピュアラブコメ。国民のほとんどがその動きに注目するほど広く知られ、案の定大ダメージを受けていた<国民の王子>美聖。更に息吹には結婚の噂も囁かれ、息吹とのやりとりから、自身の偽らざる想いをはっきりと自覚してしまう美聖。そこからのデビューの頃から積み重ねてきた二人の関係性の劇的な変化があって、年内解散へ向けて研ぎ澄まされてゆく息吹を献身的に支える美聖がまた尊くて、そんな不器用でピュアな二人が迎える結末が、またあまりにも素敵すぎて目眩がしてしまいました(苦笑)
14.魔女の婚姻 偽花嫁と冷酷騎士の初恋 (富士見L文庫)
村田 天/神澤 葉 KADOKAWA 2022年10月15日頃
秘薬を取引したとして魔女だった母が連行されて以来、一人ひっそりと生きてきた青の森の魔女ネリの元に、宿敵エルヴィンとの政略結婚を回避したい令嬢が訪ねてくる偽装結婚ファンタジー。ソフィーの結婚相手が母を連行したエルヴィンと知り、母の行方を捜すために変異魔術で彼女に成り代わり嫁入りするネリ。その中で少しずつエルヴィンが化石病撲滅に賭ける理由を知り、ネリのありように彼の心境も少しずつ変わっていって、いつしかかけがえのないものになっていた偽りの結婚生活、騙していることに苦悩していたネリの苦渋の決断、そして化石病が貴族の間だけで蔓延していた真相と、後半はなかなか展開が動きましたけど、紆余曲折の末に二人が迎える結末に至るまでのストーリーが自分の好みにあまりにもどストライクすぎて心が震えました(苦笑)
15.仙文閣の稀書目録 (角川文庫)
そこに干渉した王朝は程なく滅びるという伝説の巨大書庫・仙文閣。帝国春の少女・文杏が、危険思想の持主として粛清された恩師が遺した唯一の書物を届けるべく訪れ、仙文閣の典書・徐麗考と出会う中華ファンタジー。麗考に救われたものの、無事蔵書される心配で住み込むことになった文杏が知る壮大な仙文閣の威容。文杏を持ち込んだ書物を巡って、権力に屈しない図書館めいた仙文閣で必要とされる資質が問われる展開でしたけど、知識云々よりももっと大切なことがあるんですよね。文杏がこれからどう成長してゆくのかまた読んでみたいと思いました。
16.君を描けば嘘になる (角川文庫)
寝食も忘れてアトリエで感情の赴くまま創作に打ち込む毎日だった瀧本灯子が出会った、自分にはない技術を持つ南條遥都という少年の存在。お互いに認め合う二人の若き天才の喜びと絶望の物語。絵を描くこと以外の才能が壊滅的だった灯子と、そんな彼女の指針となったもう一人の天才・遥都。そんな二人のありようを影響を受けた周囲の視点からも浮き彫りにしつつ、良くも悪くも直情的な灯子に対して、断片的にしか描かれない不器用な遥都の積み重ねてきた想いが垣間見える結末は、ほんと素直じゃないなあと苦笑いしつつもとても良かったと思いました。
17.彼女の色に届くまで (角川文庫)
画廊の息子で幼い頃から才能を過信し画家を目指している緑川礼。しかしいつの間にか冴えない高校生活を送っていた礼が、無口で謎めいた同学年の美少女・千坂桜と出会うアートミステリ。礼が衝撃を受けた原石のような彼女の絵の才能。その推理で礼の窮地を救ってみせる桜の意外な一面と、共に過ごすようになってゆく日々。圧倒的な才能を前に平凡な自分を突きつけられる葛藤と少しの打算、生活力皆無な桜が気になって飼育係として世話を焼いてしまう礼の複雑な想いが悩ましいですが、それでも不器用な二人らしい結末はとても素敵なものに思えました。
18.コミュ障探偵の地味すぎる事件簿 (角川文庫)
入学早々友達づくりに乗り遅れていたことに気づいて愕然とする房総大学の新入生・藤村京。教室に残された高級な傘に気づき、その持ち主を推理し始めるコミュ障探偵ミステリ。傘を忘れた人は誰か、服屋で消えた同級生の謎、カラオケで酒を飲ませた犯人、祭りの中での盗難事件、元喫煙室で起きた冤罪事件の真相。いろいろ考え過ぎて話せなくなる、動けなくなってしまう藤村だからこそ、その推理力には眼を見張るものがあって、少しずつ増えてゆくかけがえのない友人たちを助けるため、遭遇した謎を推理してゆく彼のありようはとても好ましかったです。
19.17歳のラリー (角川文庫)
十七歳の春。突如明かされた三年生のエース川木の渡米が平凡な都立高校テニス部に引き起こした波紋。絶対的な才能を持つ彼に対し、なかなか言い出せなかった仲間達の様々な想いが明らかになってゆく青春群像劇。突如明かされた途中で退学も厭わない決意表明に、ダブルスの相棒、女子部のエース、ゆるい部員、幼馴染のマネージャー、部長たちそれぞれの視点から彼への複雑な想いが綴られてゆく展開でしたが、関わってきた川木にもまたいろいろ思うところがあって、そんな連鎖的に明らかになってゆく等身大の熱い想いがなかなかぐっと来る物語でした。
20.転生佳人伝 寵姫は二度皇帝と出会う (角川文庫)
暗殺され非業の死を遂げた尤皇帝・陶淵紫。来世で再び巡り会い、護る力を得るため神仙に自らの命を供物として捧げた寵姫・劉昭儀が、二百年後に白花珠として生まれ変わる中華風ファンタジー。淵紫と同じ瞳を持つ若き皇帝・陶紫英の危機を救い、身の回りで不穏な事件が続く彼の警護係として仕える花珠。今回は意外にも脳筋の武官ヒロインが主人公でしたけど、淵紫とはまるで違う紫英に振り回され、事件が続いて真犯人が誰か疑心悪鬼に陥りがちな状況の中、劉昭儀でなく花珠として紫英と向き合うようになってゆく結末にはぐっと来るものがありました。
21.解剖探偵 (角川文庫)
首吊り死体発見の報を受け、現場に急行した新人刑事・祝依然。霊が見える新人刑事が美しき孤高の解剖医・霧崎真理と未解決事件にメスを入れる法医学ミステリ。祝依が事件性を主張するも、それを一蹴し自殺で処理しようとする先輩刑事の相田。そこに現れた風変わりで凄腕の霧崎が他殺を指摘する展開で、ゴシックロリータに白衣をまとう見た目にインパクトのある彼女が実はコミュ症というギャップも効いていて、苦い過去がトラウマとなっている霧崎が、葬儀屋の猫屋敷姐さんに振り回されたり、復讐のために泳がせていた犯人に嵌められかけたりしながら、伏線を回収しつつ自殺に偽装された殺人事件の真相に挑む展開は面白かったです。これは続巻にも期待したいシリーズです。
22.遺産相続を放棄します (角川文庫)
木元 哉多 KADOKAWA 2022年07月21日
遺産目当てで室町時代から続く名家・榊原家当主の孫・俊彦に嫁いだ妻の景子。しかし当主の死による遺産相続で俊彦が権利を放棄、その思惑が狂ってゆく遺産相続ミステリ。何とか夫を翻意させようとするも首尾よくいかず、そればかりか事故で義姉を死なせてしまう景子。死体を隠して景子を脅迫したXは誰か。様々な思惑が絡み合う騒動劇の中、頭脳明晰だった景子は夫があまりにも浮世離れし過ぎていて、読者も一緒にイライラさせられるそのダメ男っぷりを見誤った人の見る目のなさが敗因だったのは間違いないですけど(苦笑)、関係者たちを見極めて裏で糸を操り自らの目的を達成してみせた意外な黒幕の暗躍は見事でした。
23.教室が、ひとりになるまで(角川文庫)
北楓高校で起きた三人の生徒連続自殺事件。クラス内でも地味な存在の垣内友弘が、最高のクラスで起きた一連の不審死の謎を追う青春ミステリ。生徒に代々引き継がれてきた4つの特殊能力。不登校の白瀬美月から三人を殺した死神の存在を知らされた垣内が、突如引き継いだ特殊能力で他の能力者や犯人の正体を探ってゆく展開で、スクールカーストの力関係や伏線を巧妙に絡めながら、地味な特殊能力を駆使した殺人の結末へと導いていく展開はお見事。突きつけられた現実への失望があるからこそ、そんな彼にもたらされる一筋の光にぐっと来る物語でした。
24.僕の目に映るきみと謎は(角川文庫)
異常な世界が日常に視えてしまう女子高生・祀奇恋子。彼女と幼馴染・真守が、親友から怪しい人形を渡された女子生徒の相談を受け、「除霊推理」で恋子と真守のコンビが怪異を暴くオカルトミステリ。5W1Hを駆使して真相に迫り除霊する恋子と異界に繋がる扉を閉じることが出来る真守。当たり前のように怪異が視えてしまう日常で、怖がりのくせに逃げない幼馴染を守る二人の関係がなかなか絶妙で、相手を呪い殺す「トモビキ人形」を巡る真相とその結末もまたなかなか壮絶なものがありましたけど、そんな二人の物語をまた読んでみたいと思いました。
25.n回目の恋の結び方 (角川文庫)
上條 一音 KADOKAWA 2022年01月21日
30代を目前に焦るも恋愛はご無沙汰気味のSEとして働く鎧塚凪27歳。そんなある日、会社でのトラブルをきっかけに、20数年来の幼馴染で同僚・結城圭吾との距離が急接近するオフィスラブコメ。チームリーダーとして理不尽な壁にぶつかることも多い凪と、天才エンジニアで明るく人望も厚い圭吾。単なる家族ぐるみの腐れ縁の幼馴染だと思っていた圭吾が実は凪への片想いを拗らせ続けていて、鈍感すぎる彼女をフォローしながら、そのかけがえのない関係を守ろうと奮闘する圭吾、戸惑いながらも真摯に向き合った凪の関係がとても素敵な物語でした。
26.獣姫の最後の恋 (富士見L文庫)
旋 めぐる/さくらもち KADOKAWA 2022年12月13日頃
悲惨な歴史を経て一族を守る力を手にした代わりに、代償として子を産むと死ぬ伽羅族の当主。新当主レイラがある日、森で諜報活動をする他国の青年ソウに一目で恋に落ちるファンタジー。今までそこまで惹かれる相手もおらず、宿命に実感もなかったレイラが突然落ちた運命の恋。他国で仕える身ゆえ共にあることはできないというソウ、己の過酷な運命を知りつつ彼の子を身籠るレイラ。けれど子供が産まれるまで一緒に危機に立ち向かってくれたソウとの間には育まれた確かな絆があって、けれどレイラを思うがゆえの彼が提示した宿命から逃れる仮説は、彼女にとってみればなかなか過酷な選択で、果たしてそれにどう向き合ったのか、相反した複雑な願いを抱いてしまうその結末がなかなか印象的な物語でした。
27.茶寮かみくらの偽花嫁(角川文庫)
あさば みゆき KADOKAWA 2021年01月22日
いくら食べてもお腹が空く原因不明の虚弱体質による病欠続きで出席日数が足りず、ついに高校を留年した大島小鳥18歳。ある日行き倒れていたところを、助けてくれたミステリアスな料理人・坂頼兼と結婚……とは形ばかりの奇妙な同居生活を始める契約結婚譚。鎌倉を舞台に出会った人をその特異体質で頼兼ととともに救う一方で、なぜ彼はわたしを助けてくれるのか?という疑念を膨らませてゆく小鳥。まあ確かに彼は分かりづらいしもっともな疑問でしたけど、頼兼の作る美味しそうな料理を通じて心を通わせてゆく二人の関係はなかなか良かったですね。
28.水神様がお呼びです あやかし異類婚姻譚 (角川文庫)
美形だがマイペースな1つ上の幼馴染天也と、平和な毎日を送るお人好しの高校生・美月。しかし突然、不可解な現象に立て続けに襲われ、それが水神様からのプロポーズであることを知る異類求婚ファンタジー。綺麗な緑色の石の雨が降り注ぎ、解読不能な手紙が届く神様の暴走には苦笑いでしたけど、天也や兄の公太を頼りながら求婚を断ろうと奮闘する中で、天也への想いを自覚していく美月がいて、明かされるご先祖様と水神の因縁、そして天屋たちの秘密があって、懸命に向き合って本当に大切な想いを見出す優しい結末にはぐっと来るものがありました。
29.トラペジウム (角川文庫)
高山 一実 KADOKAWA 2020年04月24日
「絶対にアイドルになる」ため己に4箇条を課して高校生活を送る高校1年生の東ゆうが、東西南北の仲間を集めて高校生活をかけて追いかけた夢を描く青春小説。「SNSはやらない」「彼氏は作らない」「学校では目立たない」「東西南北の美少女を仲間にする」を信条に掲げて、他校の個性的な女の子を仲間にしながら地道に積み上げていったアイドルへの道。したたかにひたすら自らの夢を叶えるため邁進するがゆえに、仲間に助けられることもあればすれ違うこともあって、挫折しながらも夢を諦めなかったゆうが迎えた結末はなかなか悪くなかったです。
30.永遠についての証明 (角川文庫)
岩井 圭也 KADOKAWA 2022年01月21日
特別推薦生として協和大学の数学科にやってきた瞭司と熊沢、そして佐那。眩いばかりの数学的才能で周囲の人生を変えていった瞭司の運命の出会いと失意、彼の遺した研究ノートから熊沢がその想いに再び向き合う物語。仲間と得た成果に希望を見出す瞭司と、突出した成果がそれぞれが別の道を選ぶきっかけとなってしまう皮肉。瞭司と仲間たちのすれ違いは残念でしたが、彼が遺した研究ノートに見出した可能性が、形は変わっても失われていなかったそれぞれの想いを再び繋げていって、それが新たな希望を紡いでゆく展開にはぐっと来るものがありました。