毎年恒例の「このライトノベルがすごい」、今年も9月に投票開始すると思いますが、それに向けて例年通り投票対象期間中に発表された新作ライトノベルのうち、自分が読んでオススメしたいと思った作品を紹介することにしました。
今回の青春小説編ともうひとつファンタジー編にざっくりと分けて各30作品紹介予定です。特に青春小説編の方は本当にいい作品が多く例年以上に激戦区で、最後の方は何を入れるのか削ったり入れたり最後まで悩みました（苦笑）。
ファンタジー編はこちら↓
投票や新規開拓の参考になれば幸いです。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
1.天使は炭酸しか飲まない(電撃文庫)
恋に悩める人たちをちょっと特殊な力を使って密かに救ってきた久世高の天使・明石伊緒。ようやく探していた天使を見つけ出した久世高の三大美女の一人・柚月湊が、伊緒に深刻な悩みを打ち明ける青春小説。柚月湊の異常な惚れ癖を直すため、そのささやかな秘密の力を使いながらその原因を探るために試行錯誤を進めてゆく伊緒と湊。その過程で二人が抱える切ない過去や、伊緒が炭酸しか飲まない理由も明らかになっていって、そんな彼らを見守る第三者だからこそ気付くこともあって、真摯に向き合ってきたからこそ気づけなかったすれ違い、そして窮地に陥ってしまった湊を救う圧巻の展開は控えめにいって最高でした。不器用な二人のこれからがとても楽しみな期待の新シリーズですね。22年9月に3巻目刊行予定。
2.顔さえよければいい教室 1.詩歌クレッシェンド (ファンタジア文庫)
三河 ごーすと/necomi KADOKAWA 2022年06月17日
音楽、ダンスなどあらゆる分野の天才が集う芸能学校・私立繚蘭高校。そんな中で唯一無二の歌声を持つ池袋詩歌が兄の楽斗に支えられ、その才能を見出されていく青春小説。兄ナシでは生活できない引きこもりながら、兄のプロデュースによってネットで伝説のVSINGERでもある詩歌。そんな彼女が楽斗と一緒に動画配信で評価される学校で仲間を集め、ド貧乏生活から這い上がろうとする展開で、自分をプロデュースする登場人物たちそれぞれの個性もいい感じに効いてましたけど、何より普段の様子からは想像もできないほど才能豊かで、苦悩に隠された本当の素顔を見出してみせる詩歌がなかなか魅力的な存在でした。
駱駝/ブリキ KADOKAWA 2021年10月08日
訳ありで前の会社を追われ、なかなか成果をあげられないアイドルグループ『TiNgS』のマネージャーとなった日生直輝。彼をマネージャーに迎え自分たちの夢を叶えるべく三人のアイドルたちが悩みながらも奮闘するアイドル小説。一つ特別な力を持っている直輝が見抜いたメンバー玉城杏夏、青天国春、聖舞理王たちそれぞれの嘘。そんな彼女たちの真意を知るべくひとりひとりに真摯に向き合いながら、一方で過去の人脈もフル活用して知名度を上げるべく着々と手を打っていく直輝の頑張りに応えるため、自らの夢を叶えるため無謀とも思える試練に見事応えてみせた彼女たちの頑張りが、最後の最後でその意味合いをガラリと変えてしまう急展開によってこれからどうなるのか、これは続巻が楽しみな新シリーズですね。現在3巻まで刊行。
4.この△ラブコメは幸せになる義務がある。 (電撃文庫)
第28回電撃小説大賞＜金賞＞
榛名 千紘/てつぶた KADOKAWA 2022年03月10日
偶然、同じクラスのクール系美少女・皇凛華が彼女の幼馴染の清楚系美少女・椿木麗良を溺愛していることを知ってしまう平凡な高校生・矢代天馬。そんな彼が凛華の恋を応援する三角関係ラブコメ。ふとしたきっかけから素直になれないポンコツな凛華の恋をサポートすることを決意した天馬が、ナンパされていた麗良を救ったことで懐かれてしまう展開で、癒し系に見えて意外な一面を見せる麗良、臆病でなかなか前に踏み出せない凛華の二人を献身的に支える天馬の優しさがなかなか効いていました。少しずつ変わりつつあるこの三角関係の行方が楽しみな期待の新シリーズですね。現在2巻まで刊行。
5.灰原くんの強くて青春ニューゲーム (HJ文庫)
HJ小説大賞2020前期＜受賞＞
高校デビューに失敗して、灰色の高校時代を経て大学４年となった灰原夏希。社会人目前だった彼はある日突然、７年前の高校入学直前まで時を遡ってしまい、二度目の高校生活をやり直す学園ラブコメ。過去の経験を活かして春休み中に努力した結果、上手くクラスカースト最上位６人のグループの一員となった夏希。かつて片思いしていた美少女・陽花里ともなかなかいい感じで、協力関係を結んだ幼馴染・美織の助力もあって一回目にはなかった充実した日々は、逆に上手く行き過ぎて思わぬ展開にも繋がりましたけど、ここで本音を見せられたことで本当の意味でのスタートラインに立てましたかね。これからの展開が楽しみな新シリーズです。現在2巻まで刊行。
6.高嶺さん、君のこと好きらしいよ（ガガガ文庫）
猿渡 かざみ/池内 たぬま 小学館 2022年06月17日
カタブツ風紀委員長・間島ケンゴの耳に届いた「高嶺さん、君のこと好きらしいよ」という出所不明の噂…。クラスのミステリアス美女・高嶺サキと鬼の風紀委員長のもどかしい青春ラブコメ。間島君に振り向いてほしくて自身が流していた噂を、なぜか本人の前できっぱり否定してしまう不器用過ぎる高嶺さん。鈍感な彼相手に怪しいマニュアル本頼りの数々のアプローチを仕掛けながらも空振りし続けた彼女が、ようやくこぎつけた昼休みに二人で一緒に過ごすささやかな交流があって、なぜ彼女が間島くんを気にかけているのか、明らかにされてゆくそのきっかけとなった過去の因縁をぶちのめして窮地の高嶺さんを救う間島君がカッコ良かったです。
7.わたしはあなたの涙になりたい（ガガガ文庫）
第16回小学館ライトノベル大賞＜大賞＞
四季 大雅/柳 すえ 小学館 2022年07月20日
全身が塩に変わって崩れていく奇病「塩化病」で母親を亡くした少年・三枝八雲が、小学校の音楽室で五十嵐揺月と唯一無二の運命的な出会いを果たす青春小説。母親の過剰な期待に応えるべく努力する揺月の姿を見て、我知らず彼女に心惹かれていく八雲。プロのピアニストを目指してイタリアに留学した揺月との差を痛感して八雲が小説を書き始める展開で、離れたからこそ痛感するお互いの存在感、そしてしばらく会わなかった二人の唐突でお互いの運命を大きく変えることになった再会があって、そこからの真摯な想いを積み重ねてゆくかけがえのない展開と結末には、分かっていても心を揺さぶられずにはいられませんでした。
8.クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった (角川スニーカー文庫)
たかた/長部 トム KADOKAWA 2021年12月24日
失敗したはずの自己紹介をきっかけに、ぼっちの前原真樹に初めてできた友だちの朝凪海。金曜日の放課後だけ、こっそり彼女が真樹の家に遊びに来るようになるお友達ラブコメ。『クラスで2番目に可愛い』と噂される朝凪の意外な一面。映画にゲーム、漫画の趣味も合う彼女との楽しいひとときから始まった秘密の関係と、抜群の存在感がある彼女の親友・天海の存在。文化祭の実行委員となってしまった真樹自身の奮闘、同時に朝凪が抱える複雑な想いも明らかになっていって、時にはすれ違いながらも天海と向き合おうとする彼女を応援して、いつの間にか互いにかけがえのない存在になっていることを自覚してゆく二人の距離感が良かったです。彼らがこれからどういう関係になってゆくのか、続巻にも期待したいと思います。現在2巻まで刊行。
9.僕たち、私たちは、『本気の勉強』がしたい。 (MF文庫J)
庵田 定夏/ニリツ KADOKAWA 2022年05月25日
真面目すぎると言われ、夜だけはらしい自分でいられる高校生の真嶋正太。彼が夜の教室でいつも寝てばかりのクラスメイト月森灯に出会い世界が変わってゆく青春小説。田舎の小さな町で、身の丈にあった「普通」を過ごす日々。でも夜はそんな自分でいなくてもいいと思う真嶋と、勉強は全てを変えられるという月森灯が出会い、彼女の提唱する勉強法で手応えを得ることで見えるものが変わってゆく展開で、高校を退学した美空も加わって、それぞれの苦悩も描きながら時にはすれ違ったりぶつかり合う中で、自分が本当はどう思っているのか、どうしたいのかに気づき、かけがえのない絆を深めてゆく展開にはぐっと来るものがありました。
10.琥珀の秋、0秒の旅 (ガガガ文庫)
高校の修学旅行で北海道・函館を訪れていた麦野カヤト。苦痛でしかなかったグループ行動中に突然世界の時が止まり、そこで地元の不良少女・井熊あきらと出会い、時を動かす手がかりを求めて東京を目指す青春小説。喧騒が消え、静寂だけが支配する街のなかで出会った口調も性格もキツい正反対な性格のあきら。そんな二人で北海道から東京にある叔父の家を目指す過程で、時には衝突したり助け合いながら、それぞれが抱える苦い過去も明らかになっていきましたが、一方で絆を深めた旅路を重ねる中で、お互いのことを認める気持ちや、自身の心境の変化や確かな成長もあって、何とも唐突で意外な旅の終わりではありましたけど、彼らが迎えるこの物語の結末にはぐっと来るものがありました。
11.ママ友と育てるラブコメ（ガガガ文庫）
3歳の妹・想夜歌が大好きなシスコン高校生・昏本響汰。ある日妹の入園式に参列した響汰は、弟・郁を溺愛する同じクラスの孤高の美少女・暁山澄と出会うママ友ラブコメ。弟の前では学校では見せないブラコンっぷりを炸裂させるポンコツお姉ちゃんの澄の素顔。放課後はお互い世話をする妹・弟繋がりで密かにママ友交流が増えて、妹・弟も呆れる溺愛っぷりを響汰と競うような展開には苦笑いでしたけど、一方で響汰の家事が得意な一面や、不器用だけれど努力し続ける澄の姿を知ったりもして、だからこそ彼女の窮地を知ってフォローに動かずにはいられない、そんな二人の関係がこれからどうかわってゆくのか続巻が楽しみな期待の新シリーズですね。
12.青のアウトライン 天才の描く世界を凡人が塗りかえる方法 (ファンタジア文庫)
第34回ファンタジア大賞＜銀賞＞受賞
日日 綴郎/むっしゅ KADOKAWA 2022年01月20日
何を描かせても天才と称される芸術少女・柏崎侑里。ある日から絵を描かなくなった彼女と、その差を突きつけられながらも諦めず絵を描き続ける小宮宗佑たちの青春小説。強過ぎて意識せざるをえない、一番近くて一番遠い場所にいる幼馴染の存在。転校してしまった相思相愛の幼馴染・詩子との三人の約束、そして二人を気にかける楓先輩の存在。圧倒的な力の差を突きつけられる凡人、一方で常にプレッシャーにさらされる天才にもお互い理解し難い複雑な思いや葛藤があって、時にはぶつかり合い、刺激を与えてくれるその存在が必要不可欠であることも間違いなくて、一言では説明できない彼らの様々な思いが入り混じったまさに青春とも言うべき関係がとても印象に残る物語でした。
13.問題児の私たちを変えたのは、同じクラスの茂中先輩 (角川スニーカー文庫)
桜目 禅斗/ハリオ アイ KADOKAWA 2022年06月01日
とある理由で留年となり、一学年下のクラスで浮いていた好青年・茂中碧。そんな彼が同じクラスの孤立無援の問題児たちと変わろうとする青春解放ラブコメ。同じクラス内の問題児、無愛想な高飛車JKモデル・白坂、クソ真面目で生徒会長をクビになった黒沢、SNS大炎上中の地雷系女子・赤間、人気者から嫌われ者に転落した男子・金田。そんな彼女たちと修学旅行で余り者班を組むことになってしまい、開き直って彼女たちと高校生活を満喫するために、それぞれ抱える問題と誠実に向き合う茂中の奮闘があって、そんな彼に影響を受けて変わってゆく彼女たちの心境と充実した修学旅行、そして彼の留年の理由を知った彼女たちがどうするか…これは続巻に期待したくなる新シリーズですね。22年10月に2巻目刊行予定。
14.俺の前では乙女で可愛い姫宮さん (Jノベルライト文庫)
アルバイト先の喫茶店で、同じ高校の美少女・姫宮奏がナンパされているところを助けた奥川唯斗。それをきっかけに彼女が見せる意外なギャップにどんどん惹かれてゆく青春ラブコメ。「天乃立の王子様」と呼ばれているものの実は夢見る乙女な性格の奏。そんなシチュエーションにすっかり運命を感じてしまい、手料理を振りまったり、お泊り勉強会をしたり勢いでぐいぐい攻める展開で、そんな彼女にたじたじになりながらも、ちゃんと奏のことを大切にする唯斗がなかなか良かったですね。奏といろいろ意気投合した唯斗の義妹・祭もいい感じに効いてましたけど、その友人で彼のことが気になるノエルの逆襲はあるのか続巻に期待の新シリーズですね。
15.隣の席の元アイドルは、俺のプロデュースがないと生きていけない (ファンタジア文庫)
飴月/美和野 らぐ KADOKAWA 2022年05月20日
抜群のスタイルに宝石みたいな瞳。何より日常生活とかけ離れた圧倒的なあざとさが異様な転入生の元アイドル香澄ミル。そんな彼女に普通な高校生活を教える青春小説。幼馴染の現役アイドル・白樺冬華に託されてアイドルを辞めた香澄ミルの面倒を見ることになった柏木蓮。無意識にアイドル的行動をしてしまう日常や週末の娯楽探し、文化祭の実行委員に立候補したりと、時には隠れ限界オタの委員長や冬華も絡めた二人の共同戦線で、時には振り回されて時には迷い、ぶつかり合いながら変わってゆくミルと蓮の関係が良かったですね。真摯で人のために懸命になれるのにどこか鈍い蓮と、ミル・委員長・冬樺とそれぞれ違う魅力を持ったヒロインたちとの恋模様にも期待しています。
16.推しの認知欲しいの?←あげない (電撃文庫)
推しの認知欲しいの？←あげない（1）
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虎虎/こうましろ KADOKAWA 2022年04月08日
謎の覆面系音楽ユニット「たぶつき」のボーカルderellaにガチ恋する高校生・星地春永。実は密かにそのderellaの正体でもあり彼が大好きな幼馴染でもある有真手毬のもどかしい青春ラブコメディ。derellaを激推していて、会いたいと切望する春永に妹扱いされている手毬の複雑な思い。derellaを絶賛されて嬉しいけれど、でも自分のことをちゃんと見てほしくて、そんなすれ違いが微笑ましくも、切なくもありましたけど、初ライブに向けてテンションを上げていく春永が、それでも大切なことを忘れていなかったことが分かるその結末にはぐっと来るものがありました。これは今後に期待したくなる新シリーズですね。
17.わたし、二番目の彼女でいいから。 (電撃文庫)
互いに一番好きな人がいるのに、二番目同士で付き合っている桐島と早坂さん。一緒に帰ってこっそり逢い、人には言えないことをしていた彼らが、一番目を意識するあまり深みにハマってゆく青春小説。二番目同士なのに恋人のような距離感の二人に急接近し、挑発したり次々と波紋を投げかけてゆくどこか掴みどころのない桐島の想い人・橘の存在。彼女を意識し過ぎて壊れてゆく早坂さんを見ていられなくて、カオスな状況を加速させる急展開もあって、それぞれがあるべき形を突き詰めていった先に待っていたあまりにも壮絶な結末に言葉が出ませんでした。22年9月に4巻目刊行。
18.衛くんと愛が重たい少女たち（ガガガ文庫）
弟を束縛し溺愛する姉の凛に女装させられて写真を撮られ、本当はもっと男っぽくなりたい高校生・森崎衛。好きな幼馴染は彼氏を作って人生が辛すぎる衛と愛が重たい少女たちによる仁義なき恋の戦いの物語。思わせぶりな幼馴染・瑞希の行動に絶望した衛を励まして、なぜか付き合うことになった元アイドルの従妹・京子の思惑。重すぎる歪んだ愛で衛を絡め取ろうとする少女たちに囲まれ、独占するために他の女を徹底的に排除しようとするその仁義なき戦いはドン引きするほど壮絶で、今回は復讐すると言いつつ衛が大好き過ぎる京子の奮闘っぷりがなかなか良かったですけど、それでそのままハッピーエンドでは終わりそうにもなくて、諦めが悪そうな二人の逆襲に期待の新シリーズです。
19.サマータイム・アイスバーグ（ガガガ文庫）
第16回小学館ライトノベル大賞＜優秀賞＞受賞
新馬場 新/あすぱら 小学館 2022年07月20日
三浦半島に突如巨大な氷山が現れ、鬱屈とした夏休みを送る高校生の進たちが、氷山の現れた海岸で一人の少女・日暈と出会う青春小説。一年前の事故以来、昏睡から醒めない進の幼馴染の幼い頃とそっくりな謎の少女。幼馴染のことで無力感に苛まれる進、進に複雑な想いを抱く羽、優等生で密かに悩みを抱える一輝が、少女と楽しい夏を過ごすために協力する展開で、それぞれがままならない想いを抱える彼らはたびたびぶつかり合い、そんなエピソードの積み重ねがひと夏の青春を感じさせてくれましたけど、一方で氷山を巡る秘密が明らかになってゆく中で、大人の事情にたびたび振り回されながらも、少女を元いたところに帰すために力を合わせて奔走する展開とその結末にはぐっと来るものがありました。
20.友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。 (電撃文庫)
真代屋 秀晃/みすみ KADOKAWA 2022年02月10日
トラウマから恋愛よりも友情を育む青春を目指す高校生・古賀純也。しかし仲良し男女五人グループ内の成嶋夜瑠が隠していた本音を知って巻き込まれてゆく青春群像恋愛劇。せめてもうしばらくは友情を大切にしたいと夏休みを満喫しようと計画を立てる純也たち。一方で一人暮らしをする彼の隣に引っ越してきて彼にだけは本音で話す夜瑠には、恋愛至上主義と密かに抱える過去があって、事あるごとに対立したりいがみ合ったりしていた二人にも確かに育まれていた絆があって、これまで知らなかったこそ自覚してしまった想いは意識せずにはいられないですね…彼女からの提案は成立しうるのか、そして仲良しグループは維持し続けることができるのか、それぞれの複雑な想いも絡み合う今後が楽しみなシリーズですね。現在2巻まで刊行。
21.リセット彼女がラブコメを思い出すまで (角川スニーカー文庫)
斎藤 ニコ/U35 KADOKAWA 2022年07月29日
一目惚れした学園の天使・西地野詩乃に告白をOKしてもらい浮かれる高校生・安藤海斗。彼女の親友・天川綺羅にも祝福され順風満帆な学園生活が、詩乃の記憶喪失で一変する青春小説。生徒会長を目指す詩乃を手伝う中で積み重ねてきた想い。不慮の事故により海斗との記憶を失ってしまう詩乃。思い出すまでこれまで通りの生活を演じることにした三人の日々は、やはりこれまでと同じではなくて、不安から記憶の消失と復活を繰り返してしまう詩乃、自らの想いに葛藤する綺羅と、それぞれに不安を抱える彼らのひたむきな思いが絡み合う三角関係が形成される展開は何とも切なかったですけど、そんなかけがえのない関係の行く末をまた読んでみたいと思いました。
22.みんなのアイドルが俺にガチ恋するわけがない（ＧＡ文庫）
羽場楽人 SBクリエイティブ 2022年02月15日頃
夜に虹がかかる不思議な夜虹島で虹に降られた者は自分のレプリカが勝手に歩き出すという伝承。ある夜、瀬武継陽はレプリカを追う元人気アイドル・恵麻久良羽と出会うギャップラブコメ。自らもレプリカに遭遇した経験からアドバイスしようとする継陽を警戒する久良羽と、対象的に継陽への好意を隠そうともしないクラウ(レプリカ)。訳アリとはいえ久良羽や同級生の悠帆・アイラといったヒロインたちをたびたび勘違いさせる継陽の愛すべき鈍感野郎っぷりには苦笑いでしたけど、彼女の力になろうとする継陽の真摯な思いに触れて、久良羽がレプリカや自らの思いに向き合ってゆく展開にはぐっと来るものがありました。今回の決着から次巻もまた波乱の展開に繋がりそうで、今後も楽しみな新シリーズですね。 22年7月に2巻目刊行予定。
23.霜月さんはモブが好き (GCN文庫)
高校に入学して仲の良かった義妹・幼馴染・女親友を主人公キャラ・竜崎のハーレム要員として奪われてしまったモブの中山幸太郎。放課後忘れ物を取りに戻った学校で無口なヒロイン霜月しほに遭遇する青春ラブコメディ。主人公キャラ・竜崎の幼馴染なのに彼が苦手で、幸太郎と友人になりたいというしほ。彼女は意外とポンコツちゃんで、そんな彼女を竜崎は自分に都合よく勘違いしていて、一歩間違えると主人公キャラもこうなりうるのかとなかなか斬新な展開でしたけど、最初は優しさから状況の変化を誤魔化していた彼が、ヒロインたちを無自覚に苦しめる勘違い野郎相手についに立ち上がる展開にはぐっと来るものがありましたね。これから二人の関係がどうるのかも楽しみですし、竜崎や元ヒロインズの今後も気になるところではあります。現在3巻まで刊行。
24.最強にウザい彼女の、明日から使えるマウント教室 (ガガガ文庫)
第16回小学館ライトノベル大賞＜優秀賞＞受賞
上流階級の子息が集まる私立鷺ノ宮学園の絶対のルール「マウンティング」。スカウト組で入学したザ・一般人の佐藤零が最強にウザい美少女・月並千里と学園の頂点を目指す青春ラブコメ。学園で生き残るにはSクラスに上がるしかない？突然キスしてきた残念美少女の千里と恋人(仮)契約を結んだ零が、千里や官房長官の息子・尾古や気弱な美少女・翼と組んで最強クラス所属を決めるマウント合戦に挑む展開で、様々な形のマウントを駆使する熱いバトルが続くバカバカしさについ笑ってしまいましたが、そんな戦いをどこか醒めた目で見ていた零もいつの間にか感化されていって、千里と二人でいがみ合いながら千里のライバル夜桜に挑む展開はなかなか楽しかったです。
25.この恋は元カノの提供でお送りします。 (角川スニーカー文庫)
御宮 ゆう/Re岳 KADOKAWA 2022年04月28日
大学二年生の衣笠創の高校時代の元カノ、誰もが憧れた塩対応美少女・柚木真波。関係が断絶していた彼女と、よりによってチャットアプリ経由で気まずい再会を果たす青春ラブコメ。同じ大学の七野優花への片想いを白状した創に、借りを感じていた真波が始めた恋愛指南。彼氏はいらないと明言する優花、予行演習で忌憚のないアドバイスをする真波、そして昔創が三日だけ付き合ったことがある梨奈先輩と、それぞれ違う魅力を持ったヒロインたちを絡めた今回の結末は、ある意味必然だったのかなとも感じましたが、物語としてはむしろここからだと思うのでこれからの展開に期待。
26.運命の人は、嫁の妹でした。 (電撃文庫)
逢縁奇演/ちひろ 綺華 KADOKAWA 2022年07月08日
お互いに顔を知らないブラインド婚活のまま、婚姻届を出してしまった御堂大吾。その初の待ち合わせ場所に現れた義妹・獅子乃との間に前世の運命の記憶が蘇るラブコメディ。運命の人は嫁ではなく妹の獅子乃だった？混乱したまま嫁より先に獅子乃との同棲生活が始まってしまう大吾。実は素直になれない嫁で獅子乃の姉・兎羽側にもいろいろ事情があることが明らかになっていって、今より技術的に発達した滅亡の危機にある前世の位置づけも気になるところですけど、やはり前世の運命の相手だった獅子乃を選ぶのか、それとも現世で密かに思いを積み重ねてきた兎羽の逆襲はあるのか、今後の展開が楽しみな新シリーズですね。
27.朝比奈さんの弁当食べたい 1 (HJ文庫)
クラス一の美少女・朝比奈亜梨沙がある日作ってきたマズそうな弁当。「朝比奈さんの弁当が食べたいから付き合って欲しい」同級生の牧誠也がその弁当に一目惚れしたことから始まる青春小説。最悪だった誠也の第一印象、そして諦めない彼の不器用で愚直なアプローチに一度はブチ切れながらも、いつしか彼らの仲間と過ごす時間がかけがえのないものになってゆく亜梨沙。しかし偶然誠也の秘密を知ってしまったことによる暗転、明らかにされてゆく彼が抱える事情があって、そこから踏み込めない二人のすれ違いがもどかしかったですけど、誠也が亜梨沙に伝えるなぜ彼女の弁当が食べたかったのか、そして今できることの精一杯に込められた真摯な想いには心を揺さぶられずにいられませんでした。
28.友人に500円貸したら借金のカタに妹をよこしてきたのだけれど、俺は一体どうすればいいんだろう (ファミ通文庫)
としぞう/雪子 KADOKAWA 2021年09月30日頃
兄の借金500円のカタとして大学生・白木求のアパートに突然押しかけてきた宮前朱莉。突飛な展開に戸惑う求を強引に言いくるめ、朱莉は着々と居候の準備を進めていく青春ラブコメディ。兄思いの良い子で、学年超えて噂される美少女という印象しかなかった親友の妹の突然の来襲。分かりやすいベタな展開ではありましたけど、夏休みから始まった突然の同居生活で、ぐいぐい来る朱莉とのドキドキするハプニングだったり、求のバイト先が気になって押しかけてみたり、最後にあった全てが繋がる朱莉の恋の始まりのエピソードがなかなか良かったですね。現在3巻まで刊行。
29.百合の間に挟まれたわたしが、勢いで二股してしまった話 (オーバーラップ文庫)
としぞう/椎名くろ オーバーラップ 2021年11月25日頃
平凡な女子高生・間四葉が、学園の尊き百合・百瀬由那と合羽凜花の間に挟まるだけでなく、両方に告白され、柔不断が災いして二人と同時に付き合うガールズラブコメ。お姫様みたいに可憐な百瀬由那と、王子様と見紛うほどに凜々しい合羽凜花。二人と共に過ごすうちに仲良くなった四葉がそれぞれに告白されてしまい、それが嬉しくて二人とも好きすぎて、幸せにしたいがゆえにこっそり両方と付き合ってしまう展開には苦笑いでしたけど、ちょっと天然入っている素直で彼女たちを特別扱いしない四葉だからこそ、由那と凜花も惹かれたんですよね。ドタバタする四葉と彼女たちの関係がほのぼのした雰囲気でなかなか良かったです。現在2巻まで刊行。
30.恋は暗黒。 (MF文庫J)
どこにでもいる普通の高校生になりたかった高良縊想星。好きで選んだわけではない仕事を隠して通う高校で、なぜかクラス一の美少女・白森明日美に告白されて付き合い始めるダーク・ラブコメディ。思わぬ状況に舞い上がるものの、想星が放課後や休日は「仕事」に追われてデートすらなかなかできずにすれ違う二人。誰にも言えず逃れられない過酷な仕事に何度も心を削られながら、それでもその恋にかすかな希望を抱いてしまう展開は、気持ちは分かるだけになかなかほろ苦いですけど、もう一人のキーマンとしてその背景が明らかになってゆく不思議な同級生・羊本も絡めた人間関係がこれからどう動くのか、その続きを読みたくなる期待の新シリーズですね。
